以下、本開示に係る穿刺針の実施形態について、図1~図21を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
<第1実施形態>
図1は、一実施形態としての穿刺針1の本体部2及び先端部3を示す図である。具体的に、図1(a)は、穿刺針1の本体部2及び先端部3の正面図、図1(b)は、穿刺針1の本体部2及び先端部3の側面図、図1(c)は、穿刺針1の本体部2及び先端部3の背面図を示す。図1(d)は、穿刺針1の本体部2及び先端部3の斜視図である。また、図2(a)は、図1(a)に示す穿刺針1の先端部3及びその近傍を拡大した拡大正面図である。図2(b)は、図1(b)に示す穿刺針1の先端部3及びその近傍を拡大した拡大側面図である。
図1(a)~図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、穿刺針1は、棒状の本体部2と、この本体部2に連続する先端部3と、を備える。本体部2は、中心軸線方向Aと直交する断面が略円形状の外形を有する。「中心軸線方向A」とは、本体部2の中心軸線Oに平行な方向を意味する。本実施形態の本体部2は、中心軸線方向Aと直交する断面の外形が略円形状となる管体である。本実施形態の穿刺針1は、本体部2から先端部3の先端開口11まで連通する中空部10を区画している。先端部3は、本体部2の先端側に連続している。先端部3には、刃面4が形成されている。本明細書において「先端側」とは、中心軸線方向Aにおいて、穿刺針1の針先8とは反対側の一端から、穿刺針1の針先8がある他端に向かう方向を意味する。逆に、本明細書において「基端側」とは、中心軸線方向Aにおいて、穿刺針1の針先8がある上記他端から、穿刺針1の針先8とは反対側の上記一端に向かう方向を意味する。
先端部3の刃面4は、正面刃面4aと、この正面刃面4aの裏側に形成されている背面刃面4bと、を備える。
図1(a)~図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、正面刃面4aは、複数の刃面部により構成されている。より具体的に、正面刃面4aは、第1刃面部5、第2刃面部6、及び、第3刃面部7、を備える。
「刃面」とは、中心軸線方向Aに対して傾斜する一又は複数の刃面部からなる。「刃面部」とは、中心軸線方向Aに対して、穿刺針の先端部の外周面の母線よりも大きく傾斜する一面により構成される。具体的に、本実施形態の本体部2及び先端部3の外周面は、中心軸線方向Aの位置によらず、径方向Bにおける中心軸線Oとの距離が一定である。つまり、図2(b)に示すように、本実施形態の先端部3の外周面の母線Uは、中心軸線方向Aに平行である。そのため、本実施形態の刃面部は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一面であればよい。なお、本体部及び先端部は、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて中心軸線Oに近づくように傾斜するテーパー状の外周面を備えてもよい。かかる場合には、先端部の外周面の母線は、中心軸線方向Aに対して傾斜する。そのため、刃面部は、中心軸線方向Aに対して傾斜すると共に、刃面部の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、先端部3の外周面の母線の中心軸線方向Aに対する傾斜角度よりも大きくなる。
第1刃面部5及び第2刃面部6は、少なくとも針先8で交わる。より具体的に、本実施形態の第1刃面部5及び第2刃面部6は、互いが交差する稜線により針先8を一端とする正面刃縁9を形成している。「針先」とは、中心軸線方向Aにおける穿刺針1の先端を意味すると共に、刃面4の先端である刃先を意味する。
第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれは、一面により構成されていれば、曲面であっても平面であってもよい。但し、本実施形態の第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれは、一平面により構成されている。第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれを一平面により構成することで、正面刃面4aの構成を簡素化できる。
第1刃面部5は、その基端側で、第3刃面部7と連続している。また、第2刃面部6は、その基端側で、第3刃面部7と連続している。すなわち、本実施形態の第3刃面部7は、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方の刃面部の基端側に連続している。
また、第3刃面部7は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。本実施形態の第3刃面部7は、刃面4の基端を構成している。換言すれば、本実施形態の第3刃面部7は、その基端側で、本体部2の筒状の外周面と連続している。したがって、本実施形態の第3刃面部7は、その先端側で、上述したように第1刃面部5及び第2刃面部6と連続すると共に、その基端側で、本体部2の筒状の外周面と連続している。
このように、本実施形態の正面刃面4aは、連続する複数の刃面部により構成されている。
本実施形態の正面刃面4aの内縁は、第1刃面部5の内縁、第2刃面部6の内縁、及び、第3刃面部7の内縁、により構成されている。この正面刃面4aの内縁は、中空部10の一端である先端開口11を区画している。
本実施形態の正面刃面4aの外縁は、第1刃面部5の外縁、第2刃面部6の外縁、及び、第3刃面部7の外縁、により構成されている。正面刃面4aの外縁は、正面刃面4aが形成されている刃面領域Tを画定している。したがって、正面刃面4aの外縁の中心軸線方向Aにおける最大長さが、中心軸線方向Aにおける刃面の長さH(以下、「刃面長H」と記載する。)となる。
背面刃面4bは、正面刃面4aの裏側に形成されており針先8まで延在していれば、その構成は特に限定されない。したがって、背面刃面4bは、本実施形態のように1つの背面刃面部15のみから構成されてもよく、後述するように、2つの背面刃面部(第4刃面部217及び第5刃面部218)から構成されてもよい(図9~図12参照)。このように、穿刺針1は、上述した正面刃面4aのみならず、正面刃面4aの裏側に形成され、針先8まで延在する背面刃面4bを備える。そのため、背面刃面4bを備えない構成と比較して、穿刺針1の直進性を向上させることができる。
また、背面刃面4bを設けることで、後述する先端視(図3参照)において、針先8の位置を、本体部2の外周面の内側にすることができる。このようにすることで、穿刺針1は、内針及び外針からなる留置針の内針として利用し易くなる。つまり、内針としての穿刺針1が樹脂製の外針に対して抜き差しされても、穿刺針1の針先8は、針の内面に接触し難い。その結果、外針は、内針としての穿刺針1によって損傷又は破断し難くなる。
より具体的に、本実施形態の背面刃面部15は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。また、本実施形態の背面刃面部15は、第1刃面部5と交差する稜線により針先8を一端とする第1刃縁21を形成している。更に、本実施形態の背面刃面部15は、第2刃面部6と交差する稜線により針先8を一端とする第2刃縁22を形成している。
本実施形態において、正面刃面4aの第3刃面部7に直交する仮想平面は、背面刃面4bの背面刃面部15に直交する仮想平面と平行する。この点は後述する(図4の「中心平面X」参照)。
ここで、第3刃面部7を構成する一平面が一直線に見える側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の延長線Lは、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。図1(b)、図2(b)に示す側面視では、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち、第2刃面部6が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、図1(b)、図2(b)に示す側面視において、第3刃面部7の延長線Lは、第2刃面部6と交差している。以下、「第3刃面部7を構成する一平面が一直線に見える側面視」を、単に「穿刺針1の側面視」と記載する。
このように、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の延長線Lが、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する構成とすることで、同側面視での第3刃面部7の延長線が、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差しない構成と比較して、刃先角度αの小さい穿刺針1が実現し易くなる。ここで言う「刃先角度α」とは、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)における針先8の位置での角度を意味する。本実施形態の刃先角度αは、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、正面刃面4aの正面刃縁9と、背面刃面4bの背面刃面部15と、が針先8にて交わる角度を意味している。
図21は、比較例としての穿刺針501の本体部502及び先端部503の側面を示す側面図である。図21に示す比較例としての穿刺針501の先端部503は、一平面により構成されている第1刃面部(不図示)、一平面により構成されている第2刃面部506、及び、一平面により構成されている第3刃面部507、からなる正面刃面504aを備える。このような穿刺針501では、図21に示す側面視において、第3刃面部507の延長線L´が、第2刃面部506と交差しない。このような構成では、刃先角度α´が、第3刃面部507の延長線L´と中心軸線Oとで形成される第3刃面部507の傾斜角度β´よりも大きくなる。
したがって、穿刺針501では、刃面長H´を小さくするために、第3刃面部507の中心軸線Oに対する鋭角の傾斜角度β´を大きくすると、それに伴って刃先角度α´も大きくなる。つまり、穿刺針501では、刃面長H´及び刃先角度α´を共に小さくする構成が実現し難い。
これに対して、穿刺針1では、側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の延長線Lが、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。このような構成にすることで、刃先角度αを、第3刃面部7の延長線Lと中心軸線Oとで形成される第3刃面部7の鋭角の傾斜角度β以下にすることができる。したがって、穿刺針1では、刃面長Hを小さくするために、第3刃面部7の中心軸線Oに対する傾斜角度βを大きくしても、それに伴って刃先角度αが大きくならない構成が実現できる。つまり、穿刺針1では、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成が実現し易い。
本実施形態の穿刺針1では、図1(b)及び図2(b)に示す側面と反対側の側面(以下、「反対側面」と記載する。)においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、反対側面の側面視において、第3刃面部7の延長線Lは、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。反対側面の側面視では、第1刃面部5及び第2刃面部6のうち、第1刃面部5が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、反対側面の側面視において、第3刃面部7の延長線Lは、第1刃面部5と交差している。
本実施形態では、穿刺針1の側面視(図2(b)等参照)における第3刃面部7の傾斜角度βは、13°以上、かつ、20°以下の範囲となっている。このような構成とすることにより、刃面4の刃面長Hを、筋肉注射等に主に利用される所謂「レギュラーベベル」(例えば、図21に示す形状で傾斜角度β´が12°となる穿刺針)の刃面長よりも短くし、静脈注射等に主に利用される所謂「ショートベベル」(例えば、図21に示す形状で傾斜角度β´が18°となる穿刺針)の刃面長と同程度としつつ、刃先角度αを「レギュラーベベル」と同程度又はそれ以下の角度にすることができる。
つまり、静脈等の脈管の突き抜けが起こり難い短い刃面長を有しつつ、刃面4での刺通抵抗が低減でき脈管の確保が容易な穿刺針1を実現することができる。また、針先8近傍での刺通抵抗が低減できることから、刺通抵抗の変化量を小さくでき、穿刺する際に医療従事者が穿刺方向に加える力の変化量をも小さくすることができる。そのため、穿刺する際に、医療従事者が操作し易い穿刺針1を実現することができる。
本実施形態の第3刃面部7は、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方の刃面部の基端側に連続している一平面であるが、この構成に限られず、第1刃面部5及び第2刃面部6のいずれか一方の刃面部の基端側に連続する一平面で構成される第3刃面部としてもよい。更に、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれが、別々の一平面で構成される第3刃面部と連続する構成であってもよい。更に、本実施形態の第3刃面部7は、その基端側で、本体部2の外周面に連続しているが、第3刃面部7と、本体部2の外周面と、の間に別の刃面部が介在していてもよい。例えば、第3刃面部7の基端側に、第3刃面部7と連続し、傾斜角度βよりも小さい傾斜角度を持つ別の刃面部を設けることで、穿刺時の刃面4の基端部における刺通抵抗を低減することができる。このように、第3刃面部は、第1刃面部及び第2刃面部の少なくとも一方の刃面部の基端側に連続し、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されていればよく、本実施形態の構成に限られない。
但し、上述した本実施形態のように、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方の刃面部の基端側に連続する一平面で構成されている第3刃面部7とすれば、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成を、少ない平面の数により実現し易くなる。つまり、平面が交差する稜線により構成される尾根部を減らすことができる。そのため、穿刺時に、尾根部によって刺通抵抗が増大することを抑制できる。
更に、図2(b)に示す延長線Lの中心軸線Oに対する角度を、13°以上、かつ、20°以下の範囲としつつ、刃先角度αは、15°~27°とすることが好ましい。刃先角度αが15°以上とすることで、刃先が薄くなり過ぎることを抑制できる。そのため、製造工程において所定の性能を満足できなくなるダメージ等が発生することを抑制できる。また、27°以下とすることで、所謂ショートベベルの刃先角度αと同等になることを抑制できる。つまり、所謂ショートベベルと比較して、穿刺時の刺通抵抗を小さくすることができる。
また、本実施形態では、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の延長線Lは、正面刃縁9とは異なる位置で、第2刃面部6と交差する。このようにすることで、同側面視における第3刃面部7の延長線Lは、正面刃縁9よりも基端側の位置で、第2刃面部6と交差する。つまり、同側面視における第3刃面部の延長線が正面刃縁9と交差する構成と比較して、第3刃面部7の中心軸線Oに対する鋭角の傾斜角度βを大きくでき、刃面長Hをより短い構成とすることができる。
本実施形態の穿刺針1では、不図示の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、反対側面の側面視において、第3刃面部7の延長線Lは、正面刃縁9とは異なる位置で、第1刃面部5と交差する。このようにすることで、反対側面の側面視における第3刃面部7の延長線Lは、正面刃縁9よりも本体部2の基端側の位置で、第1刃面部5と交差する。
このように、図1(b)、図2(b)に示す側面と、反対側面と、を同様の構成にすることで、刃面長Hを、より一層短い構成にすることが可能となる。
また、本実施形態において、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)での先端部3は、中心軸線Oにより2つの領域に分けられる。2つの領域は、針先8が含まれる先端領域S1、及び、針先8を含まない基端領域S2、である。そして、本実施形態では、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の少なくとも一部が、基端領域S2に位置している。
更に、本実施形態では、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、第3刃面部7の先端が、中心軸線Oまで到達していないが、第3刃面部7の先端が、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、中心軸線O上に到達していてもよく、第3刃面部7が、同側面視で、中心軸線Oと交差していてもよい。つまり、第3刃面部7が、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、先端領域S1と基端領域S2とに跨って延在し、同側面視において、第3刃面部7の先端が、先端領域S1に位置する構成としてもよい。
本実施形態の穿刺針1では、不図示の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、本実施形態では、穿刺針1の反対側面の側面視(不図示)において、第3刃面部7の先端が、中心軸線Oまで到達していない。但し、第3刃面部7の先端が、穿刺針1の反対側面の側面視において、中心軸線O上に到達していてもよく、第3刃面部7が、同側面視で、中心軸線Oと交差していてもよい。つまり、第3刃面部7が、穿刺針1の反対側面の側面視において、先端領域S1と基端領域S2とに跨って延在し、同側面視において、第3刃面部7の先端が、先端領域S1に位置する構成としてもよい。
ここで、本実施形態において、第3刃面部7の先端とは、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれと、第3刃面部7と、が交差する稜線により形成される尾根部14の先端である。
更に、本実施形態では、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、中心軸線Oが、第2刃面部6と重なる。換言すれば、本実施形態では、穿刺針1の側面視(図1(b)、図2(b)参照)において、中心軸線Oが、第2刃面部6と交差している。このような構成とすれば、刃面4において、正面刃縁9から延在する第2刃面部6の中心軸線方向Aの長さを、比較的大きく確保することができる。刃面長Hにおける、第2刃面部6の中心軸線方向Aにおける長さの割合を大きくすることができれば、刃先角度αを、より小さくすることが可能となり、刃先の薄い穿刺針1を実現し易くなる。
本実施形態の穿刺針1では、不図示の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、本実施形態では、穿刺針1の反対側面の側面視において、中心軸線Oが、第1刃面部5と重なる。換言すれば、本実施形態では、穿刺針1の反対側面の側面視において、中心軸線Oが、第1刃面部5と交差している。このような構成とすれば、刃面4において、正面刃縁9から延在する第1刃面部5の中心軸線方向Aの長さを、比較的大きく確保することができる。
このように、図1(b)、図2(b)に示す側面と、反対側面と、を同様の構成にすることで、刃先角度αを、より一層小さくすることが可能となり、刃先の薄い穿刺針1を実現し易くなる。
また、本実施形態では、第1刃面部5及び第2刃面部6は、中心軸線方向Aにおける刃面領域Tの中間位置Mよりも基端側まで延在している。このような構成とすることで、刃面4において、第1刃面部5及び第2刃面部6の中心軸線方向Aの長さを、比較的大きく確保することができる。第1刃面部5及び第2刃面部6の中心軸線方向Aにおける長さを大きくすることができれば、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれを平面により構成したとしても、刃先角度αを比較的小さくすることが可能となり、刃先の薄い穿刺針1を実現することができる。
また、本実施形態では、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Mよりも基端側まで延在する構成であるが、この構成に限られず、第1刃面部5及び第2刃面部6の少なくともいずれか一方の刃面部が、中間位置Mよりも基端側まで延在する構成であればよい。但し、本実施形態のように第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Mよりも基端側まで延在する構成とすれば、いずれか一方の刃面部のみが中間位置Mよりも基端側まで延在する構成とする場合と比較して、刃先角度αが小さい構成をより容易に実現することができる。そのため、本実施形態のように、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方を平面により形成し、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Mよりも基端側まで延在する構成とすることが好ましい。
本体部2及び先端部3は一体で形成されている。本体部2及び先端部3の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料を使用することができる。
図3は、穿刺針1の針先8よりも先端側の位置を視点として、中心軸線方向Aにおいて基端側に向かって針先8を見た図である。以下、説明の便宜上、図3で示す穿刺針1を「穿刺針1の先端視」と記載する。また、図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)は、それぞれ図2(a)におけるI-I断面図、II-II断面図、III-III断面図、IV-IV断面図、V-V断面図である。図3、図4に示す符号「X」は、本体部2の中心軸線O及び針先8を含む1つの仮想平面であり、以下「中心平面X」と記載する。本実施形態の中心平面Xは、針先8のみならず、正面刃縁9をも含む平面である。また、本実施形態の中心平面Xは、正面刃面4aの第3刃面部7、及び、背面刃面4bの背面刃面部15、の両方に直交する平面である。更に、本実施形態の本体部2及び先端部3は、中心平面Xを挟んで対称の構造を有している。図3、図4では、刃面部間の稜線を実線により示している。
図4(a)は、図2(a)のI-I断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて正面刃縁9が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図4(a)に示すように、図2(a)のI-I断面において、正面刃面4aの第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれは、中心平面Xに対して鋭角の角度θ1だけ傾斜して延在している。また、図4(a)に示すように、図2(a)のI-I断面において、背面刃面4bの背面刃面部15は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図2(a)におけるI-I断面において、背面刃面部15の中心平面Xに対する角度δ1は、略90°である。
図4(b)は、図2(a)のII-II断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口11がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図4(b)は、正面刃面4aの第1刃面部5及び第2刃面部6、並びに、背面刃面4bの背面刃面部15、を含む位置での断面である。更に、図4(b)は、第1刃面部5及び背面刃面部15により形成される第1刃縁21、並びに、第2刃面部6及び背面刃面部15により形成される第2刃縁22、を含む位置での断面である。
図4(b)に示すように、図2(a)のII-II断面において、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ2は、角度θ1と等しい。また、図4(b)に示すように、図2(a)のII-II断面において、背面刃面4bの背面刃面部15は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図2(a)におけるII-II断面において、背面刃面部15の中心平面Xに対する角度δ2は、図4(a)に示す角度δ1と等しく、略90°である。
図4(c)は、図2(a)のIII-III断面、すなわち、上述のII-II断面よりも基端側であり、中心軸線方向Aにおいて先端開口11がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図4(c)は、正面刃面4aの第1刃面部5及び第2刃面部6、並びに、背面刃面4bの背面刃面部15、を含む位置での断面である。更に、図4(c)は、第1刃面部5及び背面刃面部15により形成される第1刃縁21、並びに、第2刃面部6及び背面刃面部15により形成される第2刃縁22、を含まない位置での断面である。
図4(c)に示すように、図2(a)のIII-III断面において、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ3は、図4(a)に示す角度θ1、及び、図4(b)に示す角度θ2と等しい。また、図4(c)に示すように、図2(a)のIII-III断面において、背面刃面4bの背面刃面部15は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図2(a)におけるIII-III断面において、背面刃面部15の中心平面Xに対する角度δ3は、図4(a)に示す角度δ1、及び、図4(b)に示す角度δ2、と等しく、略90°である。
図4(d)は、図2(a)のIV-IV断面、すなわち、上述のIII-III断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図4(d)は、正面刃面4aの第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7を含む位置での断面である。その一方で、図4(d)は、背面刃面4bの背面刃面部15を含まない位置での断面である。
図4(d)に示すように、図2(a)のIV-IV断面において、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ4は、角度θ1(図4(a)参照)、角度θ2(図4(b)参照)及び角度θ3(図4(c)参照)と等しい。また、図4(d)に示すように、図2(a)のIV-IV断面において、第3刃面部7は、図4(a)~図4(c)に示す背面刃面部15と同様、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図2(a)におけるIV-IV断面において、第3刃面部7の中心平面Xに対する角度τ4は、図4(a)~図4(c)における背面刃面部15の角度δ1、角度δ2及び角度δ3と同様、略90°である。
図4(e)は、図2(a)のV-V断面、すなわち、上述のIV-IV断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図4(e)は、正面刃面4aの第3刃面部7を含む位置での断面である。その一方で、図4(e)は、正面刃面4aの第1刃面部5及び第2刃面部6、並びに、背面刃面4bの背面刃面部15、を含まない位置での断面である。
図4(e)に示すように、図2(a)のV-V断面において、第3刃面部7は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図2(a)におけるV-V断面において、第3刃面部7の中心平面Xに対する角度τ5は、図4(d)に示す角度τ4と等しく、略90°である。
以上のように、中心軸線方向Aに直交する断面において、第1刃面部5及び第2刃面部6の中心平面Xに対する角度θ(図4では一例としてθ1~θ4を示す。)は、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
また、中心軸線方向Aに直交する断面において、第3刃面部7の中心平面Xに対する角度τ(図4では一例としてτ4及びτ5を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。更に、中心軸線方向Aに直交する断面において、背面刃面部15の中心平面Xに対する角度δ(図4では一例としてδ1~δ3を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。換言すれば、本実施形態の穿刺針1において、中心平面Xは、第3刃面部7及び背面刃面部15の両方に対して直交する仮想平面である。
このように、穿刺針1は、上述した正面刃面4aのみならず、正面刃面4aの裏側に形成されている背面刃面4bを備える。そして、本実施形態の背面刃面4bは、中心軸線方向Aに対して傾斜する一面である1つの背面刃面部15のみにより構成されている。このような構成とすることで、互いが交差する稜線により針先208を一端とする背面刃縁216を形成する2つの背面刃面部(第4刃面部217及び第5刃面部218)により構成される背面刃面204b(図9~図12参照)と比較して、背面刃縁216が形成されないため、刃先角度αをより薄くすることができる。そのため、穿刺針1の生体への穿刺動作を、穿刺針1を生体表面に沿うように、寝かせた状態としながら実施し易くなる。これにより、穿刺針1を生体に穿刺する際に、穿刺針1自体によって穿刺位置が視認し難くなることを抑制できる。その結果、穿刺針1を生体に穿刺する医療従事者にとっての操作性を向上させることができる。
本実施形態の背面刃面部15の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、3°~20°の範囲内で設定されることが好ましい。3°以上とすることで、穿刺針1の直進性を、より高めることができると共に、20°以下とすることで上述した医療従事者による操作性を、より高めることができる。更に、穿刺針1の直進性の向上及び医療従事者による操作性の向上の観点から、背面刃面部15の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、3°~15°の範囲とすることがより好ましく、3°~10°の範囲とすることが特に好ましい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態としての穿刺針101について説明する。図5は、一実施形態としての穿刺針101の本体部2及び先端部103を示す図である。具体的に、図5(a)は、穿刺針101の本体部2及び先端部103の正面図、図5(b)は、穿刺針101の本体部2及び先端部103の側面図、図5(c)は、穿刺針101の本体部2及び先端部103の背面図を示す。図5(d)は、穿刺針101の本体部2及び先端部103の斜視図である。また、図6(a)は、図5(a)に示す穿刺針101の先端部103及びその近傍を拡大した拡大正面図である。図6(b)は、図5(b)に示す穿刺針101の先端部103及びその近傍を拡大した拡大側面図である。
図5(a)~図5(d)、図6(a)、図6(b)に示すように、穿刺針101は、棒状の本体部2と、この本体部2に連続する先端部103と、を備える。本実施形態の穿刺針101の本体部2は、上述した穿刺針1の本体部2と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、本実施形態の穿刺針101の先端部103は、上述した穿刺針1の先端部3と比較して、中心軸線方向Aと直交する断面が扁平状の外形を有する点で相違している。この相違点以外について、上述した穿刺針1の先端部3の刃面4についての説明は、本実施形態の穿刺針101の先端部103の刃面104においても共通する。そのため、ここでは、穿刺針101のうち上述した穿刺針1と共通する点については基本構成のみを説明し、上記相違点について主に説明する。
先端部103は、本体部2の先端側に連続している。先端部103には、刃面104が形成されている。先端部103の刃面104は、正面刃面104aと、背面刃面104bと、を備える。
図5(a)~図5(d)、図6(a)、図6(b)に示すように、正面刃面104aは、第1刃面部105、第2刃面部106、及び、第3刃面部107、を備える。
第1刃面部105及び第2刃面部106は、少なくとも針先108で交わる。より具体的に、本実施形態の第1刃面部105及び第2刃面部106は、互いが交差する稜線により針先108を一端とする正面刃縁109を形成している。
本実施形態の第3刃面部107は、第1刃面部105及び第2刃面部106の両方の刃面部の基端側に連続している。特に、本実施形態の第3刃面部107は、図6(a)に示す正面視において、第1刃面部105及び第2刃面部106の基端側で、第1刃面部105及び第2刃面部106に挟まれるように配置されているが、この構成に限られない。第1刃面部105及び第3刃面部107は、互いが交差する稜線により尾根部114を形成している。また、第2刃面部106及び第3刃面部107についても、互いが交差する稜線により尾根部114を形成している。
また、第3刃面部107は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。本実施形態の第3刃面部107は、刃面104の基端を構成している。換言すれば、本実施形態の第3刃面部107は、その基端側で、本体部2の筒状の外周面と連続している。本実施形態では、第1刃面部105及び第2刃面部106の基端についても、本体部2の筒状の外周面と連続しているが、この構成に限られない。
背面刃面104bは、正面刃面104aの裏側に形成されており針先8まで延在していれば、その構成は特に限定されない。したがって、背面刃面104bは、本実施形態のように1つの背面刃面部115のみから構成されてもよく、後述するように、2つの背面刃面部(第4刃面部217及び第5刃面部218)から構成されてもよい(図9~図12参照)。このように、穿刺針101は背面刃面104bを備えるため、第1実施形態の背面刃面4bと同様の作用効果を得ることができる。
より具体的に、本実施形態の背面刃面部115は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。また、本実施形態の背面刃面部115は、第1刃面部105と交差する稜線により針先108を一端とする第1刃縁121を形成している。更に、本実施形態の背面刃面部115は、第2刃面部106と交差する稜線により針先108を一端とする第2刃縁122を形成している。
本実施形態において、正面刃面104aの第3刃面部107に直交する仮想平面は、背面刃面104bの背面刃面部115に直交する仮想平面と平行する。この点は後述する(図8の「中心平面X」参照)。
ここで、穿刺針101の側面視(図5(b)、図6(b)参照)において、第3刃面部107の延長線Lは、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。図5(b)、図6(b)に示す側面視では、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち、第2刃面部106が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、図5(b)、図6(b)に示す側面視において、第3刃面部107の延長線Lは、第2刃面部106と交差している。
このように、穿刺針101の側面視(図5(b)、図6(b)参照)において、第3刃面部107の延長線Lが、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する構成とすることで、同側面視での第3刃面部107の延長線が、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差しない構成と比較して、刃先角度αの小さい穿刺針101が実現し易くなる。本実施形態の刃先角度αは、穿刺針101の側面視(図5(b)、図6(b)参照)において、正面刃面104aの正面刃縁109と、背面刃面104bの背面刃面部115と、が針先108にて交わる角度を意味している。
これにより、穿刺針101では、上述した穿刺針1と同様、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成が実現し易い。
本実施形態の穿刺針101では、図5(b)及び図6(b)に示す側面と反対側の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、反対側面の側面視において、第3刃面部107の延長線Lは、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。反対側面の側面視では、第1刃面部105及び第2刃面部106のうち、第1刃面部105が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、反対側面の側面視において、第3刃面部107の延長線Lは、第1刃面部105と交差している。
本実施形態では、穿刺針101の側面視(図5(b)、図6(b)参照)において、第3刃面部107の先端が、中心軸線Oまで到達している。
図7は、穿刺針101の先端視を示す図である。また、図8(a)、図8(b)、図8(c)、図8(d)、図8(e)は、それぞれ図6(a)におけるVI-VI断面図、VII-VII断面図、VIII-VIII断面図、IX-IX断面図、X-X断面図である。
図8(a)は、図6(a)のVI-VI断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて正面刃縁109が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図8(a)に示すように、図6(a)のVI-VI断面において、正面刃面104aの第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれは、中心平面Xに対して鋭角の角度θ6だけ傾斜して延在している。また、図8(a)に示すように、図6(a)のVI-VI断面において、背面刃面104bの背面刃面部115は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図6(a)におけるVI-VI断面において、背面刃面部115の中心平面Xに対する角度δ6は、略90°である。
図8(b)は、図6(a)のVII-VII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口111がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図8(b)は、正面刃面104aの第1刃面部105及び第2刃面部106、並びに、背面刃面104bの背面刃面部115、を含む位置での断面である。更に、図8(b)は、第1刃面部105及び背面刃面部115により形成される第1刃縁121、並びに、第2刃面部106及び背面刃面部115により形成される第2刃縁122、を含む位置での断面である。
図8(b)に示すように、図6(a)のVII-VII断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ7は、角度θ6と等しい。また、図8(b)に示すように、図6(a)のVII-VII断面において、背面刃面104bの背面刃面部115は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図6(a)におけるVII-VII断面において、背面刃面部115の中心平面Xに対する角度δ7は、図8(a)に示す角度δ6と等しく、略90°である。
図8(c)は、図6(a)のVIII-VIII断面、すなわち、上述のVII-VII断面よりも基端側であり、中心軸線方向Aにおいて先端開口111がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図8(c)は、正面刃面104aの第1刃面部105及び第2刃面部106、並びに、背面刃面104bの背面刃面部115、を含む位置での断面である。更に、図8(c)は、正面刃面104aの第3刃面部107を含まない位置での断面である。また更に、図8(c)は、第1刃面部105及び背面刃面部115により形成される第1刃縁121、並びに、第2刃面部106及び背面刃面部115により形成される第2刃縁122、を含まない位置での断面である。
図8(c)に示すように、図6(a)のVIII-VIII断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ8は、図8(a)に示す角度θ6、及び、図8(b)に示す角度θ7と等しい。また、図8(c)に示すように、図6(a)のVIII-VIII断面において、背面刃面104bの背面刃面部115は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図6(a)におけるVIII-VIII断面において、背面刃面部115の中心平面Xに対する角度δ8は、図8(a)に示す角度δ6、及び、図8(b)に示す角度δ7、と等しく、略90°である。
図8(d)は、図6(a)のIX-IX断面、すなわち、上述のVIII-VIII断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図8(d)は、正面刃面104aの第1刃面部105、第2刃面部106及び第3刃面部107を含む位置での断面である。その一方で、図8(d)は、背面刃面104bの背面刃面部115を含まない位置での断面である。
図8(d)に示すように、図6(a)のIX-IX断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ9は、角度θ6(図8(a)参照)、角度θ7(図8(b)参照)及び角度θ8(図8(c)参照)と等しい。また、図8(d)に示すように、図6(a)のIX-IX断面において、第3刃面部107は、図8(a)~図8(c)に示す背面刃面部115と同様、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図6(a)におけるIX-IX断面において、第3刃面部107の中心平面Xに対する角度τ9は、図8(a)~図8(c)における背面刃面部115の角度δ6、角度δ7及び角度δ8と同様、略90°である。
図8(e)は、図6(a)のX-X断面、すなわち、上述のIX-IX断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図8(e)は、正面刃面104aの第1刃面部105、第2刃面部106及び第3刃面部107を含む位置での断面である。その一方で、図8(e)は、背面刃面104bの背面刃面部115を含まない位置での断面である。
図8(e)に示すように、図6(a)のX-X断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ10は、角度θ6(図8(a)参照)、角度θ7(図8(b)参照)、角度θ8(図8(c)参照)及び角度θ9(図8(d)参照)と等しい。また、図8(e)に示すように、図6(a)のX-X断面において、第3刃面部107は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図6(a)におけるX-X断面において、第3刃面部107の中心平面Xに対する角度τ10は、図8(d)に示す角度τ9と等しく、略90°である。
以上のように、中心軸線方向Aに直交する断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106の中心平面Xに対する角度θ(図8では一例としてθ6~θ10を示す。)は、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
また、中心軸線方向Aに直交する断面において、第3刃面部107の中心平面Xに対する角度τ(図8では一例としてτ9及びτ10を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。更に、中心軸線方向Aに直交する断面において、背面刃面部115の中心平面Xに対する角度δ(図8では一例としてδ6~δ8を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。換言すれば、本実施形態の穿刺針1において、中心平面Xは、第3刃面部107及び背面刃面部115の両方に対して直交する仮想平面である。
このように、本実施形態の穿刺針101の背面刃面4bは、中心軸線方向Aに対して傾斜する一面である1つの背面刃面部115のみにより構成されている。このような構成とすることで、上述した穿刺針1の背面刃面部15と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本実施形態の先端部103の外形について説明する。図7及び図8に示すように、本実施形態の先端部103は、中心軸線方向Aと直交する断面が扁平状の外形を有する。
穿刺針101の先端部103は、図6(a)の正面視における幅方向(図6(a)では上下方向)が長軸方向C1、図6(b)の側面視における幅方向(図6(b)では上下方向)が短軸方向C2、となるオーバル形状の断面外形を有している。ここで言うオーバル形状とは、例えば、楕円形状、長円形状、卵形状などである。更に、穿刺針101の先端部103の外周面において、長軸方向C1の長さは、中心軸線方向Aの先端側に向かうにつれて漸増する。換言すれば、図6(a)に示すように、先端部103の長軸方向C1の幅S3は、本体部2と連続する位置から先端側に向かって広くなる。
より具体的に、穿刺針101の先端部103の外周面は、先端部103を短軸方向C2に対向して見た正面視(図6(a)参照)において、中心軸線方向Aで先端側に向かうにつれて長軸方向C1における幅S3が漸増するテーパー部103aを有している。このテーパー部103aの幅S3は、中心軸線方向Aにおいて、本体部2と連続する位置から中心軸線方向Aの先端側に向かうにつれて漸増し、第1刃面部105の外縁及び第2刃面部106の外縁と交わる位置まで漸増し続ける。逆に言えば、先端部103の長軸方向C1における幅S3は、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部105及び第2刃面部106がある位置で最大となり、そこから中心軸線方向Aの基端側に向かって漸減していく。
ここで、針先108は、長軸方向C1の一端側ではなく、短軸方向C2の一端側に形成されている。このようにすることで、図8(a)及び図8(b)に示す第1刃縁121及び第2刃縁122において断面角度γ6、γ7が所定角度(例えば60°)以下となる部分(以下、「切れ刃」と記載する。)の長さを長く確保することができる。また、直進性を向上させることができる。更に、切れ刃を鋭くでき、穿刺し易くなる。本実施形態の断面角度とは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部105及び第2刃面部106それぞれと、背面刃面部115と、がなす角度を意味している。このように、断面角度が所定角度(例えば60°)以下となる切れ刃は、穿刺時に、皮膚を切り裂くことができる。したがって、このような切れ刃を長く確保することにより、切れ刃の長軸方向C1の幅も広くすることができる。その結果、穿刺針101の穿刺時において患者が感じる痛みを軽減することができる。
ここで、断面外形がオーバル形状となる先端部103の長軸O1を、長軸方向C1の幅S3が最大となる位置で規定する。更に、断面外形がオーバル形状となる先端部103の短軸O2を、短軸方向C2の幅が最大となる位置で規定する。本実施形態の先端部103の短軸方向C2の幅は、本体部2と連続する位置で最大となり、本体部2の直径と等しい。この場合に、長軸O1及び短軸O2の位置は、図7、図8(a)~図8(e)に示す位置となる。図8(a)~図8(e)に示すように、中心平面Xは、断面外形がオーバル形状となる先端部103の短軸O2を含む。先端部103の長軸O1及び短軸O2を上記のように規定した場合に、長軸O1と短軸O2の交点である中心位置O3は、図8(a)~図8(e)に示すように、本体部2の中心軸線Oに対して、先端部103の短軸方向C2の一方側に偏っている。より具体的に、中心位置O3は、本体部2の中心軸線Oに対して、背面刃面104b側に偏っている。更に、図8(a)~図8(e)に示すように、本実施形態では、先端部103の中心位置O3の長軸方向C1における位置と、本体部2の中心軸線Oの長軸方向C1における位置とが、一致している。
このように、扁平状の先端部103の中心位置O3を、本体部2の中心軸線Oよりも背面刃面104b側に偏心させることで、扁平状の先端部103により切れ刃を長く確保しつつ、上述の背面刃面部115による作用効果をも得ることができる。上述の背面刃面部115による作用効果とは、穿刺針101を生体表面に沿うように寝かせた状態で穿刺し、医療従事者による操作性を向上させることである。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態としての穿刺針201について説明する。図9は、一実施形態としての穿刺針201の本体部2及び先端部203を示す図である。具体的に、図9(a)は、穿刺針201の本体部2及び先端部203の正面図、図9(b)は、穿刺針201の本体部2及び先端部203の側面図、図9(c)は、穿刺針201の本体部2及び先端部203の背面図を示す。図9(d)は、穿刺針201の本体部2及び先端部203の斜視図である。また、図10(a)は、図9(a)に示す穿刺針201の先端部203及びその近傍を拡大した拡大正面図である。図10(b)は、図9(b)に示す穿刺針201の先端部203及びその近傍を拡大した拡大側面図である。
また、図11は、穿刺針201の先端視を示す図である。また、図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)は、それぞれ図10(a)におけるXI-XI断面図、XII-XII断面図、XIII-XIII断面図、XIV-XIV断面図、XV-XV断面図である。
図9~図12に示す穿刺針201は、図5~図8に示す穿刺針101と比較して、背面刃面が2つの刃面部により構成されている点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、ここでは、穿刺針201のうち、上述した穿刺針101と共通する点については基本構成のみを説明し、上記相違点について主に説明する。
穿刺針201は、棒状の本体部2と、この本体部2に連続する先端部203と、を備える。先端部203は、本体部2の先端側に連続している。先端部203には、刃面204が形成されている。先端部203の刃面204は、正面刃面204aと、背面刃面204bと、を備える。
図9~図12に示すように、正面刃面204aは、第1刃面部205、第2刃面部206、及び、第3刃面部207、を備える。
第1刃面部205及び第2刃面部206は、少なくとも針先208で交わる。より具体的に、本実施形態の第1刃面部205及び第2刃面部206は、互いが交差する稜線により針先208を一端とする正面刃縁209を形成している。
本実施形態の第3刃面部207は、第1刃面部205及び第2刃面部206の両方の刃面部の基端側に連続している。第1刃面部205及び第3刃面部207は、互いが交差する稜線により尾根部214を形成している。また、第2刃面部206及び第3刃面部207についても、互いが交差する稜線により尾根部214を形成している。
ここで、本実施形態の背面刃面204bは、互いが交差する稜線により針先208を一端とする背面刃縁216を形成する第4刃面部217及び第5刃面部218を備える。本実施形態の背面刃縁216は、中心平面X(図12参照)上に位置する。
第4刃面部217は、第1刃面部205と交差する稜線により針先208を一端とする第1刃縁221を形成している。また、第5刃面部218は、第2刃面部206と交差する稜線により針先208を一端とする第2刃縁222を形成している。このような第4刃面部217及び第5刃面部218により背面刃面204bを構成すれば、穿刺針201の直進性を高めることができる。更に、背面刃縁216が形成されるため、穿刺針201の穿刺時に、背面刃縁216が皮膚を切り裂き、患者の痛みを軽減することができる。
ここで、穿刺針201の側面視(図9(b)、図10(b)参照)において、第3刃面部207の延長線Lは、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。図9(b)、図10(b)に示す側面視では、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち、第2刃面部206が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、図9(b)、図10(b)に示す側面視において、第3刃面部207の延長線Lは、第2刃面部206と交差している。
このように、穿刺針201の側面視(図9(b)、図10(b)参照)において、第3刃面部207の延長線Lが、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する構成とすることで、同側面視での第3刃面部207の延長線が、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差しない構成と比較して、刃先角度αの小さい穿刺針201が実現し易くなる。本実施形態の刃先角度αは、穿刺針201の側面視(図9(b)、図10(b)参照)において、正面刃面204aの正面刃縁209と、背面刃面204bの背面刃縁216と、が針先208にて交わる角度を意味している。
これにより、穿刺針201では、上述した穿刺針1(図1等参照)及び穿刺針101(図5等参照)と同様、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成が実現し易い。
本実施形態の穿刺針201では、図9(b)及び図10(b)に示す側面と反対側の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、反対側面の側面視において、第3刃面部207の延長線Lは、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。反対側面の側面視では、第1刃面部205及び第2刃面部206のうち、第1刃面部205が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、反対側面の側面視において、第3刃面部207の延長線Lは、第1刃面部205と交差している。
また、本実施形態では、穿刺針201の側面視(図9(b)、図10(b)参照)において、第3刃面部207の先端が、中心軸線Oまで到達している。特に、本実施形態では、第3刃面部207が、同側面視で、中心軸線Oと交差している。
図12(a)は、図10(a)のXI-XI断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて正面刃縁209が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図12(a)に示すように、図10(a)のXI-XI断面において、正面刃面204aの第1刃面部205及び第2刃面部206それぞれは、中心平面Xに対して鋭角の角度θ11だけ傾斜して延在している。また、図12(a)に示すように、図10(a)のXI-XI断面において、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218それぞれは、中心平面Xに対して鋭角のδ11だけ傾斜して延在している。
図12(b)は、図10(a)のXII-XII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口211がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図12(b)は、正面刃面204aの第1刃面部205及び第2刃面部206、並びに、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218、を含む位置での断面である。更に、図12(b)は、第1刃面部205及び第4刃面部217により形成される第1刃縁221、並びに、第2刃面部206及び第5刃面部218により形成される第2刃縁222、を含む位置での断面である。
図12(b)に示すように、図10(a)のXII-XII断面において、第1刃面部205及び第2刃面部206それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ12は、図12(a)の角度θ11と等しい。また、図12(b)に示すように、図10(a)のXII-XII断面において、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度δ12は、図12(a)の角度δ11と等しい。
図12(c)は、図10(a)のXIII-XIII断面、すなわち、上述のXII-XII断面よりも基端側であり、中心軸線方向Aにおいて先端開口211がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図12(c)は、正面刃面204aの第1刃面部205及び第2刃面部206を含む位置での断面である。更に、図12(c)は、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218を含まない位置での断面である。
図12(c)に示すように、図10(a)のXIII-XIII断面において、第1刃面部205及び第2刃面部206それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ13は、図12(a)に示す角度θ11、及び、図12(b)に示す角度θ12と等しい。
図12(d)は、図10(a)のXIV-XIV断面、すなわち、上述のXIII-XIII断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図12(d)は、正面刃面204aの第1刃面部205、第2刃面部206及び第3刃面部207を含む位置での断面である。その一方で、図12(d)は、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218を含まない位置での断面である。
図12(d)に示すように、図10(a)のXIV-XIV断面において、第1刃面部205及び第2刃面部206それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ14は、角度θ11(図12(a)参照)、角度θ12(図12(b)参照)及び角度θ13(図12(c)参照)と等しい。また、図12(d)に示すように、図10(a)のXIV-XIV断面において、第3刃面部207は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図10(a)におけるXIV-XIV断面において、第3刃面部207の中心平面Xに対する角度τ14は略90°である。
図12(e)は、図10(a)のXV-XV断面、すなわち、上述のXIV-XIV断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図12(e)は、正面刃面204aの第3刃面部207を含む位置での断面である。その一方で、図12(e)は、正面刃面204aの第1刃面部205及び第2刃面部206、並びに、背面刃面204bの第4刃面部217及び第5刃面部218、を含まない位置での断面である。
図12(e)に示すように、図10(a)のXV-XV断面において、第3刃面部207は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図10(a)におけるXV-XV断面において、第3刃面部207の中心平面Xに対する角度τ15は、図12(d)に示す角度τ14と等しく、略90°である。
以上のように、中心軸線方向Aに直交する断面において、第1刃面部205及び第2刃面部206の中心平面Xに対する角度θ(図12では一例としてθ11~θ14を示す。)は、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。また、中心軸線方向Aに直交する断面において、第4刃面部217及び第5刃面部218の中心平面Xに対する角度δ(図12では一例としてδ11及びδ12を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
更に、中心軸線方向Aに直交する断面において、第3刃面部207の中心平面Xに対する角度τ(図12では一例としてτ14及びτ15を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。
本実施形態の先端部203の外形については、上述した第2実施形態の先端部103と同様であるため、ここでは説明を省略する。但し、図12(a)及び図12(b)に示すように、第1刃縁221及び第2刃縁222の位置での断面角度γ11、γ12については、上述した第2実施形態の背面刃面部115を採用した場合の断面角度γ6(図8(a)参照)、γ7(図8(b)参照)と比較して、大きくなり易い。したがって、切れ刃の長さの観点では、第2実施形態の穿刺針101の背面刃面104bの形状は、本実施形態の穿刺針201の背面刃面204bの形状よりも好ましい。本実施形態の断面角度とは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部205と第4刃面部217とがなす角度、及び、第2刃面部206と第5刃面部218とがなす角度、を意味している。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態としての穿刺針301について説明する。図13は、一実施形態としての穿刺針301の本体部2及び先端部303を示す図である。具体的に、図13(a)は、穿刺針301の本体部2及び先端部303の正面図、図13(b)は、穿刺針301の本体部2及び先端部303の側面図、図13(c)は、穿刺針301の本体部2及び先端部303の背面図を示す。図13(d)は、穿刺針301の本体部2及び先端部303の斜視図である。また、図14(a)は、図13(a)に示す穿刺針301の先端部303及びその近傍を拡大した拡大正面図である。図14(b)は、図13(b)に示す穿刺針301の先端部303及びその近傍を拡大した拡大側面図である。
また、図15は、穿刺針301の先端視を示す図である。また、図16(a)、図16(b)、図16(c)、図16(d)は、それぞれ図14(a)におけるXVI-XVI断面図、XVII-XVII断面図、XVIII-XVIII断面図、XIX-XIX断面図である。
図13~図16に示す穿刺針301は、図5~図8に示す穿刺針101及び図9~図12に示す穿刺針201と比較して、背面刃面が設けられていない点で相違し、その他の構成は共通する。したがって、ここでは、穿刺針301のうち、上述した穿刺針1、穿刺針101及び穿刺針201と共通する点については基本構成のみを説明し、上記相違点について主に説明する。
穿刺針301は、棒状の本体部2と、この本体部2に連続する先端部303と、を備える。先端部303は、本体部2の先端側に連続している。先端部303には、刃面304が形成されている。先端部303の刃面304は、正面刃面304aのみにより構成されている。正面刃面304aの裏側は、本体部2から段差なく連続して延在する周面により構成されている。
図13~図16に示すように、正面刃面304aは、第1刃面部305、第2刃面部306、及び、第3刃面部307、を備える。
第1刃面部305及び第2刃面部306は、少なくとも針先308で交わる。より具体的に、本実施形態の第1刃面部305及び第2刃面部306は、互いが交差する稜線により針先308を一端とする正面刃縁309を形成している。
本実施形態の第3刃面部307は、第1刃面部305及び第2刃面部306の両方の刃面部の基端側に連続している。第1刃面部305及び第3刃面部307は、互いが交差する稜線により尾根部314を形成している。また、第2刃面部306及び第3刃面部307についても、互いが交差する稜線により尾根部314を形成している。
ここで、穿刺針301の側面視(図13(b)、図14(b)参照)において、第3刃面部307の延長線Lは、第1刃面部305及び第2刃面部306のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。図13(b)、図14(b)に示す側面視では、第1刃面部305及び第2刃面部306のうち、第2刃面部306が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、図13(b)、図14(b)に示す側面視において、第3刃面部307の延長線Lは、第2刃面部306と交差している。
これにより、穿刺針301では、上述した穿刺針1(図1等参照)、穿刺針101(図5等参照)、及び穿刺針201(図9等参照)と同様、刃面長H及び刃先角度αを共に小さくする構成が実現し易い。本実施形態の刃先角度αは、穿刺針301の側面視(図13(b)、図14(b)参照)において、正面刃面304aの正面刃縁309と、正面刃面304aの裏側の周面と、が針先308にて交わる角度を意味している。
本実施形態の穿刺針301では、図13(b)及び図14(b)に示す側面と反対側の反対側面においても、上記同様の関係が成立している。具体的に、反対側面の側面視において、第3刃面部307の延長線Lは、第1刃面部305及び第2刃面部306のうち同側面視で視認可能な刃面部と交差する。反対側面の側面視では、第1刃面部305及び第2刃面部306のうち、第1刃面部305が、上述の視認可能な刃面部に該当する。したがって、反対側面の側面視において、第3刃面部307の延長線Lは、第1刃面部305と交差している。
また、本実施形態では、穿刺針301の側面視(図13(b)、図14(b)参照)において、第3刃面部307の先端が、中心軸線Oまで到達している。特に、本実施形態では、第3刃面部307が、同側面視で、中心軸線Oと交差している。
図16(a)は、図14(a)のXVI-XVI断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて正面刃縁309が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図16(a)に示すように、図14(a)のXVI-XVI断面において、正面刃面304aの第1刃面部305及び第2刃面部306それぞれは、中心平面Xに対して鋭角の角度θ16だけ傾斜して延在している。
図16(b)は、図14(a)のXVII-XVII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口311がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図16(b)は、正面刃面304aの第1刃面部305及び第2刃面部306を含む位置での断面である。更に、図16(b)は、正面刃面304aの第3刃面部307を含まない位置での断面である。
図16(b)に示すように、図14(a)のXVII-XVII断面において、第1刃面部305及び第2刃面部306それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ17は、図16(a)の角度θ16と等しい。
図16(c)は、図14(a)のXVIII-XVIII断面、すなわち、上述のXVII-XVII断面よりも基端側であり、中心軸線方向Aにおいて先端開口311がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図16(c)は、正面刃面304aの第1刃面部305、第2刃面部306及び第3刃面部307を含む位置での断面である。
図16(c)に示すように、図14(a)のXVIII-XVIII断面において、第1刃面部305及び第2刃面部306それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ18は、図16(a)に示す角度θ16、及び、図16(b)に示す角度θ17と等しい。また、図16(c)に示すように、図14(a)のXVIII-XVIII断面において、第3刃面部307は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図14(a)におけるXVIII-XVIII断面において、第3刃面部307の中心平面Xに対する角度τ18は略90°である。
図16(d)は、図14(a)のXIX-XIX断面、すなわち、上述のXVIII-XVIII断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図16(d)は、正面刃面304aの第3刃面部307のみを含む位置での断面である。
図16(d)に示すように、図14(a)のXIX-XIX断面において、第3刃面部307は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図14(a)におけるXIX-XIX断面において、第3刃面部307の中心平面Xに対する角度τ19は、図16(c)に示す角度τ18と等しく、略90°である。
以上のように、中心軸線方向Aに直交する断面において、第1刃面部305及び第2刃面部306の中心平面Xに対する角度θ(図16では一例としてθ16~θ18を示す。)は、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
また、中心軸線方向Aに直交する断面において、第3刃面部307の中心平面Xに対する角度τ(図16では一例としてτ18及びτ19を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。
本実施形態の先端部303の外形については、上述した第2実施形態の先端部103及び第3実施形態の先端部203と同様であるため、ここでは説明を省略する。本実施形態の穿刺針301には背面刃面が形成されていないが、切れ刃の長さの観点では、第3実施形態の穿刺針201の背面刃面204bと同様の背面刃面を設けることが好ましく、第2実施形態の穿刺針101の背面刃面104bと同様の背面刃面を設けることが、より好ましい。
本開示に係る穿刺針は、上述した第1実施形態~第4実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述した第2実施形態の穿刺針101、第3実施形態の穿刺針201、及び、第4実施形態の穿刺針301では、中心軸線方向Aと直交する先端部103、203及び303の断面の外形が扁平状であり、その中心位置O3(図8等参照)が本体部2の中心軸線Oよりも短軸方向C2の一方側に偏って配置されているが、中心位置O3が本体部2の中心軸線O上にあってもよい。このように先端部を扁平状の外形とすることで、扁平状の外形としない場合と比較して、切れ刃を長く確保することができる。また、直進性を向上させることができる。更に、切れ刃を鋭くでき、穿刺し易くなる。但し、第2実施形態~第4実施形態のように中心位置O3を偏心させることが好ましい。このようにすることで、上述したように切れ刃を長く確保しつつ、更に、穿刺針101、及び301を寝かせて穿刺し易い。そのため、穿刺針101、201及び301の医療従事者による操作性を向上させることができる。
また、第1実施形態~第4実施形態の構成要素を適宜組み合わせて、別の穿刺針とすることも本開示の技術的範囲に属する。
最後に、別の穿刺針401について説明する。
図17は、穿刺針401の本体部402及び先端部403を示す図である。具体的に、図17(a)は、穿刺針401の本体部402及び先端部403の正面図、図17(b)は、穿刺針401の本体部402及び先端部403の側面図、図17(c)は、穿刺針401の本体部402及び先端部403の背面図を示す。図17(d)は、穿刺針401の本体部402及び先端部403の斜視図である。また、図18(a)は、図17(a)に示す穿刺針401の先端部403及びその近傍を拡大した拡大正面図である。図18(b)は、図17(b)に示す穿刺針401の先端部403及びその近傍を拡大した拡大側面図である。
図17(a)~図17(d)、図18(a)、図18(b)に示すように、穿刺針401は、棒状の本体部402と、この本体部402に連続する先端部403と、を備える。本体部402は、中心軸線方向Aと直交する断面が略円形状の外形を有する。「中心軸線方向A」とは、本体部402の中心軸線Oに平行な方向を意味する。本体部402は、中心軸線方向Aと直交する断面の外形が略円形状となる管体である。穿刺針401は、本体部402から先端部403の先端開口411まで連通する中空部410を区画している。先端部403は、本体部402の先端側に連続している。先端部403には、刃面404が形成されている。「先端側」とは、中心軸線方向Aにおいて、穿刺針401の針先408とは反対側の一端から、穿刺針401の針先408がある他端に向かう方向を意味する。逆に、「基端側」とは、中心軸線方向Aにおいて、穿刺針401の針先408がある上記他端から、穿刺針401の針先408とは反対側の上記一端に向かう方向を意味する。
先端部403の刃面404は、正面刃面404aと、この正面刃面404aの裏側に形成されている背面刃面404bと、を備える。
図17(a)~図17(d)、図18(a)、図18(b)に示すように、正面刃面404aは、複数の刃面部により構成されている。より具体的に、正面刃面404aは、第1刃面部405、第2刃面部406、及び、第3刃面部407、を備える。
「刃面」とは、中心軸線方向Aに対して傾斜する一又は複数の刃面部からなる。「刃面部」とは、中心軸線方向Aに対して、穿刺針の先端部の外周面の母線よりも大きく傾斜する一面により構成される。具体的に、本体部402及び先端部403の外周面は、中心軸線方向Aの位置によらず、径方向Bにおける中心軸線Oとの距離が一定である。つまり、図18(b)に示すように、先端部403の外周面の母線Uは、中心軸線方向Aに平行である。そのため、刃面部は、中心軸線方向Aで先端側に向かうにつれて中心軸線Oに近づくように、中心軸線方向Aに対して傾斜する一面であればよい。なお、本体部及び先端部は、中心軸線方向Aで先端側に向かうにつれて中心軸線Oに近づくように傾斜するテーパー状の外周面を備えてもよい。かかる場合には、先端部の外周面の母線は、中心軸線方向Aに対して傾斜する。そのため、刃面部は、中心軸線方向Aに対して傾斜すると共に、刃面部の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、先端部3の外周面の母線の中心軸線方向Aに対する傾斜角度よりも大きくなる。
第1刃面部405及び第2刃面部406は、少なくとも針先408で交わる。より具体的に、第1刃面部405及び第2刃面部406は、互いが交差する稜線により針先408を一端とする正面刃縁409を形成している。「針先」とは、中心軸線方向Aにおける穿刺針401の先端を意味すると共に、刃面404の先端である刃先を意味する。
第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれは、一面により構成されていれば、曲面であっても平面であってもよい。但し、第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれは、一平面により構成されている。第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれを一平面により構成することで、正面刃面404aの構成を簡素化できる。
第1刃面部405は、その基端側で、第3刃面部407と連続している。また、第2刃面部406は、その基端側で、第3刃面部407と連続している。すなわち、第3刃面部407は、第1刃面部405及び第2刃面部406の両方の刃面部の基端側に連続している。
また、第3刃面部407は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。第3刃面部407は、刃面404の基端を構成している。換言すれば、第3刃面部407は、その基端側で、本体部402の筒状の外周面と連続している。したがって、第3刃面部407は、その先端側で、上述したように第1刃面部405及び第2刃面部406と連続すると共に、その基端側で、本体部402の筒状の外周面と連続している。
このように、正面刃面404aは、連続する複数の刃面部により構成されている。
正面刃面404aの内縁は、第1刃面部405の内縁、第2刃面部406の内縁、及び、第3刃面部407の内縁、により構成されている。この正面刃面404aの内縁は、中空部410の一端である先端開口411を区画している。
正面刃面404aの外縁は、第1刃面部405の外縁、第2刃面部406の外縁、及び、第3刃面部407の外縁、により構成されている。正面刃面404aの外縁は、正面刃面404aが形成されている刃面領域Tを画定している。したがって、正面刃面404aの外縁の中心軸線方向Aにおける最大長さが、中心軸線方向Aにおける刃面の長さH(以下、「刃面長H」と記載する。)となる。
背面刃面404bは、背面刃面部415のみから構成されている。背面刃面部415を備えることにより、穿刺針401の直進性を向上させることができる。
また、背面刃面404bを設けることで、後述する先端視(図19参照)において、針先408の位置を、本体部402の外周面の内側にすることができる。このようにすることで、穿刺針401は、内針及び外針からなる留置針の内針として利用し易くなる。つまり、内針としての穿刺針401が樹脂製の外針に対して抜き差しされても、穿刺針401の針先408は、針の内面に接触し難い。その結果、外針は、内針としての穿刺針401によって損傷又は破断し難くなる。
より具体的に、背面刃面部415は、中心軸線方向Aに対して傾斜する一平面により構成されている。また、背面刃面部415は、第1刃面部405と交差する稜線により針先408を一端とする第1刃縁421を形成している。更に、背面刃面部415は、第2刃面部406と交差する稜線により針先408を一端とする第2刃縁422を形成している。
正面刃面404aの第3刃面部407に直交する仮想平面は、背面刃面404bの背面刃面部415に直交する仮想平面と平行する。この点は後述する(図20の「中心平面X」参照)。
ここで、第3刃面部407を構成する一平面が一直線に見える側面視(図17(b)、図18(b)参照)において、第3刃面部407の延長線Lが、第2刃面部406と交差しない。
本体部402及び先端部403は一体で形成されている。本体部402及び先端部403の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料を使用することができる。
図19は、穿刺針401の針先408よりも先端側の位置を視点として、中心軸線方向Aにおいて基端側に向かって針先408を見た図である。以下、説明の便宜上、図19で示す穿刺針401を「穿刺針401の先端視」と記載する。また、図20(a)、図20(b)、図20(c)、図20(d)、図20(e)は、それぞれ図18(a)におけるXXI-XXI断面図、XXII-XXII断面図、XXIII-XXIII断面図、XXIV-XXIV断面図、XXV-XXV断面図である。図19、図20に示す符号「X」は、本体部402の中心軸線O及び針先408を含む1つの仮想平面である。ここでは「中心平面X」と呼ぶ。中心平面Xは、針先408のみならず、正面刃縁409をも含む平面である。また、中心平面Xは、正面刃面404aの第3刃面部407、及び、背面刃面404bの背面刃面部415、の両方に直交する平面である。更に、本体部402及び先端部403は、中心平面Xを挟んで対称の構造を有している。図19、図20では、刃面部間の稜線を実線により示している。
図20(a)は、図18(a)のXXI-XXI断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて正面刃縁409が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図20(a)に示すように、図18(a)のXXI-XXI断面において、正面刃面404aの第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれは、中心平面Xに対して鋭角の角度θ21だけ傾斜して延在している。また、図20(a)に示すように、図18(a)のXXI-XXI断面において、背面刃面404bの背面刃面部415は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXI-XXI断面において、背面刃面部415の中心平面Xに対する角度δ21は、略90°である。
図20(b)は、図18(a)のXXII-XXII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口411がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図20(b)は、正面刃面404aの第1刃面部405及び第2刃面部406、並びに、背面刃面404bの背面刃面部415、を含む位置での断面である。更に、図20(b)は、第1刃面部405及び背面刃面部415により形成される第1刃縁421、並びに、第2刃面部406及び背面刃面部415により形成される第2刃縁422、を含む位置での断面である。
図20(b)に示すように、図18(a)のXXII-XXII断面において、第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ22は、図20(a)に示す角度θ21と等しい。また、図20(b)に示すように、図18(a)のXXII-XXII断面において、背面刃面404bの背面刃面部415は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXII-XXII断面において、背面刃面部415の中心平面Xに対する角度δ22は、図20(a)に示す角度δ21と等しく、略90°である。
図20(c)は、図18(a)のXXIII-XXIII断面、すなわち、上述のXXII-XXII断面よりも基端側であり、中心軸線方向Aにおいて先端開口411がある位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図20(c)は、正面刃面404aの第1刃面部405、第2刃面部406及び第3刃面部407、並びに、背面刃面404bの背面刃面部415、を含む位置での断面である。更に、図20(c)は、第1刃面部405及び背面刃面部415により形成される第1刃縁421、並びに、第2刃面部406及び背面刃面部415により形成される第2刃縁422、を含まない位置での断面である。
図20(c)に示すように、図18(a)のXXIII-XXIII断面において、第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれの中心平面Xに対する鋭角の角度θ23は、図20(a)に示す角度θ21、及び、図20(b)に示す角度θ22と等しい。また、図20(c)に示すように、図18(a)のXXIII-XXIII断面において、第3刃面部407は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXIII-XXIII断面において、第3刃面部407の中心平面Xに対する角度τ23は、略90°である。更に、図20(c)に示すように、図18(a)のXXIII-XXIII断面において、背面刃面404bの背面刃面部415は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXIII-XXIII断面において、背面刃面部415の中心平面Xに対する角度δ23は、図20(a)に示す角度δ21、及び、図20(b)に示す角度δ22、と等しく、略90°である。
図20(d)は、図18(a)のXXIV-XXIV断面、すなわち、上述のXXIII-XXIII断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図20(d)は、正面刃面404aの第1刃面部405及び第2刃面部406を含まない位置での断面である。図20(d)は、正面刃面404aの第3刃面部407と、背面刃面404bの背面刃面部415を含む位置での断面である。
図20(d)に示すように、図18(a)のXXIV-XXIV断面において、正面刃面404aの第3刃面部407は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXIV-XXIV断面において、第3刃面部407の中心平面Xに対する角度τ24は、図20(c)に示すτ23と等しく略90°である。また、図20(d)に示すように、図18(a)のXXIV-XXIV断面において、背面刃面404bの背面刃面部415は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXIV-XXIV断面において、背面刃面部415の中心平面Xに対する角度δ24は、図20(a)に示す角度δ21、図20(b)に示す角度δ22、及び、図20(c)に示す角度δ23と等しく、略90°である。
図20(e)は、図18(a)のXXV-XXV断面、すなわち、上述のXXIV-XXIV断面よりも基端側の位置での中心軸線方向Aと直交する断面である。また、図20(e)は、正面刃面404aの第3刃面部407のみを含む位置での断面である。
図20(e)に示すように、図18(a)のXXV-XXV断面において、第3刃面部407は、中心平面Xに対して略直交して延在している。すなわち、図18(a)におけるXXV-XXV断面において、第3刃面部407の中心平面Xに対する角度τ25は、図20(c)に示すτ23、及び、図20(d)に示すτ24と等しく略90°である。
以上のように、中心軸線方向Aに直交する断面において、第1刃面部405及び第2刃面部406の中心平面Xに対する角度θ(図20では一例としてθ21~θ23を示す。)は、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
また、中心軸線方向Aに直交する断面において、第3刃面部407の中心平面Xに対する角度τ(図20では一例としてτ23、τ24及びτ25を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。更に、中心軸線方向Aに直交する断面において、背面刃面部415の中心平面Xに対する角度δ(図20では一例としてδ21~δ24を示す。)についても、中心軸線方向Aの位置によらず一定であり、その角度は略90°である。換言すれば、穿刺針401において、中心平面Xは、第3刃面部407及び背面刃面部415の両方に対して直交する仮想平面である。
このように、穿刺針401は、上述した正面刃面404aのみならず、正面刃面404aの裏側に形成されている背面刃面404bを備える。そして、背面刃面404bは、中心軸線方向Aに対して傾斜する一面である1つの背面刃面部415のみにより構成されている。このような構成とすることで、互いが交差する稜線により針先208を一端とする背面刃縁216を形成する2つの背面刃面部(第4刃面部217及び第5刃面部218)により構成される背面刃面204b(図9~図12参照)と比較して、背面刃縁216が形成されないため、刃先角度αを薄くすることができる。「刃先角度α」とは、穿刺針401の側面視(図17(b)、図18(b)参照)における針先408の位置での角度を意味する。そのため、穿刺針401の生体への穿刺動作を、穿刺針401を生体表面に沿うように、寝かせた状態としながら実施し易くなる。これにより、穿刺針401を生体に穿刺する際に、穿刺針401自体によって穿刺位置が視認し難くなることを抑制できる。その結果、穿刺針401の医療従事者による操作性を向上させることができる。
背面刃面部415の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、3°~20°の範囲内で設定されることが好ましい。3°以上とすることで、穿刺針401の直進性を、より高めることができると共に、20°以下とすることで上述した医療従事者による操作性を、より高めることができる。更に、穿刺針401の直進性の向上及び医療従事者による操作性の向上の観点から、背面刃面部415の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、3°~15°の範囲とすることがより好ましく、3°~10°の範囲とすることが特に好ましい。
次に、先端部403の外形について説明する。図19及び図20に示すように、先端部403は、中心軸線方向Aと直交する断面が扁平状の外形を有する。
穿刺針401の先端部403は、図18(a)の正面視における幅方向(図18(a)では上下方向)が長軸方向C1、図18(b)の側面視における幅方向(図18(b)では上下方向)が短軸方向C2、となるオーバル形状の断面外形を有している。ここで言うオーバル形状とは、例えば、楕円形状、長円形状、卵形状などである。更に、穿刺針401の先端部403の外周面において、長軸方向C1の長さは、中心軸線方向Aの先端側に向かうにつれて漸増する。換言すれば、図18(a)に示すように、先端部403の長軸方向C1の幅S3は、本体部402と連続する位置から先端側に向かって広くなる。
より具体的に、穿刺針401の先端部403の外周面は、先端部403を短軸方向C2に対向して見た正面視(図18(a)参照)において、中心軸線方向Aで先端側に向かうにつれて長軸方向C1における幅S3が漸増するテーパー部403aを有している。このテーパー部403aの幅S3は、中心軸線方向Aにおいて、本体部402と連続する位置から中心軸線方向Aの先端側に向かうにつれて漸増し、第1刃面部405の外縁及び第2刃面部406の外縁と交わる位置まで漸増し続ける。逆に言えば、先端部403の長軸方向C1における幅S3は、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部405及び第2刃面部406がある位置で最大となり、そこから中心軸線方向Aの基端側に向かって漸減していく。
ここで、針先408は、長軸方向C1の一端側ではなく、短軸方向C2の一端側に形成されている。このようにすることで、図20(a)及び図20(b)に示す第1刃縁421及び第2刃縁422の位置での断面角度γ21、γ22が所定角度(例えば60°)以下となる切れ刃の長さを長く確保することができる。断面角度とは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部405及び第2刃面部406それぞれと、背面刃面部415と、がなす角度を意味している。このように、断面角度が所定角度(例えば60°)以下となる切れ刃は、穿刺時に、皮膚を切り裂くことができる。したがって、このような切れ刃を長く確保することにより、切れ刃の長軸方向C1の幅も広くすることができる。その結果、穿刺針401の穿刺時において患者が感じる痛みを軽減することができる。
ここで、断面外形がオーバル形状となる先端部403の長軸O1を、長軸方向C1の幅S3が最大となる位置で規定する。更に、断面外形がオーバル形状となる先端部403の短軸O2を、短軸方向C2の幅が最大となる位置で規定する。本実施形態の先端部403の短軸方向C2の幅は、本体部402と連続する位置で最大となり、本体部402の直径と等しい。この場合に、長軸O1及び短軸O2の位置は、図19、図20(a)~図20(e)に示す位置となる。図20(a)~図20(e)に示すように、中心平面Xは、断面外形がオーバル形状となる先端部403の短軸O2を含む。先端部403の長軸O1及び短軸O2を上記のように規定した場合に、長軸O1と短軸O2の交点である中心位置O3は、図20(a)~図20(e)に示すように、本体部402の中心軸線Oに対して、先端部403の短軸方向C2の一方側に偏っている。より具体的に、中心位置O3は、本体部402の中心軸線Oに対して、背面刃面404b側に偏っている。更に、図20(a)~図20(e)に示すように、先端部403の中心位置O3の長軸方向C1における位置と、本体部402の中心軸線Oの長軸方向C1における位置とが、一致している。
このように、扁平状の先端部403の中心位置O3を、本体部402の中心軸線Oよりも背面刃面404b側に偏心させることで、扁平状の先端部403により切れ刃を長く確保しつつ、上述の背面刃面部415による作用効果をも得ることができる。上述の背面刃面部415による作用効果とは、穿刺針401を生体表面に沿うように寝かせた状態で穿刺し、医療従事者による操作性を向上させることである。
図17~図20に示す穿刺針401では、中心軸線方向Aと直交する先端部403の断面の外形が扁平状であり、その中心位置O3(図20等参照)が本体部402の中心軸線Oよりも短軸方向C2の一方側に偏って配置されているが、中心位置O3が本体部402の中心軸線O上にあってもよい。但し、図20に示すように中心位置O3を偏心させることが好ましい。このようにすることで、上述したように、穿刺針401を寝かせて穿刺し易い。そのため、穿刺針401の医療従事者による操作性を向上させることができる。