本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
本実施の形態に係る住宅は、集合住宅の一住戸であるものとして説明する。集合住宅は、複数の独立した住戸を備えている。
図6に示されるように、集合住宅1には、たとえば1フロアに複数の住戸2a~2dが設けられており、各住戸2a~2dが1つの住宅を形成している。すなわち、集合住宅1は、複数の住宅を備えた1棟の建物である。集合住宅1は、複数階建ての建物(たとえばマンション)であってもよいし、1階建ての建物(たとえば長屋)であってもよい。
住戸2a~2dは、一方向に延びる共用廊下90に沿って並べられている。ここでは理解の容易のため、共用廊下90は東西方向に延び、各住戸の玄関は北側に設けられているものと仮定する。各住戸は、外壁91および戸境壁92によって囲まれた屋内空間と、外壁91よりも外側に配置された、屋外空間(半屋外空間)としてのバルコニーとを有している。各住戸は、少なくとも屋内空間の南側にバルコニーを有している。
図6に示した複数の住戸2a~2dのうち、たとえば西側(紙面左端)の角住戸2aを、本実施の形態に係る住宅10として、以下に説明する。なお、集合住宅は、1フロアに1つの住戸のみを有していてもよい。
(間取り例について)
図1を参照して、本実施の形態に係る住宅10の間取り例について説明する。なお、住宅10の屋内空間は、たとえば、南北および西側に位置する外壁91と、東側に位置する戸境壁92とにより取り囲まれている。以下の説明において、南北方向を縦方向、東西方向を横方向ともいう。
住宅10の屋内空間には、玄関扉11aを有する玄関11と、第1居室21と、第2居室22と、水回り領域40と、ウォークインクローゼット50と、第1通路61と、第2通路62とが配置されている。玄関11は、矩形状に区画された土間領域である。
第1居室21は、キッチン設備が設けられたキッチン領域31と、ダイニング領域32と、リビング領域33と、を一体的に含む部屋(LDK室)である。ダイニング領域32およびリビング領域33は、キッチン外領域34を構成する。キッチン設備には、調理装置や流し台を有するキッチンカウンター71が含まれる。
第1居室21は、最も広い部屋であり、家族(あるいは客人)が集い、寛ぐ公的な生活空間である。第1居室21は、南側のバルコニー12に沿って横方向に長く延びている。第1居室21は、バルコニー12への出入りを可能とするための掃出し窓35を有している。掃出し窓35は、たとえば、ダイニング領域32およびリビング領域33に面するように設けられている。
本実施の形態では、キッチン領域31が第1居室21の横方向中央部に配置されており、ダイニング領域32とリビング領域33との間に配置されている。ダイニング領域32は、たとえばキッチン領域31の東側に位置し、戸境壁92に隣接する。リビング領域33は、たとえばキッチン領域31の西側に配置され、外壁91に隣接する。
第2居室22は、キッチン設備を含まない部屋であり、たとえば寝室である。第2居室22は、北側に位置し、屋外に面する窓を有している。本実施の形態では、第2居室22は、北西の角に設けられたバルコニー13に隣接して設けられている。この場合、第2居室22は、バルコニー13への出入りを可能とするための掃出し窓36を有している。
ここで、第1居室21は、第1通路61および第2通路62の双方から入室できるように、第1通路61に連通する出入口21aと第2通路62に連通する出入口21bとを有している。同様に、第2居室22は、第1通路61および第2通路62の双方から入室できるように、第1通路61に連通する出入口22aと第2通路62に連通する出入口22bとを有している。
第1通路61および第2通路62は、縦方向に延び、互いに平行に配置されている。第2通路62は、玄関11に交差するように玄関11の西側に配置されている。本実施の形態において、第2通路62は、玄関ホール62aを含む、廊下である。これにより、居住者は、廊下である第2通路62から、第1居室21および第2居室22に出入りできる。
これに対し、第1通路61は、玄関11から離れて配置され、家事動線および身支度動線の一部が通る非居室空間である。家事動線および身支度動線については、後述する。
水回り領域40は、第1通路61と第2通路62との間に位置し、屋内空間の中央部に配置されている。水回り領域40は、洗面室41と浴室42とトイレ室43とを含む。洗面室41は、洗面台72に面する洗面スペース41aを含むとともに、浴室42の出入口42aに隣接する脱衣スペース41bを含む。また、洗面室41には、洗濯機を設置するための防水パン73が設けられており、洗面室41は、防水パン73に面する洗濯スペース41cをさらに含む。このように、本実施の形態における洗面室41は、洗濯室を兼ねた洗面洗濯室である。なお、洗面室41内において、これらのスペース41a~41cは部分的に重なっていてもよい。
ウォークインクローゼット50は、衣類を含む収納物を収納するための収納領域51と、収納領域51に隣接し、人が作業したり歩行できる作業領域52とを有している。ウォークインクローゼット50は、家族全員分の衣類を収納でき、また、その中で着替えや洗濯物に関する家事ができる程度の広さを有している。ウォークインクローゼット50は、住宅10の居住者共用のクローゼット(ファミリークローゼット)である。そのため、第2居室22には、クローゼットが設けられていないか、最小限の収納空間22cだけが設けられている。
ウォークインクローゼット50の配置については、図2および図3をさらに参照して説明する。図1および図2に示されるように、ウォークインクローゼット50は、第1居室21のキッチン外領域34に隣接して配置され、キッチン外領域34と連通する。すなわち、ウォークインクローゼット50は、第1居室21のキッチン外領域34との境界に設けられた出入口(第1出入口)53を有している。
本実施の形態において、ウォークインクローゼット50は、西側の外壁91と第1通路61との間に位置しており、キッチン外領域34のうちリビング領域33に隣接して配置されている。
図1および図3に示されるように、この出入口53は、第1居室21のリビング領域33との間の間仕切壁81に設けられた開口である。出入口53は、第1通路61との間の間仕切壁82に隣接して設けられている。出入口53の幅は、上記した第1居室21の出入口21a,21bの幅よりも大きく、たとえばその2倍以上である。出入口53は、リビング領域33との境界部の全幅に亘って設けられていてもよい。
典型的には、出入口53には開閉可能な建具53aが設けられる。なお、ウォークインクローゼット50は、北側において第2居室22と隣接していてもよいが、ウォークインクローゼット50の北側の壁84には開口がなく、この壁84の全幅に亘って収納領域51が設けられている。収納領域51は、出入口53横の間仕切壁81の裏側にも設けられていてもよい。
収納領域51は、複数の仕切板により区画された複数の収納空間を有している。複数の収納空間には、衣類をハンガーなどに掛けて吊るすためのポール、衣類等の収納物を置くための棚板、あるいは、衣類等の収納物を仕舞うための引き出し、などが設けられる。
図3(A)には、建具53aが全開状態のときに、リビング領域33から見たウォークインクローゼット50の内部空間が模式的に示されている。図3(B)には、建具53aが全閉状態のときに、ウォークインクローゼット50の内部空間が建具53aにより隠された状態が模式的に示されている。なお、図3(A)においては、図面が煩雑となるのを避けるために、ウォークインクローゼット50の背面の壁84に沿って設けられた収納空間の図示を省略している。
建具53aが全開状態のとき、ウォークインクローゼット50は、第1居室21のリビング領域33と一体的に連通する。ウォークインクローゼット50と第1居室21のリビング領域33とが一体的に連通した状態が、図2に示される。
図2および図3に示されるように、ウォークインクローゼット50の出入口53は床面93から天井面94までの高さを有している。そのため、建具53aが全開状態のときには、第1居室21とウォークインクローゼット50とにより、1つの大きな空間が形成される。なお、ウォークインクローゼット50の面積は、第1居室21のリビング領域33の面積と同程度かそれよりも少し小さくてよい。具体的には、たとえば5畳以上8畳以下の大きさであることが望ましい。
建具53aはたとえば引き戸で構成される。全閉状態においてもウォークインクローゼット50とリビング領域33とが完全に遮断されないように、建具53aは透光性を有することが望ましい。建具53aは、スクリーンウォールなどの間仕切開閉壁であってもよい。
なお、建具53aが全開状態の場合においても、リビング領域33からウォークインクローゼット50の内部空間をすっきりと見せるために、背面側の壁84に沿う収納領域51の前面にも、開閉可能な建具(図示せず)が設けられていてもよい。この建具は、たとえば木質の材料など、透光性を有さない材料でできていることが望ましい。
出入口53に設けられる建具53aは、引き戸以外の開閉部材(たとえば折り戸、開き戸など)で構成されてもよい。あるいは、建具53aに代えて、カーテンを吊るすためのカーテンレールが天井面94に設けられてもよい。あるいは、出入口53には、建具53aが設けられず、ウォークインクローゼット50と第1居室21のリビング領域33とが扉レスで常時連通していてもよい。
ウォークインクローゼット50は、第1通路61にも隣接して配置されており、第1通路61からも出入り可能となっている。すなわち、ウォークインクローゼット50は、第1通路61との境界に設けられた出入口(第2出入口)54をさらに有している。ウォークインクローゼット50の作業領域52は、2つの出入口53,54に連なって配置される。
この出入口54は、第1通路61との間の間仕切壁82に設けられた開口である。ウォークインクローゼット50の出入口54の幅は、リビング側の出入口53の幅よりも狭く、たとえば、第1居室21の出入口21a,21bの幅と同等である。出入口54には、開閉可能な建具54aが設けられる。建具54aは、たとえば引き戸、開き戸、あるいは折り戸などで構成される。建具54aは、透光性を有さなくてよい。
本実施の形態では、上述のように、互いに平行な第1通路61および第2通路62が、南側において第1居室21と接続し、北側において第2居室22と接続している。したがって、中央の水回り領域40を取り囲むように、第1居室21および第2居室22と、第1通路61および第2通路62とを通過する回遊動線M10が形成されている。回遊動線M10は、時計回りにおいて、第2通路62、第1居室21、第1通路61、第2居室22を順に通り、第2通路62に戻る動線である。
水回り領域40のうち、洗面室41は第1通路61に沿って設けられ、浴室42およびトイレ室43は第2通路62に沿って設けられている。トイレ室43の出入口43aは、廊下としての第2通路62に面して設けられる。浴室42は、たとえばトイレ室43の北隣に位置し、その出入口42aは洗面室41に面して設けられる。
ここで、本実施の形態では、洗面室(洗面洗濯室)41が第1通路61を兼ねている。つまり、第1通路61に、洗面スペース41aと、浴室42の出入口42aに隣接する脱衣スペース41bと、防水パン73に面する洗濯スペース41cとを含んでいる。
具体的には、洗面スペース41aは、第1居室21の出入口21aに隣接して配置されている。洗面台72は、トイレ室43との間の間仕切壁83側を背にして、ウォークインクローゼット50の出入口54の正面に配置される。脱衣スペース41bは、第2居室22の出入口22aに隣接して配置される。洗濯スペース41cは、第1居室21の出入口21aおよび第2居室22の出入口22aから離れて配置されている。防水パン73は、ウォークインクローゼット50との間の間仕切壁82側を背にして、ウォークインクローゼット50の出入口54の側方に配置される。
第1通路61としての洗面室41には、掃除機や季節家電などを収納するための収納棚41dがさらに設けられていてもよい。収納棚41dは、たとえば第2居室22の出入口22a付近に、脱衣スペース41bに対面するように配置される。
なお、住宅10の屋内空間には、キッチン設備を含まない第3居室23がさらに設けられていてもよい。第3居室23は、第2居室22よりも狭い。第3居室23は、屋外に面する窓を有していなくてもよい。第3居室23は、戸境壁92に沿って、玄関11と第1居室21のキッチン外領域34との間に配置されている。第3居室23は、廊下としての第2通路62に隣接している。
第3居室23の出入口23aは、第2通路62側ではなく、第1居室21のダイニング領域32側に設けられてもよい。第3居室23の出入口23aに設けられる建具は、透光性を有していることが望ましい。これにより、第3居室23を、たとえば育児中の女性のワークルームとして利用できる。玄関11側にも、第3居室23への出入口23bが設けられていてもよい。
上述のように、家族共用のウォークインクローゼット50がリビング領域33に連通して配置されるため、家事や身支度をこなす居住者が孤独とならず、他の居住者の近くで楽しく家事や身支度をこなすことができる。また、居住者間の会話を自然と増やすことができる。また、ウォークインクローゼット50は、第1居室21と第2居室22とをつなぐ第1通路61(洗面室41)側にも出入口54を有しているため、家事動線および身支度動線を含む、各種動線をシンプルに短くすることができる。
(身支度動線について)
図1には、身支度動線M11,M12が示されている。第1の身支度動線M11は、寝室としての第2居室22から、洗面スペース41aを有する第1通路61を通り、キッチン領域31を有する第1居室21へと至る。このように、第2居室22から第1居室21へと向かう直線経路上に洗面スペース41aが配置されているため、起床時に、他室へ迂回しなくても洗面スペース41aでの洗顔等を効率的に行うことができる。
第2の身支度動線M12は、第1居室21から、ウォークインクローゼット50を通り、第1通路61へと抜ける。これにより、第1居室21のキッチン領域31での食事後に、着替え、洗顔、化粧等の身支度を効率良く行うことができる。
(帰宅動線について)
図4は、居住者R1の帰宅動線を概念的に示す図である。図4では、一例として、他の居住者R2が先に帰宅してキッチン領域31で食事に関する家事をしているときに、居住者R1が後で帰宅したケースについて説明する。
帰宅動線M21は、玄関ホール62aを含む第2通路62、第1居室21のキッチン領域31およびリビング領域33を順に通り、ウォークインクローゼット50に至る。これにより、居住者R1は、先に帰宅して食事作りの家事をしている居住者R2と会話しながらリビング領域33へと進むことができる。また、リビング領域33に置きっぱなしになりがちな上着や荷物を、自発的にクローゼット50に仕舞うことができる。
一般的な住宅においてクローゼットは、キッチン設備を有さない居室(たとえば寝室)ごとに個別に設けられる。これに対し、本実施の形態では、家族共用のウォークインクローゼット50が第1居室21に連通して設けられているため、第1居室21から直接ウォークインクローゼット50に入室できる。そのため、従来よりも帰宅動線M21をシンプルに短くすることができる。すなわち、本実施の形態によれば、廊下である第2通路62を引き返して第2居室22へ行かなくても、第1居室21を通り抜けてウォークインクローゼット50に入室できる。
また、ウォークインクローゼット50は第1居室21と連通しているため、居住者R1がウォークインクローゼット50で部屋着に着替えたりしている間も、居住者R2との会話を継続することができる。したがって、第1居室21のキッチン領域31で食事に関する家事をこなしている居住者R2は、孤独とならず、楽しみながら家事をこなすことができる。なお、食事に関する家事には、食事作りの家事、食器および食事の運搬に関する家事、および、食器洗いの家事、などが含まれる。
また、ウォークインクローゼット50の作業領域52が第1居室21と連通しているため、作業領域52内で着替え等をしている居住者R1の視界に、居住者R2の家事の様子が入る。そのため、居住者R1に食事に関する家事への参加を促すことも可能となる。
また、動線M22に示されるように、出入口54を介して、ウォークインクローゼット50から洗面室41を兼ねた第1通路61へと抜けることもできる。したがって、居住者R1は、ウォークインクローゼット50で着替えが済んだ後すぐに、洗濯に関する家事に取り掛かることもできる。
ここで、キッチンカウンター71は、間仕切壁85から離れて独立して配置されるアイランドタイプであることが望ましい。間仕切壁85は、水回り領域40と第1居室21とを仕切り、2つの出入口21a,21b間を横方向に延びる壁である。この間仕切壁85に沿って、冷蔵庫を設置するための冷蔵庫区画31b、および、食品や食器を収納するための収納棚31cが設けられる。
キッチンカウンター71は、横方向に長く、南向きに配置される。これにより、帰宅動線M21が、キッチンカウンター71に面するキッチン作業スペース31aを通るように形成される。したがって、帰宅途中に購入した食品等を、ウォークインクローゼット50へ向かう途中で冷蔵庫や収納棚31cに収納できる。
(洗濯に関する家事動線について)
図5は、洗濯に関する家事動線を概念的に示す図である。洗濯に関する家事には、汚れた衣類を洗濯機付近の洗濯スペースまで運ぶ家事、洗濯機に汚れた衣類を入れて衣類を洗濯する家事、洗濯機から洗濯した衣類を取り出す家事、洗濯物(濡れた衣類)を運搬する家事、洗濯物(濡れた衣類)を干す家事、干して乾いた衣類を取り込む家事、乾いた衣類を小さく畳む家事、および、畳んだ衣類を片付ける(収納する)家事などが含まれる。
図5には、衣類の洗濯が済んだ後の家事動線M31が示されている。家事動線M31は、第1通路61(洗面室41)の洗濯スペース41cから、出入口54を介してウォークインクローゼット50に至る。
共働き家庭においては、洗濯に関する家事に要する時間および手間を少なくするために、室内干しが多用される。本実施の形態では、ウォークインクローゼット50の作業領域52に物干し竿74が設置され、ウォークインクローゼット50には乾燥設備(図示せず)が設置されている。つまり、ウォークインクローゼット50は、乾燥設備を備えた乾燥室としても機能する。図3(A)に示されるように、物干し竿74は、たとえば天井から吊り下げられた物干し設備74cに取り付けられている。
家事動線M31は、洗濯スペース41cを有する第1通路61とウォークインクローゼット50との間の出入口54を通過する。そのため、居住者R1は、洗濯スペース41cにおいて洗濯機から洗濯した衣類を取り出した後、濡れた洗濯物を、最短距離で物干し竿74が設置されたウォークインクローゼット50へと運ぶことができる。
なお、ウォークインクローゼット50の第1通路61側の間仕切壁82の一部分には凹部82aが形成されており、この凹部82aに防水パン73が設置されていてもよい。凹部82aは、たとえば、ウォークインクローゼット50の背面側の壁84と間仕切壁82とが交差する角部に形成されている。ウォークインクローゼット50の出入口54は凹部82aの真横に配置されていることが望ましい。この場合、家事動線M31が単純なL字状となるため、洗濯物を運搬する家事の負担がさらに軽減される。
物干し竿74は、リビング領域33側の出入口53に面する位置に設けられていることが望ましい。この場合、居住者R1は、リビング領域33において寛いでいる居住者R2のすぐ近くで、居住者R2が視界に入った状態で洗濯物を干すことができるため、孤独とならず、楽しく家事をこなすことができる。また逆に、居住者R1が洗濯物を干す家事が、リビング領域33において寛いでいる居住者R2の視界に入るため、居住者R2に洗濯に関する家事への参加を促すことができる。
また、物干し竿74がリビング領域33との境界位置付近(つまり出入口53付近)に配置される場合、リビング領域33側から洗濯物を干すこともできる。したがって、ウォークインクローゼット50の作業領域52がそれほど広くない場合でも、洗濯物を干す家事を複数の居住者R1,R2で協力し合うことができる。
今般の浴室42には、洗濯物を乾燥できる乾燥設備が設置されることが多いが、浴室乾燥中には入浴できないなどの制約があるため、乾燥設備を利用できる時間帯は限られている。これに対し、本実施の形態では、ウォークインクローゼット50に乾燥設備が搭載されているため、時間帯を気にすることなく洗濯物を干すことができる。
さらに、物干し竿74がウォークインクローゼット50内に設置されるため、干して乾いた衣類を取り込む家事、および、乾いた衣類を小さく畳む家事の双方を、その場で行うことができる。また、畳んだ衣類をウォークインクローゼット50内の収納領域51にそのまま仕舞うことができるため、畳んだ衣類を他室に運搬する家事を省くことができる。このように、本実施の形態によれば、ウォークインクローゼット50内において、洗濯に関する複数の家事を効率的に終わらせることができる。
ウォークインクローゼット50の作業領域52には、図2および図3(A)にも示されるように、作業台75が設置されていることも望ましい。作業台75は、リビング領域33との境界位置付近に設けられる。作業台75は、リビング領域33に対面するように、すなわち出入口53に面して配置される。この場合、作業台75において洗濯物を畳んだり、アイロンを掛けたりすることも可能となるため、より効率的に洗濯に関する家事をこなすことができる。
なお、休日の天気の良い日などにおいては、ウォークインクローゼット50を通り抜けて、バルコニー12に設置された物干し竿76に洗濯物を干すことも想定される。この場合の家事動線が動線M32として示されている。家事動線M32は、ウォークインクローゼット50から、第1居室21のリビング領域33を通過して、バルコニー12に至る。
本実施の形態では、ウォークインクローゼット50の出入口53、リビング領域33、および、バルコニー12への出入口(掃出し窓35)が、この順序で縦方向に直線状に配置されている。そのため、家事動線M32を最短経路とすることができる(図2参照)。また、この場合においても、洗濯物を干す家事が、リビング領域33で寛いでいる居住者R2の視界に入る。また、逆も同様である。そのため、居住者R1,R2間での会話や家事の協力が促進される。
あるいは、たとえば来客時に洗濯物を屋外に干したい場合には、第1通路61の洗濯スペース41cから第2居室22を通り抜けて、北西のバルコニー13に設置された物干し竿77に洗濯物を干すこともできる。この場合の家事動線が、動線M33として示される。
家事動線M33は、第1通路61から、出入口22aを介して第2居室22を通り、バルコニー13に至る。このように、第1通路61は、第1居室21および第2居室22の双方に接続されているため、どちらのバルコニー12,13を利用する場合であっても、移動距離を短くできる。
また、第1通路61は、出入口21aを介して第1居室21に直接接続されているため、図5の動線M41で示されるように、(ウォークインクローゼット50を介さずに)この出入口21aからキッチン領域31と洗濯スペース41cとの間を移動できる。したがって、食事に関する家事および洗濯に関する家事を、少ない移動距離で効率良く行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1居室21のリビング領域33とウォークインクローゼット50とが完全に分離されず、緩やかに仕切られるだけであるため、居住者はリビング領域33の近くで家事や身支度をこなすことができる。したがって、複数の居住者間(夫婦間)で会話をしながら、楽しく家事や身支度をこなすことができる。
また、洗面室41が第1通路61を兼ねているため、本実施の形態によれば、身支度および家事(特に洗濯物に関する家事)を効率的にこなすことができる。
また、第1通路61が第1居室21と第2居室22とを直接接続しているため、外出時、帰宅時、および、トイレ室43を利用するとき以外は、第2通路62を通ることなく過ごすことができる。すなわち、食事に関する家事および洗濯に関する家事を含む日常の家事動線、ならびに、身支度動線が、廊下である第2通路62を通らない。したがって、朝晩の限られた時間内で、効率良く各種家事および身支度を行うことが可能となる。
また、小さい子供がいる家庭においては、第2居室22で寝ている子供の近くで、洗濯物に関する家事や身支度をこなすことができるため、子供の様子を確認するために廊下を行き来する必要がなくなる。
また、家族共用のウォークインクローゼット50が第2居室22から独立して配置されているため、第2居室22で子供が寝た後でも、畳んだ衣類(洗濯物)を片付けることができる。これにより、畳んだ衣類がリビング領域33に置きっぱなしになることがなくなるため、共働き家庭であっても、リビング領域33をすっきりと片付いた空間とすることができる。
(変形例)
本実施の形態では、第1通路61には、洗面スペース41a、脱衣スペース41b、および洗濯スペース41cの全てが設けられることとしたが、これらのうちの少なくとも1つが設けられていればよい。なお、第1通路61は、防水パン73に面する洗濯スペース41cを含むことが望ましい。つまり、第1通路61が洗濯室として機能し、洗濯物に関する家事動線の一部が第1通路61を通ることが望ましい。あるいは、第1通路61は、洗面台72に面する洗面スペース41aを含むことも望ましい。つまり、第1通路61が洗面室として機能し、身支度動線の一部が第1通路61を通ることも望ましい。
また、ウォークインクローゼット50は、第1居室21のリビング領域33と連通することとしたが、ダイニング領域32と連通するように配置されてもよい。あるいは、本実施の形態では、ダイニング領域32とリビング領域33とが、キッチン領域31により(横方向に)分離されることとしたが、ダイニング領域32およびリビング領域33が(横方向または縦方向に)互いに隣接して一体的に設けられてもよい。この場合、ダイニング領域32およびリビング領域33を一体的に含むキッチン外領域とウォークインクローゼット50とが、連通していてもよい。
また、本実施の形態に係る住宅10は、集合住宅1の一住戸であることとしたが、限定的ではなく、戸建て住宅にも上述のような間取りを適用可能である。上述の間取りを戸建て住宅に適用する場合、屋外空間は庭またはテラスであってもよい。また、玄関11に代えて階段室が配置されてもよい。つまり、第2通路は、第1居室21等が配置されたフロアへの入口空間(たとえば玄関ホールまたは階段の踊り場)から第1居室21に至る廊下であればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。