JP7245658B2 - 旋盤のワーク押付け装置 - Google Patents
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Description
ワーク押付け装置としては、旋盤のタレット刃物台の工具取付ステーションに取り付けられたプレート状の押当て片よりなり、タレット刃物台を所要方向に移動させることにより、押当て片をワークの他端部に押し当てるように構成したものが知られている。
但し、上記装置の場合、ワークのサイズに応じた複数の押当て片を用意しておいて、ワークのサイズが変わる毎に押当て片を交換する必要があるため、作業性に問題があった。しかも、上記装置の場合、タレット刃物台の旋回時に押当て片がサドルカバー等に干渉しないようにする必要があるため、押当て片のサイズに制約があり、また、押当て片が取り付けられた工具取付ステーションに隣接する工具取付ステーションには、押当て片と干渉して工具を取り付けることができない場合があった。
上記装置によれば、複数の押当て片を外側に旋回させて開くことにより、よりサイズ(径)の大きいワークに対応することができ、また、複数の押当て片を内側に旋回させて閉じれば、タレット刃物台の旋回時にサドルカバー等に干渉しないようにすることができる上、同装置の本体が取り付けられた工具取付ステーションに隣接する工具取付ステーションにも、押当て片と干渉することなく工具を取り付けることができる。
なお、この発明を特定するに当たり、ワーク押付け装置の「前」とは、押し付けるワークに近い側(例えば図1,3の左)を指し、「後」とは、その反対側(例えば図1,3の右)を指すものとする。
前記タレット刃物台に取り付けられ、かつ中心部から放射状にのびる少なくとも3つのスリットが周方向に等間隔おきに形成された前壁を有している中空状のボディと、
前記ボディの内部に前記前壁と同心状に回転可能に収容されているとともに、前面にスクロール溝を有しているディスクと、
前記ディスクを回転させるディスク回動装置と、
後面に前記スクロール溝に噛み合わせられる歯を有し、前面に前記ワークの他端部に押し当てられる押当て面を有し、かつ前記ボディの前記前壁に前記少なくとも3つのスリットに沿ってスライド可能に取り付けられている少なくとも3つの押当て片とを備えており、
前記ディスク回動装置によって前記ディスクが回転させられることにより、前記少なくとも3つの押当て片が前記少なくとも3つのスリットに沿って同時にスライドさせられるようになっている、旋盤のワーク押付け装置。
前記ディスク回動装置が、前記駆動手段に接続する接続部と、一端部が前記接続部に保持されている伝動シャフトと、前記伝動シャフトの他端部および前記ディスクにおける前記孔の周縁部に互いに噛み合うように形成された歯車機構とを備えている、前記2)の旋盤のワーク押付け装置。
なお、以下の説明において、図1,3の左を「前」といい、同右を「後」というものとする。
チャック(4)は、チャック本体(41)と、チャック本体(41)にラジアル方向にスライドして開閉可能に取り付けられた3つのチャック爪(42)とを備えている。チャック本体(41)の後面によって、取付基準面(411)が構成されている。
タレット刃物台(5)は、図示しない駆動手段によってZ軸方向およびX軸方向に移動自在となされている。タレット刃物台(5)の外周部には、複数の工具取付ステーション(51)が周方向に等間隔おきに設けられている。また、タレット刃物台(5)は、エンドミルやドリル等の回転工具を回転させることが可能なモータ等の駆動手段(図示略)を備えている。駆動手段は、プログラムにより回転方向や回転角度(回転量)等が制御可能となされている。そして、複数の工具取付ステーション(51)のうち1つの工具取付ステーション(51)に、駆動手段に接続する接続部(6)が装着されている。接続部(6)は、ケーシング(61)と、ケーシング(61)内に回転可能に配置されかつ駆動手段によって回転させられる保持部(62)とを有している。
図2~図4は、ワーク押付け装置(7)の詳細を示すものである。なお、図3では、タレット刃物台(5)および接続部(6)の断面構造の図示を省略している。これらの図に示すように、ワーク押付け装置(7)は、タレット刃物台(5)に取り付けられかつ中心部から放射状にのびる3つのスリット(811)が周方向に等間隔おきに形成された前壁(81)を有している中空状のボディ(8)と、ボディ(8)の内部に前壁(81)と同心状に回転可能に収容されているとともに、前面にスクロール溝(91)を有しているディスク(9)と、ディスク(9)を回転させるディスク回動装置(10)と、後面にスクロール溝(91)に噛み合わせられる歯(111)を有し、前面にワーク(W)の後端部に押し当てられる押当て面(112)を有し、かつボディ(8)の前壁(81)に3つのスリット(811)に沿ってスライド可能にかつ中心部からの距離が等しくなるように取り付けられている3つの押当て片(11)とを備えている。
上記のワーク押付け装置(7)にあっては、ディスク回動装置(10)によってディスク(9)が回転させられることにより、3つの押当て片(11)が3つのスリット(811)に沿って同時に、すなわち、同一方向(径方向内方または外方)に同一距離だけスライドさせられるようになっている。
より詳細には、ボディ(8)は、円形の後壁(82)および後壁(82)の外周縁から前方に短くのびた環状周壁(83)を有するボディ本体(8a)と、ボディ本体(8a)の前方開口を覆うようにボディ本体(8a)に接合されて前壁(81)を構成する円形のボディ蓋体(8b)とで構成されている。ボディ蓋体(8b)、すなわち前壁(81)の中心部には、円形の孔(812)が形成されている。但し、この孔(812)は形成されない場合もある。
前壁(81)における各スリット(811)の両側縁部には、その幅中間位置にスリット(811)の長さ方向に沿ってのびる係合凸条(813)が形成されている(図4参照)。
ベースプレート(12)は、例えば図2に示すような三角形のものであって、複数の取付ボルト(13)によって、タレット刃物台(5)の前面および接続部(6)のケーシング(61)前面に締結固定されている。なお、ベースプレート(12)の形状は、三角形に限らず、四角形等のその他の形状であってもよい。
ベースプレート(12)には、複数の取付ボルト(14)によって、ボディ(8)が取り付けられている。各取付ボルト(14)は、ベースプレート(12)にあけられたボルト挿通孔(121)に長さ方向にスライド可能に挿通されている。ボルト挿通孔(121)の後部には、取付ボルト(14)の頭部(141)を収容しうる収容凹所(122)が形成されている。収容凹所(122)の深さは、取付ボルト(14)の頭部(141)の高さよりも大きくなされている。取付ボルト(14)の先端部は、ボディ(8)の後壁(82)後面に形成されたねじ孔(821)にねじ込まれている。また、取付ボルト(14)の長さ中間部の外周には、ベースプレート(12)とボディ(8)との間に介在されるように、圧縮コイルばね(15)が嵌められている。この圧縮コイルばね(15)により、ボディ(8)およびその前壁(81)に取り付けられた3つの押当て片(11)が前方に向かって付勢されている。上記の取付構造により、ボディ(8)がタレット刃物台(5)に弾性的に取り付けられ、それによってワーク押付け時の衝撃が吸収されるようになっている。
ディスク(9)の内周縁部には、周方向に一定のピッチで多数の歯(93)が形成されている。
接続部(6)の保持部(62)を、図示しない駆動装置によって所要方向に回転させると、伝動シャフト(16)が回転させられ、その回転運動が歯車(17)およびディスク(9)の歯(92)よりなる歯車機構を介してディスク(9)に伝動されて、ディスク(9)が回転するようになっている。
3つの押当て片(11)は、その後面の歯(111)がディスク(9)前面のスクロール溝(91)と噛み合わせられているので、ディスク(9)が回転すると、スリット(811)の長さ方向、すなわちラジアル方向に同時にスライドさせられる。図2および図3では、ボディ(8)の前壁(81)の中心部からの距離が最も遠くなる全開位置に配されている押当て片(11)を実線で示し、中心部からの距離が最も近くなる全閉位置に配されている押当て片(11)を2点鎖線で示しているが、押当て片(11)の位置は、ディスク(9)の回転角度(回転量)を適宜調整することにより、押し付けるワーク(W)のサイズ(外径)に応じて任意に変更調整可能である。接続部(6)に接続されているモータ等の駆動手段は、回転方向や回転角度(回転量)等をプログラムにより制御可能なものであるので、同プログラムを利用して押当て片(11)の位置を簡単に調整することができ、段取りに要する時間が大幅に短縮される。
なお、押当て片(11)は、図示のように少なくとも3つあれば足りるが、4つ以上設けても構わない。
図示の押当て片(110)は、後面にスクロール溝(91)に噛み合わせられる歯(111)を有しかつボディ(8)の前壁(81)にスリット(811)に沿ってスライド可能に取り付けられている押当て片本体(110A)と、ワーク押付け時の衝撃を吸収しうるように押当て片本体(110A)に弾性的に取り付けられている押当て面形成体(110B)とを備えている。
押当て片本体(110A)は、図4に示す押当て片(11)とほぼ同様の形態を有するものであって、その両側面には係合凸条(813)に係合可能な係合溝(113)が形成されている。
押当て面形成体(110B)は、板状のものであって、その前面が押当て面(112)を構成しており、複数の取付ボルト(18)によって、押当て片本体(110A)の前面に取り付けられている。各取付ボルト(18)は、押当て面形成体(110B)にあけられたボルト挿通孔(114)に長さ方向にスライド可能に挿通されている。ボルト挿通孔(114)の後部には、取付ボルト(18)の頭部(181)を収容しうる収容凹所(115)が形成されている。収容凹所(115)の深さは、取付ボルト(18)の頭部(181)の高さよりも大きくなされている。取付ボルト(18)の先端部は、押当て片本体(110A)の前面に形成されたねじ孔(116)にねじ込まれている。また、取付ボルト(18)の長さ中間部の外周には、押当て片本体(110A)と押当て面形成体(110B)との間に介在されるように、圧縮コイルばね(19)が嵌められている。この圧縮コイルばね(19)により、押当て面形成体(110B)が前方に向かって付勢されている。上記の取付構造により、押当て面形成体(110B)が押当て片本体(110A)に弾性的に取り付けられ、それによってワーク押付け時の衝撃が吸収されるようになっている。
なお、上記の押当て片(110)を使用する場合、ボディ(8)はタレット刃物台(5)に固定的に取り付けられていても構わない。
すなわち、上記ワーク押付け装置(7)によれば、ディスク回動装置(10)によって、ディスク(9)を所要方向に所要角度(回転量)だけ回転させることにより、3つの押当て片(11)(110)をボディ(9)の前壁(91)のスリット(911)に沿ってスライドさせて所望の位置に短時間で正確に位置させることができるので、従来装置のように押当て片を交換することなく、サイズ(外径)の異なる複数種類のワーク(W)の押付け操作に容易に対応することができ、しかも、対応可能なワークのサイズは、上記特許文献1記載の回転式押当て片を備えた装置と比べて、かなり多くなる。加えて、上記ワーク押付け装置(7)の場合、ディスク回動装置(10)が、タレット刃物台(5)に予め備えられたプログラム制御可能な回転工具用駆動手段を利用したものであるので、制御のためのプログラムも含めて専用の駆動手段を用いる必要がなく、設置コストが抑えられる。また、上記ワーク押付け装置(7)によれば、タレット刃物台(5)の旋回時にサドルカバー等との干渉を避けるための最大旋回径の範囲を超えた位置に、3つの押当て片(11)(110)を配置することができるので、押付け時のワーク(W)の姿勢が安定する。しかも、上記ワーク押付け装置(7)によれば、タレット刃物台(5)における同装置(7)が取り付けられた工具取付ステーション(51)に隣接する工具取付ステーション(51)にも、種類によっては工具を取り付けることが可能となる。
また、上記ワーク押付け装置(7)は、シンプルな構造であるので、その組立やメンテナンスが容易であり、コストも抑えられる。
さらに、上記ワーク押付け装置(7)によれば、タレット刃物台(5)に弾性的に取り付けられたボディ(8)や、押当て片(110)の押当て片本体(110A)に弾性的に取り付けられた押当て面形成体(110B)により、ワーク押付け時の衝撃が吸収されるので、ワーク(W)やチャック(4)および押当て片(11)(110)に損傷が発生するのを効果的に抑制することができる。
(3):主軸
(4):チャック
(411):取付基準面
(5):タレット刃物台
(6):接続部
(62):保持部
(7):ワーク押付け装置
(8):ボディ
(81):前壁
(811):スリット
(9):ディスク
(91):スクロール溝
(92):中心部の孔
(93):歯(歯車機構)
(10):ディスク回動装置
(11):押当て片
(110):押当て片
(110A):押当て片本体
(110B):押当て面形成体
(111):歯
(112):押当て面
(14):取付ボルト
(15):圧縮コイルばね
(16):伝動シャフト
(17):歯車(歯車機構)
(18):取付ボルト
(19):圧縮コイルばね
(W):ワーク
Claims (4)
- 主軸と、前記主軸の先端部に設けられてワークを保持するチャックと、タレット刃物台とを備えている旋盤において、前記チャックの取付基準面に前記ワークの一端部を押し付けるためのワーク押付け装置であって、
前記タレット刃物台に取り付けられ、かつ中心部から放射状にのびる少なくとも3つのスリットが周方向に等間隔おきに形成された前壁を有している中空状のボディと、
前記ボディの内部に前記前壁と同心状に回転可能に収容されているとともに、前面にスクロール溝を有しているディスクと、
前記ディスクを回転させるディスク回動装置と、
後面に前記スクロール溝に噛み合わせられる歯を有し、前面に前記ワークの他端部に押し当てられる押当て面を有し、かつ前記ボディの前記前壁に前記少なくとも3つのスリットに沿ってスライド可能に取り付けられている少なくとも3つの押当て片とを備えており、
前記ディスク回動装置によって前記ディスクが回転させられることにより、前記少なくとも3つの押当て片が前記少なくとも3つのスリットに沿って同時にスライドさせられるようになっており、
前記タレット刃物台は回転工具を回転させることが可能な駆動手段を備えており、前記ディスク回動装置が前記駆動手段を利用したものである、旋盤のワーク押付け装置。 - 前記ディスクが、中心部に円形の孔を有しているドーナツ形のものであり、
前記ディスク回動装置が、前記駆動手段に接続する接続部と、一端部が前記接続部に保持されている伝動シャフトと、前記伝動シャフトの他端部および前記ディスクにおける前記孔の周縁部に互いに噛み合うように形成された歯車機構とを備えている、請求項1記載の旋盤のワーク押付け装置。 - ワーク押付け時の衝撃を吸収しうるように、前記ボディが前記タレット刃物台に弾性的に取り付けられている、請求項1または2記載の旋盤のワーク押付け装置。
- 前記少なくとも3つの押当て片が、後面に前記歯を有しかつ前記ボディの前記前壁に前記少なくとも3つのスリットに沿ってスライド可能に取り付けられている押当て片本体と、ワーク押付け時の衝撃を吸収しうるように前記押当て片本体に弾性的に取り付けられている押当て面形成体とをそれぞれ備えている、請求項1~3のいずれか1つに記載の旋盤のワーク押付け装置。
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