JP7238520B2 - 多層積層フィルム - Google Patents
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Description
特に携帯電話、タブレット型PC等では、これらの多層積層フィルムは電力消費を抑制するために広く使用されている。
本発明の課題は、多層積層フィルムにおいて、多層積層フィルムの厚膜化を抑制しつつ、ポリビニルアルコール系樹脂層の密着性を向上させた多層積層フィルムを提供することである。
<1>
樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造、及び樹脂を主体とする支持層を有する多層積層体と、ポリビニルアルコール系樹脂層と、を有する多層積層フィルムであって、前記多層積層構造と前記支持層とは直接接しており、前記支持層と前記ポリビニルアルコール系樹脂層とは、直接又は厚み1μm以下の他の層を介して接しており、前記多層積層構造は、前記第1層と前記第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、前記層厚みプロファイルは厚み単調増加領域を有し、前記厚み単調増加領域において厚みが薄い側に前記支持層と前記ポリビニルアルコール系樹脂層とが設けられる、多層積層フィルム。
<2>
前記支持層の厚みが1μm超え20μm以下である<1>に記載の多層積層フィルム。
<3>
前記厚み単調増加領域の厚みが薄い側の最表層から10組までの前記繰り返し単位の平均厚みが80nm以上120nm以下である<1>又は<2>に記載の多層積層フィルム
<4>
前記第1層が複屈折性の層であり、前記第2層が等方性の層である<1>~<3>のいずれか一つに記載の多層積層フィルム。
<5>
前記ポリビニルアルコール系樹脂層は偏光機能を有する<1>~<4>のいずれか一つに記載の多層積層フィルム
本発明の多層積層フィルムは、樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造、及び樹脂を主体とする支持層を有する多層積層体と、ポリビニルアルコール系樹脂層と、を有する。また、前記多層積層構造と、前記支持層と、前記ポリビニルアルコール系樹脂層と、がこの順で積層されている。
ここで、多層積層構造と支持層とは直接接している。また、支持層とポリビニルアルコール系樹脂層とは、直接接しているか、または他の層を介して接しており、他の層を介していたとしてもかかる他の層は厚み1μm以下である。
以下、本発明の多層積層フィルムの各構成要素について説明する。
本発明の多層積層フィルムは、樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とを少なくとも有する多層積層構造を有する。
かかる第1層は複屈折性で、かかる第2層は等方性であることが好ましく、第1層と第2層とによる光の干渉効果により、波長380~780nmの可視光領域において、幅広い波長範囲で反射可能であることができる。
このような反射特性とするために、樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの複屈折性の第1層と、樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの等方性の第2層とが合計30層以上で厚み方向に交互に積層した構造を有することが好ましい。
なお、本発明の各層においては、製膜機械軸方向(縦方向、長手方向、又はMD方向という場合ある。)、製膜機械軸方向にフィルム面内で直交する方向(横方向、幅方向、又はTD方向という場合がある。)、厚み方向の屈折率につき、最大と最小の差が0.1以上のものを複屈折性、0.1未満のものを等方性とする。
本発明における多層積層構造は、第1層と第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有する。また、かかる層厚みプロファイルは、単調増加領域を有する。
なお、多層積層構造が、第3層を有する場合であっても同様に、繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、かかる層厚みプロファイルは単調増加領域を有する。
これは、反射波長が多層積層フィルムを構成する各層の光学厚みに起因するためである。一般的に多層積層フィルムの反射波長は、下記(式1)で示される。
λ=2(n1×d1+n2×d2) (式1)
(上式中、λは反射波長(nm)、n1、n2はそれぞれの層の屈折率、d1、d2はそれぞれの層の物理厚み(nm)を表わす)
λM(nm)=nk×dk (式2)
dp=d1+d2 (式3)
上式中、dpは繰り返し単位の物理厚み(nm)、d1、d2はそれぞれかかる繰り返し単位を構成する第1層、第2層の物理厚み(nm)を表す。
ここでの物理厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から求めたものが採用され得る。
本発明において「単調増加」とは、多層積層フィルムにおける多層積層構造の全てにおいてより厚い側の層がより薄い側の層よりも厚くなっていることを意味することが好ましいが、それに限定されず、全体を見て厚みがより薄い側からより厚い側に厚みが増加している傾向が見られればよい。具体的には、厚みがより薄い側からより厚い側に向かって層に番号を付し、それを横軸として、各層の膜厚を縦軸にプロットしたときに、膜厚が増加傾向を示す範囲内での各層の層数を5等分し、膜厚が厚くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
図1の多層積層フィルム30は、第1層と第2層の交互積層構造である多層積層構造14が中間層16を介して2層積層され、更に多層積層構造14の外側には支持層(最外層)12及び最外層18が形成された多層積層体10に、ポリビニルアルコール系樹脂層22が密着されたものである。すなわち、一例として示される多層積層フィルム30の積層構成としては、ポリビニルアルコール系樹脂層22/支持層(最外層)12/多層積層構造14/中間層16/多層積層構造14/最外層18である。
例えば本発明の実施例1は、100%の部分において単調増加している態様であるが、かかる厚みプロファイルの層番号が小さい側および/または層番号が大きい側に単調増加でない領域を設けた態様であってもよい。
[第1層]
本発明の多層積層構造を構成する第1層は、複屈折性の層であることが好ましく、すなわちこれを構成する樹脂は、複屈折性の層を形成し得るものであることが好ましい。従って、第1層を構成する樹脂としては配向結晶性の樹脂が好ましく、かかる配向結晶性の樹脂として特にポリエステルが好ましい。該ポリエステルは、それを構成する繰り返し単位を基準として好ましくはエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を、より好ましくはエチレンナフタレート単位を、80モル%以上、100モル%以下の範囲で含有することが、より高い屈折率の層とし易く、それにより第2層との屈折率差を大きくしやすいことから好ましい。ここで樹脂の併用の場合は、合計の含有量のことをいう。
第1層の樹脂として、ポリエステルが好ましく、ポリエステルとして、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含有し、その含有量は該ポリエステルを構成するジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%未満、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
なお、この場合、本発明においては、1軸延伸方向をX方向(縦方向ともいう。)、フィルム面内においてX方向と直交する方向をY方向(横方向、非延伸方向ともいう。)、フィルム面に対して垂直な方向をZ方向(厚み方向ともいう。)と称する場合がある。
なお、本発明におけるS偏光成分とは、多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分と定義される。
第1層に用いられるポリエステルの融点は、好ましくは220~290℃の範囲、より好ましくは230~280℃の範囲、さらに好ましくは240~270℃の範囲である。融点は示差走査熱量計(DSC)で測定して求めることができる。該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また液晶ディスプレイの輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の屈折率特性が発現し難い傾向にある。
本発明の多層積層構造を構成する第2層は、等方性の層であることが好ましく、すなわちこれを構成する樹脂は、等方性の層を形成し得るものであることが好ましい。従って、第2層を構成する樹脂としては非晶性の樹脂が好ましい。中でも非晶性であるポリエステルが好ましい。なおここで「非晶性」とは、極めて僅かな結晶性を有することを排除するものではなく、本発明の多層積層フィルムが目的とする機能を奏する程度に第2層を等方性にできればよい。
第2層を構成する樹脂としては、共重合ポリエステルが好ましく、特に、ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルを用いることが好ましい。なお、かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。かかるナフタレンジカルボン酸成分、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全カルボン酸成分の30モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上、80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上、70モル%以下である。これにより第1層との密着性をより高くできる。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限に満たないと相溶性の観点から密着性が低下することがある。また、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の上限は特に制限されないが、多すぎると第1層との屈折率差を発現し難くなる傾向にある。なお、第1層との屈折率の関係を調整するために他のジカルボン酸成分を共重合させてもよい。
第2層の共重合ポリエステルは、ジオール成分がエチレングリコール成分と、トリメチレングリコール成分の少なくとも2成分を含むことが好ましい。このうち、エチレングリコール成分は、フィルム製膜性などの観点より主たるジオール成分として用いられることが好ましい。
本発明における第2層は、本発明の目的を損ねない範囲であれば、第2層の質量を基準として10質量%以下の範囲内で該共重合ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を第2のポリマー成分として含有してもよい。
本発明において、上述する第2層の共重合ポリエステルは、85℃以上のガラス転移温度を有することが好ましく、より好ましくは90℃以上、150℃以下、さらに好ましくは90℃以上、120℃以下、特に好ましくは93℃以上、110℃以下である。これにより耐熱性により優れる。また、第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が下限に満たない場合、耐熱性が十分に得られないことがあり、例えば90℃近辺での熱処理などの工程を含むときに第2層の結晶化や脆化によってヘーズが上昇し、輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の偏光度の低下を伴うことがある。また、第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が高すぎる場合には、延伸時に第2層のポリエステルも延伸による複屈折性が生じることがあり、それに伴い延伸方向において第1層との屈折率差が小さくなり、反射性能が低下することがある。
本発明の多層積層フィルムは、多層積層構造とポリビニルアルコール系樹脂層との間に、多層積層構造を支持する機能を有する支持層を有する。多層積層構造が支持層を有することにより、多層積層構造の操作性が向上すると共に、最終的に得られる多層積層フィルムの操作性が向上する。
かかる支持層は、樹脂を主体とする。なお、ここで「主体とする」とは、層において樹脂が70質量%以上を占めることをいい、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。また、支持層は、等方性の層であることが好ましく、製造上の容易性の観点からは第2層と同一樹脂であってもよく、上述した第2層の共重合ポリエステルから構成することができ、そのような態様が好ましい。
本発明の多層積層フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂層(以下、「PVA系樹脂層」とも称する。)を有する。また、ポリビニルアルコール系樹脂層は偏光機能を有するものであることが好ましい。ここで、「偏光機能を有する」とは、PVA系樹脂層の透過軸に平行な偏光の透過率と、前記透過軸と直交する軸(吸収軸)に平行な偏光の透過率とに50%以上の差があることをいう。かかる差は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
PVA系樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」とも称する。)としては、任意の適切な樹脂が用いられる。たとえば、ポリビニルアルコール、エチレン―ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化すること により得られる。エチレン―ビニルアルコール共重合体は、エチレン―酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.5モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることが出来る。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性や光学特性に優れた偏光膜を得ることが出来る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
そして、かかる多層積層構造は、層厚みプロファイルの単調増加領域を有し、支持層とPVA系樹脂層は、かかる単調増加領域の厚みが薄い側にある。このような積層構成とすることで、PVA系樹脂層の密着性に優れる。
そのため、PVA系樹脂層を密着させるための機能層(例えば、粘着層等)を特段設ける必要がないか、または、設けたとしても薄いもので足りるため、多層積層フィルムの厚膜化を抑制することができる。
なお、最小10点平均厚みは、上記の方法により多層積層構造の薄い側から10組の繰り返し単位の物理厚みdpを算出し、その平均値を求めることにより算出される。
本発明の多層積層フィルムを構成する多層積層体は、中間層や、多層積層構造の支持層となる最外層とは別の最外層を有していてもよい。
中間層に用いられるポリマーは、本発明の多層積層フィルムの製造方法を用いて多層積層体中に存在させることができれば、第1層あるいは第2層と異なる樹脂を用いてもよいが、層間接着性の観点より、第1層または第2層のいずれかと同じ組成か、これらの組成を部分的に含む組成であることが好ましい。
かかる別の最外層の厚さが1μm超えであると、多層積層構造の層構成に乱れが生じにくく、反射性能の低下を抑制できる傾向がある。また、別の最外層の厚さが100μm以下であると、多層積層フィルム全体の厚みを抑制することができ、薄型の液晶ディスプレイの反射型偏光板や輝度向上部材として用いた場合の省スペース化の観点から有利である。
本発明の多層積層フィルムは、支持層とポリビニルアルコール系樹脂層とは、直接接しているか、或いは、厚さが1μm以下の他の層を介して接している。
本発明によれば、上述のように多層積層構造の厚みが薄い側における応力緩和があるため、支持層とポリビニルアルコール系樹脂層とが直接接していたとしても、密着性の向上が得られる。
他の層としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂層の密着性を向上するための機能層があるが、厚さが1μmを超えるようなものでは、本発明の前提である小型化、軽量化に係る目的が達成されない。密着性を向上するための機能層は、通常は密着性向上のために1μmを超える厚みで設けるものが多いが、本発明によれば、厚みが1μm以下でも密着性向上の効果が得られるため、多層積層フィルムの厚膜化を抑制することができる。他の層の厚みは、1μm以下であり、0.8μm以下であることが、小型化、軽量化の観点から好ましい。
本発明の多層積層フィルムは、上記他の層の一例として、支持層とポリビニルアルコール系樹脂層との間に塗布層を有することができる。
かかる塗布層としては、これら層の密着性を向上するようなプライマー層が挙げられるが、その他滑り性を付与するための易滑層などでもよい。
本発明の多層積層フィルムの製造方法について詳述する。なお、ここで以下に示す製造方法は一例であり、本発明はこれに限定されるものでない。また、異なる態様についても、以下を参照して得ることができる。
本発明の多層積層フィルムにおける多層積層体は、第1層を構成する樹脂と第2層を構成する樹脂とを、多層フィードブロック装置を用いて溶融状態で交互に重ね合わせて、例えば、合計で30層以上の交互積層構成を作成し、その両面にバッファ層を設け、その後レイヤーダブリングと呼ばれる装置を用いて該バッファ層を有する交互積層構成を例えば2~4分割し、該バッファ層を有する交互積層構成を1ブロックとしてブロックの積層数(ダブリング数)が2~4倍になるように再度積層する方法で積層数を増やすことで得ることができる。かかる方法によると、多層積層体の内部にバッファ層同士が2層積層された中間層と、バッファ層1層からなる最外層を両面に有する多層積層体を得ることができる。
上述した方法で所望の積層数に積層したのち、ダイより押出し、キャスティングドラム上で冷却し、多層未延伸体を得る。この多層未延伸体にPVA系樹脂層を形成し、その後、後述する延伸によって多層積層フィルムを得る。PVA系樹脂層の形成には、任意の適切な方法を採用することが出来る。好ましくは、多層積層体上に、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、PVA系樹脂層を形成する。
また、延伸後にさらに(Tg)~(Tg+30)℃の温度で熱固定を行いながら、5~15%の範囲で延伸方向にトーアウト(再延伸)させることにより、得られた多層積層フィルムの配向特性を高度に制御することができる。
他の層としての塗布層を設ける場合、フィルムの製造工程において、PVA系樹脂を含む塗布液を多層積層体上に塗布する前に、塗布、乾燥して設けることができる。
かくして本発明の多層積層フィルムが得られる。
本発明において、多層積層体として、波長380~780nmでの透過軸における平均透過率は70%以上が好ましく、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上であり、波長380~780nmでの反射軸における平均透過率は、30%以下が好ましく、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。
多層積層フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、50nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S-4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚み(物理厚み)を測定した。
1μmを超える厚さの層について、多層構造の内部に存在しているものを中間層、最表層に存在しているものを最外層(PVA系樹脂層側のものは支持層)とし、それぞれの厚みを測定した。
なお、第1層か第2層かは、屈折率の態様により判断できるが、それが困難な場合は、NMRでの解析や、TEMでの解析による電子状態により判断することも可能である。
多層積層構造の第1層及び第2層の屈折率は、得られた多層積層構造の製造条件と同様の条件で、層の厚み比率が1:1である2層積層フィルムを作成し、それを用いて測定した第1層及び第2層の屈折率を、それぞれ多層積層構造の第1層及び第2層の屈折率として求める。
例えば、本実施形態においては、厚み比率が第1層:第2層=1:1である2層積層フィルムとする以外は後述する実施例1と同様の条件で合計厚み75μmのフィルムを作成し、第1層、第2層のそれぞれについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、第1層及び第2層それぞれの延伸後の屈折率とした。
多層積層構造の単調増加の判断は、第1層と第2層との組み合わせを1つの繰り返し単位とし、かかる繰り返し単位の物理厚みの値を縦軸に入力し、各繰り返し単位の層番号(薄い側から付した番号)を横軸に入力した際の層厚みプロファイルの任意の領域において、膜厚が増加傾向を示す範囲内での層繰り返し単位数を5等分し、膜厚が厚くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
PVA系樹脂層の密着性の評価は以下の方法により行った。PVA系樹脂層を形成した多層積層フィルムのPVA系樹脂層の表面に4mm2のクロスカットを25個入れ、それを4か所実施した(合計100個)。セロハンテープ(ニチバン社製)をその上に貼り付け、指で強く押し付けた後、90°方向に剥離し、PVA系樹脂層が残存した個数により下記のように評価を行った。
A:90<残存個数≦100・・・密着性極めて良好
B:80<残存個数≦ 90・・・密着性良好
C:70<残存個数≦ 80・・・密着性やや良好
D: 残存個数≦ 70・・・密着性不良
偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて、得られた多層積層体および多層積層フィルムの透過スペクトルを測定した。
なお、測定はグランテーラープリズム、スポット径調整用マスクΦ1.4、および偏角ステージを使用し、測定光の入射角は0度設定とし、クロスニコルサーチ(650nm)で定まる多層積層体及び多層積層フィルムの透過軸及び該透過軸に直交する軸(反射軸)の波長380~780nmの範囲における平均透過率(それぞれ「透過軸平均透過率」、「反射軸平均透過率」ともいう。)を、5nm間隔で測定した。
また、多層積層体及び多層積層フィルムそれぞれの透過軸平均透過率及び反射軸平均透過率は以下の基準により評価した。
A:80%以上
B:70%以上80%未満
C:70%未満
A:20%以下
B:20%超え30%以下
C:30%を超える
A:70%以上
B:60%以上70%未満
C:60%未満
A:1%未満
B:1%以上5%未満
C:5%以上
得られた多層積層フィルムから、フィルム端面においてPVA系樹脂層との界面に針等で切欠を作る等してPVA系樹脂層を剥離し、上記「透過率の評価」と同様にして透過軸平均透過率および吸収軸平均透過率を測定し、これらの差(透過軸平均透過率-吸収軸平均透過率)を求め、PVA系樹脂層の偏向機能の評価をした。なお、本評価においては、透過軸に直交する軸を吸収軸といい、吸収軸平均透過率の測定は、上記「透過率の評価」における反射軸平均透過率の測定方法と同様である。
A:差が80%以上
B:差が70%以上80%未満
C:差が50%以上70%未満
D:差が50%未満
第1層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の95モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の5モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分がエチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.64dl/g)(o―クロロフェノール、35℃、以下同様)を準備した。
第2層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとトリメチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の50モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の50モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分の85モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の15モル%がトリメチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.63dl/g)を準備した。
日本酢ビ・ポバール社製VP18をPVA系樹脂として、溶媒を水とし、8重量%に希釈したPVA水溶液を準備した。また、4重量%のホウ酸水溶液1000mlにヨウ素0.4gとヨウ化カリウム1.0gを溶解させた染色液を作成した。得られたPVA水溶液と染色液を1000:1の割合で混合させたものを準備し、塗布液Aとした。
第1層用にポリエステルAを170℃で5時間乾燥した後、第2層用にポリエステルBを85℃で8時間乾燥した後、それぞれ第1、第2の押し出し機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1層用ポリエステルを139層、第2層用ポリエステルを138層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ表1に示すような層厚みプロファイルとなるような櫛歯を備える多層フィードブロック装置を使用して、総数277層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、その両側に第3の押し出し機から第2層用ポリエステルと同じポリエステルを3層フィードブロックへと導き、層数277層の積層状態(両表層は第1層である)の溶融体の積層方向の両側にバッファ層をさらに積層した。両側のバッファ層の合計が全体の47%となるよう第3の押し出し機の供給量を調整した。その積層状態をさらにレイヤーダブリングブロックにて、2分岐して1:1の比率で積層し、内部に中間層、最表層に2つの最外層を含む全層数557層の未延伸多層積層構造を作製した。
この未延伸多層積層構造における厚み単調増加領域の厚みが薄い側に、上記で得られた塗布液Aを、ロールコーターにて塗布し未延伸積層体を得た。塗布厚みは乾燥・一軸延伸後に3μmとなる厚みになるよう塗布した。
この未延伸多層積層体を130℃の温度で幅方向に5.9倍に延伸した。得られた1軸延伸多層積層フィルムの厚みは78μmであった。
この多層積層フィルムを、多層積層フィルムの繰り返し単位の層番号を薄い側から付与したとき、上述した評価方法により評価し、その結果を表1に示す。
また、上述した延伸後の屈折率から、第1層は複屈折性であり、第2層は等方性であることを確認した。
実施例2、3の多層積層フィルムは、多層積層構造の厚みプロファイルを表1に示す値となるように作製した以外は、実施例1と同様にして多層積層フィルムを作製した。
実施例2、3で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
実施例4、5では、支持層の厚み及び多層積層構造の厚みプロファイルを表1に示す値となるようにし、それに伴い中間層及び最外層の厚み調整のため、第3の押し出し機によるバッファ層の供給量を調整した以外は、実施例1と同様にして多層積層フィルムを作製した。
実施例4、5で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
実施例6、7では、PVA系樹脂層の厚みを表1に示す厚みとした以外は、実施例1と同様にして多層積層フィルムを作製した。
実施例6、7で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
実施例8、9では、支持層の厚みを表1に示す値となるようにし、それに伴い中間層及び最外層の厚み調整のため、第3の押し出し機によるバッファ層の供給量を調整した以外は、実施例1と同様にして多層積層フィルムを作製した。
実施例8、9で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
比較例1では、多層積層構造が単調増加領域を有しないもの、すなわち第1層と第2層の繰り返し単位の1組の厚みが一定(125μm)であるものを使用した以外は、実施例1と同様にして、多層積層フィルムを得た。
比較例1で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
比較例2では、支持層及びPVA系樹脂層が、多層積層構造の厚み単調増加領域の厚みが厚い側に設けられた以外は実施例1と同様にして、多層積層フィルムを得た。
比較例2で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
比較例3では、支持層及びPVA系樹脂層が、多層積層構造の厚み単調増加領域の厚みが厚い側に設けられた以外は実施例8と同様にして、多層積層フィルムを得た。
比較例3で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
比較例4では、支持層及びPVA系樹脂層が、多層積層構造の厚み単調増加領域の厚みが厚い側に設けられた以外は実施例9と同様にして、多層積層フィルムを得た。
比較例4で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1に示す。
12 支持層(最外層)
14 多層積層構造
16 中間層
18 最外層
22 ポリビニルアルコール系樹脂層
30 多層積層フィルム
Claims (4)
- 樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造、及び樹脂を主体とする支持層を有する多層積層体と、
ポリビニルアルコール系樹脂層と、
を有する多層積層フィルムであって、
前記多層積層構造と前記支持層とは直接接しており、
前記支持層と前記ポリビニルアルコール系樹脂層とは、直接接しており、
前記多層積層構造は、前記第1層と前記第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、前記層厚みプロファイルは厚み単調増加領域を有し、
前記厚み単調増加領域の厚みが薄い側の最表層から10組までの前記繰り返し単位の平均厚みが80nm以上120nm以下であり、
前記厚み単調増加領域において厚みが薄い側に前記支持層と前記ポリビニルアルコール系樹脂層とが設けられる、多層積層フィルム。 - 前記支持層の厚みが1μm超え20μm以下である請求項1に記載の多層積層フィルム。
- 前記第1層が複屈折性の層であり、前記第2層が等方性の層である請求項1又は請求項2に記載の多層積層フィルム。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂層は偏光機能を有する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の多層積層フィルム。
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