JP7237753B2 - 内燃機関用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
より摩擦低減効果が高い潤滑油組成物を得るためには、一般的に、モリブデン系化合物等の摩擦調整剤;エステル系摩擦調整剤、アミン系摩擦調整剤等の無灰系摩擦調整剤が使用されている。
また、前述の潤滑油組成物の添加剤として用いられる摩擦調整剤の他、摩擦低減作用を有するポリ(メタ)アクリレート系重合体(PMA系重合体)の検討も行われている。
例えば、特許文献1には、炭素数10~18のアルキル基を有するアルキルアクリレートと、特定の構造を有するヒドロキシアルキルアクリレートとを必須の構成単量体とし、各構成単量体の構成比率が特定の比率を満たし、かつ、重量平均分子量が2000~40000未満である共重合体からなることを特徴とする潤滑油用摩擦摩耗低減剤が開示されている。
また、特許文献2には、潤滑油特性の改善のための、アルコール残基中に6~22個の炭素原子を有する(メタ)アクリレートから誘導される繰返単位を含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートにおいて、該ポリアルキル(メタ)アクリレートは、極性エチレン系不飽和モノマーのアミン誘導体から誘導される繰返単位を含むことを特徴とする、潤滑油特性の改善のためのポリアルキル(メタ)アクリレートが開示されている。
ところで、潤滑油組成物は、各種金属部材の潤滑にも用いられるが、例えば、銅を含有する金属材料は、疲労現象が少ないという優れた特徴を有する一方で、腐食され易いという欠点がある。したがって、潤滑油やその添加剤に対しては、前述の優れた摩擦低減効果とともに、各種金属材料に対する耐腐食性も求められている。
しかし、前述のモリブデン系化合物を含む潤滑油組成物の場合、銅に対する腐食防止性が十分ではない。一方、前述の無灰系摩擦調整剤については、銅に対する腐食防止性は良好であるが、一般的に、温度が高くなるにつれて、十分な摩擦低減効果が得られなくなる傾向がある。
同様に、PMA系重合体を摩擦調整剤として用いる場合にも、高温での摩擦低減効果に改善の余地がある。
このように、潤滑油組成物には、高温条件下での優れた摩擦低減効果に加えて、銅の腐食抑制効果との両立も要求されている。
[1] 基油(A)と、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位(a)及び下記一般式(b1)で表される構成単位(b)を含む共重合体(B)とを含有する、潤滑油組成物。
(一般式(b1)中、R1は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R2はメチル基又は水素原子を示す。m及びnは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、r及びsは、それぞれ独立に、1~30の整数である。)
[3] 前記成分(B)中、前記構成単位(a)の含有量が、成分(B)が有する構成単位の全量100質量%基準で、40質量%以上60質量%以下である、前記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記成分(B)の質量平均分子量(Mw)が2,000~200,000である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[5] 更に、金属系清浄剤、耐摩耗剤、無灰系分散剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、油性向上剤、防錆剤及び金属不活性化剤からなる群より選ばれる1種以上を含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[6] リン含有量が、潤滑油組成物全量基準で、0.10質量%以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 前記アミノ基含有単量体が、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸-N,N-ジ-t-ブチルアミノエチルエステルからなる群より選ばれる1種以上の3級アミノ基含有単量体である、前記[2]~[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] 前記成分(B)が、更に、下記の一般式(d1)で表されるヒドロキシアルキルアクリレート由来の構成単位(d)を含む共重合体である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[11] モリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物全量基準で、0.05質量%以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[12] 基油(A)と、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位(a)及び下記一般式(b1)で表される構成単位(b)を含む共重合体(B)とを配合する、潤滑油組成物の製造方法。
(一般式(b1)中、R1は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R2はメチル基又は水素原子を示す。m及びnは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、r及びsは、それぞれ独立に、1~30の整数である。)
[14] 銅を含有する部材に対して、前記[12]に記載の製造方法で得られる潤滑油組成物を用いることを特徴とする、潤滑方法。
[15] 前記[1]~[11]のいずれかに記載の潤滑油組成物を用いることを特徴とする潤滑方法。
[16] 前記[12]に記載の製造方法で得られる潤滑油組成物を用いることを特徴とする、潤滑方法。
[17] 前記[1]~[11]に記載の潤滑油組成物を用いた内燃機関。
[18] 前記[12]に記載の製造方法で得られる潤滑油組成物を用いた内燃機関。
[潤滑油組成物]
本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、基油(A)と、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位(a)及び下記一般式(b1)で表される構成単位(b)を含む共重合体(B)とを含有する。
(一般式(b1)中、R1は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R2はメチル基又は水素原子を示す。m及びnは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、r及びsは、それぞれ独立に、1~30の整数である。)
また、本明細書中で、単に「腐食抑制効果」と記載する場合、潤滑油組成物の高温時における銅の腐食抑制効果を意味する。
ここで、「高温」とは、110℃以上(好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上)の温度を指す。
また、本明細書中、「炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子のみから構成されている基を意味する。「炭化水素基」には、直鎖又は分岐鎖から構成される「脂肪族基」、芳香性を有しない飽和又は不飽和の炭素環を1つ以上有する「脂環式基」、ベンゼン環等の芳香性を示す芳香環を1つ以上有する「芳香族基」が含まれる。
また、本明細書中、「環形成炭素数」とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。
また、本発明中、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の双方を示し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
以下、前記潤滑油組成物中に含有される各成分について説明する。
前記潤滑油組成物に用いる基油(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう。)としては、特に制限はなく、従来、潤滑油の基油として使用されている鉱油及び合成油の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき処理;溶剤抽出又は水素化分解の少なくとも1種の処理;溶剤脱ろう又は接触脱ろうの少なくとも1種の脱ろう処理;水素化精製処理;等のうちの1種以上の処理、好ましくは全ての処理を行って精製した油、又は鉱油系ワックスを異性化することによって製造される油等が挙げられる。これらの鉱油の中では、水素化精製により処理した油が好ましい。
また、当該鉱油としては、米国石油協会(API:American Petroleum Institute)基油カテゴリーのグループ2に分類される鉱油、及びグループ3に分類される鉱油がより好ましく、グループ3に分類される鉱油が更に好ましい。これらの鉱油は、後述する%CP、粘度指数を良好にしやすくなる。
合成油としては、例えば、ポリブテン;α-オレフィン単独重合体、α-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種のエステル;ポリフェニルエーテル等の各種のエーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;又はGTLプロセスにおける残渣WAX(ガストゥリキッド ワックス)を水素化異性化脱ろうすることによって製造されるGTL基油;等が挙げられる。これらの合成油の中では、ポリα-オレフィン、エステル、GTL基油が好ましく、これら2種以上を組み合わせたものも合成油として好適に使用される。
本発明の一実施形態においては、前記基油(A)として、前記鉱油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記合成油を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更には、前記鉱油1種以上と前記合成油1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
また、前記基油(A)の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
また、特に制限はないが、前記基油(A)の40℃動粘度は、好ましくは5mm2/s以上、より好ましくは10mm2/s以上、更に好ましくは15mm2/s以上であり、また、好ましくは65mm2/s以下、より好ましくは40mm2/s以下、更に好ましくは25mm2/s以下である。
また、前記基油(A)の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは115以上、より更に好ましくは120以上である。当該粘度指数が100以上の基油は、温度の変化による粘度変化が小さい。
前記基油(A)の粘度指数が当該範囲であることで、潤滑油組成物の粘度特性を良好にしやすくなる。
前記基油(A)の40℃動粘度、100℃動粘度及び粘度指数の値は、後述する実施例に記載された方法により測定されるものである。
当該%CAが3.0以下で、硫黄分が30質量ppm以下の基油は、良好な酸化安定性を有し、酸価の上昇やスラッジの生成を抑制しうる潤滑油組成物を提供することができる。当該%CAは、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下であり、また、より好ましい硫黄分は20質量ppm以下、更に好ましくは15質量ppm以下、より更に好ましくは10質量ppm以下である。
また、前記基油(A)は、環分析によるパラフィン分(%CP)が好ましくは70以上、より好ましくは75以上、更に好ましくは80以上である。当該%CPを70以上とすることで、基油の酸化安定性が良好になる。ここで、環分析による%CPとは、環分析n-d-M法にて算出したパラフィン分の割合(百分率)を示す。
また、前記基油(A)のNOACK蒸発量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは14.0質量%以下である。
前記基油(A)の環分析による芳香族分(%CA)、パラフィン分(%CP)、硫黄分(硫黄原子含有量)及びNOACK蒸発量は、それぞれ、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
前記潤滑油組成物に用いる共重合体(B)(以下、単に「成分(B)」ともいう。)は、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位(a)(以下、単に「構成単位(a)」ともいう。)及び下記一般式(b1)で表される構成単位(b)(以下、単に「構成単位(b)」ともいう。)を含む。
(一般式(b1)中、R1は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R2はメチル基又は水素原子を示す。m及びnは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、r及びsは、それぞれ独立に、1~30の整数である。)
前記構成単位(a)は、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位である。
前記炭素数24~75の分岐アルキル基が有する炭素数は、好ましくは35以上、より好ましくは45以上、更に好ましくは55以上であり、そして、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、更に好ましくは65以下である。
なお、当該アルキル基の炭素数とは、下記一般式(am1)で表される(メタ)アクリル酸アルキル中、R13で示すアルキル基に由来するアルキル基の炭素数を指す。
すなわち、構成単位(a)の由来となる前記炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸は、下記一般式(am1)で表される単量体である。
R12は、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、及びブタン-2,2-ジイル基からなる群より選ばれる1種、更に好ましくはエチレン基、プロパン-1,3-ジイル基及びブタン-1,4-ジイル基からなる群より選ばれる1種、より更に好ましくはエチレン基である。
R13が示す炭素数24~75の分岐アルキル基が有する炭素数は、好ましくは35以上、より好ましくは45以上、更に好ましくは55以上であり、そして、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、更に好ましくは65以下である。
tは、好ましくは0又は1~10、より好ましくは0又は1~5、更に好ましくは0である。
(一般式(am2)中、R11はメチル基又は水素原子を示し、R14は炭素数1~8のアルキレン基を示し、R15及びR16は、それぞれ独立に、炭素数1~73の直鎖又は分岐アルキル基を示し、好ましくは直鎖アルキル基である。ただし、R14、R15及びR16の合計炭素数は23以上74以下である。)
R14は、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基、より好ましくはメチレン基又はエチレン基、更に好ましくはメチレン基である。
R15が示す直鎖又は分岐アルキル基の炭素数は、好ましくは10~60、より好ましくは20~50、更に好ましくは25~40、より更に好ましくは28~34である。
R16が示す直鎖又は分岐アルキル基の炭素数は、好ましくは10~60、より好ましくは18~50、更に好ましくは22~36、より更に好ましくは24~30である。
前記構成単位(b)は、下記一般式(b1)で表される構成単位である。
(一般式(b1)中、R1は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、R2はメチル基又は水素原子を示す。m及びnは、それぞれ独立に、1~10の整数であり、r及びsは、それぞれ独立に、1~30の整数である。)
R2は、好ましくはメチル基である。
m及びnは、それぞれ独立に、好ましくは2~8の整数、より好ましくは3~7の整数、更に好ましくは4~6の整数である。m及びnは、互いに同一であることがより更に好ましい。
r及びsは、それぞれ独立に、好ましくは2~20の整数、より好ましくは3~15の整数、更に好ましくは4~10の整数、より更に好ましくは4~6の整数である。r及びsは、互いに同一であることがより更に好ましい。
R3は炭素数2~8の2価の炭化水素基であり、前記2価の炭化水素基が有する炭素数は好ましくは4~6、より好ましくは4又は6である。
前記成分(B)は、前記構成単位(a)及び(b)の構成単位に加えて、摩擦低減効果を向上させる観点から、更に、アミノ基含有単量体、第4級アンモニウム塩基含有単量体、ニトリル基含有単量体及びニトロ基含有単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体に由来する構成単位(c)(以下、単に「構成単位(c)」ともいう。)を含むことが好ましい。
構成単位(c)の由来となる前記単量体としては、より好ましくはアミノ基含有単量体及び第4級アンモニウム塩基含有単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体、更に好ましくはアミノ基含有単量体である。
R22は、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基、より好ましくはメチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、及びブタン-2,2-ジイル基からなる群より選ばれる1種、更に好ましくはエチレン基、プロパン-1,3-ジイル基及びブタン-1,4-ジイル基からなる群より選ばれる1種、より更に好ましくはエチレン基である。
R24及びR23は、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基からなる群より選ばれる1種、より好ましくはメチル基、エチル基及びtert-ブチル基からなる群より選ばれる1種、更に好ましくはメチル基又はエチル基、より更に好ましくはメチル基が挙げられる。
前記一般式(cm1)で表される好適なアミノ基含有単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸-N,N-ジ-t-ブチルアミノエチルエステルからなる群より選ばれる1種以上の3級アミノ基含有単量体が挙げられ、より好ましくは(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチルエステルである。
前記一般式(cm2)で表される好適なアミノ基含有単量体の具体例としては、モノ(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルアミン、アリルメタアリルアミン、2-ブテニルアミン、及びイソクロチルアミン等が挙げられる。
また、前記第4級アンモニウム塩基含有単量体としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドからなる群より選ばれる1種以上により、前記アミノ基含単量体の塩を4級化することにより得られる第4級アンモニウム塩も含まれる。
前記ニトロ基含有単量体としては、例えば、ニトロスチレン等が挙げられる。
前記成分(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記構成単位(a)~(c)以外に、更に、その他の構成単位を含んでいてもよい。
前記構成単位(a)~(c)以外の構成単位としては、例えば、前記構成単位(a)を構成する単量体以外のアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位;前記構成単位(b)又は(c)を構成する単量体以外の官能基含有モノマー由来の構成単位が挙げられる。
前記構成単位(a)を構成する単量体以外のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数1~23の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであって前記アルキル基中の合計炭素数が24未満である(メタ)アクリル酸アルキル;分岐アルキル基を有さず、炭素数24~75の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;等が挙げられる。
R5は、好ましくはエチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、及びブタン-2,2-ジイル基からなる群より選ばれる1種、より好ましくはエチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基及びプロパン-1,1-ジイル基からなる群より選ばれる1種、更に好ましくはエチレン基又はプロパン-1,3-ジイル基、より更に好ましくはエチレン基である。
なお、当該質量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
また、成分(B)である共重合体の態様としては、例えば、ランダム付加重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
前記溶剤としては、前記単量体が溶解する溶剤であればよく、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン等の炭素数6~18の脂肪族炭化水素系溶剤;2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の炭素数3~8のアルコール系溶剤;メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;及び前述した鉱油;等を用いることができる。これらの中では、鉱油が好ましい。
アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(略称:AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(略称:ADVN)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(略称:ACVA)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
パーオキサイド系重合開始剤としては、例えば、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等が挙げられる。
前記重合開始剤及び連鎖移動剤の使用量は、所望の重合体の物性を考慮して(例えば、分子量の調整等)、適宜選定することができる。
また、前記溶液重合の他、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法を用いて製造することもできる。
本発明の一態様である潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分(A)及び(B)以外のその他成分を、更に含有したものであってもよい。
その他成分としては、一般的に用いられる潤滑油用添加剤が挙げられ、当該潤滑油用添加剤としては、例えば、金属系清浄剤、耐摩耗剤、無灰系分散剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、油性向上剤、防錆剤及び金属不活性化剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、当該潤滑油用添加剤として、欧州自動車工業会(ACEA)規格や、API/ILSAC SN/GF-5規格等に適合した、複数の添加剤を含有する市販品の添加剤パッケージを用いてもよい。
また、前記の添加剤としての機能を複数有する化合物(例えば、耐摩耗剤及び極圧剤としての機能を有する化合物)を用いてもよい。
更に、これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、これらの潤滑油用添加剤の合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~25質量%、更に好ましくは0~20質量%、より更に好ましくは0~15質量%である。
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子を含有する有機酸金属塩化合物が挙げられ、具体的には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子を含有する、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「アルカリ金属」としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムを指す。
また、「アルカリ土類金属」としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムを指す。
金属系清浄剤に含まれる金属原子としては、高温での清浄性の向上の観点から、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
R31及びR32として選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルケニル基、環形成炭素数3~18のシクロアルキル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアルキルアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基等が挙げられる。
前記金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは0~600mgKOH/gである。
本発明の一態様において、前記金属系清浄剤が塩基性塩又は過塩基性塩である場合には、当該金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは10~600mgKOH/g、より好ましくは20~500mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501:2003「石油製品および潤滑油-中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
なお、前記金属系清浄剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合の好適な合計含有量も、前述した含有量と同じである。
耐摩耗剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が好ましい。
なお、前記耐摩耗剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合の好適な合計含有量も、前述した含有量と同じである。
無灰系分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル又はこれらのホウ素変性物等が挙げられるが、アルケニルコハク酸イミド及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミドが好ましい。
なお、当該アルケニルコハク酸イミドは、下記一般式(i)又は(ii)で示される化合物と、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、エポキシ化合物、及び有機酸等から選ばれる1種以上とを反応させた変性アルケニルコハク酸イミドとしてもよい。
また、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドとしては、下記一般式(i)又は(ii)で表される化合物のホウ素変性物が挙げられる。
RB、RB1及びRB2は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。
x1は1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
x2は0~10の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート等のPMA系;オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体等のOCP系;スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体など)などが挙げられる。
これらの粘度指数向上剤は、好ましくは、質量平均分子量(Mw)が5,000以上1,500,000以下であり、PMA系の場合、好ましくは20,000以上、より好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。また、OCP系の場合、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、また、好ましくは800,000以下、より好ましくは500,000以下である。
なお、当該質量平均分子量(Mw)は、例えば、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
なお、粘度指数向上剤の構造としては、直鎖であってもよく、分岐鎖を有するものであってもよい。また、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有する櫛形ポリマーや、分岐高分子の一種であり1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有する星形ポリマー等といった特定の構造を有するポリマーであってもよい。
より具体的には、アルキル(メタ)アクリレートや、窒素原子含有系、ハロゲン元素含有系、水酸基含有系、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系等の各種ビニル単量体に由来する構成単位を含む主鎖に対して、前記重合性官能基を有するマクロモノマーに由来する構成単位を含む側鎖を有する共重合体が好ましく挙げられる。
また、当該櫛形ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは700,000以下である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6以下、より好ましくは5.6以下、更に好ましくは5以下であり、下限値としては特に制限されないが、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.10以上、より更に好ましくは1.50以上である。
PSSIが30以下のポリアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、潤滑油組成物の摩耗防止性をより高めることができる。当該PSSIは、より好ましくは1以上25以下である。PSSIを25以下とすることで、潤滑油組成物の摩耗防止性をより高めることができる。
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートのポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上100万以下、より好ましくは3万以上50万以下である。当該ポリアルキル(メタ)アクリレートの質量平均分子量を、この範囲とすることで、前記SSIの値を30以下に調整しやすくなる。
なお、当該質量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
また、前記粘度指数向上剤は、樹脂分として、例えば、成分(B)以外の前述のポリマーを含むものであるが、通常はハンドリング性や前述の基油への溶解性を考慮し、ポリマーを含む樹脂分が鉱油等の希釈油により希釈された溶液の状態で市販されていることが多い。当該粘度指数向上剤の樹脂分濃度としては、粘度指数向上剤の全量基準で、通常10質量%以上50質量%以下である。
この場合、粘度指数向上剤を用いる場合の粘度指数向上剤の含有量は、樹脂分換算での含有量として、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
極圧剤としては、例えば、スルフィド類、スルフォキシド類、スルフォン類、チオホスフィネート類等の硫黄系極圧剤、塩素化炭化水素等のハロゲン系極圧剤、有機金属系極圧剤等が挙げられる。また、上述の耐摩耗剤の内、極圧剤としての機能を有する化合物を用いることもできる。
本発明の一態様において、これらの極圧剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、従来潤滑油の酸化防止剤として使用されている公知の酸化防止剤の中から、任意のものを適宜選択して用いることができ、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、炭素数3~20のアルキル基を有する置換フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;等を挙げられる。
モリブデン系酸化防止剤としては、例えば、三酸化モリブデン及び/又はモリブデン酸とアミン化合物とを反応させてなるモリブデンアミン錯体等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネイト等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、ホスファイト等が挙げられる。なお、リン系酸化防止剤を用いる場合、後述する潤滑油組成物の好適なリン原子含有量を満たす量となるようにすることが好ましい。
本発明の一態様において、これらの酸化防止剤は単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができ、好ましくはフェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である。
前記流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート系(PMA系;ポリアルキル(メタ)アクリレート等)、ポリビニルアセテート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、ポリメタクリレート系が好ましく用いられる。これらの流動点降下剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油、フルオロシリコーン油及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。これら消泡剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
界面活性剤又は抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤又は抗乳化剤は、単独で又は2種以上を任意に組合せて含有させることができる。
摩擦調整剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブテン酸のアミン塩等のモリブデン系摩擦調整剤;炭素数6~30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤;油脂類、アミン、アミド、硫化エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。
ただし、銅に対する腐食性を抑える観点から、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)等の硫黄含有化合物である摩擦調整剤のモリブデン原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であり、含有しないことが更に好ましい。
油性向上剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸;リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和又は不飽和モノアルコール;ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和又は不飽和モノアミン;ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸アミド;グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールと脂肪族飽和又は不飽和モノカルボン酸との部分エステル;等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。
前記潤滑油組成物中のリン原子の含有量は、潤滑油組成物全量(100質量%)基準で、0.10質量%以下であることが好ましい。通常、潤滑油組成物中のリン原子の含有量は、ある程度多い方が耐摩耗性等の観点からは望ましいことがある一方で、リン含有化合物は、環境負荷低減の観点から、その低減が要求されている。本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、リン原子が低含有量であっても、摩擦低減効果に優れる。このような観点から、前記リン原子の含有量は、潤滑油組成物全量(100質量%)基準で、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.09質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下である。
また、当該リン原子含有量の下限値としては、特に制限はなく、リン原子を含有する場合、潤滑油組成物全量基準で、例えば、0.001質量%以上である。
リン原子の含有量は、前述のその他添加剤中、リン原子を含有する添加剤の添加量により調整することができる。
当該リン原子の含有量は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
また、当該モリブデン原子含有量の下限値としては、特に制限はなく、モリブデン原子を含有する場合、潤滑油組成物全量基準で、例えば、0.0002質量%以上である。
当該モリブデン原子の含有量は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
モリブデン原子の含有量は、前述のその他添加剤中、モリブデン原子を含有する添加剤の添加量により調整することができる。
また、前記潤滑油組成物の硫酸灰分は、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
当該硫酸灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定される値である。
また、本実施形態の潤滑油組成物の40℃動粘度は、好ましくは5~65mm2/s、より好ましくは8~55mm2/s、更に好ましくは10~45mm2/sである。
本実施形態の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは125以上である。
前記の各動粘度及び粘度指数は、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
本発明の一実施形態である潤滑油組成物の製造方法は、基油(A)と、炭素数24~75の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位(a)及び前記一般式(b1)で表される構成単位(b)を含む共重合体(B)とを配合する。
また、当該製造方法では、必要に応じて、成分(A)及び成分(B)以外のその他成分を更に配合してもよい。
成分(A)、成分(B)、及びその他成分のそれぞれは、前記潤滑油組成物について説明したものと同様であるとともに、それぞれの好適な態様も同様であり、当該製造方法で得られる潤滑油組成物も前述した通りであるため、それらの記載は省略する。
当該製造方法では、前記成分(A)及び成分(B)、並びに必要に応じて添加されるその他成分は、いかなる方法で基油に配合されてもよく、その手法は限定されない。
本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として使用することができ、当該内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する潤滑油として好適に使用することができる。より好適には、銅を含有する部材を含む前記内燃機関を潤滑するための潤滑油として使用することができる。
また、本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、金属系摩擦調整剤を用いない場合であっても、従来の無灰系摩擦調整剤とは異なり、高温でも優れた摩擦低減効果を有する。したがって、本発明の一実施形態である成分(B)は、前記潤滑油組成物用の摩擦調整剤として用いることができる。そして、例えば、近年、環境規制が厳しくなる中、前述のとおり、MoDTC等の金属系摩擦調整剤に由来する潤滑油組成物中の金属分や硫黄分、リン分をできるだけ低くすることが望まれている。そのため、本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、前述した理由からも、環境規制が厳しいガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、又はジメチルエーテルを燃料とするエンジンやガスエンジンなどの内燃機関用の潤滑油組成物としても好適である。
したがって、本発明の一実施形態である潤滑油組成物を用いる潤滑方法としては、好ましくは、前記潤滑油組成物を、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法が挙げられる。また、例えば、銅を含有する部材に対して、前記潤滑油組成物を用いることを特徴とする潤滑方法が挙げられ、より好適には、銅を含有する部材を含む前記内燃機関に充填し、当該銅を含む各部品間を潤滑する方法が挙げられる。
また、本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、前述した理由と同様の理由から、例えば、環境規制が厳しいガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、又はジメチルエーテルを燃料とするエンジンやガスエンジンなどの内燃機関に充填し、当該内燃機関に係る各部品間を潤滑する方法も好適な例として挙げられる。
本発明の他の実施形態としては、前記潤滑油組成物を用いた内燃機関が挙げられ、好ましくは前記潤滑油組成物をエンジン油として用いた内燃機関(エンジン)である。当該内燃機関としては、例えば、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等に搭載されるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられる。また、より好適には、これらの内燃機関のうち、銅を含有する部材を含む内燃機関が挙げられる。
<動粘度(40℃動粘度、100℃動粘度)>
JIS K2283:2000に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定した値である。
<粘度指数>
JIS K2283:2000に準拠して算出した値である。
<NOACK蒸発量>
ASTM D5800(250℃、1時間)に規定の方法に従って測定した値である。
<環分析(%CA及び%CP)>
環分析n-d-M法にて算出した芳香族(アロマティック)分の割合(百分率)を%CA、パラフィン分の割合(百分率)を%CPとして示し、ASTM D-3238に従って測定したものである。
<塩基価>
JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)により測定したものである。
<モリブデン原子含有量、カルシウム原子、亜鉛原子、及びリン原子の含有量>
JPI-5S-38-2003に準拠して測定した。
<硫黄原子の含有量>
JIS K2541-6:2013(紫外蛍光法)に準拠して測定した値である。
<成分(B)中の構成単位の確認方法>
核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子社製、「ECX-400P」)を用いて得られた1H―NMR並びに13C-NMRの化学シフト及び積分値から確認した。具体的には、構成単位のピークの積分値から、構成単位の構造を確認した。以下に測定条件を示す。
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
共鳴周波数:100MHz
測定モード:ゲート付きデカップリング法
積算回数:2000~5000
パルス遅延時間:25s
パルス幅:9.25μs
x-angle:90°
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー社製、「HLC 8220」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TOSOH TSK-GEL GHXL-L」
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1mL/min
[摩擦試験:摩擦係数]
PCS Instruments社製のMTM(Mini Traction Machine)試験機を用いて、以下の条件で潤滑油組成物の摩擦係数を測定した。
(測定条件)
・試験方法:ボール オン ディスク
・試験ピース:標準テストピース(AISI 52100規格)のディスク、及び同材質のボール(直径3/4インチ)を使用
・試験時間:2時間
・接触面圧:1GPa
・測定速度:50mm/s
・油温:135℃
・すべり率(SRR):50%
・油量:35mL
[腐食試験:銅溶出量]
ガラス製試験管(径40mm×長さ300mm)に試験油として潤滑油組成物100mLを取り、銅板(25mm×25mm×1mm)を研磨し、試験油に浸漬させ、腐食試験を行った。試験は、油温135℃で空気を5L/hの流量で吹き込みながら、168時間行った。その結果を、銅の溶出量で評価した。銅の溶出量は、JPI-5S-38-2003に準拠して測定した。
下記の表1に示す組成となるように、基油に各成分を配合して、潤滑油組成物を調製後、前記評価方法に従って、各実施例及び各比較例の潤滑油組成物を評価した。得られた結果を下記表1に示す。
<成分(A):基油>
・水素化精製基油(鉱油):API規格グループIIIの100N基油、40℃動粘度19.4mm2/s、100℃動粘度4.3mm2/s、粘度指数126、硫黄含有量0.001質量%未満、NOACK蒸発量14質量%、n-d-M環分析;%CP78.3、%CA=0.1
・共重合体(I):前記構成単位(a)として下記式(a1-1)で表される構成単位、前記構成単位(b)として下記式(b1-1)で表される構成単位、及び前記構成単位(c)として下記式(c1-1)で表される構成単位から構成される共重合体。(質量平均分子量(Mw)=25,000。)
・共重合体(III):共重合体を構成する構成単位の全量100質量%基準で、下記式(d1-1)で表される構成単位、下記式(e1-1)で表される構成単位、及び下記式(f1-1)で表される構成単位から構成される共重合体。(質量平均分子量(Mw)=25,000。)
・モリブデン系摩擦調整剤:モリブデンジチオカルバメート「アデカ サクラルーブ(登録商標) 525」(商品名、ADEKA社製)、モリブデン原子の含有量10.0質量%、硫黄原子の含有量11.0質量%
・エステル系摩擦調整剤:グリセリンモノオレエート
・アミン系摩擦調整剤:ジエタノールアミン
・カルシウムスルホネート:塩基価(過塩素酸法)300mgKOH/g、カルシウム原子の含有量11.9質量%
・ジチオリン酸亜鉛:ジアルキルジチオリン酸亜鉛、亜鉛原子の含有量8.9質量%、リン原子の含有量7.4質量%、硫黄原子の含有量15.0質量%
・その他添加剤
一方、比較例1~5に記載の潤滑油組成物は、摩擦調整剤として成分(B)以外の成分を用いているため、高温時における摩擦低減効果と銅に対する腐食防止性とを両立することができないことが確認された。
また、本発明の一実施形態である潤滑油組成物は、金属系摩擦調整剤を用いない場合であっても、高温で優れた摩擦低減効果を有することから、MoDTC等の金属系摩擦調整剤の低減が要求される用途、例えば、環境規制が厳しいガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、又はジメチルエーテルを燃料とするエンジンやガスエンジンなどの内燃機関用の潤滑油組成物としても好適に使用されるものである。
Claims (13)
- 前記成分(B)が、更に、アミノ基含有単量体、第4級アンモニウム塩基含有単量体、ニトリル基含有単量体及びニトロ基含有単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体に由来する構成単位(c)を含む共重合体である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 前記成分(B)中、前記構成単位(a)の含有量が、成分(B)が有する構成単位の全量100質量%基準で、40質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 前記成分(B)の質量平均分子量(Mw)が2,000~200,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 更に、金属系清浄剤、耐摩耗剤、無灰系分散剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、油性向上剤、防錆剤及び金属不活性化剤からなる群より選ばれる1種以上を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- リン原子の含有量が、潤滑油組成物全量基準で、0.10質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 前記アミノ基含有単量体が、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸-N,N-ジ-t-ブチルアミノエチルエステルからなる群より選ばれる1種以上の3級アミノ基含有単量体である、請求項2~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 前記成分(B)の含有量が、潤滑油組成物全量基準で、0.1質量%以上3.0質量%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- モリブデン原子の含有量が、潤滑油組成物全量基準で、0.05質量%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
- 銅を含有する部材に対して、請求項1~11のいずれか1項に記載の潤滑油組成物を用いることを特徴とする潤滑方法。
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