JP7236221B2 - 舶用ディーゼルエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンに関するものである。
従来、船舶の分野においては、シリンダおよびピストン等によって構成される燃焼室を有する舶用ディーゼルエンジンが公知である(例えば、特許文献1参照)。一般に、舶用ディーゼルエンジンのシリンダは、円筒形状のシリンダライナの上部にシリンダカバーを固定して形成される。ピストンは、その上死点と下死点との間をシリンダライナの内壁面に沿って往復運動し得るように、シリンダ内に設けられる。舶用ディーゼルエンジンは、シリンダ内の燃焼室に供給された燃料を燃焼用ガス(圧縮ガス)とともに燃焼させることによってピストンを往復運動させ、これにより、クランクシャフト等の出力軸を回転運動させて船舶の推進力を出力する。
このような舶用ディーゼルエンジンの燃料消費率(以下、燃費と適宜略記する)を良くするためには、舶用ディーゼルエンジンの熱効率(以下、熱効率と適宜略記する)を向上させることが有効である。この熱効率を向上させるための一般的な手法として、例えば、ピストンが下死点から上死点までの1ストロークの行程を移動する際の行程容積圧縮比を高めることが公知である。
行程容積圧縮比は、ピストンが下死点に位置する際のシリンダの容積(シリンダの行程容積と隙間容積とを加算した容積)と、ピストンが上死点に位置する際にシリンダ頂部に存する隙間の容積(隙間容積)との比によって表される。なお、シリンダの行程容積は、シリンダ内でピストンが上死点と下死点との間を1ストローク移動する行程の容積である。このような行程容積圧縮比を高めるための一手法として、従来、ピストンの上死点の位置をシリンダに対して相対的に上げることが行われている。
特開2014-20275号公報
しかしながら、上述した従来技術では、行程容積圧縮比を高めるために、シリンダの隙間容積(すなわち燃焼室の容積)を縮小させてしまう場合が多い。この場合、燃焼室の容積に対する表面積の比(=燃焼室の表面積/燃焼室の容積)が増大することから、燃焼室での燃料の燃焼によって発生した熱エネルギーのうち燃焼室から失われる熱エネルギー(以下、熱損失という)が増大する恐れがある。この熱損失の増大は、舶用ディーゼルエンジンの熱効率の悪化を招来し、延いては、燃費の悪化(増大)に繋がる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、熱損失の増大を抑制するとともに燃費を向上させることができる舶用ディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、燃料を燃焼させるための燃焼室を有するシリンダと、前記燃焼室での燃料の燃焼によって前記シリンダ内を往復運動するピストンと、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換して船舶の推進力を出力する出力軸と、を備える舶用ディーゼルエンジンであって、前記ピストンのストロークと前記シリンダの内径との比であるストロークボア比は、4.4以上であり、前記ピストンが下死点に位置する際の前記シリンダの容積と前記ピストンが上死点に位置する際の前記シリンダの容積との比を行程容積圧縮比とし、当該舶用ディーゼルエンジンの設計上最大の正味平均有効圧力に対する100%負荷時の正味平均有効圧力の割合をディレート率とし、当該舶用ディーゼルエンジンに要求される100%負荷時のエンジン回転数とエンジン出力との組み合わせをレーティングとし、前記ピストンが上死点に位置する際の前記燃焼室の高さと内径との比を燃焼室縦横比としたとき、前記レーティングは、当該舶用ディーゼルエンジンの設計上最大の正味平均有効圧力から設計上最小の正味平均有効圧力までの範囲内のエンジン回転数とエンジン出力との組み合わせの中から選定され、前記ディレート率が1.00となるように前記レーティングが選定された場合、前記行程容積圧縮比は19以上21以下であり、前記ディレート率が0.75となるように前記レーティングが選定された場合、前記行程容積圧縮比は22.5以上25以下であり、前記ディレート率をRdとし、前記燃焼室縦横比をH/Dとしたとき、前記燃焼室縦横比は、以下に示す式(1)および式(2)を満足する、ことを特徴とする。
H/D≧0.31 (Rd≦0.736) ・・・(1)
H/D≧0.15×Rd+0.20 (0.736<Rd≦1.00)・・・(2)
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記シリンダに設けられる燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁に前記燃料を圧送する燃料噴射ポンプと、を備え、前記燃料噴射弁は、圧送された前記燃料を前記燃焼室に噴射することを特徴とする。
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記燃料の流通経路内に水を注入する注水ポンプをさらに備え、前記燃料噴射弁は、圧送された前記燃料と注入された前記水とを前記燃焼室に噴射することを特徴とする。
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記シリンダ内で生成される窒素酸化物あるいは前記シリンダから排出された排ガス中の窒素酸化物を低減するNOx低減装置を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンは、上記の発明において、前記燃焼室への前記燃料の噴射タイミングを遅延させるように前記燃料噴射ポンプを制御して、前記シリンダ内での窒素酸化物の生成自体を低減するNOx低減チューニングを行う制御装置を備えることを特徴とする。
本発明によれば、舶用ディーゼルエンジンの熱損失の増大を抑制するとともに燃費を向上させることができるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。 図2は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンのピストン部分の一構成例を示す拡大図である。 図3は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの燃焼室部分の一構成例を示す拡大図である。 図4は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンのレーティングマップの一例を示す図である。 図5は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの行程容積圧縮比の一例を示す図である。 図6は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの燃焼室縦横比の一例を示す図である。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る舶用ディーゼルエンジンの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(舶用ディーゼルエンジンの構成)
まず、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの一構成例を示す模式図である。この舶用ディーゼルエンジン10は、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラ(いずれも図示せず)を回転運動させる推進用の機関(主機関)である。例えば、舶用ディーゼルエンジン10は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド式ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンである。
本実施形態において、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン10は、下方に位置する台板1と、台板1上に設けられる架構5と、架構5上に設けられるシリンダジャケット(シリンダブロック)11とを備える。これらの台板1と架構5とシリンダジャケット11とは、上下方向に延在する複数のタイボルト(連結部材)26およびナット27により、一体に締結されて固定されている。また、舶用ディーゼルエンジン10は、シリンダジャケット11に設けられるシリンダ12と、シリンダ12内に設けられるピストン15と、ピストン15の往復運動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト2)とを備える。
台板1および架構5は、舶用ディーゼルエンジン10のクランクケースを構成するものである。図1に示すように、台板1内には、クランク4を有するクランクシャフト2と軸受3とが設けられる。クランクシャフト2は、船舶の推進力を出力する出力軸の一例であり、軸受3によって回転自在に支持されている。このクランクシャフト2には、クランク4を介して連接棒6の下端部が回動自在に連結されている。
架構5には、図1に示すように、連接棒6と、ガイド板7と、クロスヘッド8とが設けられる。本実施形態において、架構5は、ピストン軸方向に沿って設けられるガイド板7が幅方向に間隔を空けて一対をなすように配置されている。連接棒6は、その下端部がクランクシャフト2に連接された態様で、一対のガイド板7の間に配置されている。クロスヘッド8には、ピストン棒16の下端部に接続されるクロスヘッドピン9と、連接棒6の上端部に接続されるクロスヘッド軸受(図示せず)とが、クロスヘッドピン9の下半部においてそれぞれ回動自在に連結される。このクロスヘッド8は、図1に示すように一対のガイド板7の間に配置され、この一対のガイド板7に沿って移動自在に支持されている。
シリンダジャケット11は、図1に示すように、架構5の上部に設けられ、シリンダ12を支持する。本実施形態において、シリンダ12は、シリンダライナ13とシリンダカバー14とによって構成される筒状の構造体(気筒)であり、燃料を燃焼させるための燃焼室17を有する。シリンダライナ13は、例えば円筒形状の構造体であり、シリンダジャケット11内に配置される。シリンダライナ13の上部にはシリンダカバー14が固定され、これにより、シリンダライナ13内の空間部(燃焼室17等)が区画される。このシリンダライナ13の空間部内には、ピストン15がピストン軸方向(図1では上下方向)に往復運動自在に設けられる。このピストン15の下端部には、図1に示すように、ピストン棒16の上端部が連結されている。
また、シリンダカバー14には、図1に示すように、排気弁18と動弁装置19とが設けられている。排気弁18は、シリンダ12内の燃焼室17に通じる排気管21の排気口(排気ポート)を開閉可能に閉止する弁である。動弁装置19は、排気弁18を開閉駆動させる装置である。燃焼室17は、このような排気弁18と、上述したシリンダライナ13、シリンダカバー14およびピストン15とによって囲まれた空間である。また、舶用ディーゼルエンジン10は、シリンダ12の近傍に、排気マニホールド20を備える。排気マニホールド20は、シリンダ12の燃焼室17から排気管21を通じて排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスを一時貯留して、この排ガスの動圧を静圧に変える。また、舶用ディーゼルエンジン10は、空気等の燃焼用ガスを過給する過給機20aを備える。過給機20aは、排ガスのエネルギーを利用してタービンとともに圧縮機(いずれも図示せず)を回転させ、これにより、燃焼用ガスを圧縮する。過給機20aによって圧縮された燃焼用ガスは、配管等を介してシリンダ12内の燃焼室17に送給される。
また、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン10は、燃料噴射弁22と、燃料噴射ポンプ23と、注水ポンプ24とを備える。燃料噴射弁22は、燃焼室17内に噴射口を向ける態様でシリンダ12(例えばシリンダカバー14)に設けられる。燃料噴射ポンプ23および注水ポンプ24は、図1に示すように、シリンダ12の近傍に設けられる。特に図示しないが、燃料噴射ポンプ23および注水ポンプ24は、各々、配管および弁等を介して燃料噴射弁22と連通可能に接続されている。燃料噴射ポンプ23は、配管等による流通経路を通じて燃料噴射弁22に燃料を適宜圧送する。注水ポンプ24は、燃料噴射ポンプ23の吐出口から燃料噴射弁22の噴射口に至る燃料の流通経路内に、蒸留水等の水を適宜注入する。燃料噴射弁22は、燃料噴射ポンプ23によって圧送された燃料と注水ポンプ24によって注入された水とを、燃料噴射ポンプ23の圧送作用により、燃焼室17に交互に噴射(すなわち層状に噴射)する。
また、本実施形態において、舶用ディーゼルエンジン10は、図1に示すように、シリンダ12内で生成される窒素酸化物(NOx)を低減する、あるいはシリンダ12から排出された排ガス中のNOxを低減するNOx低減装置25を備える。このNOx低減装置25として、例えば、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システム、選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システム等が挙げられる。NOx低減装置25は、EGRシステムである場合、シリンダ12から排出された排ガスの一部を空気と混合してシリンダ12に再循環し、これにより、燃焼室17内での燃料の燃焼によるNOxの生成を抑制して排ガス中のNOxの量(排出量)を低減する。一方、NOx低減装置25は、SCRシステムである場合、シリンダ12から排出された排ガスに還元剤を噴射し、これにより、NOxの排出量を低減する。
上述したような構成を有する舶用ディーゼルエンジン10において、シリンダ12内の燃焼室17には、燃料噴射弁22から燃料、あるいは燃料および水が供給され、且つ、過給機20aによって圧縮された燃焼用ガスが供給される。これにより、燃焼室17内においては、供給された燃料が燃焼用ガスによって燃焼するとともに、水が供給された場合には水によって燃料の燃焼温度が低下してNOxの排出量が低減される。また、特に図示しないが、舶用ディーゼルエンジン10は、燃料噴射ポンプ23の駆動タイミングを制御する制御装置を備える。この制御装置は、燃料噴射弁22から燃焼室17に水は供給されず燃料が供給される場合、この燃焼室17への燃料の噴射タイミングを遅延させるように燃料噴射ポンプ23を制御し、これにより、シリンダ12内でのNOxの生成自体を低減するNOx低減チューニングを行ってもよい。このようなNOx低減チューニングによっても、NOxの排出量は低減される。
ピストン15は、燃焼室17での燃料の燃焼によって発生したエネルギーにより、シリンダ12内をピストン軸方向に往復運動する。このとき、動弁装置19によって排気弁18が作動してシリンダ12が開放されると、燃料の燃焼によって生じた排ガスが排気管21に押し出される。一方、シリンダ12には、掃気ポート(図示せず)から新たに燃焼用ガスが導入される。
また、ピストン15が上述したようにピストン軸方向に往復運動すると、ピストン15とともにピストン棒16がピストン軸方向に往復運動する。これに伴い、クロスヘッド8は、ガイド板7に沿ってピストン軸方向に往復運動する。これにより、クロスヘッド8のクロスヘッドピン9は、クロスヘッド軸受を介して連接棒6に回転駆動力を加える。この回転駆動力により、連接棒6の下端部に接続されるクランク4がクランク運動し、この結果、クランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2は、このようにピストン15の往復運動を回転運動に変換してプロペラ軸とともに船舶の推進用プロペラを回転させ、これにより、船舶の推進力を出力する。
図2は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンのピストン部分の一構成例を示す拡大図である。図1に示した舶用ディーゼルエンジン10において、ピストン15は、上述したように、シリンダ12内をピストン軸方向に往復運動する。詳細には、図2に示すように、ピストン15は、シリンダ12を構成するシリンダライナ13の内壁面に沿ってピストン軸方向(図2中の太線両矢印によって示される方向)に往復運動する。
このように往復運動する際のピストン15のストロークSは、ピストン15の上死点Cと下死点Cとの間の距離、例えば図2に示すように、上死点Cに位置するピストン15の上端面と下死点Cに位置するピストン15の上端面との間の距離である。また、シリンダ12の内径Dは、シリンダライナ13の内径であって燃焼室17の内径と同値である。舶用ディーゼルエンジン10のストロークボア比(ボアストローク比ともいう)は、図2に示すピストン15のストロークSとシリンダ12の内径Dとの比(=S/D)である。本実施形態において、このストロークボア比S/Dは、4.4以上である。
また、図2に示すように、シリンダ12の内部空間の容積は、行程容積Vstおよび隙間容積Vによって表される。行程容積Vstは、シリンダ12内でピストン15が上死点Cと下死点Cとの間を1ストローク(ストロークS分)移動する行程の容積である。隙間容積Vは、ピストン15が上死点Cに位置する際にシリンダ12の頂部に存する隙間の容積である。具体的には、隙間容積Vは、上死点Cに位置するピストン15の上端面と、シリンダライナ13およびシリンダカバー14の各内壁面と、排気弁18の下端面とによって囲まれた空間の容積である。この隙間容積Vは、ピストン15が上死点Cに位置する際の燃焼室17の容積である。
ここで、シリンダ12の内部空間は、ピストン15が下死点Cから上死点Cまで移動することによって圧縮される。このようなシリンダ12の内部空間の圧縮比は、行程容積圧縮比εと称され、ピストン15が下死点Cに位置する際のシリンダ12の容積(以下、下死点容積と適宜いう)と、ピストン15が上死点Cに位置する際のシリンダの容積(以下、上死点容積と適宜いう)との比(=下死点容積/上死点容積)によって表される。図2に示すように、シリンダ12の下死点容積は、行程容積Vstと隙間容積Vとの和(=Vst+V)によって表される。シリンダ12の上死点容積は、隙間容積Vである。したがって、行程容積圧縮比εは、これらの行程容積Vstおよび隙間容積Vを用い、次式(3)によって表される。

行程容積圧縮比ε=(Vst+V)/V ・・・(3)

本実施形態において、行程容積圧縮比εは、舶用ディーゼルエンジン10の回転数(以下、エンジン回転数と適宜いう)および出力(以下、エンジン出力と適宜いう)等の仕様を選定することによって、所定の範囲内に設定される。
図3は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの燃焼室部分の一構成例を示す拡大図である。図1に示した舶用ディーゼルエンジン10において、シリンダ12は、シリンダライナ13とシリンダカバー14とピストン15と排気弁18とに囲まれて形成される燃焼室17を有する。詳細には、図3に示すように、ピストン15の上端面(ピストンクラウン)には、凹部15aが形成されている。また、シリンダカバー14には、上述した排気管21(図1、2参照)に通じる排気ポート21aが形成されている。排気弁18は、この排気ポート21aを開閉可能に閉止する。燃焼室17は、ピストン15の上端面と、シリンダライナ13およびシリンダカバー14の各内壁面と、排気弁18の下端面とによって囲まれた空間である。
このような燃焼室17は、ピストン15が往復運動の過程において上死点C(図2参照)に位置する際に、最も扁平な形状になる。この燃焼室17の扁平度合いは、ピストン15が上死点Cに位置する際の燃焼室17の高さと内径との比によって表される。図3に示すように、この燃焼室17の高さHは、上死点Cに位置した状態にあるピストン15の上端面(本実施形態では凹部15aの底部分)と、排気ポート21aを閉止した状態にある排気弁18の下端面との間の距離(離間距離)である。この燃焼室17の内径は、シリンダ12の内径D(詳細にはシリンダライナ13の内径)と同値である。本実施形態では、このような燃焼室17の扁平度合いを示す指標として、燃焼室17の高さHと内径(=D)との比(=H/D)である燃焼室縦横比H/Dが定義される。燃焼室縦横比H/Dは、燃焼室17の内表面積Aと容積(すなわち隙間容積V)との比A/Vの増加に伴い減少し、減少に伴い増加する。
(舶用ディーゼルエンジンの仕様選定)
つぎに、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10の仕様選定について説明する。舶用ディーゼルエンジン10の仕様は、船舶が必要とする推進力およびプロペラ回転数を得ることができるように選定される。この選定される舶用ディーゼルエンジン10の仕様として、例えば、型式、シリンダ数、エンジン回転数Neおよびエンジン出力Le等が挙げられる。エンジン回転数Neは、舶用ディーゼルエンジン10に要求される100%負荷時のエンジン回転数である。エンジン出力Leは、舶用ディーゼルエンジン10に要求される100%負荷時のエンジン出力である。
なお、「100%負荷」とは、舶用ディーゼルエンジン10が100%の負荷で運転している状態を意味する。すなわち、「100%負荷時のエンジン回転数」は、舶用ディーゼルエンジン10に選定された仕様によって得られる最大のエンジン回転数である。「100%負荷時のエンジン出力」は、舶用ディーゼルエンジン10に選定された仕様によって得られる1シリンダ当たりの最大のエンジン出力である。
舶用ディーゼルエンジン10に要求されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせであるレーティングは、舶用ディーゼルエンジン10の型式に応じたレーティングマップに基づいて選定される。図4は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンのレーティングマップの一例を示す図である。図4に示すレーティングマップ100は、ストロークボア比S/Dが4.4以上となる型式の舶用ディーゼルエンジン10に対応して設定されたものである。
詳細には、図4に示すように、レーティングマップ100は、上限圧力ラインPL1から下限圧力ラインPL2までの領域(図4中の斜線で示される領域)内に、舶用ディーゼルエンジン10に対して選定されるレーティングを示すマップである。
上限圧力ラインPL1は、エンジン回転数Neおよびエンジン出力Leについて有限であって、舶用ディーゼルエンジン10のエンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXに対応するラインである。この上限圧力ラインPL1は、エンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXを舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRとする際に選定されるレーティングを示している。例えば、上限圧力ラインPL1上のレーティング点P1によって示されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせ(N2,L4)は、舶用ディーゼルエンジン10について、エンジン設計上最大のエンジン回転数を100%負荷時のエンジン回転数とし且つエンジン設計上最大のエンジン出力を100%負荷時のエンジン出力とする際に選定される。また、上限圧力ラインPL1上の別のレーティング点P3によって示されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせ(N1,L3)は、舶用ディーゼルエンジン10の正味平均有効圧力PmeMCRをエンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXとした上で100%負荷時のエンジン回転数およびエンジン出力を最小とする際に選定される。
下限圧力ラインPL2は、エンジン回転数Neおよびエンジン出力Leについて有限であって、舶用ディーゼルエンジン10に設定される正味平均有効圧力Pmeの下限(すなわちエンジン設計上最小の正味平均有効圧力PmeMIN)に対応するラインである。この下限圧力ラインPL2は、エンジン設計上最小の正味平均有効圧力PmeMINを舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRとする際に選定されるレーティングを示している。例えば、下限圧力ラインPL2上のレーティング点P2によって示されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせ(N2,L2)は、舶用ディーゼルエンジン10について、エンジン設計上最大のエンジン回転数を100%負荷時のエンジン回転数とし且つ正味平均有効圧力Pmeが下限の正味平均有効圧力PmeMINとなるエンジン出力を100%負荷時のエンジン出力とする際に選定される。また、下限圧力ラインPL2上の別のレーティング点P4によって示されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせ(N1,L1)は、舶用ディーゼルエンジン10の正味平均有効圧力PmeMCRを下限の正味平均有効圧力PmeMINとした上で100%負荷時のエンジン回転数およびエンジン出力を最小とする際に選定される。
本実施形態において、舶用ディーゼルエンジン10のレーティングは、エンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXからエンジン設計上最小の正味平均有効圧力PmeMINまでの範囲内のエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせの中から、すなわちレーティングマップ100の中から選定される。例えば、舶用ディーゼルエンジン10のレーティングとして、レーティングマップ100内の正味平均有効圧力ラインPLa上のレーティング点Paによって示されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせが選定される。正味平均有効圧力ラインPLaは、レーティングマップ100内の上限の正味平均有効圧力PmeMAXから下限の正味平均有効圧力PmeMINまでの正味平均有効圧力Pmeのうち、舶用ディーゼルエンジン10に対して選定される所望の正味平均有効圧力に対応するラインである。本実施形態において、この所望の正味平均有効圧力は、舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRである。レーティング点Paは、この正味平均有効圧力ラインPLa上の点であって、舶用ディーゼルエンジン10の正味平均有効圧力Pmeが所望の正味平均有効圧力PmeMCRとなるように選定されるエンジン回転数Neとエンジン出力Leとの組み合わせを示す。
ここで、舶用ディーゼルエンジン10のレーティングの選定では、エンジン設計上最大のエンジン回転数とエンジン出力との組み合わせを示すレーティング点P1よりも正味平均有効圧力Pmeが低いレーティング点(例えば図4に示すレーティング点Pa)が、100%負荷時のレーティングを示す点としてレーティングマップ100の中から選定される場合がある。この場合、レーティング点P1によって示されるエンジン設計上最大のエンジン回転数とエンジン出力との少なくとも一方を下げることにより、舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRは、エンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXよりも低く設定される。このようにエンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXよりも100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRが低くなるようにレーティング点P1のレーティングを調整して舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時のレーティングとすることを、本実施形態ではディレートという。
例えば、図4に示すように、レーティング点P1のレーティングのうち、エンジン回転数Neは、エンジン設計上最大のエンジン回転数(=N2)に維持し、且つ、エンジン出力Leは、上限の正味平均有効圧力PmeMAXが下限の正味平均有効圧力PmeMINとなるまで下げたエンジン出力(=L2)となるようにディレートする。これにより、舶用ディーゼルエンジン10の100%負荷時のレーティングとして、レーティング点P2のレーティングを設定(選定)することができる。
また、本実施形態において、舶用ディーゼルエンジン10のエンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXに対する100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRの割合(=PmeMCR/PmeMAX)は、ディレート率Rdと定義される。ディレート率Rdは、レーティングマップ100において正味平均有効圧力Pmeが同一のレーティング同士(例えば図4に示す正味平均有効圧力ラインPLa上の各レーティング点間)で一定値をとる。また、ディレート率Rdは、100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRがエンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXである場合に最大値(=1.00)をとり、100%負荷時の正味平均有効圧力PmeMCRがエンジン設計上最小の正味平均有効圧力PmeMINである場合に最小値(=PmeMIN/PmeMAX)をとる。
上述したように舶用ディーゼルエンジン10のレーティングの選定に用いられるレーティングマップ100は、舶用ディーゼルエンジン10の燃焼室17の扁平度合い(すなわち燃焼室縦横比H/D)を考慮しながら行程容積圧縮比εを改善することによって設定することができる。
図5は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの行程容積圧縮比の一例を示す図である。図5において、破線で表される第1圧縮比エリア110は、行程容積圧縮比εが改善される前の舶用ディーゼルエンジン(以下、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンという)のディレート率Rdに応じた行程容積圧縮比εを示すエリアである。破線で表される相関ラインR1、R2は、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンのディレート率Rdと行程容積圧縮比εとの相関を例示するラインである。実線で表される第2圧縮比エリア111は、行程容積圧縮比εが改善された本発明の舶用ディーゼルエンジン(以下、本実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10を例示する)のディレート率Rdに応じた行程容積圧縮比εを示すエリアである。実線で表される相関ラインR11、R12は、舶用ディーゼルエンジン10のディレート率Rdと行程容積圧縮比εとの相関を例示するラインである。
図6は、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジンの燃焼室縦横比の一例を示す図である。図6において、下限ラインRsは、行程容積圧縮比εを改善する際の燃焼室縦横比H/D(詳細にはディレート率Rdに応じた燃焼室縦横比H/D)の下限を示すラインである。破線で表される相関ラインR3、R4は、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンのディレート率Rdと燃焼室縦横比H/Dとの相関を例示するラインである。実線で表される相関ラインR13、R14は、舶用ディーゼルエンジン10のディレート率Rdと燃焼室縦横比H/Dとの相関を例示するラインである。
ここで、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンでは、1シリンダ当たりのエンジン出力Leを増大させるために、シリンダを長くする等してピストンのストロークSを増加させる傾向にある。このストロークSの増加に伴い、ストロークボア比S/D別の行程容積Vstが増加している。このエンジン設計仕様の傾向は、ストロークボア比S/Dが4.4以上である場合、特に顕著である。このように行程容積Vstが増加した場合、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンでは、行程容積圧縮比ε(=(Vst+V)/V)を本来の要求値から変化させず一定値とするために、通常、行程容積Vstの増加に伴い隙間容積Vを増加させるエンジン設計が行われている。本発明者らは、上記のようなエンジン設計に基づき、隙間容積Vの増加分を限度にして従来仕様の舶用ディーゼルエンジンの燃焼室を圧縮すれば、この燃焼室からの熱損失を従来仕様の舶用ディーゼルエンジンに比べて過大にすることなく、行程容積圧縮比εを改善できることを見出し、本発明に至った。
詳細には、図5に示すように、第1圧縮比エリア110内の行程容積圧縮比εを第2圧縮比エリア111内の行程容積圧縮比εに増加させることにより、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンの行程容積圧縮比εが、本実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εに改善される。本実施形態において、従来仕様の舶用ディーゼルエンジンの第1圧縮比エリア110は、ディレート率Rdが1.00である場合に18以上19以下となる行程容積圧縮比εを示し、ディレート率Rdが0.75である場合に20以上22以下となる行程容積圧縮比εを示す。このような第1圧縮比エリア110内の行程容積圧縮比εのうち、例えば、相関ラインR1によって示されるストロークボア比S/D=4.6の行程容積圧縮比εは、第2圧縮比エリア111内の相関ラインR11によって示される行程容積圧縮比εに増加させることにより、ストロークボア比S/D=4.6の舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εに改善される。相関ラインR2によって示されるストロークボア比S/D=4.43の行程容積圧縮比εは、第2圧縮比エリア111内の相関ラインR12によって示される行程容積圧縮比εに増加させることにより、ストロークボア比S/D=4.43の舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εに改善される。
このように改善された舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εは、ディレート率Rdが1.00となるように舶用ディーゼルエンジン10のレーティングが選定された場合、図5の第2圧縮比エリア111に示されるように19以上21以下である。また、この舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εは、ディレート率Rdが0.75となるように舶用ディーゼルエンジン10のレーティングが選定された場合、図5の第2圧縮比エリア111に示されるように22.5以上25以下である。
本実施形態では、上述したように行程容積圧縮比εを増加させる手法としては、例えば、ピストン15のストロークSを一定とする条件下において、上死点Cに位置する状態のピストン15とシリンダカバー14との距離を近づける手法(以下、第1の手法という)、燃焼室17の構成部品の形状を変更する手法(以下、第2の手法という)等が挙げられる。上記第1の手法としては、例えば、ピストン棒16とクロスヘッドピン9との間に設けられるシム(図示せず)の厚みを増加させる手法、ピストン棒16の長さを伸ばす手法、連接棒6の長さを伸ばす手法、連接棒6を「間にシムを介在させる2分割の構造」として当該シムの厚さ調整により連接棒6の長さを伸ばす手法、シリンダカバー14の位置をピストン15に対して相対的に下げる手法等が挙げられる。上記第2の手法としては、例えば、ピストン15の上端面における凹部15aの凹み深さを浅くする手法、シリンダカバー14の形状を変更する手法、排気弁18の形状を変更する手法等が挙げられる。
また、上述したような行程容積圧縮比εの改善は、舶用ディーゼルエンジン10の燃焼室縦横比H/Dの下限を考慮しながら行われる。本実施形態において、行程容積圧縮比εを改善する際の燃焼室縦横比H/Dの下限は、例えば図6の下限ラインRsによって示される。ここで、燃焼室縦横比H/Dの下限は、燃焼室17内での燃料の燃焼時における燃焼室17からの熱損失を従来仕様の舶用ディーゼルエンジンに比べて過大とならないように抑制し得る燃焼室17の扁平度合いの限度値に相当する。下限ラインRsは、このような燃焼室縦横比H/Dの下限をディレート率Rdに応じて示している。本実施形態では、以下のようにして下限ラインRsが設定される。
詳細には、図6に示すように、燃焼室縦横比H/Dの下限は、ディレート率Rdに応じて可変または一定の値になり得る。このような燃焼室縦横比H/Dの下限は、ストロークボア比S/Dが4.4以上である過去の舶用ディーゼルエンジンの実績(以下、舶用ディーゼルエンジンの過去実績という)に基づいて、0.31が最小値となるように設定される。
また、舶用ディーゼルエンジン10の掃気圧力Psは、ディレート率Rd(=PmeMCR/PmeMAX)に対して比例となるように設定されている。そして、掃気圧力Psと行程容積圧縮比εとの乗算値は、ピストン15が上死点Cに位置する際における燃焼室17内の燃焼用ガス(圧縮ガス)の圧力Pcと略同じ一定の値になる。このことから、行程容積圧縮比εは、ディレート率Rdに対して反比例となる(図5参照)。ここで、行程容積圧縮比εは上述したようにシリンダ12の下死点容積(=Vst+V)と隙間容積Vとの比((Vst+V)/V=Vst/V+1)であるから、行程容積圧縮比εは、隙間容積Vに対して反比例となる。これに加え、隙間容積Vは燃焼室縦横比H/Dに対して比例の関係にあることから、燃焼室縦横比H/Dは、ディレート率Rdに対して比例となる。このとき、ディレート率Rdに対する燃焼室縦横比H/Dの傾きは、舶用ディーゼルエンジンの過去実績に基づいて、0.15となる。また、ディレート率Rdと燃焼室縦横比H/Dとの代表的な組み合わせ(Rd,H/D)としては、舶用ディーゼルエンジンの過去実績から、例えば、(Rd,H/D)=(0.736,0.31)が挙げられる。
以上より、燃焼室縦横比H/Dの下限を示す下限ラインRsは、以下に示す式(4)および式(5)によって表される。
H/D=0.31 (Rd≦0.736) ・・・(4)
H/D=0.15×Rd+0.20 (0.736<Rd≦1.00)・・・(5)
すなわち、本実施形態において、舶用ディーゼルエンジン10の燃焼室縦横比H/Dの下限を考慮しながら行程容積圧縮比εを改善する際、燃焼室縦横比H/Dは、以下に示す式(1)および式(2)を満足する。
H/D≧0.31 (Rd≦0.736) ・・・(1)
H/D≧0.15×Rd+0.20 (0.736<Rd≦1.00)・・・(2)
例えば、図6に示すように、上述した式(1)および式(2)に基づく燃焼室縦横比H/Dの下限を限度として、例えば、相関ラインR3で示されるストロークボア比S/D=4.6の燃焼室縦横比H/Dは、相関ラインR13で示される燃焼室縦横比H/Dに下げられる。相関ラインR4で示されるストロークボア比S/D=4.43の燃焼室縦横比H/Dは、相関ラインR14で示される燃焼室縦横比H/Dに下げられる。
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10では、ストロークボア比S/Dは4.4以上であり、舶用ディーゼルエンジン10のレーティングは、エンジン設計上最大の正味平均有効圧力PmeMAXからエンジン設計上最小の正味平均有効圧力PmeMINまでの範囲内のエンジン出力Leとエンジン回転数Neとの組み合わせ(すなわちレーティングマップ100)の中から選定され、正味平均有効圧力PmeMAXに対する正味平均有効圧力PmeMCRの割合であるディレート率Rdが1.00となるように上記レーティングが選定された場合、舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εは19以上21以下であり、ディレート率Rdが0.75となるように上記レーティングが選定された場合、舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εは22.5以上25以下であり、舶用ディーゼルエンジン10の燃焼室縦横比H/Dは、H/D≧0.31(Rd≦0.736の場合)およびH/D≧0.15×Rd+0.20(0.736<Rd≦1.00の場合)を満足している。
このため、舶用ディーゼルエンジン10の燃焼室17を扁平に圧縮し過ぎることなく、行程容積圧縮比εを従来仕様の舶用ディーゼルエンジンよりも増加させることができる。これにより、燃焼室17からの熱損失を従来仕様の舶用ディーゼルエンジンに比べて過大とならないように抑制するとともに、舶用ディーゼルエンジン10の熱効率を従来仕様の舶用ディーゼルエンジンよりも高めることができ、この結果、舶用ディーゼルエンジン10の燃費を向上させることができる。
また、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10では、シリンダ12に設けられた燃料噴射弁22に対して燃料噴射ポンプ23から燃料を圧送し、この燃料の流通経路内に注水ポンプ24から水を注入し、これらの圧送された燃料と注入された水とが、燃料噴射弁22から燃焼室17に噴射されるように構成している。このため、舶用ディーゼルエンジン10の行程容積圧縮比εの増加に伴って起こり得る燃焼室17内での燃料の燃焼によるNOxの増加を抑制するとともに、燃料噴射タイミングの遅延(噴射タイミングリタード)に例示される従来のNOx低減技術に比べて、舶用ディーゼルエンジン10の熱効率の低下を抑制することができる。これにより、舶用ディーゼルエンジン10のNOx排出量の低減と燃費の向上とを効率よく両立させることができる。
また、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10では、シリンダ12内で生成されるNOxあるいはシリンダ12から排出された排ガス中のNOxをNOx低減装置25によって低減するように構成している。このため、舶用ディーゼルエンジン10の熱効率の増加による燃費の向上とともに、NOx排出量の更なる低減を実現することができる。
また、本発明の実施形態に係る舶用ディーゼルエンジン10では、たとえ行程容積圧縮比εの増加に伴ってシリンダ12内の燃焼用ガスの圧縮圧力(筒内圧縮ガス圧力)が増加した場合であっても、過給機20aからシリンダ12内に送給される燃焼用ガスの掃気圧力を事前に低下させることにより、筒内圧縮ガス圧力がシリンダ12の設計上最大の圧力を超える事態を容易に回避することができる。
なお、上述した実施形態では、舶用ディーゼルエンジン10のシリンダ数を特に規定していないが、シリンダ数は、1つであってもよいし、複数(2つ以上)であってもよい。すなわち、本発明において、シリンダ数は特に問われない。
また、上述した実施形態では、シリンダ12内の燃焼室17に対して燃料および水を層状に噴射していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、燃焼室17に対しては、燃料とは別に単独で水が噴射されてもよいし、燃料と水とを混合してエマルジョン化した液体(水エマルジョン燃料)が噴射されてもよいし、過給機20aによって圧縮された燃焼用ガスに水を噴射するなどして加湿した状態の燃焼用ガスがシリンダ12へ供給(給気加湿)されてもよい。また、燃料の流通経路に水を注入するための注水ポンプ24等の注水設備は、舶用ディーゼルエンジン10に要求されるNOx排出量の低減に応じて設けるようにしてもよく、必ずしも舶用ディーゼルエンジン10が備えていなくてもよい。このことは、NOx低減装置25についても同様としてもよい。
また、上述した実施形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 台板
2 クランクシャフト
3 軸受
4 クランク
5 架構
6 連接棒
7 ガイド板
8 クロスヘッド
9 クロスヘッドピン
10 舶用ディーゼルエンジン
11 シリンダジャケット
12 シリンダ
13 シリンダライナ
14 シリンダカバー
15 ピストン
15a 凹部
16 ピストン棒
17 燃焼室
18 排気弁
19 動弁装置
20 排気マニホールド
20a 過給機
21 排気管
21a 排気ポート
22 燃料噴射弁
23 燃料噴射ポンプ
24 注水ポンプ
25 NOx低減装置
26 タイボルト
27 ナット
100 レーティングマップ
110 第1圧縮比エリア
111 第2圧縮比エリア
上死点
下死点
P1~P4、Pa レーティング点
PL1 上限圧力ライン
PL2 下限圧力ライン
PLa 正味平均有効圧力ライン
R1~R4、R11~R14 相関ライン
Rs 下限ライン

Claims (5)

  1. 燃料を燃焼させるための燃焼室を有するシリンダと、前記燃焼室での燃料の燃焼によって前記シリンダ内を往復運動するピストンと、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換して船舶の推進力を出力する出力軸と、を備える舶用ディーゼルエンジンであって、
    前記ピストンのストロークと前記シリンダの内径との比であるストロークボア比は、4.4以上であり、
    前記ピストンが下死点に位置する際の前記シリンダの容積と前記ピストンが上死点に位置する際の前記シリンダの容積との比を行程容積圧縮比とし、当該舶用ディーゼルエンジンの設計上最大の正味平均有効圧力に対する100%負荷時の正味平均有効圧力の割合をディレート率とし、当該舶用ディーゼルエンジンに要求される100%負荷時のエンジン回転数とエンジン出力との組み合わせをレーティングとし、前記ピストンが上死点に位置する際の前記燃焼室の高さと内径との比を燃焼室縦横比としたとき、
    前記レーティングは、当該舶用ディーゼルエンジンの設計上最大の正味平均有効圧力から設計上最小の正味平均有効圧力までの範囲内のエンジン回転数とエンジン出力との組み合わせの中から選定され、
    前記行程容積圧縮比は、前記ディレート率に対して反比例の関係にあり、
    前記ディレート率は、前記100%負荷時の正味平均有効圧力が前記設計上最大の正味平均有効圧力である場合に最大値をとり、前記100%負荷時の正味平均有効圧力が前記設計上最小の正味平均有効圧力である場合に最小値をとり、
    前記ディレート率と前記行程容積圧縮比との相関は、前記ディレート率が1.00であり且つ前記行程容積圧縮比が21である点と前記ディレート率が0.75であり且つ前記行程容積圧縮比が25である点とを通る直線と、前記ディレート率が1.00であり且つ前記行程容積圧縮比が19である点と前記ディレート率が0.75であり且つ前記行程容積圧縮比が22.5である点とを通る直線と、に挟まれる圧縮比エリアによって示され、
    前記圧縮比エリアにおいて、前記ディレート率は1.00未満であり、前記ディレート率が0.75となるように前記レーティングが選定された場合、前記行程容積圧縮比は22.5以上25以下であり、
    さらに、前記ディレート率をRdとし、前記燃焼室縦横比をH/Dとしたとき、前記燃焼室縦横比は、前記行程容積圧縮比を設定する際、前記ディレート率が0.736以下であれば以下に示す式(1)を満足し、前記ディレート率が0.736超1.00未満であれば以下に示す式(2)を満足する、
    ことを特徴とする舶用ディーゼルエンジン。
    H/D≧0.31 (Rd≦0.736) ・・・(1)
    H/D≧0.15×Rd+0.20 (0.736<Rd1.00)・・・(2)
  2. 前記シリンダに設けられる燃料噴射弁と、
    前記燃料噴射弁に前記燃料を圧送する燃料噴射ポンプと、
    を備え、前記燃料噴射弁は、圧送された前記燃料を前記燃焼室に噴射することを特徴とする請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン。
  3. 前記燃料の流通経路内に水を注入する注水ポンプをさらに備え、
    前記燃料噴射弁は、圧送された前記燃料と注入された前記水とを前記燃焼室に噴射することを特徴とする請求項2に記載の舶用ディーゼルエンジン。
  4. 前記シリンダ内で生成される窒素酸化物あるいは前記シリンダから排出された排ガス中の窒素酸化物を低減するNOx低減装置を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の舶用ディーゼルエンジン。
  5. 前記燃焼室への前記燃料の噴射タイミングを遅延させるように前記燃料噴射ポンプを制御して、前記シリンダ内での窒素酸化物の生成自体を低減するNOx低減チューニングを行う制御装置を備えることを特徴とする請求項2に記載の舶用ディーゼルエンジン。
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