JP7234961B2 - X線分析装置 - Google Patents

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Description

本発明はX線分析装置に関し、さらに詳しくは、エネルギ分散型X線分析装置における信号処理に関する。
エネルギ分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectroscopy)装置では、試料にX線や電子線などの励起線を照射し、それに応じて試料から放出された特性X線をシリコンドリフト検出器等の半導体検出器により検出する。特性X線は試料中の元素に特有のエネルギ(波長)を有する。そこでエネルギ分散型X線分析装置では、半導体検出器による出力信号を波長(つまりはエネルギ)毎に分離する信号処理を行い、波長毎の信号強度(度数)を調べることで試料中の元素の定性及び定量を行う。
半導体検出器による出力信号を処理して波長毎の信号を得るための信号処理装置(いわゆるマルチチャンネルアナライザ)として、特許文献1に記載の装置が知られている。この信号処理装置では、半導体検出器による検出信号をプリアンプに入力し、その出力である階段波状の信号を得る。階段波状信号の各段の高さが半導体検出器に入射したX線の波長、つまりはエネルギに対応する。この階段波状信号をアナログ微分回路に入力して微分波に変換したあと、アナログデジタル変換器でデジタルデータに変換する。そして、デジタルフィルタにより微分波を台形波又は三角波であるピーク信号に変換し、ピーク検出部によって、その台形波又は三角波であるピークの波高値を弁別して波高値毎にピークを計数する。この波高値はX線のエネルギに対応し、そのエネルギは試料中の元素の種類に固有であるから、波高値毎の計数結果に基づいて試料中の元素の定性及び定量が可能である。
なお、上記信号処理装置においてピークの波高値を正確に検出するには、ピークトップが一定値を維持する時間が長いほうが都合がよい。そのため、ピーク検出部で波高値を弁別する際には、三角波状のピークよりも台形波状のピークのほうが有利である。
こうしたX線分析用の信号処理装置では、波形変換のためのデジタルフィルタに入力される微分波信号の時間間隔が狭すぎると、デジタルフィルタでの波形変換が適切に行われず、隣接するピークが重なってしまって誤った波高値を示す。こうした現象はパイルアップ又はサムピークとしてよく知られている。上述したように波高値を誤ってピークを計数すると、正しい分析結果が得られない。そのため、特許文献2に記載されているように、従来のX線分析用信号処理装置には、パイルアップ状態であると判断したピークを計数から除外するような、パイルアップリジェクタと呼ばれる機能が備えられている。
特開2015-21957号公報 特開2016-125922号公報
上記信号処理装置において、高いエネルギ分解能が要求される場合、ピーク波高値の精度を高めるために波形変換デジタルフィルタのピーキングタイム(立上り/立下り時間)は長く設定される。一方、高い検出感度が要求される場合には、計数率を高める必要があるために、波形変換デジタルフィルタのピーキングタイムは短く設定される。従来のパイルアップリジェクタにおけるパイルアップ判定手法は、一般に、波形変換デジタルフィルタのピーキングタイムが比較的長いときには判定の精度が高いものの、ピーキングタイムが短いと判定の精度が低下する傾向にある。即ち、パイルアップの見逃し(偽陰性)や誤判定(偽陽性)が生じやすいという問題がある。特に、重元素は軽元素に比べて波高値が大きいため、ピーキングタイムが短いことの影響を相対的に受け易く、パイルアップの精度が低くなる傾向にある。
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、軽元素から重元素までの様々な元素についてパイルアップの判定精度を向上させることで、精度のよい分析結果を得ることができるX線分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るX線分析装置の一態様は、
X線を検出してそのX線のエネルギに対応した段差を有する階段状信号を生成するX線検出部と、
前記階段状信号をその各段の段差に対応する高さの微分波信号に変換する微分演算部と、
前記微分波信号を所定の時定数で以て三角波状のピークに変換する第1変換フィルタ部と、
前記微分波信号を所定の時定数で以て台形波状のピークに変換する第2変換フィルタ部と、
前記三角波状のピークのピーク幅を所与の判定条件に照らしてパイルアップであるか否かを判定するパイルアップ判定部と、
前記台形波のピークの波高値に応じて前記判定条件を変更する判定条件設定部と、
を備えるものである。
本発明に係る上記態様のX線分析装置において、パイルアップ判定部での判定条件は典型的には、ピーク幅の大小を判定する判定閾値であり、ピーク幅が判定閾値以上であればパイルアップであり、判定閾値を下回ればパイルアップでない、と判定するものとすることができる。この場合、判定条件設定部は、台形波のピークの波高値が高い場合には低い場合に比べて判定閾値を大きくする。
検出感度を上げるために三角波フィルタのピーキングタイム(立上り/立下り時間)を短くした場合、該フィルタから出力される三角波状のピークの立上りは該フィルタのピーキングタイムよりも入力信号である微分波の立上り時間の影響を顕著に受ける。その微分波の立上り時間は階段波の段差が大きいほど長くなるため、特性X線のエネルギが小さな軽元素に比べてエネルギが大きな重元素のほうが微分波の立上り時間は長い。その結果、X線のエネルギが相対的に大きくピーク波高値が相対的に高い、重元素に対応する三角波ピークのピーク幅は、軽元素に対応する三角波ピークのピーク幅に比べて、本来のピーク幅に対しての広がりの度合が大きくなる。
これに対し上記態様のX線分析装置では、台形波ピークの波高値に応じて三角波ピークのピーク幅を判定するための判定閾値が変更される。そのため、元素の違いによって、つまりは波高値の違いによって、三角波ピークのピーク幅の広がりの度合が異なっても、パイルアップである可能性をより正確に判定することができる。
本発明に係る上記態様のX線分析装置によれば、軽元素から重元素までの幅広い種類の元素に由来する特性X線について、信号処理の際にパイルアップを精度良く判定することができる。即ち、主として軽元素の波長領域におけるパイルアップの見逃しを減らすことにより、ピークの波高値の正確性を高め、エネルギスペクトル波形の精度を高めることができる。また、主として重元素の領域におけるパイルアップの誤検出を減らすことにより、ピークの計数値の正確性を高め、エネルギスペクトルの強度を増加させることができる。
本発明の一実施形態であるエネルギ分散型蛍光X線分析(EDX)装置の要部の構成図。 本実施形態のEDX装置におけるパイルアップ判定処理部のブロック構成図。 本実施形態のEDX装置におけるパイルアップ判定動作の説明図。 本実施形態のEDX装置におけるパイルアップ判定動作の説明図。
以下、本発明に係るX線分析装置の一実施形態であるエネルギ分散型蛍光X線分析(以下、慣用に従って「EDX」と略す)装置について、添付図面を参照して説明する。
[本実施形態のEDX装置の構成及び概略動作]
図1は、本実施形態のEDX装置全体の概略構成図である。図2は、本実施形態のEDX装置におけるパイルアップ判定処理部のブロック構成図である。
図1に示すように、本実施形態のEDX装置は、X線源1、検出器3、プリアンプ4、微分回路5、メインアンプ6、アナログデジタル変換器(ADC)7、及びデジタル信号処理部8、データ処理用のCPU9、などを含む。
検出器3はシリコンドリフト検出器等の半導体検出器である。微分回路5はコンデンサ51、抵抗52を含むCR微分回路である。デジタル信号処理部8はフィールドプログラムゲートアレイ(FPGA)回路であり、機能ブロックとして、波形変換デジタルフィルタ80、ゲイン/オフセット調整部83、ピーク検出部84、ヒストグラム書込み制御部85、ヒストグラムメモリ86、パイルアップ判定処理部87、判定閾値設定部88などを含む。波形変換デジタルフィルタ80は、台形波フィルタ81と三角波フィルタ82とを含む。
図2に示すように、パイルアップ判定処理部87は、機能ブロックとして、矩形パルス生成部871、パルス幅判定部872、パルス間隔判定部873、総合判定部874などを含む。
本実施形態のEDX装置における分析動作を概略的に説明する。
X線源1は励起X線を試料2に照射する。これにより、試料2からは該試料2中の元素に特有の波長の特性X線(蛍光X線)が放出される。検出器3は入射したX線(特性X線)のエネルギに応じた検出信号を出力し、プリアンプ4は入力された信号を増幅する。プリアンプ4の出力は、入射したX線のエネルギに比例した段差を有し所定のタイミングでリセットされる、階段状の信号となる。微分回路5はその階段波を、各段の段差に応じた高さを有する微分波に変換する。階段波の一つの段差が一つの微分波ピークとなる。ADC7は、この微分波を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタル信号に変換する。
波形変換デジタルフィルタ80において台形波フィルタ81は、入力されたデジタル信号である微分波を台形波に変換する。並行して、三角波フィルタ82は、入力されたデジタル信号である微分波を三角波に変換する。即ち、一つの微分波のピークに対して台形波ピークと三角波ピークとがそれぞれ生成される。ゲイン/オフセット調整部83は台形波デジタル信号のゲイン及びオフセットを調整し、ピーク検出部84はその調整後の台形波デジタル信号におけるピークを検出して各ピークのピークトップの平坦部分の値、つまりは波高値を求める。
ヒストグラムメモリ86は、X線のエネルギに対応するピークの波高値毎に頻度(計数値)を記憶するメモリである。ヒストグラム書込み制御部85は、ピークの波高値を受けて、ヒストグラムメモリ86に記憶されているその波高値に対応する計数値をインクリメントすることで該計数値を更新する。これにより、ヒストグラムメモリ86には、検出器3に入射した特性X線のエネルギ毎(厳密には所定のエネルギ範囲毎)に、そのX線の入射回数を示すヒストグラムが作成される。このヒストグラムがCPU9に逐次送られ、CPU9はこのヒストグラムに基いて、横軸が蛍光X線エネルギ、縦軸がX線強度、つまりは元素の含有量、であるエネルギスペクトルを作成し、図示しない表示部に表示する。
台形波フィルタ81は所定のピークキングタイム及びフラットトップタイムを有するため、所定の時間内に複数の微分波ピークが入力されると、各微分波ピークに対応した台形波ピークを出力することができない。即ち、パイルアップが発生してしまう。そこで、パイルアップ判定処理部87は三角波フィルタ82から出力される三角波ピークに基いて、パイルアップの有無を判定する。そして、パイルアップが検出されると、その検出信号を受けたヒストグラム書込み制御部85は、そのパイルアップの発生時点に対応するピーク波高値に基く計数値のインクリメントを禁止する。これによって、パイルアップが発生しているときの不適切な、つまりは波高値が不正確である可能性がある台形波ピークに基くヒストグラムの更新が禁止される。
なお、パイルアップが検出されたピークの計数を禁止しただけであると、計数値が実際よりも少なくなってしまうため、通常は、CPU9においてパイルアップによる計数値の減少を補正する処理が実施される。これは従来のEDX装置と同様である。
[本実施形態のEDX装置におけるパイルアップ判定処理の詳細]
次に、パイルアップ判定処理部87を中心に実行されるパイルアップ判定について、図1及び図2に加え、図3及び図4を参照して説明する。図3及び図4は、パイルアップ判定動作を説明するための概略波形図である。
パイルアップの判定は、波形変換デジタルフィルタ80のうち波高値を検出するための台形波フィルタ81ではなく、それよりもピーキングタイムが小さくフラットトップタイムがない三角波フィルタ82からの出力である三角波ピークに基いて行われる。
パイルアップの判定条件は二つあり、一つ目は三角波ピーク自体のピーク幅、二つ目は時間的に隣接する2個の三角波ピークのピーク間隔である。
即ち、2個の微分波ピークが近接していて一つの三角波ピークとして現れる場合、通常、その三角波ピークのピーク幅は本来のピーク幅よりも広くなる。そこで、三角波ピークのピーク幅が所与の幅判定閾値以上である場合には、パイルアップである可能性が高いと判断することができる。また、時間的に隣接している2個の微分波ピークがそれぞれ1個ずつの三角波ピークとして観測可能な場合であっても、その間隔が非常に狭いときには、波高値を求めるための台形波ピークでは一つになる(つまり分離できない)可能性がある。そこで、時間的に隣接している2個の三角波ピークの間隔が、所与の間隔判定閾値以内である場合には、パイルアップである可能性が高いと判断することができる。
図3及び図4において、Foutは三角波フィルタ82の出力である三角波デジタル信号の波形を示す。パイルアップ判定処理部87にあって矩形パルス生成部871は、三角波デジタル信号Foutの電圧値を所与の整形閾値電圧Vthと比較することで、二値の矩形波パルスDoutを生成する。この矩形波パルスDoutのパルス幅は三角波ピークのピーク幅に対応している。
パルス幅判定部872は、矩形波パルスDoutのパルス幅を幅判定閾値と比較し、該パルス幅のほうが大きければ第1判定信号INH1を出力する。図3(B1)は矩形波パルスDoutのパルス幅が幅判定閾値よりも小さい場合、図3(B2)は矩形波パルスDoutのパルス幅が幅判定閾値よりも大きい場合の例である。後者では図3(B2)中に点線で示すように第1判定信号INH1のパルスが出力されており、パイルアップが検出されている。但し、図3では、幅判定閾値FPKTM*2+αは一定である。
一方、パルス間隔判定部873は、時間的に隣接する2個の矩形波パルスDoutの間隔を間隔判定閾値と比較し、該間隔のほうが大きければ第2判定信号INH2を出力する。図3(A1)及び(A2)に示すように、2個の矩形波パルスDoutの間隔は該矩形波パルスDoutの立ち上がり(図中の上向き矢印)の間隔で定義される。図3(A1)は2個の矩形波パルスDoutの間隔が間隔判定閾値よりも大きい場合、図3(A2)は2個の矩形波パルスDoutの間隔が間隔判定閾値よりも小さい場合の例である。後者では図3(A2)中に点線で示すように第2判定信号INH2のパルスが出力されており、パイルアップが検出されている。幅判定閾値と同様に間隔判定閾値SLOW_PKTM+SLOW_FTM+αは一定である。
即ち、図3(A2)、(B2)に示すような場合には、それぞれパイルアップ状態であると判定される。ピーク幅又はピーク間隔の少なくともいずれか一方の判定条件においてパイルアップ状態であると判定された場合、波高値に基くヒストグラムの更新を禁止する必要がある。そこで、総合判定部874は、第1判定信号INH1と第2判定信号INH2との論理和の演算(OR演算)を行ってパイルアップ判定結果として出力する。
ピーク間隔の判定閾値は、台形波フィルタ81のピーキングタイム+フラットトップタイムにより一義的に決めることができる。即ち、間隔判定閾値は、台形波フィルタ81のピーキングタイムSLOW_PKTMにフラットトップタイムSLOW_FTMを加え、さらに所定のマージンαを加えたものである。一方、ピーク幅の判定には次のような課題がある。
高い検出感度を実現するには単位時間当たりの計数回数を増やす必要があり、そのためには、波形変換デジタルフィルタ80のピーキングタイムやフラットトップタイムを小さくする必要がある。一方、ADC7へ入力される微分波ピーク自体が或る程度の立ち上がり時間を有しており、波形変換デジタルフィルタ80の出力波形にもその立ち上がり時間の影響がある。そのため、台形波ピークがその微分ピークの立ち上がり時間を吸収するように、台形波フィルタ81のフラットタイムは、その微分ピークの立ち上がり時間と同等以上になるように設定される必要がある。一方、パイルアップ判定を行うために三角波フィルタ82のピーキングタイムは台形波フィルタ81のピーキングタイムよりも小さくする必要がある。そのため、高計数時には、三角波フィルタ82の出力において、ピーキングタイムの設定よりも入力波形の立上りの影響が大きくなる。これは、ピーキングタイムに比べて立上り時間が大きいときにさらに顕著である。この入力波形の立上りの影響は、三角波ピークのピーク幅が本来より広がるものとして現れる。ピーク幅の広がりの程度はそのピークの波高値に依存するため、波高値が相対的に小さい軽元素では影響が少ないが、波高値が相対的に大きい重元素では影響が大きく、ピーク幅が実際よりも広がる傾向にある。
上記理由により、重元素におけるパイルアップを検出し易くするべく幅判定閾値を大きく設定すると、軽元素におけるパイルアップが幅判定閾値に引っかからなくなり、サムピークが増加する。逆に、軽元素におけるパイルアップを確実に検出するために幅判定閾値を小さくすると、軽元素のサムピークは除去されるが、重元素はピークが重なっていないにも拘わらず除去されるケースが増加してしまい、重元素がエネルギスペクトルに現れなくなる。こうした問題を回避するため、本実施形態のEDX装置では、重元素でも軽元素でもピーク幅によるパイルアップ判定が良好に行われるように、そのピーク自身の波高値に応じて幅判定閾値を変更するようにしている。具体的には次のような処理を実施する。
一般に、パルス幅判定部872においてピーク幅を判定する際には、幅判定閾値を三角波フィルタ82の出力のピーキングタイムの2倍+α(αは固定値)程度に定める。これに対し、本実施形態のEDX装置では、幅判定閾値をピーキングタイムの2倍+α+β(但し、βは可変値) とする。判定閾値設定部88は、このβの値をピーク検出部84からフィードバックされる波高値に応じて変更する。即ち、分析対象の元素が軽元素であって波高値が小さいときはβの値を小さくし、分析対象の元素が重元素であって波高値が大きいときはβの値を大きくする。例えば判定閾値設定部88は、β=[その時点での波高値]×定数、によりβの値を算出し、幅判定閾値を波高値に応じて適応的に変更する。
具体例を挙げる。いま、ADC7のサンプリング時間がtsであるとする。例えば、三角波フィルタ82のピーキングタイムtpがtp=ts××4であるとき、該フィルタ82への入力波形の立上りの傾斜の影響によって、波高値=200のときピーク幅がts×10程度となり、波高値=700のときのピーク幅がts×15程度となる場合を想定する。また、α=ts×1、β=波高値×0.01×tsであるとする。このとき、図3(B1)、(B2)を参照して述べたようにβを考慮せず幅判定閾値が一定である場合には、波高値が200であっても700であっても幅判定閾値は例えばts×11又はts×16などの固定値である。
図4(A1)、(A2)は幅判定閾値が一定で小さい場合である。(A1)に示すように矩形パルスDoutのパルス幅が狭い場合には、第1判定信号INH1にパルスは出力されず、パイルアップの検出は正しく行われる。ところが、(A2)に示すように矩形パルスDoutのパルス幅が広い場合には、パイルアップでないにも拘わらず第1判定信号INH1にパルスが出力される。つまり、パイルアップが誤検出される。
図4(B1)、(B2)は幅判定閾値が一定で大きい場合である。(B2)に示すように矩形パルスDoutのパルス幅が広い場合には、第1判定信号INH1にパルスは出力されず、パイルアップの検出は正しく行われる。ところが、(B1)に示すように矩形パルスDoutのパルス幅が狭い場合には、パイルアップであるにも拘わらず第1判定信号INH1にパルスが出力されない。つまり、パイルアップは見逃される。
これに対し、本実施形態のEDX装置では、例えば波高値が200であるときに幅判定閾値はts×11、波高値が700であるときに幅判定閾値はts×16と、幅判定閾値が波高値に応じて変化する。
図4(C1)、(C2)はこのように幅判定閾値が波高値に応じて変化する場合である。(C1)に示すように軽元素であって矩形パルスDoutのパルス幅が狭い場合には、幅判定閾値も小さくなる。一方、(C2)に示すように重元素であって矩形パルスDoutのパルス幅が広い場合には、幅判定閾値も大きくなる。したがって、軽元素においてパイルアップが生じてピーク幅が広がったときに、これを見逃しなく検出することができる。一方、重元素においてパイルアップが生じていないときに、パイルアップであると誤って判定されることも避けることができる。
以上のようにして、本実施形態のEDX装置では、ピーク波高値に応じてパイルアップ判定のための幅判定閾値を適応的に変化させることで、パイルアップの見逃しと誤検出との両方を軽減することができる。
もちろん、幅判定閾値を適応的に変える方法は、上述したように、波高値に定数を乗じた値(上記β)を固定値に加える方法に限らない。
また、上記実施形態のEDX装置では、パイルアップ判定用の三角波フィルタ82を一つのみ設けていたが、ピーキングタイムが異なる複数の三角波フィルタを用い、その出力をそれぞれ異なる幅判定閾値の下で判定し、それらの判定結果を組み合わせてもよい。これによって、より一層、パイルアップの判定精度を向上させることができる。
また、上記実施形態のEDX装置では、ADC7の出力からCPU9の入力までの間の回路は、FPGAによるロジック回路で構成されていたが、同様の機能を、コンピュータにインストールしたソフトウェアを該コンピュータ上で実行することで実現することもできる。
また、本発明は、励起線がX線でなく、電子線等の他の励起線であるX線分析装置にも適用することができる。
また、上記実施形態は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲でさらに適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係るX線分析装置の一態様は、
X線を検出してそのX線のエネルギに対応した段差を有する階段状信号を生成するX線検出部と、
前記階段状信号をその各段の段差に対応する高さの微分波信号に変換する微分演算部と、
前記微分波信号を所定の時定数で以て三角波状のピークに変換する第1変換フィルタ部と、
前記微分波信号を所定の時定数で以て台形波状のピークに変換する第2変換フィルタ部と、
前記三角波状のピークのピーク幅を所与の判定条件に照らしてパイルアップであるか否かを判定するパイルアップ判定部と、
前記台形波のピークの波高値に応じて前記判定条件を変更する判定条件設定部と、
を備える。
本発明に係る上記態様のX線分析装置によれば、特性X線のエネルギが相違する、軽元素から重元素までの幅広い種類の元素に由来する特性X線について、信号処理の際にパイルアップを精度良く判定することができる。即ち、主として軽元素の波長領域におけるパイルアップの見逃しを減らすことにより、ピークの波高値の正確性を高め、エネルギスペクトル波形の精度を高めることができる。また、主として重元素の領域におけるパイルアップの誤検出を減らすことにより、ピークの計数値の正確性を高め、エネルギスペクトルの強度を増加させることができる。
(第2項)第1項に記載のX線分析装置において、前記第1変換フィルタ部及び前記第2変換フィルタ部はデジタルフィルタであるものとすることができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載のX線分析装置において、前記判定条件設定部は、前記波高値を所定の係数に乗じた可変値を、前記第2変換フィルタ部のピークタイムを反映した固定値に加えることで、ピーク幅を判定する閾値を求めるものとすることができる。
1…X線源
2…試料
3…検出器
4…プリアンプ
5…微分回路
51…コンデンサ
52…抵抗
6…メインアンプ
7…アナログデジタル変換器(ADC)
8…デジタル信号処理部
80…波形変換デジタルフィルタ
81…台形波フィルタ
82…三角波フィルタ
83…ゲイン/オフセット調整部
84…ピーク検出部
85…ヒストグラム書込み制御部
86…ヒストグラムメモリ
87…パイルアップ判定処理部
871…矩形パルス生成部
872…パルス幅判定部
873…パルス間隔判定部
874…総合判定部
88…判定閾値設定部
9…CPU

Claims (3)

  1. X線を検出してそのX線のエネルギに対応した段差を有する階段状信号を生成するX線検出部と、
    前記階段状信号をその各段の段差に対応する高さの微分波信号に変換する微分演算部と、
    前記微分波信号を所定の時定数で以て三角波状のピークに変換する第1変換フィルタ部と、
    前記微分波信号を所定の時定数で以て台形波状のピークに変換する第2変換フィルタ部と、
    前記三角波状のピークのピーク幅を所与の判定条件に照らしてパイルアップであるか否かを判定するパイルアップ判定部と、
    前記台形波のピークの波高値に応じて前記判定条件を変更する判定条件設定部と、
    を備えるX線分析装置。
  2. 前記第1変換フィルタ部及び前記第2変換フィルタ部はデジタルフィルタである、請求項1に記載のX線分析装置。
  3. 前記判定条件設定部は、前記波高値を所定の係数に乗じた可変値を、前記第2変換フィルタ部のピークタイムを反映した固定値に加えることで、ピーク幅を判定する閾値を求める、請求項1又は2に記載のX線分析装置。
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