JP7226206B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、エンジンの制御装置に関する。
特許文献1には、点火時期のフィードバック制御を行うエンジンが記載されている。このエンジンは、筒内圧センサの出力に基づいて、質量燃焼割合が50%となるクランク角が目標の時期となるように、点火時期を調節する。
特許第3873580号公報
複数のシリンダを備えた多気筒エンジンにおいては、気筒間差を考慮して、シリンダ毎に、筒内圧センサの出力に基づいて点火時期の調節を行うことが好ましい。
しかしながら、本願発明者らは、エンジンの運転状態によっては、筒内圧センサが、一時的に、異常値を出力する場合があることに気づいた。筒内圧センサが異常値を出力している間、当該筒内圧センサが取り付けられているシリンダにおいて、制御部は、点火時期の調節ができない。点火時期の調節を中断していると、点火時期の過進角することによってノッキングの発生を招いたり、点火時期が過遅角することによって失火の発生を招いたりする恐れがある。
ここに開示する技術は、点火時期をフィードバック制御するエンジンにおいて、筒内圧センサが異常値を出力している場合に、フィードバック制御を継続する。
ここに開示する技術は、エンジンの制御装置に係る。エンジンの制御装置は、
それぞれ燃焼室を形成する複数のシリンダを有するエンジンと、
前記シリンダ毎に前記エンジンに取り付けられかつ、それぞれ前記燃焼室の中の混合気に点火を行う複数の点火部と、
前記シリンダ毎に前記エンジンに取り付けられかつ、それぞれ前記シリンダの中の圧力に対応する計測信号を出力する複数の筒内圧センサと、
前記エンジンの運転状態に応じて目標点火時期を定めると共に、前記点火部が前記目標点火時期に点火を行うよう、前記複数の点火部へ順次、点火信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記筒内圧センサの計測信号を受けると共に、前記計測信号から得られる燃焼指標に基づいて、前記燃焼指標が目標の燃焼指標となるように、前記目標点火時期を、前記シリンダ毎にフィードバック補正し、
前記制御部はまた、前記複数のシリンダの内の少なくとも一のシリンダの前記筒内圧センサが異常と判断された場合に、他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて、前記少なくとも一のシリンダの前記目標点火時期を設定すると共に、前記目標点火時期の設定に際し制限をかける。
制御部は、筒内圧センサの計測信号に基づいて、点火時期のフィードバック制御を行う。燃焼室の中の混合気は、燃焼指標が目標の燃焼指標となるように燃焼する。混合気の燃焼が適正化する。エンジンの燃費性能が向上する。
エンジンは、多気筒エンジンである。制御部は、シリンダ毎にフィードバック制御を行う。燃焼室毎に、混合気の燃焼が適正化する。シリンダ毎のフィードバック制御は、気筒間差を吸収する。
複数のシリンダの内の少なくとも一のシリンダの筒内圧センサが異常と判断されると、制御部は、当該筒内圧センサの計測信号に基づくフィードバック制御ができない。制御部は、他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて、筒内圧センサが異常なシリンダの目標点火時期を設定する。これにより、フィードバック制御が継続できる。尚、筒内圧センサの異常は、筒内圧センサが一時的に異常値を出力する場合、及び、筒内圧センサが故障した場合を含む。
但し、筒内圧センサの計測信号は、他のシリンダの計測信号であるため、当該計測信号は、筒内圧センサが異常なシリンダの中の状態を反映していない。そこで、制御部は、目標点火時期の設定に際し制限をかける。制御部は、例えば目標点火時期が、過進角しないように、及び、過遅角しないように、制限してもよい。こうすることで、筒内圧センサが異常であっても、制御部は、当該シリンダの目標点火時期を適切に設定できる。
尚、筒内圧センサが正常に復帰すれば、制御部は、シリンダ毎のフィードバック制御を再開すればよい。
前記制御部は、前記目標点火時期を、前記エンジンの運転状態に応じて定まる、進角限界及び遅角限界からなる範囲内において設定し、
前記制御部はまた、前記他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて前記少なくとも一のシリンダの目標点火時期を設定する場合に、前記範囲を狭くする。
エンジンの運転状態に応じて進角限界及び遅角限界を定めることで、制御部は、目標点火時期を、エンジンの運転状態に応じて適切に設定できる。制御部は、他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて、筒内圧センサが異常なシリンダについての目標点火時期を設定する場合、目標点火時期の設定が可能な範囲を狭くする。当該フィードバック補正量が、筒内圧センサが異常なシリンダの中の状態を反映していないことを考慮するためである。目標点火時期を設定可能な範囲を狭くすることによって、点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることが回避される。
前記制御部は、異常と判断された前記筒内圧センサの数が多いときは、少ないときよりも、前記範囲を狭くする、としてもよい。
異常と判断された筒内圧センサの数が多い場合、正常な筒内圧センサの数が少ない。正常な筒内圧センサの数が少ないと、目標点火時期の設定に利用する筒内圧センサの計測信号の妥当性が低くなる。そこで、制御部は、異常と判断された筒内圧センサの数が多い場合、目標点火時期を設定可能な範囲をより狭くする。点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることが、回避される。
前記制御部は、全ての前記筒内圧センサが異常と判断された場合、フィードバック制御を中止すると共に、前記目標点火時期を、フィードバック制御時の前記範囲よりも狭い範囲内において設定する、としてもよい。
全ての筒内圧センサが異常と判断されると、点火時期のフィードバック制御は、できない。制御部は、点火時期のフィードバック制御を中止する。制御部は、エンジンの運転状態に応じて、目標点火時期を設定する。制御部は、点火時期の設定に関し、オープンループ制御を行う。制御部はまた、オープンループ制御時は、フィードバック制御時の範囲よりも狭い、目標点火時期を設定可能な範囲内において、目標点火時期を設定する。点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることが、回避される。
前記点火部は、前記点火信号を受けて前記混合気に点火し、それによって、一部の混合気は火炎伝播を伴う燃焼を開始し、その後、残りの未燃混合気が自己着火により燃焼する、としてもよい。
この燃焼は、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI(SPark Controlled Compression Ignition)燃焼である。SPCCI燃焼は、エンジンの燃費性能に優れると共に、排気ガスがクリーンである。SI燃焼の燃焼量を調節することによって、圧縮開始前のシリンダの中の温度のばらつきを吸収できる。SI燃焼の燃焼量を調節することによって、未燃混合気は目標のタイミングで自己着火する。SI燃焼の燃焼量は、制御部が点火時期を調節することによって調節できる。従って、制御部が点火時期を調節することによって、CI燃焼は目標の時期に開始する。
前記燃焼指標は、前記混合気の質量燃焼割合が所定割合となるクランク角である、としてもよい。
SPCCI燃焼は、点火時期から自己着火を開始するまでの期間が、シリンダの中の状態に応じて変化する。SPCCI燃焼は、点火時期が同じでも、自己着火を開始する時期が変わる場合がある。自己着火を開始する時期が変わると、SPCCI燃焼の燃焼波形が変わってしまう。
SPCCI燃焼の燃焼波形を所望の波形にするために、制御部は、質量燃焼割合を、点火制御のための指標に定める。質量燃焼割合が所定割合となるクランク角、例えば質量燃焼割合が50%となるクランク角(mfb50:mass fraction burned)が、目標のクランク角となるように、制御部が点火時期を調節すれば、SPCCI燃焼の燃焼波形を所望の波形にすることができる。質量燃焼割合が所定割合となるクランク角を燃焼指標とすることによって、制御部は、SPCCI燃焼を適切にコントロールできる。
前記制御部は、他のシリンダについてのフィードバック補正量の平均値に基づいて、前記少なくとも一のシリンダの目標点火時期を設定する、としてもよい。
他のシリンダについてのフィードバック補正量の平均値には、他のシリンダ全てのフィードバック補正量の影響が含まれる。平均値に基づくと、制御部は、他の全てのシリンダの補正量を考慮して、少なくとも一のシリンダの目標点火時期を設定できる。制御部は、筒内圧センサが異常なシリンダの目標点火時期を、適切に設定できる。
以上説明したように、エンジンの制御装置は、筒内圧センサが異常値を出力している場合に、フィードバック制御を継続できる。
図1は、エンジンを例示する構成図である。 図2は、エンジンの制御装置を例示するブロック図である。 図3の上図は、SPCCI燃焼の波形を例示する図であり、下図は、熱発生の変化を例示する図である。 図4は、エンジンの点火制御装置の構成を例示するブロック図である。 図5は、目標点火時期の制限の違いを説明する図である。 図6は、各シリンダの目標点火時期の設定に係るフローチャートである。 図7は、筒内圧センサの異常が発生した場合の、目標点火時期の設定に係るタイムチャートである。
以下、エンジンの制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するエンジンの制御装置は例示である。
図1は、エンジンを例示する図である。図2は、エンジンの制御装置を例示するブロック図である。
エンジン1は、燃焼室17を有している。燃焼室17は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す。エンジン1は、4ストロークエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。エンジン1が運転することによって自動車は走行する。エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であればよい。燃料は、例えばバイオエタノール等を含むガソリンであってもよい。
(エンジンの構成)
エンジン1は、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13とを備えている。シリンダヘッド13は、シリンダブロック12の上に載置される。
シリンダブロック12に、複数のシリンダ11が形成されている。エンジン1は、多気筒エンジンである。図例のエンジン1は、図4に示すように、#1、#2、#3、#4の四つのシリンダ11を有している。尚、図1では、一つのシリンダ11のみを示す。
各シリンダ11には、ピストン3が内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3は、シリンダ11の内部を往復動する。ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13は、燃焼室17を形成する。尚、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する。
エンジン1の幾何学的圧縮比は、10以上30以下に設定されている。エンジン1は、一部の運転領域において、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。SPCCI燃焼を行う運転領域以外の運転領域において、エンジン1は、SI燃焼を行う。
SPCCI燃焼は、SI燃焼による発熱及び/又は圧力上昇によって、CI燃焼をコントロールする。エンジン1は、圧縮着火式エンジンである。このエンジン1は、ピストン3が圧縮上死点に至った時の燃焼室17の温度を高める必要がない。エンジン1の幾何学的圧縮比は低い。幾何学的圧縮比が低いと、冷却損失の低減、及び、機械損失の低減に有利になる。エンジン1の幾何学的圧縮比は、レギュラー仕様であれば、14~17とし、ハイオク仕様であれは、15~18としてもよい。尚、レギュラー燃料は、オクタン価が91程度の低オクタン価燃料である。ハイオク燃料は、オクタン価が96程度の高オクタン価燃料である。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、詳細な図示は省略するが、いわゆるタンブルポートである。つまり、吸気ポート18は、燃焼室17の中にタンブル流が発生するような形状を有している。
吸気ポート18には、吸気弁21が配設されている。吸気弁21は、吸気ポート18を開閉する。動弁機構は、吸気弁21を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図2に示すように、動弁機構は、吸気電動S-VT(Sequential-Valve Timing)23を有している。吸気電動S-VT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気弁21の開弁角は変化しない。尚、動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有してもよい。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19は、燃焼室17に連通している。
排気ポート19には、排気弁22が配設されている。排気弁22は、排気ポート19を開閉する。動弁機構は、排気弁22を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図2に示すように、動弁機構は、排気電動S-VT24を有している。排気電動S-VT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気弁22の開弁角は変化しない。尚、動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有してもよい。
吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、吸気弁21と排気弁22との両方が開弁するオーバーラップ期間の長さを調節する。オーバーラップ期間の長さを調節することによって、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスが燃焼室17の中に導入される。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、燃焼室17の中に燃料を直接噴射する。インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、複数の噴孔を有する多噴孔型である。インジェクタ6は、燃焼室17の天井部の中央部から放射状にかつ、斜め下向きに、燃料を噴射する。
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留する燃料タンク63と、燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62は、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いにつないでいる。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を送る。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から送られた燃料を蓄える。コモンレール64の中は高圧である。インジェクタ6は、コモンレール64につながっている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64の中の高圧の燃料が、インジェクタ6の噴孔から燃焼室17の中に噴射される。尚、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、点火プラグ25が取り付けられている(図4も参照)。点火プラグ25は、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。点火プラグ25は、点火部の一例である。点火プラグ25の電極は、燃焼室17の中に臨んでいる。
エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。燃焼室17に導入する吸気のガスは、吸気通路40の中を流れる。吸気通路40の上流端部には、エアクリーナー41が配設されている。吸気通路40の下流端の近くには、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダ11毎に分岐している。
吸気通路40におけるエアクリーナー41とサージタンク42との間には、スロットル弁43が配設されている。スロットル弁43は、弁の開度が変わることによって、燃焼室17の中への新気の導入量を調節する。
吸気通路40にはまた、スロットル弁43の下流に、過給機44が配設されている。過給機44は、燃焼室17に導入する吸気のガスの圧力を高める。この構成例において、過給機44は、エンジン1によって駆動される。過給機44は、ルーツ式、リショルム式、ベーン式、又は遠心式である。
過給機44とエンジン1との間には、電磁クラッチ45が介設している。電磁クラッチ45は、エンジン1から過給機44へ駆動力を伝達する状態と、駆動力の伝達を遮断する状態とを切り替える。後述するECU10が電磁クラッチ45に制御信号を出力することによって、過給機44はオン又はオフになる。
吸気通路40における過給機44の下流には、インタークーラー46が配設されている。インタークーラー46は、過給機44が圧縮した吸気のガスを冷却する。インタークーラー46は、水冷式又は油冷式である。
吸気通路40には、バイパス通路47が接続されている。バイパス通路47は、吸気通路40における過給機44の上流部とインタークーラー46の下流部とを互いに接続する。バイパス通路47は、過給機44及びインタークーラー46をバイパスする。バイパス通路47には、エアバイパス弁48が配設されている。エアバイパス弁48は、バイパス通路47を流れるガスの流量を調節する。
ECU10は、過給機44がオフの場合に、エアバイパス弁48を全開にする。吸気通路40を流れる吸気のガスは、過給機44及びインタークーラー46をバイパスして、エンジン1の燃焼室17に至る。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気の状態で運転する。
過給機44がオンの場合、エンジン1は過給状態で運転する。ECU10は、過給機44がオンの場合に、エアバイパス弁48の開度を調節する。過給機44及びインタークーラー46を通過した吸気のガスの一部は、バイパス通路47を通って過給機44の上流に戻る。ECU10がエアバイパス弁48の開度を調節すると、燃焼室17に導入する吸気のガスの圧力が変わる。尚、「過給」とは、サージタンク42内の圧力が大気圧を超える状態をいい、「非過給」とは、サージタンク42内の圧力が大気圧以下になる状態をいう、と定義してもよい。
エンジン1は、燃焼室17内にスワール流を発生させるスワール発生部を有している。詳細な図示は省略するが、スワール発生部は、吸気通路40に取り付けられたスワールコントロール弁56を有している。スワールコントロール弁56は、開度調節弁である。スワールコントロール弁56の開度が小さいと、燃焼室17内のスワール流が強くなる。スワールコントロール弁56の開度が大きいと、燃焼室17内のスワール流が弱くなる。スワールコントロール弁56を全開にすると、スワール流は発生しない。
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。燃焼室17から排出された排気ガスは、排気通路50の中を流れる。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐している。
排気通路50には、複数の触媒コンバーターを有する排気ガス浄化システムが配設されている。これらの触媒コンバーターは、図示は省略するが、エンジンルーム内に配設されている。上流の触媒コンバーターは、三元触媒511と、GPF(Gasoline Particulate
Filter)512と、を有している。下流の触媒コンバーターは、三元触媒513を有している。尚、排気ガス浄化システムは、図例の構成に限定されない。例えば、GPFは省略してもよい。また、触媒コンバーターは、三元触媒を有するものに限定されない。さらに、三元触媒及びGPFの並び順は、適宜変更してもよい。
吸気通路40と排気通路50との間には、EGR通路52が接続されている。EGR通路52は、排気ガスの一部を吸気通路40に還流させる通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における二つの触媒コンバーターの間に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40における過給機44の上流部に接続されている。
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラー53が配設されている。EGRクーラー53は、排気ガスを冷却する。EGR通路52にはまた、EGR弁54が配設されている。EGR弁54は、EGR通路52を流れる排気ガスの流量を調節する。EGR弁54は、外部EGRガスの還流量を調節する。
(エンジンの制御装置の構成)
エンジンの制御装置は、ECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、制御部の一例である。ECU10は、図2に示すように、マイクロコンピュータ101と、メモリ102と、I/F回路103と、を備えている。マイクロコンピュータ101は、プログラムを実行する。メモリ102は、プログラム及びデータを格納する。メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。I/F回路103は、電気信号の入出力を行う。
ECU10には、図1及び図2に示すように、各種のセンサSW1-SW11が接続されている。センサSW1-SW11は、信号をECU10に出力する。センサには、以下のセンサが含まれる。
エアフローセンサSW1は、吸気通路40を流れる新気の流量を計測する。エアフローセンサSW1は、吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されている
第1吸気温度センサSW2は、吸気通路40を流れる新気の温度を計測する。第1吸気温度センサSW2は、吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されている
第2吸気温度センサSW3は、燃焼室17に導入される吸気のガスの温度を計測する。第2吸気温度センサSW3は、サージタンク42に取り付けられている
吸気圧センサSW4は、燃焼室17に導入される吸気のガスの圧力を計測する。吸気圧センサSW4は、サージタンク42に取り付けられている
筒内圧センサSW5は、各燃焼室17内の圧力を計測する。筒内圧センサSW5は、シリンダ11毎に、シリンダヘッド13に取り付けられている
水温センサSW6は、冷却水の温度を計測する。水温センサSW6は、エンジン1に取り付けられている
クランク角センサSW7は、クランクシャフト15の回転角を計測する。クランク角センサSW7は、エンジン1に取り付けられている
アクセル開度センサSW8は、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する。アクセル開度センサSW8は、アクセルペダル機構に取り付けられている
吸気カム角センサSW9は、吸気カムの回転位置を計測する。吸気カム角センサSW9は、エンジン1に取り付けられている
排気カム角センサSW10は、排気カムの回転位置を計測する。排気カム角センサSW10は、エンジン1に取り付けられている
SCVポジションセンサSW11は、スワールコントロール弁56の開度を計測する。SCVポジションセンサSW11は、スワールコントロール弁56に取り付けられている。
ECU10は、これらのセンサSW1-SW11の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断する。ECU10はまた、予め定められている制御ロジックに従って、各デバイスの制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。
ECU100は、制御量に係る電気信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動S-VT23、排気電動S-VT24、燃料供給システム61、スロットル弁43、EGR弁54、過給機44の電磁クラッチ45、エアバイパス弁48、及び、スワールコントロール弁56に出力する。
(SPCCI燃焼のコンセプト)
エンジン1は、燃費の向上及び排気ガス性能の向上を主目的として、所定の運転状態にある場合に、圧縮自己着火による燃焼を行う。圧縮開始前の燃焼室17の中の温度がばらつくと、自己着火のタイミングが大きく変化する。そこで、エンジン1は、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。
SPCCI燃焼は、次のような燃焼形態である。つまり、1サイクル中に噴射すべき全燃料が燃焼室17の中に噴射された後、点火プラグ25が、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。このことによって、混合気が火炎伝播によりSI燃焼を開始する。SI燃焼の開始後、(1)SI燃焼の発熱により燃焼室17の中の温度が高くなりかつ、(2)火炎伝播により燃焼室17の中の圧力が上昇することによって、未燃混合気が自己着火によるCI燃焼をする。
図3の上図31は、燃焼がSPCCI燃焼であった場合のクランク角に対する熱発生率dq/dθの変化(実線)と、混合気が自己着火せず、燃焼がSI燃焼であった場合のクランク角に対する熱発生率dq/dθの変化(実線及び一点鎖線)と、を例示している。図3の下図32は、燃焼がSPCCI燃焼であった場合のクランク角に対する熱発生Qの変化(実線)と、燃焼がSI燃焼であった場合のクランク角に対する熱発生Qの変化(実線及び一点鎖線)と、を例示している。
SPCCI燃焼は、点火により火炎伝播による燃焼が開始した後、θciにおいて、混合気が自己着火し、自己着火による燃焼が行われる。上図31に示すように、SPCCI燃焼における熱発生率(dq/dθ)の波形は、SI燃焼による熱発生の山に、CI燃焼による熱発生の山が積み重なったような形状になる。下図32に示すように、SPCCI燃焼における熱発生の変化は、θciよりも前と、θciよりも後とで、傾きが変わる。
SI燃焼の燃焼量を調節することによって、圧縮開始前の燃焼室17の中の温度のばらつきを吸収できる。ECU10が点火タイミングを調節することによって、SI燃焼の燃焼量が調節される。ECU10が点火タイミングを調節すれば、混合気は目標のタイミングで自己着火する。SPCCI燃焼は、SI燃焼の燃焼量がCI燃焼の開始タイミングをコントロールしている。
(エンジンの点火制御)
図4は、エンジン1の点火制御に係る点火制御装置100の構成を例示している。点火制御装置100は、推定部111、点火時期設定部112、補正量算出部113、自気筒F/Bフィルタ部114及び第2補正量算出部115を備えている。これらは全て、ECU10の機能ブロックである。
推定部111は、各種のセンサの計測信号に基づいて、これから行う燃焼において、点火から質量燃焼割合が50%となるクランク角(mfb50)までの期間を推定する。ここで、質量燃焼割合は、燃焼室17に供給された1燃焼サイクルあたりの燃料の質量のうち、燃焼した質量の比であり、クランク角度毎に算出される。mfb50は、図3の下図32に示すように、燃焼完了時の熱発生をQとした場合に、0.5Qとなるクランク角である。
点火制御装置100は、mfb50を燃焼指標として用いて、点火制御を行う。これは、SPCCI燃焼は、点火から自己着火を開始するまでの期間が、シリンダの中の状態に応じて変化するためである。SPCCI燃焼は、点火時期が同じでも、自己着火を開始する時期が変わる場合がある。自己着火を開始する時期が変わると、SPCCI燃焼の燃焼波形が変わってしまう。そこで、点火制御装置100は、mfb50が目標のクランク角となるように点火時期を調節する。これにより、SPCCI燃焼の燃焼波形を所望の波形にすることができる。点火制御装置100は、SPCCI燃焼を適切にコントロールできる。
推定部111は、燃焼期間モデルを有している。燃焼期間モデルは、各種のパラメータから、点火からmfb50までのクランク角期間を推定する。推定に使用するパラメータは、図4に示すように、外部EGR率、内部EGR率、目標φ(目標当量比)、噴射モード、充填効率、吸気開弁時期、排気開弁時期、水温、エンジン回転数、及び、SCV開度である。
外部EGR率及び内部EGR率は、エアフローセンサSW1及び吸気圧センサSW4の計測信号に基づいて算出される。目標φはECU10が設定する目標値である。
噴射モードは、燃料の噴射時期に係り、例えば吸気行程中に燃料を噴射する噴射セット、又は、圧縮行程中に燃料を噴射する噴射セットが噴射モードに相当する。噴射モードは、ECU10が定める設定値である。
充填効率は、吸気圧センサSW4の計測信号に基づいて算出される。吸気開弁時期及び排気開弁時期はそれぞれ、吸気カム角センサSW9及び排気カム角センサSW10の計測信号に基づいて算出される。水温は、水温センサSW6の計測信号に基づいて算出される。エンジン回転数は、クランク角センサSW7の計測信号に基づいて算出される。SCV開度は、SCVポジションセンサSW11の計測信号に基づいて算出される。
点火時期設定部112は、推定部111が推定した燃焼期間、つまり、mfb50の推定値と、目標mfb50とに基づいて、mfb50が目標mfb50となるように、目標点火時期を設定する。目標mfb50は、ECU10がエンジン1の運転状態に基づいて設定する。点火時期設定部112は、オープンループ制御により、目標点火時期を設定することができる。後述するように、筒内圧センサSW5の故障によってフィードバック制御ができない場合、点火時期設定部112は、オープンループ制御により、目標点火時期を設定する。
点火時期設定部112は、シリンダ11毎に、目標点火時期を設定する。より詳細には、点火時期設定部112は、シリンダ11毎のフィードバック補正量に基づいて、オープンループ制御によって設定した目標点火時期を、シリンダ11毎に補正する。フィードバック補正量の算出は、後で詳述する。点火時期設定部112は、シリンダ11毎に設定した目標点火時期に従って、各シリンダ11の点火プラグ25に点火信号を出力する(指示IG)。複数の点火プラグ25は順番に点火をする。このエンジン1では、#1、#3、#4、#2の順番で、各シリンダ11の中の混合気が燃焼する。
補正量算出部113は、シリンダ11毎に、目標点火時期のフィードバック補正量を算出する。補正量算出部113は、筒内圧センサSW5の計測信号を受ける。補正量算出部113は、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、実際のmfb50を算出する。補正量算出部113はまた、推定部111が推定したmfb50と実際のmfb50との差と、点火時期設定部112が設定した点火時期とに基づいて、フィードバック補正量を算出する。補正量算出部113は、推定したmfb50と実際のmfb50との差が大きいほど、フィードバック補正量を大きくする。算出されるフィードバック補正量は、点火時期を進角側に補正する場合、及び、点火時期を遅角側に補正する場合の両方がある。
自気筒F/Bフィルタ部114は、補正量算出部113が算出した補正量を、シリンダ11毎に、フィルタ処理する。自気筒F/Bフィルタ部114は、一次遅れフィルタによって、フィードバック補正量をフィルタ処理する。自気筒F/Bフィルタ部114は、一次遅れフィルタによってフィルタ処理を行うため、定常安定性を高めることができる。つまり、筒内圧センサSW5の計測信号には、誤差やノイズが含まれやすい。しかし、自気筒F/Bフィルタ部114が、フィードバック補正量のフィルタ処理を行うことにより、フィードバック補正量に対する誤差やノイズの影響を小さくすることができる。その結果、点火時期がハンチングしてしまうことが抑制できる。定常運転時にエンジン1のトルクが変動することが抑制でき、自動車のドライバビリティが向上する。
自気筒F/Bフィルタ部114は、フィルタ処理後のフィードバック補正量を、点火時期設定部112に出力する。点火時期設定部112は、シリンダ11毎に設定されたフィルタ処理後のフィードバック補正量に基づいて、オープンループ制御によって設定した目標点火時期を補正する。目標点火時期は、進角側、又は、遅角側に変更される。フィードバック制御によって、mfb50が、目標mfb50に近づく。SPCCI燃焼及びSI燃焼が適正化する。燃焼騒音を抑制しながら、エンジン1の燃費性能が向上する。点火制御装置100は、シリンダ11毎に、点火時期のフィードバック行うことによって、気筒間差を吸収できる。
第2補正量算出部115は、補正量算出部113が算出した、各シリンダ11のフィードバック補正量を読み込む。第2補正量算出部115は、四つのシリンダ11に取り付けられた筒内圧センサSW5のうちの、少なくとも一の筒内圧センサSW5が異常値を出力している場合、又は、筒内圧センサSW5のうちの、少なくとも一の筒内圧センサSW5が故障している場合に、フィードバック補正量を算出する。
ここで、筒内圧センサSW5の異常又は故障の判定は、判定部116が行う。判定部116は、各筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、筒内圧センサSW5の異常又は故障の判定を行う。
判定部116は、筒内圧センサSW5の故障判断を、例えばエンジン1が燃料カット運転をしている間に行う。エンジン1の燃料カット運転中であれば、判定部116は、混合気の燃焼の影響を受けない燃焼室17内の圧力変化に基づいて、筒内圧センサSW5の故障を判断することができる。また、エンジン1が燃料カット運転をしている間は点火プラグ25が点火を行わないため、筒内圧センサSW5の計測信号が、点火プラグ25のノイズの影響を受けないという利点もある。筒内圧センサSW5の故障は、筒内圧センサSW5の絶縁不良等に起因する。絶縁不良になると、筒内圧センサSW5は、それ以降、正常な値を出力しなくなる。
筒内圧センサSW5の異常とは、筒内圧センサSW5が、一時的に異常値を出力することである。筒内圧センサSW5は、しばらくすると、正常値を出力する状態に復帰する。この点で、筒内圧センサSW5の異常は、故障とは異なる。判定部116は、エンジン1が燃料カット運転中以外の時に、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、異常値を出力していると判定した場合、筒内圧センサSW5が異常であると判定する。
判定部116は、筒内圧センサSW5の異常又は故障を判定した場合、判定フラグを第2補正量算出部115、及び、後述する制限部117に出力する。
筒内圧センサSW5が異常又は故障の場合、当該筒内圧センサSW5が取り付けられたシリンダ11は、筒内圧を計測することができない。そのため、補正量算出部113は、当該シリンダ11について、フィードバック補正量を算出することができない。フィードバック補正量が算出できないと、点火時期設定部112がオープンループ制御によって設定した目標点火時期に従って、点火プラグ25は点火を行わなければならない。しかしながら、点火時期のフィードバック補正を行わないと、点火時期の過進角することによってノッキングの発生を招いたり、点火時期が過遅角することによって失火の発生を招いたりする恐れがある。
第2補正量算出部115は、判定部116から判定フラグを受けた場合、異常又は故障している筒内圧センサSW5が取り付けられた特定シリンダ11以外のシリンダ11において算出されたフィードバック補正量から、特定シリンダ11についてのフィードバック補正量を算出する。具体的に第2補正量算出部115は、一つの筒内圧センサSW5が異常または故障である場合、残りの三つのシリンダ11についてのフィードバック補正量の平均値を算出する。第2補正量算出部115は、算出したフィードバック補正量を、自気筒F/Bフィルタ部114へ出力する。自気筒F/Bフィルタ部114は、第2補正量算出部115からのフィードバック補正量を、シリンダ11毎のフィードバック補正量とみなして、前述したように、シリンダ11毎に、一次遅れフィルタによるフィルタ処理を行う。自気筒F/Bフィルタ部114は、前記と同様に、フィルタ後のフィードバック補正量を点火時期設定部112へ出力する。筒内圧センサSW5が異常又は故障の場合でも、点火時期設定部112は、点火時期のフィードバック制御を継続できる。
制限部117は、判定部116からの判定フラグを受けると、点火時期設定部112へ制限情報を出力する。制限情報は、点火時期設定部112が設定する目標点火時期の、進角限界、及び、遅角限界に関する情報である。図5は、目標点火時期の制限を説明する図である。
図5の501に示すように、全ての筒内圧センサSW5が正常である場合、制限部117は、エンジン1の運転状態に応じて、進角限界及び遅角限界をそれぞれ設定する。点火時期設定部112は、目標点火時期を、所定の進角限界、及び、所定の遅角限界を超えないように設定する。点火時期が進角限界を超えると、強ノッキングが発生する恐れがある。また、点火時期が遅角限界を超えると、失火する恐れがある。全ての筒内圧センサSW5が正常である場合、進角限界及び遅角限界によって定まる目標点火時期の設定可能範囲501は、相対的に広い。点火時期設定部112が、フィードバック補正を行って目標点火時期を設定した際に、設定した目標点火時期が、進角限界又は遅角限界を超える場合、点火時期設定部112は、進角限界又は遅角限界を目標点火時期に設定する。
図5の502に示すように、いずれかの筒内圧センサSW5が異常又は故障になった場合、制限部117は、筒内圧センサSW5が異常又は故障になったシリンダ11については、進角限界及び遅角限界をそれぞれ、オフセットする。それによって、当該シリンダ11において、目標点火時期を設定可能な範囲502は狭くなる。尚、筒内圧センサSW5が正常なシリンダ11は、符号501に示すように、目標点火時期を設定可能な範囲は広いままである。
前述したように、いずれかの筒内圧センサSW5が異常又は故障になると、他の筒内圧センサSW5が計測した筒内圧の信号に基づく、他のシリンダ11について設定されたフィードバック補正量を利用する。当該フィードバック補正量は、筒内圧センサSW5が異常又は故障になったシリンダ11の状態を反映していない。そのため、点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることを回避すべく、目標点火時期を設定可能な範囲を狭くする。
ここで、制限部117は、異常又は故障になった筒内圧センサSW5の数に応じて、目標点火時期を設定可能な範囲の大きさを変えてもよい。例えば異常又は故障になった筒内圧センサSW5の数が増えるほど、範囲を狭くしてもよい。異常又は故障になった筒内圧センサSW5の数が増えるほど、正常な筒内圧センサSW5の数が減る。正常な筒内圧センサの数が少ないと、目標点火時期の設定に利用する筒内圧センサSW5の計測信号の妥当性が低くなる。そのため、異常と判断された筒内圧センサSW5の数が多いほど、目標点火時期を設定可能な範囲をより狭くすることで、点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることが、回避される。
また、全ての筒内圧センサSW5が異常又は故障になった場合、補正量算出部113及び第2補正量算出部115は共に、フィードバック補正量を算出することができない。点火時期設定部112は、点火時期のフィードバック制御を中止する。点火時期設定部112は、推定部111が推定したmfb50の推定値と、目標mfb50とに基づき、オープンループ制御により、目標点火時期を設定する。
制限部117はこの場合、進角限界及び遅角限界をさらにオフセットすることによって、目標点火時期を設定可能な範囲503をさらに狭くする。フィードバック制御によって点火時期の調節が行えない状況において、目標点火時期の設定可能範囲をさらに狭くすることにより、点火時期が過進角となったり、過遅角となったりすることが回避できる。
点火時期設定部112はまた、オープンループ制御により設定した目標点火時期が、オフセットした進角限界、又は、遅角限界を超える場合、目標点火時期を、進角限界、又は、遅角限界に設定する。
次に、図6のフローチャートを参照しながら、点火制御装置100が実行する点火制御について説明する。スタート後のステップS51において、点火制御装置100の推定部111は、燃焼期間モデルを用いて燃焼期間を推定すると共に、点火時期設定部112は、推定した燃焼期間と目標mfb50とに基づいて、オープンループ制御により、目標点火時期を算出する。
続くステップS52において、点火時期設定部112は、シリンダ11毎に、目標点火時期の補正を行う。前述したように、シリンダ11毎に、フィルタ処理されたフィードバック補正量に基づいて、点火時期設定部112は、目標点火時期を補正する。点火時期設定部112はまた、図5に示す進角限界及び遅角限界を超えないよう、目標点火時期を設定する。
ステップS53において、点火時期設定部112は、各シリンダ11の点火プラグ25に、点火指示を行う。四つのシリンダ11は、#1、#3、#4、#2の順番に燃焼する。ステップS54において、各シリンダ11の筒内圧センサSW5は、シリンダ11の中の圧力を計測する。
続くステップS55において、判定部116は、いずれかの筒内圧センサSW5が異常又は故障であるかを判断する。ステップS55の判断がNOの場合、プロセスはステップS56に進む。ステップS55の判断がYESの場合の場合、プロセスはステップS59に進む。
全ての筒内圧センサSW5が正常である場合、補正量算出部113は、ステップS56において、シリンダ11毎にフィードバック補正量を算出し、続くステップS57において、自気筒F/Bフィルタ部114は、シリンダ11毎に、フィードバック補正量のフィルタ処理を実行する。前述したように、自気筒F/Bフィルタ部114は、一次遅れフィルタによって、フィルタ処理を行う。その後、ステップS58において、点火時期設定部112は、フィードバック補正量を更新する。更新されたフィードバック補正量は、次回の点火時に利用される(図6の一点鎖線の矢印参照)。
ステップS59において、判定部116は、他の筒内圧センサSW5は正常であるか否かを判断する。ステップS59の判断がYESの場合、つまり、正常な筒内圧センサSW5が一つでも存在する場合、プロセスはステップS510に進む。ステップS59の判断がNOの場合、つまり、全ての筒内圧センサSW5が異常又は故障している場合、プロセスはステップS511に進む。
ステップS510において、第2補正量算出部115は、他のシリンダ11のフィードバック補正量の平均値を算出する。尚、筒内圧センサSW5が正常なシリンダ11については、第2補正量算出部115は、フィードバック補正量を算出しない。その後、自気筒F/Bフィルタ部114が、ステップS57においてフィードバック補正量のフィルタ処理を行うと共に、ステップS58において、点火時期設定部112が、フィードバック補正量を更新することは、前記と同じである。尚、ステップS52において、点火時期設定部112が目標点火時期を補正する場合、点火時期設定部112は、制限された進角限界及び遅角限界を超えないよう、目標点火時期を設定する(図5の範囲502参照)。
全ての筒内圧センサSW5が異常または故障している場合、点火時期設定部112は、ステップS511においてフィードバック制御を中止する。制限部117は、目標点火時期の設定可能範囲をさらに狭くする(図5の範囲503参照)。
尚、筒内圧センサSW5が異常の場合、当該筒内圧センサSW5は、しばらくすると、正常値を出力するように復帰する。筒内圧センサSW5が正常値を出力すれば、判定部116は、判定フラグを出力しないため、補正量算出部113は。シリンダ11毎に、フィードバック補正量を算出できる。
次に、図7のタイムチャートを参照しながら、点火制御装置100が実行する点火制御時の各パラメータの変化について説明する。図7の横軸は時間を示し、紙面右に進むに従って時間が進行する。チャート71は、燃料噴射量の変化を示している。図7の例において、燃料噴射量は変化せず一定である。チャート72は、充填効率の変化を示している。図7の例において、充填効率は変化せず一定である。図7は、自動車が定速走行している例に相当する。つまり、エンジン1は定常運転をしている。
チャート73は、目標点火時期を示している。チャート76は、シリンダ11毎のF/B補正量を示している。チャート76に実線で示すシリンダ11は、時刻t1以前は、F/B補正量が進角側に設定されている。そのため、時刻t1以前において、目標点火時期は、進角側に設定されている。チャート76に破線で示す他のシリンダ11は、時刻t1以前は、F/B補正量が相対的に遅角側に設定されている。チャート73に破線で示す他のシリンダ11は、時刻t1以前において、目標点火時期は、相対的に遅角側に設定されている。
チャート74は、実際のmfb50を示している。前述したフィードバック補正を行うことによって、時刻t1以前において、全てのシリンダ11のmfb50は、目標のmfb50に一致、又は、ほぼ一致している。
チャート75は、判定部116が出力する判定フラグを示している。時刻t1以降において、判定部116は、特定の筒内圧センサSW5の異常を判定している。判定フラグを受けて第2補正量算出部115は、フィードバック補正量を算出する。チャート76に実線で示すように、筒内圧センサSW5が異常なシリンダ11について、フィードバック補正量は、チャート76に破線で示す他の三つのシリンダ11のフィードバック補正量の平均である。
チャート73に実線で示すように、点火時期設定部112は、筒内圧センサSW5が異常なシリンダ11について、目標点火時期を設定する。他のシリンダ11に対して、進角限界及び遅角限界がオフセットされているため、筒内圧センサSW5が異常なシリンダ11の目標点火時期は、そのオフセット分だけ、他のシリンダ11の目標点火時期に対して、遅角側にずれている。その結果、筒内圧センサSW5が異常なシリンダ11における実際のmfb50は、他のシリンダ11におけるmfb50に対して、進角側にずれている(チャート74参照)。
時刻t2において、異常値を出力していた筒内圧センサSW5が正常値を出力するように復帰している。判定部116は、判定フラグを出力しない(チャート75参照)。補正量算出部113は、当該筒内圧センサSW5の計測信号に基づいてフィードバック補正量を算出し(チャート76参照)、そのフィードバック補正量に基づいて、点火時期設定部112は、目標点火時期を設定する(チャート73)。
尚、前記の構成では、筒内圧センサSW5が異常または故障した場合に、目標点火時期の設定可能な範囲を縮小することで、目標点火時期の設定に制限をかけている。これとは異なり、第2補正量算出部115が算出するフィードバック補正量に制限を加えることによって、目標点火時期が制限されるように、構成してもよい。
また、点火時期の制御に用いる燃焼指標は、mfb50に限らない。点火時期設定部112は、任意の割合の質量燃焼割合を、燃焼指標として用いることができる。また、SPCCI燃焼の点火時期の制御において、点火時期設定部112は、混合気が自己着火を開始するθci(図3参照)を燃焼指標として用いることができる。
尚、ここに開示するエンジンの制御装置は、前述した構成のエンジン1への適用に限定されない。エンジンは、SPCCI燃焼を行わない、例えば火炎伝播によるSI燃焼のみを行うエンジンであってもよい。
1 エンジン
10 ECU(制御部)
100 点火制御装置
112 点火時期設定部
113 補正量算出部
114 自気筒F/Bフィルタ部
115 第2補正量算出部
116 判定部
117 制限部
11 シリンダ
17 燃焼室
25 点火プラグ(点火部)
SW5 筒内圧センサ

Claims (6)

  1. それぞれ燃焼室を形成する複数のシリンダを有するエンジンと、
    前記シリンダ毎に前記エンジンに取り付けられかつ、それぞれ前記燃焼室の中の混合気に点火を行う複数の点火部と、
    前記シリンダ毎に前記エンジンに取り付けられかつ、それぞれ前記シリンダの中の圧力に対応する計測信号を出力する複数の筒内圧センサと、
    前記エンジンの運転状態に応じて目標点火時期を定めると共に、前記点火部が前記目標点火時期に点火を行うよう、前記複数の点火部へ順次、点火信号を出力する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記筒内圧センサの計測信号を受けると共に、前記計測信号から得られる燃焼指標に基づいて、前記燃焼指標が目標の燃焼指標となるように、前記目標点火時期を、前記シリンダ毎にフィードバック補正し、
    前記制御部はまた、前記複数のシリンダの内の少なくとも一のシリンダの前記筒内圧センサが異常と判断された場合に、他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて、前記少なくとも一のシリンダの前記目標点火時期を設定すると共に、前記目標点火時期の設定に際し制限をかけ
    前記制御部は、前記目標点火時期を、前記エンジンの運転状態に応じて定まる、進角限界及び遅角限界からなる範囲内において設定し、
    前記制御部はまた、前記他のシリンダについてのフィードバック補正量に基づいて前記少なくとも一のシリンダの目標点火時期を設定する場合に、前記範囲を狭くするエンジンの制御装置。
  2. 請求項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御部は、異常と判断された前記筒内圧センサの数が多いときは、少ないときよりも、前記範囲を狭くするエンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御部は、全ての前記筒内圧センサが異常と判断された場合、フィードバック制御を中止すると共に、前記目標点火時期を、フィードバック制御時の前記範囲よりも狭い範囲内において設定するエンジンの制御装置。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記点火部は、前記点火信号を受けて前記混合気に点火し、それによって、一部の混合気は火炎伝播を伴う燃焼を開始し、その後、残りの未燃混合気が自己着火により燃焼するエンジンの制御装置。
  5. 請求項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記燃焼指標は、前記混合気の質量燃焼割合が所定割合となるクランク角であるエンジンの制御装置。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御部は、他のシリンダについてのフィードバック補正量の平均値に基づいて、前記少なくとも一のシリンダの目標点火時期を設定するエンジンの制御装置。
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