(実施形態)
実施形態にかかる液体吐出装置は、記録媒体にバーコード等のシンボルを作像するが、その際に、バーコード等のシンボルの品質を高めるための補正(調整)を行う。バーコードは、所定の方向に黒バーと白バーとが複数回繰り返し配置されて構成される。白バーは、白スペースと呼ばれることもある。バーコードは、それぞれが複数段階の幅を有する黒バーと白バーとの組み合わせ(例えば、黒バーの幅と白バーの幅との比率)で情報を表現する。バーコードで表現された情報の読み取り(デコーダ)は、スキャナで取得されたコード画像から認識される。そのため、液体吐出装置は、バーコードにおいて、黒バーの幅と白バーの幅との比率が適正な比率になるように補正を行う。
バーコードの補正方法として、媒体にテストチャートを印字し、黒バーの幅と白バーの幅とを測定し、測定結果に応じて黒バーと白バーとのドット数を補正値として決定することが考えられる。これにより、実際にバーコードを印刷する時に、補正値を適用して、媒体に記録されるバーコードの黒バーの幅と白バーの幅とを規定の大きさにすることができるようにも考えられる。
この技術では、テストチャートを印刷する時と実際にバーコードを印刷する時とで条件が時間的に変動しないことが前提となっている。しかし、液体吐出装置では、液体吐出ヘッドを駆動する際に、媒体の送り量にムラ(送りムラ)が発生することがある。この技術では、この媒体の送りムラによるバー幅の変動に対応できずに、媒体に形成するシンボル(バーコード)の品質が低下する可能性がある。
そこで、本実施形態では、液体吐出装置において、光の反射率の低い領域(黒バー)と光の反射率の高い領域(白バー)との比率が一定となるように記録媒体の送り量に応じて吐出データ(印字データ)を調整することで、シンボル(バーコード)の記録品質の向上を目指す。
具体的には、記録媒体の送り量の変動により白バーの幅が変化し黒バーの幅との比率(幅比率)が変わり得ることに対して、液体吐出装置は、吐出データの調整を次のように行う。すなわち、液体吐出装置は、記録媒体の送り量の変動データを元に、黒バーの幅と白バーの幅との比率(幅比率)が狙い値(目標比率)に近づくように、吐出データにおける黒バーの情報及び/又は白バーの情報を調整する。例えば、液体吐出装置は、幅比率が目標比率に近づく方向に白バーに対する黒バーの位置を調整してもよいし、幅比率が目標比率に近づく方向に黒バーのドット数を増減させてもよいし、幅比率が目標比率に近づく方向に黒バーのドット径を変更してもよい。これにより、記録媒体の送り量が変化しても、幅比率を目標比率に近づけることができ、シンボル(バーコード)の記録品質を向上でき、それによって、デコーダ(バーコードの読み取り)の品質も向上できる。
より具体的には、液体吐出装置10は、図1に示すように構成され得る。図1は、液体吐出装置10の概略構成を示す図である。
液体吐出装置10は、液体吐出ヘッド16と、載置台17と、副走査駆動部18と、ガイドロッド19と、コントローラ50と、を含む。
液体吐出ヘッド16は、例えばインクジェット方式のヘッドであり、複数のノズル16aから液体(例えば、インク)の滴を記録媒体Pに吐出してドットを形成することにより、記録媒体P上に画像を形成する。液体吐出ヘッド16は、主走査方向に延びるガイドロッド19(ガイド)に沿って主走査方向に往復走査しながら、液滴(例えば、インク滴)を吐出する。複数のノズル16aは、少なくとも主走査方向に沿って配列されている。各ノズル16aは、液体吐出ヘッド16において、記録媒体Pが載置される載置台17に液滴(インク滴)の吐出方向が向かうように設けられている。なお、ガイドロッド19は、液体吐出ヘッド16を支持し、主走査方向の走査の軌道となる機能を有するのであれば、レールであってもプレートであってもよい。
副走査駆動部18は、液体吐出ヘッド16に対して、記録媒体Pを副走査方向に搬送させる駆動部である。副走査駆動部18は、例えばモータ等によって構成される。なお、副走査駆動部18は、記録媒体Pの代わりに、液体吐出ヘッド16を副走査方向に移動させることによって、液体吐出ヘッド16に対して相対的に記録媒体Pが副走査方向に移動するものとしてもよい。
コントローラ50は、液体吐出装置10の各部の動作を制御する制御ユニットである。コントローラ50は、例えば、副走査駆動部18、ならびに、液体吐出ヘッド16の主走査方向の移動動作および吐出動作を制御する。コントローラ50は、液体吐出ヘッド16から液滴(インク滴)を吐出させドットを形成させる吐出動作の際、液体吐出ヘッド16の主走査方向の走査と、記録媒体Pの副走査方向の搬送とを交互に繰り返すように、液体吐出ヘッド16および副走査駆動部18を制御する。
例えば、液体吐出装置10では、液体吐出ヘッド(印字ヘッド)16を主走査方向に沿って左右に走査して像を得ながら副走査方向に記録媒体Pを送って、記録媒体Pの任意の場所に黒バーを形成する。これにより、図1に示すようなシンボル(バーコード)BCDが記録媒体P上に記録(印字)される。シンボルBDCにおける記録媒体Pの送り方向の先頭側の領域を領域Aとし、中間の領域を領域Bとし、後ろ側の領域を領域Cとすると、領域A、領域B、領域Cは、互いに、記録媒体Pの送り位置(媒体送り位置)が異なる領域である。
次に、液体吐出装置10のハードウェア構成について図2を用いて説明する。図2は、液体吐出装置10のハードウェア構成を示す図である。
液体吐出装置10は、コントローラ50と、主走査モータ72と、副走査駆動部73と、操作パネル74と、ストレージ75と、を備えている。このうち、副走査駆動部73は、図1に示した副走査駆動部18に相当する。また、液体吐出装置10が、液体吐出ヘッド16と、載置台17と、を備えているのは上述した通りである。
コントローラ50は、液体吐出装置10全体の動作を制御する装置である。コントローラ50は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)54と、I/O55と、ホストI/F56と、ヘッド駆動回路61と、主走査駆動回路62と、副走査駆動回路63と、を備えている。
CPU51は、液体吐出装置10全体の動作制御を司る演算装置である。ROM52は、液体吐出装置10の電源が遮断されている間もデータおよびプログラムを保持している不揮発性メモリである。RAM53は、CPU51のワークエリア(作業領域)として機能する揮発性メモリである。
ASIC54は、画像データもしくは印字データに対する各種信号処理、および並び替え等を行う画像処理、またはその他液体吐出装置10全体を制御するための入出力信号を処理する集積回路である。
I/O55は、各種センサ等からの検出信号を入力するインターフェースである。ホストI/F56は、外部機器(例えば図11に示すPC(Personal Computer)30)との間でデータおよび信号の送受を行うインターフェースである。ホストI/F56は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に準拠したネットワークインターフェースである。なお、ホストI/F56は、USB(Universal Serial Bus)等のインターフェースであってもよい。
ヘッド駆動回路61は、液体吐出ヘッド16を駆動制御する回路である。ヘッド駆動回路61は、画像データをシリアルデータで液体吐出ヘッド16内部の駆動回路へ転送する。このとき、ヘッド駆動回路61は、画像データの転送および転送の確定等に必要な転送クロックおよびラッチ信号、ならびに、液体吐出ヘッド16から液滴(インク滴)を吐出する際に使用する駆動波形を生成し、液体吐出ヘッド16内部の駆動部へ出力する。液体吐出ヘッド16内部の駆動部は、入力した画像データに対応する駆動波形を選択的に、液体吐出ヘッド16の各ノズル16aの圧電素子(アクチュエータ)に入力する。
主走査駆動回路62は、CPU51の制御下で、主走査モータ72の駆動を制御して、液体吐出ヘッド16の主走査方向の移動を制御する回路である。主走査モータ72は、回転駆動することで液体吐出ヘッド16を主走査方向に移動(走査)させるモータである。
副走査駆動回路63は、CPU51の制御下で、副走査駆動部73を駆動する回路である。副走査駆動部73は、記録媒体Pを副走査方向に搬送させる駆動部である。
操作パネル74は、ユーザの操作に応じた各種の入力を受け付けると共に、各種の情報(例えば、受け付けた操作に応じた情報、液体吐出装置10の動作状況を示す情報等)を表示する、入力機能および表示機能を有する装置である。操作パネル74は、例えば操作ボタンと、液晶表示装置等の表示部と、を有するものとしてもよい。この場合、操作ボタンが上述の入力機能を実現し、表示部が上述の表示機能を実現する。なお、操作パネル74は、操作ボタンおよび表示部の代わりに、例えば、タッチパネル機能を搭載した液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)で構成されるものとしてもよい。
ストレージ75は、各種データを記憶する不揮発性記憶装置である。ストレージ75は、例えば、フラッシュメモリ等である。ストレージ75は、例えば、PC30から受信した画像データ等を記憶する。
なお、図2に液体吐出装置10のハードウェア構成は、一例を示すものであり、図2に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
次に、液体吐出装置10の機能構成について図3を用いて説明する。図3は、液体吐出装置10の機能構成を示す図である。
液体吐出装置10は、送り量検知部101、判定部102、調整部103、記憶部104、及び吐出制御部105を有する。送り量検知部101、判定部102、調整部103、吐出制御部105のそれぞれは、図2に示すCPU51が制御プログラムをROM52から読み出し、制御プログラムの各機能モジュールをコンパイル時に一括して又は処理の進行に応じて逐次的にRAM52上に展開することでコントローラ50内に構成され得る。記憶部104は、図2に示すROM52、RAM52、ストレージ75のいずれか又はそれらの組み合わせで実現され得る。
記憶部104は、吐出データ104aを格納する。吐出データ104aは、液体吐出ヘッド16における複数のノズル16aの配列(図1参照)に対応しており、各ノズル16aの吐出の有無等を示すパターンを含む。
送り量検知部101は、搬送ローラに付けたエンコーダ73aのカウント量を計測する方法や記録媒体を直接カメラ17aで計測して送り量を求める方法などにより、記録媒体Pの送り量を検知する。送り量検知部101は、検知された送り量を判定部102へ供給する。
判定部102は、記録媒体Pの送り量の目標となる基準値が予め設定されている。判定部102は、送り量と基準値とを比較し、送り量が基準値より大きいか小さいかを示す比較結果を調整部103へ供給する。
調整部103は、比較結果に応じて、吐出データ104aを記憶部104から読み出し、吐出データ104aを調整する。
例えば、幅比率=(黒バー幅)/(白バー幅)とすると、送り量が基準値より大きい場合、幅比率が目標比率より小さくなると予想される。この場合、調整部103は、送り量が基準値より大きい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーの間隔が狭くなる方向に黒バーの位置と白バーの位置との少なくとも一方をシフトしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より大きい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーのドット数(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドット数)を増やしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より大きい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーのドット径(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドットの径)を大きくしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より大きい場合、吐出データ104aを調整して、上記のような黒バーの位置、ドット数、及びドット径のいずれか2つ以上の調整を組み合わせて行ってもよい。
あるいは、送り量が基準値より小さい場合、幅比率(=(黒バー幅)/(白バー幅))が目標比率より大きくなると予想される。この場合、調整部103は、送り量が基準値より小さい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーの間隔が広くなる方向に黒バーの位置と白バーの位置との少なくとも一方をシフトしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より小さい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーのドット数(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドット数)を減らしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より小さい場合、吐出データ104aを調整して、黒バーのドット径(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドットの径)を小さくしてもよい。また、調整部103は、送り量が基準値より小さい場合、吐出データ104aを調整して、上記のような黒バーの位置、ドット数、及びドット径のいずれか2つ以上の調整を組み合わせて行ってもよい。
調整部103は、調整後の吐出データ104aを記憶部104へ格納する。
吐出制御部105は、液体吐出ヘッド16を制御すべきタイミングになると、吐出データ104aを記憶部104から読み出し、吐出データ104aに従って、液体吐出ヘッド16の駆動を制御する。これにより、記録媒体Pの送り量が変化しても、幅比率を目標比率に近づけるように、液体吐出ヘッド16から記録媒体Pへ液体(インク)の吐出が行われ得る。
次に、記録媒体Pの送り量が狙い値(基準値)の場合の黒バー幅と白バー幅との関係について図4を用いて説明する。図4は、液体吐出動作(媒体送り量の変動がない場合)を示す図である。
図4(a)に示すグラフは、横軸が記録媒体Pの送り位置(媒体送り位置)を示し、縦軸が記録媒体Pの送り量が狙い値(基準値)からのずれ(媒体送り精度)を示している。縦軸では、送り量が基準値より大きいことを+側のずれとして示し、送り量が基準値より小さいことを-側のずれとして示している。送り量の変動の取得方法は、搬送ローラに付けたエンコーダ73aのカウント量を計測する方法や記録媒体を直接カメラ17aで計測して送り量を求める方法などが考えられる。
図4(a)に示すグラフでは、常に記録媒体Pの送り精度が一定の場合が例示され、記録媒体Pの送り量が一定のため、シンボル(バーコード)を印字した時の黒バー幅および白バー幅は、図4(b)に示すように、各領域A~C(図1参照)で略同一となる。例えば、領域A,B,Cの黒バー幅をそれぞれXAk,XBk,XCkとし、領域A,B,Cの白バー幅をそれぞれXAw,XBw,XCwとすると、次の数式1及び数式2が成り立つ。
XAk≒XBk≒XCk・・・数式1
XAw≒XBw≒XCw・・・数式2
このとき、幅比率(=(黒バー幅)/(白バー幅))の目標比率が100%であるとすると、次の数式3に示されるように、各領域A~Cの幅比率が目標比率に略等しくなっている。
XAk/XAw≒XBk/XBw≒XCk/XCw≒100%・・・数式3
数式3が成り立つような場合は、バー幅補正の補正値は一律であっても問題ない。
しかし、実際には記録媒体Pの送り量は搬送ローラの偏心や温度変化によるローラ径の変化等により変動してしまう可能性がある。例えば、シンボル(バーコード)の記録媒体Pへの記録途中で記録媒体Pの搬送が入るような場合に、図5(a)に示すように記録媒体Pの送り精度が+方向、-方向に振れる可能性がある。図5は、液体吐出動作(媒体送り量の変動がある場合)を示す図である。黒バーを1ドットラインで形成する液体吐出方法(印字方法)の場合に、黒バー幅は記録媒体Pの送り精度によらずに一定であるが、記録媒体Pの送り量が変動すると、次に黒バーを記録媒体P上に記録(印字)する位置が適切な位置(目標位置)から変動してしまう。つまり、次に黒バーを記録(印字)する場所が変わるということは白バーの幅が適切な幅から変化することになる。
例えば、図5(b)に示すように、領域Aでは記録媒体Pの送り精度が+方向であるため、記録媒体Pの送り量も大きくなり黒バー間の距離が広がってしまう。つまり白バー幅が太くなってしまう。領域Cでは記録媒体Pの送り精度が-方向であるため、記録媒体Pの送り量も小さくなり黒バー間の距離が狭まってしまう。つまり、白バー幅が細くなってしまう。例えば、領域A,B,Cの黒バー幅をそれぞれXAk,XBk,XCkとし、領域A,B,Cの白バー幅をそれぞれXAw,XBw,XCwとすると、次の数式4及び数式5が成り立つ。
XAk=XBk=XCk・・・数式4
XAw>XBw>XCw・・・数式5
先にも述べたように、黒バー幅は一定で白バー幅だけが変動するので黒バーと白バーの幅の比率が目標比率から変化することになり正しくデコーダ出来なくなってしまう可能性がある。例えば、幅比率(=(黒バー幅)/(白バー幅))の目標比率が100%であるとすると、図5(b)に示す場合、次の数式6~数式11に示されるように、領域A,Cの幅比率が目標比率から変化している。
XBk=XBw・・・数式6
XBk/XBw=100%・・・数式7
XAk=2XAw・・・数式8
XAk/XAw=50%・・・数式9
XCk=0.5XCw・・・数式10
XCk/XCw=200%・・・数式11
記録媒体Pの送り精度は装置固有の特性であり、また、完全になくすことは困難である。このため、液体吐出装置10は、記録媒体Pの送り量の変動データを元に黒バーの形成位置を変化させたり黒バーのドット数を加減することで、送り量が変動しても黒バーと白バーの幅比率が目標比率に近づくように(例えば、常に目標比率付近で一定になるように)補正する。
その補正の一例を図6に示す。図6は、吐出データの調整(黒バーの位置の補正)を示す図である。
図6(a)は、補正を行わない場合の吐出データDT1を示し、図6(b)は、補正を行わない場合の液体吐出結果(印字結果)を示している。図6(a)に示すように、領域A~Cの各領域の吐出データ(印字データ)が全て同じ吐出データDT1になっている。このとき、図5(a)に示すように送り量は変動している。このため、液体吐出結果(印字結果)は、図6(b)に示すように、領域Aでは黒バー間が広がり、領域Cでは黒バー間が狭まってしまう。なお、B地点では狙い通りの像が形成される。
図6(c)は、補正を行った場合の吐出データDT11~DT13を示し、図6(e)は、補正を行った場合の液体吐出結果(印字結果)を示している。図6(c)に示すように、領域A~Cの各領域の送り量に応じて吐出データ(印字データ)DT1に補正を加えて、補正後の吐出データDT11~DT13としている。本実施形態では、黒バー印字データの位置をずらしている。
すなわち、領域Aについては、送り量が基準値より大きいことに応じて、吐出データDT1における黒バーの位置を黒バーの間隔が例えば1ライン分狭くなるように調整して、調整後の吐出データDT11を得る。領域Bについては、送り量が基準値に略等しいので、吐出データDT1をそのまま用いて、調整後の吐出データDT12を得る。領域Cについては、送り量が基準値より小さいことに応じて、吐出データDT1における黒バーの位置を黒バーの間隔が例えば2ライン分広くなるように調整して、調整後の吐出データDT13を得る。
なお、位置のシフトで吐出データを調整する場合、白バー幅の制御は画像解像度が最小分解能となる。例えば、600dpiの解像度の場合、最小分解能は42μmとなる。
吐出データ(印字データ)DT11~DT13は領域A~Cで異なるものとなるが、送り量の変動を経た液体吐出結果(印字結果)では、図6(d)に示すように、領域A~Cの各領域とも全て同じ液体吐出結果(印字結果)となる。
また、補正の他の例を図7に示す。図7は、吐出データの調整(黒バーのドット数及び/又はドット径の補正)を示す図である。
黒バー幅を制御する方法として、黒バーを形成する滴種(すなわち、ドット径)を変化させる方法やドット数を変化させる方法がある。図7では、黒バーの構成滴種(ドット径)とドット数との組み合わせによる黒バー幅の補正にもちいられるテーブルが例示されている。滴種(ドット径)とドット数とを組み合わせることで、より細かい液体吐出制御が可能となる。
例えば、領域Aについては、送り量が基準値より大きいことに応じて、吐出データDT1における黒バーのドット数を例えば2ドット→3ドットに増やすように調整して、調整後の吐出データDT11を得る。領域Bについては、送り量が基準値に略等しいので、吐出データDT1をそのまま用いて(例えば、黒バーのドット数を例えば2ドットのままにして)、調整後の吐出データDT12を得る。領域Cについては、送り量が基準値より小さいことに応じて、吐出データDT1における黒バーのドット数を例えば2ドット→1ドットに減らすように調整して、調整後の吐出データDT13を得る。
あるいは、領域Aについては、送り量が基準値より大きいことに応じて、吐出データDT1における黒バーの構成滴を例えば中滴→大滴に変更する(ドット径を大きくする)ように調整して、調整後の吐出データDT11を得る。領域Bについては、送り量が基準値に略等しいので、吐出データDT1をそのまま用いて(例えば、黒バーの構成滴を例えば中滴のままにして)、調整後の吐出データDT12を得る。領域Cについては、送り量が基準値より小さいことに応じて、吐出データDT1における黒バーの構成滴を例えば中滴→小滴に変更する(ドット径を小さくする)ように調整して、調整後の吐出データDT13を得る。
この場合も、吐出データ(印字データ)DT11~DT13は領域A~Cで異なるものとなるが、送り量の変動を経た液体吐出結果(印字結果)では、図6(d)に示すように、領域A~Cの各領域とも全て同じ液体吐出結果(印字結果)となる。
次に、液体吐出装置10の動作について図8を用いて説明する。図8は、液体吐出装置10の動作を示すフローチャートである。
液体吐出装置10は、記録媒体Pの送り量のプロファイルを作成し(S1)、黒バー幅を測定する(S2)。液体吐出装置10は、S1とS2の結果からバーコードイメージを作成する(S3)。液体吐出装置10は、S3のバーコードイメージのそれぞれの黒バーと白バーとの対で幅比率を算出する(S4)。液体吐出装置10は、黒バーと白バーの対で幅比率が全て狙い値(目標比率)に略等しいか判定する(S5)。液体吐出装置10は、全て狙い値(目標比率)に対して略等しい場合(S5でYes)、処理を終了する。液体吐出装置10は、幅比率が狙い値(目標比率)から外れている黒バーと白バーの対が存在する場合(S5でNo)、その対を特定する(S6)。液体吐出装置10は、S6で特定された対の幅比率が、狙い値(目標比率)に対して+方向及び-方向に許容誤差を含む範囲である許容範囲内か判定する(S7)。液体吐出装置10は、対の幅比率が許容範囲内の場合(S7でYes)、処理を終了する。液体吐出装置10は、対の幅比率が許容範囲から外れる場合(S7でNo)、黒バー幅と白バー幅を比較して黒バー幅の方が太くなる方向に幅比率が目標比率から外れているか判定する(S8)。
液体吐出装置10は、黒バー幅の方が太くなる方向に幅比率が目標比率から外れている場合(S8でYes)、黒バー太い補正(すなわち、黒バーの間隔を広くする補正)を実施する(S9)。例えば、液体吐出装置10は、黒バーの間隔が広くなる方向に黒バーの位置と白バーの位置との少なくとも一方をシフトしてもよい。液体吐出装置10は、黒バーのドット数(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドット数)を減らしてもよい。液体吐出装置10は、黒バーのドット径(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドットの径)を小さくしてもよい。あるいは、液体吐出装置10は、そのような黒バーの位置、ドット数、及びドット径のいずれか2つ以上の調整を組み合わせて行ってもよい。
液体吐出装置10は、白バー幅の方が太くなる方向に幅比率が目標比率から外れている場合(S8でNo)、白バー太い補正(すなわち、白バーの間隔を広くする補正)を実施する(S10)。例えば、液体吐出装置10は、黒バーの間隔が狭くなる方向に黒バーの位置と白バーの位置との少なくとも一方をシフトしてもよい。液体吐出装置10は、黒バーのドット数(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドット数)を増やしてもよい。液体吐出装置10は、黒バーのドット径(すなわち、黒バーを形成するために吐出されるドットの径)を大きくしてもよい。あるいは、液体吐出装置10は、そのような黒バーの位置、ドット数、及びドット径のいずれか2つ以上の調整を組み合わせて行ってもよい。
液体吐出装置10は、全ての黒バーと白バーとの対で処理実施済みか判定する(S11)。液体吐出装置10は、未処理の対があれば(S11でNo)処理をS6へ戻す。
以上のように、本実施形態では、液体吐出装置10において、光の反射率の低い領域(黒バー)と光の反射率の高い領域(白バー)との比率が一定となるように記録媒体Pの送り量に応じて吐出データ(印字データ)を調整する。これにより、シンボル(バーコード)の記録品質を向上でき、それによって読み取り品質(デコード品質)も向上できる。
なお、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品であれば、インクジェット記録装置用の記録ヘッド以外のヘッドであってもよい。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
また、本明細書における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
また、「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化したものであり、液体を吐出する機能に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。