JP7220459B2 - 空調機の衛生管理システム - Google Patents
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Description
詳細には、工場(特に、食品、医薬品あるいは化粧品の製造現場)、学校、集合住宅、ビル、オフィス、住宅等に設置する空調機を、衛生的に管理することが可能な空調機の衛生管理システムに関する。
特許文献1には、空調機の熱交換器に向けて洗浄剤を高圧で噴射し、熱交換器に付着した汚れを除去する洗浄工程と、熱交換器の表面にコーティング膜を形成する工程が開示されている。コーティング剤は、常温で硬化してセラミック被膜を形成するシリカ粉と無機バインダーを水溶媒に分散させたものが使用されている。
特許文献2では、熱交換器から菌類除去するため高圧洗浄した後、熱交換器の乾燥状態を維持するために、シリコーン含有撥水剤をフィン表面に定着させ、該撥水剤の作用により熱交換器が結露しても水滴が表面に残らないようにして、菌類の生存環境の形成を阻害している。
一方、空調機内部におけるカビや細菌等の繁殖性は、空調機が設置された環境(即ち、繁殖し易い環境か否か)によって異なるため、1年に1回のメンテナンスで良い場合と、半年に1回のメンテナンスが必要な場合とがある。しかし、実際には、カビ臭が発生した段階で空調機のメンテナンスを行っているため、室内環境が衛生的に管理されているとは言えない状況にある。
その結果、空調機を設置した空間の空気を捕集し、空中浮遊菌に含まれる微生物の量や種類、あるいは、部材の付着汚れに含まれる微生物の量や種類を分析し、微生物の多寡に基づいて、空調機の部材に抗菌防カビ処理を実施するか否かを判断することにより、空調機全体を衛生的に管理できること;
また、空調機の部材に適切な抗菌防カビ処理を実施することにより、熱交換器の特性に影響しない範囲で、カビや細菌の成長を抑制し、空調機を衛生的に管理できること;
を見出し、本発明に到達した。
前記コロニー数の多寡に基づいて空調機の汚染度を判定する工程を有する空調機の衛生管理システムであって、
前記検査により空調機の汚染度が高いと判定した場合に、空調機の抗菌防カビ処理を実施し、
前記空調機の抗菌防カビ処理は、
空調機を分解する分解工程(a)と、
分解した部材を洗浄または清掃する洗浄工程(b)と、
洗浄した部材を除菌する除菌工程(c)と、
洗浄除菌した部材を、抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤でコーティングする抗菌防カビ塗装工程(d)と、
分解した部材を組立てて空調機を復旧する組立工程(f)と、
を有し、
前記抗菌防カビ塗装工程(d)では、熱交換器とそれ以外の空調機の部材に対して、異なる樹脂コーティングを施す、
ことを特徴とする空調機の衛生管理システム。
前記(1)に記載の空調機の衛生管理システム。
前記(1)に記載の空調機の衛生管理システム。
(4)前記除菌工程(c)では、アルコール溶液を部材に噴霧あるいは塗布する、前記(1)に記載の空調機器の衛生管理システム。
(5)前記組立工程(f)では、空調機の空気吸込口に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布を設置する、
前記(1)に記載の空調機の衛生管理システム。
(6)さらに、空調ダクトの内面に抗菌防カビ塗装を施す、ダクト塗装工程(e)を有する、
前記(1)に記載の空調機の衛生管理システム。
熱交換器とそれ以外の部材で樹脂コーティング剤の種類を変えることにより、熱交換器には薄膜、それ以外の吹出口、ドレンパン、通風路壁等の部材には厚膜を形成するため、熱交換器の特性に影響しない範囲で、カビや細菌の成長を抑制し衛生的に管理することができる。
また、空調機の各部材に対するカビ発生状況をデータ管理することが可能となるので、製造現場やオフィス等の清掃や除菌の頻度及び方法の改善に繋げることができる。
図1及び図2は、本発明に係る衛生管理システムの工程を示すフローチャートである。図1は、カビが繁殖しやすい環境にある部材を洗浄する洗浄工程を有する、小型~中型空調機(例えば、天井カセット型空調機、壁掛け型空調機)用のシステムである。図2は、カビが繁殖しやすい環境にある部材を洗浄できないため、洗浄工程の替わりに、部材の埃や塵を除去する清掃工程を有する、大型空調機(例えば、パッケージ型空調機、エアハンドリングユニット、ダクト)用のシステムである。
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機を洗浄・清掃する前に、浮遊菌検査および/または付着菌検査により、該空調機の微生物による汚染度を判定する点に特徴がある。空調機の汚染度が高いと判定した場合、抗菌防カビ処理を実施することとなる。浮遊菌検査および付着菌検査の時期は特に限定されず、例えば、空調機を現場施工した時や、空調機を一定期間使用した後など、任意に実施して良い。
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機の吹出口から吹き出される空気を採取し、採取した空気中の微生物を培地上で培養する。あるいは、空調機を設置した室内の空気を採取し、採取した空気中の微生物を、培地上で培養する。そして、培養培地に発育したコロニー数を測定し、コロニー数の多寡に基づいて、該空調機の汚染度を判定する。前記室内の空気を採取する場合は、空調機以外の要因(外気、壁紙等)が考えられる壁際や窓際を避け、部屋の中心部で空気を採取する。
空調機の吹出口や室内の空気を採取する浮遊菌検査を実施することで、空調機を分解せずに、空調機内部における微生物付着状況を検査できる。また、空調機が極度に汚染されるのを未然に防止することで、工場の作業者、図書館の利用者、居住者等が不衛生な環境下に曝され健康被害を受けるのを防止できる。さらに、空気中のカビが、好乾性のカビ、耐乾性のカビあるいは好湿性のカビであるか等を把握することで、食品の安全対策にも役立つ。
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機の洗浄・清掃前に、該空調機の部材に付着する汚れを拭き取り法により採取し、採取した汚れに含まれるカビを培地上で培養する。そして、培養培地に発育したコロニー数を測定し、コロニー数の多寡に基づいて、該空調機の汚染度を判定する。空調機の汚染度が高いと判定した場合は、抗菌防カビ処理を実施することとなる。分解工程及び洗浄・清掃工程前の部材に対して菌検査を実施することで、付着したカビや細菌の量と種類を予め把握できるため、重点的な洗浄及び除菌が必要か否かを明確化できる。
上記の菌検査工程において、カビや細菌による汚染の程度の判定は、培養後のカビや細菌のコロニーの状態に基づいて段階別に分類した汚染度に基づいて行う。具体的には、培地に生じた様々な種類のカビのコロニー数を、まとめてカウントし、カビのコロニー数に基づいて、汚染度を段階別に分類評価する。汚染度が中程度から重度の汚染と認められる場合は、空調機はカビで汚染されていると推定される。洗浄工程や清掃工程だけではカビの菌糸を十分除去できず、経時と共に、再びカビが増殖する可能性が高い。そのため、洗浄工程や清掃工程の後に除菌工程を実施し、洗浄工程で除去しきれなかったカビの菌糸を死滅させる処理が必要となる。
抗菌防カビ処理では、効率的な前記の浮遊菌検査または付着菌検査で検出された微生物(真菌、細菌)の種類に応じて、抗菌防カビ処理用の薬剤を決定する。
菌検査により汚染度が高いと判定した場合は、常法により空調機を分解して部材を取出す(分解工程(a))。空調機の構造により取り外せる部材に違いはあるが、分解工程では基本的に、取り外すことが可能な部材を全て取り外し、洗浄液で濡れないように、配線や基盤等の電気系統部材を養生する。
尚、本発明において“空調機の分解”とは、図1のフローチャートでは、少なくともファンとドレンパンを取り外すことを意味し、図2のフローチャートでは、パッケージ型空調機及びエアハンドリングエアコン等の側壁パネルを取り外すことを意味する。
洗浄工程(b)では、分解工程(a)で取出した部材、ならびに、筺体内に残された熱交換器及び通風路壁等を洗浄する。洗浄方法は、部材の種類や空調機が設置されている環境に応じて、洗浄液に浸漬する方法、あるいは、洗浄液を高圧噴射する方法、等を適宜採用する。部材をブラシで擦る方法を併用しても良い。
清掃工程(b)では、パッケージ型空調機及びエアハンドリングエアコン等に付着している塵芥やぬめりを、公知の方法に従い、ブラッシングやエアーで除去する。
洗浄・清掃工程(b)の後、除菌工程(c)において、空調機部材の除菌処理を行う。
天井カセット型や壁掛け型空調機等の場合、除菌対象部材は、任意に選択して良い。衛生管理上からは、吹出口周辺部材、熱交換器及びドレンパンから選ばれる1または2以上の部材を重点的に除菌することが好ましい。
パッケージ型空調機、エアハンドリングユニット及びダクトの場合も、除菌対象部材は、任意に選択して良い。衛生管理上からは、吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材、加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材を重点的に除菌することが好ましい。
除菌工程後、部材に抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤をコーティングする。抗菌防カビ塗装工程(d)では熱交換器及び熱交換器以外の部材(例えば、ファン、ドレンパン、吹出口など)を塗装する。コーティング剤は、一般的には、塗膜を厚く形成することが、塗膜中の抗菌防カビ剤の含有量が増える点で好ましいが、熱交換器の場合は、コーティング膜を厚くすると、熱交換器の熱効率を変化させてしまう問題が発生する。そのため、熱交換器の前面及び裏面にコーティング剤をスプレーコートし、膜厚を1~30μm程度に形成することが望ましい。
樹脂膜の膜厚や部材樹脂の特性を考慮すると、熱交換器とそれ以外の部材とで、異なる樹脂コーティングを施すことが望ましい。
熱交換器のコーティング剤としては、ウレタン樹脂を樹脂分として含有し、さらにフッ素系界面活性剤と抗菌防カビ剤を含有する、水系コーティング剤が好ましい。
ウレタン樹脂は、熱交換器のアルミニウム製フィン部材や、空調機を構成する吸込口、吹出口、通風路壁、ファン、風向板、ダンパー、上部及び下部ドレンパン、ドレン配管等に対する密着性に優れている。そのため、送風ファンから風を受けた場合でも、塗膜の剥離や落剥が無い。また、アクリル樹脂エマルジョンや酢酸ビニル樹脂エマルジョン等を造膜材として使用したコーティング剤では達し得なかった薄い被膜を形成することができる。加えて、空調機器の通風路は、冷風及び温風の通風路となるため、温度変化が非常に激しいという特殊事情があり、このような温度変化により、塗膜は絶えず伸縮する。ウレタン樹脂は、塗膜の破断伸度が大きく伸縮性に優れているため、塗膜に対して、伸縮に対する追従性、温風で軟化しない、冷風で脆化しない等の特性を付与できる。
フッ素系界面活性剤は、塗膜に親水性と防汚性を付与する効果があり、親水性基を有する含フッ素単量体と、オキシアルキレン基を有する親水性非フッ素単量体を含む含フッ素ポリマー等が好ましい。抗菌防カビ剤は、塗膜に抗菌防カビ性を付与する効果がある。
熱交換器以外の部材のコーティング剤としては、保湿ポリマー及び抗菌防カビ剤を含有するアクリルシリコーン系樹脂エマルジョンからなる水系コーティング剤が好ましい。アクリルシリコーン系樹脂は、耐候性に優れ、プラスチック、磁器タイル、ステンレス、アルミニウム等の材料との親和性が高く、密着性に優れているため、送風ファンから風を受けた場合でも、塗膜の剥離や落剥が無く、かつ膜厚の厚い塗膜を形成できる。また、保湿ポリマーは、塗膜に担持した抗菌・防カビ剤を乾燥状態から保護し、抗菌・防カビ剤の機能を長期間に亘って発現させる効果がある。保湿ポリマーとしては、保湿性のある塗膜を形成可能な公知のポリマーを特に制限なく用いることができる。
コーティング剤の総重量に対する好ましい配合量は、固形分換算で、アクリルシリコーン樹脂が20~50質量%、保湿ポリマーが0.05~3質量%、抗菌防カビ剤が0.5~5質量%である。
有機系抗菌防カビ剤の中でも、細菌やカビに対して高い活性と広いスペクトルを示し、殺菌性と防食性を有し、アルミニウムフィン材等を腐食する恐れがない点より、イソチアゾリン系化合物が好ましい。イソチアゾリン系化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多種の細菌に対する抗菌力を高めることができる点で、2種以上併用することが好ましい。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[OIT]、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン[MIT]、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン[MTI]、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン[BIT]、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン[Bu-BIT]等が挙げられる。
また、イソチアゾリン系化合物と、それ以外の抗菌・防カビ剤の中から選ばれる1種または2種以上とを併用することもできる。イソチアゾリン系化合物以外の抗菌・防カビ剤の中でも、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール[TBZ]、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール[BCM]、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール[TCMTB]、ジンクピリチオン(ZPT)等は、カビに対し非常に高い活性と広いスペクトルを示し、水及び有機溶媒に難溶で、沸点が高く(約300℃)、温風下での耐揮発性に優れており、バインダー樹脂中での担持性に優れている点で、好ましい。
組立工程(f)では、抗菌防カビ塗装工程(d)が完了した部材を、分解工程と逆の手順で組立て、空調機を復旧させる。組立終了後、空調機のテスト運転を行い異常がないことを確認する。
組立工程では、カビや細菌が付着したプレフィルタを通して、空調機から室内にカビや細菌が拡散するのを予備的に防止するため、空調機の空気吸込口に、抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布からなるプレフィルタを設置するのが望ましい。抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布は、厚みが1~5mm(より好ましくは1~4mm)で目付が250g/m2以下(より好ましくは40~250g/m2)の通気性のある不織布に、抗菌防カビ剤を付着させたものを挙げることができる。なお、通気性不織布の厚み及び目付は、JIS L1913「一般不織布試験方法」に記載の6.1 厚み及び6.2 単位面積当たりの質量により測定される値である。
通気性不織布の好ましい繊維素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等が挙げられ、耐熱性、耐久性の点で、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましい。
また、抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布を水洗いするだけで除菌できるため、空調機を分解する度に水洗し乾燥することで、繰り返し使用できる。
通気性不織布に対する、抗菌防カビ剤(薬剤)の付着量は、1~10質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、通気性不織布に抗菌防カビ性を付与することができ、抗菌防カビ剤が異物となって現れる現象が生じにくい。同様に、バインダー樹脂及び保湿ポリマー(固形分換算)の付着量は、それぞれ、0.01~5質量%の範囲が好ましい。
抗菌防カビ剤の中でも、細菌やカビに対して高い活性と広いスペクトルを示し、殺菌性と防食性を有し、高温下に曝されても揮発する恐れがない点で、イソチアゾリン系化合物が好ましい。イソチアゾリン系化合物は、2種以上併用することが好ましく、これにより種々の細菌やカビに対して高活性を示すようになる。
1種または2種以上のイソチアゾリン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物(特に2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール[TBZ])の組合せが、さらに好ましい。イソチアゾリン系化合物とベンズイミダゾール系化合物の配合比率は、質量比で1~10:1程度が好ましい。これらの化合物は、酸素のチオール基を作用点とする有機系薬剤であり、併用することで、種々のカビ及び細菌に対して優れた抗菌防カビ効果を発揮する。TBZは、ベンズイミダゾール系化合物の中でも、カビに対し非常に高い活性と広いスペクトルを示し、水及び有機溶媒に難溶で、沸点が高く(約300℃)、温風下に曝された場合に揮発する恐れがなく、バインダー樹脂中での担持性にも優れている。
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調ダクトに抗菌防カビ塗装を施すダクト塗装工程(e)を有することができる。なお、本発明で言う“空調ダクト”は、給気ダクト、排気ダクト、環気ダクト、換気ダクト等、空調機に接続する全ダクトを指し、大口径ダクト、中口径ダクト、小口径ダクト及び丸ダクトを含む。空調ダクトを構成する材料は、鉄板、ステンレス鋼板、アルミニウム板材、グラスウール等であって良い。
そして最後に、抗菌防カビ処理後の空調機の部材について、抗菌防カビ処理前の付着菌検査と同様の付着菌検査を、同じ部材の同じ箇所について実施する。これにより、抗菌防カビ処理による効果を確認でき、また、その後の変化を観察することで、空調機の各部材のカビ発生状況をデータ管理することが可能となり、洗浄清掃や除菌の頻度、方法の改善に繋げることができる。さらに、空調機から発生する菌数を把握できるため、食品工場や厨房等において従来から食品品質レベルの維持指標として実施されている食品細菌検査(一般細菌数、大腸菌群数や食中毒菌等)の参考データとして利用することができる。
試験には図3、4に示す4方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機を用いた。当該空調機の構造は、開口部を有し天井に埋め込まれた筺体(1)と、筺体の開口部に嵌め込まれたパネルパン(6)から構成され、筺体には、熱交換器(4)、熱交換器の下部に設けられたドレンパン(5)、ファン用モーター(2)などが取り付けられ、ファン用モーターにはファン(3)が接続されている。パネルパン(6)は4辺に吹出口(8)が設けられ、中央部の空隙にスリット構造の吸込口を有するパネル(7)が嵌め込まれている。また、4つの吹出口にはそれぞれ可動式の風向板(8)が配置されており、吸込口の内側(天井側)には、フィルタ(10)が設置されている。
SDX培地(真菌)またはTSM培地(細菌)を内蔵するRCS High Flow エアーサンプラー(メルク社製)を用いて、空調機の吹出口から1m3の空気を吸引し、吸引した空気中のカビや細菌を培地上に採取した。空気中のカビや細菌を捕捉した培地を、さらに、真菌はSDX培地で26℃、6日間、細菌はTSM培地で34℃、24時間培養し、培養培地の菌数(cfu/g)を目視にてカウントした。カビの同定は、培養集落の形態的特長の肉眼による観察、光学顕微鏡による観察または真菌学同定手法によった。
日本建築学会事務所内の維持管理基準濃度は50cfu/m2以下、通常の外気濃度は450cfu/m2である。
表1及び図5に汚染度基準を示すが、該基準は一例であり、これに限定されるものではない。
減菌綿棒(日本綿棒株式会社製)を用いて、空調機の部材の表面100cm2を拭き取り、真菌はクロラムフェニコール添加・ポテトデキストロース寒天(広域真菌用PDA)培地で26℃、6日間、細菌は標準寒天培地で34℃、24時間培養し、培養培地のコロニー数を目視にてカウントした。カビの同定は、浮遊菌検査と同様の手法によった。
表2に汚染度評価基準を示すが、評価基準は一例であり、これに限定されるものではない。
付着菌検査で検出された培地の官能試験を3~5名で実施し平均値を採用した。
(評価基準)3:とても臭う、2:臭う、1:わずかに臭う、0:臭わない、-:未測定
新品空調機をA学校の教室に施工する際に、空調機の熱交換器に抗菌防カビコーティング剤(註1)を噴霧した区画(試験区2)、吸込口の裏側に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布(註2)を設置した区画(試験区3)、上記の噴霧及び設置の両方を行った区画(試験区1)、対策無しの区画(対照区)、計4区画について実験した。
現場施工時は、全ての区画で熱交換器から真菌(カビ)及び細菌は検出されなかった。
空調機を通常の条件で運転し、7ヶ月経過後に部材に付着した真菌(カビ)及び細菌の量測定と臭気判定を実施した結果を表3に示す。
(註2)ベンズイミダゾール系抗菌剤1種類、イソチアゾリン系抗菌剤2種類、合計3種類の抗菌剤(合計)40質量部、アクリルシリコーン系バインダー樹脂エマルジョン(固形分換算)20質量部、カチオン性ポリマー1質量部を水に分散させた固形分濃度5質量%の液に、市販のポリエステル製通気性不織布(目付:200g/m2)をディッピング後、加熱・乾燥したもの(抗菌剤付着量;約4g/m2)。株式会社ファインテック製、商品名「プレプレフィルター(登録商標)」。
新品空調機をB学校の教室に施工する際に、空調機のファンに抗菌防カビコーティング剤(アクリルシリコーン系コーティング剤、株式会社ファインテック製、商品名「FT400」)を噴霧し、かつ、吸込口の裏側に抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布(註2)を設置した区画(試験区4)、対策無しの区画(対照区)、計2区画について実験した。
現場施工時は、全ての区画で各部材から真菌(カビ)及び細菌は検出されなかった。
空調機を通常の条件で運転し、7ヶ月経過後にファンに付着した真菌(カビ)及び細菌の量測定と臭気判定を実施した結果を表4に示す。
実施例1において、新品空調機をA学校の教室に施工した直後に、教室中央部(空調機の下方)で教室内の浮遊菌を検査した結果を表5に示す。浮遊菌からクラドスポリウム属の真菌(カビ)が検出されたことより、教室内にはカビが浮遊していることが分かった。
本発明の空調機の衛生管理システムは、4方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機に限定されず、同様の機構の2方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機や壁据付型空調機あるいはパッケージ型空調機やエアハンドリングユニット、さらにはダクトにも適用することができるので、食品工場、医薬品工場、化粧品工場、厨房内、病院の手術室や待合室、各種研究所、学校、オフィス等だけでなく、一般家庭における室内環境の改善に寄与する貢献度は極めて大である。
2 モーター
3 ファン
4 熱交換器
5 ドレンパン
6 パネルパン
7 吸込口を有するパネル
8 吹出口
9 ドレンポンプ
9a ドレン水排水口
10 フィルター
Claims (6)
- 空調機の吹出口から吹き出される空気あるいは空調機を設置した室内の空気を採取し、採取した空気中の微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(浮遊菌検査)、および/または、空調機の部材に付着する汚れを拭き取り法により採取し、該汚れに含まれる微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(付着菌検査)、
前記コロニー数の多寡に基づいて空調機の汚染度を判定する工程を有する空調機の衛生管理システムであって、
前記検査により空調機の汚染度が高いと判定した場合に、空調機の抗菌防カビ処理を実施し、
前記空調機の抗菌防カビ処理は、
空調機を分解する分解工程(a)と、
分解した部材を洗浄または清掃する洗浄工程(b)と、
洗浄した部材を除菌する除菌工程(c)と、
洗浄除菌した部材を、抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤でコーティングする抗菌防カビ塗装工程(d)と、
分解した部材を組立てて空調機を復旧する組立工程(f)と、
を有し、
前記抗菌防カビ塗装工程(d)では、熱交換器とそれ以外の空調機の部材に対して、異なる樹脂コーティングを施す、
ことを特徴とする空調機の衛生管理システム。 - 前記付着菌検査の対象部材が、空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材である、
請求項1に記載の空調機の衛生管理システム。 - さらに、前記分解工程(a)の前に、前記空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材の付着汚れを拭き取り法により採取し、該付着汚れに含まれるカビを培養し、培養後に発育したコロニー数を測定する付着菌検査工程を有する、
請求項1に記載の空調機の衛生管理システム。 - 前記除菌工程(c)では、アルコール溶液を部材に噴霧あるいは塗布する、
請求項1に記載の空調機器の衛生管理システム。 - 前記組立工程(f)では、空調機の空気吸込口に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布を設置する、
請求項1に記載の空調機の衛生管理システム。 - さらに、空調ダクトの内面に抗菌防カビ塗装を施す、ダクト塗装工程(e)を有する、請求項1に記載の空調機の衛生管理システム。
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