JP7220459B2 - 空調機の衛生管理システム - Google Patents

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Description

本発明は、屋内冷暖房用の空気調和機やエアーコンディショナー(本発明では、これらを総称して「空調機」という。)の衛生管理システムに関する。
詳細には、工場(特に、食品、医薬品あるいは化粧品の製造現場)、学校、集合住宅、ビル、オフィス、住宅等に設置する空調機を、衛生的に管理することが可能な空調機の衛生管理システムに関する。
空調機は、冷暖房の運転開始時や運転中に悪臭を発することがある。かかる悪臭は、空調機の内部に付着・堆積する塵芥やたばこのヤニ等の汚れに起因するのみならず、屋内外の空気中に含まれるカビや細菌等が、汚れと共に熱交換器や吹出口等の部材上に付着し、付着したカビや細菌が適度の温度と湿度で増殖することが原因である。アルミニウムもしくはアルミニウム合金製のフィン部材を有する熱交換器周辺は、結露しやすいため特にカビが繁殖しやすく、そして、ドレンパンも凝縮した水を貯留し湿潤状態にあるためカビが繁殖しやすい環境にある。
ビルやオフィス、学校等に設置されている天井カセット型空調機は、図3(平面図)、図4(断面図)に例示したように、空気吸込口から屋内空気を吸込み、フィルタ(10)を経由した後、熱交換器(4)と接触して冷却あるいは加温された後、送風ファン(3)を介して吹出口(8)から空気を吹出すように設計されている。吹出口には風向調整用の可動式の風向板が設置されている。熱交換器の下部には、凝縮水を溜めるドレンパン(5)が設置されている。また、屋外に設置された室外機の空気吸込口を通じて外気を取り込むとともに、室外機の吹出口を通じて室内の空気を放出する構造を有している。このような空調機や、一般家庭で用いられている壁掛け型空調機は、熱交換器、ドレンパン、吹出口周辺がカビや細菌に汚染されやすい傾向がある。
主に業務用で用いられているパッケージ型空調機は、上記の部材に加えて、室外ユニットに設置されている断熱材(断熱パネル)が、カビや細菌に汚染されやすい傾向がある。エアハンドリングユニットと称される空調機の場合、空気の流入口と流出口が形成されたケーシング内に、温水コイル、冷却コイル、送風ファン等が組み込まれている。送風ファンの稼働により、ケーシングの外部の空気(外気又は室内空気)がダクト等を介して流入口から内部に引き込まれ、温水コイル内の温水又は冷却コイル内の冷水と熱交換した後、流出口からダクト等を介して室内に供給される。供給空気によって室内の空気が加熱又は冷却されることで、室内空気の温度が調節されるため、内部断熱材や加湿装置とその周辺がカビや細菌に汚染されやすい傾向がある。
また、空調機のダクトも凝縮した水分が付着する状態にあるため、R曲がり部等の空気滞留部、空調機立ち上がり部、吹出口周辺は、特にカビや細菌に汚染されやすい傾向がある。
上記の問題を解決するために、空調機の内部をクリーニングしたり、空調機を分解して部材を洗浄することが行われている。洗浄により、部材表面に付着した塵埃や、たばこのヤニ等の汚染物質、汚染物質中に繁殖したカビや細菌を取り除くことはできる。しかし、洗浄だけでは、部材の内部に入り込んだカビの菌糸までは取り除くことができないので、また直ぐにカビが繁殖し始め、カビに起因する悪臭を効果的に抑えることは非常に難しいのが現状である。エアハンドリングユニットやパッケージ型空調機の場合は、装置が大型であるため悪臭がビル全体に拡がる恐れがある。
そこで、空調機のメンテナンス法として、洗浄だけでなく、熱交換器等への汚れの付着を抑制し、かつ付着汚れの除去を容易にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、空調機の熱交換器に向けて洗浄剤を高圧で噴射し、熱交換器に付着した汚れを除去する洗浄工程と、熱交換器の表面にコーティング膜を形成する工程が開示されている。コーティング剤は、常温で硬化してセラミック被膜を形成するシリカ粉と無機バインダーを水溶媒に分散させたものが使用されている。
特許文献2では、熱交換器から菌類除去するため高圧洗浄した後、熱交換器の乾燥状態を維持するために、シリコーン含有撥水剤をフィン表面に定着させ、該撥水剤の作用により熱交換器が結露しても水滴が表面に残らないようにして、菌類の生存環境の形成を阻害している。
特開2006-138501号公報(特許請求の範囲、段落[0008]、[0028]、図1等) 特開2013-224803号公報(特許請求の範囲、段落[0041]、[0048]、図4等)
上記の特許文献1、2の方法は、熱交換器のメンテナンスを中心としており、コーティング剤で洗浄した後に汚れが再付着するのを抑制し、カビや細菌の繁殖を阻害している。しかしながら、カビや細菌を除去する方法が洗浄のみであるため、カビの菌糸を除去できない。そのため、カビの増殖を防ごうとしても、特に洗浄前のカビ量が多い場合には部材中に残る菌糸も多く、経時によってカビが再度増殖するのを防げない問題がある。
一方、空調機内部におけるカビや細菌等の繁殖性は、空調機が設置された環境(即ち、繁殖し易い環境か否か)によって異なるため、1年に1回のメンテナンスで良い場合と、半年に1回のメンテナンスが必要な場合とがある。しかし、実際には、カビ臭が発生した段階で空調機のメンテナンスを行っているため、室内環境が衛生的に管理されているとは言えない状況にある。
本発明は、一定期間使用後の空調機について、空調機のメンテナンスが必要か否かを判定することが可能で、しかも、抗菌防カビ処理により、洗浄だけでは十分に取り除けないカビの菌糸も除去し、空調機全体を衛生的に管理するシステムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、長期に亘り、食品製造現場、オフィスビル、居室など様々な場所に設置された空調機について、空調機の空気吸込口から吹出口に至る経路にある、各種部材に付着する細菌やカビの除去に関する研究を重ねてきた。
その結果、空調機を設置した空間の空気を捕集し、空中浮遊菌に含まれる微生物の量や種類、あるいは、部材の付着汚れに含まれる微生物の量や種類を分析し、微生物の多寡に基づいて、空調機の部材に抗菌防カビ処理を実施するか否かを判断することにより、空調機全体を衛生的に管理できること;
また、空調機の部材に適切な抗菌防カビ処理を実施することにより、熱交換器の特性に影響しない範囲で、カビや細菌の成長を抑制し、空調機を衛生的に管理できること;
を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の主旨は以下の通りである。
(1)空調機の吹出口から吹き出される空気あるいは空調機を設置した室内の空気を採取し、採取した空気中の微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(浮遊菌検査)、および/または、空調機の部材に付着する汚れを拭き取り法により採取し、該汚れに含まれる微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(付着菌検査)、
前記コロニー数の多寡に基づいて空調機の汚染度を判定する工程を有する空調機の衛生管理システムであって、
前記検査により空調機の汚染度が高いと判定した場合に、空調機の抗菌防カビ処理を実施し、
前記空調機の抗菌防カビ処理は、
空調機を分解する分解工程(a)と、
分解した部材を洗浄または清掃する洗浄工程(b)と、
洗浄した部材を除菌する除菌工程(c)と、
洗浄除菌した部材を、抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤でコーティングする抗菌防カビ塗装工程(d)と、
分解した部材を組立てて空調機を復旧する組立工程(f)と、
を有し、
前記抗菌防カビ塗装工程(d)では、熱交換器とそれ以外の空調機の部材に対して、異なる樹脂コーティングを施す、
ことを特徴とする空調機の衛生管理システム。
(2)前記付着菌検査の対象部材が、空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材である、
前記(1)に記載の空調機の衛生管理システム。
)さらに、前記分解工程(a)の前に、前記空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材の付着汚れを拭き取り法により採取し、該付着汚れに含まれるカビを培養し、培養後に発育したコロニー数を測定する付着菌検査工程を有する、
前記()に記載の空調機の衛生管理システム。
(4)前記除菌工程(c)では、アルコール溶液を部材に噴霧あるいは塗布する、前記()に記載の空調機器の衛生管理システム。
(5)前記組立工程(f)では、空調機の空気吸込口に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布を設置する、
前記()に記載の空調機の衛生管理システム。
(6)さらに、空調ダクトの内面に抗菌防カビ塗装を施す、ダクト塗装工程(e)を有する、
前記()に記載の空調機の衛生管理システム。
本発明によれば、一定期間使用後の空調機を分解し、洗浄・清掃する前にカビや細菌の検査を行い、カビや細菌による汚染の程度に応じて抗菌防カビ処理が必要か否かを判定するので、安心かつ安全な管理システムを提供できる。抗菌防カビ処理においては、検出された菌の種類に応じて薬剤の種類を決定し、また、部材の洗浄後にさらに部材の除菌や樹脂コーティング剤による抗菌防カビ塗装を行うので、万全なカビ対策を講じることができる。
熱交換器とそれ以外の部材で樹脂コーティング剤の種類を変えることにより、熱交換器には薄膜、それ以外の吹出口、ドレンパン、通風路壁等の部材には厚膜を形成するため、熱交換器の特性に影響しない範囲で、カビや細菌の成長を抑制し衛生的に管理することができる。
また、空調機の各部材に対するカビ発生状況をデータ管理することが可能となるので、製造現場やオフィス等の清掃や除菌の頻度及び方法の改善に繋げることができる。
本発明に係る衛生管理システムの工程を示すフローチャートである。 本発明に係る衛生管理システムの別の工程を示すフローチャートである。 天井カセット型空調機の構成例を示す平面図である。 図3の天井カセット型空調機の断面図である。 浮遊菌汚染度基準の説明図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る衛生管理システムの工程を示すフローチャートである。図1は、カビが繁殖しやすい環境にある部材を洗浄する洗浄工程を有する、小型~中型空調機(例えば、天井カセット型空調機、壁掛け型空調機)用のシステムである。図2は、カビが繁殖しやすい環境にある部材を洗浄できないため、洗浄工程の替わりに、部材の埃や塵を除去する清掃工程を有する、大型空調機(例えば、パッケージ型空調機、エアハンドリングユニット、ダクト)用のシステムである。
<菌検査工程>
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機を洗浄・清掃する前に、浮遊菌検査および/または付着菌検査により、該空調機の微生物による汚染度を判定する点に特徴がある。空調機の汚染度が高いと判定した場合、抗菌防カビ処理を実施することとなる。浮遊菌検査および付着菌検査の時期は特に限定されず、例えば、空調機を現場施工した時や、空調機を一定期間使用した後など、任意に実施して良い。
[浮遊菌検査]
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機の吹出口から吹き出される空気を採取し、採取した空気中の微生物を培地上で培養する。あるいは、空調機を設置した室内の空気を採取し、採取した空気中の微生物を、培地上で培養する。そして、培養培地に発育したコロニー数を測定し、コロニー数の多寡に基づいて、該空調機の汚染度を判定する。前記室内の空気を採取する場合は、空調機以外の要因(外気、壁紙等)が考えられる壁際や窓際を避け、部屋の中心部で空気を採取する。
空調機の吹出口や室内の空気を採取する浮遊菌検査を実施することで、空調機を分解せずに、空調機内部における微生物付着状況を検査できる。また、空調機が極度に汚染されるのを未然に防止することで、工場の作業者、図書館の利用者、居住者等が不衛生な環境下に曝され健康被害を受けるのを防止できる。さらに、空気中のカビが、好乾性のカビ、耐乾性のカビあるいは好湿性のカビであるか等を把握することで、食品の安全対策にも役立つ。
検査対象である空気の採取方法としては、エアーサンプラー等を用いることができる。空気の採取量としては、約100L~1000L程度が望ましい。100L以上であれば微量のカビや細菌を捕捉することができ、1000L以下であれば検査時間が著しく長くなる等の不都合が生じない。培養方法としては、採取した空気を、エアーサンプラー用にストリップ形状等にした専用培地等に吹き付けて培養する方法、あるいは、培地を内蔵するエアーサンプラーを用い、空気を吸引して培地上に採取し、次いで、空気中の微生物(カビや細菌)を捕捉した培地を、さらに最適な培地で培養する方法等がある。
[付着菌検査]
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調機の洗浄・清掃前に、該空調機の部材に付着する汚れを拭き取り法により採取し、採取した汚れに含まれるカビを培地上で培養する。そして、培養培地に発育したコロニー数を測定し、コロニー数の多寡に基づいて、該空調機の汚染度を判定する。空調機の汚染度が高いと判定した場合は、抗菌防カビ処理を実施することとなる。分解工程及び洗浄・清掃工程前の部材に対して菌検査を実施することで、付着したカビや細菌の量と種類を予め把握できるため、重点的な洗浄及び除菌が必要か否かを明確化できる。
付着菌検査を実施する拭き取り対象部材は、基本的には空調機を分解する以前の部材であって、洗浄・清掃前の部材である。ただし、対象部材がカバー(筐体)の内部にある場合は、カバーを除去した後に、部材表面の汚れを拭き取ることもできる。
小型~中型の空調機(天井カセット型エアコン、壁掛型エアコン等)の拭き取り対象部材は、吹出口周辺部材、熱交換器及びドレンパンから選ばれる1または2以上の部材が好ましい。空調機の吹出口周辺部材(風向板、フィルタ、フィルタパネル等)は、冷気と暖気が混ざる箇所であるため相対湿度が常に高くカビの温床になり易いからである。熱交換器は空調機部材の中で最も面積が広く、その形状から掃除が困難であるため、最重要点検箇所である。ドレンパンは凝縮した水が溜まるため、重要な点検箇所である。
大型の空調機(パッケージ型空調機、エアハンドリングユニット等)の拭き取り対象部材は、吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材、加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材が好ましい。熱交換器及び内部断熱材はその表面で水が凝縮するため、加湿装置とその周辺部材は常時湿った状態にあることで、いずれもカビが繁殖し易いからである。
付着菌検査工程では、熱交換器、ドレンパン、吹出口周辺部材等、上記した全ての部材について実施することが、カビや細菌の発生状況をより的確に把握でき、有効な防カビ対策を講ずることができる点で、望ましい。また、空調機を分解せずに付着菌検査を行わねばならない場合は、吹出口周辺部材のみを拭き取り対象としても良い。
付着汚れの拭き取りは、滅菌綿棒等を用いて、部材の所定の面積部分を拭き取り、拭き取った付着物を培地に播種し、所定の期間培養する。
浮遊菌検査及び付着菌検査で用いる培地としては、カビについては、好乾性、耐乾性及び好湿性のいずれのカビでも培養することができる培地が好ましく、例えば、サブローデキストロース寒天(SDX)培地やポテトデキストロース寒天(PDA)培地等を用いることができる。細菌については、普通寒天培地やソイビーンカゼイン寒天(SCD)培地等の各種寒天培地を用いることができる。培養条件は通常の条件に従えばよい。必要に応じて、カビの種類の同定や菌検査を行う。
なお、カビや細菌の同定には、形態観察を基にした同定試験、DNAを用いた試験(塩基配列の解析)、同定キット(APIシリーズ)による同定試験等を用いることができる。
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、抗菌防カビ処理を実施する前に、上記の浮遊菌検査と付着菌検査を、双方実施しても良いし、片方だけ実施しても良い。双方実施することにより、空調機の汚染カビをより正確に把握することができ、カビの種類に応じて除菌回数を増やす、あるいは、コーティング膜を厚くする、等のより適切な処置を講ずることができる。
[判定]
上記の菌検査工程において、カビや細菌による汚染の程度の判定は、培養後のカビや細菌のコロニーの状態に基づいて段階別に分類した汚染度に基づいて行う。具体的には、培地に生じた様々な種類のカビのコロニー数を、まとめてカウントし、カビのコロニー数に基づいて、汚染度を段階別に分類評価する。汚染度が中程度から重度の汚染と認められる場合は、空調機はカビで汚染されていると推定される。洗浄工程や清掃工程だけではカビの菌糸を十分除去できず、経時と共に、再びカビが増殖する可能性が高い。そのため、洗浄工程や清掃工程の後に除菌工程を実施し、洗浄工程で除去しきれなかったカビの菌糸を死滅させる処理が必要となる。
本発明に係る空調機の衛生管理システムにおいては、浮遊菌検査及び/または付着菌検査で汚染度が高いと判定した場合に、空調機の抗菌防カビ処理を行う。尚、浮遊菌検査のみで空調機の抗菌防カビ処理が必要と判定した場合には、空調機の分解工程を実施する前に、付着菌検査工程を経ることが望ましい。
<抗菌防カビ処理>
抗菌防カビ処理では、効率的な前記の浮遊菌検査または付着菌検査で検出された微生物(真菌、細菌)の種類に応じて、抗菌防カビ処理用の薬剤を決定する。
[分解工程]
菌検査により汚染度が高いと判定した場合は、常法により空調機を分解して部材を取出す(分解工程(a))。空調機の構造により取り外せる部材に違いはあるが、分解工程では基本的に、取り外すことが可能な部材を全て取り外し、洗浄液で濡れないように、配線や基盤等の電気系統部材を養生する。
尚、本発明において“空調機の分解”とは、図1のフローチャートでは、少なくともファンとドレンパンを取り外すことを意味し、図2のフローチャートでは、パッケージ型空調機及びエアハンドリングエアコン等の側壁パネルを取り外すことを意味する。
例えば、図3、4に示す天井カセット型空調機は、天井に埋め込まれた筺体(1)と筺体(1)の開口部に嵌め込まれたパネルパン(6)から構成され、筺体(1)には、熱交換器(4)、熱交換器の下部に設けられたドレンパン(5)、ドレン配管、ファンモーター(2)等が取り付けられ、ファンモーター(2)にはファン(3)が接続されている。パネルパン(6)は、4辺に吹出口が設けられ、中央部の空隙にスリット構造の吸込口を有するパネル(7)が嵌め込まれている。また、4つの吹出口(8)にはそれぞれ可動式の風向板が配置されており、吸込口(7)の内側(天井側)にはフィルタ(10)が設置されている。
例として、天井カセット型空調機の分解工程を説明する。先ず吸込口、続いてパネルパンを取り外した後、ドレンパンを取り外す。ドレンパンを取り外すことで見えるようになる配線及び基盤は、次の洗浄工程で洗浄液や水洗用水で濡れないように養生を施す。次いで、ファンを取り外した後、筺体に取り付けられたファンモーターを取り外す。筺体に熱交換器のみが残された状態にした後、筺体の内壁に養生シートを貼り付けて熱交換器を覆い、分解工程を完了する。養生シートには配水管を取り付けておくと良い。
[洗浄工程]
洗浄工程(b)では、分解工程(a)で取出した部材、ならびに、筺体内に残された熱交換器及び通風路壁等を洗浄する。洗浄方法は、部材の種類や空調機が設置されている環境に応じて、洗浄液に浸漬する方法、あるいは、洗浄液を高圧噴射する方法、等を適宜採用する。部材をブラシで擦る方法を併用しても良い。
洗浄液は、アルミニウム製の熱交換器に対する洗浄力が高い点では、高濃度の水酸化ナトリウム等を含有するアルカリ洗浄剤が好ましい。金属に対する腐食作用が無く人体に対する安全性が高い点では、オゾンや殺菌剤を溶解させた水、アルカリイオン水、中性洗剤、温水等が好ましい。洗浄温度は特に限定されないが、20~50℃程度が好ましい。洗浄時間は特に限定されず、部材や汚れの程度に応じて適宜な時間を設定すれば良い。部材の洗浄後、必要により部材を水洗し、乾燥する。乾燥は、室温で行っても良く、ドライヤー等で加熱乾燥しても良い。
[清掃工程]
清掃工程(b)では、パッケージ型空調機及びエアハンドリングエアコン等に付着している塵芥やぬめりを、公知の方法に従い、ブラッシングやエアーで除去する。
[除菌工程]
洗浄・清掃工程(b)の後、除菌工程(c)において、空調機部材の除菌処理を行う。
天井カセット型や壁掛け型空調機等の場合、除菌対象部材は、任意に選択して良い。衛生管理上からは、吹出口周辺部材、熱交換器及びドレンパンから選ばれる1または2以上の部材を重点的に除菌することが好ましい。
パッケージ型空調機、エアハンドリングユニット及びダクトの場合も、除菌対象部材は、任意に選択して良い。衛生管理上からは、吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材、加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材を重点的に除菌することが好ましい。
除菌工程(c)では、カビや細菌の増殖を極力抑えるために、コーティング剤塗布前に塗布対象面を除菌し乾燥するのが良い。除菌は、塗布対象面のカビや細菌を除去可能な方法で行えば良い。例えば、刷毛、ローラー、布や紙を用いて部材表面に塗布する方法、噴霧装置を用いて噴霧する方法等が挙げられ、部材の形状や大きさに応じて、適宜選択できる。また、70%以上のアルコールを含ませたウエス、紙等を用いて塗布対象面を拭き取る方法等もある。アルコール溶液は揮発し易いので、複数回拭き取ることが好ましい。
除菌剤としては、除菌効果のある薬剤を用いることができ、その種類は特に限定されないが、部材表面に存在するカビや細菌を除菌するのみならず、部材の内部に入り込んだカビの菌糸を死滅させる効果が有る点で、アルコール溶液が好ましい。アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、エタノール/イソプロピルアルコールの3/7~7/3(容量比)混合液等が挙げられる。
[抗菌防カビ塗装工程]
除菌工程後、部材に抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤をコーティングする。抗菌防カビ塗装工程(d)では熱交換器及び熱交換器以外の部材(例えば、ファン、ドレンパン、吹出口など)を塗装する。コーティング剤は、一般的には、塗膜を厚く形成することが、塗膜中の抗菌防カビ剤の含有量が増える点で好ましいが、熱交換器の場合は、コーティング膜を厚くすると、熱交換器の熱効率を変化させてしまう問題が発生する。そのため、熱交換器の前面及び裏面にコーティング剤をスプレーコートし、膜厚を1~30μm程度に形成することが望ましい。
また、空調機は、部材によって材質が異なる特質がある。熱交換器のフィン材はアルミニウム製(親水性)であるのに対し、パネルパンや吹出口、空気吸込口、ドレンパンあるいはファンなどはプラスチック製(疎水性)である。熱交換器以外の部材に対しては、厚膜を形成するほど抗菌・防カビ効果が高まる傾向があるため、膜厚を10~200μm程度に形成することが望ましい。通常、ロールコート法では60~180μm程度、スプレーコート法では20~60μm程度に形成する。
樹脂膜の膜厚や部材樹脂の特性を考慮すると、熱交換器とそれ以外の部材とで、異なる樹脂コーティングを施すことが望ましい。
(熱交換器用コーティング剤)
熱交換器のコーティング剤としては、ウレタン樹脂を樹脂分として含有し、さらにフッ素系界面活性剤と抗菌防カビ剤を含有する、水系コーティング剤が好ましい。
ウレタン樹脂は、熱交換器のアルミニウム製フィン部材や、空調機を構成する吸込口、吹出口、通風路壁、ファン、風向板、ダンパー、上部及び下部ドレンパン、ドレン配管等に対する密着性に優れている。そのため、送風ファンから風を受けた場合でも、塗膜の剥離や落剥が無い。また、アクリル樹脂エマルジョンや酢酸ビニル樹脂エマルジョン等を造膜材として使用したコーティング剤では達し得なかった薄い被膜を形成することができる。加えて、空調機器の通風路は、冷風及び温風の通風路となるため、温度変化が非常に激しいという特殊事情があり、このような温度変化により、塗膜は絶えず伸縮する。ウレタン樹脂は、塗膜の破断伸度が大きく伸縮性に優れているため、塗膜に対して、伸縮に対する追従性、温風で軟化しない、冷風で脆化しない等の特性を付与できる。
フッ素系界面活性剤は、塗膜に親水性と防汚性を付与する効果があり、親水性基を有する含フッ素単量体と、オキシアルキレン基を有する親水性非フッ素単量体を含む含フッ素ポリマー等が好ましい。抗菌防カビ剤は、塗膜に抗菌防カビ性を付与する効果がある。
コーティング剤には、除菌効果のあるエタノールが含まれていることが好ましい。コーティング剤の総重量に対する好ましい配合量は、固形分換算で、ウレタン樹脂が1~20質量%、フッ素系界面活性剤が0.1~5質量%、抗菌防カビ剤が0.1~5質量%、エタノールが25~70質量%である。
(部材(熱交換器以外)用コーティング剤)
熱交換器以外の部材のコーティング剤としては、保湿ポリマー及び抗菌防カビ剤を含有するアクリルシリコーン系樹脂エマルジョンからなる水系コーティング剤が好ましい。アクリルシリコーン系樹脂は、耐候性に優れ、プラスチック、磁器タイル、ステンレス、アルミニウム等の材料との親和性が高く、密着性に優れているため、送風ファンから風を受けた場合でも、塗膜の剥離や落剥が無く、かつ膜厚の厚い塗膜を形成できる。また、保湿ポリマーは、塗膜に担持した抗菌・防カビ剤を乾燥状態から保護し、抗菌・防カビ剤の機能を長期間に亘って発現させる効果がある。保湿ポリマーとしては、保湿性のある塗膜を形成可能な公知のポリマーを特に制限なく用いることができる。
中でも、下記一般式(1)で表わされる、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2´-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(略称;MPC)とアクリル系モノマーとの共重合体が好ましい。
Figure 0007220459000001
(式中、Xは2価の有機残基を示し、Yは炭素数1~6のアルキレンオキシ基を示し、Zは水素原子もしくはR-O-(C=O)-(ただし、Rは炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のヒドロキシアルキル基を示す)を示す。また、Rは水素原子もしくはメチル基を示し、R、R及びRは同一もしくは異なる基であって、水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0または1を示す。nは1~4の整数である。)
保湿ポリマーに担持された抗菌防カビ剤が漸次溶出することにより、保湿ポリマーを配合していないコーティング剤に比べて、優れた防カビ効果が発現する。また、上記のホスホリルコリン類似基を含有する共重合体自体がカビや細菌の付着を抑制する機能を有するため、抗菌防カビ剤と併用することで、防カビ効果を一層高めると共に、抗菌防カビ剤への耐性を持った野性菌に対しても効果を発揮する。
コーティング剤の総重量に対する好ましい配合量は、固形分換算で、アクリルシリコーン樹脂が20~50質量%、保湿ポリマーが0.05~3質量%、抗菌防カビ剤が0.5~5質量%である。
上記の熱交換器及びそれ以外の部材のコーティング剤に配合する抗菌防カビ剤(薬剤)は、公知の有機系抗菌防カビ剤化合物及び無機系抗菌防カビ剤の中から、1種または2種以上を、任意に選択して用いることができる。例えば、イソチアゾリン系化合物、銀系化合物、亜鉛系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、4級アンモニウム塩、安息香酸類、クロルヘキシジン、ソルビン酸類、有機窒素系化合物、硫黄系化合物、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタンやビス(1,4-ブロモアセトキシ)-2-ブテン等のハロゲン系化合物、有機酸エステル、有機ヨウ素系化合物、ジンク ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)[ジンクピリチオン:ZPT]等のピリチオン系化合物、チアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、無機系化合物等が挙げられる。塗膜中での担持性に優れている点で、有機系抗菌防カビ剤が好ましい。
有機系抗菌防カビ剤の中でも、細菌やカビに対して高い活性と広いスペクトルを示し、殺菌性と防食性を有し、アルミニウムフィン材等を腐食する恐れがない点より、イソチアゾリン系化合物が好ましい。イソチアゾリン系化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多種の細菌に対する抗菌力を高めることができる点で、2種以上併用することが好ましい。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[OIT]、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン[MIT]、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン[MTI]、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン[BIT]、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン[Bu-BIT]等が挙げられる。
また、イソチアゾリン系化合物と、それ以外の抗菌・防カビ剤の中から選ばれる1種または2種以上とを併用することもできる。イソチアゾリン系化合物以外の抗菌・防カビ剤の中でも、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール[TBZ]、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール[BCM]、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール[TCMTB]、ジンクピリチオン(ZPT)等は、カビに対し非常に高い活性と広いスペクトルを示し、水及び有機溶媒に難溶で、沸点が高く(約300℃)、温風下での耐揮発性に優れており、バインダー樹脂中での担持性に優れている点で、好ましい。
なお、熱交換器のコーティング剤については、特開2017-008251号公報に、また、パネルパンや吸込口、吹出口、ドレンパンあるいはファン等の部材に対するコーティング剤については、特開2016-108349号公報に、それぞれ詳細に記載されており、本発明においては、該公報に記載されている内容を用いることができる。
コーティングした塗膜を乾燥させてコーティング工程を完了する。乾燥は、室温で行っても良く、ドライヤー等で加熱乾燥しても良い。乾燥方法は特に限定されない。
[組立工程]
組立工程(f)では、抗菌防カビ塗装工程(d)が完了した部材を、分解工程と逆の手順で組立て、空調機を復旧させる。組立終了後、空調機のテスト運転を行い異常がないことを確認する。
組立工程では、カビや細菌が付着したプレフィルタを通して、空調機から室内にカビや細菌が拡散するのを予備的に防止するため、空調機の空気吸込口に、抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布からなるプレフィルタを設置するのが望ましい。抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布は、厚みが1~5mm(より好ましくは1~4mm)で目付が250g/m以下(より好ましくは40~250g/m)の通気性のある不織布に、抗菌防カビ剤を付着させたものを挙げることができる。なお、通気性不織布の厚み及び目付は、JIS L1913「一般不織布試験方法」に記載の6.1 厚み及び6.2 単位面積当たりの質量により測定される値である。
通気性不織布の好ましい繊維素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等が挙げられ、耐熱性、耐久性の点で、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましい。
また、抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布を水洗いするだけで除菌できるため、空調機を分解する度に水洗し乾燥することで、繰り返し使用できる。
抗菌防カビ剤を担持させた通気性不織布は、例えば、アクリル系樹脂等のバインダー樹脂と、2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2´-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)とアクリル系モノマーとの共重合体等の保湿ポリマーと、抗菌・防カビ剤とを、水に分散等させて調製した液を、通気性不織布に対して、スプレーあるいはディッピング等した後、乾燥することにより得られる。この通気性不織布には、本発明による効果が阻害されない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、防腐剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、消臭剤、pH調整剤、香料等の任意成分が、1種又は2種以上付着していても良い。
通気性不織布に対する、抗菌防カビ剤(薬剤)の付着量は、1~10質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、通気性不織布に抗菌防カビ性を付与することができ、抗菌防カビ剤が異物となって現れる現象が生じにくい。同様に、バインダー樹脂及び保湿ポリマー(固形分換算)の付着量は、それぞれ、0.01~5質量%の範囲が好ましい。
抗菌防カビ剤としては、イソチアゾリン系化合物、銀系化合物、亜鉛系化合物、ジンクピリチオン(ZPT)等のピリチオン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物等の公知の水不溶性ないし難溶性の化合物が挙げられ、これらの化合物中から、1種または2種以上を、任意に選択して用いることができる。
抗菌防カビ剤の中でも、細菌やカビに対して高い活性と広いスペクトルを示し、殺菌性と防食性を有し、高温下に曝されても揮発する恐れがない点で、イソチアゾリン系化合物が好ましい。イソチアゾリン系化合物は、2種以上併用することが好ましく、これにより種々の細菌やカビに対して高活性を示すようになる。
1種または2種以上のイソチアゾリン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物(特に2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール[TBZ])の組合せが、さらに好ましい。イソチアゾリン系化合物とベンズイミダゾール系化合物の配合比率は、質量比で1~10:1程度が好ましい。これらの化合物は、酸素のチオール基を作用点とする有機系薬剤であり、併用することで、種々のカビ及び細菌に対して優れた抗菌防カビ効果を発揮する。TBZは、ベンズイミダゾール系化合物の中でも、カビに対し非常に高い活性と広いスペクトルを示し、水及び有機溶媒に難溶で、沸点が高く(約300℃)、温風下に曝された場合に揮発する恐れがなく、バインダー樹脂中での担持性にも優れている。
[ダクト塗装工程]
本発明に係る空調機の衛生管理システムでは、空調ダクトに抗菌防カビ塗装を施すダクト塗装工程(e)を有することができる。なお、本発明で言う“空調ダクト”は、給気ダクト、排気ダクト、環気ダクト、換気ダクト等、空調機に接続する全ダクトを指し、大口径ダクト、中口径ダクト、小口径ダクト及び丸ダクトを含む。空調ダクトを構成する材料は、鉄板、ステンレス鋼板、アルミニウム板材、グラスウール等であって良い。
塗装を施すダクトは、ダクト内面が洗浄水で洗浄されているダクト、ダクト内に堆積している塵芥をダクト内清掃ロボット等でブラッシングして除去したダクト、ダクト内に堆積している塵芥を高圧エアーで浮かせダクト吹出口から噴出させ除去したダクト、洗浄及び塵芥除去されたダクト等である。
塗装は、ダクト内面全てに塗装することもできる。本発明の空調機の衛生管理システムでは、チャンバーボックスの内面のみ塗装することが、抗菌防カビ効果が得られる点及び経済性に優れている点、で好ましい。ダクト塗装に用いるコーティング剤については、特開2007-111657号公報に詳細に記載されており、本発明においては、該公報に記載されている内容を用いることができる。
[付着菌検査]
そして最後に、抗菌防カビ処理後の空調機の部材について、抗菌防カビ処理前の付着菌検査と同様の付着菌検査を、同じ部材の同じ箇所について実施する。これにより、抗菌防カビ処理による効果を確認でき、また、その後の変化を観察することで、空調機の各部材のカビ発生状況をデータ管理することが可能となり、洗浄清掃や除菌の頻度、方法の改善に繋げることができる。さらに、空調機から発生する菌数を把握できるため、食品工場や厨房等において従来から食品品質レベルの維持指標として実施されている食品細菌検査(一般細菌数、大腸菌群数や食中毒菌等)の参考データとして利用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例において、特に断らない限り「%」の表示は「質量%」を表し、「部」の表示は「質量部」を表す。
(試験に供した空調機)
試験には図3、4に示す4方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機を用いた。当該空調機の構造は、開口部を有し天井に埋め込まれた筺体(1)と、筺体の開口部に嵌め込まれたパネルパン(6)から構成され、筺体には、熱交換器(4)、熱交換器の下部に設けられたドレンパン(5)、ファン用モーター(2)などが取り付けられ、ファン用モーターにはファン(3)が接続されている。パネルパン(6)は4辺に吹出口(8)が設けられ、中央部の空隙にスリット構造の吸込口を有するパネル(7)が嵌め込まれている。また、4つの吹出口にはそれぞれ可動式の風向板(8)が配置されており、吸込口の内側(天井側)には、フィルタ(10)が設置されている。
[浮遊菌検査]
SDX培地(真菌)またはTSM培地(細菌)を内蔵するRCS High Flow エアーサンプラー(メルク社製)を用いて、空調機の吹出口から1mの空気を吸引し、吸引した空気中のカビや細菌を培地上に採取した。空気中のカビや細菌を捕捉した培地を、さらに、真菌はSDX培地で26℃、6日間、細菌はTSM培地で34℃、24時間培養し、培養培地の菌数(cfu/g)を目視にてカウントした。カビの同定は、培養集落の形態的特長の肉眼による観察、学顕微鏡による観察または真菌学同定手法によった。
日本建築学会事務所内の維持管理基準濃度は50cfu/m以下、通常の外気濃度は450cfu/mである。
表1及び図5に汚染度基準を示すが、該基準は一例であり、これに限定されるものではない。
Figure 0007220459000002
[付着菌検査]
減菌綿棒(日本綿棒株式会社製)を用いて、空調機の部材の表面100cmを拭き取り、真菌はクロラムフェニコール添加・ポテトデキストロース寒天(広域真菌用PDA)培地で26℃、6日間、細菌は標準寒天培地で34℃、24時間培養し、培養培地のコロニー数を目視にてカウントした。カビの同定は、浮遊菌検査と同様の手法によった。
表2に汚染度評価基準を示すが、評価基準は一例であり、これに限定されるものではない。
Figure 0007220459000003
[臭気判定]
付着菌検査で検出された培地の官能試験を3~5名で実施し平均値を採用した。
(評価基準)3:とても臭う、2:臭う、1:わずかに臭う、0:臭わない、-:未測定
(実施例1)
新品空調機をA学校の教室に施工する際に、空調機の熱交換器に抗菌防カビコーティング剤(註1)を噴霧した区画(試験区2)、吸込口の裏側に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布(註2)を設置した区画(試験区3)、上記の噴霧及び設置の両方を行った区画(試験区1)、対策無しの区画(対照区)、計4区画について実験した。
現場施工時は、全ての区画で熱交換器から真菌(カビ)及び細菌は検出されなかった。
空調機を通常の条件で運転し、7ヶ月経過後に部材に付着した真菌(カビ)及び細菌の量測定と臭気判定を実施した結果を表3に示す。
(註1)水系ウレタン系コーティング剤(株式会社ファインテック製、商品名「エアーファイン」)。
(註2)ベンズイミダゾール系抗菌剤1種類、イソチアゾリン系抗菌剤2種類、合計3種類の抗菌剤(合計)40質量部、アクリルシリコーン系バインダー樹脂エマルジョン(固形分換算)20質量部、カチオン性ポリマー1質量部を水に分散させた固形分濃度5質量%の液に、市販のポリエステル製通気性不織布(目付:200g/m)をディッピング後、加熱・乾燥したもの(抗菌剤付着量;約4g/m)。株式会社ファインテック製、商品名「プレプレフィルター(登録商標)」。
Figure 0007220459000004
表3より、熱交換器から検出された真菌数は、試験区2が対照区の約1/4、試験区1と試験区3が検出限界(4cfu/m)以下であり、各試験区において効果が認められた。熱交換器から検出された細菌数は、試験区1が対照区の1/2以下、試験区3が対照区の1/4以下であり、各試験区において効果が認められた。対照区では、熱交換器からクラドスポリウム属とフザリウム属の真菌(カビ)が検出された。
対照区の空調機は重度の菌汚染を起こしており、空調機の分解洗浄が必要であったのに対し、試験区1、2、3の空調機の汚染度は、分解洗浄が不要なレベルであった。
(実施例2)
新品空調機をB学校の教室に施工する際に、空調機のファンに抗菌防カビコーティング剤(アクリルシリコーン系コーティング剤、株式会社ファインテック製、商品名「FT400」)を噴霧し、かつ、吸込口の裏側に抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布(註2)を設置した区画(試験区4)、対策無しの区画(対照区)、計2区画について実験した。
現場施工時は、全ての区画で各部材から真菌(カビ)及び細菌は検出されなかった。
空調機を通常の条件で運転し、7ヶ月経過後にファンに付着した真菌(カビ)及び細菌の量測定と臭気判定を実施した結果を表4に示す。
Figure 0007220459000005
表4より、試験区4のカビと細菌数は検出限界以下であった。対照区では、アルタナリア属とクラドスポリウム属の真菌(カビ)、Bacillus属の細菌が検出された。対照区の空調機は重度の菌汚染を起こしており、空調機の分解洗浄が必要であったのに対し、試験区4の空調機の汚染度は、分解洗浄が不要なレベルであった。
(実施例3)
実施例1において、新品空調機をA学校の教室に施工した直後に、教室中央部(空調機の下方)で教室内の浮遊菌を検査した結果を表5に示す。浮遊菌からクラドスポリウム属の真菌(カビ)が検出されたことより、教室内にはカビが浮遊していることが分かった。
Figure 0007220459000006
本発明の空調機の衛生管理システムによれば、空調機を洗浄する前にカビの検査を行い、カビによる汚染の程度に応じて、洗浄工程の後に除菌工程を設けるので、安心かつ安全な管理システムを提供でき、室内環境を空調機器からの悪臭などの発生がない快適で衛生的なものにすることができる。また、空調機の各部材のカビによる汚染状況をデータ管理することができるので、製造現場やオフィス等の清掃や除菌の頻度や方法の改善に繋げることができる。
本発明の空調機の衛生管理システムは、4方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機に限定されず、同様の機構の2方向吹き出しタイプの天井カセット型空調機や壁据付型空調機あるいはパッケージ型空調機やエアハンドリングユニット、さらにはダクトにも適用することができるので、食品工場、医薬品工場、化粧品工場、厨房内、病院の手術室や待合室、各種研究所、学校、オフィス等だけでなく、一般家庭における室内環境の改善に寄与する貢献度は極めて大である。
1 筐体
2 モーター
3 ファン
4 熱交換器
5 ドレンパン
6 パネルパン
7 吸込口を有するパネル
8 吹出口
9 ドレンポンプ
9a ドレン水排水口
10 フィルター

Claims (6)

  1. 空調機の吹出口から吹き出される空気あるいは空調機を設置した室内の空気を採取し、採取した空気中の微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(浮遊菌検査)、および/または、空調機の部材に付着する汚れを拭き取り法により採取し、該汚れに含まれる微生物を培地上で培養した後、培養培地に発育したコロニー数を測定し(付着菌検査)、
    前記コロニー数の多寡に基づいて空調機の汚染度を判定する工程を有する空調機の衛生管理システムであって、
    前記検査により空調機の汚染度が高いと判定した場合に、空調機の抗菌防カビ処理を実施し、
    前記空調機の抗菌防カビ処理は、
    空調機を分解する分解工程(a)と、
    分解した部材を洗浄または清掃する洗浄工程(b)と、
    洗浄した部材を除菌する除菌工程(c)と、
    洗浄除菌した部材を、抗菌防カビ剤を含有する樹脂コーティング剤でコーティングする抗菌防カビ塗装工程(d)と、
    分解した部材を組立てて空調機を復旧する組立工程(f)と、
    を有し、
    前記抗菌防カビ塗装工程(d)では、熱交換器とそれ以外の空調機の部材に対して、異なる樹脂コーティングを施す、
    ことを特徴とする空調機の衛生管理システム。
  2. 前記付着菌検査の対象部材が、空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材である、
    請求項に記載の空調機の衛生管理システム。
  3. さらに、前記分解工程(a)の前に、前記空調機の吹出口周辺部材、熱交換器、ドレンパン、内部断熱材及び加湿装置とその周辺部材から選ばれる1または2以上の部材の付着汚れを拭き取り法により採取し、該付着汚れに含まれるカビを培養し、培養後に発育したコロニー数を測定する付着菌検査工程を有する、
    請求項に記載の空調機の衛生管理システム。
  4. 前記除菌工程(c)では、アルコール溶液を部材に噴霧あるいは塗布する、
    請求項に記載の空調機器の衛生管理システム。
  5. 前記組立工程(f)では、空調機の空気吸込口に、抗菌・防カビ剤を担持させた通気性不織布を設置する、
    請求項に記載の空調機の衛生管理システム。
  6. さらに、空調ダクトの内面に抗菌防カビ塗装を施す、ダクト塗装工程(e)を有する、請求項に記載の空調機の衛生管理システム。
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