JP7217218B2 - 鋳物製造用構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物製造用構造体に関する。
鋳物の製造では、一般に、鋳物砂で内部にキャビティ(必要に応じて中子)を有する鋳型を形成するとともに、該キャビティに溶湯を供給する受け口、湯口、湯道及び堰(以下、これらを注湯系ともいう。)を該キャビティに通じるように形成し、さらに、外部に通じるガス抜き、押湯、揚がりを形成している。本出願人は、先に、湯道や揚がりとして使用することができる鋳物製造用構造体を提案している(特許文献1)。
特開2012-24841号公報 特開2006-77350号公報
ところで、筒状の構造体を複数連結したものを、湯道として使用することが行われている。例えば、一方の構造体の嵌合部に、他方の構造体の被嵌合部を嵌合させて形成された筒状体を湯道として用いることが行われている。構造体どうしを嵌合により連結した場合、嵌合部と被嵌合部が嵌合している部分において、一方の構造体と他方の構造体との間に微小の隙間が形成され、一方の構造体の内面と他方の構造体の内面とが不連続である不連続部が形成されてしまう場合がある。このような不連続部は、注湯時に衝撃を受けやすい。
特許文献1の鋳物製造用構造体は、構造体の溶融金属と接する部分の表面に被覆層が形成されたものであり、熱分解ガスを遮蔽しガス欠陥を低減することができる一方、前記不連続部を保護することに関して改善の余地があった。
また、本出願人は、パルプ繊維を含む環状の抄造成形体を提案している(特許文献2参照)。特許文献2の抄造成形体は、内面部又は外面部に設けられた嵌合連結用の突条部を有するものである。特許文献2の抄造成形体は、該抄造成形体に筒状体を嵌合させて連結するときに、突条部をつぶして嵌合させることによって、強固な連結状態を得ることができるものである。特許文献2の抄造成形体も、該抄造成形体と筒状体とを連結した状態において、該成形体の内面と該筒状体の内面とが不連続である不連続部を保護することに関して改善の余地があった。
したがって本発明は、注湯時における被覆層の剥離を抑制することができる鋳物製造用構造体に関する。
本発明は、筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備える鋳物製造用構造体であって、隣り合う一方の前記鋳物製造用構造体の前記胴部における前記嵌合部から遠い側の一端部を、他方の前記鋳物製造用構造体の前記嵌合部に挿入して嵌合させることによって、複数の鋳物製造用構造体を連結可能であり、前記胴部及び嵌合部に、有機繊維、無機繊維、平均粒子径10~150μmの無機粒子及びバインダーを含有する筒状の本体部を有し、前記本体部の少なくとも内周面に被覆層を有し、前記被覆層は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有しており、前記胴部は、前記一端部の内径が他端部の内径よりも1.0mm以上小さい、鋳物製造用構造体を提供するものである。
本発明は、筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備える鋳物製造用構造体であって、隣り合う一方の前記鋳物製造用構造体の前記胴部における前記嵌合部から遠い側の一端部を、他方の前記鋳物製造用構造体の前記嵌合部に挿入して嵌合させることによって、複数の鋳物製造用構造体を連結可能であり、前記胴部及び嵌合部に、有機繊維、無機繊維、平均粒子径10~150μmの無機粒子及びバインダーを含有する筒状の本体部を有し、前記本体部の少なくとも内周面に被覆層を有し、前記被覆層は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有しており、前記胴部は、前記一端部の内径が他端部の内径よりも1.0mm以上大きい、鋳物製造用構造体を提供するものである。
本発明によれば、注湯時における被覆層の剥離を抑制することができる。
図1は、本発明の鋳物製造用構造体の好ましい第1実施形態を示す模式断面図である。 図2は、図1に示す鋳物製造用構造体どうしを連結することのより形成された長尺の筒状体を示す模式断面図である。 図3は、図2の要部拡大図である。 図4は、図1に示す鋳物製造用構造体を内部に納めた鋳型の模式断面図である。 図5(a)~(h)は、図1に示す鋳物製造用構造体に係る本体部を製造する方法を説明する模式断面図である。 図6(a)及び(b)は、図1に示す鋳物製造用構造体に係る被覆層を製造する方法を説明するための模式断面図である。 図7は、本発明の鋳物製造用構造体の好ましい第2実施形態を示す模式断面図であり、図1相当図である。 図8は、図7に示す鋳物製造用構造体どうしを連結することのより形成された長尺の筒状体を示す模式断面図であり、図2相当図である。 図9は、図8の要部拡大図であり、図3相当図である。 図10(a)~(d)は、図1に示す鋳物製造用構造体の変形例を示す模式断面図である。 図11(a)~(d)は、図7に示す鋳物製造用構造体の変形例を示す模式断面図であり、図10相当図である。 図12は、実施例1の鋳物製造用構造体の模式断面図である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
図1に本発明の鋳物製造用構造体の好ましい第1実施形態に係る鋳物製造用構造体1(以下、構造体1ともいう)を示す。構造体1は、筒状の胴部11と胴部11に連設された嵌合部12とを備えている。構造体1は、図2に示すように、隣り合う一方の構造体1の胴部11における嵌合部12から遠い側の一端部11aを、他方の構造体1の嵌合部12に挿入して嵌合させることにより、複数の構造体1を連結可能であり、複数の構造体1を所望の個数連結することにより、所望の長さの長尺の筒状体10を形成可能となっている。筒状体10は、図4に示すように、例えば、湯道管として用いることができる。
第1実施形態の構造体1は、図1に示すように、胴部11及び嵌合部12に、本体部21を有し、本体部21の少なくとも内周面23に、被覆層22を有している。本体部21は、有機繊維、無機繊維、平均粒子径10~150μmの無機粒子及びバインダーを含有している。被覆層22は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有している。本体部21及び被覆層22が含有する各成分については後述する。
第1実施形態の構造体1において、胴部11は、軸方向Zの一端部11aの内径D1が、他端部11bの内径D2よりも小さくなっており、より具体的には、前記内径D1は前記内径D2よりも1.0mm以上小さくなっている
第1実施形態の構造体1においては、胴部11の内径は、一端部11a、一端部11aと他端部11bとの間に位置する中央部11c、他端部11bの順に大きくなっており、より具体的には、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって漸次大きくなっている。また胴部11は、外径が略一定の円筒形状を有しており、その厚みが、一端部11aから他端部11bに向かって漸次小さくなっている。ここで、胴部11の厚みとは、本体部21の厚みと被覆層22の厚みとの合計の厚みを意味する。
第1実施形態において、胴部11における本体部21は、その厚みが、軸方向Zに亘って一定であってもよいし、軸方向Zにおいて変化していてもよい。第1実施形態において、胴部11における本体部21は、その厚みが、胴部11の一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次小さくなっている。
第1実施形態において、胴部11における被覆層22は、その厚みが、軸方向Zに亘って一定であってもよいし、軸方向Zにおいて変化していてもよい。第1実施形態において、被覆層22は、胴部11の一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次小さくなっている。第1実施形態において、被覆層22は、胴部11における本体部21の内周面23a側には形成されているが、嵌合部12における本体部21の内周面23b側には形成されていない。
嵌合部12は、胴部11の他端部11bに連設されている。嵌合部12は、本体部21を有している。第1実施形態において、嵌合部12と胴部11とは、連続した本体部21により、一体として形成されている。嵌合部12は、その内径W2が、胴部11の一端部11aの外径W1よりも大きくなっており、構造体1の嵌合部12に、他の構造体1の胴部11の一端部11aを挿入することができるようになっている。
第1実施形態の構造体1は、例えば、以下のようにして鋳物の製造に用いることができる。まず、構造体1どうしを連結して、筒状体10を形成する。そして、図4に示すように、筒状体10を、砂型15内の所定位置に埋設する。砂型15の鋳物砂には、従来からこの種の鋳物の製造に用いられている通常のものを制限なく用いることができる。そして、筒状体10の一端に設けられた注湯口16から溶融金属を注ぎ入れ、キャビティ17内に溶融金属を供給し、鋳造を行う。このとき、構造体1は、熱間強度が維持され、熱分解に伴う熱収縮が小さいため、各構造体1のひび割れや、構造体1自体の破損が抑制され、溶融金属の構造体1への差込みや鋳物砂などの付着も生じにくい。
鋳造後、所定の温度まで冷却し、鋳枠を解体して鋳物砂を取り除き、さらにブラスト処理によって鋳物製造用構造体を取り除いて鋳物を露呈させる。その後必要に応じて鋳物にトリミング処理等の後処理を施して鋳物の製造を完了する。
第1実施形態の構造体1によれば、複数の構造体1どうしを連結したときに、胴部11どうしが互いに隣接した状態となる上に、連結された構造体1それぞれの胴部11における本体部21の内周面23に被覆層22が形成されているため、高温の溶融金属が胴部11内に流れ込むことに起因し、本体部21に含まれる有機繊維やバインダー等が熱分解する際に発生するガスや鋳物砂から発生するガスが胴部11内に侵入することを防ぐことができ、構造体1の胴部11内を流れる溶湯内にガスが混入しにくくなっている。しかも、構造体1は、胴部11の一端部11aの内径D1が他端部11bの内径D2よりも小さいため、胴部11どうしのつなぎ目の付近に、被覆層22の剥離が生じにくい。斯かる効果は、内径D1が内径D2よりも1.0mm以上小さいことによって、より確実に奏される。
斯かる効果が奏される理由は、以下のように推測される。すなわち、筒状体10の内部に溶湯を流した際に、矢印Rに沿うように該溶湯が流れる(図3参照)。そのため、筒状体10の内部を流れる溶湯が、該溶湯の流れる方向Z1における上流側の構造体1の胴部11内を通過し、該方向Z1における下流側の構造体1の胴部11内に入る際に、該下流側の構造体1における胴部11の他端部11bの内周面23aに形成される被覆層22の表面に、該溶湯の流れが直接に衝突・接触しにくい。したがって、前記下流側の構造体1の胴部11の他端部11bに衝撃が加わることを防ぎ、胴部11の被覆層22が剥離してしまうことを防ぐことができる。
このように、第1実施形態の構造体1によれば、被覆層22が剥離することを防ぐことができるため、被覆層22が剥離し溶湯内に混入することや、被覆層22が剥離した部分からガスが溶湯内に混入してしまうことを防ぐことができ、鋳物製品に、剥離した被覆層22や、ガスが混入することを防ぐことができる。
第1実施形態の構造体1は、該構造体1同士を連結した筒状体10において、前記下流側の構造体1の胴部11の他端部11bに衝撃が加わることを防ぎ、胴部11の被覆層22が剥離してしまうことを防ぐ観点から、胴部11における一端部11a側及び他端部11b側のうち、内径が大きい側が注湯口側であることが好ましい。第1実施形態の構造体1は、該構造体1同士を連結した筒状体10において、連結部から溶湯が漏れることを防ぐ観点から、胴部11における他端部11b側、すなわち嵌合部12側が注湯口側であることが好ましい。
第1実施形態において、構造体1の胴部11は、中央部11cの内径D3が、一端部11aの内径D1よりも大きく、且つ他端部11bの内径D2よりも小さくなっている。これにより、溶湯が胴部11内をより滑らかに流れるようにすることができ、溶湯が胴部11の内周面に衝撃を与えることを抑制し、被覆層22の剥離をより抑制することができる。
胴部11は、前記内径D1、前記内径D2及び前記内径D3がそれぞれ、前記内径D1、前記内径D2及び前記内径D3の平均値に対し±10%以内であることが好ましい。これにより、溶湯が胴部11内をより滑らかに流れるようにすることができ、溶湯が胴部11の中央部11cの内周面や他端部11bの内周面に与える衝撃を小さくし、被覆層22の剥離をより抑制することができる。
前記内径D1と前記内径D2との差は、筒状体10の前記Z1方向の下流側の構造体1における胴部11の他端部11bに衝撃が加わることを防ぐ観点から、1.0mm以上、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上であり、筒状体10の前記Z1方向の上流側の構造体1における一端部11aと、該Z1方向の下流側の筒状体10の他端部11bとの連結部における段差で注湯時に渦が発生することを抑制する観点から、10mm以下、好ましくは7.5mm以下、より好ましくは5.0mm以下であり、それら両方の観点から、1.0mm以上10mm以下、好ましくは2.0mm以上7.5mm以下、より好ましくは3.0mm以上5.0mm以下である(図1参照)。
胴部11は、最小厚みが、好ましくは0.8mm以上であり、より好ましくは1.1mm以上であり、また、最大厚みが、好ましくは4.0mm以下であり、より好ましくは3.0mm以下であり、また、最小厚みが0.8mm以上であり且つ最大厚みが4.0mm以下であることが好ましく、最小厚みが1.1mm以上であり且つ最大厚みが3.0mm以下であることがより好ましい。胴部11の厚みとは、上述したように、本体部21の厚みと被覆層22の厚みとの合計の厚みを意味する。胴部11の最小厚みとは、胴部11における厚みが最も小さい部分の厚みを意味し、胴部11の最大厚みとは、胴部11における厚みが最も大きい部分の厚みを意味する。
被覆層22は、胴部11の内周面側にガスが混入することを防ぐ観点から、最小厚みが、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは120μm以上であり、また、被覆層22と本体部21との密着性・追随性を良好にするため、または被覆層22を塗液を用いて形成する場合の乾燥時欠陥を抑制する観点から最大厚みが、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、また、最小厚みが100μm以上であり且つ最大厚みが1000μm以下であることが好ましく、最小厚みが120μm以上であり且つ最大厚みが500μm以下であることがより好ましい。被覆層22の最小厚みとは、被覆層22における厚みが最も小さい部分の厚みを意味し、被覆層22の最大厚みとは、被覆層22における厚みが最も大きい部分の厚みを意味する。
本体部21は、該本体部21の強度を向上させる観点から、最小厚みが、好ましくは0.5mm以上であり、より好ましくは0.7mm以上であり、胴部11内に溶湯を流した際にガスが発生することを抑制する観点から、最大厚みが、好ましくは3.0mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下であり、また、最小厚みが0.5mm以上であり且つ最大厚みが3.0mm以下であることが好ましく、最小厚みが0.7mm以上であり且つ最大厚みが2.5mm以下であることがより好ましい。本体部21の最小厚みとは、本体部21における厚みが最も小さい部分の厚みを意味し、本体部21の最大厚みとは、本体部21における厚みが最も大きい部分の厚みを意味する。
嵌合部12における本体部21の内周面23bには、被覆層22が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよいが、構造体1の嵌合部12に、他の構造体1の胴部11の一端部11aを挿入し、該嵌合部12と該一端部11aとを容易に嵌合させることができるようにする観点から、第1実施形態のように、嵌合部12おける本体部21の内周面23bには、被覆層22が形成されていないことが好ましい。
被覆層22は、本体部21の内周面23a及び外周面の両方に形成されていてもよいし、本体部21の内周面23aにのみ形成されていてもよいが、胴部11の内周面側にガスが侵入することを防ぎ、且つ胴部11の外周面側にガスが抜けるようにする観点から、第1実施形態のように、本体部21の内周面23aにのみ形成されていることが好ましい。
本体部21は、有機繊維、無機繊維、無機粒子(以下、第1無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第1バインダーともいう)を含有する。斯かる本体部21は、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子、第1バインダー及び分散媒を含有するスラリー状組成物(以下、原料スラリーという)を調製し、抄造・脱水成形用の金型を用いて本体部21の中間成形体を抄造し、次に金型を用いて該中間成形体を加熱・乾燥することにより形成することができる。
有機繊維は、本体部21において鋳造に用いられる前の状態では構造体1の骨格を成し、鋳造時には溶融金属の熱によって、その一部若しくは全部が燃焼し、鋳物製造後の本体部21内部にキャビティを形成する。
有機繊維には、木材パルプの他、フィブリル化した合成繊維、再生繊維(例えばレーヨン繊維)等が挙げられ、それらが単独で又は二種以上混合されて用いられる。これらの中でも紙繊維が好ましい。その理由は、抄造により多様な形態に成形でき、脱水、乾燥された成形体の湿態強度特性が優れ、紙繊維の入手性が容易且つ安定的で、経済的である。また、紙繊維には、木材パルプの他、コットンパルプ、リンターパルプ、竹や藁その他の非木材パルプを用いることができる。バージンパルプ若しくは古紙パルプ(回収品)を単独又は二種以上を混合して用いることができる。入手の容易性、環境保護、製造費用の低減等の点から、古紙パルプが好ましい。
有機繊維の平均繊維長は、好ましくは0.8mm以上2mm以下であり、より好ましくは0.9mm以上1.8mm以下であり、更に好ましくは0.9mm以上1.5mm以下である。有機繊維の平均繊維長が0.8mm以上であれば成形体の表面にひびが生じたり、衝撃強度等の機械物性に劣ったりすることがなく、また、2mm以下であれば肉厚むらが発生し難くなり、表面の平滑性も良好となる。
有機繊維の含有量は、本体部21の成形容易性及びガス発生量抑制効果の観点から、本体部21の質量を100質量部としたときに、好ましくは1質量部以上40質量部未満であり、より好ましくは2質量部以上30質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以上25質量部以下であり、より更に好ましくは10質量部以上20質量部以下である。有機繊維の含有量が1質量部以上であれば本体部21の骨格をなす有機繊維が充分であり、本体部21の成形性が良好となり、脱水後や乾燥後の本体部21の強度が充分となる。また、40質量部未満であれば鋳造時に燃焼ガスが大量に発生するのを防止しやすくなり、湯口から溶融金属の吹き戻しが発生したり、揚がり(鋳型の上部に設けた細い棒状のキャビティで、溶融金属が鋳型を満たしたのち鋳型上面に上昇する部分)から炎が出たりすることを防止しやすくできる。その結果、鋳造品のガス欠陥を低減でき、鋳物品質が良好となる。有機繊維種は本体部21の成形性を向上させる観点及び供給性や経済性の観点から古紙(新聞紙等)を用いることが好ましい。
無機繊維は、主として本体部21において鋳造に用いられる前の状態ではその骨格をなし、鋳造時に溶融金属の熱によっても燃焼せずにその形状を維持する。特に、後述する有機バインダーが用いられた場合には、該無機繊維は溶融金属の熱による当該有機バインダーの熱分解に起因する熱収縮を抑えることができる。
無機繊維には、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられ、それらが単独で又は二以上混合されて用いられる。これらの中でも、前記の熱収縮を抑える点から金属が溶融するような高温でも高強度を有する炭素繊維が好ましい。また、製造費用を抑える点からはロックウールを用いることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長は、好ましくは0.2mm以上10mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上8mm以下であり、更に好ましくは2mm以上4mm以下である。無機繊維の平均繊維長が0.2mm以上であれば濾水が良好で本体部21製造時に脱水不良が発生するおそれがない。また、肉厚の本体部21(特に、ボトルのような中空立体形状物)の製造時に抄造性が良好となる。一方、無機繊維の平均繊維長が10mm以下であれば均等な肉厚の本体部21が得られ、中空の本体部21の製造が容易となる。
無機繊維の含有量は、本体部21の質量を100質量部としたときに、好ましくは1質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上40質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以上35質量部以下であり、より更に好ましくは8質量部以上20質量部以下である。無機繊維の含有量が1質量部以上であれば特に有機バインダーを用いて製造された本体部21の鋳造時の強度が充分で、当該バインダーの炭化に起因して本体部21の収縮、割れ、壁面の剥離(本体部21の壁面が内層と外層とに分離する現象)等が発生するおそれもない。さらに、本体部21の一部あるいは鋳物砂が製品部(鋳物)に混入して欠陥となることを抑制しやすくなる。また、無機繊維の含有量が80質量部以下であれば特に抄造工程や脱水工程での本体部21の成形性が良好となり、用いられる繊維による原料費用変動の低減につながる。
有機繊維と無機繊維との質量比は、無機繊維が炭素繊維の場合には、無機繊維(炭素繊維)/有機繊維で、好ましくは0.1以上50以下であり、より好ましくは0.2以上30以下であり、更に好ましくは0.5以上1.0以下である。無機繊維がロックウールの場合には、有機繊維と無機繊維との質量比は、無機繊維(ロックウール)/有機繊維で、好ましくは10以上90以下であり、より好ましくは20以上80以下である。これらの質量比が前記範囲の上限値以下であれば本体部21の抄造、脱水成形における成形性が良好で、脱水後の本体部21の強度が充分になって抄造型から取り出すときに本体部21が割れたりするのを防止できる。また、この質量比が前記範囲の下限値以上であれば有機繊維や後述の有機バインダーの熱分解に起因して本体部21が収縮することを抑制できる。
また、無機繊維は、鋳物製造用構造体の熱間強度、鋳物製造用構造体の成形性を向上させる観点から、長軸/短軸比は、好ましくは1以上5000以下であり、より好ましくは10以上2000以下であり、更に好ましくは50以上1000以下である。
平均粒子径10~150μmの第1無機粒子としては、ムライト、黒鉛、雲母、シリカ、中空セラミックス、フライアッシュ等の耐火物の骨材粒子が挙げられる。第1無機粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。なお、中空セラミックスとはフライアッシュに含まれる中空の粒子であって、フライアッシュを水を用いて浮遊選別することによって得ることができる。
第1無機粒子の平均粒子径は、本体部21の通気性を良くする観点から、10μm以上であり、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは60μm以上であり、更に好ましくは70μm以上であり、より更に好ましくは80μm以上である。また本体部21の成形性を向上させる観点から、150μm以下であり、好ましくは130μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは90μm以下である。第1無機粒子の平均粒子径が50μm以上であれば、本体部21の通気性が良くなり、鋳造時の鋳型内のガス圧力が適度に減少する。また、本体部21の通気性が上がることで、本体部21の材料間の空隙が増加し、後述する塗液組成物の本体部21への浸透性が向上し、本体部21から被覆層22が剥離しにくくなる。第1無機粒子が150μm以下であれば、本体部21の表面に無機粒子が露出しにくくなり、成形性が良くなる。
第1無機粒子の見掛け比重は、原料分散性の観点から、好ましくは0.5以上3.0以下であり、更に軽量化の観点から、より好ましくは、0.5以上2.8以下であり、更に好ましくは0.5以上2.5以下である。見掛け比重とは、中空粒子の内部の中空部分の体積を中空粒子の体積の一部であると仮定した場合の中空粒子の比重であり、内部の中空部分が存在しない中実粒子の場合は真比重と一致する。第1無機粒子の見掛け比重が前記範囲にあることで、分散媒に水を使用した場合の抄造工程における原料分散性が良好となる。また、成形して得られた本体部21の質量を軽量化できる為、取り扱い性が良くなる。なお、本体部21の組成は、第1無機粒子の見掛け比重と共に嵩比重を考慮して決めることができる。嵩比重とは、粒子を一定容積の容器の中に、一定状態で入れたときに、容器内に入る粒子の量を測定し、単位体積あたりの質量を求めたものである。
また第1無機粒子は中空であっても良い。中空粒子を用いることで、第1無機粒子の見掛け比重を小さくすることができる。
ここで、第1無機粒子の見掛け比重が1を超え、且つ下記の第1の測定方法で求められる平均粒子径が200μm以上の場合は、その値を第1無機粒子の平均粒子径とする。第1無機粒子の見掛け比重が1を超え、且つ第1の測定方法で求められる平均粒子径が200μm未満の場合には、下記の第2の測定方法で測定することにより、第1無機粒子の平均粒子径を求めることができる。また、見掛け比重が1以下の場合は、第1の測定方法で測定する。
〔第1の測定方法〕
JIS Z2601(1993)「鋳物砂の試験方法」附属書2に規定する方法に基づいて測定し、質量累積50%をもって平均粒子径とした。前記質量累積は、各ふるい面上の粒子を、JIS Z2601(1993)解説表2に示す「径の平均Dn(mm)」とみなして計算するものとする。
〔第2の測定方法〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA-920)を用いて測定された体積累積50%の平均粒子径である。分析条件は下記の通りである。
・測定方法:フロー法
・屈折率:各種無機粒子によって異なる(LA-920付属のマニュアル参照)
・分散媒:各種無機粒子に適したものを用いる
・分散方法:攪拌、内蔵超音波(22.5kHz)3分
・試料濃度:2mg/100cm
第1無機粒子の含有量は、熱間強度を向上させる観点から、本体部21の質量を100質量部としたときに、好ましくは10質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは12質量部75質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以上70質量部以下である。
本発明では、第1バインダーとしては、有機バインダー及び/又は無機バインダーを使用することができる。鋳造後の除去性に優れる観点から有機バインダーが好ましい。有機バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、可燃ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が高い等の点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールタイプ等のフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシ等で変性した変性フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、レゾールタイプのフェノール樹脂を用いる事で、酸、アミン等の硬化剤を必要とせず、本体部21成形時の臭気や、本体部21を鋳型として用いた場合の鋳物欠陥を低減することができるので、好ましい。
ノボラックフェノール樹脂を使用した場合には、硬化剤を要する。該硬化剤は水に溶け易いため、本体部21の脱水後にその表面に塗工されるのが好ましい。硬化剤には、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることが好ましい。
また、無機バインダーとして燐酸系バインダー、珪酸塩等の水ガラス、石膏、硫酸塩、シリカ系バインダー、シリコン系バインダーを用いても良い。有機バインダーは単独又は二種以上混合して用いても良く、有機バインダーと無機バインダーと併用しても良い。
第1バインダーは、鋳込み前において抄造した部品を乾燥成形したときに有機繊維、無機繊維及び無機粒子を強固に結合させる観点から、窒素雰囲気中で1000℃に於ける減量率(TG熱分析測定で)が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下が望ましい。
第1バインダーの含有量は、強度保持を向上させ及びガス発生量抑制効果をより発現させる観点から、本体部21の質量を100質量部としたときに、好ましくは5質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上40質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以上30質量部以下である。
鋳込みの際に、ガス発生量が増大する原因は、主として有機繊維及び有機バインダーであることから、両者の原料種及び配合量及び質量比率は重要である。
第1バインダーの含有量を適切にすることで、抄造後の乾燥成形時に、本体部21の金型への貼り付きが防止でき本体部21を金型から分離することが容易となり、硬化した第1バインダーの金型表面への付着を低減でき、本体部21の寸法精度を向上でき、金型表面の清掃頻度も低減できる。
原料スラリーに用いられる分散媒としては、水の他、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤が挙げられる。これらを単独又は二以上を混合して用いることができる。その中でも、取り扱い易さの点から、水が好ましい。
本体部21は、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び第1バインダーの他に、紙力強化材を含有していてもよい。紙力強化材は、本体部21の中間成形体に第1バインダーを含浸させたときに(後述)、該中間成形体の膨潤を防止する作用がある。
紙力強化材としては、ラテックス、アクリル系エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。
紙力強化材の使用量は、固形分として、本体部21の質量を100質量部としたときに、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下であり、より好ましくは0.02質量部以上1質量部以下である。紙力強化材の使用量が0.01質量部以上であれば前記の膨潤防止が充分で、添加した粉体が繊維に適切に定着する。一方、2質量部以下であれば本体部21の成形体が金型に貼り付きにくくなる。
本体部21は、さらに、凝集剤、着色剤等の成分を含有していてもよい。
本体部21は、被覆層22が形成される前の状態の圧縮強度は10N以上が好ましく、30N以上がより好ましい。圧縮強度が10N以上であれば、鋳物砂で押されて変形しにくく、本体部21としての機能を維持できる。
本体部21が水を含む原料スラリーを用いて製造された場合は、該本体部21の使用前(鋳造に供せられる前)の含水率は10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。その理由は、含水率が低いほど、鋳造時の熱分解に起因するガス発生量が低減するからである。被覆層22が形成された後もこの水分率が好ましい。よって、本発明の鋳物製造用構造体の含水率は10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
被覆層22は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子(以下、第2無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第2バインダーともいう)並びに粘土鉱物を含有する塗液組成物を、本体部21の内周面23aに塗布することにより形成することができる。
耐火性無機粒子について、耐火性であるとは、融点1500℃以上、好ましくは1600℃以上、より好ましくは1700℃以上であることをいう。また、第2無機粒子は、金属酸化物、及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれるものが挙げられる。第2無機粒子としては、ムライト、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、オリビン、ショースピネル、マグネシア、クロマイト等が挙げられる。鋳物のガス欠陥を改善する観点から、ジルコンが好ましい。第2無機粒子は、これらを単独又は二以上を選択して用いることができる。鋳鉄(1.7~6.67%C)よりも炭素含有量の低い鋳鋼(0.03~1.7%C)では、炭素質以外の骨材粒子を用いることが好ましく、融点が高く、溶融金属との濡れ性が低いジルコンを用いることが、より好ましい。
本体部21の表面の封孔性、本体部21と被覆層22との密着性などの観点から、第2無機粒子の平均粒子径は1~100μmであり、3~80μmが好ましく、3~70μmがより好ましく、3~50μmが更に好ましく、5~40μmが更により好ましく、10~30μmがより更に好ましい。なお、第2無機粒子の平均粒子径は、前述の第1無機粒子の平均粒子径の測定方法、特に第2の測定方法により求めることができる。
構造体1においては、本体部21が含有する第1無機粒子の平均粒子径と、被覆層22が含有する第2無機粒子の平均粒子径との比が、〔第1無機粒子の平均粒子径〕/〔第2無機粒子の平均粒子径〕で0.5~35、更に1.0~30、より更に2~20、より更に3~6であることが、本体部21の表面の封孔性の観点から好ましい。
構造体1においては、被覆層22中、第2無機粒子の割合が50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上、より更に90質量%以上であることが好ましい。
被覆層22は、熱間強度向上の観点と塗布時の粘度を付与する観点から、粘土鉱物を含有している。粘土鉱物を、被覆層22を得るための分散液(塗液組成物)に配合することで、分散液に適度な粘度を付与し、分散液中での原料の沈降防止、原料分散性が向上する。粘土鉱物としては、層状ケイ酸塩鉱物、複鎖構造型鉱物などが挙げられ、これらは天然、合成を問わない。層状ケイ酸塩鉱物としては、スメクタイト属、カオリン属、イライト属に属する粘土鉱物、例えばベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、活性白土、木節粘土、ゼオライト等が挙げられる。複鎖構造型鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト等が挙げられる。熱間強度向上の観点や塗布時の粘度を確保する観点から好ましくは、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、スメクタイトより選ばれる一種以上が挙げられる。より好ましくは、アタパルジャイト、セピオライト群より選ばれる一種以上が挙げられる。なお、粘土鉱物は、層状構造又は複鎖構造である点で、例えば、六方最密充填構造を主に含み、通常、層状構造又は複鎖構造をとらない耐火性無機粒子とは区別される。粘土鉱物は、耐火性無機粒子100質量部に対して、0.5~30質量部、更に0.5~20質量部、より更に1~2質量部用いられることが好ましい。この比率において粘土鉱物が0.5質量部以上であれば、分散液に適度な粘度を付与することができ、分散液中での原料沈降・浮遊を防止できる。
被覆層22は、熱間強度向上の観点から、更に第2バインダーを含有する。被覆層22を形成する際に第2バインダーを用いることが、鋳物製造用構造体の常温強度及び耐熱性を向上させる観点から好ましい。第2バインダーとしては、有機バインダーと無機バインダーを使用することができる。有機バインダーとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、水溶性多糖類、酢酸ビニル樹脂又はその共重合体などが挙げられる。無機バインダーとしては、硫酸塩、珪酸塩、燐酸塩、リチウムシリケート、ジルコニアゾル、コロイダルシリカ(シリカゾル)、アルミナゾルなど各種ゾルなどが挙げられる。好ましくは無機バインダーであり、無機バインダーの中でもより好ましくは、コロイダルシリカ(シリカゾル)及びリン酸アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上、更に好ましくはコロイダルシリカ(シリカゾル)が挙げられる。前記バインダーは単独又は二種以上混合して用いても良く、有機バインダーと無機バインダーとを併用しても良い。第2バインダーは、第2無機粒子100質量部に対して、有効分換算で、1~50質量部、更に1~40質量部、より更に3~7質量部用いられることが好ましい。
次に、上述した第1実施形態の構造体1の製造方法について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5及び図6において、図中Z方向の下側が、製造される構造体1における胴部11の一端部11a側であり、図中Z方向の上側が、該胴部11の他端部11b側である。
先ず、図5(a)に示すように、内部から外部へ連通する連通路31を有する一対の割型32,33を突き合わせ、成形用型30を形成する。そして、内部にキャビティ34が形成されると共に該キャビティ34から上方に開口した上方開口部35が形成される成形用型30に、該成形用型30の外部からキャビティ34内に原料スラリー及び流体を供給する共用供給口41を下端に有する供給管40を挿入する。割型32,33の内面、即ち、キャビティ34の形成面は、所定の大きさの網目を有する抄紙ネット(不図示)によって被覆されている。図5(a)に示すように、成形用型30に供給管40が挿入された状態において、キャビティ34の上方開口部35は、シール部42の蓋体43で上方から覆われる。そして、シール部42の嵌合体44が上方開口部35に嵌合する。このように、シール部42の蓋体43及び嵌合体44によって成形用型30の上方開口部35が閉鎖され、キャビティ34内が封止状態となる。
第1実施形態のように、本体部21の厚みを、胴部11の一端部11a側から他端部11bに向かって漸次小さくするためには、成形用型30に挿入される供給管40における、キャビティ34の長さ(L1)に対する供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)の割合((L2/L1)×100)を、40%以下にすればよい。こうすることで、キャビティ34内に原料スラリーを供給する際のキャビティ34内でのスラリー流動性を低下させることができるとともに、原料スラリーに含まれる繊維の沈降速度を制御することができ、胴部11の一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次小さくなる肉厚分布を実現することができる。前記長さL1に対する前記L2の割合は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下である。ここで、キャビティ34の長さ(L1)とは、図5(a)に示すように、上方開口部35の開口上面、言い換えれば割型32,33の上面と、キャビティ34の形成面の内の底面との間の間隔を意味する。また、供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)とは、シール部42の蓋体43の下端(下面)と、供給管40の下端に位置する共用供給口41との間の間隔を意味する。
次いで、図5(b)及び(c)に示すように、供給管40の共用供給口41を通じて成形用型30のキャビティ34内に、原料スラリーを供給する。好適には、三方弁(不図示)によって供給管40をスラリー供給管(不図示)に接続し、原料スラリーの供給源(不図示)から所定の原料スラリーを、供給管40の下端の共用供給口41を通して、キャビティ34内に供給する。そうすると図5(c)における上方側から下方側に向かって重力がかかり、原料スラリーに含まれる繊維が沈降する。また、キャビティ34内を、吸引手段(不図示)に接続された各連通路31を通じて、減圧吸引する。このように、キャビティ34内に原料スラリーを供給すると共に、キャビティ34内を減圧吸引することによって、割型32,33の内面であるキャビティ34の形成面を被覆する抄紙ネット(不図示)上に、原料スラリーに含まれる繊維を堆積させる。その結果、抄紙ネット(不図示)上に、原料スラリーに含まれる繊維が堆積されて形成された含水状態の本体部21aが形成される(抄紙工程)。
原料スラリーの供給流量は、キャビティ34内に即座に原料スラリーを充填できる観点から、好ましくは20L/min以上であり、より好ましくは30L/min以上であり、また、キャビティ34内での渦発生による、抄紙ネット上に堆積する繊維堆積物の剥がれ抑制の観点から、好ましくは50L/min以下であり、より好ましくは40L/min以下であり、具体的には、好ましくは20L/min以上50L/min以下であり、より好ましくは30L/min以上40L/min以下である。
その後、供給管40に流体を供給して供給管40内の残留原料スラリーをキャビティ34内に供給した後、図5(d)及び(e)に示すように、キャビティ34の形成面に形成された含水状態の本体部21aを、連通路31を介して脱水する。好適には、キャビティ34内を、吸引手段(不図示)に接続された各連通路31を通じて、減圧吸引した状態のまま、三方弁(不図示)を切り替え、供給管40を流体供給管(不図示)に接続し、流体の供給源(不図示)から所定の流体を供給管40に供給して供給管40内の残留原料スラリーをキャビティ34内に供給する。そして、更に、流体の供給源(不図示)から所定の流体を、供給管40の下端の共用供給口41を通して、キャビティ34内に供給する。このように、キャビティ34内に流体を供給すると共に、キャビティ34内を減圧吸引することによって、割型32,33の内面であるキャビティ34の形成面を被覆する抄紙ネット(不図示)上に形成された含水状態の本体部21aを脱水し、脱水された本体部21bを形成する(脱水工程)。
脱水された本体部21bが所定の水分率まで脱水された後、図5(f)に示すように、成形用型30から供給管40を抜き出し、成形用型30を割型32と割型33とに分解し、キャビティ34の形成面から脱水された本体部21bを取り出す。
次いで、脱水された本体部21bを、図5(g)に示すように、一対の割型52,53を突き合わせて形成された乾燥型50の内部のキャビティ54に移行する。
乾燥型50のキャビティ54にセットされた脱水された本体部21bは、図5(g)に示すように、乾燥型50の上方開口部55が蓋57で閉塞された状態で、乾燥型50の加熱手段56で所定温度にまで加熱される。乾燥型50の温度(金型温度)は、繊維の焦げ発生防止と乾燥効率向上の観点から150℃以上300℃以下であることが好ましく、200℃以上250℃以下であることが更に好ましい。
加熱手段56で乾燥型50を加熱する一方、図5(g)に示すように、中子4を、蓋57の孔(不図示)を通じて乾燥型50のキャビティ54内に挿入し、中子4内に流体を供給して中子4をキャビティ54内で膨らませ、本体部21bをキャビティ形成面に押圧して加熱・乾燥し、乾燥された本体部21cを形成する(加熱乾燥工程)。乾燥された本体部21cの水分率は、トリミング不良の観点から、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。中子4の押圧力は、乾燥効率の観点から、0.2MPa以上0.6MPa以下であることが好ましく、0.3MPa以上0.5MPa以下であることが更に好ましい。尚、水分率は、以下のようにして測定する。
〔水分率の測定法〕
乾燥された本体部21cの底側を20mm×20mmの範囲で切り出した試験片を、株式会社A&D社製の加熱乾燥式水分計MX-50を用いて、加熱温度条件130℃で水分率を測定する。
乾燥された本体部21cが所定の水分率まで乾燥された後、乾燥型50から中子4を引き出し、乾燥型50を割型52と割型53とに分解し、キャビティ54の形成面から乾燥された本体部21cを取り出す。
次いで、取り出された乾燥された本体部21cに関しては、図5(h)に示すように、乾燥された本体部21cの上下方向の両端部の余分な部分21dをそれぞれ切断して、本体部21を形成する(トリミング工程)。
そして、このようにして形成された本体部21の内周面23側に被覆層22を形成する。具体的には、図6(a)に示すように、本体部21の一方の端部を蓋体60により閉塞し、本体部21の内周面23側に、塗液組成物70を充填する。このとき、充填された塗液組成物70の高さ位置を調節し、嵌合部12における本体部21の内周面23bに塗液組成物70が接触しないようにすることで、胴部11における本体部21にのみ被覆層22を形成することができる。そして、好ましくは所定時間静置後、蓋体60による閉塞を解除し、塗液組成物70を排出することで、本体部21の内周面側に被覆層22が形成される(図6(b)参照)。
このようにして、第1実施形態の構造体1が製造される。
充填する塗液組成物の温度は、好ましくは5℃以上40℃以下であり、より好ましくは15℃以上30℃以下であり、更に好ましくは20℃以上30℃以下である。塗液組成物の温度が恒温になるように設備設定することも好ましい。塗液組成物70を充填した後の静置時間は、生産性の観点から1秒以上60秒以下であることが好ましい。
また、被覆層22の厚みを調整するために、塗液組成物70を塗布した本体部21に、振動テーブル等で振動を与えてもよい。また、被覆層22を本体部21の内周面により強固に付着させるためには、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥方法としてヒーターによる熱風乾燥、遠赤外乾燥、マイクロ波乾燥、過熱蒸気乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、限定されるものではない。熱風乾燥機を用いて乾燥させる場合は乾燥炉内中心部の乾燥温度については100~500℃の範囲が好ましく、更に有機物やバインダーの熱分解による影響を低減させる観点及び発火による安全性を確保する観点から105~300℃の範囲が最も好ましい。
次に、本発明の鋳物製造用構造体の第2実施形態に係る鋳物製造用構造体1B(以下、構造体1Bともいう)について説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる点について主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
図7及び図8に、第2実施形態の構造体1Bを示す。構造体1Bも、第1実施形態の構造体1と同様に、隣り合う一方の構造体1Bの胴部11における嵌合部12から遠い側の一端部11aを、他方の構造体1Bの嵌合部12に挿入して嵌合させることにより、複数の構造体1Bを連結可能であり、複数の構造体1Bを所望の個数連結することにより、所望の長さの長尺の筒状体10Bを形成可能となっている。
構造体1Bにおいて、胴部11は、軸方向Zの一端部11aの内径D1が、他端部11bの内径D2よりも大きくなっており、より具体的には、前記内径D1は前記内径D2よりも1.0mm以上大きくなっている。
構造体1Bにおいては、胴部11の内径は、一端部11a、一端部11aと他端部11bとの間に位置する中央部11c、他端部11bの順に小さくなっており、より具体的には、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって漸次小さくなっている。また胴部11は、外径が略一定の円筒形状を有しており、その厚みが、一端部11aから他端部11bに向かって漸次大きくなっている。
第2実施形態において、胴部11における本体部21は、その厚みが、軸方向Zに亘って一定であってもよいし、軸方向Zにおいて変化していてもよい。第1実施形態において、胴部11における本体部21は、その厚みが、胴部11の一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次大きくなっている。
第2実施形態において、胴部11における被覆層22は、その厚みが、軸方向Zに亘って一定であってもよいし、軸方向Zにおいて変化していてもよい。第2実施形態において、被覆層22は、胴部11の一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次大きくなっている。
第2実施形態の構造体1Bによっても、第1実施形態の構造体1と同様に、構造体1Bの胴部11内を流れる溶湯内にガスが混入しにくくなっている。しかも、構造体1Bは、胴部11の一端部11aの内径D1が他端部11bの内径D2よりも大きいため、胴部11どうしのつなぎ目の付近に、被覆層22の剥離が生じにくい。斯かる効果は、内径D1が内径D2よりも1.0mm以上大きいことによって、より確実に奏される。
斯かる効果が奏される理由は、以下のように推測される。すなわち、筒状体10Bの内部に溶湯を流した際に、矢印Rbに沿うように該溶湯が流れる(図9参照)。そのため、筒状体10Bの内部を流れる溶湯が、該溶湯の流れる方向Z1における上流側の構造体1の胴部11内を通過し、該方向Z1における下流側の構造体1の胴部11内に入る際に、該下流側の構造体1における胴部11の一端部11aの内周面23aに形成される被覆層22の表面に、該溶湯の流れが直接に衝突・接触しにくい。したがって、前記下流側の構造体1の胴部11の他端部11bに衝撃が加わることを防ぎ、胴部11の被覆層22が剥離してしまうことを防ぐことができる。
このように、第2実施形態の構造体1Bによっても、第1実施形態の構造体1と同様に、被覆層22が剥離し溶湯内に混入することや、被覆層22が剥離した部分からガスが溶湯内に混入してしまうことを防ぐことができ、鋳物製品に、剥離した被覆層22や、ガスが混入することを防ぐことができる。
第2実施形態の構造体1Bは、該構造体1B同士を連結した筒状体10Bにおいて、前記下流側の構造体1の胴部11の一端部11aに衝撃が加わることを防ぎ、胴部11の被覆層22が剥離してしまうことを防ぐ観点から、胴部11における一端部11a側及び他端部11b側のうち、内径が大きい側が注湯口側であることが好ましい。第2実施形態の構造体1Bは、該構造体1B同士を連結した筒状体10Bにおいて、連結部から溶湯が漏れることを防ぐ観点から、胴部11における他端部11b側、すなわち嵌合部12とは反対側が注湯口側であることが好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されない。
例えば、第1実施形態において、胴部11及び嵌合部12は、断面形状が円形状を有していたが、胴部11及び嵌合部12の断面形状は、円形状に限られず、例えば、楕円形状、三角形形状、矩形形状、正方形状、5角形以上の多角形形状、星形等であってもよい。
また、第1実施形態においては、胴部11の一端部11aの内径D1が他端部11bの内径D2よりも1.0mm以上小さくなっていればよく、第1実施形態のように、本体部21及び被覆層22の両方において、一端部11a側の厚みが他端部11b側の厚みよりも大きくなっている必要は必ずしも無い。例えば、図10(a)に示すように、本体部21の厚みが軸方向Zに亘って一定であり、被覆層22の厚みが一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次小さくなっていてもよい。また、図10(b)に示すように、被覆層22の厚みが軸方向Zに亘って一定であり、本体部21の厚みが一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次小さくなっていてもよい。
また、第1実施形態において、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって漸次大きくなっている必要は必ずしも無い。例えば、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって段階的に大きくなっていてもよい(図10(c)及び(d)参照)。
また、第2実施形態においては、胴部11の一端部11aの内径D1が他端部11bの内径D2よりも1.0mm以上大きくなっていればよく、第1実施形態のように、本体部21及び被覆層22の両方において、一端部11a側の厚みが他端部11b側の厚みよりも小さくなっている必要は必ずしも無い。例えば、図11(a)に示すように、本体部21の厚みが軸方向Zに亘って一定であり、被覆層22の厚みが一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次大きくなっていてもよい。また、図11(b)に示すように、被覆層22の厚みが軸方向Zに亘って一定であり、本体部21の厚みが一端部11a側から他端部11b側に向かって漸次大きくなっていてもよい。
また、第2実施形態において、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって漸次小さくなっていたが、胴部11の内径は、一端部11aから他端部11bに向かって段階的に小さくなっていてもよい(図11(c)及び(d)参照)。
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
第1実施形態の構造体1を、上述した製造方法により製造し、実施例1の鋳物製造用構造体とした。実施例1の鋳物製造用構造体の組成は、表1に示す通りである。本体部21を製造するにあたって、成形用型30に挿入される供給管40における、キャビティ34の長さ(L1)に対する供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)の割合((L2/L1)×100)は、12%とした。
Figure 0007217218000001
〔寸法の測定〕
実施例1の鋳物製造用構造体について、図12に示す位置A、位置B及び位置Cの3箇所の寸法を測定した。その結果を表2に示す。胴部11における嵌合部12側の一端から位置Aまでの距離H1は、5mmであり、胴部11における嵌合部12側の一端から位置Bまでの距離H2は、140mmであり、胴部11における嵌合部12側の一端から位置Cまでの距離H3は、265mmであった。胴部11の全長Hは、270mmであった。
Figure 0007217218000002
本体部21の厚みは、被覆層22を形成する前の本体部21の厚みを、ダイヤルキャリパゲージ(株式会社ミツトヨ製、コードNo.209-611、符号DCGO-50RL)を用いて測定した。被覆層22の厚みは、被覆層22を形成した後の鋳物製造用構造体の厚みから、被覆層22を形成する前の本体部21の厚みを引いて算出した。被覆層22を形成した後の鋳物製造用構造体の厚みは、前記ダイヤルキャリパゲージにより測定した。
鋳物製造用構造体の外径は、ノギス(ミツトヨ製、MN150)を用いて測定した。鋳物製造用構造体の内径は、以下の式により算出した。
鋳物製造用構造体の内径=鋳物製造用構造体の外径-(被覆層の厚み+本体部の厚み)×2
〔実施例2〕
キャビティ34の長さ(L1)に対する供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)の割合((L2/L1)×100)を3%に変更した以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を製造し、実施例2の鋳物製造用構造体とした。実施例2の鋳物製造用構造体の組成は、表1に示す通りである。また、実施例2の鋳物製造用構造体について、実施例1と同様に寸法を測定した結果を表2に示す。
〔比較例1〕
成形用型30に挿入される供給管40における、キャビティ34の長さ(L1)に対する供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)の割合((L2/L1)×100)を83%とした以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を製造し、比較例1の鋳物製造用構造体とした。比較例1の鋳物製造用構造体の組成は、表1に示す通りである。また、比較例1の鋳物製造用構造体について、実施例1と同様に寸法を測定した結果を表2に示す。
〔比較例2〕
キャビティ34の長さ(L1)に対する供給管40の共用供給口41までの長さ(L2)の割合((L2/L1)×100)を75%に変更した以外は、実施例1と同様にして鋳物製造用構造体を製造し、比較例2の鋳物製造用構造体とした。比較例2の鋳物製造用構造体の組成は、表1に示す通りである。また、比較例2の鋳物製造用構造体について、実施例1と同様に寸法を測定した結果を表2に示す。
〔鋳物製造後の被覆層の残存状態の評価〕
実施例1,2及び比較例1,2の鋳物製造用構造体それぞれについて、該鋳物製造用構造体を連結して筒状体を作成した。そして、各筒状体を湯道管として有する鋳型に、溶融金属を流し込み、鋳物を製造した。溶融金属は、1580℃のSC450Wを30kg用いた。鋳物製造後、各筒状体の位置Aを含む部分Pを切り出した。前記部分Pは、鋳物製造用構造体の軸方向の長さが10cm、鋳物製造用構造体の周方向の長さが10cmとなるように切り出した。そして前記部分Pについて、被覆層の残存割合を以下のようにして求めた。その結果を、○:被覆層の残存割合が70%以上、△:被覆層の残存割合が5%以上70%未満、×:被覆層の残存割合が5%未満として、表2に示した。
〔鋳物製造後の被覆層の残存割合の測定方法〕
マイクロスコープ(キーエンス株式会社製VHX-5000)の面積測定機能を用いて、被覆層の輪郭を手動でトレースし、被覆層の面積を算出し、10cm×10cmに対しての残存率を計算した。
比較例1及び2の鋳物製造用構造体は、位置Aの内径ΦAと位置Cの内径ΦCとの差がそれぞれ、0.1mm、0.4mmであり、位置Cの内径ΦCが位置Aの内径ΦAよりも1.0mm以上小さくなっておらず、被覆層の残存状態が「×」となっている。これに対し、実施例1及び2の鋳物製造用構造体は、位置Aの内径ΦAと位置Cの内径ΦCとの差がそれぞれ、2.7mm、3.2mmであり、位置Cの内径ΦCが位置Aの内径ΦAよりも1.0mm以上小さくなっており、被覆層の残存状態が「○」となっている。したがって、本発明の鋳物製造用構造体によれば、被覆層の剥離を抑制することができることが判る。
また、実施例1,2及び比較例1,2の鋳物製造用構造体について、鋳物製造後に軸方向に直交する方向に切断し、該鋳物製造用構造体の内周面側に残った鋳物の断面を観察した。比較例1,2の鋳物製造用構造体の内周面側に残った鋳物の断面には、孔等の欠陥が見られた。前記欠陥は、比較例1,2の鋳物製造用構造体の内周面側に侵入したガス等が、該鋳物製造用構造体内を流れる溶融金属に混入した結果生じたものだと考えられる。これに対し、実施例1,2の鋳物製造用構造体の内周面側に残った鋳物の断面には、欠陥は見られなかった。したがって、本発明の鋳物製造用構造体によれば、該鋳物製造用構造体の内周面側に侵入することを防ぎ、製造される鋳物にガス欠陥が発生することを抑制することができることが判る。
1 鋳物製造用構造体
11 胴部
11a 胴部の一端部
11b 胴部の他端部
12 嵌合部
21 本体部
23 本体部の内周面
22 被覆層
10 筒状体

Claims (11)

  1. 筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備える鋳物製造用構造体であって、
    隣り合う一方の前記鋳物製造用構造体の前記胴部における前記嵌合部から遠い側の一端部を、他方の前記鋳物製造用構造体の前記嵌合部に挿入して嵌合させることによって、複数の鋳物製造用構造体を連結可能であり、
    前記胴部及び嵌合部に、有機繊維、無機繊維、平均粒子径10~150μmの無機粒子及びバインダーを含有する筒状の本体部を有し、前記本体部の少なくとも内周面に被覆層を有し、前記被覆層は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有しており、
    前記胴部は、前記一端部の内径が他端部の内径よりも1.0mm以上小さい、鋳物製造用構造体。
  2. 前記胴部は、前記一端部と前記他端部との間に位置する中央部の内径が、該一端部の内径よりも大きく、且つ該他端部の内径よりも小さい、請求項1に記載の鋳物製造用構造体。
  3. 筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備える鋳物製造用構造体であって、
    隣り合う一方の前記鋳物製造用構造体の前記胴部における前記嵌合部から遠い側の一端部を、他方の前記鋳物製造用構造体の前記嵌合部に挿入して嵌合させることによって、複数の鋳物製造用構造体を連結可能であり、
    前記胴部及び嵌合部に、有機繊維、無機繊維、平均粒子径10~150μmの無機粒子及びバインダーを含有する筒状の本体部を有し、前記本体部の少なくとも内周面に被覆層を有し、前記被覆層は、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1~100μmの耐火性無機粒子、バインダー並びに粘土鉱物を含有しており、
    前記胴部は、前記一端部の内径が他端部の内径よりも1.0mm以上大きい、鋳物製造用構造体。
  4. 前記胴部は、前記一端部と前記他端部との間に位置する中央部の内径が、該一端部の内径よりも小さく、且つ該他端部の内径よりも大きい、請求項3に記載の鋳物製造用構造体。
  5. 前記胴部は、前記一端部の内径、前記他端部の内径及び前記一端部と前記他端部との間に位置する中央部の内径がそれぞれ、該一端部の内径、該他端部の内径及び該中央部の内径の平均値に対し±10%以内である、請求項1~4の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  6. 前記胴部は、前記一端部の内径と前記他端部の内径との差が1.0mm以上10mm以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  7. 前記被覆層は、最小厚みが100μm以上であり且つ最大厚みが1000μm以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  8. 前記本体部は、最小厚みが0.5mm以上であり且つ最大厚みが3.0mm以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  9. 前記嵌合部における前記本体部の内周面側には前記被覆層が形成されていない、請求項1~8の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  10. 前記被覆層は、前記本体部の内周面にのみ形成されている、請求項1~9の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
  11. 前記胴部における前記一端部側及び前記他端部側のうち、内径が大きい側が、注湯口側である、請求項1~10の何れか1項に記載の鋳物製造用構造体。
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