JP7216278B2 - イソプレンの分離回収方法および分離回収装置 - Google Patents
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Description
なお、本発明において、「高純度のイソプレン」とは、「粗イソプレンにおけるイソプレン濃度よりも高い濃度のイソプレン」を意味する。ここで、「イソプレン濃度」は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
さらに、本発明において、「分割蒸留」とは、一回の蒸留操作で被蒸留物を3つ以上(好ましくは3つ)の留分に分けることを指し、例えば垂直分割型蒸留塔などを用いて実施することができる。
なお、本発明において、「分割蒸留塔の鉛直方向上側部」とは、「分割蒸留塔の鉛直方向高さの70%以上100%以下の上側部分」を意味する。
ここで、本発明のイソプレンの分離回収方法は、C5留分等のイソプレンを含む混合流体原料からイソプレンを分離回収する際に用いることができる。また、本発明のイソプレンの分離回収装置は、例えば、本発明のイソプレンの分離回収方法を用いてイソプレンを分離回収する際に好適に用いることができる。
本発明のイソプレンの分離回収方法は、イソプレンを含む混合流体からイソプレンを分離回収する方法である。そして、本発明のイソプレンの分離回収方法は、イソプレンを含む混合流体を抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも低い不純物を含む留分と、粗イソプレンを含む留分とを得る工程(抽出蒸留工程)と、粗イソプレンを含む留分を、任意に重合防止剤の存在下において、分割蒸留して、イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分と、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分と、高純度のイソプレンを含む留分とを得る工程(分割蒸留工程)と、を含み、任意に、高純度のイソプレンを含む留分を更に抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも高い不純物を含む留分と、更に高純度のイソプレンを含む留分とを得る工程(第二抽出蒸留工程)と、高純度のイソプレンを含む留分から分割蒸留で用いた重合防止剤を除去する工程(除去工程)とを更に含む。
前記混合流体は、イソプレンを1質量%以上含むことが好ましい。前記混合流体におけるイソプレンの含有量が1質量%以上であることで、混合流体からイソプレンを効率的に分離回収することができる。
なお、通常、混合流体におけるイソプレンの含有量は、5質量%以上30質量%以下である。混合流体は、イソプレンの他に、n-ペンタン、1,4-ペンタジエン、2-ブチン、ピペリレン、シクロペンタジエン等を含む。
本発明の混合流体の分離回収方法の抽出蒸留工程では、混合流体を含む混合流体を抽出蒸留することにより、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンと異なる不純物を混合流体から分離して、粗イソプレンを含む留分を得る。
図1は、本発明に従うイソプレンの分離回収方法を実施し得るイソプレンの分離回収装置の一例の概略構成を示す図である。
図1において、抽出蒸留部10は、例えば、C5留分等のイソプレンを含む混合流体原料を抽出蒸留して、留分(C)と抽出液(D)とに分離する第一抽出蒸留塔12と、抽出液(D)から溶剤を除去する放散塔13とを備えている。
本発明のイソプレンの分離回収方法の分割蒸留工程では、粗イソプレンを含む留分を分割蒸留することにより、イソプレンよりも高沸点の不純物およびイソプレンよりも低沸点の不純物を粗イソプレンを含む留分から分離して、高純度のイソプレンを含む留分を得る。このように、粗イソプレンを含む留分を分割蒸留することで、蒸留による高沸点成分の除去と蒸留による低沸点成分の除去とを2段階に分けて実施する場合と比較して、熱負荷を小さくすることができ、ひいては、イソプレンを含む混合流体からイソプレンを分離回収する際に生成するイソプレンの重合体の生成量を低減させることができる。従って、イソプレンの分離回収装置の運転を停止して行う必要がある重合体クリーニングの頻度を減らすことができる。
ここで、分割蒸留は、例えば特開2016-524522号公報に記載されているように、分割蒸留塔を用いて、高沸点成分(イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分)を塔底から排出し、中沸点成分を塔中央領域から排出し、低沸点成分(イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分)を塔頂から排出することで、イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分と、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分と、高純度のイソプレンを含む留分とを得ることができる。
なお、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分のイソプレン濃度、即ち、分割蒸留塔21の塔頂側のイソプレン濃度は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。このように、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分のイソプレン濃度が5質量%以上90質量%以下であれば、高沸点成分(イソプレンよりも高沸点の不純物)や低沸点成分(イソプレンよりも低沸点の不純物)の中沸点成分への混入を防止して、高沸点成分および低沸点成分を効率よく分離することができる。
なお、通常、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分のイソプレン濃度は、15質量%以上25質量%以下である。
また、イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分は、有用成分であるピペリレンを3質量%以上含むことが好ましい。
ここで、分割蒸留塔としては、例えば特開2016-524522号公報に記載されているように、例えば、長さ方向に配置される分割壁を有する垂直分割型カラム、などが挙げられる。分割壁は、カラム内部を、例えば、フィードセクション(分割壁の左側)、除去セクション(分割壁の右側)、上側結合カラムセクション(精留セクション)、下側結合カラムセクション(ストリッピングセクション)に分割する。
分割蒸留の対象となる粗イソプレンを含む留分を供給するための供給口(フィード入り口部)は、一般的に、フィードセクションの中央領域(即ち、フィードセクションの上側領域と下側領域との間)に配置される。フィードセクションの中央領域に、さらに1つ以上の供給口(フィード入り口部)を設けてもよい。
また、一般的に、除去セクションでは、1つ以上の側流取り出し部が除去セクションの中央領域(即ち、除去セクションの上側領域と下側領域との間)に配置される。除去セクションの中央領域に、さらに1つ以上の側流取り出し部を設けてもよい。
上述した分割蒸留塔を用いることにより、従来の高沸蒸留塔と低沸蒸留塔の直接接続の場合(例えば、後述する図2の場合)と比べて、約30%のコスト削減および処理対象物質の滞留時間の短縮化を図ることができると共に、低熱負荷にて混合流体を分割蒸留する(粗イソプレンを含む留分から高沸点成分および低沸点成分を分離除去する)ことができる。
図1において、分割蒸留部20は、例えば、放散塔13の塔頂から留出した粗イソプレンを含む留分(X)を分割蒸留する分割蒸留塔21を備えている。
分割蒸留塔21は、例えば、抽出蒸留部10で得た留分(X)中に含まれている、1,4-ペンタジエン(沸点:26℃)、2-ブチン(沸点:27℃)、等の低沸点の不純物を含む留分(E)を塔頂より留出させ、ピペリレン(沸点:42℃)等の高沸点の不純物を含む留分(F)を塔底より缶出させ、イソプレン(沸点:34.1℃)が富化された留分(G)として高純度のイソプレンを塔中央領域より留出させる。
重合防止剤の具体例としては、特に制限はなく、例えば、4-ターシャリー・ブチルカテコール(TBC)、ジエチルヒドロキシアミン(DEHA)、などを用いることができる。
また、本発明のイソプレンの分離回収方法では、高純度のイソプレンを含む留分を更に抽出蒸留(第二抽出蒸留)することが好ましい。このように、高純度のイソプレンを含む留分を更に抽出蒸留(第二抽出蒸留)することで、更に高純度のイソプレンを含む留分を得ることができる。
ここで、抽出溶剤に易溶性物質であるシクロペンタジエンに関し、高純度のイソプレンを含む留分のシクロペンタジエン濃度を分割蒸留部で予め下げることにより、第二抽出蒸留で更に高純度のイソプレンを効率良く生成することができる。
図1において、第二抽出蒸留部30は、高純度のイソプレンを含む留分(G)を更に抽出蒸留(第二抽出蒸留)して、留分(A)と抽出液(B)とに分離する第二抽出蒸留塔15と、抽出液から溶剤を除去する放散塔16を備えている。
また、本発明のイソプレンの分離回収方法では、高純度のイソプレンを含む留分から、分割蒸留塔21での分割蒸留で用いた重合防止剤を除去する。このように、高純度のイソプレンを含む留分から、分割蒸留塔21での分割蒸留で用いた重合防止剤を除去することで、高純度のイソプレンに重合防止剤が含まれるのを防止することができる。具体的には、高純度のイソプレンに重合防止剤が含まれていると、高純度のイソプレンを重合しようとしても重合が阻害されてしまう。しかしながら、高純度のイソプレンを含む留分から、分割蒸留塔21での分割蒸留で用いた重合防止剤を除去すれば、高純度のイソプレンを重合しようした際に重合が阻害されてしまうことを防止することができる。
重合防止剤の除去方法としては、特に制限はなく、例えば、水を用いて高純度のイソプレンを含む留分を洗浄する方法、蒸留により分離する方法、などを用いることができる。
また、本発明のイソプレンの分離回収装置は、上述したイソプレンの分離回収方法を用いてイソプレンを分離回収する際に好適に用いることができるものである。そして、本発明のイソプレンの分離回収装置の一例は、例えば図1に示すような構成を有している。
図1において、抽出蒸留部10は、例えば、C5留分等のイソプレンを含む混合流体原料を供給するための供給口を有し、該供給口を介して供給された混合流体原料を抽出蒸留(第一抽出蒸留)して、留分(C)と抽出液(D)とに分離する第一抽出蒸留塔12とを備えている。
図1において、分割蒸留部20は、例えば、抽出液(D)から溶剤を除去して得た留分(X)(粗イソプレンを含む留分)を供給するための供給口を有し、該供給口を介して供給された留分(X)を分割蒸留(分割蒸留)する分割蒸留塔21を備えている。
分割蒸留塔21は、例えば、1,4-ペンタジエン、2-ブチン等の低沸点の不純物を含む留分(E)を塔頂より留出させ、ピペリレン等の高沸点の不純物を含む留分(F)を塔底より缶出させ、高純度のイソプレンを含む留分(G)を塔中央領域より留出させる。
図1において、第二抽出蒸留部30は、第二抽出蒸留部30は、高純度のイソプレンを含む留分(G)を更に抽出蒸留(第二抽出蒸留)して、留分(A)(更に高純度のイソプレンを含む留分)と抽出液(B)とに分離する第二抽出蒸留塔15と、抽出液から溶剤を除去する放散塔16とを備えている。
図1に示す分離回収装置100を用いてイソプレンの分離回収を行った。具体的には、炭化水素のスチームクラッキングあるいはその他の高温処理によりエチレンを製造する際に副生するC5留分よりなる混合流体からイソプレンを分離回収した。なお、C5留分よりなる混合流体中におけるイソプレン量は、20質量%であった。
また、混合流体(C5留分)、留分(C)、留分(E)、留分(F)、留分(G)の組成を、ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies社製、7890A)を用いて以下の条件で測定した。結果を表1に示す。
・ガスクロマトグラフ:Agilent(登録商標)7890A(アジレント社製)
・カラム:Agilent 19091P-S33、30.0m×250μm×5.00μm
・カラム温度:35℃×2.5分⇒5℃/分で昇温⇒100℃⇒10℃/分で昇温⇒180℃×10分
・インジェクション温度:200℃
・検出器温度:200℃
・キャリヤーガス:ヘリウム
・スプリット比:200/1
・検出器:FID
実施例1において、図1に示す分離回収装置100を用いる代わりに、図2に示す分離回収装置200を用いたこと以外は、実施例1と同様に、イソプレンの分離回収を行った。
なお、分離回収装置200は、図1における分割蒸留部20が、不純物除去部40に置換されていること以外は、同じである。
不純物除去部40は、留分(X)中に含まれている、イソプレンよりも低沸点の不純物を除去する低沸点物除去塔41と、イソプレンよりも高沸点の不純物を除去する高沸点物除去塔42とを備えている。
12 第一抽出蒸留塔
13 放散塔
15 第二抽出蒸留塔
16 放散塔
20 分割蒸留部
21 分割蒸留塔
30 第二抽出蒸留部
40 不純物除去部
41 低沸点物除去塔
42 高沸点物除去塔
100 分離回収装置
200 分離回収装置
Claims (12)
- イソプレンを含む混合流体からイソプレンを分離回収するイソプレンの分離回収方法であって、
前記混合流体を抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも低い不純物を含む留分と、粗イソプレンを含む留分とを得る抽出蒸留工程と、
前記粗イソプレンを含む留分を分割蒸留して、イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分(F)と、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分(E)と、高純度のイソプレンを含む留分(G)とを得る分割蒸留工程と、
前記混合流体が、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、1,4-ペンタジエン、2-ブチン、およびピペリレンからなる群より選択される少なくとも1種を更に含有し、
前記抽出蒸留工程における抽出溶剤がアミド化合物であり、
を含み、
前記分割蒸留工程における分割蒸留を分割蒸留塔で行い、
前記分割蒸留塔が、前記留分(E)を塔頂より留出させ、前記留分(F)を塔底より缶出させ、前記留分(G)を塔中央領域より留出させ、
前記分割蒸留塔が、長さ方向に配置された分割壁を内部に有し、
前記分割壁が、前記分割蒸留塔の内部を、前記分割壁の厚さ方向一方側のフィードセクションと、前記分割壁の厚さ方向他方側の除去セクションと、上側結合カラムセクションと、下側結合カラムセクションとに分割し、
前記フィードセクションの上側領域と下側領域との間の中央領域に、前記粗イソプレンを含む留分を供給するための供給口が配置される、イソプレンの分離回収方法。 - 前記アミド化合物がジメチルホルムアミドである、請求項1に記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記高純度のイソプレンを含む留分(G)を更に抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも高い不純物を含む留分と、更に高純度のイソプレンを含む留分とを得る第二抽出蒸留工程を更に含む、請求項1または2に記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記第二抽出蒸留工程における抽出溶剤がアミド化合物である、請求項3に記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記第二抽出蒸留工程における抽出溶剤として用いる前記アミド化合物がジメチルホルムアミドである、請求項4に記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分(E)のイソプレン濃度が5質量%以上90質量%以下である、請求項1~5の何れかに記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記分割蒸留工程において、前記粗イソプレンに対して1質量ppm以上100質量ppm以下の重合防止剤の存在下で分割蒸留を行う、請求項1~6の何れかに記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記分割蒸留塔の鉛直方向上側部から重合防止剤を供給する、請求項1~7の何れかに記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記高純度のイソプレンを含む留分(G)が気体である、請求項1~8の何れかに記載のイソプレンの分離回収方法。
- 前記高純度のイソプレンを含む留分(G)から重合防止剤を除去する工程を更に含む、請求項1~8の何れかに記載のイソプレンの分離回収方法。
- イソプレンを含む混合流体を供給するための供給口を有し、抽出溶剤としてアミド化合物を用いて前記混合流体を抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも低い不純物を含む留分と、粗イソプレンを含む留分とを得る抽出蒸留部と、
前記粗イソプレンを含む留分を供給するための供給口が設けられた分割蒸留塔を有し、前記粗イソプレンを含む留分を分割蒸留して、イソプレンよりも高沸点の不純物を含む留分(F)と、イソプレンよりも低沸点の不純物を含む留分(E)と、高純度のイソプレンを含む留分(G)とを得る分割蒸留部と、を備え、
前記混合流体が、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、1,4-ペンタジエン、2-ブチン、およびピペリレンからなる群より選択される少なくとも1種を更に含有し、
前記分割蒸留塔が、前記留分(E)を塔頂より留出させ、前記留分(F)を塔底より缶出させ、前記留分(G)を塔中央領域より留出させ、
前記分割蒸留塔が、長さ方向に配置された分割壁を内部に有し、
前記分割壁が、前記分割蒸留塔の内部を、前記分割壁の厚さ方向一方側のフィードセクションと、前記分割壁の厚さ方向他方側の除去セクションと、上側結合カラムセクションと、下側結合カラムセクションとに分割し、
前記フィードセクションの上側領域と下側領域との間の中央領域に、前記粗イソプレンを含む留分を供給するための供給口が配置される、イソプレンの分離回収装置。 - 前記高純度のイソプレンを含む留分を供給するための供給口を有し、前記高純度のイソプレンを含む留分を更に抽出蒸留して、該抽出蒸留に用いた抽出溶剤に対する溶解性がイソプレンよりも高い不純物を含む留分と、更に高純度のイソプレンを含む留分とを得る第二抽出蒸留部を更に備える、請求項11に記載のイソプレンの分離回収装置。
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