JP7212579B2 - ダイヤモンド被膜付き部材およびその製造方法ならびにダイヤモンド被膜の平滑化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高い表面平滑性を有するダイヤモンド被膜付き部材およびその製造方法ならびにダイヤモンド被膜の平滑化方法に関する。
気相合成法(CVD)で成膜された多結晶ダイヤモンド(PCD)被膜は表面粗さによる凹凸が大きく、ダイヤモンド被膜を表面に備えた部材と他の部材とが擦れる態様で使用される場合、ダイヤモンド被膜表面の凹部に異物が混入し、ダイヤモンド被膜が表面に存在する異物の機械的作用によって必然的に破壊される。従って、CVDで成膜された多結晶ダイヤモンド被膜の表面粗さを小さくする、つまり被膜を平滑化することは、このような破壊を防止する効果がある。このような平滑化は、例えば、メカニカルシールの固定リング、ウェハのメカノケミカル研磨装置(MCP)に応用され、長寿命化が期待できる。
メカニカルシールの固定リングに関する従来技術として特許文献1、ダイヤモンドの単結晶や薄膜の平滑化に関する従来技術として非特許文献2~6が挙げられる。
特許文献1には、メカニカルシールの2つの揺動面のうち、一方は炭化ケイ素(SiC)にダイヤモンド被膜を有する固定リング(1)、他方は炭素複合材料製の回転リング(2)であるメカニカルシール装置が開示されている。固定リング(1)の平均初期粗さ(Ra1)が回転リング(2)の平均初期粗さ(Ra2)より50%小さく、Ra1は0.01~0.06μmである事が述べられている。また、固定リング(1)のダイヤモンド被膜にはボロン(B)ドーパントを含み、導電性を有することが述べられている。
通常のメカニカルシール装置では、固定リングと回転リングの摺動運動で発生する非常に高い静電気が、放電破壊を起こすことが知られており(非特許文献1)、特許文献1に記載のメカニカルシール装置では、ダイヤモンド被膜に導電性を持たせることで固定リングの放電現象を防ぐことができ、長寿命化が期待される。メカニカルシールの流体が純水あるいは超純水の場合は、流体の抵抗値が高く、摺動運動により発生する正電荷が固定リングの放電破壊を防ぐのに非常に有効な手段であり、発電用循環水、半導体洗浄用循環水において高い効果が認められる。
しかしながら、メカニカルシールの流体が工業用排水、油性流体などの場合、流体中に多くの残渣、いわゆるスラッジ、金属残渣を含有しており、これらがダイヤモンド被膜上に張り付き、メカニカルシールの稼働開始から程なくトライボロジー的あるいは機械的破壊を起こすことから、ダイヤモンド被膜の更なる平滑化が求められている。
また、ダイヤモンドウェハに代表される単結晶ダイヤモンドの超平滑化加工に関してはいくつかの報告例がある。複数の単結晶ダイヤモンドを接合した10mm角程度のモザイクウェハの超平滑化関しても同様である。
非特許文献2では、ダイヤモンドの禁制帯幅(バンドギャップ)が5.47eVである事から、この等価波長より短い波長のUV(紫外線)をダイヤモンドの表面に照射し、ダイヤモンドの表面炭素をガス化することで平滑化する方法が開示されている。また、非特許文献3において、紫外線援用研磨による多結晶ダイヤモンドの超精密加工について開示されている。紫外線を援用したダイヤモンドの平滑化では、表面粗さ0.8nmRaと非常に高い平滑性が得られている。しかし、紫外線を援用した研磨方法では、砥石を用いた定圧研削法による前処理が必要である。また、定圧研削法による研磨速度は10μm/hと十分高いが、紫外線照射面積が1cm2程度と小さく、径が数十cm単位になるメカニカルシールの経済的な研磨には応用が難しい。
非特許文献4では、石英ガラス砥石を用い、プラズマ照射を援用した研磨法で、3mm×4mmの単結晶CVDダイヤモンドウェハに対し、400℃に加熱保持、プラズマを照射しながら8時間研磨した結果、平滑度の改善と表面粗さを0.349nm rmsから0.178nm rmsに低減できたことが報告されている。
上記方法もダイヤモンドの平滑化に優れた方法であるが、メカニカルシールへの経済的な研磨には適応が難しい。
その他、ダイヤモンド原石を研磨する場合には、スカイフと呼ばれる鋳鉄でできた円盤を高速で回転させ、ダイヤモンドパウダーを砥粒としてダイヤモンドの表面を削るスカイフ法が旧態の方式として知られているが、ダイヤモンド砥粒を使用するため、加工変質層の発生が避けられない。
非特許文献5および非特許文献6によれば、高濃度ボロンがドーピングされたダイヤモンド(BDD,Boron-doped Diamond)被膜電極が酢酸(CH3COOH)溶液中での電気分解により正電荷を印加された場合、低濃度ボロンドーピングされたダイヤモンド電極に比べて電解腐食を呈することが述べられている。本発明における腐食の意味については後述する。
電気分解によるダイヤモンド被膜の腐食は、酢酸水溶液(CH3COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)中で観察されたが、他の有機物、例えばギ酸(HCOOH)、グルコース、メタノールなどでは観察されなかった。
また、電気分解した後、酢酸溶液中では、メチルラジカル(CH3)の生成が検出された。これは電気分解により生成したOHラジカルが酢酸と反応し、CH3ラジカルが生成すると考えられる。CH3ラジカルがBDD表面に存在しているC-OH官能基と反応し、ダイヤモンド被膜の表面に存在する混成軌道sp3結合を有する炭素を、混成軌道sp2結合を有する炭素に構造変化することが、非特許文献5で述べられており、本発明ではこの現象を腐食という。
特許第6,046,858号公報
Kazuo Murakami, Yasuhiro Dosho, Kensuke Uemura and Hiroshi Kimura, Concrete Demolition and Surface Scraping using High Voltage Pulse Discharge, Journal of Advanced Concrete Technology, volume 16 (2018) pp 358-367 坂本武司、紫外線を用いた先進的研磨法の実用化に関する研究、熊本大学学術リポジトリ、2014-03-25 中野貴之、三好 瑛、峠 睦、渡邉純二、紫外線援用研磨によるPCDの超精密加工、砥粒加工学会誌 vol.53 No.4 2008 APR. 242-247 道上久也、田畑雄壮、遠藤勝義、山村和也、山田英明、茶谷原昭義、杢野由明、大気圧プラズマプロセスをベースとした単結晶CVDダイヤモンドウェハの平滑化・平滑化、第22回「精密工学会 学生会員卒業研究発表講演会論文集」2015 P11 pp89-90 Takeshi Kashiwada, Takeshi Watanabe, Yusuke Ootani, Yoshitaka Tateyama, and Yasuaki Einaga, A Study on Electrolytic Corrosion of Boron-Doped Diamond Electrodes when Decomposing organic Compounds, ACS APPLIED MATERIALS & INERFACES, 2016,8,28299-28305 Brian P. Chaplin, David K. Hubler, James Farrell, Understanding anodic wear at boron doped diamond film electrodes, Electrochimica Acta 89 (2013) 122- 131.
前述のような非特許文献2~4に開示されている技術では、平滑化されたダイヤモンド被膜を機械部品等に適用するには多大なコストと時間が必要であった。本発明者が鋭意検討したところ、BDD表面に存在する混成軌道sp2結合の炭素原子を機械的擦過により、前述した従来手法より速い速度でダイヤモンド被膜の平滑化が実現することに至った。
本発明は、平滑化速度が速く、高い表面平滑性を有するダイヤモンド被膜を備える部材およびその製造方法ならびにダイヤモンド被膜の平滑化方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記のような課題を解決するため鋭意検討し、本発明に至った。
本発明は以下の(1)~(9)である。
(1)OHラジカルおよびCH3ラジカルが生成する酸性溶液中においてダイヤモンド被膜を表面に備えた部材の被膜表面を陽極として電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることで、前記ダイヤモンド被膜の表面粗さを低減させる工程を備える、ダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(2)前記擦過運動を加えた後の前記ダイヤモンド被膜の最表面に混成軌道sp2結合を有する炭素原子が残存している、上記(1)に記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(3)前記ダイヤモンド被膜はボロンがドープされ、そのボロン濃度が0.5mass%以上である、上記(1)または(2)に記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(4)前記ダイヤモンド被膜の電気抵抗値が5Ω以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(5)前記ダイヤモンド被膜はCVD法により形成された多結晶のダイヤモンド被膜である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(6)前記部材がSiCである、上記(1)~(5)のいずれかに記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法によって得られ、機械部品として用いることができる、ダイヤモンド被膜付き部材。
(8)OHラジカルおよびCH3ラジカルが生成する酸性溶液中においてダイヤモンド被膜表面を陽極として電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることを特徴とするダイヤモンド被膜の平滑化方法。
本発明によれば、平滑化速度が速く、高い表面平滑性を有するダイヤモンド被膜を備える部材およびその製造方法ならびにダイヤモンド被膜の平滑化方法を提供することができる。
実施例1の実験装置を示す概略図である。 実施例1で得られたダイヤモンド被膜表面のSEMを用いた観察結果を示す図である。 実施例1で得られたダイヤモンド被膜表面のレーザ顕微鏡を用いた観察結果を示す図である。 実施例1、比較例1、比較例2で得られたダイヤモンド被膜表面のSEMを用いた観察結果を処理前のものと比較した図である。
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、OHラジカルおよびCH3ラジカルが生成する酸性溶液中においてダイヤモンド被膜を表面に備えた部材の被膜表面を陽極として電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることで、前記ダイヤモンド被膜の表面粗さを低減させる工程を備える、ダイヤモンド被膜付き部材の製造方法である。
混成軌道sp2炭素原子の結合形態で典型例としてのグラファイトは、機械的擦過すると除去しやすい。本発明の製造方法では、ダイヤモンドを構成するsp3構造をsp2構造に変化(グラファイト化)させながら擦過する。この結果、比較的短時間の処理にもかかわらず、その表面粗度は極めて低くなり、具体的には例えば2nmRaまで平滑化させることができる。
本発明の製造方法では、初めに、例えば、従来公知のCVDで成膜されたダイヤモンド(PCD)被膜を備える部材を用意する。
このダイヤモンド被膜の表面粗度は、例えば0.1~0.3μmRa程度、より具体的には0.2μmRa程度であってよい。また、SiC基板にPCDを成膜した場合、SiC基板の表面粗さが反映され、部分的な突起(高さ7~10μm、直径2~5μm)が形成されている。
ダイヤモンド被膜はボロンがドープされていることが好ましい。さらに、そのボロン濃度が0.5mass%以上であることが好ましく、1.0mass%以上であることがより好ましい。ここでダイヤモンド被膜中のボロン濃度の上限値は特に限定されないが、例えば1mass%であってよい。
ダイヤモンド被膜は、その電気抵抗値が5Ω以下であることが好ましい。
ダイヤモンド被膜へボロンを0.5mass%以上ドープすると、ダイヤモンド被膜の電気抵抗値は1~4Ω程度になり得る。電気抵抗値が低いため、擦過運動を加えても、発生し得る静電気による放電破壊を起こし難くなるので好ましい。
上記のようなダイヤモンド被膜を有する部材を、特定の酸性溶液に浸漬し、電界を掛ける。
ここで酸性溶液は、電界を掛けることでOHラジカルおよびCH3ラジカルを生成させるものであり、具体的には、酢酸、プロピオン酸が挙げられる。
このような酸性溶液に電界を掛けることで生成されたOHラジカルが、酸性溶液中の酸(例えば酢酸(CH3COOH)やプロピオン酸(C25COOH))と反応し、中間体(例えばCH3COOラジカル)を生成し、これが分解してCH3ラジカルが生成すると考えられる。そして、このCH3ラジカルが、ダイヤモンド被膜の最表面に存する炭素原子が備える水酸基(OH基)と反応すると考えらえる。その結果、ダイヤモンド被膜の表面の混成軌道sp3結合を有する炭素原子が混成軌道sp2結合を有する炭素原子に変化すると考えられる。
本発明の製造方法では、上記のような特定の酸性溶液中においてダイヤモンド被膜が付いた部材を電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加える。
ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることで、上述の電界を掛けることによってダイヤモンド被膜の最表面に生成した混成軌道sp2結合を有する炭素原子を除去することができる。ただし、混成軌道sp2結合を有する炭素原子からなる部分が若干残存して良い。
本発明において、質量体は重しを含む荷重を印加するための手段であり、目的の荷重を加えることができさえすればよく、その質量は特に限定されない。前記酸性溶液に溶解しない質量体として、例えばアルミナ、石英などの耐酸性セラミック等からなり、球状、円筒状等からなる質量体を用いることができる。
酸性溶液中においてダイヤモンド被膜が付いた部材を電界を掛けながら、このような質量体をダイヤモンド被膜の表面へ荷重をかけるように押しつけながら、擦過運動を加える。
ここでダイヤモンド被膜の表面へ加える荷重は0.5kg/mm2以上であることが好ましい。荷重の上限は特に限定されないが、例えば、5kg/mm2程度であってもよい。
そして、ダイヤモンド被膜の表面に存在する混成軌道sp2結合を有する炭素原子の少なくとも一部を分離する。
そうすると、ダイヤモンド被膜の表面粗度は極めて低くなり、具体的には例えば2nmRaまで平滑化させることができる。
なお、ダイヤモンド被膜の表面へ加える擦過運動は、ダイヤモンド被膜の表面へ質量体を押し付けて擦る運動であってよく、回転運動等であってもよい。
このような本発明の製造方法によって得られる被膜付き部材は、機械部品として用いることができる。具体的にはメカニカルシールや半導体ウェハのメカノケミカル研磨装置(MCP)筺体として利用することができる。
本発明の製造方法によってダイヤモンド被膜の表面粗度が大きく改善し平滑化されるので、得られる被膜付き部材をメカニカルシールとして利用する場合、純水、超純水の域を超え、残渣を含む流体に適用した場合、残渣がダイヤモンド表面の粗さの凹凸に噛みこんで機械的にメカニカルシールの摺動リングを破壊する危険性は低い。また、適応流体がシール材の冷却媒体として用いられる場合、表面粗度仕上げに凹凸を意図して作成し、冷却媒体の侵入、微量の吐露も製作可能となる。
<実施例1>
図1に示す装置を準備し、以下に示す実験を行った。
アクリル容器に95%硫酸(H2SO4) 6mlと、穀物酢(CH3COOHを5%程度含む) 27mlで満たした。そして、ここへCVD法によりSiC基板(25mm×25mm×3mm)にボロンを0.5mass%ドーピングした多結晶ダイヤモンドを8μm被膜した試料(電気抵抗値4Ω)を沈め、おおむねその主面が水平方向となるようにした。
次に、図1に示すようにSiC基板を正極とし、板厚0.5mmの純チタン(Ti)板を負極として、両極間に9~10Vの電位を掛けた。
そして、ダイヤモンド被膜の上に9.5mm径のアルミナ(Al23)球(京セラ製)を配置し、このアルミナ球へ、おおむね鉛直方向の上から下へ6kgの荷重を掛けることでダイヤモンド被膜へアルミナ球を押し付けながら、このアルミナ球を水平方向へ往復運動させることで、ダイヤモンド被膜の表面を擦過した。
このような処理を10分間行った後のダイヤモンド被膜表面のSEM像を図2に示す。色が薄い領域は、ダイヤモンド被膜の最表面に混成軌道sp2結合を有する炭素原子が残存している領域であり、平滑性が高いことがわかる。この領域について、レーザ顕微鏡(Olympus, OLS4100)で観察した(解析パラメータ:線粗さカットオフλc=8μm)。観察結果を図3(b)に示す。なお、図3(a)は処理前のダイヤモンド被膜表面をレーザ顕微鏡(Olympus, OLS4100)で観察した結果を示している。
図3(a)に示した処理前のダイヤモンド被膜の表面粗さ(Ra)は0.230μmRaであった。また、図3(b)に示した処理後のダイヤモンド被膜の表面粗さ(Ra)は0.002μmRaであった。
<実施例2>
実施例1と同様のダイヤモンド被膜を表面に形成したメカニカルシールの固定リングについて、実施例1と同様の処理を施した。
そして、予め用意したグラファイトから作られた回転リングと、処理後の固定リングとからメカニカルシールを構成し、砂れき残渣を含む市水流体についての適用可能性を調査した。その結果、このメカニカルシールは市水流体への適用が可能であることを確認した。
<実施例3>
半導体ウェハのメカノケミカル研磨装置(MCP)筺体に、実施例1の場合と同様のダイヤモンド被膜を形成した。その結果、微粒研磨剤の筺体における残渣は水洗洗浄だけで取り除くことができ、再使用が可能となった。
<比較例1>
紫外線を援用したPCD研磨方法を試した。具体的に説明する。
初めに、実施例1と同様に、SiC基板(25mm×25mm×3mm)にボロンを0.5mass%ドーピングした多結晶ダイヤモンドを8μm被膜した試料を用意した。また、光触媒としてTiO2(アナターゼ、粒径φ5μm)を用意し、これを純水10mlに0.5g加えてコロイドを作成した。
そして、SiC基板の表面の多結晶ダイヤモンドへ紫外線を照射しながら、紫外線が照射されている多結晶ダイヤモンドの表面へ、上記のTiO2のコロイドを5~10分ごとに2mlずつ、ピペットを用いて滴下した。
ダイヤモンド被膜の上に側面が接するように石英ガラス円柱(φ25mm、幅t=10mm)を配置し、上から下へ向けて1kgの荷重を掛けながら石英ガラス円柱を転がすように往復運動させることで、ダイヤモンド被膜の表面を擦過した。しかし、図4(c)に示すように、このような処理を1時間行っても、PCD表面粗さの変化はなかった。なお、図4(a)は処理前の観察結果を示している。
<比較例2>
UV-フェントン反応によりOHラジカルを生成させ、PCD研磨方法を行った。具体的に説明する。
初めに、実施例1と同様に、SiC基板(25mm×25mm×3mm)にボロンを0.5mass%ドーピングした多結晶ダイヤモンドを8μm被膜した試料を用意した。また、フェントン反応には、NiSO4 2g(またはFeSO4 2.12g)を95% H2SO4 2mlと純水5ml中に溶かして得た溶液を用いた。
そして、SiC基板の表面の多結晶ダイヤモンドへ紫外線を照射しながら、紫外線が照射されている多結晶ダイヤモンドの表面へ、上記のNiSO4およびH2SO4を含む溶液を5~10分ごとに2mlずつ、ピペットを用いて滴下しつつ、30%H22もピペットで滴下して、ダイヤモンド被膜上でフェントン反応を生じさせた。
ダイヤモンド被膜の上に側面が接するように石英ガラス円柱(φ25mm、幅t=10mm)を配置し、上から下へ向けて2.4kgの荷重を掛けながら石英ガラス円柱を転がすように往復運動させることで、ダイヤモンド被膜の表面を擦過した。
このような処理を1時間行った後のダイヤモンド被膜表面を観察した結果を図4(d)に示す。
図4(d)に示すように、ダイヤモンド被膜の表面にある突起部が削られたにすぎなかった。
例えば、残渣を含む流体に使用されるメカニカルシールのダイヤモンド被膜の表面粗度の低減化、ダイヤモンド被膜を有する半導体ウェハ研磨装置における同被膜の表面粗度低減化が可能となる。

Claims (6)

  1. OHラジカルおよびCH3ラジカルが生成する酸性溶液中において、ボロン濃度が0.5mass%以上となるようにボロンがドープされたダイヤモンド被膜を表面に備えた部材の被膜表面を陽極として電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることで、前記ダイヤモンド被膜の表面粗さを低減させる工程を備える、ダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
  2. 前記擦過運動を加えた後の前記ダイヤモンド被膜の最表面に混成軌道sp2結合を有する炭素原子が残存している、請求項1に記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
  3. 前記ダイヤモンド被膜はCVD法により形成された多結晶のダイヤモンド被膜である、請求項1または2に記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
  4. 前記部材がSiCである、請求項1~のいずれかに記載のダイヤモンド被膜付き部材の製造方法。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の製造方法によって得られ、機械部品として用いることができる、ダイヤモンド被膜付き部材。
  6. OHラジカルおよびCH3ラジカルが生成する酸性溶液中において、ボロン濃度が0.5mass%以上となるようにボロンがドープされたダイヤモンド被膜表面を陽極として電界を掛けながら、前記酸性溶液に溶解しない質量体を用いて前記ダイヤモンド被膜の表面へ擦過運動を加えることを特徴とするダイヤモンド被膜の平滑化方法。
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