JP7208147B2 - リチウムバナジウム酸化物結晶体、電極材料及び蓄電デバイス - Google Patents

リチウムバナジウム酸化物結晶体、電極材料及び蓄電デバイス Download PDF

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Description

本発明は、リチウムバナジウム酸化物結晶体、このリチウムバナジウム酸化物結晶体を含む電極材料、及びこの電極材料を正極又は負極に用いた蓄電デバイスに関する。
化学式LiVOのバナジン酸リチウムに代表されるリチウムバナジウム酸化物の結晶体は、充放電電位(vs Li/Li+)がチタン酸リチウム(LiTi12)及びB型酸化チタン(TiO(B))よりも低い。そのため、リチウムバナジウム酸化物結晶体を蓄電デバイスの負極材料として用いると、その蓄電デバイスは高エネルギー密度を達成する。一方、このリチウムバナジウム酸化物結晶体は、充放電電位(vs Li/Li+)がグラファイトよりも高い。そのため、リチウムバナジウム酸化物結晶体を蓄電デバイスの負極材料として用いると、その蓄電デバイスは高い安全性が期待できる。
更に、リチウムバナジウム酸化物結晶体を負極材料として用いたキャパシタの理論容量は、チタン酸リチウムと比べると2倍以上であるとの報告がある。サイクル特性においても、リチウムバナジウム酸化物結晶体を負極材料として用いたキャパシタは、高い容量維持率及び高い充放電効率を維持するものである。
そのため、このリチウムバナジウム酸化物結晶体は、正極及び負極にそれぞれ金属化合物粒子を用いたリチウムイオン二次電池や、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを可逆的に吸着/脱着可能な材料を用いたハイブリッドキャパシタなどの蓄電デバイスの用途が想定され、研究が続けられている。
リチウムバナジウム酸化物結晶体のうち、バナジン酸リチウムの従来知られている結晶構造を図1に示す。図1は、従来のバナジン酸リチウム結晶体を粉末X線回折で分析した結果を示すシミュレーション上のグラフである。図1に示すように、従来のバナジン酸リチウム結晶体をX線回折にて分析すると、入射角2θが32.2度の付近(±0.7度)にブラッグピークが現れる。このブラッグピークは、バナジン酸リチウムの結晶構造には、020面に2.72Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の配列規則があることを示している。
また32.2度付近のブラッグピークよりも低角の範囲にも5本のブラッグピークが現れる。5本のブラッグピークは、25度から30度の範囲に1本、20度から25度の範囲に3本、15度から20度の範囲に1本現われる。角度の大きいほうから順番に、111面、011面、101面、110面及び010面に3.17Å、3.66Å、3.90Å、4.13Å及び5.45Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の配列規則の存在を示している。
この5本のブラッグピークが示すLiO配位構造とVO配位構造による長距離な範囲での配列の繰り返しパターンを長距離秩序というと、即ち、従来のバナジン酸リチウム結晶体は、入射角2θが32.2度付近よりも低角の範囲に5種類の長距離秩序を有するものである。また、V5+の配位構造は四面体配位である。
特開2008-77847号公報
図2は、このバナジン酸リチウム結晶体をカーボンと複合化させ、その複合体を活物質として負極材料に用いたキャパシタの充放電特性を示すグラフである。横軸は容量を示し、縦軸は充放電電位(vs Li/Li+)を示している。図2に示すように、このバナジン酸リチウム結晶体を用いたキャパシタは、充放電ヒステリシスが約0.4~0.5Vと大きく、充放電によるエネルギー損失が大きいという問題がある。
また、図3は、このバナジン酸リチウム結晶体をカーボンと複合化させ、その複合体を負極材料に用いたキャパシタのリチウムイオン拡散係数を示すグラフである。図3に示すように、容量の増加に伴って拡散係数が急激に落ち込む範囲があるという問題がある。このように、リチウムバナジウム酸化物には、電気化学的特性において改善すべき点が多々ある。
そこで、本発明の目的は、更に良好な電気化学的特性を達成することができるリチウムバナジウム酸化物結晶体及びその用途を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係るリチウムバナジウム酸化物結晶体は、カチオンがディスオーダー化された結晶構造を有すること、を特徴とする。
このリチウムバナジウム酸化物結晶体は、化学式LiVOで表されるバナジン酸リチウムであってもよい。
このリチウムバナジウム酸化物結晶体につき、X線回折の結果で表される結晶構造は、入射角2θが32.2度付近にピークが現れ、更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にはピークが無いか、またはピークがあっても、当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てピークの回折強度は当該32.2度付近のピークの回折強度よりも小さいこと、を特徴とする。
前記32.2度付近のピークよりも低角の範囲に現われるピークの回折強度は、前記32.2度付近のピークの回折強度を100とすると50以下であるようにしてもよい。
LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、前記32.2度付近のピークよりも低角の範囲の長距離秩序の全て又は一部が崩れてランダムになっているようにしてもよい。
また、LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、少なくとも一部のVO配位構造がリチウムイオンの挿入及び離脱に関わらず、八面体配位を維持しているようにしてもよい。
また、LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、少なくとも一部のVO配位構造がリチウムイオンの挿入及び離脱に応じて、八面体配位と六面体配位を採るようにしてもよい。
また、このリチウムバナジウム酸化物結晶体含む電極材料も本発明の一態様である。
この電極材料は、前記リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとが複合化されて成る複合体粒子を有し、前記複合体粒子のX線回折の結果で表される結晶構造は、入射角2θが32.2度付近にピークが現れ、更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にはピークが無いか、またはピークがあっても、当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てピークの回折強度は当該32.2度付近のピークの回折強度よりも小さく、更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にブロードなハローパターンが現われているようにしてもよい。
また、この電極材料を正極又は負極に用いた蓄電デバイスも本発明の一態様である。
本発明のリチウムバナジウム酸化物結晶体は、高エネルギー密度、高い安全性、高い容量維持率、及び高い充放電効率に加え、リチウムイオン拡散係数が飛躍的に向上し、充放電ヒステリシス及びレート特性の点においても良好な電気化学的特性を達成することができる。
従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体を粉末X線回折分析した結果を示すシミュレーション上のグラフである。 従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体を用いたキャパシタの充放電特性を示すグラフである。 従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体を用いたキャパシタのリチウムイオン拡散係数を示すグラフである。 本リチウムバナジウム酸化物結晶体を粉末X線回折で分析した結果を示すシミュレーション上のグラフである。 本リチウムバナジウム酸化物結晶体に係り、リチウムイオン挿脱時のVO配位構造の第1の推定を示す模式図である。 本リチウムバナジウム酸化物結晶体に係り、リチウムイオン挿脱時のVO配位構造の第2の推定を示す模式図である。 カーボンと本リチウムバナジウム酸化物結晶体との混合体を粉末X線回折で分析した結果を示すグラフである。 本リチウムバナジウム酸化物結晶体への変化メカニズムの第1の推定を示す模式図である。 本リチウムバナジウム酸化物結晶体への変化メカニズムの第2の推定を示す模式図である。 実施例の中間体の製造工程を示すフローチャートである。 実施例の中間体を製造するための反応器の例である。 実施例の中間体のHRTEM像(×30k)である。 領域1において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 領域2において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 領域3において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 実施例の中間体に対するCC-CV処理のプロファイルを示すグラフである。 CC-CV処理前の中間体を粉末X線回折により分析した結果を示すグラフである。 CC-CV処理後の最終生成物を粉末X線回折により分析した結果を示すグラフである。 CC-CV処理中に粉末X線回折により分析した結果の遷移を示す模式図である。 カーボンとカチオンオーダーの中間体との複合体及びカーボンとカチオンディスオーダーの本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体のリチウム拡散係数を示すグラフである。 カーボンとカチオンオーダーの中間体との複合体を用いたハーフセルの充放電ヒステリシスを示すグラフである。 カーボンとカチオンディスオーダーの本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体を用いたハーフセルの充放電ヒステリシスを示すグラフである。 カーボンとカチオンオーダーの中間体との複合体及びカーボンとカチオンディスオーダーの本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体を用いた各ハーフセルの充電時のレート特性を示すグラフである。 カーボンとカチオンオーダーの中間体との複合体及びカーボンとカチオンディスオーダーの本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体を用いた各ハーフセルの放電時のレート特性を示すグラフである。
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
(産業上の利用可能性)
まず、本発明のリチウムバナジウム酸化物結晶体(以下、本リチウムバナジウム酸化物結晶体という)は、リチウムイオンが可逆的に挿入及び脱離可能な材料である。本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、例えば蓄電デバイスの電極材料としての用途に好適である。蓄電デバイスとしてはリチウムイオン二次電池やハイブリッドキャパシタが挙げられる。
リチウムイオン二次電池において、正極はリチウム金属化合物を含む活物質層を有し、負極は本リチウムバナジウム酸化物結晶体を含む活物質層を有し、正極及び負極はリチウムイオンが可逆的に挿入及び脱離されるファラデー反応電極となる。ハイブリッドキャパシタにおいて、正極は例えば活性炭を有する分極性電極であり、活性炭と電解質との境界面に形成される電気二重層の蓄電作用を利用し、負極は本リチウムバナジウム酸化物結晶体を含む活物質層を有し、リチウムイオンが可逆的に挿入及び脱離されるファラデー反応電極である。
(本リチウムバナジウム酸化物結晶体構造)
本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、図4に示すX線回折結果をもたらす結晶構造を有する。図4は、本リチウムバナジウム酸化物結晶体をシミュレーションに基づく粉末X線回折で分析した結果を示すグラフである。図4に示すように、従来(図1参照)と比べて、入射角2θが32.2度付近に鋭敏なピークが現れる点は同じである。尚、32.2度付近とは32.2±0.7度をいう。
しかし、この32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てのピークは、32.2度付近のピークよりも回折強度が小さくなっている。好ましくは、図4に示すように、この32.2度付近のピークよりも低角の範囲にピークが消失している。換言すると、32.2度付近のピークよりも回折強度が高いピークは、32.2度付近よりも低角の範囲には存在しない。一方、入射角2θが32.2度付近以上のピークは存続している。
このX線回折の結果により推測される本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、カチオンがディスオーダー化されたカチオンディスオーダー構造を有するものである。即ち、本リチウムバナジウム酸化物結晶体の構造は次の2通りである。尚、本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、この2通りの一方のみの構造を有していても、又は2通りの両方が混在していてもよい。
まず、第1の構造として、図5Aに示すように、リチウムイオンの挿入時、バナジウム酸の配位構造は、酸化数が3+のバナジウムイオンを格子中心としたVOによる八面体構造を有する。また、リチウムイオンの脱離時であっても、バナジウム酸の配位構造は、酸化数5+のVOによる八面体構造を維持する。酸化数5+のVOによる八面体構造では、バナジウムイオンが結晶格子中心から外れた位置に据えられている。リチウムイオンが脱離しているときに四面体構造に戻るVO配位構造が一部に残っていてもよい。更に、リチウムイオンを中心とするLiO配位構造も八面体構造を有している。
次に、第2の構造として、図5Bに示すように、リチウムイオンの挿入時、バナジウム酸の配位構造は、酸化数が3+のバナジウムイオンを格子中心としたVOによる八面体構造を有する。このリチウム挿入時の構造は第1の構造と変わりはない。一方、リチウムイオンの脱離時には、バナジウム酸の配位構造は、酸化数5+のVOによる六面体構造となる場合がある。酸化数5+のVOによる六面体構造では、バナジウムイオンが結晶格子中心に据えられている。リチウムイオンが脱離しているときに四面体構造に戻るVO配位構造が一部に残っていてもよい。更に、リチウムイオンを中心とするLiO配位構造も六面体構造を有している。
そして、2通りの構造の両方が混在するとは、即ちリチウムイオンの挿入時のバナジウム酸の配位構造は、酸化数が3+のバナジウムイオンを格子中心としたVOによる八面体構造を有するが、リチウムイオンの脱離時には、一部のバナジウム酸の配位構造は、酸化数5+のVOによる八面体構造を維持し、バナジウムイオンが結晶格子中心から外れた位置に据えられる一方、他の一部のバナジウム酸の配位構造は、酸化数5+のVOによる六面体構造に変化し、バナジウムイオンが結晶格子中心に据えられているものであり、またリチウムイオンを中心とするLiO配位構造は六面体構造を有しているものである。
2通りの構造とも、VO配位構造とLiO配位構造の配列は、32.2度付近のピークよりも低角の範囲に現れる各種長距離秩序の全て又は一部が崩れてランダムになっている。換言すると、32.2度付近のピークよりも低角の範囲に現われる距離でのVO配位構造とLiO配位構造の配列の規則性が失われているか、規則性に従う割合が少なくなっている。
より具体的には、本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、020面に2.72Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の配列規則(以下、基準秩序という)がある。一方、111面、011面、101面、110面及び010面に3.17Å、3.66Å、3.90Å、4.13Å及び5.45Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の配列規則(以下、長距離秩序という)を保つ割合が、基準秩序よりも小さくなっているか、または長距離秩序は無くなっている。
このような本リチウムバナジウム酸化物結晶体としては、化学式LiVOで表されるバナジン酸リチウム結晶体が挙げられる。リチウムイオンの挿入時には組成式Li3+xVOとなる。xは挿入されたリチウムイオンである。本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、10nm以上50nm以下のナノ粒子であることが望ましく、更に好ましくは10nm以上30nm以下であり、微細な粒子群が粒状に固まり、内部に多数の空隙を有する造粒体である。
また、このバナジン酸リチウム結晶体はカーボンと複合化された複合体であることが好ましい。カーボンは、導電性を有するものであれば特に限定なく使用可能であり。例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、気相法炭素繊維等を挙げることができる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の何れでもよい。
カーボンと本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体は、図6に示すX線回折結果をもたらす。図6は、カーボンと本リチウムバナジウム酸化物結晶体との複合体をシミュレーションに基づく粉末X線回折で分析した結果を示すグラフである。図6に示すように、従来(図2参照)と比べて、入射角2θが32.2度付近にピークが現れる点は同じである。
また、この32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てのピークは、32.2度付近のピークよりも回折強度が小さくなっている。好ましくは、図6に示すように、この32.2度付近のピークよりも低角の範囲にピークが消失している。但し、32.2度付近のピークよりも低角の範囲には、例えばカーボンがマルチウォールカーボンナノチューブであるとブロードなハローパターンが現われる。即ち、なだらかな山が低角の広範囲に亘って拡がっている。
このような本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、LiO配位構造とVO配位構造の長距離の配列規則性が既に乱れているので、リチウムイオンの挿入前後及び脱離前後で、LiO配位構造とVO配位構造の長距離の配列が様変わりすることはなく、そのため、リチウムイオンの挿入及び脱離に要するエネルギーは少なくて済む。事実、本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、リチウムイオンの拡散係数が向上する。そのため、充放電ヒステリシス及びレート特性が向上する。また、カーボンとの複合化によって電気導電性が向上し、リチウムイオンの拡散係数向上と相俟ってレート特性が更に向上する。
(本リチウムバナジウム酸化物結晶体の製法)
長距離秩序を有し、リチウムイオンの脱離時にはVOが四面体配位構造を有する従来のバナジン酸リチウム結晶体(以下、中間体という)に対し、CC-CV(Constant Current Constant Voltage)処理を行うことにより、本リチウムバナジウム酸化物結晶体は得られる。中間体は、リチウム源とバナジウム源の混合工程と熱処理工程を経て得られる。カーボンとの複合体を生成する場合には、中間体の作製過程内の混合工程で更にカーボン源を添加すればよい。
以下、カーボンと複合化された本リチウムバナジウム酸化物結晶体を例に製造方法を詳細に説明する。尚、カーボンとの複合化が不要である場合、生成工程においてカーボン源を含めなければよい。
(中間体の作製)
まず、中間体の製造方法について説明する。中間体は、混合工程、分散工程、ポリマー鎖形成工程、除去工程及び結晶化工程を経る。混合工程では、バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源、導電性炭素材料、錯体配位子、および重合剤とが混合された混合溶媒を作製する。分散工程では、炭素材料の表面に金属粒子源を付着させ、バナジン酸リチウムの前駆体を生成する。ポリマー鎖形成工程では、炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成する。除去工程では、ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する。結晶工程では、バナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと炭素材料の複合材料を得る。
具体的に、混合工程では、バナジウム源、リチウム源、カーボン源、錯体配位子、及び重合剤を溶媒に添加し、混合溶液を作製する。バナジウム源は、金属バナジウムとバナジウム含有化合物を含む。溶媒に添加する材料の組成比は、例えばバナジウム源とリチウム源を合わせた金属粒子源を10~20mol%とし、錯体配位子10~20mol%、重合剤40~80mol%とすることができる。また、金属粒子源とカーボン源の重量比は、80:20~60:40とすると良い。バナジウム源とリチウム源は、本バナジン酸結晶体の化学量論比に従えばよく、例えばLiVOの場合、モル比でLi:V=3:1となるように混合すればよい。バナジウム源とリチウム源を合わせた金属粒子源とカーボン源の重量比は、これに限定されないが80:20~60:40とするとよい。
バナジウム含有化合物としては、メタバナジン酸塩(NHVO、NaVO3、KVO等)、酸化バナジウム(V、V、V、V)、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(IV)オキシアセチルアセトナート、オキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、三塩化バナジウム、ポリバナジン酸塩等を用いることができる。リチウム源としては、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、乳酸リチウム等のリチウム含有化合物を用いることができる。
カーボン源は、カーボン(粉体)自体又は熱処理によってカーボンとなりうる材料を意味する。カーボン(粉体)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定なく使用することができる。熱処理によってカーボンとなり得る材料としては、後の熱処理工程においてカーボンに転化するものであり、多価アルコール(エチレングリコールなど)、ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなど)、糖類(グルコースなど)、アミノ酸(グルタミン酸など)などの有機物である。
錯体配位子としては、複数のカルボキシル基を有する有機化合物を用いる。例えば、トリカルボン酸のクエン酸を用いることが好ましい。他には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などのジカルボン酸を用いても良い。重合剤としては、複数のヒドロキシル基を有するアルコールを用いる。例えば、エチレングリコールを用いることが好ましい。他には、プロピレングリコールなどの他の2価のアルコール、またはグリセリンなどの3価のアルコールを用いても良い。溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない液であれば特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。
各材料が添加された水溶液を撹拌手段により混合することで、金属粒子源と錯体配位子により金属錯体が形成される。また、混合時において、一部の金属配位子のカルボキシル基と、一部の重合剤のヒドロキシル基との間でエステル化反応が起こり、ポリマー鎖が形成される。混合工程では、複数の水溶液を作製後、それらの溶液を混合することで上記の材料が添加された水溶液を得ても良い。例えば、金属粒子源と錯体配位子のみを水に添加して混合することで、金属錯体の形成を促すことができる。この水溶液を、例えばエチレングリコール水溶液と混合した後に、カーボン源を添加することもできる。撹拌手段は、マグネチックスターラー、電気モータ式撹拌機、エアモータ式撹拌機等を用いる。
分散工程では、カーボン源の表面に金属粒子源を付着させる。カーボン源の表面に金属粒子源を付着させる手法としては、メカノケミカル処理が挙げられる。メカノケミカル処理は、旋回する反応容器等を用いてずり応力や遠心力等の機械的エネルギーを与える処理である。メカノケミカル処理は、超遠心力処理(Ultra-Centrifugal force processing method:以下、UC処理という)等、ずり応力、遠心力、その他の機械的エネルギーを加えることができればよい。要するに、機械的エネルギーによって、カーボン源に金属粒子源を付着させ、カーボン源の表面上にリチウムバナジウム酸化物の前駆体を生成できればよい。メカノケミカル処理は、金属粒子源及びカーボン源の微細化と高分散化処理を兼ねることもできる。
UC処理は、旋回する反応器内で溶液にずり応力と遠心力を加える。反応器としては、特開2007-160151号公報の図1に記載されている、外筒と内筒の同心円筒からなり、旋回可能な内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器が好適に使用される。この反応器の内筒内部に反応物を投入し、内筒を旋回することによってその遠心力で内筒内部の反応物が内筒の貫通孔を通って外筒の内壁に移動する。この時反応物は内筒の遠心力によって外筒の内壁に衝突し、薄膜状となって内壁の上部へずり上がる。
この状態では反応物には内壁との間のずり応力と内筒からの遠心力の双方が同時に加わり、薄膜状の反応物に大きな機械的エネルギーが加わることになる。この機械的なエネルギーが反応に必要な化学エネルギー、いわゆる活性化エネルギーに転化するものと思われる。これにより、短時間で反応が進行する。機械的エネルギーの満足する付与のためには、1500N(kgms-2)以上の遠心力を発生させることが望ましい。好ましくは60000N(kgms-2)以上である。
メカノケミカル処理は、少なくとも2回の処理に分けて行うことができる。例えば、第1回目の処理では、バナジウム源とカーボン源とにずり応力と遠心力を加えて、カーボン源にバナジウム源を付着させる。そして、第2回目の処理では、リチウム源と、カーボン源の表面に付着されたバナジウム源とにずり応力と遠心力を加えて、カーボン源の表面上に形成されたバナジウムの基礎を基点にリチウムバナジウム酸化物の前駆体を生成することができる。以上のようなUC処理では、繊維状のカーボン源のバンドルが解れ、カーボン源が溶液中に分散する。また、混合溶液中の金属錯体が微粒子化され、カーボン源の表面に均一に分散して吸着される。
なお、分散方法としては、UC処理以外にも、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、および超音波処理などを用いることができる。ミキサーによる分散方法では、混合溶液に対して、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどにより、物理的な力を加え、混合溶液を撹拌する。カーボン源に対して外力を加えることで、凝集したカーボン源を細分化及び均一化し、バンドルを解すことができる。中でも粉砕力が得られる遊星ミル、振動ミル、ボールミルが好ましい。
ジェットミキシングによる分散方法では、筒状のチャンバの内壁の互いに対向する位置に一対のノズルを設ける混合溶液を、高圧ポンプにより加圧し、一対のノズルより噴射してチャンバ内で正面衝突させる。これにより、カーボン源のバンドルが粉砕され、分散及び均質化することができる。ジェットミキシングの条件としては、圧力は100MPa以上、濃度は5g/l未満が好ましい。
ポリマー鎖形成工程では、UC処理を施した混合溶液を加熱し、カーボン源上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成する。例えば、ろ過により不純物を除去した混合溶液に対し、真空中において80~150℃で乾燥を行う。乾燥時間は12~24時間とする。このポリマー鎖形成処理により、バナジン酸リチウムの前駆体に配位した錯体配位子のカルボン酸と、重合剤のヒドロキシル基のエステル化反応が進行する。また、重合剤のヒドロキシル基間において、重合(脱水縮合)が進行する。これらの反応により、多くのポリマー鎖が形成される。
ポリマー鎖は、バナジン酸リチウムの前駆体単体に形成される態様と、バナジン酸リチウムの前駆体間に形成される態様を含む。以上のようなポリマー鎖形成工程により、バナジン酸リチウムの前駆体間にポリマー鎖が形成され、バナジン酸リチウムの前駆体同士が結合し凝集体が形成されることが防止される。すなわち、微細なバナジン酸リチウムの前駆体が、カーボン源の表面に均一に分散される。
除去工程では、ポリマー鎖を形成したリチウムバナジウム酸化物の前駆体が付着したカーボン源を加熱し、ポリマー鎖を除去する。例えば、カーボン源に対し、大気雰囲気下において、300~320℃で加熱を行う。加熱時間は3~5時間とする。この加熱工程により、金属配位子と重合剤により形成されたポリマー鎖が熱分解し、除去される。したがって、カーボン源上には、微細な粒子であるリチウムバナジウム酸化物の前駆体のみが残される。
結晶化工程では、バナジン酸リチウムの前駆体の前駆体が付着したカーボン源を焼成し、バナジン酸リチウムとカーボンの複合材料を得る。焼成過程において、バナジン酸リチウムの前駆体が結晶化し、バナジン酸リチウムの金属粒子がカーボンに担持される。加熱条件は、例えば、窒素雰囲気下において、500~900℃で焼成を行う。焼成時間は0~5分とする。焼成過程では、室温から焼成温度まで急加熱することが好ましい。焼成時間0分とは、例えば3分かけて800℃まで昇温し、800℃に到達した時点で加熱を終了し自然冷却することを意味する。このような急加熱により、リチウムバナジウム酸化物の結晶化が促進され粒子成長することが防止される。すなわち、粒径の小さなナノ金属粒子が維持される。
また、急加熱は、酸素濃度が1000ppm程度の低酸素濃度の雰囲気下で行われることが好ましい。この条件で急加熱を行うと、カーボンの酸化が阻止される。以上のような焼成工程により、バナジン酸リチウムが結晶化され、ナノ粒子であるリチウムバナジウム酸化物がカーボンに担持された複合材料が得られる。
ここで、本リチウムバナジウム酸化物結晶体を得るためには、即ちカチオンディスオーダー構造へ効率良く変化させるためには、バナジン酸リチウムはナノ粒子であることが望ましい。ナノ粒子の大きさは、平均的には30nm以下の大きさを有し、最大でも50nm未満である。以上の中間体の製造方法によると、このナノ粒子の大きさの条件を容易に満たすことができる。
(CC-CV処理)
これにより得られた中間体に対してCC-CV処理を行うことによって本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体が得られる。CC-CV処理は、中間体を負極としたハーフセルを作製し、このハーフセルに定電流及び定電圧の印加する処理である。
ハーフセルの作用電極W.E.は、複合体をバインダーと混合及び混練した後、シート状に成形し、これを集電体に接合することで形成される。複合体とバインダーの混合液をドクターブレード法等によって集電体上に塗工し、乾燥することで電極を形成しても良い。また、電極材料を所定形状に成形し、集電体上に圧着することで電極を形成することもできる。
集電体としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、鋼、カーボン等の導電材料を使用することができる。特に、アルミニウムおよび銅を用いることが好ましい。高い熱伝導性と電子伝導性とを有しているからである。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状等の任意の形状を採用することができる。
バインダーとしては、例えばフッ素系ゴム、ジエン系ゴム、スチレン系ゴム等のゴム類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース、その他、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのバインダーは、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
ハーフセルの対極C.E.の活物質は、リチウムを放出できるリチウム含有の化合物であれば、リチウム金属であってもリチウム金属以外であってもよい。望ましくはリチウム金属である。この活物質を作用電極W.E.と同一又は異種のバインダーと混合及び混練した後、シート状に成形し、これを作用電極W.E.と同一又は異種の集電体に接合することで形成される。電解液は、特に限定はないが、例えば1.0M六フッ化リン酸リチウム(LiPF)/炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DEC)の混合液とすればよい。体積比率は例えばEC:DEC=1:1である。
CC-CV処理では、第1段階で定電流をハーフセルに流し続け、第2段階でハーフセルに電流を定電圧で流し続け、第3段階で再び定電流をハーフセルに流し続ける。第1段階での定電流は、20以上400mAg-1(gはLiVO当たり)が望ましく、第1段階での開始電圧は2.0以上3.5V以下が望ましい。第2段階への移行は、電圧が0.05以上0.5V以下の範囲に下がったタイミングが望ましい。アルミニウムを集電体として用いた場合は、0.4V以上0.5V以下がより望ましい。第2段階は一定時間持続させ、定電圧を4時間以上10時間以下の時間維持することが望ましい。このとき、定電圧中に流れる電流値が第1段階の10分の1以下となっていることがより望ましい。第3段階への移行は、第2段階の一定時間の終了時である。第3段階での定電流は、20以上400mAg-1(gはLiVO当たり)が望ましい。第3段階の終了タイミングは、第1段階での開始電圧に戻った時点が望ましい。
この第1段階では、リチウム挿入によるカチオンディスオーダー化の進行が起こる電圧まで変化させている。電流値が400mAg-1を超えると本リチウムバナジウム酸化物結晶体の劣化に繋がる。推測ではあるが、電圧降下が大きくなり、リチウムイオンの挿入反応が進まなくなり、第2段階で移行した時点で大電流が流れるためだと考えられる。一方、20mAg-1未満であるとCC-CV処理に長時間を要する。尚、電圧値は、ハーフセルを組んだ時の電圧が開始点となるが、必ずしもその電圧である必要はない。2.0以上3.5V以下は、ハーフセルの品質によって電圧がずれた場合のマージンである。
そして、第2段階でカチオンディスオーダー化が進展しているものと推測される。電圧値は、より低い方とカチオンディスオーダー化が進展する確実性が高まると考えられる。但し、電圧値が0.05V未満であると、リチウム金属が析出してしまう。一方、0.5Vを超えるとカチオンディスオーダー化が起こらないことがわかった。尚、0.05V以上という範囲は、ハーフセルの集電体として銅を用いた場合である。ハーフセルの集電体としてアルミニウムを用いた場合には、アルミニウムとリチウムの合金化反応が起こる手前の0.4V以上0.5V以下が望ましい。
第3段階では、カチオンディスオーダー化構造の本リチウムバナジウム酸化物結晶体から、カチオンディスオーダー化構造を保ったままリチウムイオンを脱離している。電流値が400mAg-1を超えると本リチウムバナジウム酸化物結晶体の劣化に繋がる。推測ではあるが、電圧降下が大きくなり、リチウムイオンの挿入反応が進まなくなり、第2段階で移行した時点で大電流が流れるためだと考えられる。一方、20mAg-1未満であるとCC-CV処理に長時間を要する。尚、電圧値は、ハーフセルを組んだ時の電圧が開始点となるが、必ずしもその電圧である必要はない。2.0以上3.5V以下は、ハーフセルの品質によって電圧がずれた場合のマージンである。
推測ではあるが、このCC-CV処理において特に第2段階での0.05V以上0.5V以下といった低い定電圧の印加を4時間以上10時間以下といった長時間連続して行うことが有効であるものと考えられる。即ち、図7A及び図7Bに示すように、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体では、リチウムイオンの挿脱に応じて、酸化数5+のバナジウムイオンを格子中心とする四面体のVO配位構造と酸化数4+のバナジウムイオンを格子中心とする六面体のVO配位構造を可逆的に取る。
しかし、低い定電圧印加が長時間に及ぶと、図7A及び図7Bに示すように、酸化数4+のバナジウムイオンを格子中心とする六面体のVO配位構造からV3+を格子中心とする八面体のVO配位構造に不可逆的に変化する。低い定電圧印加の長時間に及ぶに連れて、V3+を格子中心とする八面体のVO配位構造の割合は増えていく。
そして、ついには、リチウムイオンの挿脱に応じて、図7Aに示すように、V3+を格子中心とする八面体のVO配位構造とV5+が格子中心からずれた位置に据えられた八面体のVO配位構造との可逆的変化が起こるようになり、長期間秩序の一部又は全部が崩れた本リチウムバナジウム酸化物結晶体となるものと考えられる。
または、リチウムイオンの挿脱に応じて、図7Bに示すように、V3+を格子中心とする八面体のVO配位構造とV5+が格子中心に据えられた六面体のVO配位構造との可逆的変化が起こるようになり、長期間秩序の一部又は全部が崩れた本リチウムバナジウム酸化物結晶体となるものと考えられる。
または、リチウムイオンの挿入に応じて、図7A及び図7Bに示すように、V3+を格子中心とする八面体のVO配位構造から、V5+が格子中心からずれた位置に据えられた八面体のVO配位構造との可逆的変化と、V5+が格子中心に据えられた六面体のVO配位構造との可逆的変化の両方が起こる、本リチウムバナジウム酸化物結晶体となるものと考えられる。
尚、カチオンディスオーダー構造の本リチウムバナジウム酸化物結晶体を得る手法として、このCC-CV処理に代えて、メカニカルミリング法で中間体を処理してもよい。メカニカルミリング法では、例えば、遊星ボールミル、ボールミル、ビーズミル、回転ミル、振動ミル等を用いて、中間体に機械的エネルギーを与える。処理環境は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下が好ましく、処理時間は、6時間程度から100時間程度が好ましい。
(実施例)
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。まず、以下の製造方法により、中間体としてバナジン酸リチウムとカーボンナノチューブ(CNT)の複合材料(LiVO/CNT)を生成した。
バナジン酸リチウムの金属粒子源は、バナジウム源としてメタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、リチウム源として水酸化リチウム(LiOH)溶液を用い、モル比でLi:V=3:1となるように混合した。CNTは、多層カーボンナノチューブを用いた。CNTの平均繊維径は、11nmであった。使用したバナジン酸リチウムの金属粒子源とCNTの重量比率は、60:40であった。また、金属配位子としてクエン酸、重合剤としてエチレングリコールを用いた。バナジウム源に対し、クエン酸は1当量、エチレングリコールは4当量添加した。
具体的には、図8に示すように、第1の溶液として、メタバナジン酸アンモニウムとクエン酸を蒸留水(HO)に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。第1の溶液では、メタバナジン酸アンモニウムの金属錯体が形成される。また、第2の溶液として、エチレングリコールを蒸留水に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。この第1の溶液と第2の溶液を混合し、さらにマグネチックスターラーを用いて撹拌した。第1の溶液と第2の溶液の混合溶液に、水酸化リチウム溶液、カーボンナノチューブ、および蒸留水を添加し、第3の溶液とした。
この第3の溶液について、80℃の環境下においてUC処理を行った。UC処理では、図9に示すような反応器を用い、回転速度を50m/sとし、第3の溶液に5分間にわたって66000N(kgms-2)の遠心力を与えた。このUC処理では、CNTのバンドルが解れるとともに、金属錯体を有するバナジン酸リチウムの前駆体が微粒子化し、均一に分散した状態でCNTの表面に付着することが促進されていると考えられる。
次に、第3の溶液から不純物をろ過し、130℃において、終夜、真空乾燥を行った。この真空乾燥では、CNTの表面に付着したバナジン酸リチウムの前駆体を核に、クエン酸のカルボキシル基とエチレングリコールのヒドロキシル基との間でエステル化反応が進行し、ポリマー鎖が形成される。ポリマー鎖の形成により、バナジン酸リチウムの前駆体間にポリマー鎖が形成され、バナジン酸リチウムの前駆体同士が結合し凝集体が形成されることが防止されると考えられる。そのため、微細なバナジン酸リチウムの前駆体が、CNTの表面に均一に分散される。
真空乾燥後のCNTについて、300℃で3時間、大気雰囲気下で加熱を行った。この300℃での熱処理により、クエン酸およびエチレングリコールのエステル化により形成されたポリマー鎖が熱分解する。したがって、CNTの表面には、微細なバナジン酸リチウムの前駆体のみが残存する。
その後、窒素雰囲気下において、800℃で0分間焼成を行った。この焼成は、3分かけて800℃まで昇温し、800℃に到達した時点で加熱を終了し自然冷却した。この焼成により、バナジン酸リチウムの前駆体が結晶化し、CNTの表面にナノ粒子化したバナジン酸リチウムが結合している状態となる。以上のようにして、中間体として、ナノ粒子化したバナジン酸リチウムがCNTに担持された複合材料(LiVO/CNT)が得られた。
この中間体のHRTEM像を撮影し結晶構造を解析した。図10は、中間体を示すHRTEM像である。そして、図10に示す領域1~3について、それぞれバナジン酸リチウムについて、凝集体を含む粒子の大きさと面積あたりの粒子数を目視にて計測した結果を図11~13に示す。図11~13から明らかな通り、各領域において確認されたバナジン酸リチウムの粒子の大きさは、最も大きなものでも50nm程度であった。また、各領域において30nm以下の微細なナノ粒子が存在する割合を算出した。その結果、領域1は約90%、領域2は約79%、領域3は約89%が、30nm以下の金属粒子を含んでいた。領域全体では、約87%が30nm以下の金属粒子であった。
次に、得られた中間体を用いてハーフセルを作製した。ハーフセルは2032型コインセルとした。具体的には、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンPVDFを選択し、中間体とバインダーとを共に攪拌してスラリー状にし、銅箔上に塗布し、作用電極W.E.とした。投入比率は、重量比にしてLiVO:CNT:PVDF=56:38:6であった。対極はリチウム金属とし、2032型コインセルの下蓋に貼り付けた。対極C.Eの上にガラスファイバーセパレータ、ガスケット、作用電極W.E、スペーサー、スプリング、上蓋の順に載せ、加締めてセルを作製した。電解液は、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DEC)を溶媒とし、溶質として1.0M六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を添加して調整した。体積比率でEC:DEC=1:1とした。この電解液を浸透させてセルとした。
そして、図14に示すプロファイルにて、中間体にCC-CV処理を施した。図14に示すように、第1段階として、2.5Vの開始電圧から電圧が0.4Vに到達するまで、Cレートが0.05Cとなる0.02Ag-1(gはバナジン酸リチウム当たり)の定電流を流し、リチウムイオンを中間体に挿入した。そして、第2段階として、定電圧0.4Vを10時間維持した。最後に第3段階として、0.4Vの開始電圧から電圧が2.5Vに戻るまで、Cレートが0.05Cとなる0.02Ag-1(gはバナジン酸リチウム当たり)の定電流を流し、リチウムイオンを中間体から脱離させた。
(粉末X線回折分析)
このCC-CV処理の前後の生成物を粉末X線回折により分析した。その結果を図15及び図16に示す。図15はCC-CV処理前の中間体を分析した結果であり、図16はCC-CV処理後の最終生成物を分析した結果である。
尚、図15に示される粉末X線回折分析の結果は、あいちシンクロトロンのビームラインBL5S2で15°-40°の範囲を1.5°min-1で測定して得られた。また、図16に示される分析結果は、CC-CV処理の後に最終生成物をハーフセルに入れたまま、装置メーカRigakuのSmartLabを用い、15°-40°の範囲を1.5°min-1で測定して得られた。グラフの作成に当たってはハーフセル内の電解液由来のブロードなハローパターンを除去する加工を行った。
図15に示すように、CC-CV処理前の中間体を分析した結果では、入射角2θが32.2度付近に鋭敏なピークが現れている。このピークは、020面に2.72Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の基準秩序が中間体に存在することを示している。
また、入射角2θが32.2度付近のピークよりも低角の範囲には、5種類のピークが存在していることがわかる。5種類のピークは、111面、011面、101面、110面及び010面に3.17Å、3.66Å、3.90Å、4.13Å及び5.45Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の長距離秩序が中間体に存在していることを示している。
また、入射角2θが32.2度付近のピークよりも低角の範囲にはブロードなハローパターンが現われている。このハローパターンは、バナジン酸リチウムと複合化させた多層カーボンナノチューブである。
CC-CV処理前の中間体において、入射角2θが32.2度付近のピークの回折強度を100とすると、25度から30度の範囲現われるピークの回折強度は52であった。20度から25度の範囲に現われる3のピークの回折強度は、角度が高い方から76、106、111であった。また15度から20度の範囲に現われるピークの回折強度は38であった。即ち、110面と010面に係る回折強度は、32.2度付近に現われる020面に係る回折強度よりも高い値である。これは、4.13Å及び5.45Åの面間距離を周期にしたLiO配位構造とVO配位構造の長距離秩序が多く存在していることを示している。
一方、図16に示すように、CC-CV処理後の最終生成物を分析した結果では、入射角2θが32.2度付近の鋭敏なピークが維持されている。しかしながら、入射角2θが32.2度付近のピークよりも低角の範囲には、CC-CV処理前に存在していた全てのピークが小さくなっており、32.2度付近に現われるピークよりも回折強度が高い値となっているピークが32.2度付近よりも低角の範囲には無くなっている。
即ち、入射角2θが32.2度付近のピークの回折強度を100とすると、25度から30度の範囲に現われる111面に係るピークの回折強度は52から20に減少している。20度から30度の範囲のうち最も角度の大きい箇所に現われる、011面に係るピークの回折強度は76から33に減少している。20度から30度の範囲のうち2番目に角度の大きい箇所に現われる、101面に係るピークの回折強度は106から43に減少している。20度から30度の範囲のうち最も角度の大きい箇所に現われる、110面に係るピークの回折強度は111から47に減少している。そして、15度から20度の範囲に現われる010面に係るピークの回折強度は38から10に減少している。
このように、入射角2θが32.2度付近よりも低角の範囲に現われる全てのピークが32.2度付近のピークに対して半分以下となっている。従って、CC-CV処理後の本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、カチオンディスオーダー化した結晶構造を有する。
ここで、CC-CV処理中にハーフセルの状態のまま、X線回折分析(in situ XRD)を行った。その結果を図17に示す。図17に示すように、32.2度付近のピークより低角の範囲の5種類のピークは、CC-CV処理の第2段階である定電圧印加過程で時間を経るごとに回折強度が減少していることがわかる。即ち、第2段階の時間を延ばすか、或いは定電圧値をより低くすることで、シミュレーション通りに32.2度付近のピークより低角の範囲の5種類のピークはゼロ乃至はゼロに近づくことがわかる。
尚、図17においては、32.2度付近のピークより低角の範囲に比較的背の高いブロードが存在し、このブロードの存在によって32.2度付近のピークよりも低角の範囲の5種類のピークは、32.2度付近のピークよりも高くなっている。但し、このブロードは、ハーフセルの状態のままX線回折分析をしたことによるハーフセルの電解液由来である。そのため、このハーフセルの電解液由来のブロードを差し引くグラフ処理を行うと、例えばCC-CVの第2段階を10時間行った後は、図16に示す結果と同じになった。
(リチウムイオン拡散係数の評価)
CC-CV処理前の中間体、即ち従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体と、中間体をCC-CV処理することにより得た本リチウムバナジウム酸化物結晶体のリチウムイオン拡散係数を評価した。
リチウムイオン拡散係数の評価に際し、中間体についてもCC-CV処理時に作製したハーフセルと同じハーフセルを同一条件で作製した。そして両ハーフセルに対して充放電安定化処理を事前に行った。中間体に対する充放電安定化処理は、0.76V-2.5V及び0.1Ag-1での5サイクルの充放電であり、本リチウムバナジウム酸化物結晶体に対する充放電安定化処理は、0.4VのCC-CV充放電を5サイクルである。そして、GITT(Galvanostatic Intermittent Titration Technique)測定にてリチウムイオンの拡散係数を測定した。電圧範囲は、0.76-2.5V(vs. Li/Li)であり、電流値は0.01Ag-1(gはバナジン酸リチウム当たり)であり、定電流充電時間を30分とし、2時間休止時間を与えた。その結果を図18に示す。
図18に示すように、各容量(mAhg-1)において、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体のリチウムイオン拡散係数は、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体のリチウムイオン拡散係数よりも高く、また急激に落ち込む箇所が無くなだらかであることがわかる。図18によると、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体のリチウムイオン拡散係数は、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体のリチウムイオン拡散係数と比べて10倍から100倍向上している。
(充放電ヒステリシスの評価)
次に、CC-CV処理前の中間体、即ち従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体と、中間体をCC-CV処理することにより得た本リチウムバナジウム酸化物結晶体の充放電ヒステリシスを評価した。充放電ヒステリシスの評価に際し、両ハーフセルに対し、電圧範囲は、0.1-2.5V(vs. Li/Li)であり、電流値は0.01Ag-1(gはバナジン酸リチウム当たり)とした。その結果を図19及び図20に示す。
まず、図19に示すように、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体を用いた場合には、電位ヒステリシスが0.4~0.5Vであった。一方、図20に示すように、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体を用いた場合には、電位ヒステリシスが0.1V以下である90mVに縮まった。
エネルギー効率に換算すると、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体を用いた場合には85%であるのに対し、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体を用いた場合には95%を達成していることがわかる。尚、エネルギーは、図19及び図20に示す充放電カーブの電位と容積の積分から求めた。即ち、本リチウムバナジウム酸化物結晶体は、充放電ヒステリシスの観点で良好な電気化学的特性を達成することができる。
(レート特性の評価)
次に、CC-CV処理前の中間体、即ち従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体と、中間体をCC-CV処理することにより得た本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体のレート特性を評価した。
レート評価に際し、中間体についてもCC-CV処理時に作製したハーフセルと同じハーフセルを同一条件で作製した。両ハーフセルに対し、作用電極W.E.の電位範囲(vs Li/Li+)は2.5V-0.76Vとした。充電試験の際は、リチウムイオンの脱離を0.1Ag-1(gはバナジン酸リチウム複合体当たり)で固定し、リチウムイオンの挿入の電流を0.02-5Ag-1と変化させている。また、放電試験の際は、リチウムイオンの脱離を0.1Ag-1(gはバナジン酸リチウム複合体当たり)で固定し、リチウムイオンの挿入の電流を0.02-12Ag-1と変化させている。その結果を図21及び図22に示す。
図21は、充電時の電流密度と充電容量との関係を示すグラフである。横軸に電流密度(Ag-1)をとり、縦軸に充電容量(mAhg-1)をとった。図21に示すように、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体に関しては、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体と比べて、各電流密度において大容量を充電できたことがわかる。
また、図22は、放電時の電流密度と放電容量との関係を示すグラフである。横軸に電流密度(Ag-1)をとり、縦軸に充電容量(mAhg-1)をとった。図22に示すように、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体に関しては、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体と比べて、各電流密度において大容量を放電できたことがわかる。しかも、従来のリチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンの複合体に関しては、電流密度が1Ag-1以下の範囲で電流密度を上げると急激に放電容量が落ちていくのに対し、本リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとの複合体では、電流密度を上げても放電容量の落ち込みは非常に滑らかであった。
即ち、本リチウムバナジウム酸化物結晶体よれば、リチウムイオン拡散係数が向上したことにより、高出力高容量及び高入力高容量を実現でき、レート特性を向上させることが確認された。しかも、カーボンと複合化することによりリチウムバナジウム酸化物結晶体を含む複合体は、リチウムイオン拡散係数の向上と相俟って相乗的に高電気伝導性を獲得し、レート特性が飛躍的に向上している。

Claims (8)

  1. カチオンがディスオーダー化された結晶構造を有し、
    X線回折の結果で表される前記結晶構造は、
    入射角2θが32.2度付近にピークが現れ、
    更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にはピークが無いか、
    またはピークがあっても、当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てピークの回折強度は、前記32.2度付近のピークの回折強度を100とすると50以下であること、
    を特徴とするリチウムバナジウム酸化物結晶体。
  2. 化学式LiVOで表されること、
    を特徴とする請求項1記載のリチウムバナジウム酸化物結晶体。
  3. LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、
    前記32.2度付近のピークよりも低角の範囲の長距離秩序の全て又は一部が崩れてランダムになっていること、
    を特徴とする請求項1又は2記載のリチウムバナジウム酸化物結晶体。
  4. LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、
    少なくとも一部のVO配位構造がリチウムイオンの挿入及び離脱に関わらず、八面体配位を維持していること、
    を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のリチウムバナジウム酸化物結晶体。
  5. LiO配位構造とVO配位構造が並んで成り、
    少なくとも一部のVO配位構造がリチウムイオンの挿入及び離脱に応じて、八面体配位と六面体配位を採ること、
    を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載のリチウムバナジウム酸化物結晶体。
  6. 請求項1乃至の何れかに記載のリチウムバナジウム酸化物結晶体を含むことを特徴とする電極材料。
  7. 前記リチウムバナジウム酸化物結晶体とカーボンとが複合化されて成る複合体粒子を有し、
    前記複合体粒子のX線回折の結果で表される結晶構造は、
    入射角2θが32.2度付近にピークが現れ、
    更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にはピークが無いか、
    またはピークがあっても、当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲に存在する全てピークの回折強度は、前記32.2度付近のピークの回折強度を100とすると50以下であり
    更に当該32.2度付近のピークよりも低角の範囲にブロードなハローパターンが現われていること、
    を特徴とする請求項記載の電極材料。
  8. 請求項6又は7記載の電極材料を正極又は負極に用いたこと、
    を特徴とする蓄電デバイス。
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