(第1実施形態)
以下、「電池監視装置」を車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)の電源システムに適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、電源システム10は、回転電機としてのモータ20と、モータ20に対して3相電流を流す電力変換器としてのインバータ30と、充放電可能な組電池40と、組電池40の状態を監視する電池監視装置50と、モータ20などを制御するECU60と、を備えている。
モータ20は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータ20として、3相の永久磁石同期モータを用いている。
インバータ30は、相巻線の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されており、各アームに設けられたスイッチ(半導体スイッチング素子)のオンオフにより、各相巻線において通電電流が調整される。
インバータ30には、図示しないインバータ制御装置が設けられており、インバータ制御装置は、モータ20における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、インバータ30における各スイッチのオンオフにより通電制御を実施する。これにより、インバータ制御装置は、組電池40からインバータ30を介してモータ20に電力を供給し、モータ20を力行駆動させる。また、インバータ制御装置は、駆動輪からの動力に基づいてモータ20を発電させ、インバータ30を介して、発電電力を変換して組電池40に供給し、組電池40を充電させる。
組電池40は、インバータ30を介して、モータ20に電気的に接続されている。組電池40は、例えば百V以上となる端子間電圧を有し、複数の電池モジュール41が直列接続されて構成されている。電池モジュール41は、複数の電池セル42が直列接続されて構成されている。電池セル42として、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を用いることができる。各電池セル42は、電解質と複数の電極とを有する蓄電池である。
組電池40の正極側電源端子に接続される正極側電源経路L1には、インバータ30等の電気負荷の正極側端子が接続されている。同様に、組電池40の負極側電源端子に接続される負極側電源経路L2には、インバータ30等の電気負荷の負極側端子が接続されている。なお、正極側電源経路L1及び負極側電源経路L2には、それぞれリレースイッチSMR(システムメインリレースイッチ)が設けられており、リレースイッチSMRにより、通電及び通電遮断が切り替え可能に構成されている。
電池監視装置50は、各電池セル42の蓄電状態(SOC)及び劣化状態(SOH)などを監視する装置である。第1実施形態において電池監視装置50は、電池セル42毎に設けられている。電池監視装置50は、ECU60に接続されており、各電池セル42の状態などを出力する。電池監視装置50の構成については、後述する。
ECU60は、各種情報に基づいて、インバータ制御装置に対して力行駆動及び発電の要求を行う。各種情報には、例えば、アクセル及びブレーキの操作情報、車速、組電池40の状態などが含まれる。
次に、電池監視装置50について詳しく説明する。図2に示すように、第1実施形態では、電池セル42毎に電池監視装置50が設けられている。
電池監視装置50は、ASIC部50aと、フィルタ部55と、電流モジュレーション回路56と、を備えている。ASIC部50aは、安定化電源供給部51と、入出力部52と、演算部としてのマイコン部53と、通信部54と、を備えている。
安定化電源供給部51は、電池セル42の電源ラインに接続されており、電池セル42から供給された電力を入出力部52、マイコン部53、及び通信部54に対して供給している。入出力部52、マイコン部53、及び通信部54は、この電力に基づいて駆動する。
入出力部52は、監視対象とする電池セル42に対して接続されている。具体的に説明すると、入出力部52は、電池セル42から直流電圧を入力(測定)可能な直流電圧入力端子57を有する。電池セル42と直流電圧入力端子57との間には、フィルタ部55が設けられている。すなわち、直流電圧入力端子57の正極側端子57aと、負極側端子57bとの間には、フィルタ回路としてのRCフィルタ55a、及び保護素子としてのツェナーダイオード55bなどが設けられている。つまり、電池セル42に対して、RCフィルタ55aやツェナーダイオード55bなどが並列に接続されている。
また、入出力部52は、電池セル42の端子間において、電池セル42の内部複素インピーダンス情報を反映した応答信号(電圧変動)を入力するための応答信号入力端子58を有する。このため、入出力部52は、応答信号入力部として機能する。
また、入出力部52は、信号制御部としての電流モジュレーション回路56に接続されており、電流モジュレーション回路56に対して、電池セル42から出力させる正弦波信号(交流信号)を指示する指示信号を出力する指示信号出力端子59aを有する。また、入出力部52は、フィードバック信号入力端子59bを有する。フィードバック信号入力端子59bは、電流モジュレーション回路56を介して、電池セル42から実際に出力される(流れる)電流信号を、フィードバック信号として入力する。
また、入出力部52は、マイコン部53に接続されており、直流電圧入力端子57が入力した直流電圧や、応答信号入力端子58が入力した応答信号、フィードバック信号入力端子59bが入力したフィードバック信号などをマイコン部53に対して出力するように構成されている。なお、入出力部52は、内部にAD変換器を有しており、入力したアナログ信号をデジタル信号に変換してマイコン部53に出力するように構成されている。
また、入出力部52は、マイコン部53から指示信号を入力するように構成されており、指示信号出力端子59aから、電流モジュレーション回路56に対して指示信号を出力するように構成されている。なお、入出力部52は、内部にDA変換器を有しており、マイコン部53から入力したデジタル信号をアナログ信号に変換して、電流モジュレーション回路56に対して指示信号を出力するように構成されている。また、電流モジュレーション回路56に指示信号により指示される正弦波信号は、直流バイアスがかけられており、正弦波信号が負の電流(電池セル42に対して逆流)とならないようになっている。
電流モジュレーション回路56は、監視対象である電池セル42を電源として、所定の交流信号(正弦波信号)を出力させる回路である。具体的に説明すると、電流モジュレーション回路56は、スイッチ部としての半導体スイッチ素子56a(例えば、MOSFET)と、半導体スイッチ素子56aに直列に接続された抵抗56bとを有する。半導体スイッチ素子56aのドレイン端子は、電池セル42の正極側電源端子71aに接続され、半導体スイッチ素子56aのソース端子は、抵抗56bの一端に直列に接続されている。また、抵抗56bの他端は、電池セル42の負極側電源端子71bに接続されている。半導体スイッチ素子56aは、ドレイン端子とソース端子との間において通電量を調整可能に構成されている。また、半導体スイッチ素子56aの動作領域に応じて、半導体スイッチ素子56aにかかる電圧を調整するために、抵抗を電流モジュレーション回路内に直列に挿入する場合もある。
なお、電池セル42の正極側電源端子71a子及び負極側電源端子71bは、それぞれ電極(正極又は負極)に繋がっている。そして、応答信号入力端子58は、正極側電源端子71a及び負極側電源端子71bの接続可能な部分のうち、最も電極に近い箇所に接続されることが望ましい。また、直流電圧入力端子57の接続箇所も同様に、最も電極に近い箇所、又は応答信号入力端子58の接続箇所の次に近い箇所であることが望ましい。これにより、主電流又は均等化電流による電圧低下の影響を最低限にすることができる。
また、電流モジュレーション回路56には、抵抗56bの両端に接続された電流検出部としての電流検出アンプ56cが設けられている。電流検出アンプ56cは、抵抗56bに流れる信号(電流信号)を検出し、検出信号をフィードバック信号として、入出力部52のフィードバック信号入力端子59bに出力するように構成されている。
また、電流モジュレーション回路56には、フィードバック回路56dが設けられている。フィードバック回路56dは、入出力部52の指示信号出力端子59aから、指示信号を入力するとともに、電流検出アンプ56cからフィードバック信号を入力するように構成されている。そして、指示信号とフィードバック信号とを比較し、その結果を半導体スイッチ素子56aのゲート端子に出力するように構成されている。
半導体スイッチ素子56aは、フィードバック回路56dからの信号に基づいて、指示信号により指示された正弦波信号(所定の交流信号)を電池セル42から出力させるように、ゲート・ソース間に印加する電圧を調整して、ドレイン・ソース間の電流量を調整する。なお、指示信号により指示される波形と、実際に抵抗56bに流れる波形との間に誤差が生じている場合、半導体スイッチ素子56aは、フィードバック回路56dからの信号に基づいて、その誤差が補正されるように、電流量を調整する。これにより、抵抗56bに流れる正弦波信号が安定化する。
次に、電池セル42の複素インピーダンスの算出方法について説明する。電池監視装置50は、所定周期ごとに、図3に示すインピーダンス算出処理を実行する。
インピーダンス算出処理において、マイコン部53は、最初に複素インピーダンスの測定周波数を設定する(ステップS101)。測定周波数は、予め決められた測定範囲内の周波数の中から設定される。
次にマイコン部53は、測定周波数に基づいて、正弦波信号(所定の交流信号)の周波数を決定し、入出力部52に対して、当該正弦波信号の出力を指示する指示信号を出力する(ステップS102)。
入出力部52は、指示信号を入力すると、DA変換器により、アナログ信号に変換し、電流モジュレーション回路56に出力する。電流モジュレーション回路56は、指示信号に基づいて、電池セル42を電源として正弦波信号を出力させる。具体的には、半導体スイッチ素子56aは、フィードバック回路56dを介して入力された信号に基づき、指示信号により指示された正弦波信号を電池セル42から出力させるように、電流量を調整する。これにより、電池セル42から正弦波信号が出力される。
電池セル42から正弦波信号を出力させると、すなわち、電池セル42に外乱を与えると、電池セル42の端子間に電池セル42の内部複素インピーダンス情報を反映した電圧変動が生じる。入出力部52は、応答信号入力端子58を介して、その電圧変動を入力し、応答信号としてマイコン部53に出力する。その際、AD変換器により、デジタル信号に変換して出力する。
ステップS102の実行後、マイコン部53は、入出力部52から応答信号を入力する(ステップS103)。また、マイコン部53は、電流モジュレーション回路56の抵抗56bに流れる信号(つまり、電池セル42から出力される信号)を電流信号として取得する(ステップS104)。具体的には、マイコン部53は、電流検出アンプ56cから出力されたフィードバック信号(検出信号)を、入出力部52を介して、電流信号として入力する。なお、フィードバック信号の代わりに、電流モジュレーション回路56に指示した指示信号に比例した値を電流信号としてもよい。
次に、マイコン部53は、応答信号及び電流信号に基づいて、複素インピーダンスを算出する(ステップS105)。つまり、マイコン部53は、応答信号の振幅、電流信号との位相差等に基づいて複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、位相のすべて若しくはいずれかを算出する。マイコン部53は、通信部54を介して、算出結果をECU60に出力する(ステップS106)。そして、算出処理を終了する。
この算出処理は、測定範囲内の複数の周波数についての複素インピーダンスが算出されるまで繰り返し実行される。ECU60は、算出結果に基づいて、例えば、複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット)を作成し、電極及び電解質などの特性を把握する。例えば、蓄電状態(SOC)や劣化状態(SOH)を把握する。
なお、コールコールプロット全体を必ずしも作成する必要はなく、その一部に着目してもよい。例えば、走行時、一定の時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOC、SOH及び電池温度等の走行時における変化を把握してもよい。または、1日毎、1周ごと、若しくは1年ごとといった時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOH等の変化を把握してもよい。
次に、電池セル42と電池監視装置50の接続態様について説明する。図4は、電池セル42と電池監視装置50の接続態様を示す模式図である。図4は、複数の電池セル42を上面(電源端子71の設置面)から見た平面図を模している。
図4に示すように、電池セル42、より詳しくはその収容ケース42aは、扁平の直方体状に形成されており、その上面において、長手方向両端に、電源端子71が設けられている。電池セル42の収容ケース42aは、側面が重なるように、短手方向に積層されている。その際、隣接する電池セル42とは、正極側電源端子71aと負極側電源端子71bとが互い違いとなるように配置されている。
そして、各電池セル42が、直列に接続されるように、電池セル42の正極側電源端子71aは、隣接する一方側の電池セル42の負極側電源端子71bにバスバー73を介して接続されている。そして、電池セル42の負極側電源端子71bは、隣接する他方側の電池セル42の正極側電源端子71aにバスバー73を介して接続されている。
バスバー73は、導電性の材料で構成されており、隣接する電源端子71が届く程度、例えば、短手方向における電池セル42の厚さ寸法の2倍弱程度の長さを有する薄板状に形成されている。このバスバー73は、電池セル42の長手方向において、電源端子71の外側端部(外側半分)を覆うように各電源端子71に対して接続(溶接等)されている。
そして、正極側電源端子71aと、負極側電源端子71bとの間には、平板状の回路基板72が設けられている。回路基板72は、PCB(プリント基板)や、FPC(フレキシブルプリント回路基板)であり、回路基板72上に配置された回路素子の周りを、導電性金属の電気経路が張り巡らされている。
この際、信号配線(電気経路)は、基本的に2線を対として張り巡らされている。例えば、図2における半導体スイッチ素子56aのゲート端子に信号を送るため、ゲート端子に接続される配線と、その信号のいわゆるリターン経路となる配線とが対となって張り巡らされている。
回路基板72には、回路素子として、例えば、ASIC部50aと、フィルタ部55と、電流モジュレーション回路56等が配置(固定)されている。なお、図4では、図示の都合上、ASIC部50aと、電流モジュレーション回路56の半導体スイッチ素子56aのみを図示する。
図4で示されるように、回路基板72は、積層された複数の電池セル42の全体に亘るように、積層方向(図4において左右方向)に延びるように形成されている。その際、各電池セル42の電源端子71の間に配置されるように構成されている。また、電源端子71の設置面に対して対向するように配置されている。
半導体スイッチ素子56aは、各電池セル42の電源端子71の間に配置されている。その一方、ASIC部50aは、回路基板72の長手方向(電池セル42の積層方向)の一端(図4では右端)であって、電池セル42とは重複しない位置に配置されている。
そして、図4において破線で示すように、正極側電源端子71aと、負極側電源端子71bとの間を直線で結ぶように第1電気経路81が設けられている。第1電気経路81上に、半導体スイッチ素子56aが配置されている。半導体スイッチ素子56aは、つまり、電流モジュレーション回路56は、第1電気経路81を介して交流信号を電池セル42から出力させるように構成されている。
また、図4において実線で示すように、各電池セル42の電源端子71と、ASIC部50aの応答信号入力端子58とを繋ぐ第2電気経路82が回路基板72に設けられている。詳しく説明すると、第2電気経路82のうち、正極側電源端子71aに接続される第2A電気経路82aは、正極側電源端子71aから負極側電源端子71bに向かって直線状に延び、途中で90度直角に屈曲するように構成されている。その後、第2A電気経路82aは、回路基板72の長手方向に沿ってASIC部50a側に向かって延び、回路基板72の端部においてASIC部50a側に向かって屈曲している。ただし、本実施形態における90度屈曲は例示であり、配線が曲げRを持たないという意味ではない。必要に応じて曲げRを持つ。また、屈曲部の配線パターンは必ずしも90度である必要はなく、必要に応じて円弧又は角をとった形としてもよい。
同様に、第2電気経路82のうち、負極側電源端子71bに接続される第2B電気経路82bは、負極側電源端子71bから正極側電源端子71aに向かって直線状に延び、途中で90度直角に屈曲するように構成されている。その際、第2A電気経路82aと接触しない位置で屈曲している。その後、第2B電気経路82bは、第2A電気経路82aと平行となるように、回路基板72の長手方向に沿ってASIC部50a側に向かって延びるように形成され、回路基板72の端部においてASIC部50a側に向かって屈曲している。なお、第2電気経路82は、第1電気経路81とは直接交わらないように、少なくとも交差箇所では異なる層に形成されている。
なお、同じ電池セル42に接続されている第1電気経路81と第2電気経路82の場合、異なる層に設けると、層という誘電体を挟むことにより線間の浮遊容量が大きくなる虞がある。このため、できる限り同じ層に形成されていることが望ましい。そして、同じ電池セル42に接続されている第1電気経路81と第2電気経路82とを交差させる場合、交差箇所でおいてのみ異なる層に配線されることが望ましい。また、第2電気経路82は、第1電気経路81と交差する場合には、交差領域が最小となるように、直交することが望ましい。
ちなみに、第2電気経路82が、ASIC部50aに向かうために、他の電池セル42に接続されている第1電気経路81と交差する場合、別層を通って交差させている。その際、可能な限り別層になる面積を小さくしている。この場合、他の電池セル42に接続された電気経路であるため、浮遊容量の影響は小さい。
そして、各電池セル42においても第1電気経路81及び第2電気経路82が同様に形成されている。ただし、第2電気経路82は、半導体スイッチ素子56aや、他の電池セル42に接続されている第1電気経路81や第2電気経路82に極力重ならないように設けられている。具体的には、半導体スイッチ素子56aは、電池セル42毎に、その位置を短手方向においてずらして配置されている。そして、第2電気経路82は、長手方向に延びる際、他の電池セル42に接続されている他の第2電気経路82に重ならないように、他の第2電気経路82に対して平行に設けられている。その際、短手方向に互いの第2電気経路82の位置がずれるように設けられている。
ところで、電流モジュレーション回路56が、第1電気経路81を介して交流信号(正弦波信号等)を電池セル42から出力させると、交流信号に基づく誘導起電力が第2電気経路82に生じる。応答信号は、極めて微弱な信号であるため、第2電気経路82に交流信号に基づく誘導起電力が生じると、測定誤差が生じることとなる。そこで、誘導起電力を低減させるべく、電池監視装置50を構成している。
ここで、誘導起電力を低減するための構成を説明する前に、誘導起電力が発生する原理と、それを抑制するための原理について説明する。図5(a)は、電池セル42のモデルを示した図であり、図5(b)は、第1電気経路81と、第2電気経路82と、電池セル42内の電気経路(電流経路)のモデルを示した図である。なお、図5(a)と図5(b)の地点P1~P12は、対応している。数式(1)にファラデーの法則を示す。なお、「E」は、電場を示し、「L」は線積分の経路長を示し、「B」は磁束密度ベクトルを示し、「S」は左辺の線積分の経路によって囲まれる部分によって閉じる領域の面積を示し、「n」は「S」の法線ベクトルを示す。なお、電場「E」と磁束密度ベクトル「B」は、場所と時間に依存する値である。
ファラデーの法則によれば、数式(1)の左辺において経路に電場が存在すればよいので、必ずしも導体部分、つまり、電気経路によって経路が閉じている必要はない。よって、数式(1)の左辺の経路として、地点P1~P12を順番に結ぶ経路とする。なお、各地点P1~P12の間は、直線で結ばれているものとする。ここで、地点P10、P11は、それぞれ応答信号入力端子58の位置に相当する。また、地点P9,P12は、それぞれ第2電気経路82の屈曲点に相当する。地点P1,P8は、それぞれ第2電気経路82と電源端子71との接続点に相当する。地点P2,P7は、それぞれ第1電気経路81と電源端子71との接続点に相当する。なお、地点P2及び地点P7を直線状に結んだ線が、第1電気経路81に相当する。
そして、地点P3は、地点P2を通り、地点P2,P7を結ぶ直線及び地点P1,P2を結ぶ直線に対して直交する直線であって、正極側電源端子71aの露出部分のうち下端に相当する。また、地点P4は、地点P2,P3を通り、地点P2,P7を結ぶ直線及び地点P1,P2を結ぶ直線に対して直交する直線と、電池セル42の底面とが交わる点に相当する。なお、図5(b)において、ドットで示された部分は、電池セル42の内部(収容ケース42aの内部)に相当する。
同様に、地点P6は、地点P7を通り、地点P2,P7を結ぶ直線及び地点P7,P8を結ぶ直線に対して直交する直線であって、負極側電源端子71bの露出部分のうち下端に相当する。また、地点P5は、地点P6,P7を通り、地点P2,P7を結ぶ直線及び地点P7,P8を結ぶ直線に対して直交する直線と、電池セル42の底面とが交わる点に相当する。
ところで、電池セル42の収容ケース42a内における電流の流れは、電極構造等に依存して複雑である。しかしながら、電池セル42の収容ケース42a内を電流が流れる際に発生する磁束は、収容ケース42aの表面に発生する渦電流により打ち消されること(シールド効果の発生)が予想される。この前提とすれば、第1電気経路81に沿って地点P2から地点P7に電流が流れることを前提とした場合、電流は収容ケース42a内において地点P6→地点P5→地点P4→地点P3に流れるとして単純化することができる。なお、第1電気経路81に流れる電流は交流信号であるため、電流が流れる向きは単一方向でなく、双方向に流れる。
そして、第1電気経路81に沿って地点P2から地点P7に交流信号(電流)が流れる場合、図5に示すように、時計回りに磁束密度ベクトルBが生じる。これにより、地点P7→地点P8→地点P9→地点P10→地点P11→地点P12→地点P1→地点P2の経路上、すなわち、第2電気経路82においては、地点P2の側に比較して地点P7の電位が高くなるような誘導起電力V1(破線で示す)が生じる。
また、地点P7→地点P6→地点P5→地点P4→地点P3→地点P2の経路上、すなわち、電池セル42の内部においては、地点P2の側に比較して地点P7の電位が高くなるような誘導起電力V2(破線で示す)が生じる。つまり、誘導起電力V1と誘導起電力V2とは打ち消し合うように生じることとなる。
また、数式(1)の右辺が、磁束の時間変化を表すことを考慮して、磁束密度ベクトルBと法線ベクトルnとの積を考える。ここで、交流信号が流れる第1電気経路81に対して、電池セル42の内部から外部方向を法線ベクトルnの正方向とする。
図5に示すように、第1電気経路81を介して地点P2から地点P7へ交流信号が流れている場合、地点P1→P2→P7→P8→P9→P10→P11→P12→P1によって形成される第1領域S1の法線ベクトルn1と磁束密度ベクトルBとの積(φ1)は正となる。なお、第1領域S1は、第1電気経路81と、第2電気経路82と、正極側電源端子71aと負極側電源端子71bとで囲まれた領域ともいえる。
一方、第1電気経路81を介して地点P2から地点P7へ交流信号が流れている場合、地点P2→P3→P4→P5→P6→P7→P2によって形成される第2領域S2の法線ベクトルn2と磁束密度ベクトルBとの積(φ2)は負となる。このことから、法線ベクトルn1と磁束密度ベクトルBとの積(φ1)と、法線ベクトルn2と磁束密度ベクトルBとの積(φ2)と正負反対の関係にあることがわかる。
そして、数式(1)は、本実施形態において、数式(2)のように表すことができる。なお、数式(1)(2)の左辺は、誘導起電力に等しい。また、数式(2)において、「S1」は、第1領域S1の面積を示し、「S2」は、第2領域S2の面積を示す。これによれば、磁束密度ベクトルBを、第1領域S1の面積で面積分したもの(つまり、第1領域S1を通る磁束)と、磁束密度ベクトルBを、第2領域S2の面積で面積分したもの(つまり、第2領域S2を通る磁束)とをそれぞれ時間tにより偏微分したものの合計が、誘導起電力に等しいことがわかる。
ここで、電池セル42の構成(収容ケース42aの形状、電極の配置及び形状、電源端子71の位置及び形状等)は、ある程度規格が決まっているため、変更しにくい。そこで、本実施形態では、第1電気経路81上に流れる交流信号に基づいて第2電気経路82に生じる誘導起電力がゼロを含む起電力許容値範囲内となるように、第1領域S1の大きさを設定している。具体的には、図6に示すように、第1電気経路81と、第2電気経路82との間の距離により、誘導起電力が変化することがわかっている。図6では、横軸が第1電気経路81と第2電気経路82とされ、縦軸が誘導起電力の大きさとされている。
このため、第1電気経路81と、第2電気経路82との間の距離を調整することにより、誘導起電力がゼロを含む起電力許容値範囲内となるようにしている。起電力許容値範囲は、監視のために必要とされる算出精度、応答信号及びノイズ信号の大きさなどを考慮して、任意に設定してよい。本実施形態では、ゼロを中心として、±200μVの範囲が起電力許容値範囲とされている。
なお、第1電気経路81及び収容ケース42aにより囲まれた第2領域S2を特定できるのであれば、第1領域S1を通過する交流信号に基づく第1磁束と、第2領域S2を通過する交流信号に基づく第2磁束との差がゼロを含む磁束許容値範囲内となるように、第2領域S2に応じて第1領域S1の大きさを設定してもよい。これにより、誘導起電力を抑制することができる。なお、磁束許容値範囲は、監視のために必要とされる算出精度、応答信号及びノイズ信号の大きさなどを考慮して、任意に設定してよい。
第1実施形態の電池監視装置50は、以下の効果を有する。
第1電気経路81上に流れる交流信号に基づいて第2電気経路82に生じる誘導起電力がゼロを含む起電力許容値範囲内となるように、第1領域S1の大きさを設定した。具体的には、第1電気経路81と、第2電気経路82との間の距離を調整した。これにより、電池セル42に対して交流信号を流す場合に、当該交流信号による磁束変化によって、第2電気経路82において大きな誘導起電力が生じることを抑制することができる。これにより、応答信号の測定誤差を抑制し、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
また、ASIC部50aと、第1電気経路81と、第2電気経路82とを、同一平面上に設けた。これにより、上述した原理により、第1電気経路81と、第2電気経路82とで囲まれた第1領域S1の大きさを調整することにより、誘導起電力を低減することが可能となっている。また、ASIC部50aは、回路基板72の端部に設けられており、電源端子71a,71bとの間に設けられている場合に比較して、第1電気経路81との距離が遠くなる。これにより、ASIC部50aが第1電気経路81に流れる交流信号に基づく磁束密度ベクトルの影響を受けにくくなる。
電流モジュレーション回路56は、監視対象とする電池セル42を電源として、正弦波信号(所定の交流信号)を出力させる。このため、正弦波信号を電池セル42に入力するための外部電源が必要なくなり、部品点数削減、小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
ところで、車載の蓄電池には、一般的に保護素子やフィルタ回路などの周辺回路が接続されており、蓄電池に交流信号を入力しても、当該周辺回路に電流の一部が漏れてしまう。例えば、第1実施形態においても、電池セル42には、RCフィルタ55aやツェナーダイオード55bが接続されており、電池セル42に交流信号を入力しても、電流の一部がそれらの回路に漏れる。このため、電池セル42に交流信号を入力し、その応答信号に基づいて複素インピーダンスを算出する場合、漏れ電流の影響により応答信号に誤差が生じ、複素インピーダンスの検出精度が低下するという問題があった。
しかしながら、上記第1実施形態の電池監視装置50では、電池セル42を電源として、正弦波信号を出力させるため、電流モジュレーション回路56と電池セル42とで閉回路を実現できる。よって、電池セル42からの電流の漏れをなくすことができ、応答信号の誤差を抑制することができる。
抵抗56bに実際に流れる信号と、電池セル42から出力させるべき正弦波信号との間に誤差が生じる場合がある。この場合、応答信号の誤差要因となる。そこで、フィードバック回路56dを備えて、半導体スイッチ素子56aに対して指示を行う際、フィードバック信号(検出信号)と指示信号との比較に基づいてフィードバックを行うこととした。これにより、指示した正弦波信号を電池セル42から安定して、正確に出力させることができる。
また、指示信号により、電流モジュレーション回路56に対して正弦波信号の波形を指示する場合、指示信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。この変換する際に、誤差が生じる。入出力部52と電流モジュレーション回路56との間に、フィルタ回路等を設けることにより、指示信号の波形を滑らかにして、この誤差を抑制することができるが、フィルタ回路を設けることは大型化やコスト増につながる。
また、車載の電池セル42は、一般的に大容量であるため、複素インピーダンスを算出する場合、測定周波数の測定範囲は広くなる傾向にある。したがって、その分フィルタ回路も大型化する可能性がある。そこで、上記フィードバックを行うこととし、信号変換時における指示信号の波形の誤差を抑制した。これにより、入出力部52と電流モジュレーション回路56との間において、フィルタ回路を省略することができる。
電流モジュレーション回路56は、抵抗56bに流れる信号を検出し、検出信号をフィードバック信号として、入出力部52を介して、マイコン部53に出力するように構成されている。そして、マイコン部53は、フィードバック信号を電流信号として利用して、複素インピーダンスを算出する。これにより、抵抗56bに実際に流れる信号と、出力させるべき正弦波信号(マイコン部53により指示された信号)との間に誤差(位相ずれなど)が生じた場合であっても、フィードバック信号、つまり、抵抗56bに実際に流れる信号を利用するため、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
また、上記のようにフィードバック信号により補正するため、入出力部52と電流モジュレーション回路56との間において、フィルタ回路を省略することができ、電池監視装置50を小型化することができる。
応答信号入力端子58は、電池セル42の端子において、接続可能な部分のうち、電極に最も近い部分に接続されている。これにより、電池セル42の端子が有するインピーダンス成分の影響を抑制して、複素インピーダンスの算出精度をより向上させることができる。より詳しく説明すると、図7に示すように、電池セル42の電源端子71は、インピーダンス成分を有する。このため、応答信号入力端子58を接続する場合、図7(a)よりも図7(b)に示すように、電極により近い部分に接続することが望ましい。これにより、複素インピーダンスの算出精度をより向上させることができる。なお、図7(b)に示すように、応答信号入力端子58の接続箇所は、電流モジュレーション回路56の接続箇所よりも電極に近いことが望ましい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電池監視装置50について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
図8に示すように、第2実施形態の回路基板72は、長手方向(電池セル42の積層方向)において、その端部が屈曲形成されている。第2実施形態において、回路基板72のうち、電池セル42の上面と対向し、かつ、電池セル42の電源端子71の間に配置された部分を、第1基板72aとし、折り曲げられた端部を、第2基板72bとする。
なお、本実施形態において、回路基板72は、FPCにより構成して屈曲形成してもよいし、第1基板72aと、第2基板72bをそれぞれ設け、コネクタやFPCなどにより電気経路を接続するように構成してもよい。なお、FPCを屈曲形成した場合には、第1基板72a、第2基板72bは、物理的に分割された別基板でなく、同一基板であるが、説明の都合上、第1基板72a、第2基板72bとしている。
折り曲げられた第2基板72bは、第1基板72aの平面に対して垂直となり、電池セル42の側面に対して対向するように配置されている。このため、回路基板72の端部に配置されている第2電気経路82やASIC部50aは、第1電気経路81や電流モジュレーション回路56等と同一平面上とならなくなる。そして、このようにASIC部50aが、第1電気経路81等と同一平面上とならなくなる場合、第2基板72bにおける電気経路やASIC部50aが、第1電気経路81と第2電気経路82とが同一平面上にあった場合と異なる形で交流信号に基づく磁束密度ベクトルの影響を受けることとなる。
そこで、第2基板72bの周辺を囲むように、シールド部材としての筒状部101が設けられている。具体的には、筒状部101は、金属製、又は樹脂製、又は炭素製などの導体により、四角筒状に設けられており、筒状部101の内部に第2基板72bが収容されるようになっている。これにより、交流信号に基づく磁束密度ベクトルの影響を抑制し、ASIC部50aに対する外部磁場等の影響も低減することができ、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
また、第2基板72bを、第1基板72aの平面に対して垂直となるように折り曲げることにより、同一平面に設ける場合に比較して、長手方向の距離を短くすることができる。また、第2基板72bを、電池セル42の側面に対して対向するように配置することにより、小型化が可能となる。
なお、図8(b)に示すように、筒状部101の上部(電源端子71の側)は、開放端とされる一方、下部(電池セル42の底面側)には、底部102が形成されている。この底部102には、上下方向に貫通する貫通孔102aが設けられており、筒状部101は、上下方向に空気が流れるように構成されている。これにより、第2基板72bの排熱を好適に行うことができる。
また、この実施形態では、筒状部101と、電池セル42の収容ケース42aを別体で構成したが、その一部を共用するようにしてもよい。例えば、筒状部101の収容ケース42aの側面を、収容ケース42aの筒状部101の側面として共用してもよい。また、電池セル42の収容ケース42aに限らず、組電池40の収容ケース(電源ケース)の一部を筒状部101の一部と共用してもよい。これにより、小型化することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電池監視装置50について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
上記実施形態では、第1電気経路81と第2電気経路82との間の距離を調整することにより、第1領域S1の面積(大きさ)を調整し、誘導起電力が電力許容範囲内となるようにしていた。しかしながら、回路基板72上には、種々の回路素子や電気経路などが配置されている都合上、第1領域S1の大きさを任意に調整することができるとは限らないという問題があった。
そこで、図9に示すように、第3実施形態では、回路基板72上において、第1領域S1の内側に、導電部材を配置することとした。詳しく説明すると、第1領域S1の内側、具体的には、第1電気経路81と第2電気経路82との間に、四角板状の導電部材としてのシールド板110が配置されている。なお、図9において、シールド板110を斜線で示す。シールド板110は、導体により構成されている。このシールド板110は、第1電気経路81と同電位となるように、第1電気経路81と接続されている。シールド板110と第1電気経路81との間は、シングルライン110aで接続されており、シールド板110へ第1電気経路81から電流が流れないように構成されている。
このシールド板110は、交流信号からの磁束密度ベクトルBを通過させない。このため、交流信号からの磁束密度ベクトルBが通過する第1領域S1の面積が、シールド板110の面積だけ実質的に減ることとなる。このため、誘導起電力が電力許容範囲内となるように、シールド板110の大きさ、及び第1電気経路81と第2電気経路82との間の距離、つまり、第1領域S1の大きさを調整するようにしている。
これにより、第1領域S1の大きさを任意に調整することが困難である場合であっても、シールド板110の大きさを調整することにより、誘導起電力が電力許容範囲内にすることが可能となる。なお、ここでシールド板110の電位が不定とならない程度にシングルライン110aは抵抗体であってもよい。また、シールド板110は、第2電気経路82にシングルラインにて接続されていてもよい。また、シールド板110は、四角以外の形状であってもよいし、ドーナツ型や網のように内部に穴が1又は複数空いた形であってもよい。また、回路基板72上のパターンや、シール状の導体により、導電部材を構成してもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の電池監視装置50について説明する。第4実施形態の電池監視装置50は、いわゆる2位相ロックイン検出を実施する。以下、詳しく説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
図10に示すように、電池監視装置50のASIC部50aには、電池セル42の端子間における直流電圧を測定する差動アンプ151が設けられている。差動アンプ151は、直流電圧入力端子57の正極側端子57a及び負極側端子57bに接続されており、直流電圧を測定し、出力するように構成されている。
また、電池監視装置50のASIC部50aには、正弦波信号の出力時における電池セル42の電圧変動を、応答信号入力端子58を介して入力する増幅器としてのプリアンプ152が設けられている。プリアンプ152は、応答信号入力端子58を介して入力した電圧変動を増幅し、応答信号として出力する。すなわち、応答信号の振幅は、電池セル42の電圧に比較して微弱な信号であることから、応答信号の検出精度を向上させるため、プリアンプ152が設けられている。なお、第4実施形態では、プリアンプ152は、1段であったが、多段にしてもよい。
また、図10に示すように、電池セル42の正極側電源端子71aと正極側の応答信号入力端子58(プリアンプ152の正極側端子側)との間には、直流成分をカットするためのコンデンサC1が設けられている。これにより、電池セル42の電圧変動のうち、直流成分(内部複素インピーダンス情報に関係ない部分)を除くことができ、応答信号の検出精度を向上させることができる。
また、ASIC部50aには、差動アンプ151から出力される直流電圧と、プリアンプ152から出力される応答信号とを切り替える信号切替部153が設けられている。信号切替部153には、AD変換器154が接続されており、切り替えられた信号(アナログ信号)が、デジタル信号に変換されて出力されるように構成されている。
AD変換器154は、第4実施形態における演算部としてのシグナルプロセッシング部155に接続されており、直流電圧を入力するように構成されている。また、AD変換器154は、第1乗算器156及び第2乗算器157に接続されており、応答信号をそれぞれ入力するように構成されている。
第1乗算器156には、後述する発振回路158が接続されており、第1の参照信号が入力されるようになっている。第1乗算器156は、第1の参照信号と、応答信号を乗算して、応答信号の実部に比例した値を算出し、ローパスフィルタ159を介して、応答信号の実部に比例した値をシグナルプロセッシング部155に出力するようになっている。なお、図10では、応答信号の実部をRe|Vr|と示す。
第2乗算器157には、位相シフト回路160を介して、発振回路158に接続されており、第2の参照信号が入力される。第2の参照信号は、第1の参照信号の位相を90度(π/2)進ませた信号である。位相シフト回路160は、発振回路158から入力した正弦波信号(第1の参照信号)の位相を進ませ、第2の参照信号として出力する。
第2乗算器157は、第2の参照信号と、応答信号を乗算して、応答信号の虚部に比例した値を算出し、ローパスフィルタ161を介して、応答信号の虚部に比例した値をシグナルプロセッシング部155に出力するようになっている。なお、図10では、応答信号の虚部をIm|Vr|と示す。
発振回路158は、設定された正弦波信号を出力する回路であり、波形指示部として機能する。発振回路158は、前述したように、第1乗算器156及び位相シフト回路160に対して、正弦波信号を第1の参照信号として出力する。また、発振回路158は、DA変換器162を介して、指示信号出力端子59aに接続されており、正弦波信号を指示信号として出力する。
フィードバック信号入力端子59bは、AD変換器163を介して、シグナルプロセッシング部155に接続されている。シグナルプロセッシング部155は、AD変換器163を介して、フィードバック信号入力端子59bからフィードバック信号(検出信号)を入力する。
シグナルプロセッシング部155は、応答信号の実部に比例した値及び応答信号の虚部に比例した値を入力し、それらの値に基づいて、複素インピーダンスの実部及び虚部を算出する。その際、シグナルプロセッシング部155は、入力したフィードバック信号を用いて、実際に流れる信号の振幅と、参照信号との位相ずれを加味して、複素インピーダンスの実部及び虚部を算出(補正)する。
また、シグナルプロセッシング部155は、複素インピーダンスの絶対値と位相を算出する。詳しく説明すると、2位相ロックイン検出により、応答信号の実部と虚部がわかるため、応答信号の位相をθvとすると、複素平面の極座標表示では|Vr|e^jθvのように示すことができる。同様に、電流は、|I|e^jθiに示すように表すことができる。これから複素インピーダンスの極座標表示を|Z|e^jθzとすると、V=ZIから数式(3)のように表すことができる。また、「j」は、j^2=-1を満たす虚数単位である。
よって、複素インピーダンスの絶対値は|Z|=|Vr|/|I|、位相はθv-θiから求めることができる。そして、シグナルプロセッシング部155は、通信部54を介して、ECU60に算出結果を出力する。なお、図10では、複素インピーダンスの絶対値を|Z|と示し、その位相をarg(Z)と示す。
次に、第4実施形態における複素インピーダンス算出処理について図11に基づいて説明する。複素インピーダンス算出処理は、電池監視装置50により所定周期ごとに実行される。
複素インピーダンス算出処理において、発振回路158は、最初に複素インピーダンスの測定周波数を設定する(ステップS201)。測定周波数は、予め決められた測定範囲内の周波数の中から設定される。第4実施形態において、測定周波数は、例えば、シグナルプロセッシング部155により決定される。
次に、信号切替部153は、プリアンプ152からの応答信号が出力されるように切替を行う(ステップS202)。切り替えの指示は、例えば、シグナルプロセッシング部155により行われる。
次に発振回路158は、測定周波数に基づいて、正弦波信号(所定の交流信号)の周波数を決定し、DA変換器162を介して、指示信号出力端子59aから電流モジュレーション回路56に対して、当該正弦波信号の出力を指示する指示信号を出力する(ステップS203)。なお、指示信号の出力指示は、例えば、シグナルプロセッシング部155により行われる。DA変換器162によりアナログ信号に変換される際、電池セル42の電圧を考慮して、適切なオフセット値(直流バイアス)が設定されて、変換される。オフセット値(直流バイアス)の設定は、例えば、シグナルプロセッシング部155により行われる。オフセット値(直流バイアス)の設定は、電池セル42の直流電圧に基づき、行われることが望ましい。なお、電池セル42の直流電圧は、差動アンプ151により測定すればよい。
電流モジュレーション回路56は、指示信号に基づいて、電池セル42を電源として正弦波信号を出力させる(ステップS204)。これにより、電池セル42から正弦波信号が出力される。
電池セル42から正弦波信号を出力させると、電池セル42の端子間に電池セル42の内部複素インピーダンス情報を反映した電圧変動が生じる。プリアンプ152は、応答信号入力端子58を介して、その電圧変動を入力し、応答信号として出力する(ステップS205)。
なお、応答信号入力端子58に入力される際、電圧変動の直流成分はコンデンサC1によりカットされ、電圧変動の特徴部分だけ取り出される。また、プリアンプ152は、直流成分がカットされた微弱な電圧変動を増幅させて、応答信号として出力する。その際、AD変換器154は、信号切替部153を介して入力された応答信号を、デジタル信号に変換し、出力する。コンデンサC1によりカットされる直流成分の大きさは、電池セル42の直流電圧に基づき、調整されることが望ましい。同様に、電圧変動をどれだけ増幅させるかは、電池セル42の直流電圧に基づき、調整されることが望ましい。
第1乗算器156は、発振回路158から入力した正弦波信号を第1の参照信号とし、AD変換器154から入力した応答信号を乗算して、応答信号の実部に比例した値を算出する(ステップS206)。同様に、第2乗算器157は、位相シフト回路160から入力した第2の参照信号と、応答信号を乗算して、応答信号の虚部に比例した値を算出する。
これらの値は、ローパスフィルタ159及びローパスフィルタ161を介して、シグナルプロセッシング部155に入力される。なお、ローパスフィルタ159及びローパスフィルタ161を通過する際、直流成分(DC成分)以外の信号は減衰し、除去される。
シグナルプロセッシング部155は、フィードバック信号入力端子59bからフィードバック信号(検出信号)を入力する(ステップS207)。フィードバック信号は、シグナルプロセッシング部155に入力される際、AD変換器163により、デジタル信号に変換される。
シグナルプロセッシング部155は、フィードバック信号、及びローパスフィルタ159,161から入力された信号(実部及び虚部の比例値)に基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、及び位相のうちすべて若しくはいずれかを算出する(ステップS208)。フィードバック信号は、実際に電池セル42から流れる電流(つまり、フィードバック信号)と参照信号に比例する値との振幅又は位相のずれを補正するために利用される。
その後、シグナルプロセッシング部155は、通信部54を介して、算出結果をECU60に出力する(ステップS209)。そして、算出処理を終了する。
この算出処理は、測定範囲内の複数の周波数についての複素インピーダンスが算出されるまで繰り返し実行される。ECU60は、算出結果に基づいて、複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット)を作成し、電極及び電解質などの特性を把握する。例えば、蓄電状態(SOC)や劣化状態(SOH)を把握する。
なお、コールコールプロット全体を必ずしも作成する必要はなく、その一部に着目してもよい。例えば、走行時、一定の時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOC、SOH及び電池温度等の走行時における変化を把握してもよい。または、1日毎、1周ごと、若しくは1年ごとといった時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOH等の変化を把握してもよい。
第4実施形態の電池監視装置50では、以下の効果を有する。
シグナルプロセッシング部155は、応答信号入力端子58から入力した応答信号と第1の参照信号とを掛け合わせた値に基づいて、応答信号の実部に比例した値を算出する。また、シグナルプロセッシング部155は、正弦波信号の位相をシフトさせた信号を第2の参照信号とし、応答信号と第2の参照信号とを掛け合わせた値に基づいて、応答信号の虚部に比例した値を算出する。そして、これらの値に基づいて、複素インピーダンスを算出する。このように、いわゆるロックイン検出を行うことにより、応答信号から、発振回路158が指示する正弦波信号の周波数と同一の周波成分のみを抽出することができる。このため、ホワイトノイズやピンクノイズに強くなり、高精度に複素インピーダンスを算出することができる。特に車両に採用する場合、ノイズが多くなるため、好適に複素インピーダンスを算出することができる。また、ノイズに強くなるため、電池セル42から出力させる電流(正弦波信号)を小さくすることが可能となる。このため、消費電力や電池セル42や半導体スイッチ素子56aの温度上昇を抑制することができる。
また、シグナルプロセッシング部155は、電流モジュレーション回路56により電池セル42から実際に流れる電流を検出したフィードバック信号(検出信号)を入力し、参照信号に比例する値との振幅及び位相のずれを補正している。これにより、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
また、振幅及び位相のずれを補正しているため、指示信号をアナログ信号に変換する際、誤差が生じても、その誤差をフィードバック信号による補正により抑制することができる。このため、電流モジュレーション回路56と、DA変換器162との間にフィルタ回路などを設ける必要がなくなり、小型化することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の電池監視装置50について説明する。第5実施形態の電池監視装置50は、信号解析において、高速フーリエ変換(FFT)を実施する。以下、詳しく説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
図12に示すように、電池監視装置50のASIC部50aには、高速フーリエ変換を実施する演算部としてのシグナルプロセッシング部201を備える。シグナルプロセッシング部201は、AD変換器154を介して、電池セル42の直流電圧の測定値を入力するように構成されている。また、シグナルプロセッシング部201は、AD変換器154を介して、応答信号を入力するように構成されている。また、シグナルプロセッシング部201は、AD変換器163を介して、フィードバック信号を入力するように構成されている。また、シグナルプロセッシング部201は、発振回路158に接続されており、正弦波信号の周波数を設定可能に構成されている。
シグナルプロセッシング部201は、入力した応答信号(電圧信号)、及びフィードバック信号(電流信号)を高速フーリエ変換によりそれぞれ変換するように構成されている。そして、シグナルプロセッシング部201は、変換後の値に基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、位相を算出する。そして、シグナルプロセッシング部201は、通信部54を介して、ECU60に算出結果を出力する。
次に、第5実施形態におけるインピーダンス算出処理について図13に基づいて説明する。インピーダンス算出処理は、電池監視装置50により所定周期ごとに実行される。第5実施形態のインピーダンス算出処理において、ステップS301~ステップS305は、第4実施形態のインピーダンス算出処理におけるステップS201~ステップS205と同様である。なお、測定周波数の設定、切り替えの指示、指示信号の出力指示、オフセット値の設定等は、例えば、シグナルプロセッシング部201により行われる。
シグナルプロセッシング部201は、入力したAD変換器154から入力した応答信号に対して、高速フーリエ変換を実施する(ステップS306)。これにより、測定周波数に対する応答信号の振幅情報を得ることができる。
また、シグナルプロセッシング部201は、フィードバック信号入力端子59bからフィードバック信号を入力する(ステップS307)。フィードバック信号は、シグナルプロセッシング部155に入力される際、AD変換器163により、デジタル信号に変換される。
シグナルプロセッシング部201は、フィードバック信号に対して、高速フーリエ変換を実施する(ステップS308)。これにより、測定周波数に対するフィードバック信号の振幅情報を得ることができる。
シグナルプロセッシング部201は、ステップS306で取得した測定周波数に対する応答信号の振幅情報と、ステップS308で取得した測定周波数に対するフィードバック信号の振幅情報とに基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、及び位相のうちすべて若しくはいずれかを算出する(ステップS309)。その後、シグナルプロセッシング部201は、通信部54を介して、算出結果をECU60に出力する(ステップS310)。そして、算出処理を終了する。
この算出処理は、測定範囲内の複数の周波数についての複素インピーダンスが算出されるまで繰り返し実行される。ECU60は、算出結果に基づいて、複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット)を作成し、電極及び電解質などの特性を把握する。例えば、蓄電状態(SOC)や劣化状態(SOH)を把握する。
なお、コールコールプロット全体を必ずしも作成する必要はなく、その一部に着目してもよい。例えば、走行時、一定の時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOC、SOH及び電池温度等の走行時における変化を把握してもよい。または、1日毎、1周ごと、若しくは1年ごとといった時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOH等の変化を把握してもよい。
第5実施形態の電池監視装置50では、以下の効果を有する。
応答信号及びフィードバック信号をそれぞれフーリエ変換して、測定周波数の振幅情報及び位相情報を得るとともに、測定周波数の高調波の振幅情報及び位相情報を得る。測定周波数とその高調波についてそれぞれ電圧と電流の振幅及び始動の情報を得ることができるため、複数の周波数に対する複素インピーダンスを一度に算出することが可能となる。
また、シグナルプロセッシング部201は、電流モジュレーション回路56により電池セル42から実際に流れる電流を検出したフィードバック信号(検出信号)を入力し、当該信号をフーリエ変換している。このため、振幅及び位相のずれを補正することができ、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の電池監視装置50について説明する。第6実施形態の電池監視装置50は、第4実施形態と同様に、2位相ロックイン検出を実施する。なお、以下では、第6実施形態では、電池監視装置50の基本構成として、第4実施形態のものを例に説明し、第4実施形態とは異なる構成について詳しく説明する。そして、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
上記第4実施形態では、2位相ロックイン検出により、ホワイトノイズなどのノイズ信号を低減することができた。しかしながら、交流信号と同じ一定周波数のノイズ信号が存在し、当該ノイズ信号の位相が交流信号と位相が揃った場合、2位相ロックイン検出によっても当該ノイズ信号を検出してしまい、測定誤差が生じる可能性があった。一定周波数のノイズ信号としては、車両に搭載されるノイズ源(インバータ30等)の駆動周波数を起因とするノイズ信号や、車両に一時的に接続されるノイズ源(充電器等)の駆動周波数を起因とするノイズ信号などが考えられる。
第6実施形態では、これらの問題を解決するため、以下のような方法で、複素インピーダンスを算出している。以下、詳しく説明する。
電池監視装置50は、所定周期ごとに、図14に示すインピーダンス算出処理を実行する。インピーダンス算出処理において、シグナルプロセッシング部155は、最初に複素インピーダンスの測定周波数を設定する(ステップS401)。測定周波数は、予め決められた測定範囲内の周波数の中から設定される。
次に、シグナルプロセッシング部155は、測定周波数が、所定の周波数範囲内であるか否かを判定する(ステップS402)。所定の周波数範囲とは、周波数が一定であるノイズ信号が発生している可能性が高い範囲(ノイズ範囲)のことである。例えば、インバータ30がノイズ源となるノイズ信号は、インバータ30の駆動周波数と一致する又は近傍の周波数、又は駆動周波数の高調波成分、又はインバータ30の寄生インダクタンス、寄生容量を含むL成分やC成分による共振周波数とその高調波を有する。このため、周波数が一定であるノイズ信号が発生している可能性が高い範囲は、ある程度予測可能である。そこで、インバータ30等のノイズ源の駆動周波数や実験結果に基づいて所定の周波数範囲が定められている。すなわち、ノイズ源から出力されるノイズ信号の周波数に基づいて周波数が一定であるノイズ信号が発生している可能性が高い範囲が所定の周波数範囲として定められて、記憶部としてのシグナルプロセッシング部155に記憶されている。
ステップS402の判定結果が否定の場合、シグナルプロセッシング部155は、応答信号のロックイン検出を実施する(ステップS403)。なお、応答信号のロックイン検出は、第4実施形態と同様(ステップS202~S207)であるため、詳細な説明は省略する。
シグナルプロセッシング部155は、入力した応答信号の周波数成分と電池セル42から出力させた電流信号に基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、位相のすべて若しくはいずれかを算出する(ステップS404)。ここで電流信号は、フィードバック信号に基づくものであってもよいし、指示信号により出力を指示した正弦波信号に基づくものであってもよい。また、電流信号は、フィードバック信号から測定周波数成分をロックイン検出したものであってもよい。
そして、シグナルプロセッシング部155は、通信部54を介して、算出した複素インピーダンスをECU60に出力する(ステップS405)。そして、インピーダンス算出処理を終了する。
次に、ステップS402の判定結果が肯定の場合における処理について説明する。つまり、測定周波数が、所定の周波数範囲内であり、一定周波数のノイズ信号が発生している可能性が高い場合における処理について説明する。ステップS402の判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号(バックグラウンドノイズ)の検出を実行させる(ステップS406)。
ステップS406において、シグナルプロセッシング部155は、電池セル42に対して外乱を与えない場合に検出可能なノイズ信号(バックグラウンドノイズ)のロックイン検出を実行させる。つまり、電流モジュレーション回路56により正弦波信号を電池セル42から出力させない状態において、ノイズ信号(バックグラウンドノイズ)のうち、正弦波信号の周波数(測定周波数)における周波数成分(直流成分)を抽出するロックイン検出を行う。なお、正弦波信号を出力させないこと以外は、応答信号のロックイン検出と同じであるため、詳細な説明を省略する。
ステップS406の処理後、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号の周波数成分を入力すると、ステップS407の処理に移行する。ステップS407において、シグナルプロセッシング部155は、入力したノイズ信号の周波数成分が所定の基準値以上であるか否かを判定する(ステップS407)。この処理により、ノイズ信号の有無を判定することとなる。このため、本実施形態のシグナルプロセッシング部155が、ノイズ判定部に相当する。
ステップS407の判定結果が否定の場合、すなわち、ノイズ信号が大きくない場合、シグナルプロセッシング部155は、ステップS403へ移行する。
一方、ステップS407の判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、測定周波数における応答信号(ノイズ信号を含む)の周波数成分のロックイン検出を行う(ステップS408)。なお、ステップS408で入力される応答信号の周波数成分には、ノイズ信号による誤差が含まれることとなる。
次に、ステップS408の処理後、シグナルプロセッシング部155は、応答信号の周波数成分を入力すると、ステップS409の処理に移行する。ステップS409において、シグナルプロセッシング部155は、ステップS406と同様に、ノイズ信号のロックイン検出を再び行う(ステップS409)。
なお、ステップS406~ステップS409までの処理において、参照信号の位相は、同じとなるように調整する必要がある。参照信号の位相がずれた場合、ロックイン検出が正常に行うことができないためである。その方法としては、例えば、ステップS406において参照信号を出力させた後、他のステップの処理中に参照信号の出力を停止させることなく、出力させ続ければ、一貫してノイズ成分と同一の位相関係を保つことができる。
ステップS409の処理後、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号の周波数成分を入力すると、ステップS410に移行する。ステップS410において、シグナルプロセッシング部155は、ステップS406の処理により入力したノイズ信号の周波数成分と、ステップS409の処理により入力したノイズ信号の周波数成分を比較する。そして、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号の差(振幅差)が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS410)。つまり、応答信号の周波数成分を取得する前後でノイズ信号に変化があるか否かについて判定する。
ステップS410の判定結果が肯定の場合(変化がない場合)、シグナルプロセッシング部155は、ステップS408の処理により入力した応答信号の周波数成分から、ノイズ信号を除去する(ステップS411)。より詳しく説明すると、シグナルプロセッシング部155は、ステップS408の処理により入力した応答信号の周波数成分と、ステップS406(又はステップS409)の処理により入力したノイズ信号の周波数成分とを比較して、ノイズ信号を除去する。具体的には、シグナルプロセッシング部155は、応答信号の周波数成分からノイズ信号の周波数成分を減算することにより、ノイズ信号を除去する。この処理により、シグナルプロセッシング部155が、ノイズ対応部に相当する。
そして、シグナルプロセッシング部155は、ステップS404の処理に移行する。すなわち、シグナルプロセッシング部155は、ステップS411で算出された応答信号の周波数成分と電池セル42から出力させた電流信号に基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、位相のすべて若しくはいずれかを算出する(ステップS404)。
一方、ステップS411の判定結果が否定の場合(変化がある場合)、シグナルプロセッシング部155は、応答信号の測定回数が所定回数以下であるか否かを判定する(ステップS412)。この判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、ステップS406の処理に再び移行する。なお、その際、応答信号の測定回数に1加算する。この測定回数は、インピーダンス算出処理の開始時又は終了時にリセットされる。
一方、ステップS412の判定結果が否定の場合、シグナルプロセッシング部155は、通信部54を介して、応答信号を正確に入力することができない旨を知らせる異常信号をECU60に出力する(ステップS413)。そして、インピーダンス算出処理を終了する。
このインピーダンス算出処理は、測定範囲内の複数の周波数についての複素インピーダンスが算出されるまで繰り返し実行される。ECU60は、算出結果に基づいて、例えば、複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット)を作成し、電極及び電解質などの特性を把握する。例えば、蓄電状態(SOC)や劣化状態(SOH)を把握する。
なお、コールコールプロット全体を必ずしも作成する必要はなく、その一部に着目してもよい。例えば、走行時、一定の時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOC、SOH及び電池温度等の走行時における変化を把握してもよい。または、1日毎、1周ごと、若しくは1年ごとといった時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、当該特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOH等の変化を把握してもよい。
第6実施形態の電池監視装置50は、以下の効果を有する。
電池セル42から正弦波信号(交流信号)を出力させる前に、シグナルプロセッシング部155により指示される正弦波信号の周波数(測定周波数)に応じたノイズ信号の有無を判定し、ノイズ信号が存在する場合には、当該ノイズ信号を除去するようにした。
具体的には、シグナルプロセッシング部155は、応答信号の周波数成分からノイズ信号の周波数成分を減算し、減算後の応答信号の周波数成分と電池セル42から出力させた電流信号に基づいて、複素インピーダンスを算出するようにしている。これにより、測定周波数と同じ周波数のノイズ信号が存在する場合であっても当該ノイズ信号の影響を抑制し、複素インピーダンスの検出精度を向上させることができる。
また、電池監視装置50は、正弦波信号を出力させる前に、電池セル42に流れるノイズ信号を入力する。そして、電池監視装置50は、当該ノイズ信号と、指示信号により指示される正弦波信号に応じて決定された参照信号とを乗算した値に基づいて、前記ノイズ信号のうち、正弦波信号に応じたノイズ信号の周波数成分を検出する。
これにより、複素インピーダンスを算出する場合と同様に、測定周波数に応じたノイズ信号の周波数成分をロックイン検出するため、高精度にノイズ信号の除去を行うことができる。また、ロックイン検出を流用して、ノイズ信号を特定するため、構成を簡単にすることができる。
車両の場合、インバータ30など所定の駆動周波数で駆動するため、当該駆動周波数に基づいて、特定の周波数帯域でノイズ信号が発生する可能性が高い。そこで、シグナルプロセッシング部155は、ステップS401で設定された測定周波数が所定の周波数範囲内である場合、ノイズ信号が存在する可能性が高いと判定することとした。これにより、簡易的に測定周波数に応じたノイズ信号の有無を判定することができる。
また、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号が存在する可能性が高いと判定された場合、ロックイン検出されたノイズ信号の周波数成分が基準値以上であるか否かに基づいて、ノイズ信号の有無を判別している。これにより、高精度にノイズ信号を判定することができる。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の電池監視装置50について説明する。第7実施形態では、第6実施形態とはインピーダンス算出処理が異なる。具体的には、第6実施形態のインピーダンス算出処理では、ステップS402の処理が省略されている。すなわち、測定周波数がいずれの値でも、ノイズ信号のうち、測定周波数に応じた周波数成分をロックイン検出し、当該周波数成分の大きさにより、ノイズ信号の有無を判定している。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態の電池監視装置50について説明する。第8実施形態では、第6実施形態とはインピーダンス算出処理が異なる。具体的には、第8実施形態のインピーダンス算出処理では、ノイズ信号の有無を判定していない。すなわち、ステップS402,S403,S407の処理が省略されている。
このため、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号の有無にかかわらず、毎回、ノイズ信号のうち、測定周波数に応じた周波数成分をロックイン検出し、当該ノイズ信号の周波数成分を、応答信号の周波数成分から除去することとなる。
(第9実施形態)
次に、第9実施形態の電池監視装置50について説明する。第9実施形態では、第6実施形態とはインピーダンス算出処理が異なる。第9実施形態のインピーダンス算出処理では、ノイズ信号の除去を行うことなく、回避するようにしている。
具体的には、ステップS402の判定結果が肯定の場合、つまり、測定周波数が、所定の周波数範囲内であり、一定周波数のノイズ信号が発生している可能性が高い場合、シグナルプロセッシング部155は、測定周波数を変更する。測定周波数の変更方法は、任意の方法でよく、測定周波数が周波数範囲外となるように、測定周波数を変更すればよい。この処理後、シグナルプロセッシング部155は、ステップS403の処理に移行する。これにより、シグナルプロセッシング部155は、簡単な方法で、ノイズ信号を回避することが可能となる。
(第10実施形態)
次に、第10実施形態の電池監視装置50について説明する。第10実施形態では、第6実施形態とはインピーダンス算出処理が異なる。具体的には、第10実施形態のインピーダンス算出処理では、ノイズ信号の除去を行うことなく、回避するようにしている。具体的には、シグナルプロセッシング部155は、ノイズ信号のロックイン検出を行い、ノイズ信号の周波数成分が基準値以上である場合には、測定周波数を変更する。これにより、シグナルプロセッシング部155は、簡単な方法で、ノイズ信号を回避することが可能となる。
(他の実施形態)
・上記実施形態では、電池セル42毎に電池監視装置50を設けたが、複数の電池セル42ごと(例えば、電池モジュール41ごと、組電池40ごと)に、電池監視装置50を設けてもよい。その際、電池監視装置50の機能の一部を共通化してもよい。
例えば、図15に示すように、安定化電源供給部301、通信部54及びマイコン部53を共通化してもよい。この場合、負電極の電位が電池セル42ごとに異なる場合がある。このため、各電池セル42の情報を伝達する際に利用される各電気信号の基準電位が異なる場合がある。そこで、基準電位の差を考慮してマイコン部53へ各電気信号を入力する機能を設けて、演算する必要がある。異なる基準電位間の信号伝達手段としては、コンデンサやトランス、電波、光を用いる方法がある。
また、例えば、図16に示すように、安定化電源供給部301、通信部54、差動アンプ151、プリアンプ152、信号切替部153、AD変換器154,163、シグナルプロセッシング部155、第1乗算器156、第2乗算器157、ローパスフィルタ159,161、発振回路158、位相シフト回路160、DA変換器162、フィードバック回路56d、電流検出アンプ56cを共通化してもよい。
この場合、直流電圧、応答信号、指示信号などの各種信号をマルチプレクサ302~304のような多重化装置により、信号の切替を可能に構成すればよい。
同様に、例えば、図17に示すように、安定化電源供給部301、通信部54、差動アンプ151、プリアンプ152、信号切替部153、AD変換器154,163、シグナルプロセッシング部201、発振回路158、DA変換器162、フィードバック回路56d、電流検出アンプ56cを共通化してもよい。
この場合、直流電圧、応答信号、指示信号等の各種信号をマルチプレクサ302~304のような多重化装置により、信号の切替を可能に構成すればよい。
また、複数の電池セル42を直列に接続した高電位側と低電位側をそれぞれ電源の正極、負極として用いる部分と、個々の電池セル42の両極をそれぞれ電源の正極、負極として用いる部分とで分け、いずれか一方のみを共通化してもよい。例えば、図18に示すように、通信部54、AD変換器154,163、シグナルプロセッシング部155、201、発振回路158、位相シフト回路160、DA変換器162を共通化してもよい。なお、図18では、第1乗算器156、第2乗算器157、ローパスフィルタ159,161の図示を省略しているが、ロックイン検出を行うシグナルプロセッシング部155を採用する場合、それらも共通化することとなる。
なお、共通化した部分には、第1電源401から電力が供給され、第1電源401には、複数の電池セル42から電力供給される。一方、共通化していない部分には、第2電源402から電力が供給され、第2電源402には、各電池セル42から電力供給される。ちなみに、第1電源401の出力電圧と、第2電源402の出力電圧は異なる。
この場合、直流電圧、応答信号、指示信号等の各種信号をマルチプレクサ302~304のような多重化装置により、信号の切替を可能に構成すればよい。
なお、図15~図17の電池監視装置50においても図18の電池監視装置50と同様に、複数の電源を設けてもよい。
・上記実施形態において、各電池セル42の蓄電状態や電圧を均等化する均等化処理を電池監視装置50に実施させてもよい。均等化処理とは、各電池セル42の蓄電状態を揃えるように、他の電池セル42に比較して蓄電状態が高い一部の電池セル42を放電させる処理である。これにより、各電池セル42の蓄電状態を揃え、電池セル42のうち一部が過充電となることを抑制することができる。そして、電池監視装置50が、均等化処理を実施する場合、電流モジュレーション回路56を利用して、電池セル42を放電させてもよい。この場合、電池監視装置50が放電制御部として機能する。
具体的に説明すると、第1実施形態において、マイコン部53は、各電池セル42の蓄電状態に基づいてECU60等から放電指示を受けた場合、若しくは、電池セル42の蓄電状態又は電圧が所定値以上となった場合、電流モジュレーション回路56に指示信号を出力し、電池セル42から正弦波信号や矩形波といった周期関数若しくは直流信号を出力させる。そして、マイコン部53は、放電指示が終了するまで、若しくは電池セル42の蓄電状態又は電圧が所定値よりも小さくなるまで、信号の出力を継続させる。これにより、均等化処理を実施する。他の実施形態でも同様に、マイコン部53若しくはシグナルプロセッシング部155,201が、均等化処理を実施してもよい。また、図15~図17に示す電池監視装置50においても、同様に、均等化処理を実施してもよい。
そして、均等化処理のために、電池セル42から放電させる際、正弦波信号を出力させて、複素インピーダンスを算出してもよい。これにより、消費電力を抑制することができる。なお、均等化処理のために出力させる電流は、電力消費を抑制するため、及び装置の小型化のため、一般的には微弱な電流とされている。このため、第6実施形態のように微弱な電流でもロックイン検出により、複素インピーダンスを精度よく算出することができる電池監視装置50において均等化処理を実施させることが好ましい。
・上記実施形態において、フィルタ部55は、素子のみにより構成されていなくてもよい。例えば、配線、コネクタ接触部、プリント基板のパターン配線やベタパターン間により、又はこれらの構成と素子とが混在する構成であってもよい。
・上記実施形態において、電流モジュレーション回路56と、入出力部52(又はDA変換器162)との間に、フィルタ回路を設けてもよい。これにより、指示信号をアナログ信号に変換する際の誤差を抑制することができる。
・上記実施形態において、差動アンプ151、プリアンプ152、信号切替部153、AD変換器154,163、シグナルプロセッシング部155、第1乗算器156、第2乗算器157、ローパスフィルタ159,161、発振回路158、位相シフト回路160、DA変換器162、フィードバック回路56d、及び電流検出アンプ56cの一部又は全部は、ソフトウェアにより実現してもよい。
・上記実施形態において、フィードバック回路56dがなくてもよい。また、電流検出アンプ56cにより抵抗56bに流れる電流を検出しなくてもよい。また、マイコン部53、シグナルプロセッシング部155,201は、フィードバック信号を入力しなくてもよい。
・上記実施形態において、直流電圧を検出したが、検出しなくてもよい。また、上記実施形態において、信号切替部153を設けなくてもよい。また、上記実施形態において、フィードバック信号も信号切替部153により切り替えの対象としてもよい。これにより、AD変換器154,163を共通化することができる。
・上記実施形態の電池監視装置50を、車両として、HEV,EV,PHV,補機電池、電動飛行機、電動バイク、電動船舶に採用してもよい。また、上記実施形態において、電池セル42は、並列に接続されていてもよい。
・上記第4実施形態~第10実施形態において、AD変換時におけるエイリアシングを防止するため、フィルタ回路をプリアンプ152の前後、又はAD変換器154の直前に設けてもよい。
・上記実施形態において、電池モジュール41単位で、状態を監視してもよい。このとき、電池モジュール41ごとに通信部54を設ける場合、各通信部54からECU60への通信は電位基準の異なる絶縁通信となることがある。例えば、絶縁トランスやコンデンサを用いて絶縁通信を行う場合がある。
・上記実施形態において、フィードバック信号をロックイン検出してもよい。図19に基づいて、具体的に説明すると、インピーダンス算出処理は、電池監視装置50により所定周期ごとに実行される。
インピーダンス算出処理において、発振回路158は、最初に複素インピーダンスの測定周波数を設定する(ステップS501)。測定周波数は、予め決められた測定範囲内の周波数の中から設定される。別例において、測定周波数は、例えば、シグナルプロセッシング部155により決定される。
次に発振回路158は、測定周波数に基づいて、正弦波信号(所定の交流信号)の周波数を決定し、DA変換器162を介して、指示信号出力端子59aから電流モジュレーション回路56に対して、当該正弦波信号の出力を指示する指示信号を出力する(ステップS502)。電流モジュレーション回路56は、指示信号に基づいて、電池セル42を電源として正弦波信号を出力させる。これにより、電池セル42から正弦波信号が出力される。
次に、シグナルプロセッシング部155は、フィードバック信号を2位相ロックイン検出により、測定する(ステップS503)。具体的には、シグナルプロセッシング部155は、発振回路158が指示した正弦波信号(参照信号)と、入力したフィードバック信号と乗算する。また、発振回路158が指示した正弦波信号の位相を90度ずらした信号と、入力したフィードバック信号と乗算する。シグナルプロセッシング部155は、これらの乗算結果から、フィードバック信号の振幅と位相値を算出する。
シグナルプロセッシング部155は、次に、算出した振幅と振幅補正値との差が振幅基準値以内であるか否かを判定する(ステップS504)。振幅補正値は、出力されることが期待される正弦波信号の振幅を示すものである。
この判定結果が否定の場合、シグナルプロセッシング部155は、ステップS503による測定回数(フィードバック信号の測定回数)が所定回数以上であるか否かを判定する(ステップS505)。この判定結果が否定の場合、シグナルプロセッシング部155は、測定回数を1加算して、ステップS503を再実行する。
一方、ステップS505の判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、測定したフィードバック信号の振幅の平均を算出し、平均値を振幅補正値として書き換える(ステップS506)。また、測定回数をクリアする。
ステップS504の判定結果が肯定の場合、又はステップS506の実行後、シグナルプロセッシング部155は、ステップS503にて算出した位相値と位相補正値との差が位相基準値以内であるか否かを判定する(ステップS507)。位相補正値は、出力されることが期待される正弦波信号の位相を示すものである。
この判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、ステップS503による測定回数(フィードバック信号の測定回数)が所定回数以上であるか否かを判定する(ステップS508)。この判定結果が否定の場合、シグナルプロセッシング部155は、測定回数を1加算して、ステップS503を再実行する。
一方、ステップS508の判定結果が肯定の場合、シグナルプロセッシング部155は、測定したフィードバック信号の位相の平均を算出し、平均値を位相補正値として書き換える(ステップS509)。また、測定回数をクリアする。次に、シグナルプロセッシング部155は、応答信号を2位相ロックイン検出により測定する(ステップS410)。この処理は、第6実施形態と同様であるので説明を省略する。
シグナルプロセッシング部155は、フィードバック信号及びローパスフィルタ159,161から入力された信号(実部及び虚部の比例値)に基づいて、複素インピーダンスの実部、虚部、絶対値、及び位相のうちすべて若しくはいずれかを算出する(ステップS511)。フィードバック信号は、振幅補正値及び位相補正値により定められ、実際に電池セル42から流れる電流(つまり、フィードバック信号)と参照信号に比例する値との振幅又は位相のずれを補正するために利用される。その後、シグナルプロセッシング部155は、通信部54を介して、算出結果をECU60に出力する(ステップS512)。そして、算出処理を終了する。
以上のより、フィードバック信号を2位相ロックイン検出により測定するため、ノイズが存在する環境下にあっても、電池セル42から実際に出力される電流信号を精度よく測定することができる。そして、このフィードバック信号を複素インピーダンス算出時の補正に利用するため、複素インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
・上記実施形態において、電池セル42から出力させる電流信号は、正弦波信号に限らない。例えば、交流信号であれば、矩形波や三角波等の信号であっても構わない。
・上記実施形態において、ECU60は、複数のECUにより構成されていてもよい。例えば、機能ごとに複数のECUを設けてもよく、また、制御対象ごとに複数のECUを設けてもよい。例えば、電池用ECUと、インバータ制御用ECUとに分けてもよい。
・上記実施形態において、ロックイン検出を行う場合、発振回路158が指示する正弦波信号を参照信号(第1の参照信号)としたが、検出信号(フィードバック信号)を参照信号としてもよい。また、2位相ロックイン検出を行う場合、検出信号(フィードバック信号)の位相をずらして第2の参照信号とすればよい。
・上記実施形態において、電池セル42(電池モジュール41、組電池40)は、指示に基づいて正弦波信号を出力している際に(応答信号の出力時)、周辺回路の電源として用いられてもよい。逆に、電池セル42(電池モジュール41、組電池40)は、指示に基づいて正弦波信号を出力している際に(応答信号の出力時)、周辺回路の電源として用いられないように構成してもよい。
・上記実施形態において、回路基板72の長手方向に沿って、第2電気経路82を延びるように配置する際、第2A電気経路82aと第2B電気経路82bとの間の距離を極力短くなるように構成することが望ましい。
・上記実施形態において、電気経路を回路基板72の異なる層に配線する場合、ずらして配線することが望ましい。これにより、浮遊容量を低減することができる。
・上記実施形態において、電池セル42の上面に防爆弁(安全弁)が配置されている場合、電池セル42に対して予め決められた位置に回路基板72が配置された状態において、回路基板72のうち、防爆弁と対向する領域を避けて、回路素子及び電気経路81,82が設けられていることが望ましい。つまり、防爆弁と重複し、直上となる領域を避けて、回路素子や電気経路が設けられていることが望ましい。回路素子は、例えば、電流モジュレーション回路56を構成する素子や、ASIC部50aなどのことである。
また、その際、当該防爆弁を避けるように、回路基板72上に貫通孔が設けられていてもよい。なお、上記実施形態では、ASIC部50aが、回路基板72の長手方向端部、すなわち、電池セル42の上面を避けて配置されているため、防爆弁を避ける貫通孔を容易に回路基板72に設けることが可能となる。また、回路基板72に貫通孔を設けた場合には、電気経路を可能な限り短くなるように配線することが望ましい。なお、第2実施形態において説明した図8のように、回路基板72を折り曲げて電池セル42の側面に配置する場合、ASIC部50aなどが第1基板72aに配置されていないことから、防爆弁を避けるように貫通孔を容易に設けることができる。