JP7199643B2 - 車両用操向装置 - Google Patents

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Description

本発明は、トーションバー等の捩れ角に基づいて所望の操舵トルクを実現し、路面の状態に影響されず、経年による機構系特性の変化に左右されない高性能な車両用操向装置に関する。
車両用操向装置の1つである電動パワーステアリング装置(EPS)は、車両の操舵系にモータの回転力でアシスト力(操舵補助力)を付与するものであり、インバータから供給される電力で制御されるモータの駆動力を、減速機構を含む伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸にアシスト力として付与する。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシスト力を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っている。
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、トーションバーを有するコラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクTsを検出するトルクセンサ10及び操舵角θhを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって、EPS用モータ20に供給する電流を制御する。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット30は主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTs及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Vsは、電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTs及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差I(=Irefm-Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI(比例積分)制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。
加算部32Aには補償信号生成部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
このように、従来の電動パワーステアリング装置でのアシスト制御では、運転者の手入力にて加えられた操舵トルクをトーションバーの捩れトルクとしてトルクセンサで検出し、主にそのトルクに応じたアシスト電流としてモータ電流を制御している。しかしながら、この方法で制御を行なう場合、路面の状態(例えば傾斜)の違いにより、操舵角によって異なる操舵トルクとなってしまうことがある。モータ出力特性の経年使用によるバラツキによっても、操舵トルクに影響を与えることがある。
かかる問題を解決するために、例えば、特許第5208894号公報(特許文献1)に示されるような電動パワーステアリング装置が提案されている。特許文献1の電動パワーステアリング装置では、運転者の触覚特性に基づく適切な操舵トルクを与えるために、操舵角又は操舵トルクと手応え量との関係に基づいて決定される操舵角と操舵トルクとの関係(操舵反力特性マップ)に基づいて、操舵トルクの目標値を設定している。
特許第5208894号公報
しかしながら、特許文献1の電動パワーステアリング装置では、操舵反力特性マップを予め求めておかなければならず、また、操舵トルクの目標値と検出される操舵トルクとの偏差に基づいて制御を行っているので、操舵トルクに対する影響が残ってしまうおそれがある。
また、電動パワーステアリング装置によるアシスト制御では、ハンドルを切った状態から直進状態になるように中立位置方向へハンドルを戻す場合、ハンドルが中立位置まで滑らかに戻らずに途中で停止する場合や、中立位置を超える(オーバーシュート)場合がある。このような状態は、運転者が修正操舵を行わなければならず、運転者の負荷となる。この問題の解決も望まれている。
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、路面の状態に影響されず、経年によるステアリング操舵系の機構特性の変化に左右されず、操舵角等に対して同等の操舵トルクを容易に実現することが可能な車両用操向装置を提供することにある。更に、ハンドルを中立位置付近まで滑らかに戻せるようにし、運転者の負荷を軽減することも目的である。
本発明は、任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置に関し、本発明の上記目的は、目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部と、ハンドルへの手入力トルクを推定し、手入力トルク推定値を求める手入力トルク推定部、及び、操舵角を微分し、第1角速度情報を演算する微分部を具備し、前記第1角速度情報及び前記手入力トルク推定値を用いて、ハンドル戻りを補償するハンドル戻り補償のための戻り補償信号を求めるハンドル戻り補償部とを備え、前記戻り補償信号による前記ハンドル戻り補償を反映させた前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することにより達成される。
また、本発明の上記目的は、前記目標操舵トルク生成部が前記ハンドル戻り補償部を具備し、前記戻り補償信号を前記目標操舵トルクとして出力することにより、前記ハンドル戻り補償を反映させることにより、或いは、前記戻り補償信号により前記モータ電流指令値を補正することにより、前記ハンドル戻り補償を反映させることにより、或いは、前記ハンドル戻り補償部が、前記手入力トルク推定値の大きさに基づいてトルク感応ゲインを求めるトルク感応ゲイン部を更に具備し、前記第1角速度情報に対して前記トルク感応ゲインを乗算補正して前記戻り補償信号を求めることにより、或いは、前記手入力トルク推定値の大きさが大きくなるに従って前記トルク感応ゲインが小さくなるようになっていることにより、或いは、前記ハンドル戻り補償部が、前記第1角速度情報の大きさに基づいて速度感応ゲインを求める速度感応ゲイン部を更に具備し、前記トルク感応ゲイン及び前記速度感応ゲインを前記第1角速度情報に対して乗算補正して前記戻り補償信号を求めることにより、或いは、前記第1角速度情報の大きさがゼロから所定の値まででは、前記第1角速度情報の大きさが大きくなるに従って前記速度感応ゲインが大きくなり、前記第1角速度情報の大きさが前記所定の値を超えたら、前記第1角速度情報の大きさが大きくなるに従って前記速度感応ゲインが小さくなるようになっていることにより、或いは、前記ハンドル戻り補償部が、前記戻り補償信号の上下限値を制限する制限部を更に具備することにより、或いは、前記ハンドル戻り補償部が、前記操舵角に対する目標速度を求める目標速度設定部を更に具備し、前記第1角速度情報及び前記目標速度から第2角速度情報を演算し、前記第2角速度情報に対して乗算補正して前記戻り補償信号を求めることにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、基本マップを用いて前記操舵角及び車速より第1トルク信号を求める基本マップ部と、車速感応であるダンパゲインマップを用いて第3角速度情報に基づいて第2トルク信号を求めるダンパ演算部と、操舵状態及び前記操舵角を用いてヒステリシス特性を持つ第3トルク信号を求めるヒステリシス補正部とを更に具備し、前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号並びに前記戻り補償信号より前記目標操舵トルクを算出することにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、基本マップを用いて前記操舵角及び車速より第1トルク信号を求める基本マップ部と、車速感応であるダンパゲインマップを用いて第3角速度情報に基づいて第2トルク信号を求めるダンパ演算部と、操舵状態及び前記操舵角を用いてヒステリシス特性を持つ第3トルク信号を求めるヒステリシス補正部とを具備し、前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号より前記目標操舵トルクを算出することにより、或いは、前記基本マップ及び前記ヒステリシス補正部の特性が車速感応であることにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角及び前記車速より前記第1トルク信号を求めることにより、より効果的に達成される。
本発明の車両用操向装置によれば、目標操舵トルク生成部で生成される目標操舵トルクを基に求められる目標捩れ角に対して制御を行うことにより、目標捩れ角に捩れ角が追従するように動作し、所望の操舵トルクを実現し、運転者の操舵の感覚に基づく適切な操舵トルクを与えることができる。
更に、手入力トルクを推定し、手入力トルク推定値を基にハンドル戻りを補償することにより、的確にハンドルを中立位置付近まで戻すことができ、運転者の負荷を軽減することができる。
電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。 電動パワーステアリング装置のコントロールユニット(ECU)内の構成例を示すブロック図である。 EPS操舵系と各種センサの設置例を示す構造図である。 本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。 目標操舵トルク生成部の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。 基本マップの特性例を示す線図である。 ダンパゲインマップの特性例を示す線図である。 ヒステリシス補正部の特性例を示す線図である。 ハンドル戻り補償部の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。 ハンドル及びトーションバーの模式図である。 トルク感応ゲインマップの特性例を示す線図である。 速度感応ゲインマップの特性例を示す線図である。 制限部での上下限値の設定例を示す線図である。 捩れ角制御部の構成例を示すブロック図である。 本発明の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。 目標操舵トルク生成部の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。 捩れ角制御部の動作例を示すフローチャートである。 ハンドル戻り補償部の効果を示すシミュレーションにおいて、ハンドル戻り補償がない場合とある場合のハンドル角の時間応答の例を示すグラフである。 ハンドル戻り補償部の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。 目標速度設定マップの特性例を示す線図である。 目標操舵トルク生成部の動作例(第2実施形態)を示すフローチャートである。 本発明の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。 目標操舵トルク生成部の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。 本発明の動作例(第3実施形態)を示すフローチャートである。 目標操舵トルク生成部の動作例(第3実施形態)を示すフローチャートである。 目標操舵トルク生成部の構成例(第4実施形態)を示すブロック図である。 本発明の構成例(第5実施形態)を示すブロック図である。 本発明の構成例(第6実施形態)を示すブロック図である。 位相補償部の挿入例を示すブロック図である。 SBWシステムの概要を示す構成図である。 本発明の構成例(第7実施形態)を示すブロック図である。 目標転舵角生成部の構成例を示すブロック図である。 転舵角制御部の構成例を示すブロック図である。 本発明の動作例(第7実施形態)を示すフローチャートである。
本発明は、路面の状態に影響されず、操舵角等に対して同等の操舵トルクを実現するための車両用操向装置であり、トーションバー等の捩れ角を、操舵角等に応じた値に追従するように制御することにより所望の操舵トルクを実現している。
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
先ず、本発明に係る車両用操向装置の1つである電動パワーステアリング装置に関連する情報を検出する各種センサの設置例について説明する。図3は、EPS操舵系と各種センサの設置例を示す図であり、コラム軸2にはトーションバー2Aが備えられている。操向車輪8L,8Rには路面反力Fr及び路面情報(摩擦係数)μが作用する。トーションバー2Aを挟んでコラム軸2のハンドル側には上側角度センサが設けられ、トーションバー2Aを挟んでコラム軸2の操向車輪側には下側角度センサが設けられており、上側角度センサはハンドル角θを検出し、下側角度センサはコラム角θを検出する。操舵角θhはコラム軸2の上部に設けられた舵角センサで検出され、ハンドル角θ及びコラム角θの偏差から、下記数1及び数2によってトーションバーの捩れ角Δθ及びトーションバートルクTtを求めることができる。なお、Ktはトーションバー2Aのバネ定数である。
Figure 0007199643000001
Figure 0007199643000002
トーションバートルクTtは、例えば特開2008-216172号公報で示されるトルクセンサを用いて検出することも可能である。なお、本実施形態では、トーションバートルクTtを操舵トルクTsとしても扱うこととする。
次に、本発明の構成例について説明する。
図4は本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図であり、運転者のハンドル操舵はEPS操舵系/車両系100内のモータ20でアシスト制御される。目標操舵トルクTrefを出力する目標操舵トルク生成部200には、操舵角θhの他に、車速Vs、操舵トルクTs及び右切り/左切り判定部400から出力される右切り又は左切りの操舵状態STsが入力される。目標操舵トルクTrefは変換部500で目標捩れ角Δθrefに変換され、目標捩れ角Δθrefは、トーションバー2Aの捩れ角Δθと共に捩れ角制御部300に入力される。捩れ角制御部300は、捩れ角Δθが目標捩れ角Δθrefとなるようなモータ電流指令値Imcを演算し、モータ電流指令値ImcによりEPSのモータ20が駆動される。
右切り/左切り判定部400は、モータ角速度ωmを基に操舵が右切りか左切りかを判定し、判定結果を操舵状態STsとして出力する。例えば、モータ角速度ωmが正の値の場合は「右切り」と判定し、負の値の場合は「左切り」と判定する。なお、モータ角速度ωmの代わりに、操舵角θh、ハンドル角θ又はコラム角θに対して速度演算を行って算出される角速度を用いても良い。
図5は目標操舵トルク生成部200の構成例を示しており、目標操舵トルク生成部200は、基本マップ部210、微分部220、ダンパゲイン部230、ヒステリシス補正部240、ハンドル戻り補償部250、乗算部260並びに加算部261、262及び263を備える。操舵角θhは基本マップ部210、微分部220、ヒステリシス補正部240及びハンドル戻り補償部250に入力される。右切り/左切り判定部400から出力される操舵状態STsはヒステリシス補正部240に入力される。操舵トルクTsはハンドル戻り補償部250に入力され、車速Vsは基本マップ部210及びダンパゲイン部230に入力される。
基本マップ部210は、基本マップを有し、基本マップを用いて、車速Vsをパラメータとするトルク信号(第1トルク信号)Tref_aを出力する。基本マップはチューニングにより調整されており、例えば、図6(A)に示されるように、トルク信号Tref_aは、操舵角θhの大きさ(絶対値)|θh|が増加するにつれて増加し、車速Vsが増加するにつれても増加するようになっている。なお、図6(A)において、符号部211は操舵角θhの符号(+1、-1)を乗算部212に出力しており、操舵角θhの大きさからマップによりトルク信号Tref_aの大きさを求め、これに操舵角θhの符号を乗算し、トルク信号Tref_aを求める構成となっている。また、図6(B)に示されるように、正負の操舵角θhに応じてマップを構成しても良く、この場合、操舵角θhが正の場合と負の場合とで変化の態様を変えても良い。また、図6に示される基本マップは車速感応であるが、車速感応でなくても良い。
微分部220は、操舵角θhを微分して角速度情報(第3角速度情報)である舵角速度ωhを算出し、舵角速度ωhは乗算部260に入力される。
ダンパゲイン部230は、舵角速度ωhに乗算されるダンパゲインDを出力する。乗算部260における舵角速度ωh及びダンパゲインDの乗算結果は、トルク信号(第2トルク信号)Tref_bとして加算部262に入力される。ダンパゲインDは、ダンパゲイン部230が有する車速感応型のダンパゲインマップを用いて、車速Vsに応じて求められる。ダンパゲインマップは、例えば、図7に示されるように、車速Vsが高くなるに従って徐々に大きくなる特性を有する。ダンパゲインマップは操舵角θhに応じて可変としても良い。なお、ダンパゲイン部230及び乗算部260でダンパ演算部を構成している。
ヒステリシス補正部240は操舵角θh及び操舵状態STsに基づき、下記数3に従ってトルク信号(第3トルク信号)Tref_cを演算する。なお、下記数3では、x=θh、y=Tref_cとしており、a>1、c>0であり、Ahysはヒステリシス幅である。
Figure 0007199643000003
右切り操舵から左切り操舵、左切り操舵から右切り操舵へ切り替える際に、最終座標(x1,y1)の値に基づき、切り替え後の数3の“b”に以下の数4を代入する。これにより、切り替え前後の連続性が保たれる。
Figure 0007199643000004
上記数4は、上記数3中のxにx1を、y及びyにy1を代入することにより導出することができる。
“a”として1より大きい任意の正数を用いることができ、例えば、ネイピア数“e”を用いた場合、数3及び数4は下記数5及び数6となる。
Figure 0007199643000005
Figure 0007199643000006
数5及び数6においてAhys=1[N・m]、c=0.3と設定し、0[deg]から開始し、+50[deg]、-50[deg]の操舵をした場合の、ヒステリシス補正されたトルク信号Tref_cの線図例を図8に示す。即ち、ヒステリシス補正部240からのトルク信号Tref_cは、0の原点→L1(細線)→L2(破線)→L3(太線)のようなヒステリシス特性となる。
なお、ヒステリシス特性の出力幅を表す係数であるAhys及び丸みを表す係数であるcを、車速Vs及び/又は操舵角θhに応じて可変としても良い。
ハンドル戻り補償部250は、操舵角θh及び操舵トルクTsを用いて運転者がハンドル1に加えている手入力トルクを推定し、推定された手入力トルク(手入力トルク推定値)Tseに基づいてハンドル戻りを補償するための戻り補償信号Tref_dを算出する。ハンドル1を切った状態から手放しを行った場合、ハンドル1が中立位置まで戻らずに途中で停止してしまうことがあるので、ハンドルを中立位置付近まで戻すための戻り補償信号Tref_dを算出する。
ハンドル戻り補償部250の構成例を図9に示す。ハンドル戻り補償部250は、手入力トルク推定部251、トルク感応ゲイン部252、速度感応ゲイン部253、制限部254、微分部255、絶対値部256A及び256B、並びに乗算部257A及び257Bを備える。
手入力トルク推定部251は、操舵角θh及び操舵トルクTsを用いて手入力トルク推定値Tseを算出する。ここで、手入力トルクの推定方法について説明する。ハンドル1への手入力トルクTh、操舵角θh及びトーションバートルクTtの関係は、図10に示されるようになっている。図10はハンドル1及びトーションバー2Aを模式化して表した図である。運転者による手入力トルクThがハンドル1に加えられると、ハンドル1が操舵角θhで回転し、その回転と逆方向にトーションバーの捩れ角Δθの大きさに比例したトーションバートルクTtが発生する。この関係から、トーションバートルクTtを本実施形態では操舵トルクTsとして扱っていることより、手入力トルクTh、操舵角θh及び操舵トルクTsの間には下記数7の関係式が成り立つ。
Figure 0007199643000007

ここで、Jhは慣性モーメント、Dhは減衰係数である。上記数7を手入力トルクThについて解くと下記数8が得られる。
Figure 0007199643000008
よって、慣性モーメントJh及び減衰係数Dhを予め求めておくことにより、操舵角θh及び操舵トルクTsを用いて、手入力トルクThを求めることができる。実際には、上記数8は連続系で表されているので、離散系に変換して求めることになる。連続系から離散系への変換は、既存の方法、例えば、単純には微分演算を差分演算として行う等により行う。また、数8には微分演算が含まれており、高周波の微分ノイズが現れやすくなるので、ローパスフィルタ(LPF)等によるフィルタ処理を行う。以上のことより、手入力トルク推定部251は、入力した操舵角θh及び操舵トルクTsを用いて、予め求められた慣性モーメントJh及び減衰係数Dhを含む数8を離散系に変換した演算処理を行い、その演算結果に対してLPF等によるフィルタ処理を施すことにより、手入力トルク推定値Tseを算出する。なお、数8による演算処理とフィルタ処理とを分けずに、両方を含んだ離散系の演算処理で手入力トルク推定値Tseを算出しても良い。また、微分ノイズが軽微な場合、フィルタ処理を省略しても良い。
手入力トルク推定値を用いる理由を説明する。例えば、運転者がハンドルを切った状態で手を放した際に、操舵トルクTsを用いた場合、トーションバーの捩れが解消されるまでに多少の遅れが発生し、操舵トルクTsはすぐにはゼロにはならない。手入力トルク推定と後述のトルク感応ゲインを組合わせることにより、手入力トルクがゼロ付近においてのみハンドル戻りの機能を早く、また強く効かせることができる。
微分部255は、微分部220と同様に、操舵角θhを微分して角速度情報(第1角速度情報)である舵角速度ωh1を算出する。なお、微分部220を共用して、微分部255を省略しても良い。
絶対値部256A及び256Bは入力データの大きさ(絶対値)を出力するもので、絶対値部256Aは手入力トルク推定値Tseの絶対値を、絶対値部256Bは舵角速度ωh1の絶対値をそれぞれ出力する。
トルク感応ゲイン部252は、トルク感応ゲインマップを用いて、手入力トルク推定値Tseの大きさに応じたトルク感応ゲインGtを求める。トルク感応ゲインマップは、例えば図11に示されるように、トルク感応ゲインGtが、手入力トルク推定値Tseの大きさが大きくなるに従って徐々に小さくなる特性を有する。
速度感応ゲイン部253は、速度感応ゲインマップを用いて、舵角速度ωh1の大きさに応じた速度感応ゲインGvを求める。速度感応ゲインマップは、例えば図12に示されるように、速度感応ゲインGvが、舵角速度ωh1の大きさが0から所定の値ω0までの範囲では、舵角速度ωh1の大きさが大きくなるに従って急速に大きくなり、所定の値ω0を超えた範囲では、舵角速度ωh1の大きさが大きくなるに従って徐々に小さくなる特性を有する。
微分部255から出力される舵角速度ωh1は、乗算部257Aにて速度感応ゲインGvを乗算され、その乗算結果に乗算部257Bにてトルク感応ゲインGtが乗算され、戻り補償信号Tref_d0が算出される。
制限部254は、戻り補償信号Tref_d0の上下限値を制限して、戻り補償信号Tref_dを出力する。戻り補償信号Tref_d0の上下限値を制限することにより、異常値の出力を抑える。図13に示されるように、戻り補償信号に対する上限値及び下限値を予め設定し、入力する戻り補償信号Tref_d0が、上限値以上の場合は上限値を、下限値以下の場合は下限値を、それ以外の場合は戻り補償信号Tref_d0を、戻り補償信号Tref_dとして出力する。
なお、トルク感応ゲインマップ及び速度感応ゲインマップの特性は、図11及び図12に示されるような曲線的な特性に限られず、直線的な特性でも良く、関数で特性を定義しても良い。また、トルク感応ゲイン部252からのトルク感応ゲインGtの乗算のみでハンドル戻りを適切に補償できる場合等では、速度感応ゲイン部253並びにそれに付随する絶対値部256B及び乗算部257Aは省略可能である。更に、戻り補償信号が異常値とならない場合や、他の手段で異常値の出力を抑える場合等では制限部254が省略可能である。
上述のように求められた戻り補償信号Tref_d並びにトルク信号Tref_c、Tref_b及びTref_aは、加算部263、262及び261で順次加算されていき、最終の加算結果が目標操舵トルクTrefとして出力される。
なお、微分部220及び255で算出される舵角速度ωh及びωh1は、操舵角θhに対する微分演算により求めているが、高周波のノイズの影響を低減するために、手入力トルク推定部251と同様に、適度にLPF処理を実施しても良い。また、ハイパスフィルタ(HPF)とゲインにより、微分演算とLPFの処理を実施しても良い。更に、舵角速度ωh及びωh1は、操舵角θhではなく、上側角度センサが検出するハンドル角θ又は下側角度センサが検出するコラム角θに対して微分演算とLPFの処理を行って算出しても良い。舵角速度ωh及びωh1の代わりにモータ角速度ωmを角速度情報として使用しても良く、この場合、微分部220及び255は不要となる。本実施形態ではハンドル戻り補償部250は目標操舵トルク生成部200内に設けられているが、ハンドル戻り補償部250を目標操舵トルク生成部200内から外し、目標操舵トルク生成部の後段に加算部を設け、目標操舵トルク生成部からの出力とハンドル戻り補償部からの戻り補償信号をその加算部で加算したものを目標操舵トルクTrefとする構成にしても良い。
変換部500は、トーションバー2Aのバネ定数Ktの逆数の符号を反転した-1/Ktの特性を有しており、目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。
捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref及び捩れ角Δθに基づいてモータ電流指令値Imcを演算する。図14は捩れ角制御部300の構成例を示すブロック図であり、捩れ角制御部300は、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、出力制限部350及び減算部361を備えている。変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefは減算部361に加算入力され、捩れ角Δθは減算部361に減算入力されると共に、捩れ角速度演算部320に入力される。
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθに対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標捩れ角速度ωrefを出力する。補償値CFBは単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。目標捩れ角速度ωrefは速度制御部330に入力される。捩れ角FB補償部310と速度制御部330により、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθを追従させ、所望の操舵トルクを実現することが可能となる。
捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対する微分演算により捩れ角速度ωtを算出し、捩れ角速度ωtは速度制御部330に入力される。微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、捩れ角速度ωtを別の手段や捩れ角Δθ以外から算出し、速度制御部330に入力するようにしても良い。
速度制御部330は、I-P制御(比例先行型PI制御)により、目標捩れ角速度ωrefに捩れ角速度ωtが追従するようなモータ電流指令値Imcaを算出する。減算部333で目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref-ωt)を算出し、その差分を、ゲインKviを有する積分部331にて積分し、積分結果は減算部334に加算入力される。捩れ角速度ωtは比例部332にも入力され、ゲインKvpによる比例処理を施され、減算部334に減算入力される。減算部334での減算結果がモータ電流指令値Imcaとして出力される。なお、速度制御部330は、I-P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI-D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imcaを算出しても良い。
速度制御部330からのモータ電流指令値Imcaは出力制限部350に入力される。
出力制限部350は、モータ電流指令値Imcaの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imcを出力する。ハンドル戻り補償部250内の制限部254と同様に、モータ電流指令値Imcaに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。なお、出力制限部は省略可能である。
このような構成において、本実施形態の動作例を図15~図17のフローチャートを参照して説明する。
動作を開始すると、右切り/左切り判定部400は、モータ角速度ωmを入力し、モータ角速度ωmの符号を基に操舵が右切りか左切りかを判定し、判定結果を操舵状態STsとして、目標操舵トルク生成部200に出力する(ステップS10)。
目標操舵トルク生成部200は、操舵状態STsと共に、操舵角θh、操舵トルクTs及び車速Vsを入力し、目標操舵トルクTrefを生成する(ステップS20)。目標操舵トルク生成部200の動作例については、図16のフローチャートを参照して説明する。
目標操舵トルク生成部200に入力された操舵角θhは基本マップ部210、微分部220、ヒステリシス補正部240及びハンドル戻り補償部250に、操舵状態STsはヒステリシス補正部240に、操舵トルクTsはハンドル戻り補償部250に、車速Vsは基本マップ部210及びダンパゲイン部230にそれぞれ入力される(ステップS21)。
基本マップ部210は、図6(A)又は(B)に示される基本マップを用いて、操舵角θh及び車速Vsに応じたトルク信号Tref_aを生成して、加算部261に出力する(ステップS22)。
微分部220は操舵角θhを微分して舵角速度ωhを出力し(ステップS23)、ダンパゲイン部230は図7に示されるダンパゲインマップを用いて車速Vsに応じたダンパゲインDを出力する(ステップS24)。乗算部260は舵角速度ωh及びダンパゲインDを乗算してトルク信号Tref_bを演算し、加算部262に出力する(ステップS25)。
ヒステリシス補正部240は、操舵角θh及び操舵状態STsに応じて数5及び数6による演算を切り替えてヒステリシス補正を実施し(ステップS26)、トルク信号Tref_cを生成し、加算部263に出力する(ステップS27)。なお、数5及び数6におけるヒステリシス幅Ahys、c、x1及びy1は予め設定し保持されているが、数6よりb及びb’を予め算出し、x1及びy1の代わりにb及びb’を保持するようにしても良い。
ハンドル戻り補償部250では、操舵トルクTsが手入力トルク推定部251に、操舵角θhが手入力トルク推定部251及び微分部255にそれぞれ入力される。手入力トルク推定部251は、入力された操舵角θh及び操舵トルクTs並びに予め設定された慣性モーメントJh及び減衰係数Dhを用いて、数8を離散系に変換した演算処理及びLPFによるフィルタ処理により、手入力トルク推定値Tseを算出し(ステップS28)、手入力トルク推定値Tseは絶対値部256Aに入力される。微分部255は、操舵角θhを微分して舵角速度ωh1を算出し(ステップS29)、舵角速度ωh1は絶対値部256B及び乗算部257Aに入力される。絶対値部256Aは手入力トルク推定値Tseの絶対値を算出し、トルク感応ゲイン部252に出力し、絶対値部256Bは舵角速度ωh1の絶対値を算出し、速度感応ゲイン部253に出力する(ステップS30)。トルク感応ゲイン部252は、図11に示されるような特性を有するトルク感応ゲインマップを用いて、手入力トルク推定値Tseの絶対値に応じたトルク感応ゲインGtを決定する(ステップS31)。速度感応ゲイン部253は、図12に示されるような特性を有する速度感応ゲインマップを用いて、舵角速度ωh1の絶対値に応じた速度感応ゲインGvを決定する(ステップS32)。トルク感応ゲインGtは乗算部257Bに入力され、速度感応ゲインGvは乗算部257Aに入力される。乗算部257Aでは舵角速度ωh1に速度感応ゲインGvが乗算され、乗算部257Bではその乗算結果にトルク感応ゲインGtが乗算され(ステップS33)、乗算結果が戻り補償信号Tref_d0として出力される。戻り補償信号Tref_d0は制限部254に入力され、制限部254は予め設定された上限値及び下限値により戻り補償信号Tref_d0の上下限値を制限し、戻り補償信号Tref_dとして加算部263に出力する(ステップS34)。
そして、加算部263にて戻り補償信号Tref_d及びトルク信号Tref_cが加算され、その加算結果にトルク信号Tref_bが加算部262にて加算され、更にその加算結果にトルク信号Tref_aが加算部261にて加算され、目標操舵トルクTrefが演算される(ステップS35)。
目標操舵トルク生成部200で生成された目標操舵トルクTrefは変換部500に入力され、変換部500で目標捩れ角Δθrefに変換される(ステップS40)。目標捩れ角Δθrefは捩れ角制御部300に入力される。
捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθrefと共に、捩れ角Δθを入力し、モータ電流指令値Imcを演算する(ステップS50)。捩れ角制御部300の動作例については、図17のフローチャートを参照して説明する。
捩れ角制御部300に入力された目標捩れ角Δθrefは減算部361に、捩れ角Δθは減算部361及び捩れ角速度演算部320にそれぞれ入力される(ステップS51)。
減算部361では、目標捩れ角Δθrefから捩れ角Δθを減算することにより、偏差Δθが算出される(ステップS52)。偏差Δθは捩れ角FB補償部310に入力され、捩れ角FB補償部310は、偏差Δθに補償値CFBを乗算することにより偏差Δθを補償し(ステップS53)、目標捩れ角速度ωrefを速度制御部330に出力する。
捩れ角Δθを入力した捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対する微分演算により捩れ角速度ωtを算出し(ステップS54)、速度制御部330に出力する。
速度制御部330では、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtの差分が減算部333で算出され、その差分が積分部331で積分(Kvi/s)されて減算部334に加算入力される(ステップS55)。更に、捩れ角速度ωtは比例部332で比例処理(Kvp)され、比例結果が減算部334に減算入力され(ステップS55)、減算部334の減算結果であるモータ電流指令値Imcaが出力される。
モータ電流指令値Imcaは出力制限部350に入力される。出力制限部350は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imcaの上下限値を制限し(ステップS56)、モータ電流指令値Imcとして出力する(ステップS57)。
捩れ角制御部300から出力されたモータ電流指令値Imcに基づいてモータを駆動し、電流制御が実施される(ステップS60)。
なお、図15~図17におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。
本実施形態でのハンドル戻り補償部によるハンドル戻りの補償(ハンドル戻り補償)の効果について、シミュレーション結果を基に説明する。
シミュレーションでは、4N・mの手入力トルクを加えることにより、動作開始から約1秒間、操舵角θhが約50degの状態を保ち、その後、手放し(手入力トルク:0N・m)を行ったとして、ハンドル戻り補償部によるハンドル戻り補償がある場合とない場合のハンドル角(トーションバーの上側の角度)の時間応答をシミュレーションする。
図18はシミュレーション結果を示しており、図18(A)がハンドル戻り補償がない場合、図18(B)がハンドル戻り補償がある場合のシミュレーション結果である。図18(A)より、ハンドル戻り補償がない場合、手放し後のハンドル角が0degを超えて、約-11degのところまでオーバーシュートし、その後、約-3degで留まっていることがわかる。この場合、運転者からは見栄えとして不快に感じられ、車両は直進走行から外れてしまっているので、運転者は修正操舵を行わなければならない。この修正操舵は運転者にとって負荷となる。
これに対して、ハンドル戻り補償がある場合は、図18(B)より、手放し後に殆どオーバーシュートすることなく、定常偏差が約0degにまで改善されていることがわかる。ここまで改善すれば、直進走行に近い状態を維持することができ、運転者からの見栄えも不快に感じられることはなく、運転者への負荷がない。
第1実施形態でのハンドル戻り補償部250において、操舵角θhに応じた目標速度を設定し、その目標速度と舵角速度ωh1との偏差に応じた補償値を求めることにより、中立位置への戻りを強くすることが可能となる。この機能を搭載したハンドル戻り補償部の構成例(第2実施形態)を図19に示す。第2実施形態でのハンドル戻り補償部650には、図9に示される第1実施形態でのハンドル戻り補償部250に対して、目標速度設定部258及び減算部259が追加されており、目標速度設定部258において操舵角θhに応じた目標速度ωrefが設定される。
目標速度設定部258は、操舵角に応じた目標速度を定義した目標速度設定マップを有している。目標速度設定マップは、例えば図20に示されるように、操舵角がゼロのときに目標速度もゼロで、そこから操舵角が大きくなるに従って目標速度は小さくなり、操舵角が小さくなるに従って目標速度は大きくなる特性を有する。目標速度設定部258は、操舵角θhを入力し、目標速度設定マップに基づいて、操舵角θhに対する目標速度ωrefを求め、目標速度ωrefは減算部259に減算入力される。減算部259には、微分部255から出力された舵角速度ωh1が加算入力されており、舵角速度ωh1から目標速度ωrefを減算して舵角速度偏差ωhc(第2角速度情報)が算出される。算出された舵角速度偏差ωhcに、乗算部257A及び257Bにおいて、速度感応ゲインGv及びトルク感応ゲインGtがそれぞれ乗算される。例えば、操舵角θhが正の領域で、目標速度ωrefが舵角速度ωh1よりも負の方向に位置している場合を想定する。このとき、舵角速度偏差ωhcは正の値となり、戻り補償信号Tref_dも正の値となる。戻り補償信号Tref_dが正の値になることから、路面反力に対抗してハンドルを中立位置に戻すような目標捩れ角Δθrefとなり、ハンドル戻りがよくなる。一方、舵角速度偏差ωhcが負の場合は、中立位置に戻る速度が緩和され、オーバーシュートを抑制できる。なお、図20では、目標速度設定マップの特性は原点に対して対称な形となっているが、車両の特性等に応じて非対称な形でも良い。また、曲線的な特性ではなく直線的な特性等でも良く、特性を数式で表現しても良い。
第2実施形態の動作例では、図16に示される第1実施形態での目標操舵トルク生成部200の動作例に対して、目標速度設定部258及び減算部259での動作が加わることになる。
第2実施形態での目標操舵トルク生成部の動作例のフローチャートを図21に示す。ハンドル戻り補償部650に入力された操舵角θhは、手入力トルク推定部251及び微分部255に加え、目標速度設定部258に入力される。微分部255での舵角速度ωh1の算出(ステップS29)の後、舵角速度ωh1は絶対値部256B及び減算部259に入力される。操舵角θhを入力した目標速度設定部258は、図20に示されるような特性を有する目標速度設定マップを用いて、操舵角θhに対する目標速度ωrefを求め(ステップS29A)、目標速度ωrefは減算部259に減算入力される。減算部259では、舵角速度ωh1から目標速度ωrefを減算することにより舵角速度偏差ωhcが算出され(ステップS29B)、舵角速度偏差ωhcは乗算部257Aに入力される。その後は、第1実施形態での目標操舵トルク生成部200の動作例と同じ動作が行われる(ステップS30~)。
なお、図21におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。
第1実施形態では、ハンドル戻り補償部で算出される戻り補償信号を目標操舵トルクとして扱うことによりハンドル戻り補償を行っているが、戻り補償信号を電流指令値として扱うことによってもハンドル戻り補償を行うことができる。この場合の本発明の構成例(第3実施形態)を図22に、第3実施形態での目標操舵トルク生成部の構成例を図23にそれぞれ示す。図4に示される第1実施形態及び図5に示される第1実施形態での目標操舵トルク生成部200と比べると、第3実施形態での目標操舵トルク生成部700内にはハンドル戻り補償部がなく、目標操舵トルク生成部700の外にハンドル戻り補償部750が設けられており、ハンドル戻り補償部750から出力される戻り補償信号Imhは、新たに設けられた減算部770に減算入力され、減算部770には、戻り補償信号Imhの他に、捩れ角制御部300からのモータ電流指令値Imcが加算入力されている。目標操舵トルク生成部700にはハンドル戻り補償部がないので、ハンドル戻り補償部のみに入力されていた操舵トルクTsは入力されていない。
目標操舵トルク生成部700は、第1実施形態での目標操舵トルク生成部200からハンドル戻り補償部250及び加算部263を除いた構成となっており、他の構成要素は目標操舵トルク生成部200の構成要素と同じであり、ヒステリシス補正部240から出力されるトルク信号Tref_cは加算部262に入力される。なお、目標操舵トルク生成部700を、基本マップ部210、ダンパ演算部(ダンパゲイン部230及び乗算部260)及びヒステリシス補正部240の少なくとも1つからなる構成としても良い。
ハンドル戻り補償部750は、図9に示される第1実施形態でのハンドル戻り補償部250と同じ構成であるが、ハンドル戻り補償部250は目標操舵トルクとして扱われる戻り補償信号Tref_dを出力しているが、ハンドル戻り補償部750は、電流指令値として扱われる戻り補償信号Imhを出力する。そのため、第3実施形態におけるトルク感応ゲイン部のトルク感応ゲインマップ及び速度感応ゲイン部の速度感応ゲインマップは、第1実施形態での各マップに変更を加えたものとなる。即ち、変化の態様は第1実施形態での各マップと同様であるが、ゲインの最大値等が、戻り補償信号を電流指令値として扱うべく調整される。
減算部770にてモータ電流指令値Imcから戻り補償信号Imhを減算することによりモータ電流指令値Imcを補正し、補正されたモータ電流指令値Imcがモータ電流指令値Imccとして出力される。
第3実施形態の動作は、第1実施形態の動作と比べて、目標操舵トルク生成部での動作及びハンドル戻り補償部から出力される戻り補償信号が関連する動作が異なる。
第3実施形態の動作例のフローチャート及び第3実施形態での目標操舵トルク生成部750の動作例のフローチャートをそれぞれ図24及び図25に示す。図25に示されるように、目標操舵トルク生成部750は、ヒステリシス補正部240でのトルク信号Tref_cの生成(ステップS27)まで第1実施形態での目標操舵トルク生成部200と同じ動作を行い、トルク信号Tref_cは加算部262に入力される。その後、目標操舵トルク生成部200でのステップS28~S34は行われず、トルク信号Tref_c及びトルク信号Tref_bが加算部262で加算され、その加算結果にトルク信号Tref_aが加算部261にて加算され、目標操舵トルクTrefが演算される(ステップS35A)。
目標操舵トルク生成(ステップS20A)の後は、目標捩れ角Δθrefの算出(ステップS40)及び捩れ角制御(ステップS50)が実行され、捩れ角制御部300から出力されたモータ電流指令値Imcは減算部770に加算入力される。
一方、ハンドル戻り補償部750では、第1実施形態でのハンドル戻り補償部250と同様の動作により戻り補償信号Imhが算出され(ステップS50A)、戻り補償信号Imhは減算部770に減算入力される。
減算部770では、モータ電流指令値Imcから戻り補償信号Imhが減算され、モータ電流指令値Imccが出力され、モータ電流指令値Imccに基づいてモータを駆動し、電流制御が実施される(ステップS60)。
なお、図24及び図25におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。
第3実施形態でのハンドル戻り補償部750に対して、第2実施形態での目標速度設定部258を追加し、図19に示されるハンドル戻り補償部650と同様の構成で戻り補償信号Imhを算出することも可能である。
なお、戻り補償信号を目標捩れ角として扱い、変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefから戻り補償信号を減算することにより目標捩れ角Δθrefを補正し、ハンドル戻り補償を行っても良い。この場合も、ハンドル戻り補償部のトルク感応ゲインマップ及び速度感応ゲインマップは、戻り補償信号を目標捩れ角として扱うべく調整される。
第1実施形態での目標操舵トルク生成部200は基本マップ部210、ダンパ演算部(ダンパゲイン部230及び乗算部260)、ヒステリシス補正部240及びハンドル戻り補償部250を備えているが、ハンドル戻り補償のみに特化し、ハンドル戻り補償部250のみを備える構成としても良い。この場合の目標操舵トルク生成部の構成例(第4実施形態)を図26に示す。目標操舵トルク生成部800では、ハンドル戻り補償部250から出力される戻り補償信号Tref_dが、目標操舵トルクTrefとして出力されることになる。なお、目標操舵トルク生成部を、基本マップ部210、ダンパ演算部及びヒステリシス補正部240の少なくとも1つとハンドル戻り補償部250を組み合わせた構成としても良い。また、第2実施形態でのハンドル戻り補償部650のみを備える構成や、基本マップ部210、ダンパ演算部及びヒステリシス補正部240の少なくとも1つとハンドル戻り補償部650を組み合わせた構成としても良い。
第1~第4実施形態でのモータ電流指令値Imc又はImccに、従来のEPSにおいて操舵トルクに基づいて演算される電流指令値(以下、「アシスト電流指令値」とする)を、例えば、図2に示される電流指令値演算部31から出力される電流指令値Iref1又は電流指令値Iref1に補償信号CMを加算した電流指令値Iref2等を加算しても良い。
上記の内容を第1実施形態に対して適用した構成例(第5実施形態)を図27に、第3実施形態に対して適用した構成例(第6実施形態)を図28に示す。アシスト制御部150は、電流指令値演算部31、又は、電流指令値演算部31、補償信号生成部34及び加算部32Aから構成される。第5実施形態では、アシスト制御部150から出力されるアシスト電流指令値Iac(図2における電流指令値Iref1又はIref2に相当)と捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imcが加算部160で加算される。第6実施形態では、アシスト電流指令値Iacと減算部770から出力されるモータ電流指令値Imccが加算部160で加算される。そして、加算部160での加算結果である電流指令値Icは電流制限部170に入力され、最大電流を制限された電流指令値Icmに基づいてモータを駆動し、電流制御が実施される。
第1~第6実施形態のうち、基本マップ部210を備える目標操舵トルク生成部において、基本マップ部210の前段又は後段に位相補償を行なう位相補償部270を挿入しても良い。つまり、図5や図23中の破線で囲まれた領域Rの構成を、図29(A)又は(B)に示されるような構成にしても良い。目標操舵トルク生成部に関しては、操舵角に基づいた構成であるならば、上述の構成に限られない。
図1及び図3では本発明をコラム型EPSに適用しているが、本発明はコラム型等の上流型に限られず、ラック&ピニオン等の下流型EPSにも適用可能である。更に、目標捩れ角に基づくフィードバック制御を行うということでは、トーションバー(バネ定数任意)及び捩れ角検出用のセンサを少なくとも備えるステアバイワイヤ(SBW)反力装置等にも適用可能である。本発明を、トーションバーを備えたSBW反力装置に適用した場合の実施形態(第7実施形態)について説明する。
まずは、SBW反力装置を含むSBWシステム全体について説明する。図30はSBWシステムの構成例を、図1に示される電動パワーステアリング装置の一般的な構成に対応させて示した図である。なお、同一構成には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
SBWシステムは、ユニバーサルジョイント4aにてコラム軸2と機械的に結合されるインターミディエイトシャフトがなく、ハンドル1の操作を電気信号によって操向車輪8L,8R等からなる転舵機構に伝えるシステムである。図30に示されるように、SBWシステムは反力装置60及び駆動装置70を備え、コントロールユニット(ECU)50が両装置の制御を行う。反力装置60は、舵角センサ14にて操舵角θhの検出を行うと同時に、操向車輪8L,8Rから伝わる車両の運動状態を反力トルクとして運転者に伝達する。反力トルクは、反力用モータ61により生成される。なお、SBWシステムの中には反力装置内にトーションバーを有さないタイプもあるが、本発明を適用するSBWシステムはトーションバーを有するタイプであり、トルクセンサ10にて操舵トルクTsを検出する。また、角度センサ74が、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。駆動装置70は、運転者によるハンドル1の操舵に合わせて、駆動用モータ71を駆動し、その駆動力を、ギア72を介してピニオンラック機構5に付与し、タイロッド6a,6bを経て、操向車輪8L,8Rを転舵する。ピニオンラック機構5の近傍には角度センサ73が配置されており、操向車輪8L,8Rの転舵角θtを検出する。ECU50は、反力装置60及び駆動装置70を協調制御するために、両装置から出力される操舵角θhや転舵角θt等の情報に加え、車速センサ12からの車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及び駆動用モータ71を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
このようなSBWシステムに本発明を適用した第7実施形態の構成について説明する。
図31は第7実施形態の構成を示すブロック図である。第7実施形態は、捩れ角Δθに対する制御(以下、「捩れ角制御」とする)と、転舵角θtに対する制御(以下、「転舵角制御」とする)を行い、反力装置を捩れ角制御で制御し、駆動装置を転舵角制御で制御する。なお、駆動装置は他の制御方法で制御しても良い。
捩れ角制御では、第1実施形態と同様の構成及び動作により、捩れ角Δθが、操舵角θh等を用いて目標操舵トルク生成部200及び変換部500を経て算出される目標捩れ角Δθrefに追従するような制御を行う。モータ角θmは角度センサ74で検出され、モータ角速度ωmは、角速度演算部951にてモータ角θmを微分することにより算出される。転舵角θtは角度センサ73で検出される。また、第1実施形態ではEPS操舵系/車両系100内の処理として詳細な説明は行われていないが、電流制御部130は、図2に示される減算部32B、PI制御部35、PWM制御部36及びインバータ37と同様の構成及び動作により、捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imc及びモータ電流検出器140で検出される反力用モータ61の電流値Imrに基づいて、反力用モータ61を駆動して、電流制御を行う。
転舵角制御では、目標転舵角生成部910にて操舵角θhに基づいて目標転舵角θtrefが生成され、目標転舵角θtrefは転舵角θtと共に転舵角制御部920に入力される。転舵角制御部920は、転舵角θtが目標転舵角θtrefとなるようなモータ電流指令値Imctを演算する。そして、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出される駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、電流制御部930が、電流制御部130と同様の構成及び動作により、駆動用モータ71を駆動して、電流制御を行う。
目標転舵角生成部910の構成例を図32に示す。目標転舵角生成部910は、制限部931、レート制限部932及び補正部933を備える。
制限部931は、操舵角θhの上下限値を制限して、操舵角θh1を出力する。ハンドル戻り補償部内の制限部254及び捩れ角制御部300内の出力制限部350と同様に、操舵角θhに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。
レート制限部932は、操舵角の急変を回避するために、操舵角θh1の変化量に対して制限値を設定して制限をかけ、操舵角θh2を出力する。例えば、1サンプル前の操舵角θh1からの差分を変化量とし、その変化量の絶対値が所定の値(制限値)より大きい場合、変化量の絶対値が制限値となるように、操舵角θh1を加減算し、操舵角θh2として出力する。制限値以下の場合は、操舵角θh1をそのまま操舵角θh2として出力する。なお、変化量の絶対値に対して制限値を設定するのではなく、変化量に対して上限値及び下限値を設定して制限をかけるようにしても良く、変化量ではなく変化率や差分率に対して制限をかけるようにしても良い。
補正部933は、操舵角θh2を補正して、目標転舵角θtrefを出力する。例えば、目標操舵トルク生成部内の基本マップ部210のように、操舵角θh2の大きさ|θh2|に対する目標転舵角θtrefの特性を定義したマップを用いて、操舵角θh2より目標転舵角θtrefを求める。或いは、単純に、操舵角θh2に所定のゲインを乗算することにより、目標転舵角θtrefを求めるようにしても良い。
転舵角制御部920の構成例を図33に示す。転舵角制御部920は、図14に示される捩れ角制御部300の構成例と同様の構成をしており、目標捩れ角Δθref及び捩れ角Δθの代わりに目標転舵角θtref及び転舵角θtを入力する。転舵角制御部920では、転舵角フィードバック(FB)補償部921、転舵角速度演算部922、速度制御部923、出力制限部926及び減算部927が、それぞれ捩れ角FB補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、出力制限部350及び減算部361と同様の構成で同様の動作を行う。
このような構成において、第7実施形態の動作例を図34のフローチャートを参照して説明する。
動作を開始すると、角度センサ73は転舵角θtを検出し、角度センサ74はモータ角θmを検出し(ステップS110)、転舵角θtは転舵角制御部920に、モータ角θmは角速度演算部951にそれぞれ入力される。
角速度演算部951は、モータ角θmを微分してモータ角速度ωmを算出し、右切り/左切り判定部400に出力する(ステップS120)。
その後、図15に示されるステップS10~S60と同様の動作を実行し、反力用モータ61を駆動し、電流制御を実施する(ステップS130~S170)。
一方、転舵角制御においては、目標転舵角生成部910が操舵角θhを入力し、操舵角θhは制限部931に入力される。制限部931は、予め設定された上限値及び下限値により操舵角θhの上下限値を制限し(ステップS180)、操舵角θh1としてレート制限部932に出力する。レート制限部932は、予め設定された制限値により操舵角θh1の変化量に対して制限をかけ(ステップS190)、操舵角θh2として補正部933に出力する。補正部933は、操舵角θh2を補正して目標転舵角θtrefを求め(ステップS200)、転舵角制御部920に出力する。
転舵角θt及び目標転舵角θtrefを入力した転舵角制御部920は、減算部927にて目標転舵角θtrefから転舵角θtを減算することにより、偏差Δθtを算出する(ステップS210)。偏差Δθtは転舵角FB補償部921に入力され、転舵角FB補償部921は、偏差Δθtに補償値を乗算することにより偏差Δθtを補償し(ステップS220)、目標転舵角速度ωtrefを速度制御部923に出力する。転舵角速度演算部922は転舵角θtを入力し、転舵角θtに対する微分演算により転舵角速度ωttを算出し(ステップS230)、速度制御部923に出力する。速度制御部923は、速度制御部330と同様にI-P制御によりモータ電流指令値Imctaを算出し(ステップS240)、出力制限部926に出力する。出力制限部926は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imctaの上下限値を制限し(ステップS250)、モータ電流指令値Imctとして出力する(ステップS260)。
モータ電流指令値Imctは電流制御部930に入力され、電流制御部930は、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出された駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、駆動用モータ71を駆動し、電流制御を実施する(ステップS270)。
なお、図34におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、転舵角制御部920内の速度制御部923は、捩れ角制御部300内の速度制御部330と同様に、I-P制御ではなく、PI制御、P制御、PID制御、PI-D制御等、実現可能で、P、I及びDのいずれかの制御を用いていれば良く、更に、転舵角制御部920及び捩れ角制御部300での追従制御は、一般的に用いられている制御構造で行っても良い。転舵角制御部920については、目標角度(ここでは目標転舵角θtref)に対して実角度(ここでは転舵角θt)が追従する制御構成であれば、車両用装置に用いられている制御構成に限定されず、例えば、産業用位置決め装置や産業用ロボット等に用いられている制御構成を適用しても良い。
第7実施形態では、図30に示されるように、1つのECU50で反力装置60及び駆動装置70の制御を行っているが、反力装置60用のECUと駆動装置70用のECUをそれぞれ設けても良い。この場合、ECU同士は通信によりデータの送受信を行うことになる。また、図30に示されるSBWシステムは反力装置60と駆動装置70の間には機械的な結合を持たないが、システムに異常が発生した場合に、コラム軸2と転舵機構をクラッチ等で機械的に結合する機械的トルク伝達機構を備えるSBWシステムにも、本発明は適用可能である。このようなSBWシステムでは、システム正常時はクラッチをオフにして機械的トルク伝達を開放状態とし、システム異常時はクラッチをオンにして機械的トルク伝達を可能状態とする。
上述の第1~第7実施形態での捩れ角制御部300及び第5及び第6実施形態でのアシスト制御部150は、直接的にモータ電流指令値Imc及びアシスト電流指令値Iacを演算しているが、それらを演算する前に、先ず出力したいモータトルク(目標トルク)を演算してから、モータ電流指令値及びアシスト電流指令値を演算するようにしても良い。この場合、モータトルクからモータ電流指令値及びアシスト電流指令値を求めるには、一般的に用いられている、モータ電流とモータトルクの関係を使用する。
なお、上述で使用した図は、本発明に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。また、ハンドルと、モータ又は反力モータの間に任意のバネ定数を有する機構であれば、トーションバーに限定しなくても良い。
本発明の主たる目的は、戻り補償信号の算出及び戻り補償信号によるハンドル戻り補償の実現手段についてであり、目標操舵トルクに対する操舵トルクの追従性の実現手段に関しては、上記の変換部、捩れ角制御部に限定しなくても良い。
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
2A トーションバー
3 減速機構
10 トルクセンサ
12 車速センサ
14 舵角センサ
20 モータ
30、50 コントロールユニット(ECU)
31 電流指令値演算部
33、170 電流制限部
34 補償信号生成部
38、140、940 モータ電流検出器
60 反力装置
61 反力用モータ
70 駆動装置
71 駆動用モータ
72 ギア
73、74 角度センサ
100 EPS操舵系/車両系
130、930 電流制御部
150 アシスト制御部
200、700、800 目標操舵トルク生成部
210 基本マップ部
211 符号部
230 ダンパゲイン部
240 ヒステリシス補正部
250、650、750 ハンドル戻り補償部
251 手入力トルク推定部
252 トルク感応ゲイン部
253 速度感応ゲイン部
254、931 制限部
258 目標速度設定部
270 位相補償部
300 捩れ角制御部
310 捩れ角フィードバック(FB)補償部
320 捩れ角速度演算部
330、923 速度制御部
350、926 出力制限部
400 右切り/左切り判定部
500 変換部
910 目標転舵角生成部
920 転舵角制御部
921 転舵角フィードバック(FB)補償部
922 転舵角速度演算部
932 レート制限部
933 補正部

Claims (13)

  1. 任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置において、
    目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、
    前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、
    前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部と、
    ハンドルへの手入力トルクを推定し、手入力トルク推定値を求める手入力トルク推定部、及び、操舵角を微分し、第1角速度情報を演算する微分部を具備し、前記第1角速度情報及び前記手入力トルク推定値を用いて、ハンドル戻りを補償するハンドル戻り補償のための戻り補償信号を求めるハンドル戻り補償部とを備え、
    前記戻り補償信号による前記ハンドル戻り補償を反映させた前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とする車両用操向装置。
  2. 前記目標操舵トルク生成部が前記ハンドル戻り補償部を具備し、前記戻り補償信号を前記目標操舵トルクとして出力することにより、前記ハンドル戻り補償を反映させる請求項1に記載の車両用操向装置。
  3. 前記戻り補償信号により前記モータ電流指令値を補正することにより、前記ハンドル戻り補償を反映させる請求項1に記載の車両用操向装置。
  4. 前記ハンドル戻り補償部が、
    前記手入力トルク推定値の大きさに基づいてトルク感応ゲインを求めるトルク感応ゲイン部を更に具備し、
    前記第1角速度情報に対して前記トルク感応ゲインを乗算補正して前記戻り補償信号を求める請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用操向装置。
  5. 前記手入力トルク推定値の大きさが大きくなるに従って前記トルク感応ゲインが小さくなるようになっている請求項4に記載の車両用操向装置。
  6. 前記ハンドル戻り補償部が、
    前記第1角速度情報の大きさに基づいて速度感応ゲインを求める速度感応ゲイン部を更に具備し、
    前記トルク感応ゲイン及び前記速度感応ゲインを前記第1角速度情報に対して乗算補正して前記戻り補償信号を求める請求項4又は5に記載の車両用操向装置。
  7. 前記第1角速度情報の大きさがゼロから所定の値まででは、前記第1角速度情報の大きさが大きくなるに従って前記速度感応ゲインが大きくなり、前記第1角速度情報の大きさが前記所定の値を超えたら、前記第1角速度情報の大きさが大きくなるに従って前記速度感応ゲインが小さくなるようになっている請求項6に記載の車両用操向装置。
  8. 前記ハンドル戻り補償部が、
    前記戻り補償信号の上下限値を制限する制限部を更に具備する請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用操向装置。
  9. 前記ハンドル戻り補償部が、
    前記操舵角に対する目標速度を求める目標速度設定部を更に具備し、
    前記第1角速度情報及び前記目標速度から第2角速度情報を演算し、前記第2角速度情報に対して乗算補正して前記戻り補償信号を求める請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用操向装置。
  10. 前記目標操舵トルク生成部が、
    基本マップを用いて前記操舵角及び車速より第1トルク信号を求める基本マップ部と、
    車速感応であるダンパゲインマップを用いて第3角速度情報に基づいて第2トルク信号を求めるダンパ演算部と、
    操舵状態及び前記操舵角を用いてヒステリシス特性を持つ第3トルク信号を求めるヒステリシス補正部とを更に具備し、
    前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号並びに前記戻り補償信号より前記目標操舵トルクを算出する請求項2に記載の車両用操向装置。
  11. 前記目標操舵トルク生成部が、
    基本マップを用いて前記操舵角及び車速より第1トルク信号を求める基本マップ部と、
    車速感応であるダンパゲインマップを用いて第3角速度情報に基づいて第2トルク信号を求めるダンパ演算部と、
    操舵状態及び前記操舵角を用いてヒステリシス特性を持つ第3トルク信号を求めるヒステリシス補正部とを具備し、
    前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号より前記目標操舵トルクを算出する請求項3に記載の車両用操向装置。
  12. 前記基本マップ及び前記ヒステリシス補正部の特性が車速感応である請求項10又は11に記載の車両用操向装置。
  13. 前記目標操舵トルク生成部が、
    前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、
    前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角及び前記車速より前記第1トルク信号を求める請求項10乃至12のいずれかに記載の車両用操向装置。
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