以下、本発明の第一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係るファンモータの一構成例を概念的に示したものである。このファンモータは、流体動圧軸受装置1と、流体動圧軸受装置1の回転部となる軸部材2と、軸部材2が取付けられ、かつ図示しない羽根を有するロータ3と、ロータ3に取付けられるロータマグネット4と、ロータマグネット4と半径方向のギャップを介して対向するステータコイル5と、ステータコイル5が取付けられ、ファンモータの静止側を構成する保持部材としてのモータベース6とを備える。流体動圧軸受装置1のハウジング7は、モータベース6の内周に固定され、ロータ3は、流体動圧軸受装置1の軸部材2の一端に固定されている。このように構成されたファンモータにおいて、ステータコイル5に通電すると、ステータコイル5とロータマグネット4との間の電磁力でロータマグネット4が回転し、これに伴って軸部材2、および軸部材2に固定されたロータ3が一体に回転する。
なお、ロータ3が回転すると、ロータ3に設けられた羽根の形態に応じて図1中上向き又は下向きに風が送られる。このため、ロータ3の回転中にはこの送風作用の反力として、流体動圧軸受装置1の軸部材2に図1中下向き又は上向きの推力が作用する。ステータコイル5とロータマグネット4との間には、この推力を打ち消す方向の磁力(斥力)を作用させており、上記推力と磁力の大きさの差により生じたスラスト荷重が流体動圧軸受装置1のスラスト軸受部Tに作用する。上記推力を打ち消す方向の磁力は、例えば、ステータコイル5とロータマグネット4とを軸方向にずらして配置することにより発生させることができる(詳細な図示は省略)。また、ロータ3の回転時には、流体動圧軸受装置1の軸部材2にラジアル荷重が作用する。このラジアル荷重は、流体動圧軸受装置1のラジアル軸受部R1,R2に作用する。
図2は、本実施形態に係る流体動圧軸受装置1の断面図である。この流体動圧軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7の内周に配設された軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、軸受スリーブ8よりもハウジング7の開口側でハウジング7の内周に配設されたシール部材9とを主に備える。ここで、シール部材9が本発明に係る円盤状部材(穴部を中央に有する円盤状部材)に相当する。ハウジング7の内部空間には所定量の潤滑油11(図2中、相対的に密な散点ハッチングで示す)が充填されており、少なくとも、軸部材2をラジアル方向に支持するラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間と、軸部材2の下端をスラスト方向に支持するスラスト軸受部Tの周囲の空間とが潤滑油11で満たされている。なお、以下では、説明の便宜上、シール部材9が配置された側を上側、その軸方向反対側を下側とするが、使用時における流体動圧軸受装置1の姿勢を限定するものではない。
ハウジング7は、筒状部7aと、筒状部7aの下端側を閉塞する底部7bとを有する形状(いわゆる有底筒状)をなし、本実施形態では、図2に示すように筒状部7aと底部7bが樹脂で一体に形成されている。ここで、ハウジング7を形成する樹脂材料としては任意の樹脂が使用可能であり、例えば強度や寸法安定性、清浄度、耐油性、さらには耐熱性にも優れたハウジング7を得る観点からは、LCP、PPS、PBT、及びPAからなる群から選択される一種類又は二種類以上の熱可塑性樹脂でハウジング7を形成するのがよい。なお、シール部材9についても、上記種類の樹脂材料が好適に使用可能であるが、後述するシール部材9とハウジング7との溶着性を考慮した場合、ハウジング7とシール部材9とを同じ種類の樹脂で形成するのがよい。
筒状部7aと底部7bの境界部内周には、筒状部7a及び底部7bと一体に段部7cが形成され、段部7cの上端面7c1に軸受スリーブ8の下端面8b(の外周側領域)が当接している。また、ハウジング7の底部7bの上端面7b1には、例えば樹脂製のスラストプレート10を配置している。この場合、スラストプレート10の上端面10aがスラスト軸受面として機能する。ただし、このスラストプレート10は必ずしも設ける必要はなく、省略してもかまわない。その場合、底部7bの上端面7b1がスラスト軸受面となる。
軸部材2は、軸受スリーブ8の内周に挿入される軸部2aと、軸部2aの長手方向一端に設けられた凸球面状の先端部2bとを有する。この場合、軸部材2のうち少なくとも軸部2aがステンレス鋼などの鋼材をはじめとする高剛性の金属材料で形成される。軸部2aの外周面2a1は平滑な円筒面に形成されると共に、軸部2aの全長にわたって外径寸法が一定となるように形成されている。軸部2aの外径寸法は、軸受スリーブ8及びシール部材9の内径寸法よりも小径であり、故に、軸部材2は、軸受スリーブ8及びシール部材9に対して挿脱自在とされる。軸部2aの先端部2bは、ハウジング7の底部に設けられたスラストプレート10の上端面10aと接触している。
軸受スリーブ8は、金属で形成される。本実施形態では、軸受スリーブ8は、銅系粉末(純銅粉末だけでなく銅合金粉末を含む)と鉄系粉末(純鉄粉末だけでなく鉄合金粉末を含む)の一方又は双方を主成分として含む焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。この場合、軸受スリーブ8の内部空孔には、潤滑油11が含浸されている。この軸受スリーブ8は、その下端面8bをハウジング7の段部7cの上端面7c1に当接させた状態で、シール部材9を介してハウジング7に固定されている(詳細は後述する)。これにより、ハウジング7と軸受スリーブ8の軸方向における相対的な位置決めがなされるようになっている。
軸受スリーブ8の内周面8aには、対向する軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受隙間を形成する円筒状のラジアル軸受面が軸方向の二箇所に設けられる。図3に示すように、各ラジアル軸受面には、ラジアル軸受隙間内の潤滑油11に動圧作用を発生させるための動圧発生部(ラジアル動圧発生部)A1,A2がそれぞれ形成されている。本実施形態のラジアル動圧発生部A1,A2は、それぞれ、互いに反対方向に傾斜し、かつ軸方向に離間して設けられた複数の上側動圧溝Aa1および下側動圧溝Aa2と、両動圧溝Aa1,Aa2を区画する凸状の丘部とを有し、全体としてヘリングボーン形状を呈する。本実施形態の丘部は、周方向で隣り合う動圧溝間に設けられた傾斜丘部Abと、上下の動圧溝Aa1,Aa2間に設けられ、傾斜丘部Abと略同径の環状丘部Acとからなる。
上側のラジアル動圧発生部A1においては、上側の動圧溝Aa1の軸方向寸法が下側の動圧溝Aa2の軸方向寸法よりも大きくなっている。一方、下側のラジアル動圧発生部A2においては、下側の動圧溝Aa2の軸方向寸法が上側の動圧溝Aa1の軸方向寸法よりも大きくなっている。さらに、ラジアル動圧発生部A1を構成する上側の動圧溝Aa1の軸方向寸法は、ラジアル動圧発生部A2を構成する下側の動圧溝Aa2の軸方向寸法と等しく、また、ラジアル動圧発生部A1を構成する下側の動圧溝Aa2の軸方向寸法は、ラジアル動圧発生部A2を構成する上側の動圧溝Aa1の軸方向寸法と等しくなっている。従って、軸部材2の回転時、上側(ラジアル軸受部R1)および下側(ラジアル軸受部R2)のラジアル軸受隙間内の潤滑油11は、それぞれ、下側および上側のラジアル軸受隙間に向けて押し込まれる。
なお、ラジアル動圧発生部A1,A2は、例えば、軸受スリーブ8を成形するのと同時に(詳細には、金属粉末を圧粉成形した後、焼結してなる焼結体にサイジング加工を施すことで仕上がり寸法の軸受スリーブ8を成形するのと同時に)型成形で形成してもよいし、焼結金属の良好な加工性に鑑み、内周面が平滑面に成形された軸受素材に転造等の塑性加工を施すことで形成してもよい。また、ラジアル動圧発生部A1,A2の何れか一方又は双方を、対向する軸部2aの外周面2a1に形成してもよい。
軸受スリーブ8の上端面8cには、図3に示すように、上端面8cの円周方向全域にわたって環状溝8c1が形成されている。この環状溝8c1は、流体動圧軸受装置1の組立て完了状態では、シール部材9に閉塞されることなく上方に開口している(図2を参照)。また、上端面8cには、この環状溝8c1に開口して軸受スリーブ8の外周面8dにまで延びる第一半径方向溝8c2が形成されると共に、外周面8dには、外周面8dを軸方向に貫通する軸方向溝8d1が形成されている。また、軸受スリーブ8の下端面8bには、半径方向に延びる第二半径方向溝8b1が形成されている(何れも図3を参照)。そのため、後述するように、上側のラジアル軸受隙間から上方に流出する等した場合、当該潤滑油11は、環状溝8c1、さらには第一半径方向溝8c2を経由して、軸方向溝8d1に流入し、再び第二半径方向溝8b1を経由して下側のラジアル軸受隙間の側に流入可能となっている。すなわち、上述した環状溝8c1、第一及び第二半径方向溝8c2,8b1、及び軸方向溝8d1等により潤滑油11が循環可能な循環路が構成されている。なお、本実施形態では、上述した一連の溝8b1,8c1,8c2,8d1は何れも軸受スリーブ8の側に形成されている場合を例示したが、もちろんこれらの溝8b1,8c1,8c2,8d1の全部又は一部を対向する部材(シール部材9、ハウジング7)の側に設けてもよい。一例を挙げると、例えば第一半径方向溝8c2をシール部材9の下端面9cに形成してもよいし、あるいは軸方向溝8d1をハウジング7の筒状部7aの側に形成してもよい。
シール部材9は樹脂で円環状に形成され、ハウジング7の内周に固定される(具体的な固定態様については後述する)。シール部材9の内周には、相対的に小径な小径内周面9aと、相対的に大径な大径内周面9bとが設けられている。この場合、図2に示すように、小径内周面9aが、対向する軸部2aの外周面2a1との間に径方向寸法が一定のシール空間Sを形成する。シール空間Sは、想定される温度変化の範囲内で潤滑油11の流体動圧軸受装置1外への漏れ出しを防止する。また、大径内周面9bと軸部2aの外周面2a1との間の環状空間は、例えばその大きさによっては、潤滑油11のバッファとして機能し得る。
シール部材9の下端面9cは、軸受スリーブ8の上端面8cと当接すると共に、シール部材9の外周面(大径外周面9d)はハウジング7の筒状部7aに固定されている。詳述すると、シール部材9の外周面と、ハウジング7の筒状部7aの内周面との間には溶着部12が形成されており、溶着部12を介してシール部材9がハウジング7の内周に固定されている。本実施形態では、溶着部12がシール部材9の円周方向全域にわたって形成されている。また、シール部材9は圧入を伴ってハウジング7の筒状部7aに溶着固定されており、圧入部15がその全域にわたって溶着部12と重複している。溶着部12の形成工程については後述する。
また、本実施形態では、シール部材9は、図4に示すように、相対的に大径な大径外周面9dと、相対的に小径な小径外周面9eとを有し、ハウジング7の筒状部7aは、相対的に大径な大径内周面7dと、相対的に小径な小径内周面7eとを有する。ここで、シール部材9の小径外周面9eは下端面9cに近い側に設けられ、大径外周面9dは下端面9cから遠い側に設けられている。また、ハウジング7の大径内周面7dは軸受スリーブ8から遠い側、すなわちハウジング7の軸方向上端側に設けられ、小径内周面7eは軸受スリーブ8に近い側、すなわち、大径内周面7dよりもハウジング7の軸方向中央側に設けられている。ここで、大径内周面7dと小径内周面7eとは、図4に示すように傾斜面7fを介して連続していてもよいし、半径方向に延びる段差面(図示は省略)を介して連続していてもよい。この場合、ハウジング7の小径内周面7eとシール部材9の大径外周面9dとが半径方向で重複する領域に溶着部12及び圧入部15が形成されている(後述する図5を参照)。
また、溶着部12とその軸方向上端側で隣接する領域には、第一環状空間13が形成されると共に、溶着部12とその軸方向下端側で隣接する領域には、第二環状空間14が形成されている。本実施形態では、第一環状空間13は、ハウジング7の大径内周面7dとシール部材9の大径外周面9dとの間に形成され、第二環状空間14は、ハウジング7の小径内周面7eとシール部材9の小径外周面9eとの間に形成されている。ここで、第一環状空間13の径方向隙間W1は、第二環状空間14の径方向隙間W2よりも大きく設定されるのがよい。また、溶着部12と比較した場合、第一環状空間13の径方向隙間W1は、溶着部12の径方向寸法W0よりも大きく、第二環状空間14の径方向隙間W2は、溶着部12の径方向寸法W0よりも小さく設定されるのがよい。
以上の構成を有する流体動圧軸受装置1が図2に示す姿勢で配置された状態では、シール空間Sを介して流体動圧軸受装置1の外部空間と区画されたハウジング7の内部空間(以下、単にハウジング7の内部空間と称する。)のうち、少なくともラジアル軸受部R1,R2のラジアル軸受隙間及びスラスト軸受部Tの周囲の空間(具体的には、軸受スリーブ8の下端面8b並びに軸部材2の先端部2bと、スラストプレート10の上端面10aとの間の空間)を含む一部の領域が潤滑油11で満たされる。本実施形態では、さらに、軸受スリーブ8の上端内周側の面取り部と軸部2aの外周面2a1との間に形成される環状の空間と、軸受スリーブ8の下端内周側の面取り部と軸部2aの外周面2a1との間に形成される環状の空間も潤滑油11で満たされる(図2を参照)。
なお、図2では、上述した空間に加えて、軸受スリーブ8の上端外周側の面取り部とハウジング7の小径内周面7eとの間に形成される環状の空間と、軸受スリーブ8の下端外周側の面取り部とハウジング7の小径内周面7eとの間に形成される環状の空間、及び軸受スリーブ8の上端面8cに形成された環状溝8c1と第一半径方向溝8c2、外周面8dに形成された軸方向溝8d1、及び下端面8bに形成された第二半径方向溝8b1についても潤滑油11で満たされる場合を例示しているが、場合によっては、これらの外側環状空間、及び一連の溝8b1,8c1,8c2,8d1が潤滑油11で満たされていなくてもよい(言い換えると、外気で満たされていてもよい)。もちろん、この場合、シール部材9の大径内周面9b軸部2aの外周面2a1との間に形成される環状の空間、及びシール空間Sとが潤滑油11で満たされていなくてもよい。また、この場合、上述した一連の溝8b1,8c1,8c2,8d1の一部又は全部は省略してもよい。
ここで、潤滑油11としては公知の潤滑油が使用可能であり、例えば流体動圧軸受装置1の使用時や輸送時における温度変化等を考慮した場合、エステル系もしくはPAO系潤滑油が好適に使用される。
以上の構成を具備する流体動圧軸受装置1は、例えば以下のような手順で組み立てられる。主に図5を参照して、ハウジング7にシール部材9を溶着で固定する工程を中心に詳細を説明する。
まず、内部空孔に潤滑油11を含浸させた軸受スリーブ8を用意する。そして、この軸受スリーブ8をハウジング7の内周に導入して、その下端面8bをハウジング7の段部7cの上端面7c1に当接させる。図5(a)はこの時の状態を示す図で、軸受スリーブ8はハウジング7に対する軸方向の位置決めがなされた状態でハウジング7の内周に配置されている。このとき、シール部材9は、未だハウジング7の内周には導入されていない(ハウジング7の上方で待機している)。なお、ハウジング7内周への軸受スリーブ8の導入は、圧入を伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。前者の場合、締め代は相対的に小さく設定され(いわゆる軽圧入の状態)、後者の場合、軸受スリーブ8の外周面8dとハウジング7の小径内周面7eとの間に所定の径方向隙間が形成される。
次いで、シール部材9をハウジング7の内周にその一端開口側から導入する。ここで、シール部材9の大径外周面9dの外径寸法は、ハウジング7の小径内周面7eの内径寸法よりも大きく設定されている。そのため、ハウジング7の一端開口側から導入を開始するに当たり、シール部材9は、まずハウジング7の筒状部7aの傾斜面7fと当接する(図5(b)に示す状態)。
上述のようにして、ハウジング7に対する軸受スリーブ8及びシール部材9の初期配置が完了した後、シール部材9を下方に向けて加圧する。これにより、シール部材9のハウジング7の筒状部7aに対する圧入を開始する。また、この際、シール部材9とハウジング7との当接部(圧入部15)を加熱することにより、当該当接部(圧入部15)の溶着を開始する(図5(c)を参照)。上述した加熱による溶着は、例えば図示は省略するが、超音波振動を上記当接部(圧入部15)に付与することにより行われる。なお、この際の締め代Iは、ハウジング7の小径内周面7eとシール部材9の大径外周面9dの径方向寸法差で決定される。
このようにして、シール部材9を下方に押圧しながら、シール部材9とハウジング7との当接部(ここでは圧入部15)を加熱することにより、シール部材9がハウジング7の軸方向所定位置、ここではシール部材9の下端面9cが軸受スリーブ8の上端面8cと当接する位置まで圧入を伴って導入される(図5(d)を参照)。また、圧入部15又は圧入部15を中心とする領域に溶着部12が形成される(図4を参照)。この結果、シール部材9が、圧入を伴ってハウジング7の内周に溶着固定されると共に、軸受スリーブ8がハウジング7とシール部材9とで軸方向に挟持された状態となり、軸受スリーブ8がハウジング7に固定される。なお、溶着(言い換えると上記当接部の加熱)は、シール部材9の下端面9cとハウジング7の内周面(ここでは傾斜面7f)とが当接した時点から開始してもよいし、それ以前に開始してもよい。あるいは、シール部材9をハウジング7に圧入し始めた後に開始してもよい。
また、上述のように、シール部材9とハウジング7との当接部(ここでは圧入部15)を加熱により溶着する場合、溶着部12(図4を参照)の形成に必要ない余剰分の溶融樹脂が不可避的に生じる。この余剰分の溶融樹脂は、例えばシール部材9の下方への押込みに伴い、軸受スリーブ8の側に流動する傾向にある。ここで、上述のように、溶着部12となる圧入部15とその軸方向一端側で隣接する領域に第一環状空間13を設けることで(図5(d)を参照)、溶着加熱時に生じた余剰分の溶融樹脂の軸受スリーブ8側への流れ込みを可及的に防止又は抑制して、第一環状空間13内で上記余剰分の溶融樹脂を保持(捕捉)することができる。
このようにハウジング7と軸受スリーブ8、及びシール部材9が相互に固定され、サブアセンブリされた状態で、ハウジング7の内部空間(例えば、軸受スリーブ8の内周)に所定量の潤滑油11を充填する。然る後、シール部材9及び軸受スリーブ8の内周に軸部2aを挿入し、その下端に設けられた先端部2bをスラストプレート10の上端面10aに当接させる。これにより、図2に示す流体動圧軸受装置1が完成する。
以上の構成をなす流体動圧軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の内周面8aの上下2箇所に離間して設けられたラジアル軸受面と、これに対向する軸部2aの外周面2a1との間のラジアル軸受隙間に形成される油膜の圧力がラジアル動圧発生部A1,A2の動圧作用によって高められ、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向の二箇所に形成される。これと同時に、ハウジング7の内底面(本実施形態ではスラストプレート10の上端面10a)で軸部材2をスラスト一方向に接触支持するスラスト軸受部Tが形成される。なお、図1を参照しながら説明したように、軸部材2には、これを下方(ハウジング7の底部7b側)に押し付ける外力としての磁力を作用させている。従って、軸部材2が回転するのに伴って軸部材2が過度に浮上するのを、ひいては軸受スリーブ8の内周から抜け落ちる事態を可及的に防止することができる。
以上で説明したように、本発明に係る流体動圧軸受装置1では、ともに樹脂製のハウジング7とシール部材9との間に溶着部12を形成することによって、それほど大きな力でシール部材9を押込まずとも、シール部材9とハウジング7との間で十分な固定強度を得ることができる。また、本実施形態に係る流体動圧軸受装置1では、溶着部12とその軸方向上端側で隣接する領域に、溶着部12の形成時に生じた余剰分の溶融樹脂を保持可能とする第一環状空間13を設けるようにした。このように第一環状空間13を設けることで、溶着時、溶着部12の形成に必要ない余剰分の溶融樹脂が例えば圧入部15(図5(c)及び(d))の周囲に生じた場合においても、この余剰分の溶融樹脂の多くを第一環状空間13に向けて流動させ、保持することができる。これにより、ハウジング7とシール部材9との間から軸受スリーブ8の側に向けて余剰分の溶融樹脂が流れ込む事態を可及的に回避又は抑制して、流れ込みに起因した不具合、例えば潤滑油の循環路となる第一半径方向溝8c2や軸方向溝8d1を塞ぐといった事態を防止することが可能となる。
もちろん、溶着部12を設けることでシール部材9をハウジング7に固定するのであれば、接着剤を用いずに済み、また圧入を省略又は軽減(締め代を小さく)できるので、シール部材9のハウジング7に対する組付け作業(固定作業)を効率よくかつ低コストに実施することができる。以上より、本発明によれば、溶着によりシール部材9を精度よくハウジング7に固定すると共に、高い固定強度を得ることができる。また、溶着時に生じる余剰分の溶融樹脂の望ましくない領域(軸受スリーブ8の側)への流れ込みを回避又は抑制して、当該溶融樹脂が流れ込むことに起因した軸受性能の低下を回避することができる。従って、良好な軸受性能を安定的に発揮可能な流体動圧軸受装置1を低コストに提供することが可能となる。
また、本実施形態のように、圧入部15がその全域で溶着部12と重複するように、圧入を伴ってシール部材9をハウジング7の筒状部7aに溶着で固定する場合、溶着部12(圧入部15)の体積よりも第一環状空間13の容積を大きく設定するのがよい。このように第一環状空間13の容積を設定しておくことで、上述のように余剰分の溶融樹脂全てが第一環状空間13に向けて流れ込んだとしても、当該全ての溶融樹脂を第一環状空間13内で保持することができる。よって、ハウジング7の一端開口側から溶融樹脂が固化によりバリとして飛び出る事態を防止することが可能となる。
また、本実施形態では、ハウジング7の小径内周面7eとシール部材9の小径外周面9eとの間であって溶着部12に対して第一環状空間13とは軸方向の反対側で隣接する領域に第二環状空間14を設けるようにした。このように溶着部12よりも軸受スリーブ8に近い側に環状空間(第二環状空間14)を設けることで、シール部材9の押込み時、溶着のための加熱により生じた余剰分の溶融樹脂が押込み方向前方側に流動したとしても、溶着部12の軸方向他端側、すなわちシール部材9の押込み方向前方側に設けた第二環状空間14によって余剰分の溶融樹脂を捕捉することができる。また、この際、第二環状空間14の径方向隙間W2の大きさを第一環状空間13の径方向隙間W1の大きさよりも小さくすることで、溶着時に生じた余剰分の溶融樹脂のうち第二環状空間14に流れ込む分を最小限として残りの大部分を第一環状空間13に誘導することができる。これにより、循環路を構成する第一半径方向溝8c2など望ましくない領域への溶融樹脂の流れ込みを確実に防止することが可能となる。
また、本実施形態に係る流体動圧軸受装置1では、ハウジング7の内部空間の一部(ここではラジアル軸受隙間やスラスト軸受部Tの周囲の空間など)が潤滑油11で満たされ(図2を参照)、かつハウジング7の内部空間の残部が空気で満たされた状態となっている。これはすなわち、内部空間に充填されている潤滑油11の量が、内部空間の全容積よりも少ない、いわばパーシャルフィルの含油構造をなしていることを意味する。本発明に係る流体動圧軸受装置1では、軸部材2が、軸受スリーブ8(及びシール部材9)に対して挿脱自在であることから、上述したように、ハウジング7の内周に軸受スリーブ8及びシール部材9を固定した後であって、軸受スリーブ8内周への軸部材2の挿入前に、適当な給油具を用いてハウジング7の内部空間に潤滑油11を充填するだけで、ハウジング7の内部空間に必要量の潤滑油11を供給することができる。そのため、真空含浸など注油のための大掛かりな設備や高精密な油面の調整ないし管理作業が不要となり、流体動圧軸受装置1の製造コストを低廉化することができる。
また、軸部材2には、軸部材2をハウジング7の底部7b側に押し付ける(スラスト他方向に支持する)外力を作用させるようにしたので、軸部材2をスラスト両方向に支持することが可能となる。これにより、スラスト方向の支持精度(回転精度)を高めることができる。本実施形態では、上記外力を、磁力で与えるようにし、しかもこの磁力を、ハウジング7を内周に保持するモータベース6に設けられるステータコイル5と、ロータ3に設けられるロータマグネット4とを軸方向にずらして配置することによって与えるようにした。この種の流体動圧軸受装置1が組み込まれる各種モータは、ロータマグネット4とステータコイル5とを必須の構成部材として備える。従って、上記構成を採用すれば、上記外力を特段のコスト増を招くことなく安価に付与することができる。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明に係る流体動圧軸受装置1は上記例示の形態に限定されることなく、本発明の範囲内において任意の形態を採り得る。
図6は、本発明の第二実施形態に係る流体動圧軸受装置20の要部拡大断面図を示している。図6に示すように、この流体動圧軸受装置20は、ハウジング7とシール部材9との固定形態が第一実施形態に係る流体動圧軸受装置1のそれと相違している。具体的には、図6に示すように、本実施形態に係る流体動圧軸受装置20においては、シール部材9の外周であって、大径外周面9d(本実施形態では第一大径外周面9dと称する。)の軸方向一端側(軸受スリーブ8から遠い側)に、第一大径外周面9dよりもさらに大径の第二大径外周面9gが形成されている。この場合、半径方向で対向する第二大径外周面9gとハウジング7の大径外周面7dとの間に第三環状空間16が形成される。この第三環状空間16の径方向隙間W3は、軸方向で隣接する第一環状空間13の径方向隙間W1よりも大きい。なお、上記以外の構成については、第一実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
このように、溶着部12から見て第一環状空間13よりもさらに軸受スリーブ8から軸方向に離れた側に位置する領域に第三環状空間16を設けることで、仮に第一環状空間13に流れ込んだ余剰分の溶融樹脂が第一環状空間13の容積よりも多い場合であっても、当該容積過多となる余剰分の溶融樹脂をさらに軸受外部側に位置する第三環状空間16で漏れなく捕捉することができる。従って、余剰分の溶融樹脂が固化によりバリとして軸受外部に飛び出す事態を確実に防止して、バリ取りのための後工程を省略し、ひいては加工コストの低減化を図ることが可能となる。
図7は、本発明の第三実施形態に係る流体動圧軸受装置21の断面図を示している。図7に示すように、この流体動圧軸受装置21は、溶着対象となるハウジング及び円盤状部材の形態が第一実施形態に係る流体動圧軸受装置1のそれ(有底筒状のハウジング7と中空円盤状のシール部材9)と相違している。具体的には、本実施形態に係る流体動圧軸受装置21において、ハウジング22は筒状部22aと、筒状部22aの上端に設けられ、内周面22b1と軸部2aの外周面2a1との間にシール空間Sを形成するシール部22bとを一体的に有している。この場合、筒状部22aの下端側が開口しており、この下端開口側をスラスト部材23が閉塞している。ここでスラスト部材23は樹脂で形成され、円盤状をなす底部23aと、底部23aの周縁部から軸方向(厚み方向)に伸びる筒状部23bとを一体的に有する。本実施形態では、スラスト部材23が、本発明に係る円盤状部材(中央に穴部がない中実円盤状部材)に相当する。この場合、軸受スリーブ8は、その上端面8cをシール部22bの下端面22b2に当接させた状態で、ハウジング22の内周に収容されている。軸受スリーブ8の下端面8bにはスラスト部材23の筒状部23bの上端面23cが当接され、当接された状態のスラスト部材23がハウジング22の筒状部22aの内周に溶着で固定されている。詳述すると、スラスト部材23の大径外周面23dと、ハウジング22の筒状部22aの小径内周面22dとの間には、溶着部24が形成されており、この溶着部24を介してスラスト部材23がハウジング22の内周に固定されている。本実施形態では、スラスト部材23は圧入を伴ってハウジング22の内周に溶着で固定されており、圧入部27がその全域にわたって溶着部24と重複している。
また、溶着部24とその軸方向下端側で隣接する領域には、第一環状空間25が形成されると共に、溶着部12とその軸方向上端側で隣接する領域には、第二環状空間26が形成されている。本実施形態では、第一環状空間25は、ハウジング22の大径内周面22cとスラスト部材23の大径外周面23dとの間に形成され、第二環状空間26は、ハウジング22の小径内周面22dとスラスト部材23の小径外周面23eとの間に形成されている。本実施形態においても、第一環状空間25の径方向隙間は、第二環状空間26の径方向隙間よりも大きく設定されるのがよい。
上記構成の流体動圧軸受装置21は、例えば以下のような手順で組み立てられる。まず図示は省略するが、軸受スリーブ8をハウジング22の内周に下端開口側から導入し、上端面8cをシール部22bの下端面22b2と当接させる。次いで、スラスト部材23を軸受スリーブ8と同じくハウジング22の内周にその下端開口側から導入する。ここで、スラスト部材23の大径外周面23dの外径寸法は、ハウジング22の筒状部22aの小径内周面22dの内径寸法よりも大きく設定されている。これにより、ハウジング22の下端開口側から導入を開始するに当たり、スラスト部材23は、まずハウジング22の筒状部22aの大径内周面22cと小径内周面22dとの段差部に当接する。
上述のようにして、ハウジング22に対する軸受スリーブ8及びスラスト部材23の初期配置が完了した後、スラスト部材23を上方に向けて加圧する。これにより、スラスト部材23のハウジング22の筒状部22aに対する圧入を開始する。また、この際、図示は省略するが、スラスト部材23とハウジング22との当接部(圧入部27)を加熱することにより、当該当接部(圧入部27)の溶着を開始する。上述した加熱による溶着は、例えばこれも図示は省略するが、超音波振動を上記当接部(圧入部27)に付与することにより行われる。
このようにして、スラスト部材23を上方に押圧しながら、スラスト部材23とハウジング22との当接部(ここでは圧入部27)を加熱することにより、これも図示は省略するが、スラスト部材23がハウジング22の軸方向所定位置、ここではスラスト部材23の上端面23cが軸受スリーブ8の下端面8bと当接する位置まで圧入を伴って導入される。また、圧入部27又は圧入部27を中心とする領域に溶着部24が形成される(図7を参照)。この結果、スラスト部材23が、圧入を伴ってハウジング22の内周に溶着固定されると共に、軸受スリーブ8がハウジング22とスラスト部材23とで軸方向に挟持された状態となり、軸受スリーブ8がハウジング22に固定される。
また、上述のように、スラスト部材23とハウジング22との当接部(圧入部27)を加熱により溶着する場合、溶着部24の形成に必要ない余剰分の溶融樹脂が不可避的に生じる。この余剰分の溶融樹脂は、例えばスラスト部材23の上方への押込みに伴い、軸受スリーブ8の側に流動する傾向にある。ここで、上述のように、溶着部24となる圧入部27とその軸方向下端側で隣接する領域に第一環状空間25を設けることで(図7を参照)、溶着加熱時に生じた余剰分の溶融樹脂の軸受スリーブ8側への流れ込みを可及的に防止又は抑制して、第一環状空間25内で上記余剰分の溶融樹脂を保持(捕捉)することができる。
このようにハウジング22と軸受スリーブ8、及びスラスト部材23が相互に固定され、サブアセンブリされた状態で、ハウジング22の内部空間(例えば、軸受スリーブ8の内周)に所定量の潤滑油11を充填する。然る後、スラスト部材23及び軸受スリーブ8の内周に軸部2aを挿入し、その下端に設けられた先端部2bをスラストプレート10の上端面10aに当接させる。これにより、図7に示す流体動圧軸受装置1が完成する。なお、本実施形態に係る組立て工程においては、上下逆向きにして作業を行ってもよい。すなわち、ハウジング22の一端開口側を上方に向けた状態で軸受スリーブ8及びスラスト部材23を下方に向けて導入してもよい。
以上で説明したように、本実施形態に係る流体動圧軸受装置21では、ともに樹脂製のハウジング22と円盤状部材としてのスラスト部材23との間に溶着部24を形成したので、それほど大きな力でスラスト部材23を押込まずとも、スラスト部材23とハウジング22との間で十分な固定強度を得ることができる。また、本発明では、溶着部24とその軸方向下端側で隣接する領域に、溶着部24の形成時に生じた余剰分の溶融樹脂を保持可能とする第一環状空間25を設けるようにした。このように第一環状空間25を設けることで、溶着時、溶着部24の形成に必要ない余剰分の溶融樹脂が例えば圧入部27(図7)の周囲に生じた場合においても、この余剰分の溶融樹脂の多くを第一環状空間25に向けて流動させ、保持することができる。これにより、ハウジング22とスラスト部材23との間から軸受スリーブ8の側に向けて余剰分の溶融樹脂が流れ込む事態を可及的に回避又は抑制して、流れ込みに起因した不具合、例えば潤滑油の循環路となる第二半径方向溝8b1や軸方向溝8d1を塞ぐといった事態を防止することが可能となる。
また、以上の実施形態では、いわゆるパーシャルフィルの含油構造をなす流体動圧軸受装置1,20,21に本発明を適用した場合を例示したが、もちろん、これ以外の含油構造をなす流体動圧軸受装置に本発明を適用することも可能である。図8は、その一例(本発明の第四実施形態)に係る流体動圧軸受装置31の断面図を示している。この流体動圧軸受装置31は、含油構造において第一~第三実施形態に係る流体動圧軸受装置1,20,21と相違している。具体的には、シール空間Sを介して外部空間と区画される流体動圧軸受装置1(ハウジング7)の内部空間の全域が、潤滑油で満たされている。この場合、ハウジング7の一端開口側に配設されるシール部材32の内周面32aは軸方向中央側に向かうにつれて小径となるテーパ状をなし、この内周面32aと軸部2aの外周面2a1との間にシール空間Sが形成される。図8では、潤滑油の油面がシール空間S内に維持されている。
また、シール部材32はその下端面32bを軸受スリーブ8の上端面8cに当接させた状態でハウジング7の内周に固定されている。詳細には、シール部材32の大径外周面32cと、ハウジング7の筒状部7aの小径内周面7eとの間に、溶着部33が形成されており、この溶着部33を介してシール部材32がハウジング7の内周に固定されている。本実施形態では、シール部材32は圧入を伴ってハウジング7の内周に溶着で固定されており、圧入部36がその全域にわたって溶着部33と重複している。
また、溶着部33とその軸方向上端側で隣接する領域には、第一環状空間34が形成されると共に、溶着部33とその軸方向下端側で隣接する領域には、第二環状空間35が形成されている。本実施形態では、第一環状空間34は、ハウジング7の大径内周面7dとシール部材32の大径外周面32cとの間に形成され、第二環状空間35は、ハウジング7の小径内周面7eとシール部材9の小径外周面32dとの間に形成されている。
このようにフルフィルの含油構造をなす流体動圧軸受装置31においても、ともに樹脂製のハウジング7と円盤状部材としてのシール部材32との間に溶着部33を形成すると共に、溶着部33とその軸方向下端側で隣接する領域に、溶着部33の形成時に生じた余剰分の溶融樹脂を保持可能とする第一環状空間34を設けることで、溶着時、溶着部33の形成に必要ない余剰分の溶融樹脂が例えば圧入部36の周囲に生じた場合においても、この余剰分の溶融樹脂の多くを第一環状空間34に向けて流動させ、保持することができる。これにより、ハウジング7とシール部材32との間から軸受スリーブ8の側に向けて余剰分の溶融樹脂が流れ込む事態を可及的に回避又は抑制して、流れ込みに起因した不具合、例えば潤滑油の循環路となる第一半径方向溝8c2や軸方向溝8d1を塞ぐといった事態を防止することが可能となる。
また、以上の実施形態では、スラスト軸受部Tとしてピボット軸受部を採用した場合を例示したが、もちろん、これ以外の形態を採用することも可能である。例えば、スラスト軸受部Tをいわゆる動圧軸受で構成することもできる。この場合、図示は省略するが、軸部材2の先端(下端)に、球面状の先端部2bに代えて、軸部2aの中心線と直交する向きに広がる平坦面が設けられる。そして、軸部材2の平坦面及びこの平坦面に対向するスラストプレート10の上端面10aの何れか一方には、動圧溝等の動圧発生部(スラスト動圧発生部)が形成される。この場合、スラスト動圧発生部として、ヘリングボーン形状に複数の動圧溝を配列したものの他、スパイラル状に複数の動圧溝を配列したもの、あるいはステップ状や波型状に動圧溝を配列したものなど、公知のスラスト動圧発生部を採用することが可能である。
もちろん、ラジアル軸受部R1,R2を軸部2aの外周面2a1との間に形成するラジアル動圧発生部A1,A2の何れか一方又は双方についても、いわゆる多円弧状、ステップ状、並びに波型状など、公知のラジアル動圧発生部を採用することが可能である。
また、以上の実施形態では、モータベース6の内周に、モータベース6と別体に設けたハウジング7を固定するようにしたが、ハウジング7にモータベース6に相当する部位を一体に設けることもできる。
また、以上の実施形態では、ロータマグネット4とステータコイル5とを軸方向にずらして配置することにより、軸部材2に、軸部材2をハウジング7の底部7b側に押し付けるための外力を作用させるようにしたが、このような外力を軸部材2に作用させるための手段は上記のものに限られない。図示は省略するが、例えば、ロータマグネット4を引き付け得る磁性部材をロータマグネット4と軸方向に対向配置することにより、上記磁力をロータ3に作用させることもできる。また、送風作用の反力としての推力が十分に大きく、この推力のみで軸部材2を下方に押し付けることができる場合、軸部材2を下方に押し付けるための外力としての磁力(磁気吸引力)は省略しても構わない。
また、以上の実施形態では、回転部材として、羽根を有するロータ3が軸部材2に固定される流体動圧軸受装置1に本発明を適用した場合について説明を行ったが、本発明は、回転部材として、ディスク搭載面を有するディスクハブ、あるいはポリゴンミラーが軸部材2に固定される流体動圧軸受装置1にも好ましく適用することができる。すなわち、本発明は、図1に示すようなファンモータのみならず、ディスク装置用のスピンドルモータや、レーザビームプリンタ(LBP)用のポリゴンスキャナモータ等、その他の電気機器に組み込まれる流体動圧軸受装置1にも好ましく適用することができる。