本発明の実施形態を農業用の作業車両を構成するコンバインに基づいて説明する。稲や麦を刈取りながら脱穀するコンバインは、図1及び図2に示すように6条刈りの自脱型コンバイン1で構成し、略矩形状に枠組みする機体フレーム(走行機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から突出する駆動軸に取り付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール7、及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略矩形状になす運転フレームを一体的に連結し、この運転フレーム及びその後方の機体フレーム2にかけて操縦部10を設ける。なお、図3に示すように操縦部10はフロア11の後方に運転席12を設け、また、フロア11の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)13を、フロア11と運転席12の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)14を設け、さらに、キャビン15で操縦部10を覆っている。
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部10の前方にかけて刈取部16を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取部16は、その前端下部に設ける7つの分草体17と左右のナローガイド18によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の最も外側となる分草体17の間に入った刈取穀稈を引起爪19aを備える引起装置19によって引起し、その後、図4に示すように突起付き掻込ベルト20とスターホイール21で構成する掻込装置22で寄せ集めながら穀稈の株元寄りをレシプロ方式の刈刃装置23によって切断する。
さらに、刈刃装置23によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置22のスターホイール21で後方に送り、また、後方に送った穀稈は左右と中央に設ける株元搬送装置24、25、26に引き継がせて更に後方に向けて搬送する。そして、中央に設ける株元搬送装置26の終端部は右株元搬送装置24の搬送経路の中途に設ける合流部に臨み、この中株元搬送装置26によって搬送した穀稈は、中途の合流部において右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右株元搬送装置24に引き継がせる。
一方、左側に設ける株元搬送装置25の終端部は右株元搬送装置24の終端部に臨み、この左株元搬送装置25によって搬送した穀稈は、右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と、両搬送装置24、25の終端部となる合流部において合流する。また、合流した穀稈は、その始端部を両合流部に臨ませる扱深さ搬送装置27に引き継がせ、更に後上方に向けて搬送する。
そして、扱深さ搬送装置27に引き継がせた穀稈は、扱深さ搬送装置27の終端部から補助搬送装置28を介して脱穀フイードチェーン29に引き継がせる。なお、ここまで主に穀稈の株元側の搬送経路について説明したが、穀稈の穂先側は右株元搬送装置24と扱深さ搬送装置27、及び補助搬送装置28の上方側に設ける穂先搬送装置30と、左株元搬送装置25及び中株元搬送装置26の上方側に設ける左掻込搬送装置31と中掻込搬送装置32の各搬送チェーンに取付ける搬送爪に係止して搬送する。
また、脱穀部33は、刈取部16後方の機体フレーム2の左側に設け、上方を覆うシリンダーカバー34の下方に第1と第2の扱室を設ける。この内、第1扱室には刈取部16から搬送されてきた穀稈を扱口に沿って搬送する脱穀フイードチェーン29とその挟持レール35、扱歯を備える第1扱胴とその受網等を設ける。また、第2扱室は第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように第1扱室に併設し、第1扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する第2扱胴とその受網を設ける。
一方、第1と第2の扱室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番螺旋及び2番螺旋、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室の受網より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番螺旋から揚穀装置36を介してグレンタンク37に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番螺旋から2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕捉された藁屑、或いは第2扱胴の終端から排出された藁屑は、脱穀部33後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出される排稈は、排藁搬送装置38によってディスク型カッター39に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター39は、排藁搬送装置38で搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出するか、そのまま長藁として放出する。
そして、前記グレンタンク37は、操縦部10の下方から後方に設けるディーゼルエンジン40等から構成する原動部のさらに後方に設け、揚穀装置36によって移送された穀粒を一時的に貯留する。また、グレンタンク37内に穀粒が満杯になると、グレンタンク37から穀粒を排出して機外のコンテナ等に放出すべく排出オーガ41を作動させる。
なお、排出オーガ41は、グレンタンク37の底部に設ける横螺旋と縦螺旋を内装する縦パイプを備え、この縦パイプはグレンタンク37の後方にオーガ旋回モータによって回動可能に立設する第1縦パイプ42と、第1縦パイプ42の上部にギヤケース43介して油圧シリンダ44によって昇降可能になす第2縦パイプ45によって構成する。
次に、前述の刈取部16について更に説明すると、図1及び図4に示すように刈取部16は、機体フレーム2の左側前部寄りに設ける支柱の上部にその後部側を回動自在に支持し、油圧シリンダによって前部側が上下方向に昇降する略エ字状に連結するパイプケースによって構成する伝動フレーム46を備える。また、この伝動フレーム46の前部に前処理フレーム47やサポートフレーム等を取付ける。
さらに、これら伝動フレーム46や前処理フレーム47、或いはサポートフレーム等には、引起装置19、掻込装置22、刈刃装置23、株元搬送装置24、25、26、扱深さ搬送装置27、補助搬送装置28、穂先搬送装置30、及び掻込搬送装置31、32等の各装置や、分草体17、サイドカバー48、穂先案内板49、フード50等を取付ける。
そして、伝動フレーム46内にはベベルギヤを備える伝動軸を軸支し、原動部に設けるエンジン40は、搬送HST(静油圧式無段変速装置)51とベルトテンションクラッチで構成する刈取クラッチ52を介して伝動フレーム46内の入力伝動部46aの入力軸53を駆動し、その後、縦伝動部46b、穂先・補助搬送伝動部46c、右株元伝動部46d、扱深さ伝動部46e、中株元伝動部46f、下伝動部46g、左株元伝動部46h、引起し伝動部46i、及び刈刃駆動部46jから各装置を駆動する。
なお、前記脱穀部33は、エンジン40からベルトテンションクラッチで構成する脱穀クラッチ54を介して駆動し、その脱穀部33の駆動系から分岐した動力によって搬送HST51を駆動し、また、搬送HST51から脱穀部33の脱穀フイードチェーン29と刈取部16の各部を駆動する。さらに、左右のクローラ走行装置4を駆動する走行変速装置は、エンジン40からベルトテンションクラッチで構成する走行クラッチ55を介して駆動する。
また、上記走行変速装置は、トランスミッションケース5に取付ける主変速装置を構成する走行HST(静油圧式無段変速装置)56とトランスミッションケース5内に設ける標準(刈取脱穀作業速)と走行(路上走行速)に切換え可能な歯車変速装置57から構成する副変速装置を備え、さらに、左右の駆動スプロケット6はトランスミッションケース5内に設ける左右サイドクラッチやブレーキ等から構成する操向装置を介して駆動する。
従って、路上走行を行う場合は、エンジン40をスタータキーによって始動させ、操縦部10に設ける副変速レバー58を前方の走行位置に操作し、また、主変速レバー59を中立位置から前方の前進位置、或いは後方の後進位置に位置させて、増減操作すればコンバイン1を必要な速度で走行させることができる。また、圃場において刈取作業を行う場合は、副変速レバー58を後方の標準位置に操作し、同様に主変速レバー59を増減操作すれば路上速度より低速でコンバイン1を走行させることができる。
なお、刈取作業を行う場合は、操縦部10に設けるモーメンタリ型のロッカースイッチによって構成するパワークラッチスイッチ60の前部寄りを押して、先ず図示しないパワークラッチ電動モータによって脱穀クラッチ54を入りにし、さらに、再びパワークラッチスイッチ60の前部寄りを押してパワークラッチ電動モータによって刈取クラッチ52を入りにして、脱穀部33や刈取部16の各部とカッター39を駆動する。なお、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54を切りにする場合は、パワークラッチスイッチ60の後部寄りを押すと順次、それらのクラッチを切断することができる。
また、操縦部10に設けるマルチステアリングレバー(昇降操作具)61をその中立位置から前方側に傾倒操作すると、刈取部16を上昇させた非作業姿勢から下降させた作業姿勢に下降させることができる。そして、マルチステアリングレバー61をその中立位置に戻せば刈取部16の下降を停止させ、また、マルチステアリングレバー61をその中立位置から後方側に傾倒操作すると刈取部16を上昇させることができる。
さらに、マルチステアリングレバー61を、その中立から左右方向に傾倒操作すると、トランスミッションケース5内に設ける左右サイドクラッチやブレーキ等から構成する操向装置を作動させてコンバイン1の進行方向を変更することができる。なお、このような操作の下に圃場の立毛穀稈の刈取作業を開始すると、搬送HST51は走行速度(車速)に同調させて、その出力回転数が増減するように構成し、これによって圃場の立毛穀稈を適正な立ち姿勢に引起こし、また、穀稈の搬送姿勢を安定させて脱穀部33に搬送することができる。
以上、コンバインの概要について説明したが、次に作業走行を行う際の走行速度を自動制御する車速制御装置について説明する。先ず、前述の操縦部10に設ける主変速レバー(変速レバー)59は、図5に示すように基部に設けるアームプレート59aと、アームプレート59aの上部に左右回動自在に取付けるレバー桿59bと、レバー桿59bの上部に取付けるグリップ59cで構成する。そして、サイドコンソール14のコンソールフレーム62に固着する回動軸63にアームプレート59aを前後回動自在に軸支する。
また、アームプレート59aの下部と走行HST(走行変速装置)56の図示しないサーボコントロールレバーとをボールジョイント64とロッド65を介して連結し、主変速レバー59の前後方向の手動による回動操作によって走行HST56を正転(前進)・中立(停止)・逆転(後進)可能に、また、車速を増減速可能に連係する。一方、コンソールフレーム62にモータベース66を取付け、このモータベース66にギヤードモータで構成する車速変速モータ(アクチュエータ)67と2段減速歯車機構68を設ける。
さらに、車速変速モータ67の出力軸に2段減速歯車機構68の入力歯車68aを取付ける一方、2段減速歯車機構68の最終出力歯車68dを回動軸63に回転自在に軸支する。そして、アームプレート59aと最終出力歯車68dの対向面の間に摩擦板69を介装すると共に、回動軸63に皿ばね70とワッシャー71とダブルナット72を装着し、車速変速モータ67の正逆回転によって摩擦板69を介してアームプレート59aを回動させて、主変速レバー59を手動操作する場合と同様に走行HST56を操作して車速を増減速可能に連係する。
なお、モータベース66にリターンスプリング付きの主変速レバーポテンショメータ73を取付け、このポテンショメータ73の作動軸に固定する作動アームの先端部をアームプレート59aに設けるピンに当接させて主変速レバー59の前後方向の操作角度を検出可能になす。また、レバー桿59bの基部寄りとアームプレート59aとに亘ってコイルスプリング74を張設し、このコイルスプリング74の付勢力によってサイドコンソール14に設ける主変速レバー59のレバーガイド75の中立位置75aに主変速レバー59を保持可能になす(図3参照)。
そのため、レバーガイド75の左右方向となる横溝(中立溝)の何れかの位置に主変速レバー59を操作した後、主変速レバー59から手を離すと主変速レバー59はレバーガイド75の中立位置75aに保持されて、不測に前方の前進変速領域や後方の後進変速領域に回動されないように保持することができる。また、車速変速モータ67を正逆回転させると主変速レバー59が前後方向に回動することになるが、車速変速モータ67を正逆回転させる場合は後述するようにレバーガイド75の前進変速領域に主変速レバー59が位置している場合に限定しているので、主変速レバー59が車速変速モータ67によって横溝(中立溝)から後進変速領域に回動されることはない。
以上、操縦部10に設ける変速レバー59と車速制御装置のアクチュエータ67の走行変速装置56に対する連係構造について説明したが、次に、アクチュエータ67を作動させて車速を制御する方法について説明すると、図6に示すブロック図に示すように、車速制御装置は主に3つのマイクロコンピュータユニット(ECUA、ECUB、E/GECU)76、77、78と警告等を行う液晶モニタ79用のマイクロコンピュータユニット(ECUC)80を備え、各ユニットはコントローラエリアネットワーク(CAN)で相互通信可能に結び各種の情報を共有する。
そして、この内、ECUA76の入力回路には、操縦部10に設けるパワークラッチスイッチ60、エンンジン回転ダイヤル81と車速自動ダイヤル82と選別自動ダイヤル83の夫々の可変抵抗器81a、82a、83aと自動スイッチ81b、82b、83bを接続する。そして、ECUA76の出力回路には発光ダイオードで構成するエンジン自動ランプ81c、車速自動ランプ82c、選別自動ランプ83cを接続する。
また、ECUB77の入力回路には、主変速レバーポテンショメータ73、トランスミッション回転センサ84、搬送回転センサ85、搬送掻き込みスイッチ86、扱深さメインスイッチ87、エアフローセンサ88を接続する。そして、ECUB77の出力回路には、モータリレー89を介して車速変速モータ67を接続する。
そして、以上のように構成する特にECUB77は車速自動制御を実行し、この車速自動制御は、予め定めた自動条件が成立すると、車速が人為的に設定する制御目標速度に達する(一致する)ようにアクチュエータ67を作動させ、また、車速が一度、制御目標速度に達した後は、作業負荷が適正範囲から外れた場合に、作業負荷が適正範囲に入るまで車速を減速するようにアクチュエータ67を作動させる。
また、作業負荷が適正範囲から外れた場合に車速を所定量ずつ段階的に減速するようにアクチュエータ67を作動させ、また、この作業負荷の適正範囲はエンジン40の負荷と作業部33の負荷に基づいて判断する。さらに、この自動制御を実行している際に、変速レバー59を手動操作して車速が制御目標速度を所定量超えて増速されると、車速が制御目標速度を所定量超えないようにアクチュエータ67を減速作動させる(上限制御)。
そして、1行程の作業走行の開始時に条件を満たし、且つ終了後に条件を満たさなくなる条件を自動条件に含め、また、車速自動制御を実行している際に、変速レバー59を手動操作して車速が制御開始速度を下回ると実質的に自動制御を行わず、但し、その後に変速レバー59を手動操作して車速を制御開始速度以上に増速させると、自動制御を再開させて車速が人為的に設定する制御目標速度に達するようにアクチュエータ67を作動させる。
以下、前述の車速自動制御の具体的な制御内容について、図7のフローチャートに基づいて説明すると、ECUB77は、先ず操縦部10に設ける車速自動ダイヤル82を押して車速自動スイッチ82bがONに立ち上がったかを判断する(S1)。そして、車速自動スイッチ82bがONに立ち上がった場合には、車速自動制御のイニシャルセットにおいてリセットまたはセットしておく自動フラグF0の状態を判断し(S2)、リセットされていれば車速自動制御が入りに操作されたものとして、自動フラグF0のセット、設定フラグF1のリセット、変数kへの0値の代入、車速自動ランプ82cの点灯の各処理を行う(S3)。
また、自動フラグF0がセットされていれば車速自動制御が切られたものとして、自動フラグF0のリセットと車速自動ランプ82cの消灯を行い(S4)、そのまま復帰する。さらに、ステップS1で車速自動スイッチ82bがONに立ち上がっていなければ、同じく自動フラグF0の状態を判断し(S5)、リセットされていれば車速自動制御が切られているものとしてそのまま復帰する。しかし、セットされていれば車速自動制御が選択されているものとして、次のステップの自動条件の成否の判断を行う(S6)。
ここで、車速自動制御の自動条件として、刈取クラッチ52及び脱穀クラッチ54が入り、主変速レバー59が前進変速領域、搬送HST51の出力回転数がゼロより超過、エンジン回転数が所定回転数(例えば2400rpm)以上、車速が制御開始速度(制御開始点:例えば0.3m/s)以上、エンジン回転自動制御が入り、扱深さメインスイッチ87がON、搬送掻き込みスイッチ86がONの各項目を全て満たすことを条件とする。
なお、これらの情報はパワークラッチスイッチ60の操作状況、主変速レバーポテンショメータ73、搬送HST51の出力回転数を検出する搬送回転センサ85、E/GECU78から取得するエンジン40の回転数、トランスミッションケース5に設ける副変速装置57の下流側の伝軸軸の回転数を検出するトランスミッション回転センサ84から取得することができる。また、エンジン回転自動制御の入りはエンンジン回転ダイヤル81の自動スイッチ81bの操作状況によって得られ、扱深さメインスイッチ87と搬送掻き込みスイッチ86は扱深さ搬送装置27と掻込装置22における搬送穀稈の有無を検出して扱深さ自動制御の自動条件等として設けるスイッチである。
また、前述のエンジン回転自動制御は、その自動制御が入りになっているとE/GECU78に対して指示するエンジン回転数を、例えば、刈取クラッチ52又は脱穀クラッチ54が入りである時、排出オーガ41の旋回又は昇降或いは穀粒排出時、副変速装置57が標準である時には2600rpm、副変速装置57が走行である時には2770rpm、それ以外はアイドリング回転となる1480rpmとなし、これによってE/GECU78はその指示回転数になるようにエンジン回転数を制御する。なお、自動制御が切りであればエンンジン回転ダイヤル81(可変抵抗器81a)でエンジン回転数を人為的に指示する。
従って、車速自動制御の自動条件は、車速自動スイッチ82bの操作によって入切りされる車速自動制御の自動が入り(自動フラグF0のセット)であることは勿論として、上述の自動条件によって作業部(刈取部16や脱穀部33等)が駆動されて前進走行が行われ、また、刈取部16によって立毛穀稈を刈取って実際に作業走行を行っていることを条件とし、また、それに加えて、エンジン40の回転数がE/GECU78によって所定の回転数(例えば、2600rpm)に制御されていることを条件とする。
そして、以上説明した自動条件が成立しない路上や枕地での旋回や回向走行時にはECUB77は、設定フラグF1をリセットして(S7)復帰する。しかし、実際に作業走行を行って自動条件が成立すると、設定フラグF1のセット状態を判断し(S8)、設定フラグF1がリセットされていれば車速が制御開始速度(制御開始点:例えば、0.3m/s)以上であるかを判断し(S9)、作業者が車速を人為的に設定する制御目標速度で作業走行を行う意思を示しているのか、或いは、1行程の作業開始直後で刈取部16の刈高さ調節が安定するまで低速で作業走行を行いたい等の意思を示しているのかを判断する。
そして、この場合に車速が制御開始速度以上に増速されていると、現在の車速と人為的に設定する制御目標速度(制御設定点)とを比較し(S10)、車速が下回っている場合はモータリレー89を介して車速変速モータ67を正転させて車速を増速すると共に、車速自動ランプ82cを低速で点滅させる(S11)。さらに、その後、車速が制御目標速度に達したか否かを判断し(S12)、車速が制御目標速度に達すると、車速変速モータ67を停止すると共に、車速自動ランプ82cを連続点灯させ、設定フラグF1をセットする(S13)。
一方、車速が制御目標速度に達していると、車速自動ランプ82cを連続点灯させ、設定フラグF1をセットする(S14)。また、車速が制御目標速度より上回っている場合は、車速変速モータ67を逆転させて車速を減速すると共に、車速自動ランプ82cを低速で点滅させる(S15)。さらに、その後、車速が制御目標速度に達したか否かを判断し(S16)、車速が制御目標速度に達すると、車速変速モータ67を停止すると共に、車速自動ランプ82cを連続点灯させ、設定フラグF1をセットする(S17)。
そして、この場合に用いる制御目標速度は、車速自動ダイヤル82(可変抵抗器82a)で人為的に設定し、この車速自動ダイヤル82で設定する具体的な制御目標速度は、図8の車速設定テーブルの制御開始点とともに示す制御設定点の車速を用い、例えば、車速自動ダイヤル82を「8」に設定している場合には、ECUB77は制御目標速度をV8m/sとする。また、車速が制御目標速度に達して車速変速モータ67を停止させると、モータリレー89はショートブレーキ回路を備えるので主変速レバー59をその停止した変速位置に保持し、手動操作で主変速レバー59を操作しない限り変速位置は変更されない。
また、ステップS8で設定フラグF1がセットされていれば、上述の車速を制御目標速度に一致させる制御は行わないから、設定フラグF1の状態によって作業走行の開始した後に車速を制御目標速度になす自動制御を既に行っているのか、未だ行っていないかを判断するフラグとして設定フラグF1を使用する。そして、既に車速を制御目標速度になす自動制御を行っている場合は、次に、作業負荷の状態を判断する(S18)。
この場合、作業負荷が過負荷であると、変数kをインクルメントして制御目標速度から所定量Δsに変数kを乗算した値を減算して得られた値を減速設定速度(減速設定点)として演算し(S19)、また、車速変速モータ67を逆転させて車速を減速すると共に、車速自動ランプ82cを高速で点滅させる(S20)。さらに、車速が減速設定速度に減速されたかを判断し(S21)、車速が減速設定速度に減速されたことを待って車速変速モータ67を停止させると共に、車速自動ランプ82cを連続点滅させる(S22)。
そして、再び作業負荷の状態を判断するステップS18に戻って、この作業負荷が適正になるまで減速設定速度を所定量Δsずつ下げて車速を減速する制御を繰り返し行う。なお、ここで用いる減速設定速度は、図8の車速設定テーブルの減速設定点に示すように例えば、車速自動ダイヤル82を「8」に設定している場合には、制御設定点から過負荷の解消が期待することができる所定量(Δs=0.3m/s)減算したVd8m/sとなる。また、最初の減速で作業負荷が解消されなければ、次の減速設定速度はVd8m/sから所定量(Δs=0.3m/s)減算した速度となる。
また、この場合の作業負荷の適正範囲は、エンジン40の負荷と作業部(脱穀部33)の負荷に基づいて判断し、例えばエンジンの負荷は、エンジン40としてコモンレール式のディーゼルエンジンを使用しているので、E/GECU78に指示するエンジン回転数2600rpmに対してE/GECU78から取得することができるエンジンの負荷率を用い、例えば95パーセント以上の負荷率が2秒以上続くと過負荷と判断して、前述の車速の減速制御を行ってエンジン40のオーバーヒートやエンストを防止する。
さらに、作業部(脱穀部33)の負荷は、脱穀部33の選別室内の風速に基づく風量を検出するエアフローセンサ88が、その検出する風量が非常に少なく、そのため、扱室の受網より漏下した穀粒等が揺動流板上に著しく堆積して、藁屑等と共に穀粒が機外に排出されて穀粒損失を生ずる穀粒選別の限界に近い状態に基づいて過負荷と判断して、前述の車速の減速制御を行って揺動流板上の処理物の堆積量を減らして適正な穀粒選別を行わせて穀粒損失を防止する。
なお、作業走行中に選別自動ダイヤル83の自動スイッチ83bを用いて選別自動制御を行わせると、車速、選別自動ダイヤル83の可変抵抗器83aで設定する選別度合、エアフローセンサ88の値等を総合的に判断して揺動流板上に設ける揺動フィンの開き量を自動的に調節し、揺動流板上の処理物の堆積量を適正に制御して穀粒の選別精度を高める。従って、係る揺動フィンを全開させても処理物が減らない状況が続く場合に車速の減速制御を行うことになる。
そして、前述の作業負荷が適正である場合は、車速が制御目標速度に所定量を加えた上限設定速度(上限設定点)を超えているかを判断し(S23)、車速がこの速度より超過している場合には車速変速モータ67を逆転させて車速を減速すると共に、車速自動ランプ82cを高速で点滅させる(S24)。さらに、車速が上限設定速度以下に減速されたかを判断し(S25)、車速が上限設定速度以下に減速されると車速変速モータ67を停止させると共に、車速自動ランプ82cを連続点滅させる(S26)。
なお、この場合に用いる上限設定速度は、図8の車速設定テーブルの上限設定点に示すように例えば、車速自動ダイヤル82を「8」に設定している場合にはVu8m/sとなり、制御目標速度V8m/sに加える所定量としては、例えば0.2m/sとする。そのため、車速自動制御中に主変速レバー59を手動操作して車速が制御目標速度を所定量超えて増速されると、車速が少なくとも制御目標速度を所定量超えないように減速させる上限制御を行い、これによって誤って手動操作で車速を上げ過ぎないように制限する。
さらに、上限制御の次に自動解除条件の成否を判断し(S27)、自動解除条件が成立すると自動フラグF0をリセットすると共に、車速自動ランプ82cを消灯して車速自動制御を切りとなして復帰する(S28)。なお、この場合の自動解除条件は、車速自動スイッチ82bの操作によって車速自動制御が切りになったことを含めて、前述の自動条件が不成立となったこと、車速自動ダイヤル82で設定する制御目標速度が人為的に変更されたことの何れか1つでも満足すると自動解除条件が成立し、また、この制御は車速自動制御が実行されている際に割り込み制御として随時行わせてもよい。
そして、前述の自動解除条件が不成立の場合、手動操作で主変速レバー59が操作されて車速が制御開始速度(0.3m/s)を下回ったかを判断し(S29)、制御開始速度を下回ると設定フラグF1をリセットして(S30)、その後に復帰する。従って、この場合、再度、手動操作で主変速レバー59を操作して車速を制御開始速度(0.3m/s)以上に増速させると、車速を制御目標速度に増速する前述の車速自動制御を再開させることができる。
なお、車速自動制御中に主変速レバー59を手動操作で制御開始速度(0.3m/s)を下回らない範囲で減速させた際には、上述の制御は行わないので、作業者の意思のもとに低速でそのまま作業走行を行うことができる。さらに、この作業者の意思のもとに低速で作業走行を行うことができる下限の速度は、制御開始速度(0.3m/s)より上げて例えば、0.5m/sとしてもよい。
以上、車速自動制御の具体的な制御内容について説明したが、この制御内容を纏めると作業走行を開始して自動条件が成立すると、先ず能率的に作業走行を行うことができる人為的に設定する制御目標速度に車速は制御され、作業走行の開始当初に車速を適正な車速に自動的に調節することができる。また、車速が一度、制御目標速度に達した後は、作業負荷が適正範囲から外れた場合に、作業負荷が適正範囲に入るまで車速を減速させるから、人為的に設定する制御目標速度が必ずしも適切でなかった場合でも、過負荷や高負荷状態を排除しながら作業走行を支障なく能率的に行うことができる。
そして、制御目標速度に車速が達した後や、作業負荷が適正範囲に入って減速を終えた後は、作業負荷が少なく車速の増速の余地が残されている場合であっても自動的に増速させることはなく、作業者が意図しない増速をなくし安全に作業走行を行うことができると共に、車速の頻繁な増減速を防止することができて安定した車速の下に作業精度を向上させることができる。
また、制御目標速度や作業負荷が適正範囲から外れた場合に車速を増減速する場合に、フローチャートにおいては説明を省略したが、車速変速モータ67によって構成するアクチュエータ(車速変速モータ67に限らず油圧シリンダ等のアクチュエータであってもよい)は、連続して作動させるのではなく所定のデューティ比をもって間欠的に作動(フィードバック制御におけるむだ時間補償制御)させるから、車速を比較的緩やかに増減速させて安全性や作業負荷の応答遅れに対処しながら、過不足なく車速を目標速度に一致させることができる。
さらに、エンジンの負荷と作業部の負荷に基づいて作業負荷を判断し、これらの負荷の何れかが適正範囲から外れた場合に車速を減速するから、エンジン40のオーバーヒートやエンスト等を無くし、また、収穫作物の損失(脱穀部33における穀粒の機外排出)や刈取部16と脱穀部33における穀稈の搬送詰まり、或いはそれらの作業部の損傷等のトラブルを無くし、作業能率や作業精度の低下を防止することができる。
なお、作業負荷の検出方法としてエンジン負荷率と脱穀部33の選別室内の風量を用いたが、作業車両としてのコンバイン1の場合には、エンジン40の出力が脱穀系と走行装置系と藁処理系と刈取搬送系等に分配され、また、この順に所要動力を大きく必要とし例えば、走行装置系の負荷として走行HST56、刈取搬送系の負荷として搬送HST51の夫々の閉回路圧より判断したり、脱穀系の負荷として2番還元装置の螺旋回転数の低下によって判断してもよい。
また、操縦部10に設ける液晶モニタ79に前述のどの系に高負荷や過負荷が加わっているのか警告してもよく(図9参照)、さらに、車速自動制御における制御目標速度に増減制御中であること等の制御状態や停止状態、或いは制御目標速度等を液晶モニタ79に表示したり、車速自動ランプ82cと共にブザーを作動させて作業者に報知してもよい。
そして、車速自動制御中に作業者が作業負荷に余裕があると判断したり、圃場の局所的な負荷等によって自動的に減速した車速を元の車速に戻したい場合に、変速レバーの手動操作によって車速を増速させたり、制御目標速度や作業負荷によって減速した車速以上に減速させて安定性を求める場合に、変速レバーの手動操作によって車速を減速させた際には、制御開始速度と上限設定速度の範囲内であれば車速を作業者の意思に任せて変更することができるので車速制御の自由度を高めることができる。
しかし、誤った手動操作によって安定した作業走行が阻害される虞があると判断する場合は、手動操作に制限を加えて上限設定速度以下に車速を自動的に減速させることができる。また、圃場において1行程の作業走行を終えて次行程に向けて旋回や回向を行う際、刈取部16や脱穀部33をそのまま駆動し続けると、刈り取った穀稈が脱穀部33に搬送されて搬送掻き込みスイッチ86や扱深さメインスイッチ87がOFFとなり、また、刈取部16や脱穀部33の駆動を停止させて刈り取った穀稈を搬送させない場合は、刈取クラッチ52又は脱穀クラッチ54が切り、搬送HST51の出力回転数がゼロとなり、車速自動制御の自動条件は何れの場合であっても満たさなくなる。
そのため、車速制御装置は、1行程の作業走行の開始時に条件を満たし、且つ終了後に条件を満たさなくなる前述の条件を自動条件に含めることになって、1行程の終了後に自動制御は必ず終了することになる。そのため、次行程の作業走行の開始時に改めて自動条件が成立すると、車速制御装置は人為的に設定する制御目標速度に達するようにアクチュエータを作動させ、車速を制御目標速度に戻す自動制御を行う。
従って、1行程の作業走行を終えて次行程の作業走行を行うために、枕地で旋回や回向を行った際の手動操作による主変速レバー59によって変更した車速は、上述の車速自動制御の再開によって制御目標速度に自動的に戻すことができるから、特別な操作を必要とすることなく設定した車速に基づいて作業走行を再開することができる。また、前行程で高負荷になって減速した車速は一旦リセットすることになるから、車速の減速による能率の低下をそのまま引き継ぐことなく作業走行を能率的に行うことができる。
なお、車速が制御目標速度に制御される作業走行の開始当初は作業負荷があまり加わっていない段階であるのに対し、それ以後は定常的な作業負荷が加わった状態の走行となるから、ここで車速自動ダイヤル82を操作して車速を増速させようとすると、急激に作業負荷が増大して即座にエンスト等を招く虞がある。そのため、車速自動ダイヤル82を操作して制御目標速度を変更すると車速自動制御は行わないように自動解除条件に含める。
そのため、車速自動ダイヤル82を操作して制御目標速度を変更したい場合は、一旦、作業走行を中断して、そのうえで車速自動ダイヤル82を2度押して再び車速自動制御を入りとして作業走行を再開すれば、変更した制御目標速度によって車速自動制御を行わせることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、エンジン40のオーバーヒートは作業負荷の過負荷以外にエンジンの冷却水系統のトラブルが主原因となることが大半であるから、この場合はコンバイン1を車速制御装置を用いて車速がゼロになるように自動制御して走行を停止させ、さらに刈取クラッチ52又は脱穀クラッチ54を自動的に切断してエンジン40を無負荷状態にしてエンジン40の焼け付きを防止することができる。
また、グレンタンク37内に穀粒が満杯になると、作業走行を中断して圃場近くに停車するトラックの荷台等に設置するコンテナ等に穀粒を排出する必要があり、その場合は圃場近くの農道等に停車するトラックの近くまでコンバイン1を移動走行させることになる。しかし、この移動走行中に排出オーガ41を上昇させて旋回操作を行うと機体重心位置の変化によって転倒等の虞が生ずるので、車速制御装置が移動走行を検出している際には、排出オーガ41の上昇又は旋回の作動制御を行う制御装置に対してこれらの作動を無効(禁止)とするように警告してもよい。
さらに、グレンタンク37の穀粒をコンテナ等に排出した排出オーガ41をコンバイン1の刈取部16や脱穀部33上に横臥状態に格納させる際に、作業者が走行変速装置56を前後進変速操作を行ったことを車速制御装置が検出したら、車速がゼロになるように自動制御して走行を停止させるようにしてもよく、これらの制御は何れも作業者の安全を担保するうえで重要な事項である。