以下、ドプラ信号採取装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
本実施の形態においては被観測音場における観測開口部(探触子)と目的反射源(血行系、胎児心など)との動的関係における性質を良く考慮して必要計算量を極度に減らしてリアルタイム追尾動作ができるようにする。ここでの追尾動作は、例えば、経時的に変化しうる目標の位置を示す情報のような追尾に必要な情報を取得することや、追尾に必要な情報を利用して経時的に変化しうる目標の位置に対応して、予め決められた1以上の処理を行うこと等である。ここでの経時的に変化しうる目標の位置とは、経時的に目標の位置が変化しなかった状態も含むと考えてもよい。本発明者が鋭意研究したところ、ドプラ信号採取装置等においては、被観測音場における観測開口部(探触子)と目的反射源(血行系、胎児心など)、すなわち目標との動的関係における性質を考慮した場合、追尾のために動的に変更しなければならない3つのパラメータである変位角θ、φ、および距離zのうち緊急度が高い(すなわち刻々と変化する)のはθ、φで、zは相対的に緊急度が低い(すなわち頻繁・高速には変化しない)という考えに至った。例えば、別な切り口で説明すると、探触子と目標(例えば、目的胎児心)との位置関係において、ふらつき易いのは、また胎児が、例えば、母体の呼吸や分娩の進行などの事由等に従って「逃げて行く」のは主として方位角であり、距離ではないという考えに至った。生体の奥の方にある中径ないし細径の血管を自動追尾せんとする場合も事情は同じである。また、観測系としてパルスドプラ系を採用する場合は目的反射源の距離の情報は信号が観測されるレンジゲートの深さとして大まかながら直接的に得られるので、これを到来波面の曲率から求める必要性は少ない。また実際的な寸法(波長との比率)においての観測開口が成す音場でのビームプロファイル(ないしはフレネル変換の空間分解能)に関してもまた、方位分解能の方が距離分解能より格段に高く、ゆえに目標から外れた場合の被害も方位角空間に関する方が大きい。
このような考えのもとに、最初に、目標までの距離zと方位角θ、φとを取得して目標を発見し、目標捕捉後の追尾の段階では方位角の2つの変数θ、φについてのみ追尾を行うようにしたところ、追尾の段階で距離zを取得する処理をなくすことができ、従来と比較して、大幅に処理を削減して格段に容易に被検体内に位置する目標を追尾することができるドプラ信号採取装置を提供できることを本発明者が見いだした。本実施の形態は、このようなドプラ信号採取装置の実施形態を説明するものである。
なお、ここでの方位角は二次元である、ないしは二次元として取り扱う。なお、ここで述べる方位角θ、φの一方は通常、仰角と呼ばれるが、ここでは方位角と仰角とを区別せずに、両者を方位角と呼んでいる。また、ここでの方位角θ、φは、例えば、極座標系における2つの偏角θ、φと考えてもよい。また、ここでの距離zは、極座標系における動径rと考えてもよい。かかることは、以下においても同様である。
図1は、本実施の形態におけるドプラ信号採取装置1のブロック図である。
ドプラ信号採取装置1は、照射部101、受波器アレイ102、受信器アレイ103、フィルタアレイ104、A/D変換器105、格納部106、受付部107、心拍取得部108、取得部109、出力部110、テンプレート取得部111を備える。ここでは、一例として、照射部101と受波器アレイ102とがケース100内に設置されている場合について説明する。ただし、ケース100内に、これら以外の部分が更に設定されていてもよい。
ケース100の材質や形状等は問わない。ケース100は、例えば、等音声の箔壁で構成されている。ケース100は、例えば、透音性の液体(例えば、水、鉱油、グリセリン水和物など)を満たした液室構造体である。ただし、ケース100は、中まで透音性のプラスチックを有する、いわゆるソリッドな構造体であってもよい。
照射部101は、被検体10に超音波を照射する。照射部101が照射する超音波1001は、例えば、平面波、円筒面波または球面波である。超音波1001は、例えば、連続波である。ただし、超音波1001は、パルスであってもよい。照射部101が照射する超音波は、例えば、予め決められたレベルの超音波や、ユーザにより指定されたレベルの超音波である。レベルは、例えば、強度である。本実施の形態のドプラ信号採取装置1の典型例について説明すると、観測超音波周波数は2MHzないし3MHzであり、目的領域の関心部位における照射密度は、例えば、2mW/cm2ないし10mW/cm2程度である。ただし、照射部101が照射する超音波の周波数は問わない。例えば、照射部101は、通常の超音波エコーに利用される周波数の超音波を照射する。なお、図1において、超音波1001の矢印は、超音波の進行方向を示す。
照射部101は、例えば、送波振動子や超音波送波器を有している。送波振動子は、照射振動子とも呼ばれる。ここでは、一例として、照射部101は、発振器1011、電力増幅器1012、超音波送波器1013を備える場合について説明する。
発振器1011は、予め決められた周波数、例えば上述したような観測超音波周波数の超音波を発生する。例えば、発振器1011は、連続波を発生する。
電力増幅器1012は、発振器1011が発生した超音波を増幅する。
超音波送波器1013は、電力増幅器1012が増幅した超音波を送波する。例えば、超音波送波器1013は、略無指向性の超音波を照射する。ただし、超音波送波器1013として、指向性を有する超音波を照射するものを用いてもよい。
被検体10は、例えば、検査対象である。被検体10は、例えば、人体や動物等の生体である。照射部101は、例えば、被検体10内の目標9に対して超音波を照射する。目標9は、被検体10内の観察対象部位と考えてもよい。目標9は、通常、生体の内部の部位であり、例えば、生体の表面から観察できない、あるいは観察が困難な部位である。目標は、例えば、ドプラ信号によって、移動や動きが検出可能なものであることが好ましい。目標9は、例えば、中径ないし細径の血行群であってもよく、胎児や胎児の心臓等であってもよい。
例えば、図1に示すようなケース100の照射部101が照射する超音波1001が出射される面を、被検体10に当接させた状態で、照射部101から超音波1001を照射させることで、被検体10内部の目標9に対して、超音波を照射させることが可能である。なお、ケース100の、少なくとも被検体10に当接される部分は、超音波の透過性が高い材質や構造を有していることが好ましい。
なお、ここでは、ドプラ信号採取装置1の照射部101が、発振器1011および電力増幅器1012を有する場合について説明したが、発振器1011および電力増幅器1012を、ドプラ信号採取装置1の外部に設け、発振器1011が発生し、電力増幅器1012で増幅した超音波を、照射部101が有する超音波送波器1013に供給して、超音波送波器1013が、超音波を被検体10に送波するようにしてもよい。この場合、発振器1011および電力増幅器1012は、ドプラ信号採取装置1の一部と考えてもよく、ドプラ信号採取装置1に含まれないものと考えてもよい。
受波器アレイ102には、照射部101が照射した超音波の、被検体10からの反射波1002が入射される。受波器アレイ102は入射された反射波1002を電気信号に変換する。受波器アレイ102には、例えば、被検体10内の目標9による反射波1002が入射される。受波器アレイ102は、反射波1002が入射される入射面を有している。この受波器アレイ102の入射面に、反射波1002が結像されるといえることから、受波器アレイ102の反射波1002が入射される面は、焦点面と考えてもよい。なお、ドプラ信号採取装置1が、焦点距離を調節するための音響レンズ等を有していても良い。
受波器アレイ102は、通常、反射波1002が入射される位置に配置されている。反射波1002は、例えば、ケース100の被検体10に当接される部分からケース100内に入射され、受波器アレイ102に入射される。なお、図1において、反射波1002の矢印は、反射波1002の進行方向を示す。
受波器アレイ102は、複数の受波器1021を有している。受波器アレイ102が有する複数の受波器1021は、例えば、二次元方向に配列されている。受波器アレイ102の反射波1002が入射される面には、例えば、複数の受波器1021の反射波が入射される面が二次元方向に配列されている。受波器アレイ102を構成する複数の受波器1021は、例えば、それぞれ、受波した反射波(超音波)の強度に応じた電気信号である受波信号を取得する。強度に応じた信号は、例えば、強度に応じた電流や電圧のレベルの信号である。受波器1021は、受波器アレイ102のエレメントと考えてもよい。受波器アレイ102は、例えば、受波振動子アレイ、焦点面アレイ、フォーカルプレンアレイ等であってもよい。受波器アレイ102は、例えば、受波面が口径約32mmの円形、または約32×32mmの正方形を成し、その各々を構成するエレメントである受波器1021は、例えば、受波面が約2×2mmの寸法である。受波器アレイ102は、例えば、全体として総数16×16=256や、32×32=1024の受波器1021で構成される。もしくは、端部を切り捨てて円形に近似するならば、受波器アレイ102は、そのπ/4倍のエレメントで構成される。ただし、これは一例であり、受波器アレイ102の形状や、サイズ、アレイを構成する受波器1021数等は問わない。
受波器アレイ102は、異なる時期に入射された反射波1002を受波して、異なる時期毎に受波信号を取得しても良い。受波器アレイ102は、例えば、連続的に入射された反射波1002を受波して、連続的に受波信号を取得しても良い。
なお、受波器アレイ102や、受波器1021については、公知技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
受信器アレイ103は、受波器アレイ102を構成する各受波器1021が取得した受波信号を受信する。受信器アレイ103は、複数の受信器1031を有している。受信器アレイ103が有する複数の各受信器1031は、例えば、受波器アレイ102を構成する各受波器1021とそれぞれ、図示しない配線等により接続され、各受信器1031は、各受波器1021から出力される受波信号を受信する。ここでは、各受信器1031が、例えば、各受波器1021が取得した受波信号を入力として増幅する低雑音アンプ10311と、低雑音アンプ10311で増幅された受波信号を、送波側の発振器1011から副次的に供給される統一された共通の送波キャリア16でもって直交検波する直交検波器10312とを備えている場合を例に挙げて説明する。ただし、各受信器1031の構成は、これに限定されるものではない。
フィルタアレイ104は、受信器アレイ103を構成する各受信器1031が受信し、増幅等を行った受波信号からドプラ信号を取得する。ここでのドプラ信号は、被検体10から得られる反射波のドプラ信号成分である。ドプラ信号成分は、例えば、ドプラシフト成分である。ここでは、フィルタアレイ104が、受信器アレイ103の各受信器1031とそれぞれ図示しない配線等により接続された複数のドプラフィルタ1041を備えており、各ドプラフィルタ1041が、各受信器1031が受信し増幅等を行った受波信号からドプラ信号を取得する場合について説明する。ただし、フィルタアレイ104の構成等はこれに限定されるものではない。フィルタアレイ104からの出力は、例えば、ある注目するドプラシフト周波数の成分に貸して同相(i)および直交(q)の1対をなす複素信号であってもよい。
なお、上記のドプラ信号の受信は単側波帯(シングルサイドバンド、SSB)受信であり、図示せぬ参照用局部発信の発振出力とヘテロダインまたはホモダイン検波ののち上下どちらかの側波帯のみがフィルタアレイ104により抽出される。フィルタアレイ104が出力するドプラ信号は、例えば、反射波から得られた信号を参照用局部発振の信号と合波したのち、その上下どちらかの側波帯を用いて取得された分布情報である。ここでドプラ観測系としてSSB受信をする理由は、それによれば、またそれによってのみ、開口面における到来波の位相分布が正しく観測されるからである。
A/D変換器105は、フィルタアレイ104の出力をA/D変換する。すなわち、フィルタアレイ104が出力するアナログ信号であるドプラ出力をデジタル信号に変換する。A/D変換器105は、上記のように変換したドプラ信号を用いて、ドプラ信号成分に関する二次元分布を示す情報(以下、分布情報と称す)を取得し、出力する。ここでの出力は送信であってもよく、蓄積であってもよい。分布情報は、例えば、上述した受波器アレイ102の受波面におけるドプラ信号成分の分布情報と考えてもよい。ドプラ信号を示す情報等を二次元配置と対応付けて分布させた情報とは、例えば、各ドプラフィルタ1041が取得したドプラシフト成分を示す情報等を、ドプラフィルタ1041に対応する受波器1021の二次元配置に対応する座標や、配列順を示す情報等と対応付けた情報である。あるいは、ドプラシフト成分を示す情報等を二次元配置と対応付けて分布させた情報は、例えば、ドプラシフト成分を示す情報を、ドプラフィルタ1041に対応する受波器1021の二次元配置に対応する画素の画素値として有する二次元の画像情報であってもよい。なお、A/D変換器105は、A/D変換の処理以外の、複数のドプラフィルタ1041が取得したドプラ信号等に対して、予め指定された処理等を行なう手段等を有していてもよい。
A/D変換器105は、例えば、上記のように受波器アレイ102が異なる時期にそれぞれ取得した受波信号毎に分布情報を取得して出力してもよい。A/D変換器105は、例えば、上記のように受波器アレイ102が連続的に取得した受波信号毎に分布情報を取得して出力してもよい。A/D変換器105は、例えば、受波器アレイ102が連続的に取得した受波信号を適宜用いて、一の分布情報を取得する処理を順次繰り返して複数の分布情報を順次取得しても良く、このようにして得られた複数の分布情報を、連続的に取得した分布情報と考えてもよい。
A/D変換器105は、例えば、取得した分布情報に、分布情報を取得した時刻や反射波を受信した時刻等の、分布情報に関連した時刻の情報を対応付けて出力してもよく、分布情報の取得順番を示す連番等の情報を対応付けて出力してもよく、予め決められたルール等に応じて取得されたファイル名や識別子等の情報を対応付けて出力してもよい。時刻の情報は、標準時等の絶対的な時刻であってもよく、タイマーやカウンター等により取得される相対的な時刻であってもよい。
なお、以下においては、A/D変換器105が分布情報を取得して格納部106に蓄積する場合を例に挙げて説明する。ここでの蓄積は、メモリ等への一時的な蓄積、例えば一時記憶と考えてもよい。
なお、ここでは、A/D変換器105が分布情報を取得して出力する場合について説明したが、ドプラ信号採取装置1がどのように分布情報を取得し出力するかは問わない。例えば、A/D変換器105が分布情報を取得する代りに、A/D変換器105が出力するドプラ信号を用いて分布情報を取得して格納部106に蓄積する蓄積手段や、受付部107に対して出力する手段等を、ドプラ信号採取装置1が更に有していてもよい。
また、ここでは、受信器アレイ103およびフィルタアレイ104により、受波器アレイ102で取得した受波信号をエレメント毎に直交検波しフィルタしてベースバンドに落とす構成としているが、等価な手段(図示せず)等が受波超音波信号(高周波信号)をそのまま必要十分な程度の密度でサンプリングないしA/D変換して記憶し、いくつかの初期フィルタの手続きまで含めて必要な処理は全部デジタル的にサンプル点列信号処理の形で実行することでも実現できる。
なお、記憶された信号データの観点からはかかるベースバンド方式(BB,baseband sampling system)、高周波方式(RF,RF sampling system)、さらには一旦扱いやすい中間周波数信号にヘテロダイン変換して扱う中間周波数方式(IF,IF sampling system)、等の違いはサンプル点列データの並び方(並べ方)の定義ないし解釈の問題でしかないことは、信号処理学としは自明である。このため、本願においては、上記の記述を、どのようなハードウェアで、またどのようなサンプル点列信号処理で実現してもよい。また、本実施の形態のドプラ信号採取装置1がRFシステムであるか、IFシステムであるか、BBシステムであるか等は問わない。
格納部106には、1または2以上の分布情報が格納される。分布情報は、上述したように、被検体10に照射された超音波に対する反射波のドプラ成分に関する二次元分布を示す情報である。例えば、格納部106に格納される分布情報は、A/D変換器105が取得した分布情報である。ただし、格納部106に分布情報が蓄積される過程等は問わない。例えば、受付部107が、A/D変換器105等から受け付けた分布情報を格納部106に蓄積するようにしてもよい。
格納部106には、例えば、異なる時刻に対応する複数の分布情報が格納されていてもよい。異なる時刻に対応する分布情報とは、例えば、異なる時刻に取得された分布情報である。異なる時刻に取得された分布情報は、分布情報を取得した時刻が異なる分布情報であってもよく、分布情報を取得するために用いる反射波を受波した時刻等であってもよい。例えば、格納部106に格納される複数の分布情報は、同じ目標9について異なる時刻に取得された分布情報であってもよい。例えば、格納部106には、連続的に取得された分布情報が蓄積されてもよい。連続的に取得された分布情報とは取得した時刻が連続している分布情報である。ただし、取得した時刻が連続している分布情報は、例えば、予め決められた時間間隔、あるいは予め決められた時間以内の時間間隔を隔てて取得された分布情報を含むと考えてもよい。また、連続的に取得された分布情報は、受信器アレイ103等が一の分布情報を取得する処理を順次繰り返して取得した分布情報であってもよい。分布情報は、例えば、A/D変換器105や、受付部107等により、取得時刻や蓄積時刻と対応付けられて格納部106に蓄積されてもよい。格納部106は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。
なお、以下、本実施の形態においては、格納部106に格納された1または2以上の分布情報が、A/D変換器105により取得されて蓄積された分布情報である場合を例に挙げて説明する。
受付部107は、被検体に照射された超音波に対する反射波のドプラ信号成分に関する分布を示す分布情報を受け付ける。ここでの受け付けは、入力の受け付けや、受信や、格納部に蓄積された情報の読み出し等と考えてもよい。受付部107は、例えば、A/D変換器105等が出力する分布情報を受け付ける。また、受付部107は、格納部106に格納された分布情報を適宜、読み出すことによって分布情報を受け付けても良い。受付部107は、例えば、格納部106に格納された分布情報を、取得時または蓄積時が古いものから順に読み出す。ただし、受付部107は、取得順や蓄積順に1以上の分布情報を隔てた分布情報を読み出す、すなわち、1以上の分布情報を間引いて読み出すようにしてもよい。受付部107が受け付ける分布情報は、例えば、反射波から得られた信号を参照用局部発振の信号と合波したのち、その上下どちらかの側波帯を用いて取得された分布情報である。
なお、受付部107は、例えば、A/D変換器105等が出力する分布情報を受け付け、一旦、格納部106に蓄積する(例えば、一時記憶する)ようにしてもよい。
なお、上記で説明したドプラ信号成分の分布情報を取得するための構成である照射部101、受波器アレイ102、受信器アレイ103、フィルタアレイ104、およびA/D変換器105は、ドプラ信号採取装置1とは異なる外部の装置で実現してもよい。そして、この装置で取得した分布情報を、格納部106に蓄積するようにしてもよく、または、受付部107が受け付けるようにしてもよい。また、これらと同様の構成を有する分布情報を取得可能な装置を、これらの代わりに用いるようにしてもよい。
心拍取得部108は、被検体の心拍を取得する。例えば、心拍取得部108は、例えば、目標9が被検体の血管等である場合、被検体に取付けた心拍を取得するためのセンサ(図示せず)等が取得した情報を用いて、心拍を取得する。心拍を取得するということは、心拍が発生する時刻や時点を示す情報を取得することであってもよい。心拍を取得するということは、心拍信号振幅最大点の発生時刻や発生時点を示す情報を取得することと考えてもよい。例えば、心拍取得部108は、センサ等が取得した情報を用いて、心拍を取得する心拍計であってもよい。心拍取得部108は、どのように被検体の心拍を取得しても良い。例えば、被検体に取付けたセンサである電極等が取得する電気信号から心拍を取得しても良い。また、被検体に取付けた赤外線センサ等が取得する血流の情報等を利用して心拍を取得しても良い。心拍取得部108とセンサや、心拍計等との接続は、有線接続であってもよく、無線接続であってもよい。
また、目標9が胎児の心臓等である場合、心拍取得部108は、被検体である胎児の心拍を取得する。胎児の心拍信号と考えられる周期性を有する信号振幅等を検出する処理や構成等は、例えば、本願発明者である竹内康人による発明である特公昭56-7592に開示されている技術等において、公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
上記の心拍を取得する処理においては、適宜、本願のドプラ信号採取装置1の構成の一部等を適宜利用してもよい。例えば、心拍取得部108は、受信器アレイ103等が受信した情報を用いて、心拍を取得するようにしてもよい。
なお、心拍取得部108による心拍を取得するための上記の構成や処理は、あくまでも一例であり、本願発明においては、これらのいずれかに限定される必要はない。同様に、胎児等の心拍と考えられる周期性の検出や、周期性を有する信号振幅を検出した場合、どのように、心拍を取得するかは問わない。
また、心拍取得部108は、胎児や生体の心電信号、心音信号、脈波などの心拍の信号を、これらの信号を取得する他の装置(図示せず)から、受信するようにしても良い。この場合、心拍取得部108による心拍の取得は、心拍が発生するタイミングを示す信号や時刻を示す情報の受信や受け付け等と考えてもよい。なお、心拍取得部108はどのような信号から心拍を取得しても良い。
なお、上述したA/D変換器105等が、心拍に同期した分布情報のみを取得して、この分布情報を格納部106に蓄積したり、受付部107に出力するようにしても良い。
心拍取得部108は、例えば、センサを有していてもよい。また、心拍取得部108は、例えば、センサと接続される心拍計等であってもよく、心拍計の情報を受信する受信手段等であってもよい。
取得部109は、例えば、以下のような目標捕捉と、捕捉した目標の追尾の処理を行うものである。
(1)初期段階すなわち目標9の捕捉段階では距離、方位角の3つの変数につき探査を行い目標を発見する。この場合、距離の捕捉の手続と作業を優先する。
(2)目標捕捉後の追尾の段階では方位角の2つの変数についてのみ追尾を行う処理を行う。
なお、この中で特に、初期段階での距離zの発見同定は、パルスドプラシステムの場合には、到来波面のフレネル変換に基づいて行うよりもレンジゲートの位置(距離)で行う方が有益である。
また、追尾段階での方位角の発見同定は、拍の単位で心拍同期的に行い、特に心拍ドプラ信号の振幅最大点において拍毎に1回だけ行い、その結果に基づいて追尾は前拍において受信に適用された方位角を微修正する如くにイタレーション作業として行う、ということが好ましい態様であり得る。
以下、取得部109について説明する。取得部109は、受付部107が受け付けた分布情報を用いて、被検体10内に位置する目標9の距離zと方位角θ、φとを取得する。そして、距離zを取得した後は、この距離zを用いて、方位角θ、φとを取得する処理を繰り返し行う。ここでの取得部109が取得する距離zおよび方位角θ、φは、例えば、受波器アレイ102が反射波を受波する位置や、受波する方向に対する距離zおよび方位角θ、φである。ここでの反射波を受波する位置は、例えば、受波器アレイ102の受波面の基準点であり、例えば、中心等の代表点である。ここでの方位角は、例えば、受波器アレイ102の受波面の基準点(例えば、中心点)等から目標9間での距離をrとした場合の極座標系における方位角と考えてもよい。この方位角は、例えば、受波面に垂直な方向等を奥行き方向等の所望の方向と考えた場合の方位角である。
取得部109は、受付部107が受け付けた分布情報を用いて、到来波面の曲率からフレネル変換を行うことで、信号源である目標9までの距離zを取得する。ここでの信号源は、例えば、ドプラ信号の信号源となる動きを有する目標9である。取得部109は、例えば、テンプレート取得部111が提供するフレネル変換用テンプレートを用いて目標9までの距離zを取得する。テンプレートとは、例えば、受波器アレイ102に対応した位相分布の情報である。例えば、テンプレートは、位相分布の初期値を示す情報である。
以下、テンプレートを用いて目標9までの距離zと方位角θ、φとを取得する処理の一例について説明する。ここでは、まず、取得部109は、距離zを取得する。例えば、取得部109は、受付部107が受け付けた分布情報に対してフレネル変換を行う。そして、テンプレート取得部111が提供する曲率が異なる複数のフレネル変換用のテンプレートをそれぞれ用いて、計算領域中、すなわち分布情報について最も高い相関値を与える(相関ピークが立つ)テンプレートの曲率半径を信号源である目標9までの距離zとして取得する。曲率が異なるテンプレートは、例えば、曲率が少しずつ異なるテンプレートである。このテンプレートは、例えば、予め決められた曲率を有するテンプレートである。また、このテンプレートは、分布情報を取得する際に用いた超音波1001の波長に対応したテンプレートである。複数のテンプレートは、予め用意されたテンプレートを、テンプレート取得部111が図示しない格納部等から読み出してもよく、テンプレート取得部111が、新たに生成してもよい。例えば、フレネル変換用のテンプレートは、ニュートンリング型のテンプレートであり、テンプレート取得部111は、その曲率半径を変更することで、曲率半径が異なる複数のテンプレートを取得しても良い。
次に、取得部109は、上記の距離zを用いて、方位角θ、φを取得する。取得部109は、取得した距離zに適合したテンプレートであって、分布情報を取得する際に用いた超音波1001の波長により特定されるフレネル変換用のテンプレートをテンプレート取得部111から取得し、取得したテンプレートを、分布情報のデータのピクセルに対してスライディングコンボリューションの過程に適用して、方位角θ、φ(偏角θ、φ)を求める。スライディングコンボリューションとは、分布情報のデータのピクセルに対して、テンプレートをスライドさせながら適用して、畳み込みを行うことである。分布情報のデータのピクセルとは、例えば、各ピクセルの値をドプラシフト成分の値で表した分布情報のデータの、各ピクセルである。この方位角の求め方は公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
なお、取得部109は、このようなピクセル毎の処理に代えて、一括してフレネル変換を行うようにしても良い。また、フレネル変換を行う代わりに、フーリエ変換を行って方位角を取得しても良い。信号源の距離が無限遠の場合には、ないしそれに近似出来るフラウンホーファーゾーンにある場合には、曲っていない波面すなわち平面波が到来するものとみなしうることから、縮退した、曲率のないフレネル変換すなわちフーリエ変換が適用できる。この場合、信号源(例えば、目標9)の方位角を意味するx、yもしくは方位角θ、φの2つの値のみが答えとなる。フレネル変換とは原理上無限遠点にピントがあっているフーリエ変換に接写レンズとなる位相曲がりのテンプレートを付加(エレメント毎に乗算)したものと理解することができることから、フレネル変換を上位概念としてその1つの縮退型がフーリエ変換であるという理解も成り立つ。
ここでは、取得した距離zと波長とにより特定されるテンプレートを用いて、方位角θ、φを取得することから、距離zを取得することは、この距離zによって特定されるフレネル変換用のテンプレート、すなわち、距離zと波長とによって特定されるフレネル変換用のテンプレートを取得することと考えてもよい。
取得部109は、一旦、目標の距離zを取得した後、例えば、目標の距離zと方位角θ、φとを取得した後は、上述した距離zを取得する処理は行わずに、受付部107が受け付ける分布情報を用いて、上記と同様に目標の方位角θ、φを取得する処理を1または2回以上繰り返し行う。この分布情報は、例えば、距離zを取得した分布情報以降に取得された分布情報である。取得部109は、このようにして順次取得される方位角θ、φを、目標の距離zを取得した後の目標の位置を示す方位角θ、φとして取得する。この方位角θ、φは、目標の距離zを取得した分布情報以降に取得された分布情報から取得された目標の位置を示す方位角θ、φと考えてもよい。また、この場合の目標9までの距離zとしては、直前に取得された最新の距離zと考える。なお、この処理は、上記のような距離zによって特定されるフレネル変換用テンプレートを用いて、方位角θ、φを取得する処理と考えてもよい。
なお、取得部109は、上述したように、受付部107が受け付けた分布情報であって、心拍取得部108が取得した被検体の心拍と同期した分布情報を用いて、心拍と同期して目標の方位角を取得する処理を行うようにすることが好ましい。例えば、取得部109は、目標9の距離zと方位角θ、φを取得する際において、受付部107が受け付けた分布情報であって、心拍取得部108が取得した被検体の心拍と同期した分布情報を用いて、心拍と同期して目標の距離zと方位角θ、φとを取得する処理を行うようにし、その後の方位角θ、φとを取得する際においても、受付部107が受け付けた分布情報であって、上記の距離zを取得する際に用いた分布情報以降に受信した、心拍取得部108が取得した被検体の心拍と同期した分布情報を用いて、心拍と同期して目標の方位角を取得する処理を行うようにしてもよい。例えば、取得部109が方位角θ、φを取得する際(距離zを取得する際も含む)においては、心拍取得部108が取得した被検体の心拍と同期したタイミングで、A/D変換器105が出力する分布情報を、受付部107が順次受け付けるようにし、取得部109は、この受付部107が受け付けた分布情報を用いて、上記のように方位角θ、φを取得するようにしても良い。また、例えば、取得部109が方位角θ、φを取得する際(距離zを取得する際も含む)においては、A/D変換器105が取得して格納部106に蓄積された分布情報の中から、心拍取得部108が取得した被検体の心拍と同期した分布情報を受付部107が順次読み出して取得するようにし、取得部109は、この受付部107が取順次得した分布情報を用いて、上記のように方位角θ、φを取得するようにしても良い。
例えば、信号源は刻々と、ただし比較的ゆっくりと、飛躍することなく移動するため、最も近い過去の拍の心拍信号振幅最大点において獲得した信号源の距離と方位角のデータを初期値とすれば直後の拍の心拍信号振幅最大点において新たに信号源の距離と方位角のデータを適応的に発見、同定する手続を大幅に短縮また高速化することが可能となる。
なお、目標9の距離zを取得した後に、受付部107が受け付けた分布情報から取得部109が取得した方位角θ、φが、不適切なデータである場合(例えば、直前に取得した方位角から、閾値以上異なる場合や、あり得ない数値である場合等)においては、取得部109は再度距離zを取得する処理を行うようにしても良い。また、取得部109は、定期的に、あるいは不定期に距離zを取得する処理を行うようにしても良い。
取得部109は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。取得部109の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
出力部110は、取得部109が取得した目標9の距離zと方位角θ、φとに応じた情報の出力を行なう。また、出力部110は、目標9の距離zの取得後に取得部109が取得した方位角θ、φに応じた情報の出力を行う。例えば、取得部109が取得した目標9の距離zと方位角θ、φとに応じた情報の出力は、取得部109が取得した目標9の距離zと方位角θ、φとの少なくとも一部の出力(例えば、距離zと方位角θ、φとの出力や、方位角θ、φの出力)であってもよく、この距離zと方位角θ、φとの少なくとも一部を用いて取得した情報の出力であってもよい。また、取得部109が目標9の距離zの取得後に取得した目標9の方位角θ、φに応じた情報の出力は、取得部109が取得した目標9の方位角θ、φの少なくとも一部の出力(例えば、方位角θ、φとの出力や、方位角θ、φの出力)であってもよく、この方位角θ、φの少なくとも一部を用いて取得した情報の出力であってもよい。方位角θ、φの少なくとも一部を用いて取得した情報の出力は、例えば、方位角θ、φの直前の値からの変位量を示す情報であってもよい。また、方位角θ、φの少なくとも一部を用いて取得した情報の出力は、方位角θ、φの少なくとも一方が予め決められた閾値以上となった場合において行われる警告等の出力であってもよく、方位角θ、φの少なくとも一方の、直前の値からの変位量が、予め決められた閾値以上となった場合において行われる警告等の出力であってもよい。ここでの警告は、例えば、目標9が、ドプラ信号採取装置1によって観測可能な領域(例えば、超音波を照射可能な領域やドプラ信号を受信可能な領域)から、外れそうになっていることや、外れそうな可能性があることを警告する情報や、外れたことを警告する情報であってもよい。この警告は、追尾が破綻しそうになっている、あるいは破綻したことを示す警告であってもよい。ここでの警告の出力は、警告画面の出力や、警告音の出力、警告灯の点灯であってもよい。また、距離zと方位角θ、φとを用いて取得した情報の出力は、目標9に対して処理を行う装置(図示せず)に対する距離zや方位角θ、φとを用いて取得された制御信号の出力であってもよく、また、ドプラ信号採取装置1の超音波を照射する向きや、ドプラ信号を受信する向きを自動制御する装置(図示せず)を、移動後の目標9が観測可能な領域に入るよう移動させるための制御信号等であってもよい。この場合の距離zと方位角θ、φとは、距離zと、距離zの取得後に取得された方位角θ、φとの組み合わせであってもよい。なお、出力部110は、目標9の距離zの取得後に、この距離zと、この距離z後に取得部109が取得した方位角θ、φとを出力してもよく、この距離zと、この距離z後に取得部109が取得した方位角θ、φとに応じた情報の出力を行うようにしてもよい。
なお、出力部110は、取得部109が取得した目標9の距離zと方位角θ、φとに応じた情報や、取得部109が取得した目標9の方位角θ、φとに応じた情報として、これらの情報を用いて目標9を特定し追尾することによって目標9から得られる情報を取得して出力してもよい。
ここでの出力は、例えば、ディスプレイへの表示、プロジェクターを用いた投影、プリンタへの印字、音出力、外部の装置への送信、記録媒体への蓄積、他の処理装置や他のプログラムなどへの処理結果の引渡しなどを含む概念である。
出力部110は、ディスプレイやスピーカー等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部110は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。
テンプレート取得部111は、1または2以上のテンプレートを取得する。テンプレート取得部111が取得するテンプレートは、フレネル変換用のテンプレートである。フレネル変換用のテンプレートは、通常、ニュートンリング型のテンプレートである。テンプレート取得部111は、例えば、図示しない格納部に格納されているテンプレートを読み出すことでテンプレートを取得しても良く、テンプレートを生成して取得してもよく、1以上のテンプレートを利用して新たなテンプレートを生成してもよい。例えば、テンプレート取得部111は、図示しない格納部に格納されている曲率半径を意味するスケールファクターを変更可能なパラメータとして有するニュートンリング型のテンプレートを用いて、スケールファクターを変更することによって、曲率半径が異なる1以上のテンプレートを生成してもよい。このようなテンプレートは、例えば、可変テンプレートと考えてもよい。また、テンプレート取得部111は、取得部109が目標9までの距離zを取得した場合に、この距離zと、目標に照射する超音波の波長とを用いて、方位角θ、φを取得するために用いられるテンプレートを取得しても良い。また、テンプレート取得部111は、取得したテンプレートに、冗長さ、ノイズ、形状歪等の非理想成分があった場合に、それらを捨象する補正等を行うようにしても良い。
なお、テンプレート取得部111がテンプレートを取得する処理は、上記に限定されるものではない。
次に、ドプラ信号採取装置1の動作の一例について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)照射部101が、超音波の照射を開始する。例えば、照射部101は、被検体10の目標9を含む領域に対して超音波の照射を開始する。例えば、発振器1011が出力する連続波送波キャリアが、電力増幅器1012で適宜付勢され、超音波送波器1013より目標9を含む領域に略無指向性に照射される。
(ステップS102)受波器アレイ102は、ステップS101で照射される超音波の反射波の受波を行う。例えば、受波器アレイ102は、反射波の受波を順次行う。例えば、受波器アレイ102により、目標9により帰投する反射波が受波され、多数の電気信号に変換される。
(ステップS103)受信器アレイ103は、受波器アレイ102が出力する信号を受信する。例えば、受信器アレイ103は、受波器アレイ102が出力する信号を順次受信する。例えば、受信器アレイ103を構成する各受信器1031は、受波器アレイ102を構成する各受波器1021が、受波した反射波に応じて出力する信号を受信する。
(ステップS104)フィルタアレイ104は、受信器アレイ103が受信した信号からドプラシフト成分のみを選択的に取得する。
(ステップS105)A/D変換器105は、フィルタアレイ104を構成するドプラフィルタ1041が出力するドプラ信号をデジタル信号に変換してドプラ信号の分布情報を取得する。A/D変換器105は、例えば、ドプラフィルタ1041が出力するドプラ信号から、順次、分布情報を取得する。取得した分布情報を、図示しない時計等から取得した取得時刻と対応付けて、格納部106に蓄積する。
(ステップS106)心拍取得部108は心拍を取得する。例えば、心拍信号の極大値時刻を順次取得する。
(ステップS107)受付部107は、カウンターkの値として1を代入する。
(ステップS108)受付部107は、格納部106に格納された分布情報から、k番目の心拍の発生時の分布情報を受け付ける。例えば、受付部107は、ステップS106で取得したk番目の心拍の時刻である心拍信号のk番目の極大値時刻と同じ取得時刻と対応付けられた分布情報を格納部106から読み出す。
(ステップS109)テンプレート取得部111は、発振器1011が出力する超音波の波長に対応した曲率半径が異なるフレネル変換用の複数のテンプレートを取得する。
(ステップS110)取得部109は、受付部107が直前に受け付けたk番目の分布情報についてフレネル変換を行って、目標9までの距離zを取得する。例えば、取得部109は、受付部107が直前に受け付けた分布情報についてフレネル変換を行い、ステップS108で取得した異なる複数のテンプレートの中から相関値の高いテンプレートを検出する。そして、このテンプレートに対応するニュートンリング形状の曲率半径が、目標9までの距離zとして取得する。なお、テンプレート取得部111は、このとき得られたフレネル変換を行った分布情報や、これに近い形状を有するテンプレートを、これ以降の方位角θ、φを取得する場合のテンプレートとして取得しても良い。この時、このテンプレートにおいて、冗長さや、ノイズ等の非理想成分を除去する補正処理等を行うようにしても良い。なお、このようなテンプレートの取得を、実質的に距離zの取得に相当するものと考えてもよい。
(ステップS111)取得部109は、k番目の分布情報について、ステップS110で取得した距離zに対応する曲率半径を有するニュートンリング形状のテンプレートを用いて、目標9の方位角θ、φを取得する。例えば、上記のテンプレートをスライディングコンボリューションの過程に適用して、方位角θ、φを取得する。
(ステップS112)取得部109は、距離zが取得済であるか否かを判断する。取得済である場合、ステップS113に進み、取得済でない場合、ステップS114に進む。
(ステップS113)出力部111は、取得部109が取得した目標9までの距離zと目標9の方位角θ、φとに関する情報を出力する。例えば、出力部111は、距離zと方位角θ、φとの値を出力する。そして、ステップS115に進む。
(ステップS114)出力部111は、k番目の分布情報から取得された方位角θ、φに関する出力を行う。例えば、出力部111は、k番目の分布情報から取得された方位角θ、φと、k-1番目の分布情報から取得した方位角θ、φとの変位量を算出し、この変位量が閾値を越える場合に、警告を出力する。なお、越えない場合は、警告を出力しない。そして、ステップS115に進む。
(ステップS115)受付部107は、カウンターkの値を1インクリメントする。
(ステップS116)受付部107は、ステップS108と同様に、格納部106に格納された分布情報から、k番目の心拍の発生時の分布情報を受け付ける(読み出す)。そして、ステップS111に進む。
なお、図2のフローチャートにおいて、例えば、ステップS101からステップS105までの処理は、それぞれ連続的に繰り返し行われるものとする。
また、ステップS114等で、方位角の変位量が閾値を越える場合等には、カウンターkの値を1インクリメントして、ステップS108に戻るようにしてもよい。
なお、図2のフローチャートにおいて、A/D変換器105が、ステップS105においてドプラ信号の分布情報を取得して蓄積する代わりに、ステップS106において取得した心拍に同期したタイミングでドプラ信号の分布情報を取得するようにし、受付部107がこの分布情報を受け付けるようにしても良い。
なお、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
以下、本実施の形態におけるドプラ信号採取装置1に関連した説明として、目標9の追尾のために動的に変更しなければならない緊急度が高いパラメータが方位角θ、φであることについて、モデルベースの試算例を提示する。
設定条件は開口面でのエレメント配置は32×32、エレメント総数1024とする。このとき、超音波周波数が2MHzの場合には全方位角空間に対して曖昧さをさけるには最低15mm角程度の開口寸法が必要であるが、観測(適用)方位角空間を立体角45度とか30度とかに制限すればこの倍ないし3倍にして検出感度を増強することができる。
図3は中心軸からややずれた反射源から到来する反射波の開口面における位相分布を階調性をもって表すものであり、典型的なニュートンリング状のパターンを成すことを示す。
図4はこの反射波をフレネル変換により位相合わせして受信する場合の、受信側で設定する方位角に応じて受信される信号のレベルを該当距離における離心距離を横軸として表す(すなわちビームプロファイルの横断面)であり、これより感度分布の電力半値幅は約3mmであることがわかる。なお、方位角ないしは離心距離の軸は2次元であるが、設定される受信開口は両軸に関して対等であるのでその内1つの軸に関してのみ示す。
図5は同じ設定における同じ反射源からの反射波に関する距離方向の、すなわちフレネル変換の波面の曲率を変えることで、焦点の位置を奥行き方向に変えて示すものであり、上記と同じ条件の場合、焦点の前後における電力半値幅は13mmほどあることがわかる。
以上により、距離方向のずれよりも方位方向のずれの方が影響が格段に大きく、管理(追尾)されなければならない程度が大きいことが証明される。
本実施の形態においては、例えば、可変テンプレート等を用いて、曲率半径を変更、修正しつつフレネル変換を多用して信号減の距離を知る行程を、初期設定時に1回のみ行い、その後の定常運転時には省略系としてその距離データを用いて方位角の適応修正による追尾を行う作業を各心拍において本質的に1回のみ行うことで漸化的に行う。例えば、この各拍毎に1回の試行による漸化的追尾には2次元フーリエ変換1回のみで足りる。
図6は、本発明の処理手順を心拍信号の時間軸上にて表現するものである。図においては、可変テンプレートを修正しつつフレネル変換を多用して信号源の距離を知る行程は初期設定時に1回のみ行い、定常運転時には省略系としてその距離データを用いて方位角の適応修正による追尾を行う作業を各心拍において本質的に1回のみ行うことで漸化的に行う。この各心拍において本質的に1回のみ行う動作は、心拍信号の極大値時刻を含む前後の小時間区間において選択的に行われる。心拍信号の極大値時刻を知る手段や手法は公知汎用のものであるからここでは説明を省略する。
以上、本実施の形態によれば、心拍活動に由来するドプラシフトを有するターゲットを自動発見し、また発見後には自動追尾するシステムを構築するにあたって、必要な計算量を大幅に少なくすることができ、これにより、容易にかつ迅速に被検体内に位置する目標を追尾することができる。またかかる作用効果に由来して装置の軽薄短小化また省電力化に大きく貢献するので有益である。
なお、上記各実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
また、上記各実施の形態では、ドプラ信号採取装置がスタンドアロンである場合について説明したが、ドプラ信号採取装置はセンサ側に寄り添う如く実装されたスタンドアロンの装置であってもよく、また近距離伝送を介した近隣の集中的資源によるエッジコンピューティングの形式を採るサーバ・クライアントシステムによる実装であってもよい。またさらにこれらの分散処理を行う計算および記憶の資源はネットワーク上の仮想空間に分布するクラウドコンピューティング形式で実装される事も妨げない。分散処理ないし分散実装の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、等価な機能が分散実行のためのネットワークコマンドを介してクラウドコンピューティング形式で実装されることも妨げない。
なお、上記各実施の形態におけるドプラ信号採取装置を実現するソフトウェアは、ネットワークコマンドを介してクラウド上の仮想空間に等価な機能が構築される場合も含め、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、被検体に照射された超音波に対する反射波のドプラ信号成分に関する分布を示す情報である分布情報を受け付ける受付部と、分布情報を用いて、被検体内に位置する目標の方位角と距離とを取得する取得部と、取得部が取得した目標の方位角と距離とに応じた情報の出力を行なう出力部として機能させ、取得部は、目標の距離の取得後に、受付部が受け付ける分布情報を用いて目標の方位角を取得する処理を繰り返し、出力部は、目標の距離の取得後に、取得部が取得した方位角に応じた情報の出力を行うプログラムである。
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信する送信ステップや、情報を受信する受信ステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には含まれない。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
図7は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態によるドプラ信号採取装置を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図7において、コンピュータシステム900は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
図8は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図8において、コンピュータ901は、CD-ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
コンピュータシステム900に、上記実施の形態によるドプラ信号採取装置等の機能を実行させるプログラムは、CD-ROM921に記憶されて、CD-ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD-ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態によるドプラ信号採取装置の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。