JP7187891B2 - 包装材用シーラントフィルム、包装材及び包装体 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、シーラントフィルムに配合する滑剤とアンチブロッキング剤を規定することで滑り性の最適化が図られている。具体的には、シーラントフィルムに対し、定形の有機物よりなるフィラー及び脂肪酸アミド系の滑剤を適宜配合している。
また、特許文献1では、低分子量の滑剤の表面へのブリードアウト、各層への吸着などにおける、フィルム内での滑剤の移動速度は、熱可塑性樹脂の種類、接着剤の有無・種類、温度条件、フィルム成形後における経時的な温度変更後によって変化する。そのため、保管条件や製品加工条件により滑り性の変化を引き起こす原因となる。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、滑剤のブリードアウトや基材面への移行を抑え、保管環境によらず良好な滑り性を有する包装材用シーラントフィルム、包装材及びその包装材を使用した包装体を提供することを目的とする。
また、上記一態様の包装材用シーラントフィルムの裏面に基材を設けて包装材を構成し、また、その包装材を用いて包装体を構成すると良い。
また、本発明の態様によれば、アンチブロッキング剤である有機系および無機系の粒子ではなく、賦形などによりシーラントフィルム表面に凹凸が設けられているため、当該フィルムを積層体として利用した場合、工程中での有機系および無機系粒子の欠落による製造装置の汚染を防止することが可能となる。
ここで、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示したものである。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示されたものであって、本発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。したがって、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
基材8としては、ポリエチレンテレフタレートや6ナイロン、66ナイロン等のポリアミド等のフィルムを使用する。厚さは10μm以上30μm以下が好適である。
図1では、包装材用シーラントフィルム1が1層の樹脂層(表面層5)から構成されている場合を例示している。
包装材用シーラントフィルム1は、図1に示されるように、熱可塑性樹脂2に滑剤3が配合され、かつ一方のフィルム表面(表面層5の表面)は、賦形処理により凹凸4が形成されている。図1では、断面三角形状の複数の凸形状を付与する場合を例示しているが、凹凸4の形状はこれに限定されない。
滑剤3には、上記のポリシロキサンを使用することが可能であるが、シロキサン重合度が小さく、重合度2000以下である場合、流動性や、反対面へのポリシロキサンの移行による他基材との接着不良等の不具合が起こりやすいため、適用することが難しい。そのため、包装材用シーラントフィルム1の用途に好適なポリシロキサンは、重合度5000以上であり、平均分子量が40万以上であることが好ましい。また、重合方法としては、シラノールからの重合や、ポリシロキサン末端を適宜触媒で付加重合、脱水縮合する方法等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
包装材用シーラントフィルム1の表面層5の平面内に凹凸4を形成することで、滑剤3のシリコーンガムの配合量を抑えることができる。この場合、フィルム1同士やフィルム1と搬送ロールとの摩擦係数を適度な値にすることができ、良好な滑性を得ることができる。
例えば、静摩擦係数が0.20より小さい場合、フィルムが滑り過ぎてしまうことがあるため、フィルムに蛇行が発生し、製袋工程等において不適となるおそれがある。また、静摩擦係数が0.50を超える場合には、フィルムの滑りが悪く、製袋品の口開き性不良や製袋工程での送り不良が発生するため好ましくない。
また、シーラントフィルム単体における、上記の-20℃の温度雰囲気で保管後のシーラントフィルム表面同士の静摩擦係数と、上記の50℃の温度雰囲気で保管後のシーラントフィルム表面同士の静摩擦係数との差が、0.1未満であることが好ましい。
このとき、基材面については滑剤3の転移量の変動が20.0%以内であると、温度差による静摩擦係数の変動を0.20以下に抑えることができる。温度差による静摩擦係数変化が0.40よりも大きい場合には、保管環境や工程によって滑り性が変化し、生産設備を運転しながら毎回整する必要があるため、現実的ではない。
滑剤3の分散方法としては、例えば、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることが出来る。作業性を考慮した場合、単軸スクリュー押出機または2軸スクリュー押出機を使用することが特に好ましい。単軸押出機を用いる場合には、フルフライトスクリュー、ミキシングエレメントを持つスクリュー、バリアフライトスクリュー、フルーテッドスクリュー等特に制限されることなく、使用することが可能である。2軸混練装置については、同方向回転2軸スクリュー押出機、異方向回転2軸スクリュー押出機、また、スクリュー形状もフルフライトスクリュー、ニーディングディスクタイプなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
フィルムの冷却方法に関しては、上述の成形機に準じて使用することが可能である。例えばTダイ法では、エアーチャンバー、バキュームチャンバー、エアナイフ等の空冷方式、冷水パンへ冷却ロールをディッピングする等の水冷方式等、特に制限されることはないが、賦形による表面凹凸を付与する場合には、シリコーンゴム、NBRゴム、ならびにテフロン(登録商標)等を加工したニップロールならびに金属を切削加工した冷却ロールを0.1MPa以上の圧力を印加した接触部に溶融樹脂を流入し、冷却する方式が特に好ましい。
上述のように、シーラントフィルム1を単体フィルム(単層の樹脂層)とする場合、及びシーラントフィルム1の裏面に基材8を積層する場合のいずれでも、適宜、後工程における適性を向上するために、表面改質処理を実施することが可能である。例えば、単体フィルムとして使用時の印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性を向上させるため、基材8と接触する面に対して表面改質処理を行うことが可能である。表面改質処理は、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることによって、官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
<実施例1>
包装材用シーラントフィルム1は、図2に示すような、表面層5の裏面に裏面層6を積層した2層構成のフィルムとした。
熱可塑性樹脂として、表面層5は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.918g/cm3、MFR(MeltFlow Rate、メルトフローレート)3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合で混合したものを使用し、滑剤としてポリジメチルシロキサンを主骨格とする数平均分子量が60万であるポリシロキサンを樹脂層を構成する樹脂成分に対し重量濃度で3%添加した。
これら表面層5、裏面層6を単軸共押出機により、それぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、表面層5の厚さを15μm、裏面層の厚さを85μmとし、総厚100μmの包装材用シーラントフィルム1を製膜した。冷却は、冷却ロールの算術平均粗さRa=1.0μmのロール及びテフロン処理加工されたロール間で冷却し、包装材用シーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、層構成は同様に、冷却ロールの算術平均粗さRa=2.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例2のシーラントフィルム1を得た。
<実施例3>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=3.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例3のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で3.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=3.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例4のシーラントフィルム1を得た。
<実施例5>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=4.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例5のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=4.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例6のシーラントフィルム1を得た。
<実施例7>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で3.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=4.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、実施例7のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=0.1μm以下の冷却ロールを用いて製膜し、比較例1のシーラントフィルム1を得た。
<比較例2>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=0.1μm以下の冷却ロールを用いて製膜し、比較例2のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=0.1μm以下の冷却ロールを用いて製膜し、比較例3のシーラントフィルム1を得た。
<比較例4>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で3.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=0.1μm以下の冷却ロールを用いて製膜し、比較例4のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=1.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例5のシーラントフィルム1を得た。
<比較例6>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=1.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例6のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=1.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例7のシーラントフィルム1を得た。
<比較例8>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=2.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例8のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=2.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例9のシーラントフィルム1を得た。
<比較例10>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=2.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例10のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=3.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例11のシーラントフィルム1を得た。
<比較例12>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=3.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例12のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=4.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例13のシーラントフィルム1を得た。
<比較例14>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンを配合せず、冷却ロールの算術平均粗さRa=5.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例14のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で1.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=5.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例15のシーラントフィルム1を得た。
<比較例16>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で2.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=5.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例16のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に添加する滑剤3のポリシロキサンの配合濃度を重量濃度で3.0%に調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=5.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例17のシーラントフィルム1を得た。
<比較例18>
実施例1と同様の作製方法において、表面層に滑剤3のポリシロキサンを配合せず、エルカ酸アミドを重量濃度で300ppmに調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=1.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例18のシーラントフィルム1を得た。
実施例1と同様の作製方法において、表面層に滑剤3のポリシロキサンを配合せず、エルカ酸アミドを重量濃度で300ppmに調整し、冷却ロールの算術平均粗さRa=3.0μmの冷却ロールを用いて製膜し、比較例19のシーラントフィルム1を得た。
上記各実施例及び各比較例によって得られた包装材用シーラントフィルム1単体の、算術平均粗さRaと表面摩擦係数を測定した。表面摩擦係数は、枚葉形態で0.3MPaの圧力で加圧して1ヶ月間保管し、保管温度として、-20℃の温度雰囲気と、50℃の温度雰囲気で保管させたものについて測定したものである。
そして、各包装材用シーラントフィルム1を基材8に接着剤にて貼り合わせて包装材とした。具体的には、接着剤に、タケラックA626/タケラックA50(三井化学株式会社製)を用いて一般的なドライラミネーション法により、ドライ塗布量3.8g/m2となるように調整して貼り合わせ一体とし包装材とした。その包装材を、枚葉形態で0.3MPaの圧力で加圧して1ヶ月間保管した。このとき、保管温度として、-20℃の温度雰囲気と、50℃の温度雰囲気で保管させたものについて、包装材用シーラントフィルム1の表面の静摩擦係数、基材面の静摩擦係数、基材面の滑剤存在量、ブロッキング強度を測定した。
静摩擦係数測定は、JIS K 7125に準じて、株式会社東洋精機製作所製の摩擦試験機(型番TR-2)を用いて、-20℃保管、50℃環境室で0.3MPaで加圧させた状態で1ヶ月間保管し2種類のフィルムについて包装材用シーラントフィルム1の表面面同士の静摩擦係数と、包装材用フィルムと一体となった基材面表面同士の静摩擦係数の測定を行った。
評価結果は、包装材用シーラントフィルム1単体での静摩擦係数及び包装材における静摩擦係数について、0.2~0.5の範囲内に入っているものは「〇」、それ以外のものを「×」とした。なお、フィルム表面が滑らず測定ができなかったものに関しては、「測定不可」と記載している。
摩擦係数測定速度は、一般的なプラスチック用途である100mm/min、法線加重1.96N、接触面積40cm2となる様にフィルムをセットし、測定距離60mmの間の最大力から静摩擦係数を算出した結果をn=5で測定し、その平均値をそれぞれ記録した。
算術平均粗さRaは、キーエンス社製のレーザーマイクロスコープ(型番VK-X200)を用いて、表面の算術平均粗さRaを算出した。表面の算術平均粗さRaは、1mm2の測定範囲内においてJIS B 0601-2001に準拠し、算出した。
評価結果は適正な滑り性を付与することができる1.0μm以上4.5μm以下の範囲に入っているものを「○」、それ以外のものを「×」とした。
包装材用シーラントフィルム1に関する耐ブロッキング性評価は、包装材用シーラントフィルム1を8枚重ね、テスター産業製の圧縮試験装置にて0.3MPaの荷重をかけた状態で2日保持した後に、-20℃および50℃の保管環境下でそれぞれ1ヶ月間保管し、ブロッキング強度の測定をした。ブロッキング強度の測定は、ブロッキングしたフィルムを30mm×30mmの範囲のみブロッキングされているように30mm幅×100mm長に切出し、チャック間距離を50mm、引張り速度を300mm/minとして島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いて、せん断剥離強度を測定し、ブロッキング強度とした。
ブロッキング強度が10[N/30mm]以下のものを「○」、10[N/30mm]以上のものを「×」とした。
包装材用シーラントフィルム1に関する滑剤移行量評価は、滑剤の種類と評価装置の相性があるため、滑剤の種類によって評価手法を分けて実施した。
(シリコーン評価表面存在量方法)
シリコーンの基材表面存在量については、アルバック・ファイ株式会社製のX線光電子分光分析装置(型番 Quantum2000)を用いて-20℃保管、50℃保管の各環境室で0.3MPaで加圧した状態で1ヶ月間保管し、2種類のフィルムについて包装材用シーラントフィルム1と一体となった基材面表面の炭素(以下、Cと表記)と酸素(以下、Oと表記)と窒素(以下、Nと表記)とケイ素(以下、Siと表記)の相対元素濃度を算出した。
エルカ酸アミドの基材表面存在量については、-20℃保管、50℃環境室で0.3MPaで加圧した状態で1ヶ月間保管し、2種類のフィルムについて、図3のように包装材用シーラントフィルム1の表面に有機滑剤表面抽出用治具41を固定し、その中に有機溶媒42としてクロロホルムを注入した。注入後1分経過した時点でクロロホルムを抽出し、アジレントテクノロジー(株)製のガスクロマトグラフ/水素炎イオン化検出器で抽出したクロロホルムを測定することで、有機滑剤の表面52に存在していたエルカ酸アミドの量を測定した。カラムはHP-5MSを使用した。なお、この測定前に数点の濃度の異なるエルカ酸アミドが溶解したクロロホルム溶液を標準液として測定を行い、ピーク面積と濃度の検量線を引くことで、表面存在量に換算している。上述したように、有機滑剤の表面存在量は、熱可塑性樹脂の種類、接着剤の種類、温度条件などによって変化するため、上記有機滑剤表面存在量の測定は、包装材用シーラントフィルム1と貼り合せた基材面に対して実施した。また、シーラントフィルム裏面におけるエルカ酸アミドの存在量についても同様の手法、手順にて存在量を測定するフィルム面を表面から反転させ、有機滑剤表面抽出用治具41に固定し、その中に有機溶媒42としてクロロホルムを注入し、抽出されたクロロホルムを測定することで、シーラントフィルムの裏面層6に存在していたエルカ酸アミドの量を測定した。
上記のエルカ酸アミド表面存在量評価方法を用いて評価した包装材用シーラントフィルム1について、-20℃、及び50℃環境室で0.3MPaで加圧した状態で1ヶ月間保管した2種類のフィルムの滑剤移行量を、-20℃保管時の移行量を基準として、50℃保管時の移行量変動割合を算出した。移行量変動割合が20.0%以下のものを「○」、それ以外を「×」とした。
総合判定として、上記の包装材用シーラントフィルム1に関する評価の全てについて「○」判定であるものを「○」とし、一つでも「×」判定であったものは「×」とした。
上記各実施例及び各比較例のシーラントフィルム1の評価結果を表1に記載する。
一方、比較例1から比較例4では、滑剤3のポリシロキサン配合濃度を増加させても、冷却ロール面の算術平均粗さRaが小さく、フィルムの算術平均粗さRaが足りず、適正な静摩擦係数が得られていない。このため、比較例1から比較例4では、ブロッキング強度も大きく、総合判定が「×」となっている。
比較例14から比較例17では、冷却ロール面の算術平均粗さRaが大きいため、適正な静摩擦係数が得られている。しかし、比較例14から比較例17では、ロール状に巻取り長期間保管した際に、背面の凹凸表面形状が被着体表面に打痕として転写してしまう恐れのあるフィルム算術平均粗さRaであるため、総合判定が「×」となった。
比較例18では、滑剤3として低分子量のエルカ酸アミドを用いており、フィルム内部に存在するエルカ酸アミドの基材面への移行量が保管環境によって増加している。この結果、比較例18では、基材面の静摩擦係数安定性が良好でないため、判定が「×」となっている。
2 熱可塑性樹脂
3 滑剤
4 凸型形状
5 表面層
6 裏面層
7 接着剤層
8 基材
41 有機滑剤表面抽出用治具
42 有機溶媒
Claims (7)
- それぞれの樹脂成分が熱可塑性樹脂からなる1層又は2層以上の樹脂層からなる包装材用シーラントフィルムであって、
上記包装材用シーラントフィルムを構成する樹脂層のうち、最表面を構成する樹脂層である表面層には、滑剤としてポリシロキサンを主骨格に持つシリコーンガムを含有すると共に、上記表面層の表面には凹凸が形成され、
上記表面層に含まれるシリコーンガムは、表面層を構成する樹脂成分に対し、1重量%以上3.0重量%以下の割合で添加され、
上記凹凸による表面層の表面は、JIS B 0601で規定される算術平均粗さRaが、1.0μm以上4.5μm以下の範囲であり、
0.3MPaでの加圧状態且つ-20℃の温度雰囲気で保管1ヶ月間後、ならびに0.3MPaでの加圧状態且つ50℃の温度雰囲気で保管1ヶ月間後における、JIS K 7125の測定方法に準じたシーラントフィルム表面同士の静摩擦係数が、それぞれ0.20以上0.50以下の範囲であることを特徴とする包装材用シーラントフィルム。 - 上記-20℃の温度雰囲気で保管後のシーラントフィルム表面同士の静摩擦係数と、上記50℃の温度雰囲気で保管後のシーラントフィルム表面同士の静摩擦係数との差が、0.1未満であることを特徴とする請求項1に記載した包装材用シーラントフィルム。
- 請求項1又は請求項2に記載の包装材用シーラントフィルムの裏面に基材を設けた包装材。
- 0.3MPaでの加圧状態且つ-20℃の温度雰囲気で保管1ヶ月間後、ならびに0.3MPaでの加圧状態且つ50℃の温度雰囲気で保管1ヶ月間後における、JIS K 7125の測定方法に準じた基材面同士の静摩擦係数が、それぞれ0.20以上0.50以下の範囲であることを特徴とする請求項3に記載した包装材。
- 上記-20℃の温度雰囲気で保管後の基材面同士の静摩擦係数と、上記50℃の温度雰囲気で保管後の基材面同士の静摩擦係数との差が、0.1未満であることを特徴とする請求項4に記載した包装材。
- 0.3MPaで加圧した状態で-20℃の温度雰囲気で1ヶ月間保管後における基材表面に存在する滑剤の移行量を基準とした、0.3MPaで加圧した状態で50℃の温度雰囲気で1ヶ月間保管後における基材表面に存在する滑剤の変動量が20.0%以内であることを特徴とする請求項3~請求項5のいずれか1項に記載した包装材。
- 請求項3~請求項6のいずれか1項に記載した包装材を用いた包装体。
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