JP7186192B2 - 光ファイバ式放射線モニタ及びその使用方法 - Google Patents
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Description
本発明は、光ファイバ式放射線モニタ及びその使用方法に関する。
放射線モニタは、原子力発電プラント、医療用の放射線検査や放射線治療などの用途において、必須の計測装置である。これらの用途において、放射線量の計測には、安定性や再現性が良好な電離箱が広く使用されている。
特に、放射線治療時の患者体内の放射線量を計測する場合には、低侵襲性であることが重要であり、センサの小型化や電圧の印加が不要なセンサが重要である。また、原子力発電プラントの過酷環境下で放射線量を計測する場合にも、計測場所の制限などから、センサの小型化や電圧の印加が不要なセンサが重要である。
近年、電離箱に代わり、放射線量の計測に、小型化が比較的容易な半導体検出器が使用されている。しかし、半導体検出器であっても、信号処理系までを含めると、小型化には限界があり、また、半導体検出器は、電圧の印加が必要である。
そこで、センサにシンチレータ素子を使用し、シンチレータ素子から発生する光子を光ファイバにより伝送し、遠隔にて放射線量を計測する光ファイバ式放射線モニタが開発されている。光ファイバ式放射線モニタは、センサの小型化が可能であると共に、センサへの電圧の印加も不要である。このように、光ファイバ式放射線モニタは、放射線治療時の患者体内の放射線量を計測する場合や原子力発電プラントの過酷環境下で放射線量を計測する場合にも好適である。
一方、光ファイバ式放射線モニタを、放射線治療時の患者体内の放射線量を計測する場合や原子力発電プラントの過酷環境下で放射線量を計測する場合に使用する際には、高精度な計測が要求されると共に、センサの劣化を考慮して、補正が必要であり、定期的な校正が必要である。
こうした本技術分野の背景技術として、特開2018-36204号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、所定の波長の光を発生する放射線検出素子を有する放射線検出部と、所定の波長と相違する波長の光を発生する発光部と、所定の波長の光を透過させ、所定の波長の光と相違する波長の光を遮断する波長選択部と、光を伝送する光ファイバと、波長選択部を透過した光を電気パルスに変換する光検出部と、電気パルスの計数率を計数する計数装置と、計数率と発光部の光の強度とに基づいて、少なくとも発光部の劣化の有無を判定する解析表示装置と、を有する放射線モニタが記載されている(要約参照)。
特許文献1には、所定の波長の光を発生する放射線検出部と、所定の波長と相違する波長の光を発生する発光部と、所定の波長の光を透過させ、所定の波長の光と相違する波長の光を遮断する波長選択部(光フィルタ)と、を有する光ファイバ式放射線モニタが記載されている。つまり、特許文献1に記載されている光ファイバ式放射線モニタは、光の伝送路に光フィルタを設置する。
しかし、特許文献1には、光の伝送路に光フィルタを設置することにより、光検出部(光電変換器)に伝送される光の強度が減衰し、モニタリングの感度が低下する可能性については記載されていない。
そこで、本発明は、光電変換器に伝送される光の強度の減衰を抑制し、モニタリングの感度が低下することがなく、高精度に放射線量を計測する光ファイバ式放射線モニタ及び使用方法を提供する。
上記した課題を解決するため、本発明の光ファイバ式放射線モニタは、入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生するセンサと、センサが発生するフォトンを伝送する光ファイバと、光ファイバが伝送するフォトンを電気信号に変換する光電変換器と、光電変換器が変換する電気信号を計数し、電気信号の計数値を出力する計数装置と、センサに、光ファイバを介して、レーザ光を照射する発光部と、発光部が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する発光タイミング制御部と、発光タイミング制御部が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、計数装置が出力する電気信号の計数値を受取り、レーザ光照射タイミング信号と電気信号の計数値とに基づいて、補正データを作成し、放射線量を計測する場合には、電気信号の計数値と補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量又は放射線の線量率を算出する補正装置と、放射線量又は放射線の線量率を表示する表示装置と、を有することを特徴とする。
また、上記した課題を解決するため、本発明の光ファイバ式放射線モニタの使用方法は、センサにて、入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生する発生工程と、光ファイバにて、センサが発生するフォトンを伝送する伝送工程と、光電変換器にて、光ファイバが伝送するフォトンを電気信号に変換する変換工程と、計数装置にて、光電変換器が変換する電気信号を計数し、電気信号の計数値を出力する計数工程と、発光部にて、光ファイバを介して、センサにレーザ光を照射する照射工程と、発光タイミング制御部にて、発光部が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する制御工程と、補正装置にて、発光タイミング制御部が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に計数されるフォトン数に基づいて、補正データを作成する作成工程と、放射線量を計測する場合には、補正装置にて、電気信号の計数値と補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量又は放射線の線量率を算出する演算工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、光電変換器に伝送される光の強度の減衰を抑制し、モニタリングの感度が低下することがなく、高精度に放射線量を計測する光ファイバ式放射線モニタ及び使用方法を提供することができる。
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により明らかにされる。
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
まず、実施例1に記載する放射線モニタ1の構成を説明する。
図1は、実施例1に記載する放射線モニタ1の構成を説明する説明図である。
実施例1に記載する放射線モニタ1は、光ファイバ式放射線モニタ(以下「放射線モニタ」と呼称する。)である。
放射線モニタ1は、センサ10、光ファイバ20、光電変換器30、計数装置40、発光部50、発光タイミング制御部60、補正装置70、及び表示装置80を有する。
センサ10は、入射する放射線の放射線量に依存(相当)する光子(以下「フォトン」と呼称する。)を発生する放射線発光素子を有する。放射線発光素子は、放射線が入射されることにより、フォトンを発生する。つまり、センサ10は、放射線が入射されることにより、入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生(発光又は蛍光)する。
そして、センサ10に入射する放射線の放射線量と、センサ10が発生するフォトンの数(フォトン数)とは、線形性を有する。つまり、センサ10に入射する放射線の線量率と、センサ10が発生する単位時間当たりのフォトン数(以下「フォトン計数率」と呼称する。)とは、線形性を有する。
放射線発光素子に使用される放射線発光材料は、例えば、母材として、透明イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などの材料を有し、この材料に、添加物として、イッテルビウム、ネオジム、セリウム、プラセオジウムなどの少なくとも1種類以上の希土類元素を有する。
このように、放射線発光素子が、少なくとも1種類以上の希土類元素を有することにより、センサ10に入射する放射線の線量率とフォトン計数率との線形性を、更に向上させることができる。そして、放射線モニタ1に、高い線量率の放射線が入射する場合であっても、放射線の線量率とフォトン計数率との線形性を維持し、放射線の線量率を正確に計測することができる。
また、放射線発光素子に、一般式(1)に示される放射線発光材料を、使用してもよい。
ATaO4:B・・・・・一般式(1)
一般式(1)において、A及びBは、4f-4f電子遷移を有する希土類元素であり、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Tbの少なくとも1種類以上の希土類元素である。
一般式(1)において、A及びBは、4f-4f電子遷移を有する希土類元素であり、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Tbの少なくとも1種類以上の希土類元素である。
そして、放射線発光材料に添加される添加物Bの質量は、放射線発光材料の総質量に対して、1×10-3~30質量%であることが好ましい。これにより、センサ10の発光強度を向上させることができる。
一般式(1)に示される放射線発光材料は、高密度の母材ATaO4及び添加物Bが、4f-4f電子遷移を有する希土類元素を有することにより、放射線の入射により母材ATaO4に付与するエネルギーが、高効率で添加物Bの励起エネルギーに使用される。これにより、センサ10の感度を向上させることができる。
光ファイバ20は、センサ10と光電変換器30とを接続する。光ファイバ20は、センサ10が発生するフォトンを、光電変換器30に、伝送する。光ファイバ20は、例えば、石英やプラスチックなどにより、構成される。
光電変換器30は、光ファイバ20を介して、センサ10と接続する。光電変換器30は、伝送されるフォトンを電気信号(以下「電気パルス」と呼称する。)に変換する。光電変換器30は、光ファイバ20が伝送する1個1個のフォトンを、1個1個の電気パルスに、変換する。そして、光電変換器30は、1個のフォトンに対して、1個の電気パルスを発信する。
つまり、センサ10が発生するフォトン数と、光電変換器30が発信する電気パルス数とは、線形性を有する。そして、フォトン計数率と、光電変換器30が発信する単位時間当たりの電気パルス数(以下「電気パルス計数率」と呼称する。)とは、線形性を有する。
光電変換器30には、例えば、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードなどが使用される。光電変換器30に、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードなどを使用することにより、伝送されるフォトンを、増幅した電気パルスに、変換することができる。
計数装置40は、信号線を介して、光電変換器30と接続する。計数装置40は、発信される電気パルスを計数する。つまり、計数装置40は、発信される1個1個の電気パルスを計数し、計数装置40が計数する電気パルスの計数値(電気パルス数)を出力する。
放射線量を計測する場合には、センサ10、光ファイバ20、光電変換器30、及び計数装置40が使用され、事前に設定される一対一に対応する電気パルスの計数値(又は、電気パルス計数率)と放射線量(又は、放射線の線量率)との関係に基づいて、放射線量を計測する。
一方、放射線量を計測する場合には、センサ10の劣化を考慮して、電気パルスの計数値(又は、電気パルス計数率)を補正(補正処理)する必要がある。
補正する場合には、センサ10、光ファイバ20、光電変換器30、計数装置40、発光部50、発光タイミング制御部60、及び補正装置70を使用する。
発光部50は、例えば、レーザ光を発生するレーザ光発生装置であり、光ファイバ20を介して、センサ10と接続する。そして、発光部50は、光ファイバ20を介して、センサ10にレーザ光を照射する。つまり、発光部50が発生するレーザ光は、センサ10に照射され、センサ10は、レーザ光が照射されることにより、照射されるレーザ光に依存するフォトンを発生する。
そして、センサ10に照射されるレーザ光の強度と、フォトン数とは、線形性を有する。つまり、センサ10に照射されるレーザ光の強度と、フォトン計数率とは、線形性を有する。
また、レーザ光のエネルギーは、センサ10が発生するフォトンのエネルギーよりも高い必要がある。つまり、レーザ光の波長は、センサ10が発生するフォトンの波長よりも短い必要がある。
発光タイミング制御部60は、信号線を介して、発光部50と接続する。発光タイミング制御部60は、発光部50がレーザ光を発生する発光タイミング(レーザ光照射タイミング)、つまり、発光部50が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、発光タイミング信号(レーザ光照射タイミング信号)を出力する。
補正装置70は、信号線を介して、発光タイミング制御部60及び計数装置40と接続する。補正装置70は、発光タイミング制御部60から、発光タイミング制御部60が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、計数装置40から、計数装置40が出力する電気パルスの計数値を受取り、レーザ光照射タイミングと電気パルスの計数値とに基づいて、補正データを作成する。
また、補正装置70は、作成する補正データを記憶し、記憶する補正データを使用し、放射線量を計測する場合には、センサ10の劣化を考慮して、電気パルスの計数値(又は、電気パルス計数率)を補正する。
また、補正装置70は、放射線量を計測する場合には、電気パルスの計数値と補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量(又は、放射線の線量率)を算出する。
なお、補正装置70は、演算処理を実施することができるものであれば、特に限定されず、補正装置70には、例えば、パーソナルコンピュータなどが使用される。
表示装置80は、放射線量(又は、放射線の線量率)を表示するものである。また、表示装置10は、センサ10の異常などを表示する。
次に、実施例1に記載するセンサ10に入射する放射線によるフォトンの発生過程を説明する。
図2は、実施例1に記載するセンサ10に入射する放射線によるフォトンの発生過程を説明する概念図である。
センサ10は、放射線rが入射されると、放射線rのエネルギーにより、センサ10における基底状態(エネルギー準位L1)の電子は、エネルギー準位の高い励起状態(エネルギー準位L3)に遷移する(図2中、矢印a1参照)。そして、エネルギー準位の高い励起状態(エネルギー準位L3)にある電子は、エネルギー準位の低い励起状態(エネルギー準位L2)に遷移する(図2中、矢印b1参照)。センサ10は、エネルギー準位L3とエネルギー準位L2とのエネルギーの差分に相当するエネルギーを有するフォトン(p)を発生する。
また、センサ10は、発光部50が発生するレーザ光が照射されると、レーザ光のエネルギーにより、センサ10におけるエネルギー準位L1の電子は、エネルギー準位L3に遷移する(図2中、矢印a1参照)。そして、エネルギー準位L3にある電子は、エネルギー準位L2に遷移する(図2中、矢印b1参照)。センサ10は、エネルギー準位L3とエネルギー準位L2とのエネルギーの差分に相当するエネルギーを有するフォトン(p)を発生する。
次に、実施例1に記載する放射線の線量率とフォトン計数率との関係を説明する。
図3Aは、実施例1に記載する放射線の線量率とフォトン計数率との関係を説明する説明図である。
図3Aに示すように、放射線の線量率とフォトン計数率とは線形性(比例関係)を有する。
次に、実施例1に記載するフォトン計数率と電気パルス計数率との関係を説明する。
図3Bは、実施例1に記載するフォトン計数率と電気パルス計数率との関係を説明する説明図である。
図3Bに示すように、フォトン計数率と電気パルス計数率とは線形性(比例関係)を有する。
このように、放射線の線量率とフォトン計数率との間には、一対一対の対応関係があり、また、フォトン計数率と電気パルス計数率との間には、一対一対の対応関係がある。つまり、放射線の線量率と電気パルス計数率との間にも、一対一対の対応関係がある。これにより、電気パルス計数率を、放射線の線量率に、換算することができる。
そして、放射線量を計測する場合には、放射線の線量率とフォトン計数率との関係(図3A参照)及びフォトン計数率と電気パルス計数率との関係(図3B参照)から、電気パルス計数率と放射線の線量率との関係を求め、事前に設定される一対一に対応する電気パルス計数率と放射線の線量率との関係に基づいて、放射線量を計測する。
次に、実施例1に記載するレーザ光の強度とフォトン数との関係を説明する。
図3Cは、実施例1に記載するレーザ光の強度とフォトン数との関係を説明する説明図である。
図3Cに示すように、レーザ光の強度とフォトン数とは線形性(比例関係)を有する。
センサ10の劣化を考慮して、電気パルス計数率を補正する場合には、次の(1)~(4)の工程を実行する。
(1)まず、事前に、劣化のないセンサ10に、所定の強度のレーザ光を照射し、フォトン数を計測し、レーザ光の強度とフォトン数との関係を把握する。この際、少なくとも2つの強度のレーザ光を照射することにより、比例関係(a)を把握することができる(図3Cのa参照)。そして、このフォトン数をフォトン計数率に変換する。
そして、この比例関係(a)は、劣化のないセンサ10における、放射線の線量率とフォトン計数率との関係と、同様である。ここで、「劣化のないセンサ10」とは、センサ10の初期状態の意味である。
(2)次に、放射線量を計測する前のセンサ10に、所定の強度のレーザ光を照射し、フォトン数を計測し、レーザ光の強度とフォトン数との関係を把握する。この際、少なくとも2つの強度のレーザ光を照射することにより、比例関係(b)を把握することができる(図3Cのb参照)。そして、このフォトン数をフォトン計数率に変換する。
(3)次に、比例関係(a)と比例関係(b)とを比較する。センサ10の劣化により、比例関係(a)と比例関係(b)との傾き(比例定数)に差異が発生する。フォトン数をフォトン計数率に変換した場合も、同様に、レーザ光の強度に対するフォトン計数率の傾き(以下「フォトン計数率の傾き」と呼称する。)に差異が発生する。
つまり、放射線量を計測する前のセンサ10に、センサ10の劣化を、フォトン計数率の傾きの差異として、把握することができる。
(4)最後に、フォトン計数率の傾きの差異に基づいて、電気パルス計数率を補正する。なお、フォトン計数率の傾きの差異、又は、フォトン計数率の傾きの差異から換算される電気パルス計数率の傾きの差異が、補正データである。
そして、放射線量を計測する場合には、例えば、計測される放射線の線量率から換算されるフォトン計数率に、補正データを積算し、電気パルス計数率を補正する。これにより、高精度に放射線量を計測することができる。
次に、実施例1に記載するレーザ光照射タイミング、センサ発光及び減衰計測を説明する。
図4は、実施例1に記載するレーザ光照射タイミング、センサ発光及び減衰計測を説明するタイムチャートである。
図4に示すタイムチャートは、発光部50で発生するレーザ光のレーザ光照射タイミングと、レーザ光が照射されることにより、センサ10がフォトンを発生するセンサ発光と、補正装置70が制御する減衰計測と、の関係を示すものである。
レーザ光は、パルス状(例えば、1μsのパルス幅)に、周期的(例えば、数ms間隔)に、センサ10に照射される(レーザ光照射タイミング)。
センサ10は、レーザ光が照射されることにより、フォトンを発生する(センサ発光)。センサ10が発生するフォトン数は、レーザ光の照射中にピークとなり、レーザ光の照射後(発光直後から)に減衰する。つまり、センサ10は、レーザ光の照射後も、発光が継続する。そして、例えば、センサ10の発光寿命(蛍光寿命)は、1μs以上であることが好ましく、放射線発光素子に、Nd(ネオジム):YAGを、使用する場合には、230μsである。
補正装置70は、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に、フォトン数を計数する(減衰計測)。センサ発光の減衰時にフォトン数を計数することにより、レーザ光の反射の影響、つまり、レーザ光の直接的な影響を受けることなく、正確にフォトン数を計測することができる。そして、高精度に放射線量を計測することができる。
このように、補正装置70は、発光タイミング制御部60からレーザ光照射タイミング信号を受取り、計数装置40から電気パルスの計数値を受取り、センサ発光の減衰時のフォトン数を計数し、補正データを作成する。つまり、補正データを作成する場合に、ノイズとなるレーザ光などを除去し、センサ発光のみを計測することにより、高精度に放射線量を計測することができる。
ここで、レーザ光を照射することにより発生するノイズには、レーザ光の主波長成分自体、高調波成分などの主波長成分以外のレーザ光、及びレーザ光が照射されることによる、光ファイバ20の発光などが考えられる。光の伝送路に光フィルタを設置する光ファイバ式放射線モニタは、波長の違いを利用して、ノイズを除去するものであるため、レーザ光自体を除去することはできるが、レーザ光の高調波成分や光ファイバ20の発光などは除去することができない場合がある。
実施例1によれば、こうした、従来、除去することができなかった、レーザ光を照射することにより発生する、ノイズを除去することができ、高精度に補正することができる。
なお、補正データは、オンライン及び/又はオフラインにて、作成することができる。
また、補正装置70が、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時のフォトン数を計数するタイミング(計測タイミング)は、例えば、数msである。計測タイミングは、レーザ光照射タイミングの間隔よりは短く、センサ10の発光寿命よりは長い。これにより、正確にフォトン数を計測することができる。
つまり、計測タイミングは、補正データを作成するためのフォトン数を計測する期間(補正データ収集期間)である。
なお、補正装置70は、レーザ光照射タイミング信号及びパルス幅に基づき、予め設定される補正データ収集期間で、フォトン数を計測する。
このように、実施例1に記載される放射線モニタ1は、以下の構成要件を有する。
・入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生する(発生工程)センサ10
・センサ10が発生するフォトンを伝送する(伝送工程)光ファイバ20
・光ファイバ20が伝送するフォトンを電気パルスに変換する(変換工程)光電変換器30
・光電変換器30が変換する電気パルスを計数し、電気パルスの計数値を出力する(計数工程)計数装置40
・センサ10に、光ファイバ20を介して、レーザ光を照射する(照射工程)発光部50
・発光部50が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する(制御工程)発光タイミング制御部60
・発光タイミング制御部60が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、計数装置40が出力する電気パルスの計数値を受取り、レーザ光照射タイミング信号と電気パルスの計数値とに基づいて、補正データを作成する(作成工程)補正装置70
・放射線量(又は、放射線の線量率)を表示する(表示工程)表示装置80
そして、補正装置70は、放射線量を計測する場合には、計測される放射線の線量率から換算されるフォトン計数率と補正データとに基づいて、電気パルス計数率を補正する(補正工程)。
・入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生する(発生工程)センサ10
・センサ10が発生するフォトンを伝送する(伝送工程)光ファイバ20
・光ファイバ20が伝送するフォトンを電気パルスに変換する(変換工程)光電変換器30
・光電変換器30が変換する電気パルスを計数し、電気パルスの計数値を出力する(計数工程)計数装置40
・センサ10に、光ファイバ20を介して、レーザ光を照射する(照射工程)発光部50
・発光部50が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する(制御工程)発光タイミング制御部60
・発光タイミング制御部60が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、計数装置40が出力する電気パルスの計数値を受取り、レーザ光照射タイミング信号と電気パルスの計数値とに基づいて、補正データを作成する(作成工程)補正装置70
・放射線量(又は、放射線の線量率)を表示する(表示工程)表示装置80
そして、補正装置70は、放射線量を計測する場合には、計測される放射線の線量率から換算されるフォトン計数率と補正データとに基づいて、電気パルス計数率を補正する(補正工程)。
更に、補正装置70は、補正データを作成する場合には、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に、計数されるフォトン数に基づいて、補正データを作成する(作成工程)。
また、補正装置70は、放射線量を計測する場合には、電気パルスの計数値と補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量(又は、放射線の線量率)を算出する(演算工程)。
このように、実施例1によれば、放射線モニタ1に使用するセンサ10の小型化を実現し、センサ10への電圧の印加も不要となる。
また、実施例1によれば、補正データを使用し、センサ10の劣化の経時的変化を考慮し、電気パルス計数率を補正することにより、簡易かつ正確に、放射線量を計測することができる。
また、実施例1によれば、レーザ光の反射の影響を受けることなく、光電変換器30に伝送される光の強度の減衰を抑制し、モニタリングの感度が低下することがなく、フォトン数を正確に計測することができ、高精度に放射線量を計測することができる。
更に、実施例1によれば、従来、除去することができなかった、レーザ光を照射することにより発生する、ノイズを除去することができ、高精度に補正することができ、高精度に放射線量を計測することができる。
また、実施例1によれば、放射線治療時の患者体内の放射線量を計測する場合や原子力発電プラントの過酷環境下や狭隘部で放射線量を計測する場合であっても、センサ10の劣化を考慮し、好適に使用することができる。
そして、実施例1によれば、放射線モニタ1の感度が向上するため、医療機関や研究機関のエリアモニタなどの低線量場における使用も可能となり、適用範囲が大幅に拡大する。
次に、実施例2に記載する放射線モニタ2の構成を説明する。
図5は、実施例2に記載する放射線モニタ2の構成を説明する説明図である。
実施例2に記載する放射線モニタ2は、実施例1に記載する放射線モニタ1と比較して、シャッター90を有する点で、相違する。
シャッター90は、光ファイバ20を介して、センサ10と接続する。また、シャッター90は、光ファイバ20を介して、光電変換器30と接続する。つまり、シャッター90は、光電変換器30の前段で、フォトンの伝送路に設置される。シャッター90は、開閉し、センサ10が発生するフォトンを通過させ、又は、センサ10が発生するフォトンを遮断する(開閉工程)。
また、シャッター90は、信号線を介して、発光タイミング制御部60と接続する。発光タイミング制御部60は、シャッター90の開閉タイミングを制御する。発光タイミング制御部60は、発光部50が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御すると共に、シャッター90の開閉タイミングを制御する。つまり、発光タイミング制御部60にて、シャッター90と発光部50とを、同期して制御する。発光タイミング制御部60は、レーザ光の照射が終了すると同時に、シャッター90が開くように制御する。
シャッター90は、補正データ収集期間、発光タイミング制御部60からの制御により、開き、フォトンを光電変換器30に伝送する。なお、放射線量を計測する場合にも、シャッター90は、開き、フォトンは通過する(測定工程)。そして、実施例1と同様に、補正データを作成する。
このように、実施例2に記載する放射線モニタ2は、実施例1に記載する放射線モニタ1に加え、光電変換器30の前段に設置され、発光タイミング制御部60が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、センサ10が発生するフォトンの伝送路を開閉するシャッター90を有する。なお、シャッター90は、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に開く。
そして、補正装置70は、計数装置40が出力する電気パルスの計数値を受取り、電気パルスの計数値に基づいて、補正データを作成する(作成工程)。なお、補正装置70は、補正データを作成する場合には、シャッター90が開いている場合に計数されるフォトン数に基づいて、補正データを作成する(作成工程)。また、補正装置70は、放射線量を計測する場合には、電気パルスの計数値と補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量(又は、放射線の線量率)を算出する(演算工程)。
つまり、シャッター90は、補正データを作成する場合、センサ発光時に閉まり、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に開き、ノイズとなるレーザ光などを除去し、センサ発光のみを計測することにより、高精度に放射線量を計測することができる。
これにより、レーザ光の反射の影響、つまり、レーザ光の直接的な影響を受けることなく、正確にフォトン数を計測することができる。そして、高精度に放射線量を計測することができる。
なお、その他の構成や各構成の機能については、基本的に、実施例2に記載する放射線モニタ2は、実施例1に記載する放射線モニタ1と同様である。また、実施例2は、実施例1と同様の効果が得られる。
更に、実施例2では、発光タイミング制御部60にて、シャッター90と発光部50とを同期して制御することにより、補正装置70における補正データ収集期間の制御が不要となる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
1、2・・・放射線モニタ
10・・・センサ
20・・・光ファイバ
30・・・光電変換器
40・・・計数装置
50・・・発光部
60・・・発光タイミング制御部
70・・・補正装置
80・・・表示装置
90・・・シャッター
10・・・センサ
20・・・光ファイバ
30・・・光電変換器
40・・・計数装置
50・・・発光部
60・・・発光タイミング制御部
70・・・補正装置
80・・・表示装置
90・・・シャッター
Claims (9)
- 入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生するセンサと、
前記センサが発生するフォトンを伝送する光ファイバと、
前記光ファイバが伝送するフォトンを電気信号に変換する光電変換器と、
前記光電変換器が変換する前記電気信号を計数し、前記電気信号の計数値を出力する計数装置と、
前記センサに、前記光ファイバを介して、レーザ光を照射する発光部と、
前記発光部が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する発光タイミング制御部と、
前記発光タイミング制御部が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、前記計数装置が出力する前記電気信号の計数値を受取り、前記レーザ光照射タイミング信号と前記電気信号の計数値とに基づいて、補正データを作成し、放射線量を計測する場合には、前記電気信号の計数値と前記補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量又は放射線の線量率を算出する補正装置と、
前記放射線量又は前記放射線の線量率を表示する表示装置と、
を有することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項1に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記センサは、母材として、透明イットリウム・アルミニウム・ガーネットを使用し、添加物として、イッテルビウム、ネオジム、セリウム、プラセオジウムの少なくとも1種類以上の希土類元素を使用することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項1に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記センサは、ATaO4:B(A及びBは、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Tbの少なくとも1種類以上の希土類元素)であることを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項1又は請求項3に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記センサは、蛍光寿命が1μs以上であることを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項1又は請求項4に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記補正装置は、前記補正データを作成する場合には、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に、計数されるフォトン数に基づいて、前記補正データを作成することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生するセンサと、
前記センサが発生するフォトンを伝送する光ファイバと、
前記光ファイバが伝送するフォトンを電気信号に変換する光電変換器と、
前記光電変換器が変換する前記電気信号を計数し、前記電気信号の計数値を出力する計数装置と、
前記センサに、前記光ファイバを介して、レーザ光を照射する発光部と、
前記発光部が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する発光タイミング制御部と、
前記光電変換器の前段に設置され、前記発光タイミング制御部が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、前記センサが発生するフォトンの伝送路を開閉するシャッターと、
前記計数装置が出力する前記電気信号の計数値を受取り、前記電気信号の計数値に基づいて、補正データを作成し、放射線量を計測する場合には、前記電気信号の計数値と前記補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量又は放射線の線量率を算出する補正装置と、
前記放射線量又は前記放射線の線量率を表示する表示装置と、
を有することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項6に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記シャッターは、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に開くことを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - 請求項7に記載する光ファイバ式放射線モニタであって、
前記補正装置は、前記補正データを作成する場合には、前記シャッターが開いている場合に計数されるフォトン数に基づいて、前記補正データを作成することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタ。 - センサにて、入射する放射線の放射線量に依存するフォトンを発生する発生工程と、
光ファイバにて、前記センサが発生するフォトンを伝送する伝送工程と、
光電変換器にて、前記光ファイバが伝送するフォトンを電気信号に変換する変換工程と、
計数装置にて、前記光電変換器が変換する前記電気信号を計数し、前記電気信号の計数値を出力する計数工程と、
発光部にて、前記光ファイバを介して、前記センサにレーザ光を照射する照射工程と、
発光タイミング制御部にて、前記発光部が照射するレーザ光のレーザ光照射タイミングを制御し、レーザ光照射タイミング信号を出力する制御工程と、
補正装置にて、前記発光タイミング制御部が出力するレーザ光照射タイミング信号を受取り、レーザ光の照射後のセンサ発光の減衰時に計数されるフォトン数に基づいて、補正データを作成する作成工程と、
放射線量を計測する場合には、補正装置にて、前記電気信号の計数値と前記補正データとに基づいて補正処理を実施し、放射線量又は放射線の線量率を算出する演算工程と、
を有することを特徴とする光ファイバ式放射線モニタの使用方法。
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