以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係るインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
[全体構成]
本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置100は、主に、給紙部1、画像形成部2、乾燥部3、排紙部4から構成されている。インクジェット式画像形成装置100においては、給紙部1から供給されるシートとしての用紙Pに対し、画像形成部2で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部3において乾燥させた後、用紙Pを排紙部4から排紙する。また、両面印刷する場合は、画像形成部2において用紙Pの表側の面に画像が形成された後、乾燥部3において乾燥処理をし、用紙Pを排紙することなく反転搬送経路150へ搬送する。用紙Pは、反転搬送経路150を通過することで、表裏反転された状態で再び画像形成部2に供給され、画像形成部2において用紙Pの裏側の面に画像が形成された後、乾燥部3において乾燥処理が行われ、排紙部4から排紙される。
[給紙部]
給紙部1は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ5と、給紙トレイ5から用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置6と、給送装置6から送り出された用紙Pを搬送する搬送装置7とから構成されている。給送装置6には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置6により給紙トレイ5から送り出された用紙Pは、搬送装置7によって画像形成部2へ搬送される。
[画像形成部]
画像形成部2は、主に、給紙された用紙Pを受け取って用紙担持ドラム9へ渡す第1の搬送回転体としての渡し胴8と、渡し胴8によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する第2の搬送回転体としての用紙担持ドラム9と、用紙担持ドラム9に担持された用紙Pに向けてインクを吐出するインク吐出部10と、用紙担持ドラム9によって搬送された用紙Pを乾燥部3へ受け渡す第3の搬送回転体としての渡し胴11とから構成されている。なお、上流側の渡し胴8、用紙担持ドラム9、及び下流側の渡し胴11は、用紙Pを搬送する上記搬送装置7の一部も兼ねている。
給紙部1から画像形成部2へ搬送されてきた用紙Pは、渡し胴8の表面に設けられた受取部としての揺動可能なグリッパ16によって先端が把持され、渡し胴8の表面移動に伴って搬送される。渡し胴8により搬送された用紙Pは、用紙担持ドラム9との対向位置で用紙担持ドラム9へ受け渡される。なお、図1に示す例では、グリッパ16が1つのみ記載されているが、グリッパ16は渡し胴8に複数設けられていてもよい。
用紙担持ドラム9の表面にも受取部として同様のグリッパが設けられており、用紙の先端がグリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム9の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置12によって用紙担持ドラム9の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。渡し胴8から用紙担持ドラム9へ受け渡された用紙Pは、グリッパによって先端が把持されると共に、吸い込み気流によって用紙担持ドラム9の表面に吸着して、用紙担持ドラム9の表面移動に伴って搬送される。
本実施形態に係るインク吐出部10は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kを備えている。液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
インク吐出部10の液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム9に担持された用紙Pがインク吐出部10との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。なお、本実施形態において、画像形成部2は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
[乾燥部]
乾燥部3は、主に、画像形成部2で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構13と、画像形成部2から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構14とから構成されている。画像形成部2から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構14に受け取られた後、乾燥機構13を通過するように搬送され、排紙部4へ受け渡される。乾燥機構13を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
[排紙部]
排紙部4は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ15から構成されている。乾燥部3から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ15上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部4は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
[その他の追加機能部]
本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置100は、給紙部1、画像形成部2、乾燥部3、排紙部4から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部1と画像形成部2との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部3と排紙部4との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、例えば、画像形成部2で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部2へ送って用紙Pの両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理などが挙げられるが、後処理の内容についても特に制限はない。
なお、用紙に形成される「画像」は、文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等も含まれる。また、画像が形成される「シート」は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
また、「インクジェット式画像形成装置」は、液体吐出ヘッドとシート材とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
続いて、本実施形態に係る給紙部1が備える搬送装置7について説明する。
図2は、本実施形態に係る搬送装置の平面図である。
図2に示すように、搬送装置7は、用紙Pの位置を検知する位置検知手段としての3つのCIS101~102と、用紙Pの搬送タイミングを検知する搬送タイミング検知手段としての2つの先端検知センサ200,220と、搬送中の用紙Pを保持(挟持)しながら用紙Pの位置を変更する位置変更手段としての挟持ローラ対31とを備える。以下の説明において、複数のCIS101~103は、用紙搬送方向の上流側から順に、第1のCIS(第1位置検知手段)101、第2のCIS(第2位置検知手段)102、第3のCIS(第3位置検知手段)103と称することにする。また、2つの先端検知センサ200,220のうち、挟持ローラ対31の下流側に配置された先端検知センサ200を下流側先端検知センサ(第1搬送タイミング検知手段)と称し、挟持ローラ対31の上流側に配置された先端検知センサ220を上流側先端検知センサ(第2搬送タイミング検知手段)と称することにする。
CISは、近年、装置の小型化を目的として、形状の小さいLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を光源に利用し、レンズを介してリニアセンサで画像を直接読み取るコンタクト・イメージ・センサ(Contact Image Sensor)と呼ばれるものである。各CIS101~103は、用紙Pの幅方向に設けられた複数のラインセンサにより、用紙Pの幅方向の一端側の側端部Paを検知することが可能である。第1のCIS101及び第2のCIS102は、挟持ローラ対31よりも上流側であって、挟持ローラ対31の1つ上流側にある搬送ローラ対44よりも下流側に配置されている。一方、第3のCIS103は、挟持ローラ対31よりも下流側であって、渡し胴8よりも上流側に配置されている。また、各CIS101~103は、用紙Pの幅方向(搬送方向に直交する方向)に対して平行に配置されている。
各先端検知センサ200,220は、反射型光学センサ等で構成されている。上流側先端検知センサ220は、挟持ローラ対31よりも上流側で、第2のCIS102よりも下流側に配置されている。下流側先端検知センサ200は、挟持ローラ対31よりも下流側で、第3のCIS103よりも上流側に配置されている。用紙Pが搬送されてくると、用紙Pの先端部Pbが上流側先端検知センサ220によって検知されることで、用紙Pの先端部Pbが上流側先端検知センサ220に到達した搬送タイミングが検知される。また、用紙Pが挟持ローラ対31によって挟持された後、用紙Pの先端部Pbが下流側先端検知センサ200の位置に到達すると、下流側先端検知センサ200によって用紙Pの先端部Pbが検知され、用紙Pの先端部Pbが下流側先端検知センサ200に到達した搬送タイミングが検知される。
挟持ローラ対31は、搬送中の用紙Pを挟持しながら、用紙Pの幅方向(図2中の矢印S方向)に移動したり、支軸73を中心に用紙搬送面内で(図2中の矢印W方向に)回転したりして、用紙Pの位置を変更する。これにより、用紙Pの幅方向の位置ずれαと斜行の位置ずれβとが補正される。言い換えれば、挟持ローラ対31は、用紙Pの位置ずれを補正する位置ずれ補正手段として機能するものである。本実施形態では、支軸73が挟持ローラ対31の軸方向一端部側に設けられているが、支軸73は挟持ローラ対31の軸方向中央位置に設けられていてもよい。
また、搬送装置7の構成要素である渡し胴8には、渡し胴8を回転駆動させる搬送回転体駆動手段としての渡し胴駆動モータ81と、渡し胴8の回転速度を検知する回転速度検知手段としてのロータリーエンコーダ82とが設けられている。渡し胴8は、このロータリーエンコーダ82の検知結果に基づいて回転速度が制御される。
図3及び図4に、挟持ローラ対を駆動させる駆動機構の構成を示す。図3は、駆動機構の側面図、図4は、駆動機構の平面図である。
図3に示すように、挟持ローラ対31は、ローラ軸回りに回転駆動される駆動ローラ31aと、これと一緒に従動回転する従動ローラ31bとで構成されている。これらの挟持ローラ対31は、保持部材としての保持フレーム72によってローラ軸回りに回転可能に保持されている。保持フレーム72は、画像形成装置の本体フレーム70に固定されたベースフレーム71によって支持されている。
図4に示すように、保持フレーム72は、中継支持部材としてのフリーベアリング(ボールトランスファー)95を介してベースフレーム71上に設けられている。これにより、保持フレーム72は、ベースフレーム71に対してその上面に沿って用紙搬送面内(被搬送媒体搬送面内)のいずれの方向にも移動可能に構成されている。このように、フリーベアリング95を用いて保持フレーム72を支持することで、保持フレーム72が移動する際の摩擦負荷を極めて小さくすることができる。このため、後述する用紙の位置ずれ補正を高速でかつ高精度に行うことができる。本実施形態では、4つのフリーベアリング95によって保持フレーム72を支持しているが、フリーベアリング95の個数は3箇所以上であればよい。
また、図3に示すように、保持フレーム72には、挟持ローラ対31の用紙搬送面内での回転中心となる上記支軸73が下方へと伸びるように設けられている。支軸73の下端部は、ベースフレーム71に形成された幅方向ガイド部71aに挿入されている。幅方向ガイド部71aは、幅方向(図4中の矢印S方向)に略直線状に伸びるように形成された穴部である。また、支軸73の下端部にはガイドコロ79が回転可能に設けられており、このガイドコロ79を介して支軸73が幅方向ガイド部71aに接触するように挿入されている。支軸73が幅方向ガイド部71aに沿って幅方向に移動することで、保持フレーム72及びこれに保持される挟持ローラ対31も幅方向に移動する。また、保持フレーム72は支軸73を中心に用紙搬送面内で(図4中の矢印W方向に)回転するようにも構成されている。保持フレーム72が支軸73を中心に回転することで、挟持ローラ対31は用紙搬送面内で回転する。
図3に示すように、本体フレーム70の図の右端側に設けられたブラケット69には、挟持ローラ対31に対して用紙搬送のための駆動力を付与する搬送駆動モータ(搬送駆動手段)61が設けられている。搬送駆動モータ61と挟持ローラ対31の駆動ローラ31aとは、複数のギア66,67から成るギア列とカップリング機構65とを介して連結されている。カップリング機構65は、駆動ローラ31aの回転軸とギア67の回転軸とが互いに軸方向に離間又は接近したり、互いに傾斜する方向へ駆動したりしても、駆動力伝達可能に連結を保持する二段スプラインカップリングである。このように、カップリング機構65を介して駆動ローラ31aとギア67とが連結されていることで、挟持ローラ対31が幅方向に移動したり用紙搬送面内で回転したりして駆動ローラ31aと搬送駆動モータ61との相対的位置が変化しても、搬送駆動モータ61から駆動ローラ31aへの駆動力伝達を良好に行うことができる。
また、図3に示すように、駆動ローラ31aの端部(搬送駆動モータ61側とは反対側の端部)には、駆動ローラ31a(又は搬送駆動モータ61)の搬送回転速度を検知する回転速度検知手段としてのロータリーエンコーダ96が設けられている。挟持ローラ対31は、このロータリーエンコーダ96の検知結果に基づいて搬送回転速度が制御される。
また、本実施形態に係る搬送装置7は、保持フレーム72及び挟持ローラ対31を用紙の幅方向に移動させる幅方向駆動機構38と、保持フレーム72及び挟持ローラ対31を用紙搬送面内の回転方向に回転させる斜行方向駆動機構39とを備えている。
図3及び図4に示すように、幅方向駆動機構38は、幅方向駆動モータ(幅方向駆動手段)62、タイミングベルト97、カム45、引張バネ59等で構成されている。引張バネ59は、保持フレーム72を幅方向の一方向(図4における左方向)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。カム45は、その回転軸45aを中心に回転可能にベースフレーム71に設けられている。また、カム45は、引張バネ59の付勢力によって支軸73に設けられたカムフォロワ46に接触した状態で保持されている。カム45が回転すると、引張バネ59の付勢力に抗してカムフォロワ46が押されることで、保持フレーム72が幅方向(図4における右方向)に移動する。
また、図3に示すように、カム45の回転軸45aと幅方向駆動モータ62のモータ軸とにはタイミングベルト97が掛け渡されている。これにより、タイミングベルト97を介して、幅方向駆動モータ62からカム45へ駆動力が伝達される。また、カム45の回転軸45aには、カム45の回転角(回転量)を検知する回転角検知手段としてのロータリーエンコーダ57が設けられている。このロータリーエンコーダ57の検知結果に基づき幅方向駆動モータ62の駆動を制御することで、カム45の回転角度が制御されて、保持フレーム72の幅方向への移動量が調整される。すなわち、ロータリーエンコーダ57は、保持フレーム72及び挟持ローラ対31が幅方向へ移動する際の駆動位置を検知する駆動位置検知手段として機能する。
図3及び図4に示すように、斜行方向駆動機構39は、斜行方向駆動モータ(斜行方向駆動手段)63、タイミングベルト98、カム47、引張バネ60、レバー部材50等で構成されている。引張バネ60は、保持フレーム72を斜行方向の一方向(図4における支軸73を中心とする時計回り)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。カム47は、その回転軸47aを中心に回転可能にベースフレーム71に設けられている。また、カム47は、引張バネ60の付勢力によってレバー部材50の一端部に設けられたカムフォロワ48に接触した状態で保持されている。また、レバー部材50の反対側の端部には作用コロ49が回転可能に設けられている。作用コロ49は、引張バネ60の付勢力によって保持フレーム72に設けられた突起部72aに接触した状態で保持されている。このように構成されていることで、カム47が回転し、カム47によってカムフォロワ48が押されると、レバー部材50がその回転軸50aを中心に回転する。これに伴って、レバー部材50に設けられた作用コロ49が保持フレーム72の突起部72aを引張バネ60の付勢力に抗して押すことで、保持フレーム72が用紙搬送面内の回転方向に(図4における反時計回りに)回転する。
また、図3に示すように、カム47の回転軸47aと斜行方向駆動モータ63のモータ軸とにはタイミングベルト98が掛け渡されている。これにより、タイミングベルト98を介して、斜行方向駆動モータ63からカム47へ駆動力が伝達される。また、カム47の回転軸47aには、カム47の回転角(回転量)を検知する回転角検知手段としてのロータリーエンコーダ58が設けられている。このロータリーエンコーダ58の検知結果に基づき斜行方向駆動モータ63の駆動を制御することで、カム47の回転角度が制御されて、保持フレーム72の用紙搬送面内での回転量が調整される。すなわち、ロータリーエンコーダ58は、保持フレーム72及び挟持ローラ対31が用紙搬送面内で回転する際の駆動位置を検知する駆動位置検知手段として機能する。
図5(a)に示すのは、幅方向駆動機構38のカム45のみが回転して、保持フレーム72が幅方向に移動した状態、図5(b)に示すのは、斜行方向駆動機構39のカム47のみが回転して、保持フレーム72が用紙搬送面内で回転した状態である。また、図5(c)は、両方のカム45,47が回転して、保持フレーム72が幅方向に移動すると共に、用紙搬送面内で回転した状態を示している。
また、図3に示すように、下流側先端検知センサ200は、保持フレーム72に設けられている。従って、下流側先端検知センサ200は、保持フレーム72が上記の如く幅方向に移動したり用紙搬送面内で回転したりすると、保持フレーム72と一緒に(一体的に)幅方向又は用紙搬送面内で移動する。一方、上流側先端検知センサ220は、搬送経路上に移動しないように固定されている。
図6は、本実施形態に係る搬送装置の制御系を示すブロック図である。
本実施形態に係る搬送装置は、上記挟持ローラ対31と、その搬送方向下流側に配置された渡し胴8とのそれぞれの動作を制御する制御部20を備えている。制御部20は、挟持ローラ対31の位置ずれ補正動作、すなわち挟持ローラ対31の幅方向移動量及び用紙搬送面内での回転量と、渡し胴8の回転速度とを制御する。
図6に示すように、制御部20は、用紙の位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部21と、渡し胴8が用紙を受け取る目標受取タイミングを算出する目標受取タイミング算出部24と、渡し胴8の搬送回転速度を制御する回転速度制御部25とを備えている。
位置ずれ量算出部21は、各CIS101~103の検知結果に基づいて用紙の位置ずれ量を算出するように構成されている。この位置ずれ量算出部21で算出された用紙の位置ずれ量に基づいて、制御部20は挟持ローラ対31を制御する。すなわち、制御部20は、用紙の位置ずれ補正を行うために、挟持ローラ対を幅方向に駆動させる上記幅方向駆動モータ62と、挟持ローラ対を用紙搬送面内の回転方向に回転させる上記斜行方向駆動モータ63のそれぞれを制御する。
目標受取タイミング算出部24は、下流側先端検知センサ200によって検知された用紙の搬送位置情報と、渡し胴8に設けられたホームポジションセンサ80(図1参照)によって検知された渡し胴8の回転位置情報とに基づいて、渡し胴8が用紙を受け取る目標受取タイミングを算出する。上述のように、本実施形態では、渡し胴8への用紙Pの受け渡しが、渡し胴8に設けられたグリッパ16によって用紙Pが把持されることにより行われる。このとき、グリッパ16への用紙Pの受け渡しを確実に行うため、グリッパ16は、グリッパ16の用紙受取位置A(図1参照)に用紙Pが到達するタイミングに合わせて、同様に用紙受取位置Aに到達することが求められる。従って、本実施形態では、この用紙受取位置Aに用紙Pが到達するタイミングを、上記目標受取タイミングとして設定している。なお、グリッパ16が用紙把持位置Aに到達するタイミングは、上記ホームポジションセンサ80によって渡し胴8の回転基準位置Cが検知されることで特定される。
回転速度制御部25は、渡し胴8の回転速度を検知するロータリーエンコーダ82(図2参照)の検知情報と、位置ずれ補正によって変化した用紙の位置変化量とに基づいて、渡し胴8の回転速度を制御する。ここで、位置ずれ補正時の用紙の位置変化量は、挟持ローラ対31が用紙の位置ずれ補正を行う際に幅方向に移動した移動量及び用紙搬送面内の回転方向に回転した回転量に相当する。従って、本実施形態では、挟持ローラ対31の幅方向移動量及び用紙搬送面内での回転量を検知する各ロータリーエンコーダ57,58の検知信号を回転速度制御部25が受信することで、用紙の位置変化量を間接的に取得するようにしている。
また、回転速度制御部25は、目標受取タイミング算出部24によって算出された目標受取タイミング、又はその後修正された目標受取タイミングに基づいて、渡し胴8の回転速度を制御する。
続いて、図7及び図8を用いて、用紙位置ずれ量の算出方法について説明する。なお、図7では、用紙位置ずれ量の算出を、第1のCIS101と第2のCIS102とを用いて行う方法が示されているが、第2のCIS101と第3のCIS103を用いた用紙位置ずれ量の算出方法も同様である。
図7に示すように、用紙Pの先端部Pbが第1のCIS101を通過し、第2のCIS102に到達すると、用紙Pの幅方向の位置ずれ量αと斜行の位置ずれ量βとが検知される。
具体的に、幅方向の位置ずれ量αは、第2のCIS102によって検知された用紙Pの幅方向の位置(用紙Pの幅方向の側端部Pa)に基づいて算出される。すなわち、第2のCIS102によって検知された幅方向の位置と搬送基準位置Kと比較し、これらの間の幅方向の距離K1が用紙Pの幅方向の位置ずれ量αとなる。
また、斜行の位置ずれβは、第1のCIS101及び第2のCIS102のそれぞれによって検知された用紙Pの幅方向の端部位置の差から算出される。つまり、図7に示すように、用紙Pの先端部Pbが第2のCIS102に到達した時点で、第1のCIS101と第2のCIS102とによって搬送基準位置Kからの幅方向の距離K1,K2が検知される。そして、これらの距離K1,K2と、予め設定されている第1のCIS101と第2のCIS102との間の距離M1とから、tanβ=(K1-K2)/M1の式を用いて、斜行の位置ずれ量βが算出される。
このようにして、幅方向の位置ずれ量αと斜行の位置ずれ量βとが算出される。なお、図8に示すように、斜行の位置ずれ補正が行われることにより、用紙がPの位置からP´の位置へ移動すると、幅方向の位置ずれ量がαからα´に変化する。従って、この幅方向の位置ずれ量α´を予め算出しておくことで、より高精度な位置ずれ補正を行うことが可能である。ただし、幅方向の位置ずれ量α´は、斜行の位置ずれ補正をどの位置を基準に行うかによって変化する。
続いて、図9~図14の平面図及び側面図と、図15のフローチャートとを参照しつつ、本実施形態に係る搬送装置の動作について説明する。
図9(a)(b)に示すように、用紙Pが搬送されてきた場合、挟持ローラ対31は、そのローラ軸が搬送方向(図の左右方向)に対して直交するホームポジションに配置されている。また、この状態で、挟持ローラ対31は互いに離間し、静止した状態で待機している。
その後、図10(a)(b)に示すように、用紙Pの先端部Pbが第1のCIS101を通過し、第2のCIS102に到達すると、第1のCIS101と第2のCIS102とによって用紙Pの側端部Paの位置が検知される「第1位置検知」が行われる(図15のS1)。そして、これらのCIS101,102によって検知された位置情報に基づいて、幅方向の位置ずれ量α(又は斜行の位置ずれ補正に伴うずれ量も含めた位置ずれ量α´)と斜行の位置ずれ量βとが上記位置ずれ量算出部21(図6参照)によって算出される。そして、算出された位置ずれ量に基づいて、幅方向駆動モータ62及び斜行方向駆動モータ63が制御され、挟持ローラ対31を幅方向に(図10中の矢印S1方向に)移動させると共に、用紙搬送面内の回転方向に(図10中の矢印W1方向に)回転させる。これにより、挟持ローラ対31を用紙Pの先端部Pbに対して正対させる迎え動作が行われる(図15のS2)。
その後、用紙Pの先端部Pbが上流側先端検知センサ220によって検知され、その検知タイミングに基づいて挟持ローラ対31が互いに接触すると共に搬送回転を開始すると、図11(a)(b)に示すように、用紙Pは正対する挟持ローラ対31に迎え入れられ、挟持ローラ対31によって用紙Pが挟持されながら搬送される。なお、挟持ローラ対31に用紙Pが受け渡された時点で、挟持ローラ対31の上流側の搬送ローラ対44は互いに離間した状態となる。
また、図11(a)(b)に示すように、挟持ローラ対31によって用紙Pが搬送され、用紙Pの先端部Pbが下流側先端検知センサ200の位置に到達すると、下流側先端検知センサ200によって用紙Pの先端部Pbが検知される(図15のS3)。これによって、用紙Pの先端部Pbが下流側先端検知センサ200に到達したタイミングが検知される。そして、下流側先端検知センサ200の検知情報と渡し胴8のホームポジションセンサ80の検知情報とに基づいて、渡し胴8の用紙受取位置Aへの用紙の目標受取タイミングが上記目標受取タイミング算出部24(図6参照)によって算出されて設定される(図15のS4)。
その後、図12(a)(b)に示すように、挟持ローラ対31によって用紙Pを搬送しながら、挟持ローラ対31を上記迎え動作とは反対方向(図の矢印S2方向及び矢印W2方向)に駆動させる戻し動作を行う(図15のS5)。これにより、用紙Pの幅方向の位置ずれ及び斜行の位置ずれが補正される「第1補正」が行われる。なお、図15に示すフローチャートでは、戻し動作(第1補正)S5が、下流側先端検知センサ200の検知S3よりも後の順で表示されているが、戻し動作S5は迎え動作S2直後の下流側先端検知センサ200の検知S3よりも前に開始されてもよい。
さらに、図13(a)(b)に示すように、用紙Pの先端部Pbが第3のCIS103に到達すると、第2のCIS102と第3のCIS103とによって再度用紙Pの側端部Paの位置が検知される「第2位置検知」が行われる(図15のS6)。そして、これらのCIS102,103によって検知された位置情報に基づいて、幅方向の位置ずれ量と斜行の位置ずれ量とが位置ずれ量算出部21によって算出される。そして、算出された位置ずれ量に基づいて、幅方向駆動モータ62及び斜行方向駆動モータ63が制御され、挟持ローラ対31を幅方向に(図13中の矢印S3方向又は矢印S4方向に)移動させると共に、用紙搬送面内の回転方向に(図13中の矢印W3方向又は矢印W4方向に)回転させて、用紙Pの位置ずれを補正する「第2補正」が行われる(図15のS7)。
このように、戻し動作(第1補正)の後にも、用紙Pの位置ずれを検知し(第2位置検知)、その検知結果に基づいて用紙Pの位置ずれを補正することで(第2補正)、挟持ローラ対31によって用紙Pが搬送される間に生じる位置ずれを解消することができる。また、このような戻し動作後の位置ずれ検知(第2位置検知)は、用紙が第2のCIS102と第3のCIS103を通過中であれば、所定の間隔で複数回行うことができる。従って、このような位置ずれ検知(第2位置検知)を複数回行い、そのたびに位置ずれ補正(第2補正)を行うことで、より高精度に用紙を搬送することが可能となる。
しかしながら、上記のような位置ずれ補正を目標受取タイミングの設定後に行うと、これに伴って用紙の搬送方向の位置が変化するので、そのままの搬送速度で用紙が搬送されると、用紙が用紙受取位置Aに到達するタイミングが変化する。その結果、用紙が用紙受取位置Aへ到達するタイミングと、渡し胴8のグリッパ16が用紙受取位置Aへ到達するタイミングとがずれ、グリッパ16によって用紙を精度良く把持できなくなる虞が生じる。斯かる問題に対しては、用紙を搬送する挟持ローラ対31の搬送回転速度を変化させることで、グリッパ16が用紙受取位置Aに到達するタイミングに合わせて用紙の搬送速度を調整する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、挟持ローラ対31の搬送回転速度を変化させた際に、挟持ローラ対31と用紙との間で滑りが生じ、用紙の搬送タイミングを高精度に修正することができない可能性がある。
そこで、本実施形態では、目標受取タイミングの設定後に位置ずれ補正(第2補正)が行われた場合は(位置ずれ補正が行われるたびに)、用紙の位置ずれ補正量に基づいて受け取り側の渡し胴8の回転速度を変更(修正)するようにしている(図15のS8)。一方、挟持ローラ対31は、挟持ローラ対31に設けられたロータリーエンコーダ96(図3参照)の検知情報に基づいて、予め設定された所定の(一定の)搬送回転速度で回転するように制御されている。
このように、渡し胴8の回転速度が用紙の位置ずれ補正量に基づいて変更されることで、図14(a)(b)に示すように、用紙Pが用紙受取位置Aに到達するタイミングに合わせて渡し胴8のグリッパ16が用紙受取位置Aに到達し(図15のS9)、グリッパ16によって用紙Pを確実に受け取る(把持する)ことができる。そして、用紙Pが用紙受取位置Aに到達した時点で、挟持ローラ対31は互いに離間し、挟持ローラ対31による用紙の搬送が終了する。なお、目標受取タイミングの設定後に位置ずれ補正が行われなかった場合は、用紙受取位置Aへの用紙の到達タイミングも基本的に変化しないので、位置ずれ補正に対応した渡し胴8の回転速度の変更は行われない。
以下、図16のフローチャートを参照しつつ、渡し胴8の回転速度の制御方法について説明する。
図16に示すように、渡し胴8の回転速度の制御が開始されると、目標受取タイミングの設定が行われる前に、まず、渡し胴8のホームポジションセンサ80の検知情報に基づいてグリッパ16が回転基準位置Cにいることが確認される(図16のS11)。そして、上述のように下流側先端検知センサ200によって用紙の先端部が検知され(図16のS12)、その検知情報と渡し胴8のホームポジションセンサ80の検知情報とに基づいて目標受取タイミングが設定される(図16のS13)。
設定された目標受取タイミングに合わせて渡し胴8の目標回転速度が算出される(図16のS14)。なお、この渡し胴8の目標回転速度の算出は、上記目標受取タイミング算出部24で行ってもよいし、別の演算部で行っても構わない。そして、算出された目標回転速度に基づいて渡し胴8の回転速度が制御される(図16のS15)。本実施形態では、渡し胴8の回転速度は、渡し胴8に設けられたロータリーエンコーダ82からの信号に基づいて管理されている。従って、渡し胴8の回転速度が、目標回転速度に対して速いか又は遅いかを判断するために、ロータリーエンコーダ82からの信号を回転速度制御部25が取得する(図16のS16)。
また、目標受取タイミングの設定後に、挟持ローラ対31による位置ずれ補正が行われた場合は、その位置ずれ補正に伴う用紙の位置ずれ補正量に基づいて渡し胴8の回転速度を変更する。この位置ずれ補正量は、位置ずれ補正時に挟持ローラ対31が幅方向又は用紙搬送面内の回転方向に駆動した駆動位置(駆動量及び駆動方向)に相当する。そのため、本実施形態では、挟持ローラ対31の幅方向及び用紙搬送面内の駆動量及び駆動方向を検知する各ロータリーエンコーダ57,58からの信号を回転速度制御部25が取得する(図16のS17)。そして、上記目標受取タイミングと、各ロータリーエンコーダ82,57,58からの信号と、に基づいて渡し胴8の目標回転速度を算出する(図16のS14)。そして、改めて算出された目標回転速度に基づいて渡し胴8の回転速度が制御される(図16のS15)。そして、このような渡し胴8の回転速度の制御を、用紙搬送時間が目標受取タイミングに達するまで行う(図16のS18)。そして、用紙搬送時間が目標受取タイミングに達した時点で、グリッパ16は用紙とタイミングを合わせて用紙受取位置Aへ到達する(図16のS19)。これにより、グリッパ16は用紙をタイミング良く確実に把持することができる。
以下、図17を用いて、位置ずれ補正に伴う用紙の位置変化量の算出方法について説明する。
図17において、点Zは、挟持ローラ対31がホームポジションに配置されているときの用紙搬送面内での回転中心(支軸73)の位置、点Rは、計測基準点、点Qは、下流側先端検知センサ200で用紙先端部を検知してから時間t経過したときの用紙先端部の位置、点Q´は、時間tの1つ前のタイミング(時間t-1)で位置ずれ補正した際の用紙先端の位置を示す。また、図17において、カッコ内の文字は、用紙搬送方向をX方向、用紙搬送方向に対して直交する方向をY方向としたときの、計測基準点Rを基準とした各点Z,Q,Q´のX座標及びY座標である。また、θは、用紙先端部が点Qの位置に達したときの挟持ローラ対31のホームポジションからの傾き角(用紙搬送面内での回転角度)、θ´は、用紙先端部が点Q´の位置に達したときの挟持ローラ対31のホームポジションからの傾き角(用紙搬送面内での回転角度)である。Δθは、これら傾き角θ,θ´の差分である。
このように、用紙Pの先端部の位置が位置ずれ補正動作に伴って変化する場合、時間tのときの用紙先端位置Qの位置座標(Qx,Qy)は、下記式1、式2を用いて算出することができる。
Qx=cos(Δθ)(Qx´-Zx)-sin(Δθ)(Qy´-Zy)
+Zx+Xp・・・・・式1
Qy=sin(Δθ)(Qx´-Zx)+cos(Δθ)(Qy´-Zy)
+Zy+Yp+Ys・・・・・式2
上記式1中のXpは、時間tの1つ前のタイミングまで(時間t-1)の間に用紙Pが搬送された搬送距離のX方向成分であり、上記式2中のYpは、その搬送距離のY方向成分である。時間t-1の間に挟持ローラ対31によって用紙Pが搬送された搬送距離(ローラ軸と直交する方向の搬送距離)をFpとすると、Xp及びYpは、下記式3と式4とで表すことができる。また、式2中のYsは、点Q´から点Qまでの用紙Pの幅方向移動量(Y方向移動量)である。
Xp=cos(θ´)Fp・・・・・式3
Yp=sin(θ´)Fp・・・・・式4
従って、上記式1~式4を用いることで、時間tのときの用紙先端位置Qの位置座標(Qx,Qy)を算出することができる。
そして、算出されたX座標Qxから、位置ずれ補正を行わなかった場合の時間t経過後の用紙先端位置のX座標Vxを減算することで、位置ずれ補正に伴う用紙先端部の位置変化量Gが算出される(下記式5参照)。そして、このように算出された位置変化量Gに基づいて用紙が用紙受取位置Aに到達するまでの時間(目標受取タイミング)を算出し、算出された時間に基づいて渡し胴8の回転速度を調整することで、用紙を所定のタイミングで渡し胴8(グリッパ16)へ受け渡すことができる。
G=Qx-Vx・・・・・式5
以上のように、本実施形態に係る搬送装置によれば、位置ずれ補正に伴って用紙の搬送方向の位置が変化したとしても、位置ずれ補正が行われるたびに、その位置ずれ補正量(幅方向及び用紙搬送面内での回転方向の用紙の位置変化量)に基づいて、渡し胴8の回転速度を変更(修正)することで、用紙が用紙受取位置Aへ到達するタイミングに合わせてグリッパ16を用紙受取位置Aへ到達させることができる。また、用紙を送る側の挟持ローラ対31の搬送速度ではなく、受け取り側の渡し胴8の回転速度を修正することで、挟持ローラ対31と用紙との間での滑りの発生を回避でき、用紙を渡し胴8へ精度良く受け渡すことができる。その結果、用紙に対する画像の位置ずれを高精度に防止することができるようになり、印刷品質が向上する。また、両面印刷を行う場合は、表側の面と裏側の面に対する画像の位置ずれを補正することができるため、表側の画像と裏側の画像との相対的な位置ずれをなくすことが可能である。
なお、本実施形態では、用紙の位置を検知するたびに、位置ずれ補正と渡し胴8の回転速度の変更とを行っているが、複数回検知された用紙の位置情報のうち、その一部の検知結果に基づいて位置ずれ補正を行い、その位置ずれ補正に応じて渡し胴8の回転速度の変更を行うようにしてもよい。すなわち、位置ずれ補正を行う回数と渡し胴8の回転速度の変更を行う回数は、用紙の位置が検知される回数よりも少ない回数であってもよい。
また、本実施形態では、渡し胴8の回転速度の制御を、渡し胴8に設けられたロータリーエンコーダ82の検知情報に基づいて行っているが、図18に示す例のように、上流側の渡し胴8と連動する用紙担持ドラム9に設けられた駆動モータ91を制御することで、渡し胴8の回転速度を間接的に制御するようにしてもよい。図18に示す例では、上流側の渡し胴8と用紙担持ドラム9と下流側の渡し胴11とが、それぞれの一端部側に設けられたギア部8a,9a,11aを介して連結されており、これらは用紙担持ドラム9に設けられた駆動モータ91によって連動するように構成されている。すなわち、上流側の渡し胴8の回転速度は、用紙担持ドラム9の回転速度に倣って決定されるので、用紙担持ドラム9に設けられた駆動モータ91を、上流側の渡し胴8に設けられたロータリーエンコーダ82の検知情報に基づいて制御することで、上流側の渡し胴8の回転速度を間接的に制御することが可能である。
また、本実施形態では、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31と一緒に(一体的に)駆動するように構成しているが、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31とは一緒に駆動しないように構成することも可能である。しかしながら、その場合、用紙の斜行度合いに応じて下流側先端検知センサ200による先端検知位置が異なる。そのため、下流側先端検知センサ200の検知後(目標受取タイミングの設定後)に、挟持ローラ対31の戻し動作によって用紙の位置ずれが補正されると(第1補正)、戻し動作の動作量の大きさ(用紙の斜行量の大きさ)に応じて目標受取タイミングに変動が生じてしまう。従って、この場合は、位置ずれ補正動作(第1補正)よる目標受取タイミングへの影響を解消するために、戻し動作(第1補正)に応じて渡し胴8の回転速度の変更を行うか、あるいは戻し動作が完了した後に下流側先端検知センサ200によって用紙の搬送タイミングを検知する必要がある。
これに対して、本実施形態では、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31と一緒に(一体的に)駆動するように構成しているので、用紙に対して下流側先端検知センサ200が毎回正対した状態で(毎回同じ姿勢で)検知することが可能である。このように、用紙の斜行度合いに応じて下流側先端検知センサ200による先端検知位置が異なることがないので、目標受取タイミングは、先端検知位置のばらつきの影響を受けない。また、下流側先端検知センサ200は、挟持ローラ対31の戻し動作に伴って毎回同じ位置(ホームポジション)に戻されるので、下流側先端検知センサ200から用紙受取位置Aまでの距離も毎回同じとなる。従って、下流側先端検知センサ200から用紙受取位置Aまでの距離が変化することによる目標受取タイミングへの影響もない。
このように、本実施形態では、下流側先端検知センサ200が挟持ローラ対31と一緒に駆動することで、センサが固定されている場合の種々の影響を受けないようにすることができるので、戻し動作(第1補正)に応じて渡し胴8の回転速度の変更を行わなくてもよい。従って、戻し動作後の位置ずれ補正(第2補正)のみに対応して渡し胴8の回転速度を変化させるだけでよい。また、戻し動作後の位置ずれ補正(第2補正)は、一旦位置ずれが補正された後に行う微細な位置ずれ補正であるので、通常この補正動作に伴う渡し胴8の回転速度の変更も僅かなもので足りるため、用紙が高速で搬送される場合や、用紙受取位置Aまでの搬送距離が短い場合であっても、十分に対応ことが可能である。
また、目標受取タイミングが戻し動作の影響を受けないので、戻し動作が完了する前に(戻し動作の開始前又は戻し動作の途中で)下流側先端検知センサ200によって搬送タイミングを検知することができるようになる。従って、早い段階で目標受取タイミングを設定することができるようになり、その後に行われる渡し胴8の回転速度の制御時間を十分に確保することができ、制御精度が向上する。
なお、本実施形態では、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31の下流側に配置しているが、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31と一緒に駆動させることによる効果を得るにあたっては、下流側先端検知センサ200を挟持ローラ対31の上流側に配置しても構わない。
また、本実施形態では、用紙の位置ずれ補正量を、挟持ローラ対31の幅方向移動量及び用紙搬送面内での回転量を検知するロータリーエンコーダ57,58(駆動位置検知手段)の情報から間接的に得るようにしているが、用紙の位置を直接検知するCISの情報から用紙の位置ずれ補正量を算出することも可能である。しかしながら、CISは情報量が多く、通信や演算処理などの負荷が大きくなるので、用紙の位置を検知したタイミングから渡し胴8の回転速度の変更を開始するまでの時間が長くなることが考えられる。これに対して、ロータリーエンコーダからの情報で用紙の位置ずれ補正量を間接的に算出する場合は、通信や演算処理などの負荷が軽減されるので、早いタイミングで渡し胴8の回転速度の変更を開始することができる。従って、搬送速度の速い構成や、用紙受取位置Aまでの搬送距離が短い構成においても、渡し胴8の回転速度の制御時間を確保することができ、用紙を高精度に受け取ることができる。
図19及び図20に基づき、本発明の他の実施形態に係る搬送装置について説明する。
本実施形態に係る搬送装置では、上記実施形態に係る搬送装置と比べて、図19において、挟持ローラ対31の搬送回転速度を検知するロータリーエンコーダ96が追加され、図20において、そのロータリーエンコーダ96からの信号受信を行う工程(S20)が追加されている点のみが異なっている。
挟持ローラ対31は基本的に等速で回転するように制御されているが、何らかの原因で挟持ローラ対31の搬送回転速度が変化することも考えられる。その場合、上述のように、用紙の位置ずれ補正量に基づいて渡し胴8の回転速度を変更したとしても、用紙と渡し胴8上のグリッパ16とのタイミングが合わない可能性がある。
そこで、本実施形態では、渡し胴8の回転速度を、渡し胴8の回転速度を検知するロータリーエンコーダ82からの信号と、挟持ローラ対31の幅方向移動量及び用紙搬送面内での回転量を検知する各ロータリーエンコーダ57,58からの信号に加え、挟持ローラ対31のロータリーエンコーダ96からの信号にも基づいて変更するようにしている。これにより、挟持ローラ対31の搬送回転速度が変化しても、用紙と渡し胴8上のグリッパ16とのタイミングを合わせ、用紙をより高精度に搬送することができるようになる。
図21及び図22は、本発明のさらに別の実施形態に係る搬送装置のブロック図とフローチャートである。
図21及び図22に示す実施形態では、用紙の搬送速度を直接検知する被搬送媒体速度検知手段としてのレーザドップラ速度計18を用いている。レーザドップラ速度計18は、光のドップラ効果を利用して被搬送媒体(用紙)の搬送速度を直接測定する非接触式の計測器である。
図19及び図20に示す上述の実施形態では、挟持ローラ対31の搬送回転速度を検知するロータリーエンコーダ96からの信号を得て、用紙の搬送速度を間接的に検知するようにしている。しかしながら、万が一、用紙と挟持ローラ対31との間に滑りが生じた場合、ロータリーエンコーダ96の情報から得られる挟持ローラ対31の搬送回転速度では、用紙の搬送速度を正確に検知できない可能性がある。
そこで、本実施形態では、挟持ローラ対31の搬送回転速度を検知するロータリーエンコーダ96に代えて、レーザドップラ速度計18によって直接検知された用紙の搬送速度に基づいて渡し胴8の回転速度を制御するようにしている(図22のS20)。これにより、用紙と挟持ローラ対31との間で滑りが生じたとしても、その滑りに起因する搬送タイミングのずれを防止し、用紙をより高精度に搬送することができるようになる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
図16、図20、図22に示す各フローチャートでは、目標搬送タイミングを設定するために、ホームポジションセンサ80からの信号を受信するようにしているが、このホームポジションセンサ80からの信号受信に代えて、渡し胴8のロータリーエンコーダ82からの信号を受信するようにしてもよい。ホームポジションセンサ80からの信号受信がなくても、渡し胴8のロータリーエンコーダ82からの信号に基づいてグリッパ16の位置を確認することができるので、目標搬送タイミングを設定することが可能である。
上述の実施形態では、用紙を受け取る渡し胴8の受取部を、揺動して用紙を把持するグリッパ16としているが、受取部は、グリッパ16のような用紙を把持する構造以外のものであってもよい。
また、上述の実施形態では、用紙の側端部の位置を検知する位置検知手段として、CISを用いているが、CISに限らず、用紙の幅方向に沿って複数配置されるフォトセンサなど、用紙の側端部を検知できるものであれば他の検知手段を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、用紙の幅方向の位置ずれと斜行の位置ずれの両方を補正する場合を例に説明しているが、本発明に係る搬送装置は、幅方向の位置ずれと斜行の位置ずれとのいずれか一方のみを補正する場合にも適用可能である。幅方向の位置ずれのみを補正する構成においても、用紙が斜行している場合は、幅方向の位置ずれ補正をすることで、用紙の先端部が下流側先端検知センサに到達するタイミングが異なるので、目標位置への搬送タイミングも変動することになる。
また、上述の実施形態では、本発明に係る搬送装置の実施形態として、画像形成装置に搭載される搬送装置を例に説明したが、本発明に係る搬送装置は用紙を搬送する搬送装置に限らない。本発明に係る搬送装置は、例えば、電子基板等の被搬送媒体を搬送する搬送装置にも適用可能である。