JP7181507B2 - 三列車輪車両 - Google Patents
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Description
上記特許文献1に記載された車両においては、前輪が段差などに差し掛かると、前輪が持ち上がり易くなるようにすることはできるが、前輪が積極的に持ち上げられる訳ではないので、段差などの高さが高い場合には、前輪が段差などを乗り越すことができない。また、前輪と中央輪とを繋ぐリンクの長さや当該リンクの横方向のオフセット角を調整することにより、車両の重心位置が変化するため、車両の走行安定性が悪化し易い。
本発明によれば、前後方向に配列された前輪(16)、中央輪(18)及び後輪(20)を有する三列車輪車両(10)であって、前輪、中央輪及び後輪の少なくとも一つは横方向に隔置された一対の車輪を含む三列車輪車両が提供される。
第一の実施形態及び後述の第二の実施形態にかかる三列車輪車両10は、自走式の搬送台車として構成されており、搬送されるべき荷物(図示せず)を載置された状態にて支持する支持板12と、支持板12の下面に固定された車体フレーム14とを有している。なお、本発明の三列車輪車両は、例えば人が搭乗して移動する無人運転車両などのような車両に適用されてもよい。
各揺動アーム24は、上端部にて枢軸30により第二の枢軸線30Aの周りに前後方向に揺動可能にリーディングアーム22の前端部に連結され且つ下端部にて対応する前輪16を回転可能に支持している。図示の第一の実施形態においては、各揺動アーム24は、メインアーム24Aとサブアーム24Bとよりなっている。メインアーム24Aは、上向きに開き且つリーディングアーム22の前端部の両側に位置するヨーク状の上方部と、上方部と一体をなし且つ上方部から下方へ延在する平板状の下方部とよりなっている。枢軸30は、リーディングアーム22の前端部及びメインアーム24Aの一方に固定され、軸受又はブッシュを介してリーディングアーム22の前端部及びメインアーム24Aの他方により支持されていてよい。
各リンク機構26は、枢動リンク34と、水平リンク36と、上下リンク38とを含み、前輪16から揺動アーム24へ伝達される後方への力を上向きの力に変換してリーディングアーム22へ伝達するよう構成されている。なお、このことは後述の第二の実施形態においても同様である。
図1において、リーディングアーム22などについて枢軸を結ぶ直線は、それぞれ対応するリーディングアーム22などを直線のリンクに置換して示すスケルトン図である。このスケルトン図から解るように、揺動アーム24のサブアーム24Bは、メインアーム24Aと共働して、前輪16が走行路Xから受ける主として上向きの力をリーディングアーム22の前端部に伝達する第一の力伝達経路を構成している。
各リーディングアーム22には、枢軸28から下方へ延在する中央輪支持アーム50が一体に設けられている。中央輪支持アーム50は、下端部にて車軸52を片持ち支持し、車軸52は、横方向に延在する回転軸線52Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して中央輪18を支持している。回転軸線52Aは、第一の枢軸線28Aの下方にて横方向に延在している。中央輪18は、車軸52と一体をなすチェーンスプロケット54を有している。第一の実施形態及び後述の第二の実施形態においては、車両10が水平の走行路Xにあるときについて見て、回転軸線52Aは第一の枢軸線28Aの真下に位置している。
各後輪20は車軸56を有し、車軸56は後輪支持キャスタ58により横方向に延在する回転軸線56Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。後輪支持キャスタ58は、主要部が対応する後輪20の両側に位置する下向きに開いたヨーク状をなし、車軸56よりも前方の上端部にてトレーリングアーム60の後端部に溶接などにより一体的に連結されている。トレーリングアーム60の前端部は、車軸62を片持ち支持し、車軸62は、車体フレーム14により横方向に延在する枢軸線62Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。トレーリングアーム60の後端部と車体フレーム14との間には、緩衝用の圧縮コイルばね64が弾装されている。後輪20は、車軸58と一体をなすチェーンスプロケット66を有している。
車体フレーム14には、左中央輪18CL及び左後輪20RLを駆動するための電動機68L及び右中央輪18CR及び右後輪20RRを駆動するための電動機68Rが取り付けられている。各電動機の出力軸には、中央輪18を駆動するためのチェーンスプロケット70C及び後輪20を駆動するためのチェーンスプロケット70Rが取り付けられている。各中央輪18のチェーンスプロケット54及び中央輪駆動用のチェーンスプロケット70Cには、チェーン72Cが巻き掛けられている。同様に、各後輪20のチェーンスプロケット66及び後輪駆動用のチェーンスプロケット70Rには、チェーン72Rが巻き掛けられている。
走行時の回転方向とは逆方向のトルクが電動機68L及び68Rによって発生されることにより、制動力が中央輪18及び後輪20に付与されてよい。更に、図1及び図2には示されていない制動装置が設けられ、前輪16、中央輪18及び後輪20の全て又は一部の左右輪に制動装置によって制動力が付与されるようになっていてもよい。
以上の説明から解るように、第一の実施形態及び後述の第二の実施形態においては、前輪16は従動輪であり、中央輪18及び後輪20は駆動輪である。電動機68L及び68Rの出力が同一になるよう制御されるときには、左右の中央輪18及び後輪20の駆動力は同一であるので、車両10は直進にて前進又は後進する。
図3に示されているように、車両10が例えば一般道から歩道へ移行して走行する際のように、前輪16が段差Yに到達し、段差の角Zに押し付けられると、角Zにおける法線80に垂直な外力Fwfが前輪16に作用し、外力Fwfは前輪を介して車軸32へ伝達される。よって、車軸32には外力Fwfの垂直成分Fwfvが上向きの力として作用すると共に、外力Fwfの水平成分Fwfhが後方への力として作用する。外力Fwf、従って垂直成分、即ち上向きの力Fwfv及び水平成分、即ち後方への力Fwfhは、車両10の駆動力が高いほど大きくなる。段差Yの高さが高くなるほど、上向きの力Fwfvが小さくなり、後方への力Fwfhが大きくなる。段差Yの高さが前輪16の半径以上になると、上向きの力Fwfvは0になり、後方への力Fwfhは外力Fwfと等しい値になる。
前輪16が段差Yに乗り上げる際には、上述のように車軸32には上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用するので、図2に示されているように、車軸32は上方且つ後方へ移動しようとする。よって、上向きの力Fwfvが上述の第一の力伝達経路を経てリーディングアーム22の前端部に伝達されるので、リーディングアーム22は枢軸線28Aの周りに上方へ枢動せしめられる。また、後方への力Fwfhが上述の第二の力伝達経路を経てリーディングアーム22の中間部に伝達されるので、このことによってもリーディングアーム22は枢軸線28Aの周りに上方へ枢動せしめられる。
車両10が走行し、中央輪18が段差Yに乗り上げる状況になると、中央輪18の車軸52に後方への力Fwfhが作用し、リーディングアーム22及び中央輪支持アーム50は、枢軸線28Aの周りに図1及び図2で見て反時計回り方向のモーメントを受ける。よって、リーディングアーム22は揺動アーム24及び前輪16を下方へ押し下げようとするが、前輪16は既に段差Yに乗り上げた状況にあり、降下しないので、モーメントの反力により中央輪18が持ち上げられる。従って、中央輪18も段差Yに容易に乗り上げることができる。なお、前輪16が段差ではなく突起などを乗り越して中央輪18及び後輪20と同一の高さ位置にある場合にも、前輪降下しないので、モーメントの反力により中央輪18が持ち上げられる。
車両10が更に走行し、前輪16及び中央輪18が既に段差Yに乗り上げた状況になると、車両10の重心が中央輪18の回転軸線52A上又はそれより前方にあるときには、車両10は水平姿勢になる。よって、後輪18は走行路Xから浮き上がるので、容易に段差Yに乗り上げることができる。なお、後輪20を支持する後輪支持キャスタ58はトレーリングアーム60により支持されている。よつて、後輪18が前輪16及び中央輪18と同一の高さ位置にあって突起などに乗り上げる場合にも、トレーリングアーム60が前端の周りに上方へ枢動することにより、後輪18は突起などに容易に乗り上げることができる。
前輪16が段差Yを乗り下げる際には、図2において破線にて示されているように、前輪16はリバウンドし、リーディングアーム22及び中央輪支持アーム50は、枢軸線28Aの周りに図1及び図2で見て反時計回り方向へ枢動する。しかし、中央輪18の高さは実質的に変化しないので、中央輪18及び後輪20は段差Yに接地した状態を維持する。よって、前輪16は容易に段差Yを乗り下げることができ、車両10は支持板12が水平姿勢を維持した状態で走行を継続することができる。
中央輪18が段差Yを乗り下げる際には、中央輪18の高さが漸次低下するので、支持板12が前下がりになろうとする。よって、リーディングアーム22は前輪16から揺動アーム24を介して上向きの力を受ける。しかし、揺動アーム24が枢軸線30Aの周りに図1及び図2で見て時計回り方向のモーメントを受け、このモーメントは第二の力伝達経路を経てリーディングアーム22に下向きの力を及ぼす。よって、リーディングアーム22は実質的に枢動しない。従って、支持板12が急激に前下がりになることなく、中央輪18は容易に段差Yを乗り下げることができる。
前輪16及び中央輪18の段差乗り下げが完了し、後輪20のみが段差Y上にあるときには、トレーリングアーム60が枢軸線62Aの周りに上方へ枢動した状態になり、これにより後輪20はバウンド状態になる。よって、トレーリングアーム60は、車両10の水平走行時の位置へ戻るよう、圧縮コイルばね64によって枢軸線62Aの周りに下方へ付勢される。従って、後輪20が段差Yを乗り下げる際には、後輪20が段差Yの角Zの周りに転動しながら下降し、トレーリングアーム60は、枢軸線62Aの周りに下方へ枢動するので、後輪20は容易に段差Yを乗り下げることができる。
図4及び図5に示された第二の実施形態にかかる三列車輪車両10も、それぞれ横方向に隔置された一対のリーディングアーム22と、一対の揺動アーム24と、対応するリーディングアームと揺動アームとの間に配設された一対のリンク機構26と、を有している。この実施形態においても、各リーディングアーム22は、後端部にて枢軸28により第一の枢軸線28Aの周りに上下方向に枢動可能に車体フレーム14に連結されている。なお、図4及び図5において、図1及び図2に示された部材に対応する部材には、図1及び図2において付された符号と同一の符号が付されている。
以上の説明から解るように、上述の第一及び第二の実施形態によれば、前輪16が段差Yから受ける上向きの力Fwfvは、上述の第一の力伝達経路を経てリーディングアーム22の前端部に伝達される。また、前輪16が段差Yから受ける後方への力Fwfhは、リンク機構26を含む上述の第二の力伝達経路を経て上向きの力に変換されてリーディングアーム22の中間部に伝達される。よって、前述のように構成されたリンク機構26が設けられていない場合に比して、リーディングアーム22を後端部の周りに上方へ効率的に枢動させることができるので、揺動アーム24を介して前輪16を上方へ積極的に移動させることができる。従って、前輪が段差Yなどから受ける上向きの力だけでなく後方への力を有効に利用して前輪を上方へ移動させることができるので、前輪の段差などへの乗り上げを容易に行わせることができる。
Claims (1)
- 前後方向に配列された前輪、中央輪及び後輪を有する三列車輪車両であって、前記前輪、前記中央輪及び前記後輪の少なくとも一つは横方向に隔置された一対の車輪を含む三列車輪車両において、後端部にて第一の枢軸線の周りに上下方向に枢動可能に車体に連結されたリーディングアームと、第二の枢軸線の周りに前後方向に揺動可能に前記リーディングアームの前端部に連結され且つ下端部にて前記前輪を回転可能に支持する揺動アームと、前記リーディングアームと前記揺動アームとの間に配設されたリンク機構と、を有し、前記リンク機構は、横方向に延在する第三の枢軸線の周りに枢動可能に前記車体に枢支された枢動リンクと、前端部にて前記揺動アームに枢着され且つ後端部にて前記第三の枢軸線から上下方向に隔置された第一の枢点において前記枢動リンクに枢着された水平リンクと、一端にて前記第三の枢軸線から後方に隔置された第二の枢点において前記枢動リンクに枢着され且つ他端にて前記第一の枢軸線よりも前方側において前記リーディングアームに枢着された上下リンクとを含み、前記前輪から前記揺動アームへ伝達される後方への力を上向きの力に変換して前記リーディングアームへ伝達するよう構成されていることを特徴とする三列車輪車両。
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