JP2021142963A - 三列車輪車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両を前上がりに傾斜させることにより、前輪が上昇して段差などへ容易に乗り上げることができるよう改良された三列車輪車両を提供する。【解決手段】前後方向に配列された前輪16、中央輪18及び後輪20を有する三列車輪車両10。車両は、第一の枢軸線30Aの周りに前後方向に揺動可能に車体14に連結され且つ下端部にて前輪を回転可能に支持する前輪支持アーム24と、第二の枢軸線34Aの周りに上下方向に枢動可能に車体に連結され中央輪を回転可能に支持する中央輪支持アーム26と、前輪支持アームの揺動を中央輪支持アームへ伝達する運動伝達リンク50と、を有し、運動伝達リンクは、前輪が後方へ移動する方向の第一の枢軸線の周りの前輪支持アームの揺動を、中央輪が下降する方向への第二の枢軸線の周りの枢動に変換して中央輪支持アームへ伝達するよう構成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、前輪、中央輪及び後輪を有し、前輪、中央輪及び後輪の少なくとも一つは横方向に隔置された一対の車輪を含む三列車輪車両に係る。
自走式の車両として、不整地、段差などにおける踏破性に優れた種々の特殊車両が知られている。車両が不整地を走行するためには、自動車などの一般的な車両に比して車輪が突起などを乗り越す性能が優れている必要がある。また、荷物を搬送する自走式の台車のような車両も、一般道から歩道に乗り上げたりする場合のように、車輪が段差に乗り上げる性能が優れている必要がある。
突起などの乗り越しや段差への乗り上げを容易に行わせるための手段として、前輪が突起、段差などに差し掛かると、前輪を上昇させることが考えられる。例えば、下記の特許文献1には、前輪、中央輪及び後輪を有する車両であって、前輪と中央輪とを繋ぐリンクの長さや当該リンクの横方向のオフセット角を調整することにより、前輪が持ち上がり易くし、これにより前輪が突起などの乗り越しや段差への乗り上げを容易に行えるよう構成された車両が記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載された車両においては、前輪が段差などに差し掛かると、前輪が持ち上がり易くなるようにすることはできるが、前輪が積極的に持ち上げられる訳ではないので、段差などの高さが高い場合には、前輪が段差などを乗り越すことができない。また、前輪と中央輪とを繋ぐリンクの長さや当該リンクの横方向のオフセット角を調整することにより、車両の重心位置が変化するため、車両の走行安定性が悪化し易い。
上記特許文献1に記載された車両においては、前輪が段差などに差し掛かると、前輪が持ち上がり易くなるようにすることはできるが、前輪が積極的に持ち上げられる訳ではないので、段差などの高さが高い場合には、前輪が段差などを乗り越すことができない。また、前輪と中央輪とを繋ぐリンクの長さや当該リンクの横方向のオフセット角を調整することにより、車両の重心位置が変化するため、車両の走行安定性が悪化し易い。
本発明の主要な課題は、前輪が段差などに到達し後方へ移動することを利用して中央輪を下降させ、車両を前上がりに傾斜させることにより、前輪が上昇して段差などへ容易に乗り上げることができるよう改良された三列車輪車両を提供することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、前後方向に配列された前輪(16)、中央輪(18)及び後輪(20)を有する三列車輪車両(10)であって、前輪、中央輪及び後輪の少なくとも一つは横方向に隔置された一対の車輪を含む三列車輪車両が提供される。
三列車輪車両は、第一の枢軸線(30A)の周りに前後方向に揺動可能に車体(14)に連結され且つ下端部にて前輪を回転可能に支持する前輪支持アーム(24)と、第二の枢軸線(34A)の周りに上下方向に枢動可能に車体に連結され中央輪を回転可能に支持する中央輪支持アーム(26)と、前輪支持アームの揺動を中央輪支持アームへ伝達する運動伝達リンク(50)と、を有している。運動伝達リンクは、前輪が後方へ移動する方向の第一の枢軸線の周りの前輪支持アームの揺動を、中央輪が下降する方向への第二の枢軸線の周りの枢動に変換して中央輪支持アームへ伝達するよう構成されている。
前輪が段差などに到達すると、前輪は段差などから上向きの力だけでなく後方への力を受ける。前輪は、第一の枢軸線の周りに前後方向に揺動可能に車体に連結された前輪支持アームの下端部に回転可能に支持されているので、後方への力によって後方へ移動され、前輪支持アームは前輪が後方へ移動する方向へ第一の枢軸線の周りに揺動する。前輪が後方へ移動する方向の第一の枢軸線の周りの前輪支持アームの揺動は、運動伝達リンクにより、中央輪が下降する方向への第二の枢軸線の周りの枢動に変換されて中央輪支持アームへ伝達される。
前輪が段差などから上向きの力も受ける状況にて中央輪が下降すると、車両は前上がりに傾斜するので、前輪が上昇する。よって、上記の構成によれば、前輪が段差などに到達すると、前輪は段差などへ容易に乗り上げることができる
なお、前輪が段差などへ乗り上げる際に前輪支持アーム、中央輪支持アーム及び運動伝達リンクが枢動しても、車両の重心は実質的に前後方向にも横方向にも変化しないので、車両の走行安定性が悪化することはない。
本願において、「前」、「後」、「前後」、「前方」、「後方」、「横方向」などの部材間の位置関係及び方向を示す用語は、特に断らない限り、全て車両についての前後、前後方向及び横方向を意味する。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられた符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第一の実施形態]
第一の実施形態及び後述の他の実施形態にかかる三列車輪車両10は、自走式の搬送台車として構成されており、搬送されるべき荷物(図示せず)を載置された状態にて支持する支持板12と、支持板12の下面に固定された車体フレーム14とを有している。なお、本発明の三列車輪車両は、例えば人が搭乗して移動する無人運転車両などのような車両に適用されてもよい。
第一の実施形態及び後述の他の実施形態にかかる三列車輪車両10は、自走式の搬送台車として構成されており、搬送されるべき荷物(図示せず)を載置された状態にて支持する支持板12と、支持板12の下面に固定された車体フレーム14とを有している。なお、本発明の三列車輪車両は、例えば人が搭乗して移動する無人運転車両などのような車両に適用されてもよい。
図1に示されているように、車両10は、それぞれ横方向に隔置された一対の前輪16FL及び16FR、一対の中央輪18CL及び18CR及び一対の後輪20RL及び20RRを有し、これらの車輪はそれぞれ前方車輪列、中央車輪列及び後方車輪列を構成している。本明細書においては、必要に応じて前輪16FL及び16FR、中央輪18CL及び18CR及び後輪20RL及び20RRをそれぞれ前輪16、中央輪18及び後輪20と総称する。図1及び図2には示されていないが、前輪16及び後輪20は、前後方向だけでなく、横方向及び斜め前後方向にも移動可能なオムニホイールである。中央輪18は、回転軸と一体をなすホイールと、ホイールのリム部に支持された中空又は中実のタイヤとよりなっていてよい。なお、前輪16及び後輪20も、中央輪18と同様にホイールとタイヤとよりなり、転動方向を変化し得るよう支持されていてもよい。
第一の実施形態においては、車両10は、それぞれ横方向に隔置された一対の前輪支持アーム24と、一対の中央輪支持アーム26と、一対の後輪支持アーム28と、を有している。このことは、後述の第二乃至第五の実施形態においても同様である。更に、後述の第二乃至第六の実施形態を示す図4乃至図12において、図1及び図2に示された部材に対応する部材には、図1及び図2において付された符号と同一の符号が付されている。
<前輪>
各前輪支持アーム24は、上端部にて枢軸30により第一の枢軸線30Aの周りに前後方向に揺動可能に車体フレーム14に連結され且つ下端部にて対応する前輪16を回転可能に支持している。図示の第一の実施形態においては、各前輪支持アーム24は、メインアーム24Aとサブアーム24Bとよりなっている。メインアーム24Aは、上向きに開き且つ車体フレーム14の両側に位置するヨーク状の上方部と、上方部と一体をなし且つ上方部から下方へ延在する平板状の下方部とよりなっている。枢軸30は、車体フレーム14及びメインアーム24Aの一方に固定され、軸受又はブッシュを介して車体フレーム14及びメインアーム24Aの他方により支持されていてよい。メインアーム24Aの前端部と支持板12との間には、緩衝用の圧縮コイルばね31が弾装されている。
各前輪支持アーム24は、上端部にて枢軸30により第一の枢軸線30Aの周りに前後方向に揺動可能に車体フレーム14に連結され且つ下端部にて対応する前輪16を回転可能に支持している。図示の第一の実施形態においては、各前輪支持アーム24は、メインアーム24Aとサブアーム24Bとよりなっている。メインアーム24Aは、上向きに開き且つ車体フレーム14の両側に位置するヨーク状の上方部と、上方部と一体をなし且つ上方部から下方へ延在する平板状の下方部とよりなっている。枢軸30は、車体フレーム14及びメインアーム24Aの一方に固定され、軸受又はブッシュを介して車体フレーム14及びメインアーム24Aの他方により支持されていてよい。メインアーム24Aの前端部と支持板12との間には、緩衝用の圧縮コイルばね31が弾装されている。
サブアーム24Bは、主要部が対応する前輪16の両側に位置する下向きに開いたヨーク状をなし、上端部にてメインアーム24Aに溶接などにより一体的に連結されている。前輪16は車軸32を有し、サブアーム24Bは、下端部にて車軸32を回転軸線32Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持している。回転軸線32Aは、第一の枢軸線30Aに対し前方且つ下方にて横方向に延在している。
<中央輪>
第一の実施形態においては、中央輪支持アーム26は、前端部にて枢軸34により第二の枢軸線34Aの周りに上下方向に枢動可能に車体フレーム14に連結されたトレーリングアームである。中央輪18は車軸36を有し、中央輪支持アーム26は、後端部にて車軸36を回転軸線36Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持している。回転軸線36Aは、第二の枢軸線34Aに対し後方にて横方向に延在している。
第一の実施形態においては、中央輪支持アーム26は、前端部にて枢軸34により第二の枢軸線34Aの周りに上下方向に枢動可能に車体フレーム14に連結されたトレーリングアームである。中央輪18は車軸36を有し、中央輪支持アーム26は、後端部にて車軸36を回転軸線36Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持している。回転軸線36Aは、第二の枢軸線34Aに対し後方にて横方向に延在している。
<後輪>
各後輪20は車軸38を有し、車軸38は後輪支持キャスタ40により横方向に延在する回転軸線38Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。後輪支持キャスタ40は、主要部が対応する後輪20の両側に位置する下向きに開いたヨーク状をなし、車軸38よりも前方の上端部にてトレーリングアーム42の後端部に溶接などにより一体的に連結されている。トレーリングアーム42の前端部は、枢軸44を片持ち支持し、枢軸44は、車体フレーム14により横方向に延在する枢軸線44Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。
各後輪20は車軸38を有し、車軸38は後輪支持キャスタ40により横方向に延在する回転軸線38Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。後輪支持キャスタ40は、主要部が対応する後輪20の両側に位置する下向きに開いたヨーク状をなし、車軸38よりも前方の上端部にてトレーリングアーム42の後端部に溶接などにより一体的に連結されている。トレーリングアーム42の前端部は、枢軸44を片持ち支持し、枢軸44は、車体フレーム14により横方向に延在する枢軸線44Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。
よって、後輪支持キャスタ40及びトレーリングアーム42は、互いに共働して後輪20を回転軸線38Aの周りに回転可能に支持する後輪支持アーム28として機能する。トレーリングアーム42の後端部と支持板12との間には、緩衝用の圧縮コイルばね46が弾装されている。
なお、第一の実施形態及び後述の他の実施形態においては、前輪16の第一の枢軸線30Aと中央輪18の回転軸線36Aとの間の前後方向の距離は、中央輪18の回転軸線36Aと後輪20の回転軸線38Aとの間の前後方向の距離よりも小さいことが好ましい。。また、車両10の全体の重心は、中央輪18の回転軸線36Aと同一の前後方向位置又はそれよりも後方にあることが好ましい。
<運動伝達リンク>
前輪支持アーム24の揺動を中央輪支持アーム26へ伝達し、中央輪支持アーム26の揺動を前輪支持アーム24へ伝達する運動伝達リンク50が設けられている。運動伝達リンク50は、前端部にて枢軸52により枢軸線52Aの周りに枢動可能にメインアーム24Aの下端延長部24LEに連結され、後端部にて枢軸54により枢軸線54Aの周りに枢動可能に中央輪支持アーム26の前端延長部26FEに連結されている。車両10が水平平坦路にある場合について見て、枢軸線52Aは第一の枢軸線30Aよりも下方且つ僅かに後方に位置し、枢軸線54Aは第二の枢軸線34Aよりも上方且つ僅かに前方に位置している。
前輪支持アーム24の揺動を中央輪支持アーム26へ伝達し、中央輪支持アーム26の揺動を前輪支持アーム24へ伝達する運動伝達リンク50が設けられている。運動伝達リンク50は、前端部にて枢軸52により枢軸線52Aの周りに枢動可能にメインアーム24Aの下端延長部24LEに連結され、後端部にて枢軸54により枢軸線54Aの周りに枢動可能に中央輪支持アーム26の前端延長部26FEに連結されている。車両10が水平平坦路にある場合について見て、枢軸線52Aは第一の枢軸線30Aよりも下方且つ僅かに後方に位置し、枢軸線54Aは第二の枢軸線34Aよりも上方且つ僅かに前方に位置している。
後に詳細に説明するように、運動伝達リンク50は、前輪16が後方へ移動する方向の第一の枢軸線30Aの周りの前輪支持アーム24の揺動を、中央輪18が下降する方向への第二の枢軸線34Aの周りの枢動に変換して中央輪支持アーム26へ伝達する。
<駆動力>
車体フレーム14には、それぞれ左右の中央輪18を駆動するための電動機58が取り付けられている。各電動機の出力軸には、中央輪18を駆動するためのチェーンスプロケット60が取り付けられている。左右の中央輪18は、車軸36と一体をなすチェーンスプロケット62を有している。各チェーンスプロケット60及び62には、チェーン64が巻き掛けられている。
車体フレーム14には、それぞれ左右の中央輪18を駆動するための電動機58が取り付けられている。各電動機の出力軸には、中央輪18を駆動するためのチェーンスプロケット60が取り付けられている。左右の中央輪18は、車軸36と一体をなすチェーンスプロケット62を有している。各チェーンスプロケット60及び62には、チェーン64が巻き掛けられている。
後に詳細に説明するように、中央輪18がバウンド、リバウンドすると、中央輪の回転軸線36Aは、第二の枢軸線34Aの周りに揺動するので、チェーンスプロケット60及び62の間の距離が変化する。よって、図1及び図2には示されていないが、チェーンスプロケットの間の距離の変化に起因するチェーン64の張力の変動が低減されるよう、これらのチェーンにはテンショナーが設けられている。
<制動力>
走行時の回転方向とは逆方向のトルクが電動機58によって発生されることにより、制動力が中央輪18に付与されてよい。更に、図1及び図2には示されていない制動装置が設けられ、前輪16、中央輪18及び後輪20の全て又は一部の左右輪に制動装置によって制動力が付与されるようになっていてもよい。
<走行>
走行時の回転方向とは逆方向のトルクが電動機58によって発生されることにより、制動力が中央輪18に付与されてよい。更に、図1及び図2には示されていない制動装置が設けられ、前輪16、中央輪18及び後輪20の全て又は一部の左右輪に制動装置によって制動力が付与されるようになっていてもよい。
<走行>
以上の説明から解るように、第一の実施形態の実施形態においては、前輪16及び後輪20は従動輪であり、中央輪18は駆動輪である。電動機58の出力が同一になるよう制御されるときには、左右の中央輪18の駆動力は同一であるので、車両10は直進にて前進又は後進する。
これに対し、左側の電動機58の出力が右側の電動機58の出力よりも高くなるよう制御されると、左側の中央輪18の駆動力が右側の中央輪18の駆動力よりも高くなり、車両10は右旋回にて前進又は左旋回にて後進する。逆に、右側の電動機58の出力が左側の電動機58の出力よりも高くなるよう制御されると、右側の中央輪18の駆動力が左側の中央輪18の駆動力よりも高くなり、車両10は左旋回にて前進又は右旋回にて後進する。
更に、左側の中央輪18が前進駆動され、右側の中央輪18が後進駆動されると、車両10は小旋回半径にて右旋回し、或いは実質的に移動せずに右旋回する。逆に、右側の中央輪18が前進駆動され、左側の中央輪18が後進駆動されると、車両10は小旋回半径にて左旋回し、或いは実質的に移動せずに左旋回する。
<前輪が段差から受ける力>
図3に示されているように、車両10が例えば一般道から歩道へ移行して走行する際のように、前輪16が路面X上を移動して段差Yに到達し、段差の角Zに押し付けられると、角Zにおける法線68に垂直な外力Fwfが前輪16に作用し、外力Fwfは前輪を介して車軸32へ伝達される。よって、車軸32には外力Fwfの垂直成分Fwfvが上向きの力として作用すると共に、外力Fwfの水平成分Fwfhが後方への力として作用する。外力Fwf、従って垂直成分、即ち上向きの力Fwfv及び水平成分、即ち後方への力Fwfhは、車両10の駆動力が高いほど大きくなる。段差Yの高さが高くなるほど、上向きの力Fwfvが小さくなり、後方への力Fwfhが大きくなる。段差Yの高さが前輪16の半径以上になると、上向きの力Fwfvは0になり、後方への力Fwfhは外力Fwfと等しい値になる。
図3に示されているように、車両10が例えば一般道から歩道へ移行して走行する際のように、前輪16が路面X上を移動して段差Yに到達し、段差の角Zに押し付けられると、角Zにおける法線68に垂直な外力Fwfが前輪16に作用し、外力Fwfは前輪を介して車軸32へ伝達される。よって、車軸32には外力Fwfの垂直成分Fwfvが上向きの力として作用すると共に、外力Fwfの水平成分Fwfhが後方への力として作用する。外力Fwf、従って垂直成分、即ち上向きの力Fwfv及び水平成分、即ち後方への力Fwfhは、車両10の駆動力が高いほど大きくなる。段差Yの高さが高くなるほど、上向きの力Fwfvが小さくなり、後方への力Fwfhが大きくなる。段差Yの高さが前輪16の半径以上になると、上向きの力Fwfvは0になり、後方への力Fwfhは外力Fwfと等しい値になる。
<前輪の段差乗り上げ>
前輪16が段差Yに乗り上げる際には、上述のように外力Fwfが前輪16に作用し、車軸32には上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。図には示されていないが、段差Yの高さが小さく、外力Fwfの傾斜角が前輪16の回転軸線32Aと第一の枢軸線30Aとを結ぶ直線の傾斜角よりも大きいときには、回転軸線32Aは第一の枢軸線30Aの周りに上方へ揺動する。よって、前輪16は上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
前輪16が段差Yに乗り上げる際には、上述のように外力Fwfが前輪16に作用し、車軸32には上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。図には示されていないが、段差Yの高さが小さく、外力Fwfの傾斜角が前輪16の回転軸線32Aと第一の枢軸線30Aとを結ぶ直線の傾斜角よりも大きいときには、回転軸線32Aは第一の枢軸線30Aの周りに上方へ揺動する。よって、前輪16は上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
なお、外力Fwfの傾斜角が前輪16の回転軸線32Aと第一の枢軸線30Aとを結ぶ直線の傾斜角と同一であるときには、回転軸線32Aは第一の枢軸線30Aの周りに上方へ揺動しない。しかし、車両10の駆動力によって前輪16が段差Yに対し前方へ移動せしめられるので、前輪16は回転軸線32Aの周りに前進方向へ転動し、段差Yに乗り上げる。
段差Yの高さが大きく、外力Fwfの傾斜角が前輪16の回転軸線32Aと第一の枢軸線30Aとを結ぶ直線の傾斜角よりも小さいときには、図2に示されているように、回転軸線32Aは第一の枢軸線30Aの周りに後方へ揺動する。よって、前輪支持アーム24は第一の枢軸線30Aの周りに反時計回り方向へ枢動する。なお、本明細書において、「時計回り方向」及び「反時計回り方向」は、特に断らない限り、車両10を左方から横方向に見た場合の回転方向である。
前輪支持アーム24の枢動は、運動伝達リンク50によって中央輪支持アーム26へ伝達され、中央輪支持アーム26は回転軸線36Aの周りに時計回り方向へ枢動せしめられる。よって、車軸36回転軸線34Aの周りに時計回り方向へ揺動し、中央輪18が車体フレーム14などに対し下方へ変位する。その結果、車両10は前上がりに傾斜し、前輪16が上昇することにより段差Yに乗り上げる。よって、段差Yの高さが大きくても、前輪16は段差に乗り上げることができる。
<中央輪の段差乗り上げ>
車両10が走行し、中央輪18が段差Yに乗り上げる状況になると、図3に示された前輪16の場合と同様に、中央輪18の車軸36に上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。中央輪支持アーム26は、第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動するので、中央輪18は車体フレーム14などに対し上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
車両10が走行し、中央輪18が段差Yに乗り上げる状況になると、図3に示された前輪16の場合と同様に、中央輪18の車軸36に上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。中央輪支持アーム26は、第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動するので、中央輪18は車体フレーム14などに対し上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
なお、中央輪支持アーム26が第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動すると、その枢動が運動伝達リンク50によって前輪支持アーム24へ伝達され、前輪支持アーム24は第一の枢軸線30Aの周りに時計回り方向へ枢動せしめられる。よって、前輪16は上昇するが、前輪16は既に段差Yに乗り上げた状況にあるので、前輪支持アーム24の枢動及び前輪16の上昇によって中央輪18の段差乗り上げが阻害されることはない。
<後輪の段差乗り上げ>
車両10が更に走行し、前輪16及び中央輪18が既に段差Yに乗り上げた状態にて後輪20が段差に乗り上げる状況になると、後輪20は車両10が前上がりの姿勢にて段差に乗り上げる。その場合にも、車両10が水平姿勢にある場合と同様に、後輪20の車軸38に上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。よって、トレーリングアーム42及び後輪支持キャスタ40は、枢軸44の枢軸線44Aの周りに反時計回り方向へ枢動するので、後輪20は車体フレーム14などに対し上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
車両10が更に走行し、前輪16及び中央輪18が既に段差Yに乗り上げた状態にて後輪20が段差に乗り上げる状況になると、後輪20は車両10が前上がりの姿勢にて段差に乗り上げる。その場合にも、車両10が水平姿勢にある場合と同様に、後輪20の車軸38に上向きの力Fwfv及び後方への力Fwfhが作用する。よって、トレーリングアーム42及び後輪支持キャスタ40は、枢軸44の枢軸線44Aの周りに反時計回り方向へ枢動するので、後輪20は車体フレーム14などに対し上方へ変位し、段差Yに乗り上げる。
<前輪の段差乗り下げ>
前輪16が段差Yを通過して乗り下げる際には、中央輪18及び後輪20は段差上にあるので、車両10の前端部がオーパハング状態になって前輪16は段差Yを通過する。よって、前輪は段差Yを通過しても下降せず、段差通過後の路面Xから浮き上がった状態になる。
前輪16が段差Yを通過して乗り下げる際には、中央輪18及び後輪20は段差上にあるので、車両10の前端部がオーパハング状態になって前輪16は段差Yを通過する。よって、前輪は段差Yを通過しても下降せず、段差通過後の路面Xから浮き上がった状態になる。
なお、前輪16が路面Xから浮き上がった状態になると、前輪は重力の作用により車体フレーム14などに対し下降しようとする。前輪が下降するためには、前輪支持アーム24などが図2において破線にて示されているように変位しなければならず、中央輪18が下降しなければならない。しかし、中央輪18は後輪20と共に段差上にあり、下降することができないので、前輪16は車体フレーム14などに対し下降しない。
<中央輪の段差乗り下げ>
中央輪18が段差Yを乗り下げる際には、中央輪は段差の角Zの周りに転動しながら下降するので、車両10は前下がりに傾斜する。車両の傾斜角は前輪16が路面Xに接地するまで増大し、その後減少する。
中央輪18が段差Yを乗り下げる際には、中央輪は段差の角Zの周りに転動しながら下降するので、車両10は前下がりに傾斜する。車両の傾斜角は前輪16が路面Xに接地するまで増大し、その後減少する。
中央輪18が転動しながら下降する際には、中央輪支持アーム26は、第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向のモーメントを受ける。しかし、中央輪支持アーム26が第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動し、その枢動が運動伝達リンク50によって前輪支持アーム24へ伝達されると、前輪支持アームが第一の枢軸線30Aの周りに時計回り方向へ枢動する。よって、圧縮コイルばね31が圧縮され、ばね力が増大されるので、前輪支持アーム24及び中央輪支持アーム26の枢動は抑制され、中央輪18が車体フレーム14などに対し上昇することが抑制される。
<後輪の段差乗り下げ>
前輪16及び中央輪18の段差乗り下げが完了し、後輪20のみが段差Y上にあるときには、トレーリングアーム42が枢軸線44Aの周りに上方へ枢動した状態になり、これにより後輪20はバウンド状態になる。よって、トレーリングアーム42は、車両10の水平走行時の位置へ戻るよう、圧縮コイルばね46によって枢軸線44Aの周りに下方へ付勢される。従って、後輪20が段差Yを乗り下げる際には、後輪20が段差Yの角Zの周りに転動しながら下降し、トレーリングアーム42は、枢軸線44Aの周りに下方へ枢動するので、後輪20は容易に段差Yを乗り下げることができる。
前輪16及び中央輪18の段差乗り下げが完了し、後輪20のみが段差Y上にあるときには、トレーリングアーム42が枢軸線44Aの周りに上方へ枢動した状態になり、これにより後輪20はバウンド状態になる。よって、トレーリングアーム42は、車両10の水平走行時の位置へ戻るよう、圧縮コイルばね46によって枢軸線44Aの周りに下方へ付勢される。従って、後輪20が段差Yを乗り下げる際には、後輪20が段差Yの角Zの周りに転動しながら下降し、トレーリングアーム42は、枢軸線44Aの周りに下方へ枢動するので、後輪20は容易に段差Yを乗り下げることができる。
[第二の実施形態]
図4に示された第二の実施形態においては、第一の実施形態における運動伝達リンク50は設けられていない。中央輪支持アーム26の前端延長部26FEには支持軸70が固定されており、支持軸70は第一の枢軸線30A及び第二の枢軸線34Aと平行な回転軸線の周りに回転可能にローラ72を支持している。ローラ72の回転軸線は第二の枢軸線34Aに対し前方且つ上方に位置している。前輪支持アーム24のメインアーム24Aの下端延長部24LEには、その先端へ向けて下方且つ後方へ傾斜する平面状の当接面74が設けられている。
図4に示された第二の実施形態においては、第一の実施形態における運動伝達リンク50は設けられていない。中央輪支持アーム26の前端延長部26FEには支持軸70が固定されており、支持軸70は第一の枢軸線30A及び第二の枢軸線34Aと平行な回転軸線の周りに回転可能にローラ72を支持している。ローラ72の回転軸線は第二の枢軸線34Aに対し前方且つ上方に位置している。前輪支持アーム24のメインアーム24Aの下端延長部24LEには、その先端へ向けて下方且つ後方へ傾斜する平面状の当接面74が設けられている。
中央輪支持アーム26は車両10に作用する重力により第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向に付勢されているので、ローラ72は当接面74に押し付けられている。よって、前輪支持アーム24及び中央輪支持アーム26がそれぞれ第一の枢軸線30A及び第二の枢軸線34Aの周りに枢動する際には、ローラ72は当接面74に当接して当接面上を転動する。
従って、ローラ72及び当接面74は、互いに共働して第一の実施形態における運動伝達リンク50と同様に運動伝達リンク76として機能し、前輪支持アーム24の揺動を中央輪支持アーム26へ伝達し、中央輪支持アーム26の揺動を前輪支持アーム24へ伝達する。第二の実施形態の他の点は、上述の第一の実施形態と同様に構成されている。
[第三の実施形態]
図5及び図6に示された第三の実施形態においては、前輪支持アーム24は上端延長部24UEを有し、上端延長部24UEは第一の枢軸線30Aに対し上方且つ後方へ延在している。中央輪支持アーム26は、後端部にて枢軸34により第二の枢軸線34Aの周りに枢動可能に車体フレーム14に連結されたリーディングアームである。中央輪支持アーム26は後端延長部26REを有し、後端延長部26REは第二の枢軸線34Aに対し上方へ延在している。
図5及び図6に示された第三の実施形態においては、前輪支持アーム24は上端延長部24UEを有し、上端延長部24UEは第一の枢軸線30Aに対し上方且つ後方へ延在している。中央輪支持アーム26は、後端部にて枢軸34により第二の枢軸線34Aの周りに枢動可能に車体フレーム14に連結されたリーディングアームである。中央輪支持アーム26は後端延長部26REを有し、後端延長部26REは第二の枢軸線34Aに対し上方へ延在している。
運動伝達リンク50は、前端部にて枢軸52により枢軸線52Aの周りに枢動可能に上端延長部24UEに連結され、後端部にて枢軸54により枢軸線54Aの周りに枢動可能に後端延長部26REに連結されている。よって、図6に示されているように、前輪支持アーム24が第一の枢軸線30Aの周りに反時計回り方向へ枢動すると、その枢動が運動伝達リンク50によって中央輪支持アーム26へ伝達され、中央輪支持アームは第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動する。従って、第一の実施形態と同様に、前輪16が後方へ変位すると、中央輪18が車体フレーム14などに対し下方へ変位する。
第一の実施形態と同様に、トレーリングアーム42は、前端部にて車体フレーム14により枢軸44の枢軸線44Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。しかし、後輪支持キャスタ40は設けられておらず、後輪20の車軸38は、トレーリングアーム42の後端部により回転軸線38Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。よって、トレーリングアーム42は、後輪支持アーム28として機能する。圧縮コイルばね46は、トレーリングアーム42と車体フレーム14との間に弾装されている。
更に、電動機58の下方には、大径の中間入力チェーンスプロケット78及びこれと一体的に回転する小径の中間出力チェーンスプロケット80が設けられている。電動機58の出力軸に取り付けられたチェーンスプロケット60及び中間入力チェーンスプロケット78には、チェーン82が巻き掛けられている。
中央輪18の車軸36と一体をなすチェーンスプロケット62及び中間出力チェーンスプロケット80には、チェーン84が巻き掛けられている。後輪20は、車軸38と一体をなすチェーンスプロケット86を有している。後輪20のチェーンスプロケット86及び中間出力チェーンスプロケット80には、チェーン88が巻き掛けられている。図5及び図6には示されていないが、チェーンスプロケットの間の距離の変化に起因するチェーン84及び88の張力の変動が低減されるよう、これらのチェーンにはテンショナーが設けられている。
以上の説明から解るように、第三の実施形態においては、中央輪18及び後輪20が駆動輪である。第三の実施形態の他の点は、上述の第一及び第二の実施形態と同様に構成されている。従って、第三の実施形態によれば、上述の第一及び第二の実施形態と同様に、前輪16、中央輪18及び後輪20は、段差Yに容易に乗り上げることができると共に、段差Yを容易に乗り下げることができる。
[第四の実施形態]
図7及び図8に示された第四の実施形態においては、トレーリングアーム42は前端延長部42FEを有し、前端延長部42FEは枢軸線44Aに対し上方へ延在している。中央輪支持アーム26の後端延長部26RE及びトレーリングアーム42の前端延長部42FEは、接続リンク89により互いに接続されている。接続リンク89は、中間部にて枢軸90により枢軸線90Aの周りに枢動可能に後端延長部26REに連結され、後端部にて枢軸92により枢軸線92Aの周りに枢動可能に前端延長部42FEに連結されている。
図7及び図8に示された第四の実施形態においては、トレーリングアーム42は前端延長部42FEを有し、前端延長部42FEは枢軸線44Aに対し上方へ延在している。中央輪支持アーム26の後端延長部26RE及びトレーリングアーム42の前端延長部42FEは、接続リンク89により互いに接続されている。接続リンク89は、中間部にて枢軸90により枢軸線90Aの周りに枢動可能に後端延長部26REに連結され、後端部にて枢軸92により枢軸線92Aの周りに枢動可能に前端延長部42FEに連結されている。
運動伝達リンク50は、前端部にて枢軸52により枢軸線52Aの周りに枢動可能に前輪支持アーム24の上端延長部24UEに連結され、後端部にて枢軸94により枢軸線94Aの周りに枢動可能に接続リンク89の前端部に連結されている。第四の実施形態の他の点は、上述の第三の実施形態と同様に構成されている。
図8に示されているように、前輪支持アーム24が第一の枢軸線30Aの周りに反時計回り方向へ枢動すると、その枢動が運動伝達リンク50によって接続リンク89へ伝達され、接続リンクは前方へ移動する。その結果、中央輪支持アーム26は第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動する。
よって、第一の実施形態と同様に、前輪16が後方へ変位すると、中央輪18は車体フレーム14などに対し下方へ変位する。また、トレーリングアーム42は枢軸線44Aの周りに枢動可能に反時計回り方向へ枢動する。よって、前輪16が後方へ変位すると、後輪20は車体フレーム14などに対し上方へ変位する。
従って、前輪16が段差Yに乗り上げる際には、車両10は、下降した中央輪18の接地点の周りに、上昇した後輪20が接地するまで枢動し、第一乃至第三の実施形態の場合よりも前上がりに傾斜するので、前輪16は第一乃至第三の実施形態の場合よりも高く上昇する。よって、前輪16は第一乃至第三の実施形態の場合よりも確実に段差に乗り上げることができる。なお、この作用効果は、後述の第六の実施形態においても得られる。
また、中央輪18が段差Yに乗り上げる際には、中央輪が上昇するので、中央輪支持アーム26は第二の枢軸線34Aの周りに時計回り方向へ枢動し、その枢動が接続リンク89によってトレーリングアーム42へ伝達される。よって、トレーリングアーム42は枢軸線44Aの周りに枢動可能に時計回り方向へ枢動するので、後輪20は車体フレーム14などに対し下方へ変位する。その結果、車両10が上昇せしめられるので、中央輪18が段差Yに対し上昇する。従って、中央輪18は第三の実施形態の場合よりも確実に段差に乗り上げることができる。
[第五の実施形態]
図9及び図10に示された第五の実施形態においては、第三の実施形態と同様に、前輪支持アーム24は上端延長部24UEを有し、上端延長部24UEは第一の枢軸線30Aに対し上方且つ後方へ延在している。中央輪支持アーム26は、第一の実施形態の中央輪支持アーム26と同様に構成されており、第一の実施形態と同様に、運動伝達リンク50により前輪支持アーム24と連結されている。
図9及び図10に示された第五の実施形態においては、第三の実施形態と同様に、前輪支持アーム24は上端延長部24UEを有し、上端延長部24UEは第一の枢軸線30Aに対し上方且つ後方へ延在している。中央輪支持アーム26は、第一の実施形態の中央輪支持アーム26と同様に構成されており、第一の実施形態と同様に、運動伝達リンク50により前輪支持アーム24と連結されている。
トレーリングアーム42は、第四の実施形態のトレーリングアーム42と同様に前端延長部42FEを有し、前端延長部42FEは枢軸線44Aに対し上方へ延在している。前輪支持アーム24の上端延長部24UE及びトレーリングアーム42の前端延長部42FEは、接続リンク96により互いに接続されている。接続リンク96は、前端部にて枢軸98により枢軸線98Aの周りに枢動可能に前端延長部42FEに連結され、後端部にて枢軸100により枢軸線100Aの周りに枢動可能に前端延長部42FEに連結されている。第五の実施形態の他の点は、上述の第一の実施形態と同様に構成されている。
図10に示されているように、前輪支持アーム24が第一の枢軸線30Aの周りに反時計回り方向へ枢動すると、その枢動が運動伝達リンク50によって中央輪支持アーム26へ伝達され、中央輪支持アームは第二の枢軸線34Aの周りに反時計回り方向へ枢動する。よって、第一の実施形態と同様に、前輪16が後方へ変位すると、中央輪18は車体フレーム14などに対し下方へ変位する。
更に、前輪支持アーム24の枢動が接続リンク96によってトレーリングアーム42へ伝達され、トレーリングアームは枢軸線44Aの周りに反時計回り方向へ枢動する。よって、前輪16が後方へ変位すると、後輪20は車体フレーム14などに対し上方へ変位する。
従って、第五の実施形態によれば、上述の第四の実施形態と同様に、前輪16が段差Yに乗り上げる際には、車両10は第一乃至第三の実施形態の場合よりも前上がりに傾斜するので、前輪16は第一乃至第三の実施形態の場合よりも高く上昇する。よって、前輪16は第一乃至第三の実施形態の場合よりも確実に段差に乗り上げることができる。
[第六の実施形態]
図11及び図12に示された第六の実施形態においては、前輪支持アーム24は、第三の実施形態の前輪支持アーム24と同様に構成され、上端延長部24UEを有している。中央輪支持アーム26、トレーリングアーム42などは設けられておらず、中央輪18及び後輪20を支持する共通支持部材102が設けられている。共通支持部材102は、中央部にて車体フレーム14により枢軸104の枢軸線104Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。
図11及び図12に示された第六の実施形態においては、前輪支持アーム24は、第三の実施形態の前輪支持アーム24と同様に構成され、上端延長部24UEを有している。中央輪支持アーム26、トレーリングアーム42などは設けられておらず、中央輪18及び後輪20を支持する共通支持部材102が設けられている。共通支持部材102は、中央部にて車体フレーム14により枢軸104の枢軸線104Aの周りに枢動可能に軸受又はブッシュを介して支持されている。
共通支持部材102は、枢軸104に対し前方へ延在するリーディングアーム部102L、枢軸104に対し後方へ延在するトレーリングアーム部102T、及び枢軸104に対し上方へ延在する上端延長部102UEを有している。リーディングアーム部102Lは、前端部にて中央輪18の車軸36を回転軸線36Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持している。トレーリングアーム部102Tは、後端部にて後輪20の車軸38を回転軸線38Aの周りに回転可能に軸受又はブッシュを介して支持している。よって、トレーリングアーム部102Tは、第二の枢軸線としての枢軸線104Aの周りに枢動可能な後輪支持アーム28として機能する。
前輪支持アーム24の上端延長部24UE及び共通支持部材102の上端延長部102UEは、接続リンク106により互いに接続されている。接続リンク106は、前端部にて枢軸108により枢軸線108Aの周りに枢動可能に上端延長部24UEに連結され、後端部にて枢軸110により枢軸線110Aの周りに枢動可能に上端延長部102UEに連結されている。第六の実施形態の他の点は、上述の第一の実施形態と同様に構成されている。
更に、電動機58の出力軸に取り付けられたチェーンスプロケット60及び中央輪18の車軸36と一体をなすチェーンスプロケット62には、チェーン84が巻き掛けられている。チェーンスプロケット60及び後輪20の車軸38と一体をなすチェーンスプロケット86には、チェーン88が巻き掛けられている。図11及び図12には示されていないが、チェーンスプロケットの間の距離の変化に起因するチェーン84及び88の張力の変動が低減されるよう、これらのチェーンにはテンショナーが設けられている。第六の実施形態の他の点は、上述の第一の実施形態と同様に構成されている。
以上の説明から解るように、上述の第一乃至第五実施形態によれば、前輪16が段差などに到達し後方への力を受け後方へ移動すると、前輪支持アーム24が第一の枢軸線の周りに反時計回り方向へ揺動する。前輪支持アームの揺動は、運動伝達リンク50などにより、中央輪18が下降する方向への第二の枢軸線34Aの周りの枢動に変換されて中央輪支持アーム26へ伝達される。また、第六実施形態によれば、前輪支持アームの揺動は、接続リンク106により、中央輪18が下降する方向への枢軸線104Aの周りの枢動に変換されて共通支持部材102へ伝達される。中央輪が下降すると、車両10は前上がりに傾斜し前輪が上昇するので、前輪を段差などへ容易に乗り上げさせることができる。
特に、第四乃至第六の実施形態によれば、前輪支持アーム24の揺動が、運動伝達リンク50及び接続リンク89などにより、後輪20が上昇する方向への枢軸線44Aの周りの枢動に変換して後輪支持アーム28へ伝達される。後輪20が上昇すると、後輪が上昇しない場合に比して車両10の前上がりの傾斜角大きくなり、前輪16の上昇量が大きくなるので、第一乃至第三の実施形態に比して、前輪を段差などへ一層容易に乗り上げさせることができる。
また、上述の各実施形態によれば、左右の駆動輪は、それぞれ対応する電動機により駆動される。よって、左右の駆動輪間に駆動力差を与えることができ、また左右輪の一方に駆動力を付与し且つ左右輪の他方に制動力を付与することができ、これにより車両10を旋回させることができる。更に、駆動力差及び制動力差を制御することにより、車輪を操舵することなく車両10の旋回方向及び旋回半径を制御することができる。更に、車輪を操舵するための操舵装置は不要であるので、操舵装置が設けられる場合に比して車両10の構造を簡略化することができる。
特に、上述の第三、第四及び第六の実施形態によれば、中央輪18及び後輪20の2列の車輪が駆動輪である。よって、前輪16、中央輪18及び後輪20の何れかが段差に乗り上げる際に、中央輪18及び後輪20の一方が走行路Xから浮き上がっても、中央輪18及び後輪20の他方が駆動力を発生するので、車両10は支障なく走行することができる。
更に、上述の第三、第四及び第六の実施形態によれば、左側の中央輪及び後輪を駆動する電動機58及び右側の中央輪及び後輪を駆動する電動機58が設けられている。よって、左右の中央輪及び左右の後輪のそれぞれに専用の電動機が設けられる場合に比して、電動機の数を低減し、電動機の制御を容易にすることができる。
なお、前輪16が段差Yなどへ乗り上げる際に前輪支持アーム24、中央輪支持アーム26などが枢動しても、車両10の重心は実質的に前後方向にも横方向にも変化しないので、車両の走行安定性が悪化することはない。
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば、上述の各実施形態においては、前述のように、前輪16、中央輪18及び後輪20はそれぞれ横方向に隔置された一対の車輪よりなっている。しかし、前輪16、中央輪18及び後輪20の少なくとも一つの車輪が車両10の横方向に隔置された一対の車輪よりなっていればよい。即ち、少なくとも一つの車輪以外の車輪はそれぞれ横方向中央に配置された一つの車輪であってもよい。また、前輪16、中央輪18及び後輪20は同一の直径を有しているが、各車輪の直径は相互に異なっていてもよい。
また、上述の各実施形態においては、駆動源は電動機であるが、駆動源は電動機以外の駆動装置であってもよく、駆動力の伝達はチェーン以外の駆動力伝達手段であってよい。また、駆動輪は、電動機及び減速歯車が組み込まれたインホイールモータ式の車輪であってもよい。更に、上述の第三、第四及び第六の実施形態においては、中央輪18及び後輪20は共通の電動機により駆動されるようになっているが、中央輪18及び後輪20はそれぞれ専用の電動機により駆動されるようになっていてもよい。
また、上述の第一、第二及び第五の実施形態においては、駆動輪は中央輪18のみであるが、後輪20も駆動輪であってよい。更に、上述の各実施形態において、前輪16、中央輪18及び後輪20の全てが駆動輪であってもよい。
また、上述の各実施形態においては、車両10の旋回は、左右の駆動輪間に駆動力差を与えることにより、また左右輪の一方に駆動力を付与し且つ左右輪の他方に制動力を付与することにより行われる。しかし、車両10の旋回は、任意の駆動輪の駆動力差又は制駆動力差を制御することにより行われてよい。更に、車両10の旋回は、前輪16及び後輪20の少なくとも一方が操舵されることにより行われてもよく、任意の駆動輪の駆動力差又は制動力差が制御されると共に前輪及び後輪の少なくとも一方が操舵されることにより行われてもよい。
更に、上述の各実施形態においては、前輪16の回転軸線32Aは、前輪支持アーム24の第一の枢軸線30Aに対し前方且つ下方に位置しているが、第一の枢軸線30Aの下方又は第一の枢軸線30Aに対し後方且つ下方に位置していてもよい。
10…三列車輪車両、14…車体フレーム、16…前輪、18…中央輪、20…後輪、24…前輪支持アーム、26…中央輪支持アーム、28…後輪支持アーム、50,76,89…運動伝達リンク、58…電動機、89…接続リンク
Claims (1)
- 前後方向に配列された前輪、中央輪及び後輪を有する三列車輪車両であって、前記前輪、前記中央輪及び前記後輪の少なくとも一つは横方向に隔置された一対の車輪を含む三列車輪車両において、第一の枢軸線の周りに前後方向に揺動可能に車体に連結され且つ下端部にて前記前輪を回転可能に支持する前輪支持アームと、第二の枢軸線の周りに上下方向に枢動可能に車体に連結され前記中央輪を回転可能に支持する中央輪支持アームと、前記前輪支持アームの揺動を前記中央輪支持アームへ伝達する運動伝達リンクと、を有し、前記運動伝達リンクは、前記前輪が後方へ移動する方向の前記第一の枢軸線の周りの前記前輪支持アームの揺動を、前記中央輪が下降する方向への前記第二の枢軸線の周りの枢動に変換して前記中央輪支持アームへ伝達するよう構成されていることを特徴とする三列車輪車両。
Priority Applications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023090602A1 (ko) * | 2021-11-18 | 2023-05-25 | 네이버랩스 주식회사 | 운반로봇 |
-
2020
- 2020-03-13 JP JP2020044418A patent/JP2021142963A/ja active Pending
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WO2023090602A1 (ko) * | 2021-11-18 | 2023-05-25 | 네이버랩스 주식회사 | 운반로봇 |
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