JP7179543B2 - マスクブランク、転写用マスクおよび半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マスクブランクおよびそのマスクブランクを用いて製造された転写用マスクに関するものである。また、本発明は、上記の転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光パターンを備えたバイナリーマスクの他に、ハーフトーン型位相シフトマスクが知られている。
特許文献1には、遮光膜と表面及び裏面反射防止膜とを備えるバイナリーマスクブランクが開示されている。この特許文献1では、遮光帯からの反射に起因する、隣接ショットへ影響するフレア(Flare)や、パターンエリア内での露光量超過エラー(Dose Error)を抑制するために、遮光膜の下に接して形成され、珪素、遷移金属、酸素及び窒素を含み、膜の屈折率nが1.0~3.5、膜の消衰係数kが2.5以下、膜厚t2が5~40nmである裏面反射防止膜を備えている。そして、透明基板側からの光の入射に対する反射率(以下、裏面反射率という。)が約30%以下であり、具体的には、その実施例に示されるように、約29%や約23%となるバイナリーマスクブランクを実現している。
特許文献2には、周辺パターンの影響を受けにくい露光を行うことを意図して、透明基板11、パターン12、及びカルシウム弗化物からなる薄膜13を有するホトマスクが開示されている。パターン12は、透明基板11の第1の主表面上に形成され、遮光膜、半透明膜、位相制御膜のうち、少なくとも1つを有する。カルシウム弗化物からなる薄膜13は、透明基板11の第2の主表面に形成され、透明基板11の裏面での再反射光を抑制する反射防止膜として働く。
また、近年、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写を行う際に使用される照明システムも高度化、複雑化している。特許文献3には、基板上のマスクパターンの結像を向上させるためにリソグラフィ装置の照射源を構成する方法が開示されている。この方法は、照射源をピクセル群に分割する工程であって、各ピクセル群が照射源の瞳面に1つまたは複数の照射源ポイントを含む、工程と、各ピクセル群の偏光状態を変化させて、各ピクセル群の偏光状態の変化からもたらされる、複数のクリティカルディメンションのそれぞれに対する漸進的効果を求める工程と、求められた漸進的効果を用いて、複数のクリティカルディメンションのそれぞれに関する第1の複数の感度係数を計算する工程と、初期の照射源を選択する工程と、計算された第1の複数の感度係数を用いて、初期の照射源のピクセル群の偏光状態の変化の結果としてリソグラフィのメトリックを繰返し計算する工程であって、初期の照射源のピクセル群の偏光状態の変化が、変更された照射源を生成する工程と、繰返し計算の結果に基づいて初期の照射源を調節する工程とを含むものである。
特許第5054766号公報 特開2001-337441号公報 特開2012-74695号公報
近年、転写パターンのさらなる微細化が望まれており、露光転写を行う際に使用される照明システムも高度化、複雑化してきている。例えば、特許文献3における照明システムでは、照射源の位置や角度を最適化するように制御される。このような、複雑な照明システムにおいて、比較的短波長のArFエキシマレーザーの露光光で転写用マスクに対して露光を行う場合、その転写用マスクの透光性基板内で多重反射による迷光が生じやすくなっている。また、特許文献2におけるカルシウム弗化物からなる薄膜13を備えたホトマスクでは、基板の裏面での再反射光(基板の内部を進んでいた光がその基板の裏面で反射されて、その基板の内部を半導体デバイス側に向かって進んでいく光)を抑制することはできるものの、照射源から基板の裏面(他方の主表面)に照射された光のうち、その裏面で照射源側に反射された光(裏面反射光)を十分に抑制することはできていなかった。このため、裏面反射光が照射源からの光と干渉してしまい、転写精度のさらなる向上の妨げとなってしまっていた。
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板の一方の主表面上にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクにおいて、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率で透過する機能を有しつつ、その透光性基板の他方の主表面のその露光光に対する反射率(基板の裏面反射率)を低減する機能を有する薄膜を、その他方の主表面上に備えたマスクブランクを提供することを目的としている。また、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的としている。そして、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
対向する2つの主表面を有する透光性基板と、一方の前記主表面上に設けられたパターン形成用薄膜とを備えるマスクブランクであって、
他方の前記主表面上に、前記透光性基板側から第1層、第2層および第3層の順に積層した構造の反射防止膜を備え、
前記第1層、前記第2層および前記第3層のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn、n、nとしたとき、n<nおよびn>nの関係を満たし、
前記第1層、前記第2層および前記第3層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk、k、kとしたとき、k>k>kの関係を満たし、
前記第1層、前記第2層および前記第3層の膜厚をそれぞれd、d、dとしたとき、d>dおよびd<dの関係を満たすことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記透光性基板の前記露光光の波長における屈折率をnとしたとき、n<n<nの関係を満たし、
前記透光性基板の前記露光光の波長における消衰係数をkとしたとき、k<k<kの関係を満たすことを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記第1層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記第1層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
前記第2層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
前記第3層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記第2層は、前記第1層よりも窒素の含有量が多いことを特徴とする構成4記載のマスクブランク。
(構成6)
前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜を含み、
前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から第1A層、第2A層および第3A層の順に積層した構造を備え、
前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の前記露光光の波長における屈折率をそれぞれn1A、n2A、n3Aとしたとき、n1A>n2Aおよびn2A<n3Aの関係を満たし、
前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1A、k2A、k3Aとしたとき、k1A<k2Aおよびk2A>k3Aの関係を満たし、
前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の膜厚をそれぞれd1A、d2A、d3Aとしたとき、d1A<d3Aおよびd2A<d3Aの関係を満たすことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記第3A層の膜厚をd3Aは、前記第2A層の膜厚d1Aの2倍以上であることを特徴とする構成6記載のマスクブランク。
(構成8)
前記第1A層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする構成6または7に記載のマスクブランク。
(構成9)
前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成6から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記第2A層は、前記第1A層および前記第3A層よりも窒素の含有量が少ないことを特徴とする構成9記載のマスクブランク。
(構成11)
前記位相シフト膜は、前記露光光を2%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成6から10のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成12)
前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜を含み、
前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から第1B層および第2B層の順に積層した構造を備え、
前記第1B層および前記第2B層の前記露光光の波長における屈折率をそれぞれn1B、n2Bとしたとき、n1B<n2Bの関係を満たし、
前記第1B層および前記第2B層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1B、k2Bとしたとき、k1B<k2Bの関係を満たし、
前記第1B層および前記第2B層の膜厚をそれぞれd1B、d2Bとしたとき、d1B<d2Bの関係を満たすことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成13)
前記第1B層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする構成12記載のマスクブランク。
(構成14)
前記第1B層は、ケイ素と窒素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成され、
前記第2B層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする構成12または13に記載のマスクブランク。
(構成15)
前記第2B層は、前記第1B層よりも窒素の含有量が多いことを特徴とする構成14記載のマスクブランク。
(構成16)
前記位相シフト膜は、前記露光光を15%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成12から15のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成17)
構成1から16のいずれかに記載のマスクブランクにおける前記透光性基板または前記パターン形成用薄膜に、転写パターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
(構成18)
構成17記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板の一方の主表面上にパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクにおいて、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率で透過する機能を有しつつ、その透光性基板の他方の主表面のArFエキシマレーザーの露光光に対する反射率(基板の裏面反射率)を低減する機能を有する薄膜を、その他方の主表面上に備えたマスクブランクを提供することができる。
本発明の第1の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の第2および第3の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本願発明者らは、ArFエキシマレーザーの露光光(以降、単に「露光光」ということもある。)を所定の透過率で透過する機能を有しつつ、基板の裏面反射率を低減する機能を有する手段について、鋭意研究を行った。
ArFエキシマレーザーの露光光で露光を行う場合、空気中から透光性基板の裏面(パターン形成用薄膜が設けられている一方の主表面とは反対側の主表面。すなわち、他方の主表面。)に露光光が入射する際に、透光性基板の裏面で反射する光が入射光の5%程度生じる(すなわち、透光性基板の内部に入射する露光光の光強度は5%程度減少する。)。この透光性基板の裏面で反射される光を低減するには、透光性基板の裏面側に反射防止膜を設けることが有効である。この反射防止膜には、透光性基板の内部に十分な光量の露光光を入射させる機能も求められるが、この機能と反射防止機能とを両立させることは、単層構造の反射防止膜では困難であることを見出した。
本発明者は、反射防止膜の層構造や、各層が満たすべき屈折率や消衰係数、膜厚について、さらに検討を行った。その結果、透光性基板の裏面(他方の主表面)に設ける反射防止膜を、透光性基板側から第1層、第2層および第3層の順に積層した構造とし、第1層、第2層および第3層のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn、n、nとしたとき、n<nおよびn>nの関係を満たし、第1層、第2層および第3層の露光光の波長における消衰係数をそれぞれk、k、kとしたとき、k>k>kの関係を満たし、第1層、第2層および第3層の膜厚をそれぞれd、d、dとしたとき、d>dおよびd<dの関係を満たすことで、ArFエキシマレーザーの露光光を所望の透過率で透過する機能を有しつつ、基板の裏面反射率を低減する機能を有する反射防止膜を備えたマスクブランクを形成できることを見出した。本発明は、以上のような鋭意検討によってなされたものである。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。図1に示す本発明のマスクブランク100は、透光性基板1上に、エッチングストッパー兼ハードマスク膜として機能するパターン形成用薄膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する(本実施形態において、「パターン形成用薄膜2」を適宜「エッチングストッパー兼ハードマスク膜2」として説明する。)。
透光性基板1は、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArFエキシマレーザー光に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板1を形成する材料として特に好ましい。透光性基板1は、露光光に対する屈折率nが1.5以上1.6以下であり、かつ、消衰係数kが0.1以下であることが好ましい。なお、透光性基板1の消衰係数kの下限値は0.0である。
エッチングストッパー兼ハードマスク膜2は、直上の遮光膜3とエッチング選択性の高い素材であることが必要であり、本実施形態では、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2の素材にクロム系材料を選択することにより、ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜3との高いエッチング選択性を確保することができる。
エッチングストッパー兼ハードマスク膜2は、クロム(Cr)に、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することが好ましい。また、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスが含まれてもよい。具体的には、例えば、CrN、CrON、CrOC、CrOCN等の材料が挙げられる。このエッチングストッパー兼ハードマスク膜2は組成がほぼ一定であり、具体的には厚さ方向における各構成元素の含有量の差がいずれも10原子%未満であることが好ましい。
エッチングストッパー兼ハードマスク膜2は、クロム含有量が50原子%以上であることが、ドライエッチングでパターニングするときに生じるサイドエッチングを抑制することができる点で好ましい。また、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2は、クロム含有量が80原子%以下であることが、ドライエッチングでパターニングするときのエッチングレートを十分に確保できる点で好ましい。
エッチングストッパー兼ハードマスク膜2を形成する方法については特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。エッチングストッパー兼ハードマスク膜2の形成には導電性の高いターゲットを用いるため、成膜速度が比較的速いDCスパッタリングを用いることがより好ましい。
エッチングストッパー兼ハードマスク膜2の膜厚は特に制約される必要はないが、例えば3nm以上20nm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.5nm以上15nm以下である。
次に、遮光膜3について説明する。
本実施形態において、遮光膜3は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる。
本実施形態では、遮光膜3の素材にケイ素系材料やタンタル系材料を選択することにより、クロム系材料からなるエッチングストッパー兼ハードマスク膜2との高いエッチング選択性を確保することができる。
遮光膜3を形成するケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料としては、以下の材料が挙げられる。
ケイ素を含有する材料としては、ケイ素および窒素からなる材料、またはこの材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。この場合の半金属元素は、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素であると好ましい。また、この場合の非金属元素には、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲン、および貴ガスが含まれる。
また、このほかの遮光膜3に好適なケイ素を含有する材料としては、ケイ素および遷移金属に、酸素、窒素、炭素、ホウ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。この場合の遷移金属としては、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、クロム(Cr)などが挙げられる。このようなケイ素と遷移金属を含有する材料は遮光性能が高く、遮光膜3の厚さを薄くすることが可能となる。
また、タンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が用いられ、具体的には、例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが好ましく挙げられる。
遮光膜3を形成する方法についても特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。遮光膜3がケイ素および窒素からなる材料、またはこの材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成される場合、ターゲットの導電性が低いため、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。一方、遮光膜3がケイ素および遷移金属に、酸素、窒素、炭素、ホウ素および水素から選ばれる1以上の元素を含有する材料あるいはタンタルを含有する材料で形成される場合、ターゲットの導電性が比較的高いため、成膜速度が比較的速いDCスパッタリングを用いて成膜することが好ましい。
遮光膜3は、単層構造でも、積層構造でもよい。例えば、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに裏面反射防止層を加えた3層構造とすることができる。
遮光膜3は、所定の遮光性を確保することが求められ、例えば微細パターン形成に有効なArFエキシマレーザー(波長193nm)の露光光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが求められ、3.0以上であるとより好ましい。
遮光膜3の膜厚は特に制約される必要はないが、微細パターンを精度良く形成できるためには80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。他方、遮光膜3は、上記のとおり所定の遮光性(光学濃度)を確保することが求められることから、遮光膜3の膜厚は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましい。
また、本実施形態のように、マスクブランク100の表面に形成するレジスト膜の薄膜化を目的として、遮光膜3上に、この遮光膜3とはエッチング選択性を有する材料からなるハードマスク膜(「エッチングマスク膜」と呼ばれることもある。)4を設けることが好ましい。
このハードマスク膜4は、ドライエッチングで遮光膜3にパターンを形成する際のエッチングマスクとして機能するため、ハードマスク膜4の材料は、遮光膜3のドライエッチング環境に対して十分な耐性を有する材料で形成する必要がある。ケイ素系材料またはタンタル系材料からなる遮光膜3のドライエッチングには、通常、フッ素系ガスがエッチングガスとして用いられるため、ハードマスク膜4の材料としては、このフッ素系ガスのドライエッチングに対し、遮光膜3との間で十分なエッチング選択性を有するクロムを含有するクロム系材料を用いることが好適である。
ハードマスク膜4を形成するクロム系材料としては、例えば、クロムに、酸素、炭素、窒素、水素、およびホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物などが挙げられる。このハードマスク膜4は、マスクブランク10の表面に形成されたレジスト膜のパターンをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングによりパターニングされるので、この塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによるドライエッチングにおけるエッチングレートが速いことが好ましく、この観点からは、ハードマスク膜4は少なくともクロムおよび酸素を含有する材料からなることが好ましい。ハードマスク膜4の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスが含まれてもよい。具体的には、例えば、CrN、CrON、CrOC、CrOCN等の材料が挙げられる。なお、ハードマスク膜4は、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2と同じ材料を用いた単層膜とするとより好ましい。この場合、ハードマスク膜4の透光性基板1側とは反対側の表面およびその近傍の領域は、酸化の進行が避け難いため、酸素含有量が増加した組成傾斜部を有する単層膜となる。
ハードマスク膜4を形成する方法については特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。上記ハードマスク膜4の形成には導電性の高いターゲットを用いるため、成膜速度が比較的速いDCスパッタリングを用いることがより好ましい。
ハードマスク膜4の膜厚は特に制約される必要はないが、このハードマスク膜4は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、直下の遮光膜3をパターニングするときのエッチングマスクとして機能するものであるため、少なくとも直下の遮光膜3のエッチングが完了する前に消失しない程度の膜厚が必要である。一方、ハードマスク膜4の膜厚が厚いと、直上のレジストパターンを薄膜化することが困難である。このような観点から、ハードマスク膜4の膜厚は、例えば3nm以上20nm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.5nm以上15nm以下である。
また、図1には示されていないが、以上の構成のマスクブランク100の表面にレジスト膜を有する形態のものも本発明のマスクブランクに含まれる。
レジスト膜は有機材料からなるもので、電子線描画用のレジスト材料であると好ましく、特に化学増幅型のレジスト材料が好ましく用いられる。
レジスト膜は、通常、スピンコート法等の塗布法によってマスクブランクの表面に形成される。このレジスト膜は、微細パターン形成の観点から、例えば200nm以下の膜厚とすることが好ましいが、上記ハードマスク膜4を備えることにより、レジスト膜をより薄膜化することができ、例えば100nm以下の膜厚とすることが可能である。
また、本実施形態におけるマスクブランク100は、透光性基板1の裏面(他方の主表面)に、反射防止膜7を備えている。この反射防止膜7は、透光性基板1側から、第1層71、第2層72、第3層73が積層した構造を有している。この反射防止膜7の全体で、所望の透過率と裏面反射率が得られるようにする必要がある。このためには、反射防止膜7における、第1層71、第2層72および第3層73のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn、n、nとしたとき、n<nおよびn>nの関係を満たし、第1層71、第2層72および第3層73の露光光の波長における消衰係数をそれぞれk、k、kとしたとき、k>k>kの関係を満たす必要があることを本発明者は見出した。
その上で、第1層71の屈折率nは、2.0未満であることが好ましく、1.9以下であるとより好ましい。また、第1層71の屈折率nは、1.0以上であると好ましく、1.2以上であるとより好ましい。また、第1層71の消衰係数kは、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であるとより好ましい。また、第1層71の消衰係数kは、2.2以下であると好ましく、2.0以下であるとより好ましい。なお、第1層71の屈折率nおよび消衰係数kは、第1層71の全体を光学的に均一な1つの層とみなして導出された数値である(後述する他の層の屈折率、消衰係数についても同様にして導出している)。
また、第2層72の屈折率nは、2.0以上であると好ましく、2.1以上であるとより好ましい。また、第2層72の屈折率nは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第2層72の消衰係数kは、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であるとより好ましい。また、第2層72の消衰係数kは、0.1以上であると好ましく、0.2以上であるとより好ましい。
また、第3層73の屈折率nは、1.8以下であると好ましく、1.7以下であるとより好ましい。また、第3層73の屈折率nは、1.5以上であると好ましく、1.55以上であるとより好ましい。一方、第3層73の消衰係数kは、0.1以下であると好ましく、0.05以下であるとより好ましい。
また、透光性基板1の露光光の波長における屈折率をnとしたとき、n<n<nの関係を満たし、透光性基板1の露光光の波長における消衰係数をkとしたとき、k<k<kの関係を満たすことが好ましい。
反射防止膜7を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。第1層71、第2層72、第3層73を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタリングターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される第1層71、第2層72、第3層73が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
反射防止膜7の全体で、所望の透過率と裏面反射率が得られるようにするためには、第1層71、第2層72および第3層73の膜厚をそれぞれd、d、dとしたとき、d>dおよびd<dの関係を満たすことが少なくとも必要である。
第1層71の膜厚dは、30nm以下であると好ましく、25nm以下であるとより好ましい。また、第1層71の膜厚dは、14nm以上であることが好ましく、17nm以上であるとより好ましい。
第2層72の膜厚dは、10nm以下であると好ましく、8nm以下であるとより好ましい。また、第2層72の膜厚dは、4nm以上であることが好ましく、5nm以上であるとより好ましい。
第3層73の膜厚dは、20nm以下であると好ましく、17nm以下であるとより好ましい。また、第3層73の膜厚dは、10nm以上であることが好ましく、13nm以上であるとより好ましい。
第1層71および第2層72は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されることが好ましい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。また、この非金属元素の中でも、窒素、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。この非金属元素には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスも含まれる。
また、第3層73は、ケイ素と酸素とからなる材料、または上述した半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されることが好ましい。このような材料で第3層73を形成することにより、窒素含有量が多いケイ素含有膜で発生しやすいヘイズの発生を抑制することができる。
第2層72は、第1層71よりも窒素の含有量が多いことが好ましい。第1層71を形成する材料中の窒素含有量は、40原子%以下であることが好ましく、35原子%以下であるとより好ましい。第1層71は、反射防止膜7の透過率に寄与する必要があるが、第2層との屈折率の差および消衰係数の差をいずれも大きくするには、屈折率が上がり、かつ消衰係数が下がる要因となる窒素含有量を抑えることが好ましいためである。また、第1層71を形成する材料中の窒素含有量は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であるとより好ましい。窒素含有量が少ないと第1層71の消衰係数が高くなり、露光光に対する透過率が大きく低下してしまう。
第2層72の窒素含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であることがより好ましく、化学量論的に安定な材料であるSiで構成されることがさらに好ましい。第2層72は、屈折率が高い材料で形成されることが好ましいが、窒素含有量を多くすることで屈折率を高くすることができるためである。
第3層73の酸素含有量は、第1層71および第2層72の各酸素含有量よりも多いことが好ましい。第3層73の酸素含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であることがより好ましい。
第1層71は、透光性基板1の他方の主表面(裏面)に接して設けられることが好ましい。第1層71が透光性基板1の表面と接した構成とした方が、反射防止膜7の第1層71、第2層72、第3層73の積層構造によって生じる裏面反射率を低減する効果がより得られるためである。反射防止膜7の裏面反射率を低減する効果に与える影響が微小であれば、透光性基板1と反射防止膜7との間に他の薄膜を設けてもよい。この場合、他の薄膜の厚さは、10nm以下であることが必要であり、7nm以下であると好ましく、5nm以下であるとより好ましい。他の薄膜を形成する材料の消衰係数kは、0.1未満であることが好ましく、0.05以下であるとより好ましく、0.01以下であるとさらに好ましい。また、この場合の他の薄膜を形成する材料の屈折率nは、1.9以下であることが好ましく、1.7以下であると好ましい。他の薄膜を形成する材料の屈折率nは、1.55以上であることが好ましい。また、他の薄膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成することが好ましい。また、他の薄膜は、ハフニウムおよび酸素を含有する材料で形成してもよい。
反射防止膜7における第1層71、第2層72、第3層73は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。成膜レートを考慮すると、DCスパッタリングを適用することが好ましい。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
また、特に限定するものではないが、透光性基板1の裏面に反射防止膜7を成膜する前に、上述したエッチングストッパー兼ハードマスク膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4を、透光性基板1の表面に成膜しておくことが好ましい。
また、反射防止膜7は、透光性基板1の裏面全面に亘って形成してもよいが、これに限らず、透光性基板1の裏面の一部の領域(例えば、透光性基板1の表面側に設定される転写パターンを形成する領域(例えば、基板の中心を基準とする一辺が132mmの正方形の内側領域)の外側の領域に対応する部分。)に形成するようにしてもよい。このようにすることで、透光性基板1に入射する露光光の光量を最大化しつつ、反射防止膜7により基板の裏面反射率の低減を図ることができる点で好ましい。反射防止膜7を透光性基板1の裏面の一部の領域に形成する場合には、透光性基板1の所定の領域(反射防止膜7を形成しない領域)に遮蔽部材を設けておき、この状態でスパッタリングを行うようにすればよい。
なお、本実施形態のマスクブランク100において、透光性基板1の一方の主表面とエッチングストッパー兼ハードマスク膜2との間に、一方の主表面側から上記の他の薄膜と同様の構成を備える薄膜と、ケイ素および酸素を含有する材料からなる単層構造の位相シフト膜がこの順に積層した構造を介在させてもよい。この場合の位相シフト膜は、露光光を90%以上の透過率で透過する機能と、その位相シフト膜を透過した露光光に対してその位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有すると好ましい。一般に、マスクブランクからクロムレス位相シフトマスクや掘り込みレベンソン型位相シフトマスクを製造する場合、透光性基板の表面を掘り込んで位相シフトパターンを形成するが、この位相シフト膜にパターンを形成することで基板を掘り込むことなく位相シフトパターンを形成することができる。
本実施形態のマスクブランク100は、以上のような構成を備えたものであり、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率で透過する機能を有しつつ、透光性基板1の裏面反射率を低減する機能を有する反射防止膜7を備えるものとすることができる。
図2は、本発明の第2の実施形態に係るマスクブランク110の構成を示す断面図である。本実施形態におけるマスクブランク110は、透光性基板1上に、位相シフト膜として機能するパターン形成用薄膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する(本実施形態において、「パターン形成用薄膜2」を適宜「位相シフト膜2」として説明する。)。位相シフト膜2は、透光性基板1側から、第1A層21、第2A層22、第3A層23、第4A層24が積層した構造を有する。なお、透光性基板1、反射防止膜7、レジスト膜の構成に関しては、第1の実施形態において述べた通りであるので、説明を省略する。
本実施形態の位相シフト膜2は、露光光を2%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜2を透過した露光光に対して位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有するものである。位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、3%以上であると好ましく、4%以上であるとより好ましい。他方、本実施形態の位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、15%以下であると好ましく、14%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2における前記位相差の下限値は、155度以上であることが好ましく、160度以上であるとより好ましい。他方、位相シフト膜2における前記位相差の上限値は、190度以下であることが好ましい。
位相シフト膜2は、透光性基板1側から、第1A層21、第2A層22、第3A層23が積層した構造を有する。そして、位相シフト膜2は、第1A層21、第2A層22および第3A層23のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn1A、n2A、n3Aとしたとき、n1A>n2Aおよびn2A<n3Aの関係を満たし、第1A層21、第2A層22および第3A層23の露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1A、k2A、k3Aとしたとき、k1A<k2Aおよびk2A>k3Aの関係を満たす。このようにすることで、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率(2%以上)で透過する機能とその透過するArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を兼ね備え、さらに、透光性基板1の内部を透過する露光光が、透光性基板1(一方の主表面)と位相シフト膜2との界面で反射される光に係る反射率(位相シフト膜2の裏面反射率)も低減された位相シフト膜2とすることができ、位相シフトマスクに対する露光時に生じる迷光を抑制できることを本発明者は見出した。これにより、この迷光によって生じる、位相シフトマスクのパターン形成領域外に設けられたバーコードやアライメントマークの転写対象物への映り込みを、抑制することができる。
また、本実施形態のように、第4A層24を備える位相シフト膜2においては、第4A層24のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をn4Aとしたとき、n1A>n4Aおよびn3A>n4Aの関係を満たし、第4A層24のArFエキシマレーザーの露光光の波長における消衰係数をkとしたとき、k1A>k4Aおよびk3A>k4Aの関係を満たすものであることが好ましい。また、n2A>n4Aの関係も満たすとより好ましい。なお、本実施形態の位相シフト膜2においては第4A層24を備える構成としているが、上記の透過率、位相差の各条件を満たす位相シフト膜2であれば、第4A層24を備えることは必須ではない。
その上で、第1A層21の屈折率n1Aは、2.0以上であると好ましく、2.1以上であるとより好ましい。また、第1A層21の屈折率nは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第1A層21の消衰係数k1Aは、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であるとより好ましい。また、第1A層21の消衰係数k1Aは、0.1以上であると好ましく、0.2以上であるとより好ましい。
また、第2A層22の屈折率n2Aは、2.0未満であることが好ましく、1.9以下であるとより好ましい。また、第2A層22の屈折率n2Aは、1.0以上であると好ましく、1.2以上であるとより好ましい。また、第2A層22の消衰係数k2Aは、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であるとより好ましい。また、第2A層22の消衰係数k2Aは、2.2以下であると好ましく、2.0以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2が上記の条件を満たすには、第3A層23の屈折率n3Aは、2.0以上であると好ましく、2.1以上であるとより好ましい。また、第3A層23の屈折率n3Aは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第3A層23の消衰係数k3Aは、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であるとより好ましい。また、第3A層23の消衰係数k3Aは、0.1以上であると好ましく、0.2以上であるとより好ましい。
第4A層24は、屈折率n4Aが1.8以下であると好ましく、1.7以下であるとより好ましい。また、第4A層24は、屈折率n4Aが1.5以上であると好ましく、1.55以上であるとより好ましい。一方、第4A層24は、消衰係数k4Aが0.1以下であると好ましく、0.05以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2が上記の条件を満たすには、上記の第1A層21、第2A層22、第3A層23の光学特性に加えて、第1A層21、第2A層22および第3A層23の膜厚をそれぞれd1A、d2A、d3Aとしたとき、d1A<d3Aおよびd2A<d3Aの関係を満たすことが少なくとも必要である。
第1A層21は、位相シフト膜2の裏面反射率の調整に寄与する割合が他の2層に比べて高い。また、第2A層22は、位相シフト膜2の透過率の調整に寄与する割合が他の2層に比べて高い。このため、第1A層21と第2A層22の膜厚の設計自由度は比較的狭い。第3A層23は、位相シフト膜2が求められる所定の位相差を有するための調整に寄与することが求められ、膜厚が他の2層よりも厚いことが望まれる。第3A層23の膜厚d3Aは、第1A層21の膜厚d1Aの2倍以上であることが好ましく、2.2倍以上であるとより好ましく、2.5倍以上であるとさらに好ましい。また、第3A層23の膜厚d3Aは、第1A層21の膜厚d1Aの5倍以下であるとより好ましい。
第1A層21の膜厚d1Aは、20nm以下であると好ましく、18nm以下であるとより好ましい。また、第1A層21の膜厚d1Aは、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であるとより好ましい。
第2A層22の膜厚d2Aは、20nm以下であると好ましく、18nm以下であるとより好ましい。また、第2A層22の膜厚d2Aは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であるとより好ましい。
第3A層23の膜厚d3Aは60nm以下であると好ましく、50nm以下であるとより好ましい。また、第3A層23の膜厚d3Aは、20nmよりも大きいことが好ましく、25nm以上であるとより好ましい。
第4A層24の膜厚d4Aは、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。また、第4A層24の膜厚d4Aは、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であるとより好ましい。
第1A層21、第2A層22、第3A層23は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されることが好ましい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。また、この非金属元素の中でも、窒素、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。この非金属元素には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスも含まれる。
第4A層24は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることが好ましい。このような材料で第4A層24を形成することにより、窒素含有量が多いケイ素含有膜で発生しやすいヘイズの発生を抑制することができる。
第2A層22は、第1A層21および第3A層23のいずれよりも窒素の含有量が少ないことが好ましい。第2A層22を形成する材料中の窒素含有量は、40原子%以下であることが好ましく、35原子%以下であるとより好ましい。第2A層22は、位相シフト膜2の透過率に寄与する必要があるが、第1A層21および第3A層23との屈折率の差および消衰係数の差をいずれも大きくするには、屈折率が上がり、かつ消衰係数が下がる要因となる窒素含有量を抑えることが好ましいためである。また、第2A層22を形成する材料中の窒素含有量は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であるとより好ましい。窒素含有量が少ないと第2A層22の消衰係数が高くなり、露光光に対する透過率が大きく低下してしまう。
第1A層21および第3A層23は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であることがより好ましく、化学量論的に安定な材料であるSiで構成されることがさらに好ましい。第1A層と第3A層は、屈折率が高い材料で形成されることが好ましいが、窒素含有量を多くすることで屈折率を高くすることができるためである。
第4A層24の酸素含有量は、第1A層21、第2A層22および第3A層23の各酸素含有量よりも多いことが好ましい。第4A層24の酸素含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であることがより好ましい。
第1A層21は、透光性基板1の表面に接して設けられることが好ましい。第1A層21が透光性基板1の表面と接した構成とした方が、上記の位相シフト膜2の第1A層21、第2A層、第3A層23の積層構造によって生じる位相シフト膜2の裏面反射率を低減する効果がより得られるためである。位相シフト膜2の裏面反射率を低減する効果に与える影響が微小であれば、透光性基板1と位相シフト膜2との間にエッチングストッパー膜を設けてもよい。この場合、エッチングストッパー膜の厚さは、10nm以下であることが必要であり、7nm以下であると好ましく、5nm以下であるとより好ましい。また、エッチングストッパーとして有効に機能するという観点から、エッチングストッパー膜の厚さは、3nm以上であることが必要である。エッチングストッパー膜を形成する材料の消衰係数kは、0.1未満であることが必要であり、0.05以下であると好ましく、0.01以下であるとより好ましい。また、この場合のエッチングストッパー膜を形成する材料の屈折率nは、1.9以下であることが少なくとも必要であり、1.7以下であると好ましい。エッチングストッパー膜を形成する材料の屈折率nは、1.55以上であることが好ましい。また、エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成することが好ましい。また、他の薄膜は、ハフニウムおよび酸素を含有する材料で形成してもよい。
第1A層21、第2A層22を形成する材料と、酸化している表層部分を除く第3A層23を形成する材料とは、ともに同じ元素で構成されていることが好ましい。第1A層21、第2A層22、第3A層23は、同じエッチングガスを用いたドライエッチングによってパターニングされる。このため、第1A層21、第2A層22、第3A層23は、同じエッチングチャンバー内でエッチングすることが望ましい。第1A層21、第2A層22、第3A層23を形成する各材料を構成している元素が同じであると、第1A層21、第2A層22、第3A層23へとドライエッチングする対象が変わっていくときのエッチングチャンバー内の環境変化を小さくすることができる。
位相シフト膜2における第1A層21、第2A層22、第3A層23は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。成膜レートを考慮すると、DCスパッタリングを適用することが好ましい。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
マスクブランク110は、位相シフト膜2上に遮光膜3を備える。通常、位相シフトマスクを含む転写用マスクの外周領域では、ODが2.7以上であると好ましい。位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは所定値の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク110を製造する段階で位相シフト膜2の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜3を積層しておくことが必要とされる。このようなマスクブランク110の構成とすることで、位相シフトマスク210(図5参照)を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に所定値の光学濃度が確保された位相シフトマスク210を製造することができる。
遮光膜3は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜3および2層以上の積層構造の遮光膜3の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
図2に記載の形態におけるマスクブランク110は、位相シフト膜2の上に、他の膜を介さずに遮光膜3を積層した構成としている。この構成の場合の遮光膜3は、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。本実施形態の遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が挙げられる。遮光膜3の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスが含まれてもよい。具体的には、例えば、CrN、CrON、CrOC、CrOCN等の材料が挙げられる。
一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が好ましい。また、遮光膜3を形成するクロムを含有する材料にモリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させてもよい。モリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスに対するエッチングレートをより速くすることができる。
また、第4A層24(特に表層部分)を形成する材料との間でドライエッチングに対するエッチング選択性が得られるのであれば、遮光膜3を遷移金属とケイ素を含有する材料で形成してもよい。遷移金属とケイ素を含有する材料は遮光性能が高く、遮光膜3の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。遮光膜3に含有させる遷移金属元素以外の金属元素としては、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびガリウム(Ga)などが挙げられる。
一方、別の実施形態のマスクブランク110として、位相シフト膜2側からクロムを含有する材料からなる層と遷移金属とケイ素を含有する材料からなる層がこの順に積層した構造の遮光膜3を備えてもよい。この場合におけるクロムを含有する材料および遷移金属とケイ素を含有する材料の具体的な事項については、上記の遮光膜3の場合と同様である。
マスクブランク110において、遮光膜3をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜4を遮光膜3の上にさらに積層させた構成とすると好ましい。ハードマスク膜4は、基本的に光学濃度の制限を受けないため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅に厚さを薄くすることができる。レジスト膜の薄膜化は、レジスト解像度の向上とパターン倒れ防止に効果があり、微細化要求に対応していく上で極めて重要である。
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、ケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選らばれる一以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。たとえば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。また、ハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合、前記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
本実施形態のマスクブランク110は、以上のような構成を備えたものであり、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率(2%以上)で透過する機能と、透光性基板1の裏面反射率を低減する機能と、位相シフト膜2の裏面反射率を低減する機能を全て有するものとすることができる。そして、後述する位相シフトマスク210に対する露光時に生じる迷光を抑制でき、この迷光によって生じる、バーコードやアライメントマークの映り込みを抑制することができる。
図3は、本発明の第3の実施形態に係るマスクブランク120の構成を示す断面図である。本実施形態におけるマスクブランク120は、透光性基板1上に、位相シフト膜として機能するパターン形成用薄膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する(本実施形態において、「パターン形成用薄膜2」を適宜「位相シフト膜2」として説明する。)。位相シフト膜2は、透光性基板1側から、第1B層21、第2B層22、第3B層23が積層した構造を有する。なお、透光性基板1、遮光膜3、ハードマスク膜4、反射防止膜7の構成に関しては、第2の実施形態において述べた通りであるので、説明を省略する。
本実施形態の位相シフト膜2は、露光光を15%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜2を透過した露光光に対して位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有するものである。位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、16%以上であると好ましい。他方、位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、40%以下であると好ましく、36%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2における前記位相差の下限値は、155度以上であることが好ましく、160度以上であるとより好ましい。他方、位相シフト膜2における前記位相差の上限値は、190度以下であることが好ましい。
位相シフト膜2は、透光性基板1側から、第1B層21、第2B層22が積層した構造を有する。そして、位相シフト膜2は、第1B層21および第2B層22のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn1B、n2Bとしたとき、n1B<n2Bの関係を満たし、第1B層21および第2B層22の露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1B、k2Bとしたとき、k1B<k2Bの関係を満たす。このようにすることで、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率(15%以上)で透過する機能とその透過するArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を兼ね備え、さらに位相シフト膜2の裏面反射率も低減された位相シフト膜2とすることができ、位相シフトマスクに対する露光時に生じる迷光を抑制でき、この迷光によって生じる、バーコードやアライメントマークの映り込みを抑制することができることを本発明者は見出した。
また、本実施形態のように、第3B層23を備える位相シフト膜2においては、第3B層23のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をn3Bとしたとき、n3B<n1Bの関係を満たし、第3B層23のArFエキシマレーザーの露光光の波長における消衰係数をk3Bとしたとき、k3B<k1Bの関係を満たすものであることが好ましい。なお、本実施形態の位相シフト膜2においては第3B層23を備える構成としているが、上記の透過率、位相差の各条件を満たす位相シフト膜2であれば、第3B層23を備えることは必須ではない。
その上で、第1B層21の屈折率n1Bは、1.8以上であると好ましく、1.85以上であるとより好ましい。また、第1B層21の屈折率n1Bは、2.2未満であると好ましく、2.15以下であるとより好ましい。第1B層21の消衰係数k1Bは、0.15以下であることが好ましく、0.14以下であるとより好ましい。また、第1B層21の消衰係数k1Bは、0.05以上であると好ましく、0.06以上であるとより好ましい。
また、第2B層22の屈折率n2Bは、2.2以上であることが好ましく、2.25以上であるとより好ましい。また、第2B層22の屈折率n2Bは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。また、第2B層22の消衰係数k2Bは、0.2以上であることが好ましく、0.25以上であるとより好ましい。また、第2B層22の消衰係数k2Bは、0.5以下であると好ましく、0.4以下であるとより好ましい。
第3B層23の屈折率n3Bは、1.7以下であることが好ましく、1.65以下であるとより好ましい。また、第3B層23の屈折率n3Bは、1.50以上であることが好ましく、1.52以上であるとより好ましい。第3B層23の消衰係数k3Bは、0.02以下であることが好ましく、0.01以下であるとより好ましい。また、第3B層23の消衰係数k3Bは、0.00以上であるとより好ましい。
位相シフト膜2が上記の条件を満たすには、上記の第1B層21、第2B層22の光学特性に加えて、第1B層21および第2B層22の膜厚をそれぞれd1B、d2Bとしたとき、d1B<d2Bの関係を満たすことが少なくとも必要である。また、第3層23の膜厚をd3Bとしたとき、d3B<d1Bの関係を満たすことが好ましい。
第1B層21の膜厚d1Bは、33nm未満であると好ましく、32nm以下であるとより好ましい。また、第1B層21の膜厚d1Bは、10nmより大きいことが好ましく、15nm以上であるとより好ましい。
第2B層22の膜厚d2Bは、33nm以上であると好ましく、34nm以上であるとより好ましい。また、第2B層22の膜厚d2Bは、50nm以下であることが好ましく、48nm以下であるとより好ましい。
第3B層23の膜厚d3Bは30nm以下であると好ましく、25nm以下であるとより好ましい。また、第3B層23の膜厚d3Bは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であるとより好ましい。
第1B層21は、ケイ素と窒素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成されることが好ましい。また、第2B層22は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されることが好ましい。
第3B層23は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されることが好ましい。第3B層23の酸素の含有量は、第1B層21の酸素の含有量よりも多いことが好ましい。第3B層23の酸素の含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以下であることがより好ましい。このような材料で第3B層23を形成することにより、窒素含有量が多いケイ素含有膜で発生しやすいヘイズの発生を抑制することができる。
本実施形態の位相シフト膜2の各層において好ましい半金属元素、非金属元素は、第2の実施形態において述べた通りである。
第2B層22は、第1B層21よりも窒素の含有量が多いことが好ましい。第1B層21の窒素の含有量は、40原子%以下であることが好ましく、30原子%以下であることがより好ましい。また、第1B層21の窒素の含有量は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。第2B層21との屈折率の差を大きくするには、屈折率が上がる要因となる窒素含有量を抑えることが好ましいためである。また、窒素含有量を抑えることによって第2B層21の消衰係数が下がるが、酸素含有量を増やすことで第2B層21の消衰係数を上げることができ、位相シフト膜2の全体の透過率を15%以上に調整しやすくなる。
一方、第2B層22の窒素の含有量は、45原子%以上であることが好ましく、50原子%以上であることがより好ましく、55原子%以上であることがさらに好ましい。第2B層22は、屈折率が高い材料で形成されることが好ましいが、窒素含有量を多くすることで屈折率を高くすることができるためである。
第1B層21は、透光性基板1の表面に接して設けられることが好ましい。第1B層21が透光性基板1の表面と接した構成とした方が、上記の位相シフト膜2の第1B層21、第2B層、第3B層23の積層構造によって生じる位相シフト膜2の裏面反射率を低減する効果がより得られるためである。位相シフト膜2の裏面反射率を低減する効果に与える影響が微小であれば、第2実施形態と同様に、透光性基板1と位相シフト膜2との間にエッチングストッパー膜を設けてもよい。
第1B層21の酸素の含有量は、第2B層22の酸素の含有量よりも多いことが好ましい。第1B層21の酸素の含有量は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。また、第1B層21の酸素の含有量は、45原子%以下であることが好ましく、40原子%以下であることがより好ましい。一方、第2B層22の酸素の含有量は、5原子%以下であることが好ましく、2原子%以下であることがより好ましい。第2B層22は、酸素を含有しないことがさらに好ましい。第2B層22の酸素の含有量が増えるにつれて第2B層22の屈折率が低下するためである。
第3B層23の酸素の含有量は、第1B層21の酸素の含有量よりも多いことが好ましい。第3B層23の酸素の含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であることがより好ましい。
本実施形態のマスクブランク120は、以上のような構成を備えたものであり、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率(15%以上)で透過する機能と、透光性基板1の裏面反射率を低減する機能と、位相シフト膜2の裏面反射率を低減する機能を全て有するものとすることができる。そして、後述する位相シフトマスク220に対する露光時に生じる迷光を抑制でき、この迷光によって生じる、バーコードやアライメントマークの映り込みを抑制することができる。
なお、各実施形態においては、クロムレス位相シフトマスク用のマスクブランク(マスクブランク100)やハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランク(マスクブランク110、120)について説明したが、本発明のマスクブランクはこれらに限定されるものではなく、例えば、バイナリーマスク用のマスクブランクや掘り込みレベンソン型位相シフトマスク作製用のマスクブランクとしても使用することができる。
次に、第1の実施形態のマスクブランク100を用いた位相シフトマスク(転写用マスク)の製造方法について説明する。
図4に、第1の実施形態のマスクブランク100から製造される本発明の第1の実施形態に係る位相シフトマスク(転写用マスク)200とその製造工程を示す。図4(g)に示されているように、位相シフトマスク200は、マスクブランク100の透光性基板1に転写パターンである位相シフトパターン1aが形成される、基板掘り込みタイプの位相シフトマスク(クロムレス位相シフトマスク)である。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、透光性基板1に掘り込む転写パターンに対応する第1のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、第1のレジストパターン5aを形成する(図4(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、塩素系ガスと酸素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成する(図4(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図4(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、塩素系ガスと酸素系ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2に第1のパターン(エッチングストッパー膜パターン2a)を形成し、かつハードマスクパターン4aを除去する(図4(d)参照)。
次に、遮光パターン3aが形成されたマスクブランク100の全面に上記と同様にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。このレジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光帯パターン)である第2のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、第2のレジストパターン6bを形成する(図4(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、露出している遮光膜3の遮光パターン3aを剥離除去するとともに、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2に形成されたエッチングストッパー膜パターン2aをマスクとして、透光性基板1のドライエッチングを行い、基板掘り込みタイプの位相シフトパターン1aを形成する(図4(f)参照)。ドライエッチングのエッチングガスにはフッ素系ガスとヘリウムの混合ガスを用いる。
次に、遮光パターン3bをマスクとして、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングにより、露出しているエッチングストッパー膜パターン2aを剥離除去するとともに、残存するレジストパターン6bを除去する(図5(g)参照)。
以上のようにして、透光性基板1に、掘り込みタイプの位相シフトパターン1aが形成され、外周領域の遮光パターン(遮光帯パターン)を備えた基板掘り込みタイプの位相シフトマスク(転写用マスク)200を完成することができる。
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl、BCl等があげられる。また、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、CHF、CF、C、C、SF等があげられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス基板に対するエッチングレートが比較的低いため、ガラス基板へのダメージをより小さくすることができる。
本発明の位相シフトマスク200は、前記のマスクブランク100を用いて作製されたものであり、マスクブランク100の透光性基板1に、転写パターンが設けられているものである。このため、ArFエキシマレーザーの露光光に対する所定の透過率で透過する機能と、透光性基板の裏面反射率を低減する機能を有する位相シフトマスク200を製造することができる。
また、このような本実施形態のマスクブランク100から製造される位相シフトマスク200を用いて、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備える半導体デバイスの製造方法によれば、パターン精度の優れたデバイスパターンが形成された高品質の半導体デバイスを製造することができる。
図5に、第2および第3の実施形態のマスクブランク110,120から製造される本発明の第2および第3の実施形態に係る位相シフトマスク(転写用マスク)210,220とその製造工程を示す。図5(g)に示されているように、位相シフトマスク210,220は、マスクブランク110,120の位相シフト膜2に転写パターンである位相シフトパターン2aが形成され、遮光膜3に遮光パターン3cが形成されていることを特徴としている。マスクブランク110,120にハードマスク膜4が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク210,220の作成途上でハードマスク膜4は除去される。
本発明の第2および第3の実施形態に係る位相シフトマスク210,220の製造方法は、前記のマスクブランク110,120を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜3をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程と、遮光パターンを有するレジスト膜(第2のレジストパターン)6cをマスクとするドライエッチングにより遮光膜3に遮光パターン3cを形成する工程とを備えることを特徴としている。以下、図5に示す製造工程にしたがって、本発明の位相シフトマスク210,220の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜3の上にハードマスク膜4が積層したマスクブランク110,120を用いた位相シフトマスク210,220の製造方法について説明する。また、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用した場合について述べる。
まず、マスクブランク110,120におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図5(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図5(b)参照)。
次に、レジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図5(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつハードマスクパターン4aを除去した(図5(d)参照)。
次に、マスクブランク100,110上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6cを形成した(図5(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6cをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3c)を形成した(図5(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6cを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク210,220を得た(図5(g)参照)。
なお、前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスおよびフッ素系ガスに関しては、上記の第1の実施形態に係る位相シフトマスク200の製造工程の場合と同様である。
本発明の位相シフトマスク210,220は、前記のマスクブランク110,120を用いて作製されたものである。このため、転写パターンが形成された位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)はArFエキシマレーザーの露光光に対する透過率が2%以上若しくは15%以上であり、かつ位相シフトパターン2aを透過した露光光と位相シフトパターン2aの厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間における位相差が150度以上200度以下の範囲内となっている。また、この位相シフトマスク210,220は、位相シフトパターン2aの裏面反射率が低減されており、透光性基板1の裏面反射率も低減されている。これにより、位相シフトマスク200を用いて転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)へ露光転写を行ったときに、上記の迷光によって露光転写像に与える影響を抑制することができる。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の位相シフトマスク210,220を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することを特徴としている。位相シフトマスク210,220は、ArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の透過率で透過する機能とその透過するArFエキシマレーザーの露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を兼ね備え、位相シフトパターン2aの裏面反射率が従来のものに比して大幅に低減され、透光性基板1の裏面反射率も低減されている。このため、この位相シフトマスク210,220を露光装置にセットし、その位相シフトマスク210,220の透光性基板1側からArFエキシマレーザーの露光光を照射して転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)へ露光転写する工程を行っても、位相シフトマスク210,220に形成されたバーコードやアライメントマークの転写対象物への映り込みを抑制できることができ、高い精度で転写対象物に所望のパターンを転写することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面及び主表面を所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。この透光性基板1の光学特性を測定したところ、屈折率nが1.556、消衰係数kが0.00であった。
次に、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記透光性基板1の主表面(一方の主表面)上に、クロム、酸素および炭素を含有するCrOC膜からなるエッチングストッパー兼ハードマスク膜2を厚さ10nmで形成した。
次に、枚葉式RFスパッタリング装置内にエッチングストッパー兼ハードマスク膜2を形成した透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)混合ターゲットを用い、窒素(N)、アルゴン(Ar)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N:He=30:3:100)をスパッタリングガスとし、RF電源による反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2の表面に接して、ケイ素および窒素を含有するSiN膜(Si:75.5原子%、N:24.5原子%)からなる遮光膜3を47nmの厚さで形成した。エッチングストッパー兼ハードマスク膜2と遮光膜3の積層膜の光学濃度は、ArFエキシマレーザーの波長(193nm)において3.0以上であった。
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に、上記遮光膜3までを形成した透光性基板1を設置し、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)とヘリウム(He)の混合ガスによるDCスパッタリングをエッチングストッパー兼ハードマスク膜2を形成するときと同じ成膜条件で行うことにより、上記遮光膜3の表面に、クロム、酸素および炭素を含有するCrOC膜からなるハードマスク膜4を厚さ10nmで形成した。
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に、透光性基板1の裏面(他方の主表面)が露出するように透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1の裏面上に、ケイ素および窒素からなる反射防止膜7の第1層71(SiN膜 Si:N=68原子%:32原子%)を20nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第1層71上に、ケイ素および窒素からなる反射防止膜7の第2層72(SiN膜 Si:N=43原子%:57原子%)を6nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第2層72上に、ケイ素および酸素からなる反射防止膜7の第3層73(SiO膜 Si:O=33原子%:67原子%)を15nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1の裏面に接して第1層71、第2層72、第3層73が積層した反射防止膜7を41nmの厚さで形成した。
なお、反射防止膜7は、透光性基板1の主表面(一方の主表面)に設定されている転写パターンを形成する領域(基板の中心を基準とする一辺が132mmの正方形の内側領域)に対応する他方の主表面の領域上には形成しなかった。具体的には、その他方の主表面の反射防止膜7を形成しない領域を遮蔽部材で覆った状態で、第1層21、第2層22、第3層23を反応性スパッタリングで形成した。また、第1層21、第2層22、第3層23の組成は、X線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
また、反射防止膜7のみを形成した別の透光性基板に対して、位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その反射防止膜7のArFエキシマレーザーの露光光の波長(波長193nm)の光に対する透過率を測定したところ、透過率が12.5%であった。また、この反射防止膜7の第1層71、第2層72、第3層73の各光学特性を分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M-2000D)で測定したところ、第1層71は、屈折率nが1.648、消衰係数kが1.861であり、第2層72は、屈折率nが2.595、消衰係数kが0.357であり、第3層73は、屈折率nが1.590、消衰係数kが0.000であった。ArFエキシマレーザーの露光光の波長の光に対する反射防止膜7の裏面反射率は0.5%であった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。まず、上記マスクブランク100の上面に、スピン塗布法によって、電子線描画用の化学増幅型レジスト(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を塗布し、所定のベーク処理を行って、膜厚80nmのレジスト膜を形成した。次に、電子線描画機を用いて、上記レジスト膜に対して所定のデバイスパターン(基板に掘り込む転写パターンに対応するパターン)を描画した後、レジスト膜を現像してレジストパターン5aを形成した(図4(a)参照)。なお、このレジストパターン5aは、線幅50nmのライン・アンド・スペースパターンを含むものとした。
次に、レジストパターン5aをマスクとし、ドライエッチングでハードマスク膜4のドライエッチングを行い、ハードマスク膜4にパターン4aを形成した(図4(b)参照)。エッチングガスとしては塩素ガス(Cl)と酸素ガス(O)との混合ガス(Cl:O=13:1(流量比))を用い、バイアス電圧を印加した時の電力が50Wでドライエッチングを行った。
次に、上記レジストパターン5aを除去した後、ハードマスク膜4のパターン4aをマスクとし、エッチングガスとしてフッ素系ガス(SF)を用い、SiN系の遮光膜3のドライエッチングを行い、遮光膜3にパターン3aを形成した(図4(c)参照)。
次に、遮光膜3のパターン3aをマスクとし、ドライエッチングでエッチングストッパー兼ハードマスク膜2のドライエッチングを行い、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2にパターン2aを形成するとともに、上記ハードマスクパターン4aを除去した(図4(d)参照)。エッチングガスとしては塩素ガス(Cl)と酸素ガス(O)との混合ガス(Cl:O=13:1(流量比))を用い、バイアス電圧を印加した時の電力が50Wでドライエッチングを行った。
次に、遮光膜3のパターン3aが形成されたマスクブランクの全面に上記と同様のレジスト膜を形成し、このレジスト膜に対して、所定の遮光パターン(遮光帯パターン)を描画し、描画後、現像することにより、遮光パターンを有するレジストパターン6bを形成した(図4(e)参照)。
次に、レジストパターン6bをマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、露出している遮光膜3のパターン3aを剥離除去するとともに、エッチングストッパー兼ハードマスク膜2に形成されたエッチングストッパー膜パターン2aをマスクとして、透光性基板1(合成石英基板)のドライエッチングを行い、基板掘り込みタイプの位相シフトパターン1aを形成した(図4(f)参照)。このとき、180度の位相差が得られる深さ(約173nm)に基板を掘り込んだ。なお、ドライエッチングのエッチングガスにはフッ素系ガス(CF)とヘリウム(He)との混合ガスを用いた。
次に、レジストパターン6bをマスクとし、塩素ガス(Cl)と酸素ガス(O)との混合ガス(Cl:O=4:1(流量比))を用いたドライエッチングにより、露出している上記エッチングストッパー膜パターン2aを剥離除去するとともに、残存するレジストパターン6bを除去した(図4(g)参照)。
以上のようにして、透光性基板1に、掘り込みタイプの位相シフトパターン1aが形成され、外周領域の遮光パターン(遮光帯パターン)を備えた基板掘り込みタイプの位相シフトマスク(転写用マスク)200を完成した(図4(g)参照)。
得られた上記位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行った結果、設計値から許容範囲内で位相シフトパターンが形成されていることが確認できた。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
実施例2のマスクブランク110は、位相シフト膜2、遮光膜3、ハードマスク膜4以外については、実施例1と同様の手順で製造した。
具体的には、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスおよび窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングにより、透光性基板1の表面(一方の主表面)に接してケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の第1A層21(SiN膜 Si:N=43原子%:57原子%)を12nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第1A層21上に、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の第2A層22(SiN膜 Si:N=68原子%:32原子%)を15nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第2A層22上に、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の第3A層23(SiN膜 Si:N=43原子%:57原子%)を42nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第3A層23上に、ケイ素および酸素からなる位相シフト膜2の第4A層24(SiO膜 Si:O=33原子%:67原子%)を3nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1の表面に接して第1A層21、第2A層22、第3A層23、第4A層24が積層した位相シフト膜2を72nmの厚さで形成した。
次に、位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その位相シフト膜2のArFエキシマレーザーの露光光の波長(波長193nm)の光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が6.2%、位相差が178.2度(deg)であった。また、この位相シフト膜2の第1A層21、第2A層22、第3A層23、第4A層24の各光学特性を分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M-2000D)で測定したところ、第1A層21は屈折率n1Aが2.595、消衰係数k1Aが0.357であり、第2A層22は、屈折率n2Aが1.648、消衰係数k2Aが1.861であり、第3A層23は、屈折率n3Aが2.595、消衰係数k3Aが0.357であり、第4A層24は、屈折率n4Aが1.590、消衰係数k4Aが0.000であった。ArFエキシマレーザーの露光光の波長の光に対する位相シフト膜2の裏面反射率は3.8%であった。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上にCrOCNからなる遮光膜3(CrOCN膜 Cr:O:C:N=55原子%:22原子%:12原子%:11原子%)を43nmの厚さで形成した。この透光性基板1上に位相シフト膜2と遮光膜3が積層した状態におけるArFエキシマレーザーの露光光の波長の光に対する裏面反射率は4.7%であった。この位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。また、別の透光性基板1を準備し、同じ成膜条件で遮光膜3のみを成膜し、その遮光膜3の光学特性を上記分光エリプソメーターで測定したところ、屈折率nが1.92、消衰係数kが1.50であった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとし、RFスパッタリングにより遮光膜3の上に、ケイ素および酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで形成した。
そして、実施例1と同様の成膜条件で、透光性基板1の裏面(他方の主表面)に、第1層71、第2層72、第3層73が積層した反射防止膜7を41nmの厚さで形成した。
以上の手順により、透光性基板1の表面上に、4層構造の位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層した構造を備え、透光性基板1の裏面上に、3層構造の反射防止膜7を備えるマスクブランク110を製造した。
このマスクブランク110について、裏面反射率を測定したところ、0.0%であった。なお、このマスクブランクの裏面反射率とは、反射防止膜7の表面から出射された光(空気と反射防止膜7との界面での反射光、透光性基板1と位相シフト膜2との界面での反射光等が合成された光。)に係る反射率のことである(以降の実施例3および比較例1も同様。)。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランク110を用い、以下の手順で実施例2の位相シフトマスク210を作製した。最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図5(a)参照)。このとき、第1のレジストパターン5aには、パターン形成領域外において、バーコードやアライメントマークに対応する形状のパターンも併せて形成した。
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図5(b)参照)。このとき、ハードマスク膜4には、パターン形成領域外において、バーコードやアライメントマークに対応する形状のパターンも併せて形成した。その後、第1のレジストパターン5aを除去した。
続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=10:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(図5(c)参照)。このとき、遮光膜3には、パターン形成領域外において、バーコードやアライメントマークに対応する形状のパターンも併せて形成した。次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(図5(d)参照)。このとき、位相シフト膜2には、パターン形成領域外において、バーコードやアライメントマークに対応する形状のパターンも併せて形成した。
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6cを形成した(図5(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6cをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3c)を形成した(図5(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6cを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク210を得た(図5(g)参照)。
この位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、ArFエキシマレーザーの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、露光転写像には、バーコードやアライメントマークの映り込みに起因するCDばらつきは見られなかった。以上のことから、この実施例2のマスクブランクから製造された位相シフトマスク210は、露光装置にセットしてArFエキシマレーザーの露光光による露光転写を行っても、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができるといえる。
(実施例3)
[マスクブランクの製造]
実施例3のマスクブランク120は、位相シフト膜2以外については、実施例2と同様の手順で製造した。この実施例3の位相シフト膜2は、実施例2とはそれぞれ異なる膜厚及び組成を有する、第1B層21、第2B層22、第3B層23を備えている。具体的には、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス、酸素(O)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとするRFスパッタリングにより、透光性基板1の表面に接してケイ素、酸素および窒素からなる位相シフト膜2の第1B層21(SiON膜 Si:O:N=40原子%:35原子%:25原子%)を29.5nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第1B層21上に、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の第2B層22(SiN膜 Si:N=43原子%:57原子%)を41.5nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第2B層22上に、ケイ素および酸素からなる位相シフト膜2の第3B層23(SiO膜 Si:O=33原子%:67原子%)を3nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1の表面に接して第1B層21、第2B層22、第3B層23が積層した位相シフト膜2を74nmの厚さで形成した。
上記位相シフト量測定装置を用いて、その位相シフト膜2のArFエキシマレーザーの露光光の波長(波長193nm)の光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が27.7%、位相差が179.3度(deg)であった。さらに、この位相シフト膜2の第1B層21、第2B層22、第3B層23の各光学特性を上記分光エリプソメーターで測定したところ、第1B層21は屈折率n1Bが1.990、消衰係数k1Bが0.085であり、第2B層22は、屈折率n2Bが2.595、消衰係数k2Bが0.357であり、第3B層23は、屈折率n3Bが1.590、消衰係数k3Bが0.000であった。位相シフト膜2のArFエキシマレーザーの露光光の波長の光に対する裏面反射率(透光性基板1側の反射率)は8.4%であった。この透光性基板1上に位相シフト膜2と遮光膜3が積層した状態におけるArFエキシマレーザーの露光光の波長の光に対する裏面反射率(透光性基板1側の反射率)は8.3%であった。この位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
そして、実施例1と同様の成膜条件で、透光性基板1の裏面に、第1層71、第2層72、第3層73が積層した反射防止膜7を41nmの厚さで形成した。
以上の手順により、透光性基板1上に、第1B層21、第2B層22、第3B層23とからなる位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層した構造を備え、透光性基板1の裏面上に、3層構造の反射防止膜7を備える実施例3のマスクブランク120を製造した。
このマスクブランク120について、裏面反射率を測定したところ、0.6%であった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例3のマスクブランク120を用い、実施例1と同様の手順で、実施例3の位相シフトマスク220を作製した。
この位相シフトマスク220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、ArFエキシマレーザーの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、露光転写像には、バーコードやアライメントマークの映り込みに起因するCDばらつきは見られなかった。以上のことから、この実施例3のマスクブランクから製造された位相シフトマスク220は、露光装置にセットしてArFエキシマレーザーの露光光による露光転写を行っても、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができるといえる。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
この比較例1のマスクブランクは、反射防止膜以外については、実施例2と同様の手順で製造した。この比較例1の反射防止膜は、実施例2における反射防止膜の第1層と第2層とを入れ替えた構成としている。
具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、透光性基板の裏面が露出するように透光性基板を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板の裏面上に、ケイ素および窒素からなる反射防止膜の第2層(SiN膜 Si:N=43原子%:57原子%)を6nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第1層71上に、ケイ素および窒素からなる反射防止膜の第2層(SiN膜 Si:N=68原子%:32原子%)を20nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第2層上に、ケイ素および酸素からなる反射防止膜の第3層(SiO膜 Si:O=33原子%:67原子%)を15nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板の裏面に接して第1層、第2層、第3層が積層した反射防止膜7を41nmの厚さで形成した。
すなわち、この比較例2の反射防止膜は、第1層、第2層および第3層の露光光の波長における屈折率についての、n<nおよびn>nの関係、消衰係数についての、k>k>kの関係、膜厚についての、d>dおよびd<dの関係の、いずれも満たすものではない。
反射防止膜のArFエキシマレーザーの露光光に対する裏面反射率は18.8%であり、大幅に高いものであった。
また、透光性基板の表面に、実施例2と同様に、位相シフト膜として機能するパターン形成用薄膜、遮光膜およびハードマスク膜がこの順に積層された構造を備えるとともに、透光性基板の裏面に、比較例1において上述した構造の反射防止膜を形成して、マスクブランクを製造した。この比較例1のマスクブランクは、ArFエキシマレーザーの露光光に対する裏面反射率は18.8%であり、大幅に高いものであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを作製した。
作製した比較例1のハーフトーン型位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、ArFエキシマレーザーの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける露光転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションで得られた露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たせていなかった。以上のことから、この比較例2のマスクブランクから製造された位相シフトマスクは、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができなくなるといえる。
また、実施例3のマスクブランク120における裏面反射率の測定結果から、比較例1の反射防止膜を実施例3のマスクブランク120の反射防止膜7に適用した場合、このマスクブランクから製造された位相シフトマスクは、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができなくなることが推定される。
1 透光性基板
2 パターン形成用薄膜(エッチングストッパー兼ハードマスク膜、位相シフト膜)
21 第1A層、第1B層
22 第2A層、第2B層
23 第3A層、第3B層
24 第4A層
2a 薄膜パターン(位相シフトパターン)
3 遮光膜
3a,3b 遮光パターン
4 ハードマスク膜
4a ハードマスクパターン
5a 第1のレジストパターン
6b、6c 第2のレジストパターン
7 反射防止膜
71 第1層
72 第2層
73 第3層
100,110,120 マスクブランク
200,210,220 位相シフトマスク

Claims (17)

  1. 対向する2つの主表面を有する透光性基板と、一方の前記主表面上に設けられたパターン形成用薄膜とを備えるマスクブランクであって、
    他方の前記主表面上に、前記透光性基板側から第1層、第2層および第3層の順に積層した構造の反射防止膜を備え、
    前記第1層、前記第2層および前記第3層のArFエキシマレーザーの露光光の波長における屈折率をそれぞれn、n、nとしたとき、n<nおよびn>nの関係を満たし、
    前記第1層、前記第2層および前記第3層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk、k、kとしたとき、k>k>kの関係を満たし、
    前記第1層、前記第2層および前記第3層の膜厚をそれぞれd、d、dとしたとき、d>dおよびd<dの関係を満たし、
    前記第1層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
    前記第2層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成され、
    前記第3層は、ケイ素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されていることを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記透光性基板の前記露光光の波長における屈折率をnとしたとき、n<n<nの関係を満たし、
    前記透光性基板の前記露光光の波長における消衰係数をkとしたとき、k<k<kの関係を満たすことを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記第1層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記第2層は、前記第1層よりも窒素の含有量が多いことを特徴とする請求項記載のマスクブランク。
  5. 前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜を含み、
    前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から第1A層、第2A層および第3A層の順に積層した構造を備え、
    前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の前記露光光の波長における屈折率をそれぞれn1A、n2A、n3Aとしたとき、n1A>n2Aおよびn2A<n3Aの関係を満たし、
    前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1A、k2A、k3Aとしたとき、k1A<k2Aおよびk2A>k3Aの関係を満たし、
    前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層の膜厚をそれぞれd1A、d2A、d3Aとしたとき、d1A<d3Aおよびd2A<d3Aの関係を満たすことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記第3A層の膜厚をd3Aは、前記第A層の膜厚d1Aの2倍以上であることを特徴とする請求項記載のマスクブランク。
  7. 前記第1A層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項またはに記載のマスクブランク。
  8. 前記第1A層、前記第2A層および前記第3A層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項からのいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記第2A層は、前記第1A層および前記第3A層よりも窒素の含有量が少ないことを特徴とする請求項記載のマスクブランク。
  10. 前記位相シフト膜は、前記露光光を2%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項からのいずれかに記載のマスクブランク。
  11. 前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜を含み、
    前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から第1B層および第2B層の順に積層した構造を備え、
    前記第1B層および前記第2B層の前記露光光の波長における屈折率をそれぞれn1B、n2Bとしたとき、n1B<n2Bの関係を満たし、
    前記第1B層および前記第2B層の前記露光光の波長における消衰係数をそれぞれk1B、k2Bとしたとき、k1B<k2Bの関係を満たし、
    前記第1B層および前記第2B層の膜厚をそれぞれd1B、d2Bとしたとき、d1B<d2Bの関係を満たすことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
  12. 前記第1B層は、前記透光性基板の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  13. 前記第1B層は、ケイ素と窒素と酸素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成され、
    前記第2B層は、ケイ素と窒素とからなる材料、または半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されていることを特徴とする請求項1または1に記載のマスクブランク。
  14. 前記第2B層は、前記第1B層よりも窒素の含有量が多いことを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  15. 前記位相シフト膜は、前記露光光を15%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項1から1のいずれかに記載のマスクブランク。
  16. 請求項1から1のいずれかに記載のマスクブランクにおける前記透光性基板または前記パターン形成用薄膜に、転写パターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
  17. 請求項1記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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