JP7176764B2 - ナイーブ型多能性幹細胞からの原始内胚葉誘導方法 - Google Patents

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Description

本発明はナイーブ型多能性幹細胞からの原始内胚葉誘導方法に関する。本発明はまた、ナイーブ型多能性幹細胞から原始内胚葉を誘導するために好適に使用される培地に関する。本発明はまた、原始内胚葉を効率よく検出・分離するための分子マーカーに関する。本発明はさらに、原始内胚葉とエピブラストの共培養による原腸陥入を模倣し、中内胚葉分化を誘導する方法に関する。
哺乳動物の発生段階においては、胚盤胞の内側に内部細胞塊が形成され、そこからエピブラストと原始内胚葉が出現し、エピブラストは、原始腸管形成が行われて胚性中内胚葉に分化する一方、原始内胚葉は胚体外組織、特に卵黄嚢に分化する。これらの発生プロセスを胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞により再現することは、発生メカニズムの解析、発生段階での疾患のメカニズム解明・治療等に有用である。
しかしながら、ヒトのES細胞やiPS細胞はマウスの多能性幹細胞に比べ、発生が進んだプライム型に分類され、エピブラストや原始内胚葉への分化は困難であった。
そこで、本発明者の一人である高島は、ヒト多能性幹細胞にNANOGとKLF2の2つの遺伝子を発現させることで、基底状態と同じ状態までヒト多能性幹細胞をリセットした、ナイーブ型多能性幹細胞を得ることに成功し(非特許文献1)、これを用いた原始内胚葉の誘導及び初期発生の解析を行っている(非特許文献2)。
Cell 158 : 1254-1269, 2014 初期化技術を用いたヒト着床前胚体外組織の誘導およびヒト初期発生の解析~科研費報告書 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06329/
本発明は多能性幹細胞から原始内胚葉を効率よく簡便な方法で誘導するための方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、原始内胚葉とエピブラスト(プライム型多能性幹細胞)を用いて効率よく中内胚葉分化を誘導する方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、原始内胚葉を効率よく検出・分離するための分子マーカーを提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ナイーブ型多能性幹細胞を用い、これを、BMP(Bone morphogenetic protein)およびFGF4(Fibroblast growth factor 4)を含む培地で培養することにより原始内胚葉を効率よく誘導できることを見出した。さらに、得られた原始内胚葉をプライム型の多能性幹細胞と共培養することにより、原腸陥入を模倣して、中内胚葉分化を誘導できることを見出した。さらに、CEACAM1 (carcinoembryonic antigen related cell adhesion molecule 1)およびANPEP(alanyl aminopeptidase, membrane)が原始内胚葉の特異的マーカーとして原始内胚葉の選別や検出に効率よく使用できることを見出して本発明を完成させた。
本発明は以下を提供する。
[1]原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法であって、
ナイーブ型多能性幹細胞を、BMPおよびFGF4を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程を含む方法。
[2]前記培地はさらにPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)、IL-6(Interleukine-6)、TGF(Transforming Growth Factor)β阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、[1]に記載の原始内胚葉の調製方法。
[3]前記培地は、BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、[1]に記載の原始内胚葉の調製方法。
[4]BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、[1]~[3]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[5]さらに、原始内胚葉細胞をCEACAM1またはANPEPを用いて純化する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[6]多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、[1]~[5]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[7]多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、[1]~[6]のいずれかに記載の原始内胚葉の調製方法。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の方法で原始内胚葉を調製する工程、および、得られた原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
[9][8]に記載の方法で中内胚葉を調製する工程、および、さらに、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法。
[10]原始内胚葉を提供する工程、および、当該原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
[11][1]~[7]のいずれかに記載の方法で調製された原始内胚葉細胞。
[12]原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を分離する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別する工程を含む、方法。
[13]原始内胚葉細胞を含む細胞集団において原始内胚葉細胞を検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を検出する工程を含む、方法。
[14]CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する分子を含む、原始内胚葉細胞検出用試薬。
[15]BMPおよびFGF4を含むナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[16]さらに、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、[15]に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[17]BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、[15]に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
[18]BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、[15]~[17]のいずれかに記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
本発明によれば、遺伝子の強制発現を伴うことなく、培養操作のみで簡便に多能性幹細胞から原始内胚葉を誘導することができる。さらには、原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養することで生理的な発生プロセスにおける原腸陥入を模倣して中内胚葉分化をすることができ、さらには、中内胚葉から心筋前駆細胞および膵前駆細胞まで分化誘導することができる。本発明の方法は従来のプライム型多能性幹細胞では困難であった胚体外細胞である原始内胚葉への分化誘導を簡便な手順で実現したものであり、多能性幹細胞を用いて機能的な成熟した細胞や組織を誘導するための基盤技術となりうる画期的な方法である。本発明の方法は発生メカニズムの解明、再生医療、発生段階での疾患のメカニズム解明・治療などに有用である。また、本発明の分子マーカーを用いた原始内胚葉の選別・検出方法は、原始内胚葉細胞を選択的に選別・検出できるため、有用である。
多能性幹細胞(PSC)におけるGATA遺伝子またはSOX遺伝子の発現誘導の手順を示す図。 GATA遺伝子またはSOX遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCのコロニー形態を示す顕微鏡写真。 GATA遺伝子またはSOX遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCにおける内在性GATA4, GATA6, SOX17遺伝子の発現量の経時変化を示すグラフ。 GATA遺伝子またはSOX遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCにおける内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化を示すグラフ。 GATA遺伝子またはSOX遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCにおける内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 GATA6遺伝子またはGATA4遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCにおいて、PDGFRA陽性細胞とPDGFRA陰性細胞に分け、それぞれにおける内在性遺伝子の発現量の経時変化を示したグラフ。 GATA6遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCにおいて、Day0とDay3(PDGFRA陽性細胞)における内在性遺伝子の発現量を比較したグラフ。 GATA4遺伝子を過剰発現させたナイーブ型PSCまたはプライム型PSCにおいて、Day0とDay3(PDGFRA陽性細胞)における内在性遺伝子の発現量を比較したグラフ。 GATA6遺伝子を過剰発現させ、FGF4を加えて培養したナイーブ型PSC(H9)における内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化をフローサイトメトリーで解析した結果を示すグラフ。 GATA6遺伝子を過剰発現させ、非血清培地(SFO3)あるいは血清培地(GMEM)で培養したナイーブ型PSC(H9)において、Day0とDay3(PDGFRA陽性細胞)における内在性遺伝子の発現量を示したグラフ。 GATA6遺伝子を過剰発現させ、非血清培地(SFO3)で培養したナイーブ型PSC(H9)において、Day0とDay3(PDGFRA陽性細胞)におけるGATA6、GATA4、SOX17またはNANOGの発現を免疫染色で解析した結果を示す写真。青はDAPI(核)染色を示す。 GATA6をナイーブ型PSCまたはプライム型PSCに過剰発現させて誘導したPDGFRA陽性細胞(Day1, Day3)において全遺伝子を用いてPCA解析を行った結果を示す図。Day0の結果も合わせて示す。 GATA6をナイーブ型PSCまたはプライム型PSCに過剰発現させて誘導したPDGFRA陽性細胞(Day1, Day3)においてprimitive streak関連遺伝子または内胚葉関連遺伝子の発現量を解析した結果を示す図(N=2)。Day0の結果も合わせて示す。 GATA6をナイーブ型PSC に発現させて誘導された細胞(H9-naive-GATA6)(Day0、Day1、Day3)においてヒト胚におけるEpiblastと原始内胚葉(PrE)に関するTop100遺伝子の発現を比較した結果を示す図。 GATA6をナイーブ型PSC またはプライム型PSCに発現させて誘導された細胞(H9-naive-GATA6およびH9-primed-GATA6)においてChIP-seq(GATA6、GATA4、SOX17、HNF4AまたはPDGFRA)を行った結果を示す図。 GATA6をナイーブ型PSC またはプライム型PSCに発現させて誘導された細胞(H9-naive-GATA6およびH9-primed-GATA6)においてChIP-seq(BMP2、BMP6、IL6STまたはFRZB)を行った結果を示す図。 GATA6をナイーブ型PSCに過剰発現させて誘導したPDGFRA陽性細胞(Day1, Day3)においてBMP2、BMP6、PDGFRA 、LEFTY1、IL6STまたはFRZB遺伝子の発現量を解析した結果を示す図(N=2)。Day0の結果も合わせて示す。 ウエスタンブロットによりSMAD1/5/8、MAPK、STAT3およびSMAD2のリン酸化の解析を行った結果を示す写真。 7因子(BMPはBMP2)を含む培地で分化誘導したナイーブ型PSCにおける内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 7因子(BMPはBMP6)を含む培地で分化誘導したナイーブ型PSCにおける内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 7因子(BMPはBMP4)を含む培地で分化誘導したナイーブ型PSCにおける内在性PDGFRA遺伝子の発現量の経時変化をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 GATA6強制発現または7因子(BMPはBMP4)培養で分化誘導したナイーブ型PSCにおけるDay3(PDGFRA陽性細胞)における内在性遺伝子の発現量を比較したグラフ。Day0の結果も合わせて示す。 GATA6強制発現または7因子(BMPはBMP4)培養で分化誘導したナイーブ型PSCにおけるDay3(PDGFRA陽性細胞)におけるGATA6とGATA4またはSOX17の発現を免疫染色で解析した結果を示す図(写真)。 7因子を含む培地で分化誘導したナイーブ型PSCまたはGATA6を強制発現させたプライム型PSCにおけるCD57とCD75の発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 ナイーブ型PSC由来PDGFRA陽性細胞とプライム型PSC由来PDGFRA陽性細胞におけるCEACAM1遺伝子の発現量を比較した結果を示す図。 ナイーブ型PSC (分化誘導前)、GATA6強制発現ナイーブ型PSC 、7因子培養ナイーブ型PSC、プライム型PSC (分化誘導前)またはGATA6強制発現プライム型PSCにおけるCEACAM1の発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 ナイーブ型PSC (分化誘導前)、GATA6強制発現ナイーブ型PSC 、7因子培養ナイーブ型PSCにおけるANPEPおよびCEACAM1の発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 ナイーブ型PSC由来PDGFRA陽性細胞とプライム型PSC由来PDGFRA陽性細胞における臓側内胚葉遺伝子、卵黄嚢遺伝子、胚体外中胚葉遺伝子の発現量(Day0、Day3、再培養13日)を比較した結果を示す図。 ナイーブ型PSC由来PDGFRA陽性細胞(原始内胚葉細胞)とプライム型PSCを共培養してTおよびOCT3/4の発現を免疫染色で解析した結果を示す図(写真)。 ナイーブ型PSC を7因子または7因子から1因子を各々subtractし、6因子で分化誘導したとき、あるいは6因子にPD03(MEC阻害剤), LDN193189 (BMP阻害剤), JaKi(JaK阻害剤), Activin, CH (Wnt 活性化剤) の各々を加えて分化誘導した時のPDGFRAの発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 GP130Y118F chimeric receptor を導入したナイーブ型PSCをG-CSFで活性化し、7因子からIL-6を除いた6因子を加えて分化誘導した時のPDGFRAの発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。 ナイーブ型PSC において、shGATA6を用いて、GATA6をノックダウンし、7因子を用いて分化誘導したときのCEACAM1の発現量をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図。
<原始内胚葉の調製方法>
本発明の原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法は、
ナイーブ型多能性幹細胞を、
BMP(Bone morphogenetic protein)およびFGF4(Fibroblast growth factor 4)
を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程、を含む。
培地は、BMPとFGF4に加えて、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上(好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは5種類全て)を含むことが好ましい。
より好ましい態様において、培地は、BMPとFGF4に加えて、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む。
<多能性幹細胞>
本発明において多能性幹細胞とは、生体に存在する多くの細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、原始内胚葉に誘導される任意の細胞が包含される。多能性幹細胞には、特に限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、***幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、iPS細胞およびES細胞である。多能性幹細胞の由来は哺乳動物由来であることが好ましく、霊長類由来であることがより好ましく、ヒト由来であることがさらに好ましい。
iPS細胞の製造方法は当該分野で公知であり、任意の体細胞へ初期化因子を導入することなどによって製造され得る。ここで、初期化因子とは、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等の遺伝子または遺伝子産物が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO2010/111409、WO2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.,26:795-797、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,2:525-528、Eminli S,et al.(2008),Stem Cells.26:2467-2474、Huangfu D,et al.(2008),Nat.Biotechnol.26:1269-1275、Shi Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3,568-574、Zhao Y,et al.(2008),Cell Stem Cell,3:475-479、Marson A,(2008),Cell Stem Cell,3,132-135、Feng B,et al.(2009),Nat.Cell Biol.11:197-203、R.L.Judson et al.,(2009),Nat.Biotechnol.,27:459-461、Lyssiotis CA,et al.(2009),Proc Natl Acad Sci U S A.106:8912-8917、Kim JB,et al.(2009),Nature.461:649-643、Ichida JK,et al.(2009),Cell Stem Cell.5:491-503、Heng JC,et al.(2010),Cell Stem Cell.6:167-74、Han J,et al.(2010),Nature.463:1096-100、Mali P,et al.(2010),Stem Cells.28:713-720、Maekawa M,et al.(2011),Nature.474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)血液細胞(末梢血細胞、臍帯血細胞等)、リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
<ナイーブ型多能性幹細胞>
ナイーブ(naive)型多能性幹細胞は、着床前胚に類似した性質を持つ多能性幹細胞であるが、具体的には、以下のような特徴を有する(Cytometry Research 27(1):19 ~ 24,2017)。
ドーム型のコロニー形態を示し、コロニーの大きさはプライム型より小さい。
マーカーとして、CD75、KLF4およびTFCP2L1の1つ以上を発現する。
ゲノムが脱メチル化されている。
ナイーブ型多能性幹細胞は、例えば、下記のような方法によって作成することができる。
NANOGとKLF2の過剰発現を用いる方法(Takashima et al., Cell 158 : 1254-1269, 2014)
5iLFAコンディションを用いる方法(Theunissen et al., Cell Stem Cell. 2016 Oct 6; 19(4):502-515.)
HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤を用いる方法(Guo, G. et al. (2017). Development 144(15): 2748-2763.)
また、t2iLGo(Ndiff227[Takara Bio, Cat. Y40002]など、市販のナイーブ型多能性幹細胞調製用培地を用いて、プライム型多能性幹細胞を培養することにより得ることもできる。
<プライム型多能性幹細胞>
プライム(primed)型多能性幹細胞は着床後胚のエピブラストに類似した性質を持つ多能性幹細胞であるが、体細胞に初期化因子を導入して得られる一般的な人工多能性幹細胞やヒトES細胞がこれに該当し、上記のようなナイーブ化処理をされていないものである。
プライム型多能性幹細胞は以下のような特徴を有する。
平坦なコロニー形態を示し、コロニーの大きさはナイーブ型より大きい。
マーカーとして、CD75、KLF4およびTFCP2L1は陰性である。
ゲノムがメチル化されている。
<TGFβ阻害剤>
TGFβ阻害剤とは、TGFβの受容体への結合からSMADへと続くシグナル伝達を阻害する物質であり、受容体であるALK(アクチビン受容体様キナーゼ)ファミリーへの結合を阻害する物質、またはALKファミリーによるSMADのリン酸化を阻害する物質が挙げられ、例えば、Lefty-1(NCBI Accession No.として、マウス:NM_010094、ヒト:NM_020997が例示される)、SB431542、SB202190(以上、R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer, 2003, 2:20)、SB505124 (GlaxoSmithKline)、SB-525334、GW6604、NPC30345、SD093、SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、 LY580276 (Lilly Research Laboratories)、A83-01(WO 2009146408) およびこれらの誘導体などが例示される。
本発明で使用されるTGFβ阻害剤は、好ましくは、A83-01である。
培養液に含まれるTGFβ阻害剤の濃度としては、TGFβ阻害剤の種類に応じてTGFβ阻害効果を発揮する濃度を適宜選択することができ、例えば、A83-01を用いる場合、通常0.025~100μMの範囲内であり、好ましくは0.075~50μM、より好ましくは0.25~10μMである。
<Wntシグナル阻害剤>
Wntシグナル阻害剤としては、遺伝子発現や細胞骨格の制御に関与するWntシグナル経路を抑制できるものであれば特に限定されず、具体的には、XAV939(tankyrase阻害剤)、IWP-1、IWP-2、IWP-3、IWP-4、IWR-1、53AH(以上porcupine阻害剤)、KY02111などの低分子化合物及びそれらの誘導体や、IGFBP4、DKK1、Wnt-C59などのタンパク質や、Wnt及びWntシグナル経路を構成する蛋白質の発現又は機能を抑制するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導性核酸(例えばsiRNA)、競合ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害抗体、抗体-ScFV断片、ドミナントネガティブ変異体、及びそれらの発現ベクターを挙げることができ、低分子化合物であるWntシグナル阻害剤が好ましく、XAV939やIWP-4を好適に例示することができる。
培養液に含まれるWntシグナル阻害剤の濃度としては、Wntシグナル阻害剤の種類に応じてWntシグナル阻害効果を発揮する濃度を適宜選択することができ、例えばXAV939を用いる場合、通常0.025~100μMの範囲内であり、好ましくは0.075~50μM、より好ましくは0.25~10μMである。
<PDGF>
工程(i)で使用されるPDGFは二量体構造を取るタンパク質であることが好ましく、A型モノマーによる二量体(PDGF-AA)、B型モノマーによる二量体(PDGF-BB)、A型モノマーとB型モノマーによる二量体(PDGF-AB)などが例示されるが、PDGF-AAが好ましい。
PDGFは哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトPDGF-Aとしては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:NM_002607のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。PDGFは所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。PDGFは市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるPDGF二量体の濃度は、0.1ng/mlから100ng/ml、好ましくは、0.5ng/mlから50ng/ml、より好ましくは、5ng/mlから20ng/mlである。
<BMP>
BMPは、BMP2、BMP4およびBMP6から成る群より選択される少なくとも一つのBMPが挙げられるが、好ましくは、BMP4である。BMPは哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトBMP4としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:AAH20546.1のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。BMPは所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。BMPは市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるBMPの濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから200ng/mlである。
<レチノイン酸>
レチノイン酸は、レチノイン酸そのものでもよいし、天然のレチノイン酸が有する分化誘導機能を保持するレチノイン酸誘導体でもよい。レチノイン酸誘導体として、例えば、3-デヒドロレチノイン酸、4-[[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthalenyl)carbonyl]amino]-Benzoic acid(AM580)(Tamura K,et al.,Cell Differ.Dev.32:17-26(1990))、4-[(1E)-2-(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthalenyl)-1-propen-1-yl]-Benzoic acid(TTNPB)(Strickland S,et al.,Cancer Res.43:5268-5272(1983))、およびTanenaga,K.et al.,Cancer Res.40:914-919(1980)に記載されている化合物、パルミチン酸レチノール、レチノール、レチナール、3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール等が挙げられる。
培養液に含まれるレチノイン酸またはその誘導体の濃度は、例えば、1nMから1000nM、好ましくは、5nMから500nM、より好ましくは、10nMから250nMである。
<FGF4>
FGF4は哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトFGF4としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:NM_002007のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。FGF4は所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。FGF4は市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるFGF4の濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから100ng/mlである。
<IL-6>
IL-6は哺乳動物由来であることが好ましく、ヒト由来であることが好ましい。ヒトIL-6としては、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のアクセッション番号:M18403のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。IL-6は所望の分化誘導活性を有する限りその断片及び機能的改変体が包含される。IL-6は市販されているものを使用してもよいし、細胞から精製されたタンパク質や遺伝子組み換えで生産されたタンパク質を使用してもよい。培養液に含まれるIL-6の濃度は、0.1ng/mlから1000ng/ml、好ましくは、1ng/mlから500ng/ml、より好ましくは、10ng/mlから100ng/mlである。
原始内胚葉誘導工程において用いられる培養液は、特に限定されないが、ナイーブ型多能性幹細胞維持培地に、BMPおよびFGF4、好ましくはさらにPDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上(好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは5種類全て)を添加して調製することができる。なお、これらの因子は時期をずらして添加してもよい。例えば、IL-6は誘導開始から48時間後に添加することもできる。ナイーブ型多能性幹細胞維持培地としては、例えば、以下のような培地が使用できる。
・t2iLGo
N2B27 + PD0325901(1μM)+CHIR99021(1μM)+LIF+Go6983(2-3μM)
Takashima et al., Cell 158 : 1254-1269, 2014
・5iL/AF
N2B27 +PD0325901(1μM) +CHIR99021(1μM) +SB590885 (0.5μM) +WH-4-023 (1μM) +Y-27632(10μM) +LIF +Activin A
Theunissen, T. W., et al. (2014). Cell Stem Cell 15(4): 471-487.
・tt2iLGo
N2B27 +PD0325901(1μM) +LIF +Go6983(2μM) +XAV939(2μM)
Guo, G., et al. (2017). Development 144(15): 2748-2763.
培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清を使用してもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質も含有し得る。
原始内胚葉誘導工程において、ナイーブ型多能性幹細胞を接着培養または浮遊培養してもよく、接着培養の場合、培養容器をコーティングして用いてもよく、またフィーダー細胞等と共培養してもよい。共培養するフィーダー細胞としては、マイトマイシンC処理済のマウス胎仔由来の初代線維芽細胞(MEF)、STO細胞、SNL細胞、OP9細胞またはC3H10T1/2細胞等が挙げられる。
原始内胚葉誘導工程において、浮遊培養によって培養が行われる場合、細胞を培養容器へ非接着の状態で凝集体(スフェアとも言う)を形成させて培養することが望ましく、このような培養は、特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていない培養容器、若しくは、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)、非イオン性の界面活性ポリオール(Pluronic F-127等)またはリン脂質類似構造物(例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成単位とする水溶性ポリマー(Lipidure))によるコーティング処理した培養容器を使用することによって行うことができる。
原始内胚葉誘導工程において、接着培養が行われる場合、細胞外基質をコーティング処理された培養容器を用いて培養することによって行うことができる。コーティング処理は、細胞外基質を含有する溶液を培養容器に入れた後、当該溶液を適宜除くことによって行い得る。ここで、細胞外基質とは、細胞の外に存在する超分子構造体であり、天然由来であっても、人工物(組換え体)であってもよい。例えば、ポリリジン、ポリオルニチン、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリン、ラミニンといった物質およびこれらの断片が挙げられる。これらの細胞外基質は、組み合わせて用いられてもよく、例えば、BD Matrigel(商標)などの細胞からの調製物であってもよい。
原始内胚葉誘導工程における、ナイーブ型多能性幹細胞を培養する際の培養温度条件は、特に限定されないが、例えば、約37℃~約42℃程度、約37~約39℃程度が好ましい。また、培養期間については、当業者であれば細胞数などをモニターしながら、適宜決定することが可能である。日数は原始内胚葉が得られる限り特に限定されないが、例えば、少なくとも1日間以上、好ましくは2~5日である。
<原始内胚葉>
上記のような培養工程を行うことにより原始内胚葉を得ることができる。
原始内胚葉は、GATA3、GATA4、GATA6、SOX17、FOXA2(Forkhead Box A2)、HNF4A(Hepatocyte Nuclear Factor 4 Alpha)、CER1(Cerberus 1)、OTX2(Orthodenticle Homeobox 2)、 PDGFRA(Platelet Derived Growth Factor Receptor Alpha)、COL4A1(alpha-1 subunit of collagen type IV)、SPARC(Secreted protein acidic and rich in cysteine)などの原始内胚葉マーカーの1種類以上の発現により特徴づけられる。また、これら1種類以上のマーカーに加えて後述のCEACAM1またはANPEPを発現する細胞であることがより好ましい。
原始内胚葉細胞を濃縮するためには、原始内胚葉誘導工程を行った後に、原始内胚葉を選別する工程を行うこともできる。選別された原始内胚葉はさらに培養を続けることで臓側内胚葉および卵黄嚢にまで分化させることができる。
選別は上記のような原始内胚葉特異的なマーカーの1種類以上の発現を指標として行うことができる。
原始内胚葉マーカーを用いて原始内胚葉細胞を抽出する際には、各マーカータンパク質が発現していることを指標にしてもよいし、上記各マーカータンパク質をコードする遺伝子が発現(mRNAが発現)していることを指標にしてもよい。
原始内胚葉細胞を含有する細胞集団より原始内胚葉細胞の選別(抽出または検出の場合も同様)を行うために使用される試薬としては、上記原始内胚葉マーカーに特異的親和性を有する試薬であれば何でもよく、抗体、アプタマー、ペプチドまたは特異的に認識する化合物などを用いることができ、好ましくは、抗体もしくはその断片である。また、これらのマーカーの遺伝子発現を調べる場合は、これらのマーカー遺伝子にハイブリダイズするプライマーやプローブを使用することができる。
抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってよい。これらの抗体は、当業者に周知の技術を用いて作成することが可能である(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al.(1987) Section 11.12-11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したマーカータンパク質、あるいは部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、上述の免疫された非ヒト動物から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987) Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4-11.11)。抗体の断片としては、抗体の一部(例えば、Fab断片)または合成抗体断片(例えば、一本鎖Fv断片「ScFv」)が例示される。FabおよびF(ab)2断片などの抗体の断片もまた、遺伝子工学的に周知の方法によって作製することができる。マーカーが膜タンパク質である場合、細胞外ドメインに対する抗体であることが好ましい。抗体は市販の抗体を用いてもよい。
結合した細胞を区別、分離するため、当該親和性を有する抗体等の試薬は、例えば、蛍光標識、放射性標識、化学発光標識、酵素、ビオチン、ストレプトアビジン等の検出可能な物質、またはプロテインA、プロテインG、ビーズ、磁気ビーズ等の単離抽出を可能とさせる物質と結合または接合されていてもよい。
原始内胚葉細胞を選別(抽出または検出の場合も同様)する方法には、例えば、フローサイトメーターを用いる方法が挙げられる。また、担体に結合させた抗体を用いて沈降させる方法、磁気ビーズを用いて磁性により細胞を選別する方法(例えば、MACS)、蛍光標識を用いて細胞ソーターを用いる方法、または抗体等が固定化された担体(例えば、細胞濃縮カラム)を用いる方法等が例示される。
<CEACAM1またはANPEPを指標とした原始内胚葉細胞の抽出または検出方法>
本発明者らによりCEACAM1またはANPEPがナイーブ型多能性幹細胞由来原始内胚葉のマーカーとして好適に使用できることが見出されたため、本発明は、原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を選別(分離)又は検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別(分離)又は検出する工程を含む、方法を提供する。CEACAM1とANPEPの両方を使用してもよい。
CEACAM1はCD66とも呼ばれ、上皮細胞やT細胞などで発現するI型膜貫通型糖タンパク質であり、細胞間接着因子に分類される。例えば、ヒトCEACAM1のアミノ酸配列としてUniProt Knowledgebase(UniProtKB)にP13688 (CEAM1_HUMAN)として登録されているアミノ酸配列が挙げられる。
ANPEPはAminopeptidase N(APN)、CD13、またはPEPNとも呼ばれ、膜に存在するペプチダーゼである。例えば、ヒトANPEPのアミノ酸配列としてUniProtKBにP15144 (AMPN_HUMAN)として登録されているアミノ酸配列が挙げられる。
本発明において、「原始内胚葉細胞を含有する細胞集団」とは、原始内胚葉細胞を含有している細胞の集合体であれば、その由来は特に問わないが、ナイーブ型多能性幹細胞(好ましくはヒトナイーブ型多能性幹細胞)から原始内胚葉への分化誘導により得られた原始内胚葉細胞を含有する細胞集団であることが好ましい。なお、ナイーブ型多能性幹細胞から原始内胚葉への分化誘導の方法は上記に限定されず、GATA6などの遺伝子導入による分化誘導方法で得られたものでもよい。
本発明において、「原始内胚葉細胞の選別(分離)」とは、選別(分離)前と比して原始内胚葉細胞の割合を多くすることを意味し、好ましくは、原始内胚葉細胞を50%、60%、70%、80%または90%以上含有するよう濃縮させることである。より好ましくは、100%原始内胚葉細胞からなる細胞を得ることである。
CEACAM1またはANPEPを指標として原始内胚葉細胞を含有する細胞集団から原始内胚葉細胞を選別(分離)する場合、上記のGATA4、GATA6、SOX17、FOXA2等の原始内胚葉マーカーと組み合わせて使用してもよい。これにより、CEACAM1またはANPEP単独で使用する場合と比較して原始内胚葉の濃縮率は高められる。
なお、マーカーが陽性である細胞を選択的に選別(分離)することは、マーカーが陽性である細胞を全て選別(分離)することでもよいが、マーカーの発現量が一定量以上の細胞を選別(分離)することでもよい。例えば、原始内胚葉を含有する細胞集団において、マーカーの発現量が上位50%以内の細胞、上位40%以内の細胞、上位33%以内の細胞、上位30%以内の細胞、上位20%以内の細胞、または上位10%以内の細胞を選択的に収集することとすることができる。
<CEACAM1またはANPEPを指標とした原始内胚葉細胞の選別または検出のためのキット>
本発明はまた、CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する試薬を含む、原始内胚葉細胞の選別または検出のためのキットを提供する。本抽出キットに含まれる検出試薬は、上記したとおりであり、CEACAM1またはANPEPに対する抗体やCEACAM1遺伝子またはANPEP遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドなどが挙げられる。本発明における抽出キットは、CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する試薬と共に、当該検出試薬の使用方法を記載した指示書を含むこともできる。
<中内胚葉並びに心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法>
本発明はまた、原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法を提供する。さらには、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆培養細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法を提供する。原始内胚葉は上記のような方法で得られたものでもよいし、他の方法、例えばナイーブ型多能性幹細胞にGATA6遺伝子などを強制発現することにより得られるものでもよい。
個体発生においては、エピブラストが原腸嵌入を起こし、中・内胚葉を形成し発生分化していく。原始内胚葉は、エピブラストと接して存在し、原腸嵌入に必須の役割を果たす。このため、原始内胚葉とプライム型多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)を共培養することで、生理的な着床期初期発生に近い原腸嵌入の状態を試験管内で作り出すことができる。
原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養することにより、プライム型多能性幹細胞はエピブラストとして中内胚葉に分化し、原始内胚葉は卵黄嚢(yolk sac)に分化する。中内胚葉はマーカー分子であるT(Brachyury)の発現により同定されうる。
例えば、培養された原始内胚葉細胞に対し、プライム型多能性幹細胞を播種することで原始内胚葉とプライム型多能性幹細胞の共培養を行うことができる。培地はAK03, mTeSR1, F12/KSR等のiPS/ES細胞用培地を用いることが好ましく、マトリゲルなどの細胞外マトリクス成分を添加して培養してもよい。共培養に供される原始内胚葉とプライム型多能性幹細胞の数の割合は、1:3~3:1が好ましく、1:2~2:1がより好ましく、1:1が特に好ましい。共培養する際の培養温度条件は、特に限定されないが、例えば、約37℃~約42℃程度、約37~約39℃程度が好ましい。また、培養期間については特に限定されないが、例えば、少なくとも12時間間以上、好ましくは24~48時間である。
中内胚葉をさらに培養することで、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞を得ることができる。心筋前駆細胞に分化誘導するためには、TGFβ阻害剤、BMP、Wntシグナル阻害剤、アクチビンなどを培地に添加して培養するとよい。一方、膵前駆細胞に分化誘導するためには、KGF(keratinocyte growth factor)、ソニックヘッジホック阻害剤、レチノイン酸、BMP阻害剤、プロテインキナーゼC活性化剤(ホルボールエステルなど)などを培地に添加して培養するとよい。
心筋前駆細胞はマーカー分子であるトロポニンT(TnT)の発現により同定されうる。また、膵前駆細胞マーカー分子であるPDX1の発現により同定されうる。
<原始内胚葉への分化誘導のための培地>
本発明はまた、BMPおよびFGF4を含む原始内胚葉への分化誘導のためのナイーブ型多能性幹細胞用培地、好ましくはBMPおよびFGF4並びにPDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上(好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは5種類全て)を含む、原始内胚葉への分化誘導のためのナイーブ型多能性幹細胞用培地を提供する。これらは、各成分が原始内胚葉への分化誘導のために有効な濃度で含まれるよう予め調製された培地でもよいし、使用直前に各成分を添加することで調製して使用されるものでもよい。なお、これらの因子は時期をずらして添加してもよい。例えば、IL-6は誘導開始から48時間後に添加することもできる。したがって、いくつかの因子は別に提供されてもよい。培地(キット)には使用法や調製法を記載した取扱説明書が添付されていてもよい。原始内胚葉への分化誘導のための培地は、ナイーブ型多能性幹細胞の培養に必要な他の成分をさらに含むことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施態様には限定されない。
Material and method
Cell culture
ヒトプライム型 多能性幹細胞(PSC)ライン(H9ES(胚性幹)細胞、H1ES細胞、AdiPS細胞)はConventional condition(F12/KSRと呼ぶ) (Dulbecco’s modified Eagle medium [DMEM/F12; ナカライテスク, Cat.08460-95]、20%[v/v] KSR [Thermo Fisher Scientific, Cat. 10828028]、nonessential amino acids [NEAA; Thermo Fisher Scientific, Cat. 11140-050], 4 ng/ml recombinant human bFGF [bFGF; オリエンタル酵母, Cat. NIB 47079000]、 0.1 mM 2-mercaptoethanol [Sigma-Aldrich, Cat.M3148] )を用い、γ線照射したMEF上で維持した。細胞は5~7日毎にDissociation Buffer(DB; 0.025% Trypsin [Thermo Fisher Scientific, Cat. 15090-046]、1mg/ml Collagenase IV [Thermo Fisher Scientific, Cat. 17104-019]、20%KSR、1mM CaCl2)を用い、小さなクランプ様に剥離し継代した。
ヒトナイーブ型多能性幹細胞ライン(H9ES細胞、H1ES細胞、AdiPS細胞由来)はt2iLGo(Ndiff227[Takara Bio, Cat. Y40002]、1 μM PD0325901 [PD03; Tocris, Cat.4192]、 1μM CHIR99021[CH; Sigma-Aldrich, Cat.SML1046]、10ng/ml Recombinant human LIF [hLIF; Peprotech, Cat.300-05]、 3μM Go6983[Go; Tocris, Cat.2285])を用いMEF上で維持した。細胞は3~5日毎にAccutase(Sigma-Aldrich, Cat.A6964)を用い剥離し継代した。
ナイーブ型H9PSCは、HDAC阻害剤を用いた方法で樹立した(Guo, G. et al. (2017). Development 144(15): 2748-2763.)。樹立に際して、プライム型H9PSCにエレクトロポレーションによりEOSプラスミドを導入した(プライム型H9 EOS)。プラスミドには薬剤耐性マーカーとなる遺伝子(ピューロマイシン耐性)を組み込み、細胞への導入後、Puromycin Dihydrochloride(Thermo Fisher Scientific, Cat.A1113802)を用いて薬剤選択を行うことにより、プラスミドの導入された細胞を選抜した。プライム型H9 EOSをトリプシン/EDTA(ナカライテスク, Cat.32777-15)により単一な細胞へと剥離し、1×105個/cm2の細胞を10μM Y-27632(Wako, Cat.034-24024)を加えたF12/KSR培地でMEF上へと播種した。翌日からcRM1(Ndiff, 1μM PD03, 10ng/ml hLIF, 1mM Valproic acid sodium salt [VPA; Sigma-Aldrich, Cat.P4543])で48時間培養し、その後cRM2(Ndiff, 1μM PD03, 10ng/ml hLIF, 2μM Go, 2μM XAV939[Sigma-Aldrich, Cat.X3004])で細胞を維持した。3-5継代頃から大半の細胞がドーム状の形態を示すコロニーを形成する。この時点で、t2iLGo培地へと切り替え培養することで樹立した。
また、一部の実験では5iLFAコンディションを用いてナイーブ型H9を樹立した(Theunissen et al., Cell Stem Cell. 2016 Oct 6;19(4):502-515.)。プライム型H9をトリプシン/EDTAにより単一な細胞へと剥離し、1×105個/cm2の細胞を10μM Y-27632を加えたF12/KSR培地でMEF上へと播種した。翌日から5iLFA培地(Ndiff, 1μM PD03, 1μM CH, 1μM WH-4-023[A Chemtek H620061], 0.5μM SB590885[R and D 2650], 10μM Y-27632, 10ng/ml hLIF, 20ng/ml Activin A[R&D, Cat.388-AC], 8ng/ml bFGF)に変更し培養を続けた。大半の細胞がドーム状の形態を示すコロニーを形成した時点で(3-5継代)、t2iLGoへと切り替え維持することで樹立した。
ナイーブ型H1 PSC、AdiPSの樹立は、NANOGとKLF2の過剰発現を用いた方法で樹立した(Takashima et al., Cell 158 : 1254-1269, 2014)。DOXにより過剰発現を誘導することのできるプラスミドをエレクトロポレーションし、H1及びAdiPSへと導入した(H1 NK2、AdiPS NK2)。プラスミドには薬剤耐性マーカーとなる遺伝子(ネオマイシン耐性)を組み込み、細胞への導入後、Geneticin(Thermo Fisher Scientific, Cat.10131035)を用いて薬剤選択を行うことにより、プラスミドの導入された細胞を選抜した。プライム型H1 NK2、AdiPS NK2をトリプシン/EDTAにより単一な細胞へと剥離し、1×105個/cm2の細胞を10μM Y-27632(Wako, Cat.034-24024)を加えたF12/KSR培地でMEF上へと播種した。翌日(day1)、1μg/ml doxycycline hyclate(Dox; Sigma-Aldrich, Cat.D9891)を加えた。Day2から2iL(1μM PD03,1μM CH, LIF)+Dox培地に切り替え、約1週間培養する。その後、t2iLGoへと切り替え維持することで樹立した。
原始内胚葉誘導
MEF上で培養しているナイーブ型PSCをAccutaseにより剥離させ回収した後に、ゼラチンコートディッシュに播種し、10μM Y-27632(ROCK阻害剤)を加えたt2iLGoで37℃、1~2時間培養しMEFを取り除いた。その後、各々の誘導培地で再懸濁し、播種と同時に誘導を開始する。
遺伝子の過剰発現により誘導する場合には、Fibronectin (Millipore, Cat.FC010)上に1×105個/cm2の細胞を播種した。誘導培地には血清培地(Glasgow Minimum Essential Medium [GMEM; Sigma-Aldrich, Cat.G5154]、15% FBS[Thermo Fisher Scientific, Cat. 10437028]、2mM L-Glutamine[Thermo Fisher Scientific, Cat. 25030081]、1mM Sodium Pyruvate[Thermo Fisher Scientific, Cat.11360-070]、NEAA、0.1 mM 2-mercaptoethanol)、または、エス・クロンSFO-3(エーディア, Cat.SS1303)に0.1%bovine serum albumin(BSA; Wako, Cat.012-23881)、50μM 2-mercaptoethanol、25ng/ml recombinant human FGF4(FGF4; Peprotech, Cat.100-31)、1μg/ml heparin sodium(Wako, Cat. 081-00131)を加えたものを使用した。0.1μg/ml Doxを誘導開始から48時間後まで添加した。
化合物を用いて誘導する場合には、iMatrix-511 silk(MAX, Cat.892021)上に5×104個/cm2の細胞を播種した。誘導培地にはNdiff227培地に25ng/ml FGF4、1μg/ml heparin sodium、10~200ng/ml recombinant human BMP-4 (BMP-4; R&D, Cat.314-BP)、10ng/ml recombinant human PDGF-AA(PDGF-AA, Peprotech, Cat.100-13A)、10ng/ml recombinant human IL-6(IL-6; オリエンタル酵母, Cat.47066000)、1μM XAV939、3μM A83-01(Tocris, Cat.2939)、0.1μM retinoic acid(RA; Sigma-Aldrich, Cat.R2625)を加えたものを使用した。IL-6は誘導開始48時間後から添加した。また、一部の実験においては、BMP-4の代わりに10-500ng/ml recombinant human BMP-2 (BMP-2; オリエンタル酵母, Cat.47304000)、または50ng/ml recombinant human BMP-6 (BMP-6; Peprotech, Cat.120-06)を使用した。
FACS analysis / sorting
原始内胚葉様細胞および、プライム型PSCはトリプシン/EDTAにより、ナイーブ型PSCはAccutaseにより単一な細胞へと剥離し回収した。その後、1%BSA(Sigma-Aldrich, Cat.A2153)を加えたHBSS(Thermo Fisher Scientific, Cat.14185052)を用いブロッキングを氷上にて30分行った。Biotinylated抗PDGFRA抗体(R&D, Cat.BAF322)、抗CEACAM1+5抗体(abcam, Cat.ab91213)、抗ANPEP抗体(Biolegend, Cat.301703)、Dylight650-抗CD75抗体(novusbio, Cat.NBP2-47890)、BV421-抗CD57抗体(BD, Cat.563896)を各々の組み合わせで加え、氷上にて30分間インキュベートした。洗浄後、Streptavidin-APC(Biolegend, Cat.405207)、Streptavidin-PE(eBioscience, Cat.12-4317-87)、Streptavidin-BV421(Biolegend, Cat.405226)を加え、氷上にて20分間インキュベートした。FACS解析にはBD LSR Fortessa(BD)、sortingにはFACS AriaII(BD)を用いた。また、データ解析にはFlow Jo V10.2 softwareを用いた。
原始内胚葉から臓側内胚葉、卵黄嚢細胞への誘導
原始内胚葉に誘導し3日目の細胞をPDGFRAあるいはCEACAM1抗体を用いて陽性細胞をフローサイトメトリーで純化した。その後、DMEM+10%FBS培地を用いて、MEF上で培養を継続した。13日目にRNAを抽出し、臓側内胚葉、卵黄嚢細胞に分化したことを確認した。
Reverse Transcription Quantitive Real-time PCR
total RNAはRNeasy kit(Qiagen, Cat.74106)にて抽出し、1000ngのRNAからcDNAをSuperScriptIV(Thermo Fisher Scientific, Cat.18090050)とoligo-dT プライマーを用い合成した。Real-time PCRには、TaqMan Fast Universal Master Mix(Thermo Fisher Scientific, Cat.4364103)とTaqMan probe、または、PowerUP Sybr Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific, Cat.A25743)を用い、PCR増幅にはQuantStudio3(Thermo Fisher Scientific)を用いた。Real-time RT-PCR反応後の解析はQuantStudio Design&Analysis Software v1.4.1を用いて行った。
Immunostaining
細胞を室温で10分間4% paraformaldehyde(ナカライテスク, Cat.09154-85)により固定した後に、室温で1時間 PBS+0.5% Triton X-100により透過処理を行った。細胞をPBS+1%BSA+0.05% Tween-20(PBS-BT)にて2時間ブロッキングした。一次抗体はPBS-BTで希釈した後に加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体をPBS-BTで1:2000希釈し、室温で2時間インキュベートした。核はDAPI(Sigma-Aldrich, Cat.D9542)を用い染色した。
Figure 0007176764000001
原始内胚葉細胞とプライム型PSCの共培養
GATA6過剰発現または化合物により誘導した細胞からPDGFRA陽性細胞をFACS sortingにより回収した。回収した細胞を3×105個/cm2の密度でiMatrix511コートしたスライドガラスに再播種した。翌日、プライム型PSCをDB(コラゲナーゼとトリプシンを混合した細胞剥離液)により小さなクランプ様に剥離し、スライド上に再播種した細胞の上に播種した。プライム型ES細胞培地(AK03, mTeSR1, F12/KSR等)単独あるいは、プライム型ES細胞培地にマトリゲル(5%)を加えた培地で培養した。
結果
ヒトナイーブ型PSCとプライム型PSC由来のPDGFRA陽性細胞は異なる集団である
ヒトナイーブ型PSCを作成するために、ヒトプライム型ES細胞(H9-primed細胞)およびヒトiPS細胞(AdiPS-primed細胞)にEOSベクターを導入したヒトプライム型多能性幹細胞(H9-EOS細胞, AiPS-EOS細胞)にHDAC阻害剤で処理し、t2iLGo培地でヒトナイーブ型PSCを誘導、維持し、リセット細胞を樹立した(H9-naive細胞, AiPS-naive細胞)。
マウスES細胞にGATA6, GATA4, SOX17を過剰発現させると、原始内胚葉(PrE)に誘導でき、XEN細胞を樹立することができる。マウスES細胞にGATA6, GATA4, SOX17を過剰発現すると、マウスPrEが誘導されることが知られている。そこで、H9-naiveとH9-primed細胞株にDOX誘導下にGATA6, GATA4あるいはSOX17を発現するプラスミドを導入した(図1A)。H9-naiveにDOXを加えて、血清中で分化させたところ、いずれの過剰発現でもナイーブ型のドーム状コロニーは平坦になり、分化していった(図1B)。遺伝子発現を確認したところ、GATA6を過剰発現させた細胞株では、ヒトナイーブ型からPrEのマーカーであるGATA4, GATA6, SOX17がday2から発現し、day4にかけ上昇することが分かった(図1C上)。primed型においてもGATA6を過剰発現させると、GATA4, 6, SOX17は発現が誘導された(図1C下)。GATA4を過剰発現した際もGATA6ほどではないが遺伝子の発現が誘導されることが分かった。一方、SOX17を過剰発現した細胞は、ナイーブ型では、GATA4, GATA6, SOX17(Endo)を発現できなかった。Primed型においても、ごくわずかに遺伝子の誘導が認められるだけでGATA6を過剰発現させたほど、発現を誘導できなかった。
マウスブラストシストにおいて、PrEはPDGFRA陽性である。またマウスES細胞からPrEへと分化した細胞は、PDGFRAを発現していることが知られる。single cell RNA sequenceを用いた解析において、ヒト胚のPrEにおいて、PDGFRAが発現していることが報告されている(Petropoulos, S. et al. (2016). Cell 165(4): 1012-1026.およびBlakeley, P. et al. (2015).Development 142(18): 3151-3165.)。そこで誘導した細胞において、PDGFRAの発現をqPCRで確認すると、ナイーブ型、プライム型同様にGATA4,6を発現させると、PDGFRAの発現が上昇することが分かった(図1D)。そこでフローサイトメトリーでPDGFRAの発現を確認した(図1E)。GATA6およびGATA4を過剰発現させると、PDGFRAの発現がDay1から認められ、Day3でGATA6では41%,GATA4では20%の細胞がPDGFRA陽性であった。一方、SOX17を過剰発現させた場合は、day3までPDGFRAの発現は認められなかった(図1D, E)。続いて、PDGFRA陽性細胞の遺伝子発現を調べた。ナイーブ由来PDGFRA陽性細胞を純化しその発現を調べたところ、H9-naive-GATA6のPDGFRA陽性細胞からは、PrEのマーカーであるGATA3、4、SOX17、HNF4A、FOXA2、COL4A1が発現し、一方多能性のマーカーであるOCT3/4、NANOGの発現は減少した。一方、H9-naive-GATA4からもGATA6、HNF4Aは誘導されるが、GATA6ほどPrEマーカーを誘導できなかった(図1F)。
一方、H9-primed-GATA6から誘導されるPDGFRA陽性細胞の遺伝子発現を調べたところ、ナイーブ型に比較し、GATA4, SOX17をはじめHNF4A, FOXA2, CER1, OTX2といったPrE遺伝子は発現せず、PDGFRB, KDR, SNAI2, CDH11, VIMENTINといった中胚葉や間葉系に関連する遺伝子が発現していた(図1G)。H9-naive-GATA4とH9-primed-GATA4を比較した場合もH9-primedからはPrE関連遺伝子は発現せず、中胚葉の遺伝子が発現していた(図1H)。以上からナイーブ型からはPrE関連遺伝子を発現する細胞が誘導されるが、プライム型からは中胚葉系の遺伝子を発現する細胞が誘導されることが分かった。
ヒトナイーブ型PSC由来PDGFRA陽性細胞はPrEに同等である
分化のシグナルをより明らかに見るために、非血清培地であるSFO3培地あるいはN2B27培地を利用して、誘導を行った。H9-naive-GATA6において、GATA6を過剰発現させ、FGF4を加えて誘導したところ、Day1では約30%の細胞がPDGFRA陽性になり、Day3では80%の細胞がPDGFRA陽性であった(図2A)。PDGFRA陽性細胞をソートし、発現を確認したところ、血清コンディション(GMEM)と非血清コンディション(SFO3)でほぼ同程度にGATA4, SOX17, FOXA2, HNF4A, COL4A1,SPARCといったPrE関連遺伝子を発現していた(図2B)。免疫染色を実施したところ、GATA6の過剰発現によって、GATA4、SOX17が誘導されることが確認された(図2C)。PDGFRA細胞の性質をより深く解析するために、RNAシーケンスを用いた網羅的解析を行った。全遺伝子を用いてPCA解析を行ったところ、H9-naive型多能性幹細胞およびprimed型多能性幹細胞は、PC1で異なり、GATA6を過剰発現させて誘導したPDGFRA陽性細胞(Day1, Day3)はナイーブ型とprimed型で未分化な状態と同様にPC1は異なりPC2が同じ方向に変化した(図2D)。すなわち異なる細胞集団であることが示唆される。図1GからH9-primedから誘導される細胞は、中胚葉系細胞であることが示唆されたことから、中胚葉系遺伝子の発現を見たところ、D1において、初期のprimitive streakに関連する遺伝子が発現しており、中胚葉の細胞へと誘導されることが推測される(図2E)。一方、ナイーブでは、このような中胚葉系の遺伝子は誘導されなかった。H9-naiveより誘導された細胞とヒト胚におけるEpiblastとPrEに関するTop100遺伝子の発現を比較したところ、Day0はepiblastに近く、Day3はPrEに近いことが分かった(図2F)。以上から、ヒトナイーブ型多能性幹細胞から誘導されたPDGFRA陽性細胞はPrEに近い細胞であると考える。
GATA6はシグナルを修飾する
GATA6の過剰発現の結果、ナイーブ型はPrEに分化し、一方primed型では中胚葉系の遺伝子を発現する異なる細胞を誘導したことから、GATA6の直接果たす役割を調べるために、H9-naive-GATA6およびH9-primed-GATA6を用いて、ChIP-seqを行った。GATA6は、実際GATA6、GATA4、SOX17、HNF4A等のPrEに重要とされる遺伝子にbindしていた(図3A)。同時にPDGFRAにもバインドすることが分かった。さらにBMP2, BMP6, IL6ST, FRZBという分泌因子あるいは受容体にバインドしていた(図3B)。これらはChIP-qPCRにおいても、バインドしていることが確認された。
これらのシグナル関連因子の遺伝子発現を誘導後に調べたところ, BMP2, BMP6, FRZBは確かに誘導後のPDGFRAで上昇していた(図3C)。一方、LEFTY, IL6STは、PSCから発現しており、分化誘導後も発現を続けた。またGATA6の過剰発現後、タンパクの活性化を調べたところ、SMAD1/5/8のリン酸化、MAPKのリン酸化、STAT3のリン酸化、SMAD2のリン酸化の抑制が認められた(図3D)。このことからGATA6はPrEの遺伝子群を誘導すると同時に、BMPやPDGFAの分泌を誘導し、一方、FRZBを誘導することでWntシグナルを抑制する可能性が考えられる。
シグナルカクテル誘導
GATA6の過剰発現後の遺伝子発現、ChIPシーケンスの結果から、H9-naive細胞において、BMPの分泌およびSTAT3シグナルの活性化、PDGFRAの誘導、アクチビンシグナルおよびWntシグナルの抑制が認められたことから、GATA6を過剰発現させずに、PDGF-AA、BMP2、IL-6、A83-01、XAV939を加え、PrEが誘導されるかを調べた。また、マウスにおいてPrEの誘導には、FGF4、RAがプラスに働くと報告があることから、上記の因子にFGF4およびRA(レチノイン酸)を加えた7因子を加えて誘導した(図4A)。その結果、ナイーブ型から約28.6%のPDGFRA陽性細胞が誘導された(図4 B, C)。BMP2と同じファミリーにあるBMP4, 6に替えても誘導がみられた(図4B, C)。BMP2, BMP6と比較し、BMP4が最もPDGFRA陽性細胞を誘導するため、BMP4を加え実験を行った。誘導したPDGFRA陽性細胞を純化し、遺伝子発現を確認したところ、GATA4, 6, SOX17, PDGFRA, HNF4A, FOXA2といったPrE関連遺伝子が発現しており、PrEに誘導できたことが確認できた(図4D)。また免疫染色にても、GATA6過剰発現同様にGATA6+GATA4+SOX17+細胞を誘導できることが分かった(図4E)。
H1ナイーブ型PSC, AdiPSにおいても7因子含有培地によって、PDGFRA陽性細胞が誘導され、同様にPrE関連遺伝子を発現しており、他の2株でも誘導できることが分かった。さらにRNAシークエンスを行い網羅的解析を行ったところ、GATA6過剰発現細胞同様に、PrEに関連する遺伝子が誘導されることが分かった。
新規ヒトPrE特異的表面マーカー
ナイーブ型PSCをbFGF+ACTIVIN(TGFB)で培養すると約10日程度でプライム型へと移行していく。ナイーブ型PSCでは表面抗原CD75が発現し、プライム型では表面CD57が発現すると報告された。ナイーブ型からPrEへchemical(上記7因子)で誘導したところ、PDGFRA陽性細胞は、ナイーブマーカーであるCD75の発現は、PDGFRA陽性細胞において次第に減少し、プライムマーカーであるCD57は発現しなかった(図5A)。逆に、プライム型にGATA6を過剰発現させPDGFRA陽性細胞を誘導したところ、PDGFRA陽性細胞はCD57+CD75-であった(図5A)。以上から、ナイーブ由来PrEはPDGFRA+CD75+/-CD57-でありプライム由来細胞はPDGFRA+CD75-CD57+として、表面抗原によって分けることに成功した。
一方、CD75は、エピブラストであるナイーブ型多能性幹細胞とPrEであるPDGFRA陽性細胞を完全には分離することができない。PDGFRAはPrEに特異的ではないため、PrEにより特異的に発現し、エピブラストおよび中胚葉では発現しない表面抗原を探索した。ChIPシーケンスにおいてGATA6が直接に結合せず、RNAシーケンスにおいてPDGFRA陽性PrEで発現しており、プライム型では発現せず、既報の論文で発現していることを条件として特異的な表面抗原を検索したところ、CECAM1を同定した。ナイーブ型およびプライム型PDGFRA陽性細胞のRNAをqPCRで比較したところ、ナイーブ由来PrEのみでCEACAM1は発現を認めた(図5B)。Day3においてPDGFRAと共染色しフローサイトメトリーで比較したところ、PDGFRA陽性細胞は、CECAM1陽性であった(図5C)。一方、プライム型由来PDGFA陽性細胞はCEACAM1を発現していない。このことから、CEACAM1がPrEマーカーとして使用できることが明らかとなった。
また、ナイーブ型PSCからPrEへchemical(上記7因子)で分化誘導したところ、PDGFRA陽性細胞において、CEACAM1と同様に、ANPEPの発現も増加した(図5D)。ナイーブ型PSCにGATA6を過剰発現させたところ、同様の結果が得られた。このことから、ANPEPもPrEマーカーとして使用できることが明らかとなった。
PrEのre-cultureとfunction
H9-naiveおよびH9-primedで誘導されたPDGFRA陽性細胞をソートし、再培養を続けたところ、H9-naiveからは臓側内胚葉(FOXA1, CER1)、卵黄嚢マーカー遺伝子(AFP, VIL1, PDPN, GPC3)を発現するが、H9-primedからはPDPNを除き発現しなかった(図6A)。同様に、7因子で誘導したPDGFRA陽性PrE細胞からも卵黄嚢マーカー遺伝子AFP, VIL1, GPC3, FOXA1, PDPN, DAB2の発現を認めた(なお、7因子で誘導したPDGFRA陽性PrE細胞は、当該7因子を含有する培地で10継代以上維持、培養することができ、維持した細胞は臓側内胚葉・卵黄嚢細胞に関連する遺伝子および胚体外間葉系細胞に関する遺伝子を発現した)。RNAシーケンスで遺伝子発現を確認したところ、ナイーブ型由来PDGFRA陽性PrE細胞は、実際に卵黄嚢マーカーを発現し、H9-naive型からは、PrEを経てVE/YEが誘導できるが、primedからは誘導できない。
PrEはプライム型PSCを中内胚葉に誘導する
ヒトの発生では、bilaminar epiblastの下層にPrEが存在し、bilaminar epiblastがprimitive streakを形成し、中胚葉細胞へと分化していく。この際、PrEが重要な役割を果たしていると考えられている。誘導したPrE細胞がこのような能力を示すかをPSCと共培養し、観察した。24時間後には、PSCはT陽性細胞になり、48時間後にはT陽性細胞が、PrEに向かって遊走した (図6B)。このことは、PrEがプライム型PSCを中内胚葉に誘導し、発生初期の原腸嵌入のプロセスを試験管内で再現することができたことを示す。
以上からナイーブ型由来PDGRA陽性細胞は、PrEとして類似の遺伝子を発現するのみではなく、機能的にもPrEと同等の能力を持つ可能性がある。
BMP、FGF、GATA6 が協調してPrEを誘導する。
7因子でのPrE誘導における各シグナルの重要性を調べるため、上記7因子から1因子を各々subtractし、6因子で分化誘導した(図7A)。あるいは6因子にPD03(MEC阻害剤), LDN193189 (BMP阻害剤), JaK阻害剤(JaKi), Activin, CH(Wnt 活性化剤) の各々を加えた(図7A)。その結果、FGF4あるいはBMPを除いた時、ほとんどPDGFRA+細胞が発現しなくなり、FGFとBMPはPrE誘導に必須であることが分かった。一方、ACTIVIN阻害剤を除いた時は31.5%、Wntシグナル阻害剤を除いた時は33.2%、とややPDGFRA陽性細胞が減少するだけであったが、逆にACTIVIN、Wnt刺激を行うとprimitive endoderm細胞は消失することが分かった。以上から、activin, Wntはprimitive endoderm分化を阻害することが分かった(図7A下)。なお、データは示さないが、FGFのみあるいはBMP4のみの1因子ではPDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞は誘導できないのに対し、2因子(FGF、BMP4)で誘導した際はPDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞が9.1%得られた。また、4因子(FGF4、BMP4、XAV939、A83-01)で分化誘導した場合、PDGFRA、CEACAM1およびANPEP陽性細胞が22.3%得られた。これらの結果から、PrE誘導にはFGFとBMPが必須であり、これらに加え、TGFβ阻害剤とWntシグナル阻害剤を使用することが好ましいことが示唆された。
一方、IL-6を除いたところ33.2%へとPDGFRA陽性細胞の低下を認めたが、JAKiを加えたところ細胞は増殖せず、D3にはほぼ細胞は存在しなかった。そこで、100nMの低濃度のJAKiを加えたところ、PDGFRA陽性細胞はほぼ消失した(図7A下)。
GP130を活性化し、STAT3を活性化するGP130Y118F chimeric receptorをナイーブ型PSCに導入し、PrEを誘導した。D0からchimeric receptorを発現させると、PDGFRA陽性細胞の発現は低下するが、D2から発現させるとPDGFRA陽性細胞が効果的に誘導されることが分かった(図7B)。このことからJAK-STATシグナルはヒトにおいては、ナイーブ型多能性幹細胞の維持に重要であると同時に、PrEで重要な役割を果たすことが分かった(図7B)。
一方、shGATA6を用いて、GATA6をノックダウンし、7因子を用いてPDGFRA陽性細胞を誘導した。しかしながら、PDGFRA陽性細胞、CEACAM1陽性細胞いずれも誘導されず、GATA6は、PrE誘導に必須のキー遺伝子であることが分かった(図 7C)。
なお、データには示さないが、着床前マーモセット胚から内部細胞塊(ICM)をとりだし、7因子で誘導したところ、多くのSOX17陽性原始内胚葉が誘導できた。このことから、ヒトのみではなく、非ヒト霊長類にも利用可能であることが分かる。

Claims (18)

  1. 原始内胚葉をインビトロで多能性幹細胞から調製する方法であって、
    ナイーブ型多能性幹細胞を、BMP(Bone morphogenetic protein)およびFGF4(Fibroblast growth factor 4)を含む培地で培養して原始内胚葉分化を誘導する工程を含む方法。
  2. 前記培地はさらにPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)、IL-6(Interleukine-6)、TGF(Transforming Growth Factor)β阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、請求項1に記載の原始内胚葉の調製方法。
  3. 前記培地は、BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、請求項1に記載の原始内胚葉の調製方法。
  4. BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、請求項1~3のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
  5. さらに、原始内胚葉細胞をCEACAM1 (carcinoembryonic antigen related cell adhesion molecule 1)またはANPEP(alanyl aminopeptidase, membrane)を用いて純化する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
  6. 多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
  7. 多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の原始内胚葉の調製方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で原始内胚葉を調製する工程、および、得られた原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
  9. 請求項8に記載の方法で中内胚葉を調製する工程、および、さらに、得られた中内胚葉を培養して心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞まで分化させる工程を含む、心筋前駆細胞および/または膵前駆細胞の調製方法。
  10. 原始内胚葉を提供する工程、および、当該原始内胚葉をプライム型多能性幹細胞と共培養してプライム型多能性幹細胞を中内胚葉まで分化させる工程を含む、中内胚葉の調製方法。
  11. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で調製された原始内胚葉細胞。
  12. 原始内胚葉細胞を含む細胞集団から原始内胚葉細胞を分離する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を選別する工程を含む、方法。
  13. 原始内胚葉細胞を含む細胞集団において原始内胚葉細胞を検出する方法であって、CEACAM1またはANPEPを用いて原始内胚葉細胞を検出する工程を含む、方法。
  14. CEACAM1またはANPEPに特異的に結合する分子を含む、原始内胚葉細胞検出用試薬。
  15. BMPおよびFGF4を含む、ナイーブ型多能性幹細胞用培地。
  16. さらに、PDGF、IL-6、TGFβ阻害剤、Wntシグナル阻害剤およびレチノイン酸から選択される1種類以上を含む、請求項15に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
  17. BMP、FGF4、TGFβ阻害剤およびWntシグナル阻害剤を含む、請求項15に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
  18. BMPがBMP4、BMP2またはBMP6であり、PDGFがPDGF-AAであり、TGFβ阻害剤がA83-01であり、Wntシグナル阻害剤がXAV939である、請求項15~17のいずれか一項に記載のナイーブ型多能性幹細胞用培地。
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