JP7175467B2 - ノロウイルスおよびその代替ウイルスに対する抗ウイルス剤および抗ウイルス組成物 - Google Patents
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Description
[1]
少なくとも縮合型タンニンを含む、カキノキ属(Diospyros)の植物の果実の抽出物(以下「カキ抽出物」という。)と、少なくともタンニンを含む、ナツメヤシ属(Phoenix)の植物の種子の抽出物(以下「デーツ種子抽出物」という。)とを含有する、ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する抗ウイルス剤。
[2]
前記カキ抽出物がカキノキ(Diospyros kaki)の果実の抽出物である、項1に記載の抗ウイルス剤。
[3]
前記カキ抽出物がエタノール水溶液による抽出物である、項1または2に記載の抗ウイルス剤。
[4]
前記デーツ種子抽出物がナツメヤシ(Phoenix dactylifera)の種子の抽出物である、項1~3のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
[5]
前記デーツ種子抽出物がエタノール水溶液による抽出物である、項1~4のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
[6]
前記デーツ種子抽出物が低分子タンニンについて富化されたものである、項1~5のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
[7]
前記カキノキ属の植物の果実1重量部に相当する前記カキ抽出物に対して、前記ナツメヤシ属の植物の種子10~100重量部に相当する前記デーツ種子抽出物を含有する、項1~6のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
[8]
前記ナツメヤシ属の植物の種子1重量部に相当する前記デーツ種子抽出物に対して、前記カキノキ属の植物の果実0.0005~0.1重量部に相当する前記カキ抽出物を含有する、項1~6のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
[9]
項1~8のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤と、アルコール、有機酸および/またはその塩、界面活性剤、抗菌剤、保湿剤および化粧品用油脂類からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有する、ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する抗ウイルス組成物。
[10]
前記アルコールとしてエタノールおよび/またはプロパノールを含有する、項9に記載の抗ウイルス組成物。
[11]
前記有機酸および/またはその塩として、乳酸、クエン酸およびフェルラ酸ならびにそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、項9または10に記載の抗ウイルス組成物。
[12]
前記界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウムおよびオレフィンスルホン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、項9~11のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
[13]
前記組成物全体100重量%に対して、前記カキノキ属の植物の果実0.05~1重量%に相当する前記カキ抽出物を含む前記抗ウイルス剤を含有する、項9~12のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
[14]
前記組成物全体100重量%に対して、前記ナツメヤシ属の植物の種子1.25~2.5重量%に相当する前記デーツ種子抽出物を含む前記抗ウイルス剤を含有する、項9~13のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
[15]
カキ抽出物およびデーツ種子抽出物を併用することにより、カキ抽出物、デーツ種子抽出物それぞれ単独のノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する抗ウイルス作用を相乗効果により増強する方法。
本発明の抗ウイルス剤は、ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対するものであって、少なくとも縮合型タンニンを含む、カキノキ属(Diospyros)の植物の果実の抽出物(カキ抽出物)と、少なくともタンニンを含む、ナツメヤシ属(Phoenix)の植物の種子の抽出物(デーツ種子抽出物)とを含有する。このような抗ウイルス剤は、カキ抽出物およびデーツ種子抽出物のみからなるものであってもよいし、これら2つの抽出物に加えて、適切な溶媒や賦形剤、またノロウイルスおよびその代替ウイルスに対する抗ウイルス作用を同等以上にする(増強する)ことのできる物質を含有するものであってもよい。
本発明で用いるカキ抽出物は、カキノキ属の植物、代表的にはカキノキ、の果実に含まれる物質の集合体であって、抗ノロウイルス作用を有するものである。天然のカキ抽出物はタンニンおよびそれ以外の様々な物質を含有するが、抗ウイルス作用を有する物質として、少なくとも下記推定構造式で表されるカキ縮合型タンニンを含有することが好ましい。カキ縮合型タンニンの平均分子量や構成成分の比率には諸説有るが、Liら(C. Li, J. D. Reed, A. E. Hagerman, the XXVth International Conferenceon Polyphenols, 2010.5)によると、平均分子量は11kDa、構成成分比はEGC:EGCg:EC:ECgは4:11:3:8と報告されている。
本発明で用いるデーツ種子抽出物は、ナツメヤシ属の植物の種子に含まれる物質の集合体であって、抗ノロウイルス作用を有するものである。天然のデーツ種子抽出物は様々な物質を含有するが、抗ノロウイルス作用を有する物質として、少なくとも低分子タンニン(全タンニンから高分子タンニンを除去した画分)を含有することが好ましく、低分子タンニンの純度(デーツ種子抽出物の固形分全体に対する低分子タンニンの割合)は高い方が好ましい。ただし、デーツ種子抽出物の低分子タンニン以外の物質、例えば高分子タンニンまたはその他のタンニン様化合物が、それ自身抗ノロウイルス作用を有していたり、デーツ種子抽出物(低分子タンニン)および/またはカキ抽出物中の抗ノロウイルス作用を増強ないし補助していたりする可能性も排除されるものではない。
本発明の抗ウイルス剤が対象とするノロウイルスは、カリシウイルス科ノロウイルス属に属するウイルスの総称であり、ヒトノロウイルス、マウスノロウイルス等を包含する。また、ヒトノロウイルスにはこれまで2つの遺伝子群(GIおよびGII)があること、さらにGIは9種類(GI.1~GI.9)、GIIは22種類(GII.1~GII.22)の遺伝子型に分類できることが知られているが、本発明の抗ウイルス剤はいずれの遺伝子群および遺伝子型のヒトノロウイルスを対象とすることもできる。
本発明の抗ウイルス剤が「ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する」ものであるとは、抗ウイルス剤を溶解してそれらのウイルスと接触させたときに、前述したような「抗ウイルス作用」が奏されること、または「抗ウイルス作用」を奏することができる用途を有すること、を意味する。このときの抗ウイルス剤の「抗ウイルス作用」の強さは特に限定されるものではなく、少なくともノロウイルス等の感染・増殖能力を喪失させる(不活性化させる)こと、またはノロウイルス等の遺伝子を消滅させることが、客観的な指標、測定データ等により確認できればよい。抗ウイルス作用を評価するための指標としては、例えば感染価減少値(Δlog PFU/mLまたはΔlog TCID50/mL)またはゲノム残存率を用いることができる。本発明の好ましい実施形態においては、「抗ウイルス作用が奏される」ことは、前述したような「抗ウイルス活性を有する」こと、例えばノロウイルス等の感染価減少値が3以上であること、好ましくは4以上であること、より好ましくは5以上であること、を意味する。
本発明の抗ウイルス組成物は、少なくともノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する消毒効果を有するものであって、少なくとも、本発明の抗ウイルス剤と、アルコール、有機酸および/またはその塩(本明細書において「有機酸等」と呼ぶことがある。)、界面活性剤、抗菌剤、保湿剤および化粧品用油脂類からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有し、必要に応じてさらにその他の成分を含有していてもよい。
(A)前記組成物全体(溶媒等、有効成分以外の成分を含む。)100重量%に対して、カキノキ属の植物の果実0.00002重量%以上、0.0001重量%以上、0.0002重量%以上、0.0004重量%以上、0.002重量%以上、0.003重量%以上、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.02重量%以上、または0.05重量%以上、かつ10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下または0.01重量%以下(但し、下限値の数値が上限値の数値よりも大きくなる組み合わせは除く。)に相当するカキ抽出物を含む抗ウイルス剤を含有する;
(B)前記組成物全体(溶媒等、有効成分以外の成分を含む。)100重量%に対して、ナツメヤシ属の植物の種子0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上または2.0重量%以上、かつ20重量%以下、10重量%以下、5.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.5重量%以下または0.2重量%以下(但し、下限値の数値が上限値の数値よりも大きくなる組み合わせは除く。)に相当するデーツ種子抽出物を含む抗ウイルス剤を含有する。
本発明のウイルス組成物の一つの実施形態として、少なくとも本発明の抗ウイルス剤と(比較的多量の)アルコールとを含有するアルコール製剤が挙げられる。アルコール製剤はさらに、有機酸等、界面活性剤、またはその両方を含有することが好ましい。このようなアルコール製剤は、作業者の手指、食品、食器、調理器具、冷蔵庫、食器、ショーケース、テーブル・椅子、施設などのドアノブ・手すり、トイレ、患者の汚物を取り扱った器具などに付着した、または付着するおそれのあるノロウイルス等を消毒するための組成物であり、例えば従来のエタノール製剤と同様の噴霧剤として調製することができる。
本発明の抗ウイルス組成物の一つの実施形態として、少なくとも本発明の抗ウイルス剤と(洗浄に適した量および種類の)界面活性剤とを含有する洗浄用組成物が挙げられる。洗浄用組成物はさらに、アルコール、有機酸等、界面活性剤および殺菌剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、それら全部を含有することがより好ましい。このような洗浄用組成物は、作業者の手指、食品、食器、調理器具、着衣などの汚れを落とすとともに、そこに付着した、または付着するおそれのあるノロウイルス等を消毒するための組成物であり、例えば液状または固形状の洗剤(代表的にはハンドソープ)として調製することができる。
本発明の抗ウイルス組成物の一つの実施形態として、少なくとも本発明の抗ウイルス剤と保湿剤および/または化粧品用油脂類とを含有する化粧用組成物が挙げられる。化粧用組成物はさらに、アルコール、有機酸等、保湿剤および抗炎症剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、それら全部を含有することがより好ましい。このような化粧用組成物は、水仕事等で荒れやすい作業者の手指に塗ってスキンケアをするとともに、食指に付着した、または付着するおそれのあるノロウイルス等を消毒するための組成物であり、例えばローション、クリーム、乳液、その他の基礎化粧品(代表的にはハンドローション)として調製することができる。
アルコールは、抗ウイルス組成物に含まれる各種の成分、例えばカキ抽出物およびデーツ種子抽出物が含有するタンニン、特にカキ抽出物が含有する縮合型タンニンの溶解性を向上させることができる成分である。アルコールはまた、エンベロープウイルスや細菌類に対する消毒効果を有することから、それを配合したアルコール製剤またはその他の抗ウイルス組成物に、ノロウイルスだけでなく、エンベロープウイルスや細菌類に対する消毒効果(抗菌作用)を賦与することができる。また、アルコールは肌への収斂性や防腐性をもたらす成分として化粧用組成物に配合することもできる。
有機酸等は、pHを調節することによって抗ウイルス組成物に含まれる各種の成分、例えばカキ抽出物およびデーツ種子抽出物が含有するタンニン、特にカキ抽出物が含有する縮合型タンニンの溶解性を向上させると共に、タンニンが鉄と接触したときの着色を防止するキレート剤として、またはタンニンの酸化による着色(例えばカキ抽出物中のカキ縮合型タンニンの赤色の発色)を抑制する酸化防止剤として、組成物中に配合して用いることができる。有機酸等は、一部の非エンベロープウイルス、エンベロープウイルスおよび細菌類を消毒する効果を有する成分としても用いることができる。
界面活性剤は、抗ウイルス組成物に含まれる各種の成分を乳化する乳化剤として作用すると共に、エンベロープウイルスおよび細菌類を消毒する効果を有する成分として用いることができる。また、界面活性剤は、食指、食品、食器、調理器具等を洗浄するための成分として洗浄用組成物に配合したり、ローション、クリーム、乳液等において油相と水相とを混和するための成分として化粧用組成物に配合したりすることもできる。
抗菌剤(殺菌剤、除菌剤、静菌剤と呼ばれることもある。)は、本発明の抗ウイルス組成物に、ノロウイルスに加えて細菌類に対する消毒効果、例えば食品加工の際の感染あるいは院内感染が問題となる大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、サルモネラ、腸炎ビブリオ、緑膿菌などに対する消毒効果を賦与するために、組成物中に配合して用いることができる。また、抗菌剤は防腐剤として化粧用組成物に配合することもできる。
・天然抗菌剤…タンパク質類(白子タンパク、卵白リゾチーム等)、ペプチド類(ポリリジン等)など;
・抗生物質…ペニシリン系抗生物質、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、テトラサイクリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質など;
・合成抗菌剤…塩素系化合物(トリクロサン等)、ヨード系化合物(ポピドンヨード等)、亜鉛化合物(セチルピリジニウム亜鉛等)、ベンゼンカルボン酸類(安息香酸、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール(シメン-5-オールと呼ばれることもある。)、ブチルパラヒドロキシベンゾエート(=ブチルパラベン)等)、有機酸エステル類(グリセリンエステル、ショ糖エステル等)、アルデヒド類(グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド等)、ビグアナイド系化合物(グルコン酸クロルヘキシジン等)、第四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、臭化セチルアンモニウム等)など。
保湿剤(湿潤剤と呼ばれることもある。)は、主に本発明の抗ウイルス組成物を化粧用組成物として製造する場合に用いられる成分であって、皮膚の角質層の水分を保持し、肌の柔軟性や弾力性を維持するための成分である。
化粧品用油脂類は、皮膚面に被膜を形成して皮膚の保護や柔軟性、滑沢性の賦与などの役割を果たし、また化粧品に適度な使用感を持たせるための成分である。
・ 油脂(高級脂肪酸とグリセリンのエステル)…植物性油脂、動物性油脂またはこれらの水素添加物(部分水添ナタネ油等)、合成トリグリセリド(トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等)など;
・ ロウ(高級脂肪酸と高級アルコールの常温で固体のエステル)…植物性ロウ、動物性ロウ(蜜蝋、ラノリン等)など;
・ 炭化水素…鉱物性炭化水素(流動パラフィン、ワセリン、パラフィン等)、動物性炭化水素(スクワラン等)など;
・ 高級脂肪酸…ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸など;
・ 高級アルコール…セタノール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコールなど;
・ エステル(ロウ類以外の、脂肪酸とアルコールとのエステル)…ミリスチン酸ミリスチル、ジオレイン酸プロピレングリコール、乳酸セチルなど。
本発明の抗ウイルス組成物は、典型的には水(または前述したようなアルコール水溶液)を溶媒とする溶液の形態に調製され、上記の成分以外の残部は水(精製水等)および/またはその他の溶媒とすることができる。
本発明の抗ウイルス組成物が「ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する」ものであるとは、「ノロウイルスまたはその代替ウイルスに対する」抗ウイルス剤を含有することにより、それらのウイルスと接触させたときに、前述したような「抗ウイルス作用」が奏されること、または「抗ウイルス作用」を奏することができる用途を有すること、を意味する。このときの抗ウイルス組成物の「抗ウイルス作用」の強さは特に限定されるものではなく、少なくともノロウイルス等の感染・増殖能力を喪失させる(不活性化させる)こと、好ましくはさらに、ノロウイルス等の粒子または遺伝子を消滅させることが、客観的な測定データ等により確認できればよい。本発明の好ましい実施形態においては、「抗ウイルス作用が奏される」ことは、前述したような「抗ウイルス活性を有する」こと、例えば感染価減少値(Δlog PFU/mLまたはΔlog TCID50/mL)が3以上であること、好ましくは4以上であること、より好ましくは5以上であること、を意味する。
十分に殺菌(NaClO)、洗浄、変色防止(ビタミンC)等の処理をした、蔕を切除した柿の未成熟果を、ダイス状にカットして潰した。得られた果実・果汁溶液を200メッシュ篩にかけ、遠心分離し、高温殺菌処理(120~130℃、7~10秒)をした後、フリーズドライ処理をして、カキ果実のフリーズドライ(FD)粉末を調製した。得られたFD粉末の約5%がカキ縮合型タンニンであった。
デーツ種子(DS:Date Seed)を粉砕・粉末化したもの(デーツ種子粉末)0.5gと、50%もしくは70%のエタノール水溶液10mLまたは蒸留水10mLとをボルテックスで混合し、室温で一晩放置した後、遠心分離し(13,000×g、5分間)、ADVANTECフィルターで滅菌処理をした。得られた3つのデーツ種子抽出物を試験液とし、それぞれ「5%DSE/50%EtOH」、「5%DSE/70%EtOH」および「5%DSE/Water」と表記する。
調製例2と同様の手順で再度、3つの試験液「5%DSE/50%EtOH」、「5%DSE/70%EtOH」および「5%DSE/Water」を調製した。また、デーツ種子を粉砕・粉末化したもの(デーツ種子粉末)の代わりに、デーツ種を取り除いたデーツ果実(DF:Date Fruit)を粉砕・粉末化したもの(デーツ果実粉末)を原料とし、それ以外は「5%DSE/50%EtOH」および「5%DSE/Water」と同様の手順で、新たに2つの試験液「5%DFE/50%EtOH」および「5%DFE/Water」を調製した。
JIS規格の方法を一部改変し以下のような手順により、デーツ種子抽出物を単独で使用した場合のMS2ファージ(ノロウイルスの代替ウイルス)に対する抗ウイルス作用(感染価減少値)を評価した。
調製例3で調製した合計5つの試験液と、対照として「50%EtOH」および「70%EtOH」(デーツ種子抽出物を含有しない、抽出溶媒そのもの)について、参考例1と同様の手順により、MS2ファージに対する抗ウイルス活性(感染価減少値)を評価した。
ノロウイルスに罹患した患者の糞便由来のノロウイルス懸濁液を精製、保存して使用した。ノロウイルスの濃度は106~107/mLであった。このノロウイルス懸濁液1.2μLと、前記試験液「5%DSE/50%EtOH」(調製例2参照)10.8μLとを混合し、2分間室温で反応させた後、990μLのLB培地に加えて反応を止めた(100倍希釈)。この反応液から市販のキットを用いて、ノロウイルスのRNAを抽出し、DNaseで処理し、cDNAを合成した。このcDNA溶液を用いて常法に従ってリアルタイムPCRを行い、上記の反応によって残存したノロウイルス量を定量し、コントロールに対するゲノム残存率(%)を算出した。
試験液として、「5%DSE/50%EtOH」の代わりに「5%DSE/70%EtOH」および「10%DSE/70%EtOH」を用い、コントロールもそれぞれに対応するものに変更したこと以外は、参考例3と同様の手順でゲノム残存率(%)を測定した。
調製例1と同様のカキ抽出物(PE)試験液「0.1%PE/50%EtOH」を調製し、さらにその試験液を50%EtOHで希釈して試験液「0.05%PE/50%EtOH」を調製した。また、調製例2と同様のデーツ種子抽出物(DSE)試験液「2.5%DSE/50%EtOH」を調製し、さらにその試験液を50%EtOHで希釈して試験液「1.25%DSE/50%EtOH」を調製した。
(i)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「0.1%PE/50%EtOH」135μLとを混合。
(ii)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「2.5%DSE/50%EtOH」135μLとを混合。
(iii)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「0.1%PE/50%EtOH」135μLと、試験液「2.5%DSE/50%EtOH」135μLとを混合。
(iv)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「0.05%PE/50%EtOH」135μLとを混合。
(v)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「1.25%DSE/50%EtOH」135μLとを混合。
(vi)MS2ファージ溶液15μLと、試験液「0.05%PE/50%EtOH」135μLと、試験液「1.25%DSE/50%EtOH」135μLとを混合。
上記「1.感染価減少値の測定」の結果のうち、(iii)および(vi)のケースにおいて相乗効果が認められるといえるかどうか、次のようにして検証した。
高分子量のタンニンはウシ血清アルブミン(BSA)に結合し、凝集塊を形成することはよく知られている。BSA濃度が0mg/mL(コントロール)、1mg/mL、2mg/mLおよび3mg/mLとなるよう滅菌水にBSAを溶解した水溶液を調製し、前記デーツ種子抽出物試験液「10%DSE/50%EtOH」と等量ずつ混合した。混合液を室温で15分間静置し、10,000×gで10分間遠心分離し、上清を回収し、「BSA処理試験液」(EtOH濃度は25%)とした。なお、BSA処理前の試験液は淡黄褐色であったが、BSAよりにより黄褐色の凝集塊(沈澱)が生じ、上清はほぼ無色透明になった(図9参照)。
前記デーツ種子抽出物試験液「2.5%DSE/50%EtOH」および前記1mg/mLの濃度のBSA溶液を用いて、調製例4と同様の手順で、BSA処理試験液「2.5%DSE/50%EtOH/BSA(1mg/mL)処理」を調製した。
参考例1の手順において、MS2ファージ溶液15μLと各試験液135μLとの混合を、下記(i’)、(vii)および(viii)のように変更し、それ以外は同様にして、カキ抽出物単独の場合、デーツ種子抽出物単独の場合、およびカキ抽出物とデーツ種子抽出物を併用した場合のMS2ファージに対する抗ウイルス作用(感染価減少値)を比較した。なお、下記(i’)は実施例1の(i)と同条件の試験を再度行ったものである。
(i’)MS2ファージ溶液15μLと、前記試験液「0.1%PE/50%EtOH」135μLとを混合。
(vii)MS2ファージ溶液15μLと、前記試験液「2.5%DSE/50%EtOH/BSA(1mg/mL)処理」135μLとを混合。
(viii)MS2ファージ溶液15μLと、前記試験液「0.1%PE/2.5%DSE/50%EtOH/BSA(1mg/mL)処理」135μLとを混合。
実施例1と同様にして、カキ抽出物(PE)の濃度が0.05%のエタノール水溶液「0.05%PE/50%EtOH」およびデーツ種子抽出物(DSE)の濃度が2.5%のエタノール水溶液「2.5%DSE/50%EtOH」を調製した。
(iv)ノロウイルス懸濁液1.2μLと、PBS10.8μLとを混合。
(x)ノロウイルス懸濁液1.2μLと、50%エタノール水溶液10.8μLとを混合。
(xi)ノロウイルス溶液1.2μLと、試験液「2.5%DSE/50%EtOH」10.8μLとを混合。
(xii)ノロウイルス溶液1.2μLと、試験液「0.05%PE/50%EtOH」10.8μLとを混合。
(xiii)ノロウイルス溶液1.2μLと、試験液「2.5%DSE/0.05%PE/50%EtOH」10.8μLとを混合。
Claims (15)
- 少なくとも縮合型タンニンを含む、カキノキ属(Diospyros)の植物の果実の抽出物(以下「カキ抽出物」という。)と、少なくともタンニンを含む、ナツメヤシ属(Phoenix)の植物の種子の抽出物(以下「デーツ種子抽出物」という。)とを含有する、ノロウイルスまたはその代替ウイルスであるMS2ファージもしくはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス剤。
- 前記カキ抽出物がカキノキ(Diospyros kaki)の果実の抽出物である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
- 前記カキ抽出物がエタノール水溶液による抽出物である、請求項1または2に記載の抗ウイルス剤。
- 前記デーツ種子抽出物がナツメヤシ(Phoenix dactylifera)の種子の抽出物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記デーツ種子抽出物がエタノール水溶液による抽出物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記デーツ種子抽出物が低分子タンニンについて富化されたものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記カキノキ属の植物の果実1重量部に相当する前記カキ抽出物に対して、前記ナツメヤシ属の植物の種子10~100重量部に相当する前記デーツ種子抽出物を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
- 前記ナツメヤシ属の植物の種子1重量部に相当する前記デーツ種子抽出物に対して、前記カキノキ属の植物の果実0.0005~0.1重量部に相当する前記カキ抽出物を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
- 請求項1~8のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤と、アルコール、有機酸および/またはその塩、界面活性剤、抗菌剤、保湿剤および化粧品用油脂類からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分とを含有する、ノロウイルスまたはその代替ウイルスであるMS2ファージもしくはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス組成物。
- 前記アルコールとしてエタノールおよび/またはプロパノールを含有する、請求項9に記載の抗ウイルス組成物。
- 前記有機酸および/またはその塩として、乳酸、クエン酸およびフェルラ酸ならびにそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項9または10に記載の抗ウイルス組成物。
- 前記界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリルグルコシド、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウムおよびオレフィンスルホン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
- 前記組成物全体100重量%に対して、前記カキノキ属の植物の果実0.05~1重量%に相当する前記カキ抽出物を含む前記抗ウイルス剤を含有する、請求項9~12のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
- 前記組成物全体100重量%に対して、前記ナツメヤシ属の植物の種子1.25~2.5重量%に相当する前記デーツ種子抽出物を含む前記抗ウイルス剤を含有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の抗ウイルス組成物。
- 少なくとも縮合型タンニンを含む、カキノキ属(Diospyros)の植物の果実の抽出物(以下「カキ抽出物」という。)と、少なくともタンニンを含む、ナツメヤシ属(Phoenix)の植物の種子の抽出物(以下「デーツ種子抽出物」という。)を併用することにより、前記カキ抽出物、前記デーツ種子抽出物それぞれ単独のノロウイルスまたはその代替ウイルスであるMS2ファージもしくはネコカリシウイルスに対する抗ウイルス作用を相乗効果により増強する方法(ただし、人間を治療する方法として人体内および人体表面上で行う場合を除く。)。
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藤阪幸恵ほか,デーツ種子のノロウィルスと代替ウィルスに対する抗ウィルス効果,日本防菌防黴学会年次大会要旨集,Vol.44,2017年,p.187 |
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