以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。まず、本発明の検査方法の検査対象となるセンサー付き吸収性物品を図1(a)及び(b)を参照して説明する。以下の説明では、センサー付き吸収性物品1を単に「尿取りパッド1」ともいう。図1(a)は、尿取りパッド1をその肌対向面側から見た平面図を示し、図1(b)は、尿取りパッド1をその非肌対向面側から見た平面図を示す。なお、図1(b)では、尿取りパッド1の一部の部材を剥離した状態を示している。
尿取りパッド1は、図1(a)及び(b)に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる長手方向Xと、これに直交する幅方向Yとを有する縦長の形状をしている。尿取りパッド1は、着用者の股間部に配される股下部M並びにその前後に延在する腹側部F及び背側部Rを有する。股下部Mは、幅方向Yの中央部に、吸収性物品の着用時に着用者の***部に対向配置される***部対向部を有している。尿取りパッド1は、該パッド1を幅方向Yに二等分して長手方向Xに延びる中心線に対してほぼ左右対称の形状を有している。
図1(a)及び(b)に示す尿取りパッド1は、着用者の肌対向面側に位置する表面シート2と、非肌対向面側に位置する裏面シート3と、両シート間に介在配置された吸収体4とを備え、これらが吸収性本体1Aを構成している。また図1(b)に示すように、裏面シート3の非肌対向面には、着用者が***した尿等の体液の有無を検知可能なセンサーSが設けられている。センサーSは、尿が無い状態(非排尿状態)と、尿がある状態(排尿時)とのインピーダンスの変化を検知することによって、尿等の体液の有無を検知可能となっている。同図に示すセンサーSは、尿取りパッド1の腹側部Fから背側部Rにわたって長手方向Xに延在している。センサーSの詳細については後述する。
表面シート2としては、液透過性を有するシート、例えば、単層又は複層の不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シート2は、その肌対向面側に複数の凸部及び凹部が形成された凹凸形状や、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成した畝溝形状になっていてもよい。
裏面シート3としては、非導電性(絶縁性)のものが好ましく用いられ、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。
吸収体4としては、尿取りパッドや使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来使用されているものを用いることができる。例えば、吸収体4は、吸収性コア(図示せず)を備えている。吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、肌対向面及び非肌対向面のうち一方のみが液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
上述の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4に加え、図1(a)に示すように、肌対向面側の長手方向Xに沿う両側部に、長手方向Xに沿って延びる一対の防漏カフ5,5を備えていてもよい。防漏カフ5は一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフ5は、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフ5は、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフ5の自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材5Aを伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフ5が着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート2上に***された液が、表面シート2上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
図2には、センサーSの一実施形態が示されている。裏面シート3の非肌対向面に設けられたセンサーSは、同図に示すように、該センサーSを構成する複数の電極として、略同形の矩形形状に形成された複数の正電極21a及び複数の負電極21bをそれぞれ有している。複数の正電極21aは、正電極21aどうしが第1導線部21cを介して電気的に接続されており、これらが導電性の正電極列21Aを形成している。同様に、複数の負電極21bは、負電極21bどうしが第2導線部21dを介して電気的に接続されており、これらが導電性の負電極列21Bを形成している。正電極列21A及び負電極列21Bそれぞれの一方の端部側には、外部の検査装置を接続可能な導電性の接続端子部25A,25Bが電気的に接続されている。同図に示す正電極21aどうし及び負電極21bどうしは、各導線部21c,21dを介してそれぞれ直列で接続されているが、並列で接続されていてもよい。正電極列21A及び負電極列21Bの延在方向は、尿取りパッド1の長手方向Xと一致しており、正電極列21A及び負電極列21Bの延在方向と直交する方向は、尿取りパッド1の幅方向Yと一致している。
図2に示すセンサーSは、正電極列21A及び負電極列21Bが互いに平行に配されており、幅方向Yに沿って見たときに、二列の負電極列21Bが、幅方向Yに隣り合う二列の正電極列21Aを挟むように配されている。複数の正電極21a及び複数の負電極21bは、これらを長手方向Xに沿って見たときに、個々の正電極21aと個々の負電極21bとが互いに隣り合った状態に配置されている。また同図に示す各正電極列21A,21Aは、これらを電気的に接続する正電極列接続部21Dを更に有している。このような構造を有するセンサーSは、平面視において、センサーS全体を腹側部Fから長手方向Xに沿って見たときに、正電極列接続部21D、正電極21a及び負電極21bを含む繰り返し単位を長手方向Xに複数有する巨視的なパターン形状となっている。図2に示すセンサーSは、センサーSを幅方向Yに二等分して長手方向Xに延びる中心線CL2に対してほぼ左右対称の形状を有している。図2においては、正電極列21A及び負電極列21Bは、それぞれ2列形成されている。各電極列21A,21Bの列数は、正電極21a及び負電極21bの寸法によって適宜変更可能であり、具体的には、各電極列21A,21Bの列数は、それぞれ独立して、好ましくは1列以上、より好ましくは2列以上、また、好ましくは16列以下、より好ましくは15列以下である。
尿取りパッド1が備えるセンサーSは、センサーSに対して時間と共に周期的に変化するような電圧(交流電圧)を印加して、高周波のインピーダンスを検出することで、高精度のインピーダンス変化の検知、即ち高精度の排尿の検知が可能になっている。センサーSは、排尿によるインピーダンスの変化を検知した各センサーSの位置に基づいて尿の広がりを検知することができ、該尿の広がりから、所定の計算式を用いることで尿の吸収量や排尿量等を求めることができる。
図2においては、二列の正電極列21Aは、長手方向Xの一方の端部において、正電極列接続部21Dを介して、一個の正電極側接続端子部25Aに接続されている。すなわち、二列の正電極列21Aは、一個の正電極側接続端子部25Aを共用している。正電極列21Aに接続された接続端子部25Aは、センサーSの平面視における幅方向Yの中央領域に配置された構成となっている。また、同図に示す負電極列21Bは、各列ごとに一個の負電極側接続端子部25Bが接続されているが、この形態に限られず、二列の負電極列21Bが一個の負電極側接続端子部25Bを共用する態様となっていてもよい。
説明の便宜上、図2に示すセンサーSは、外部の検査装置の正極に接続される電極、電極列及び接続端子部をそれぞれ「正電極」、「正電極列」及び「正電極側接続端子部」とし、該検査装置の負極に接続される電極、電極列及び接続端子部をそれぞれ「負電極」、「負電極列」及び「負電極側接続端子部」としているが、この形態に限られない。つまり、図2に示す正電極21a、正電極列21A及び正電極側接続端子部25Aに対して、外部の検査装置の負極を接続し、且つ同図に示す負電極21b、負電極列21B及び負電極側接続端子部25Bに対して、外部の検査装置の正極を接続してもよい。いずれの場合であっても、本発明の検査方法は適用可能である。
センサーの感度向上の観点から、センサーSは、その長手方向Xに、正電極21aが正電極列21Aの一列当たり1個以上配されていることが好ましく、正電極21aが正電極列21Aの一列当たり1個以上25個以下配されていることがより好ましい。同様の観点から、センサーSは、その長手方向Xに、負電極21bが負電極列21Bの一列当たり1個以上配されていることが好ましく、負電極21bが負電極列21Bの一列当たり1個以上25個以下配されていることがより好ましい。また、吸収性物品の厚み方向における通気性向上の観点から、センサーSの導通及び感度を損なわない範囲で、正電極21a及び負電極21b、並びに正電極列接続部21Dにはそれぞれ、これらを厚み方向に貫通する貫通孔21pが一個以上設けられていることも好ましい。
図1(b)に示すように、尿取りパッド1は、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bの非肌対向面側を保護する目的で、好ましくはセンサーSを被覆する寸法を有する被覆シート7が更に設けられていてもよい。同図に示す被覆シート7は、裏面シート3の非肌対向面側に配されており、尿取りパッド1の非肌対向面を構成している。裏面シート3と被覆シート7との間には、正電極列21A及び負電極列21Bが介在している。本実施形態では、粘着剤や接着剤等の接合手段(図示せず)が被覆シート7における裏面シート3の非肌対向面と対向する面の一部又は全体に配されており、センサーSを被覆するように、被覆シート7を尿取りパッド1の非肌対向面側に保持できるようになっている。被覆シート7は、良好な通気性及び肌触りを得る観点から、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアースルー不織布等の各種製法により製造された不織布から構成されていることが好ましい。被覆シート7を更に設ける場合、同図に示すように、各接続端子部25A,25Bはともに露出した状態とすることが、後述する検査の精度向上及び簡便性の観点から好ましい。また、正電極列21A及び負電極列21Bは、後述する基材27上に形成されていることも好ましい。
複数の負電極21bは、後述する各検査工程を行う際には、負電極側接続端子部25Bを介してアースされていることが好ましく、センサーSにおける長手方向Xに延びる中心線CL2を基準として最も外方に位置する負電極21bがアースされていることがより好ましい。このような位置に配された負電極21bをアースすることにより、センサーSは、外部ノイズの侵入を軽減することができ、後述する検査精度の向上や、あるいは出荷後の実使用時の測定精度を向上させることが可能になる。
正電極列21A及び負電極列21Bは、導電性材料を含んで構成されている。導電性材料20としては、例えば、導電性インク、導線糸、導電性シート、導電性テープ、導電布、導電性メッシュ、導電性両面テープ、金属箔等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尿取りパッド1に導電性材料を保持させる方法は、使用する導電性材料の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、上述した裏面シート3に対して導電性材料を印刷又は蒸着した態様としてもよく、被覆シート7又は電気絶縁性フィルム等の基材に対して、導電性材料を印刷又は蒸着させたあと、該基材を裏面シート3に付着させた態様としてもよい。
上述した態様のうち、正電極列21A及び負電極列21Bは、導電性材料として、導電性インクを用いて、印刷によって形成されていることが好ましい。このような方法で行うことによって、製造工程の簡素化、製造コストの低廉化を図ることが可能となる。正電極列21A及び負電極列21Bを印刷によって形成する場合の印刷方法は特に制限されず、例えば、インクジェット印刷、ロータリー印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等が挙げられる。正電極列21A及び負電極列21Bは、例えば図2に示す所定の形状となるように塗布することによって形成してもよく、印刷対象物の全面に印刷したあと、その後、図2に示すような所定の形状となるように不要部分を除去して形成したものであってもよい。
本実施形態では、図3に示すように、正電極列21A及び負電極列21Bは、ポリエチレンテレフタレート又は低密度ポリエチレン等の原料からなる電気絶縁性のシート状の基材27の一方の面に形成され、正電極列21A及び負電極列21Bが基材27に接していない側の面は尿取りパッド1の非肌対向面側に向くように配されている。また、基材27の他方の面には、被覆シート7が備えられている。基材27は、正電極列21A及び負電極列21Bの平面視形状と略同形状に形成されており、正電極列21A及び負電極列21Bが厚み方向Zに存在しない部位には基材27が存在していない。これに代えて、正電極列21A及び負電極列21Bを含むセンサーSの一方の面の全域を被覆して、正電極列21A及び負電極列21Bが存在しない部位に基材27が露出するような形状となっていてもよい。
導電性インクとしては、少なくとも導電性材料及び液媒体を含有し、更に必要に応じ、分散剤、バインダ、樹脂、硬化剤等を含有するものを用いることができる。導電性物質としては、例えば、銀や銅等の金属粉末、カーボン粉末(カーボンブラック)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。液媒体としては、常圧における沸点が80℃以上100℃以下のものを用いることが好ましく、具体的には例えば、ドデカン、テトラデカン、テルピネオール、n-ヘプタン、PGMEA等の有機溶媒、水、水溶性溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。導電性インクにおける液媒体の含有量は、該インクの全質量に対して、好ましくは10質量%以上80質量%以下である。
各接続端子部25A,25Bは、例えば導電性を有する金属製のスナップを用いることができる。これに加えて、又はこれに代えて、各接続端子部25A,25Bは、金属製のコネクター、ファスナー、面ファスナー(マジックテープ(登録商標)等)、ねじ、フック、噛み込み式の留め具等が用いられてもよい。
以下に、本発明のセンサー付き吸収性物品の検査方法について説明する。本発明の検査方法は、検査工程として、接続端子部と検査装置とを接続しない状態で、該検査装置から出力される第1測定値を得る第1工程、接続端子部と検査装置とを接続した状態で、該検査装置から出力される第2測定値を得る第2工程、及び接続端子部と検査装置とを接続した状態且つ前記正電極列及び前記負電極列とテストボードとを近接させた状態で、該検査装置から出力される第3測定値を得る第3工程を備えている。以下の説明では、特に断りのない限り、正電極側接続端子部25A及び負電極側接続端子部25Bを総称して、「接続端子部25」ともいう。
詳細には、本発明の検査方法は、電極間に生じたインピーダンスを測定することによって、センサーSの動作不良を生じる欠陥の有無を判定する。センサーSの動作不良の原因となる欠陥の態様として、(i)意図しない箇所への導電性インクの印刷や、電極形成時における不要部分の除去不足等に起因した、正電極列21Aと負電極列21Bとの間の意図しない導通、あるいは、(ii)断線、欠損、破損、形成不良(電極等の印刷不良)等に起因した、正電極21aと第1導線部21cとの間、及び負電極21bと第2導線部21dとの間の少なくとも一方に生じている導通不良が挙げられる。特に、インピーダンスを測定し、その変化を対比することによって、上述した態様(i)及び(ii)のいずれもが生じていないと判定されれば、センサーSの動作不良を生じる欠陥は無いので、センサーS、あるいはセンサー付き吸収性物品は良品であると判定される。これに対して、インピーダンスを測定し、その変化を対比することによって、上述した態様(i)及び(ii)のうち少なくとも一方が生じていると判定されれば、センサーSの動作不良を生じる欠陥が存在するので、センサーS、あるいはセンサー付き吸収性物品は不良品であると判定される。
本発明の検査方法に好適に用いられる検査装置の一例を図4及び図5に示す。図4に示す検査装置100は、センサーSの動作不良の原因となる欠陥の有無を判定するためのものである。検査装置100は、検査管理装置40と、検査処理装置50とを備えている。検査処理装置50は、正電極列21A及び負電極列21Bに近接させるテストボード62を備えるテストユニット60と、検査対象であるセンサーSを備える吸収性物品(尿取りパッド1)が載置される載置ユニット70とを有している。
検査装置100において、検査管理装置40及び検査処理装置50は、例えば、図5に示す構成を有していることが好ましい。検査管理装置40は、検査処理装置50に動作不良の検査を行わせ、該検査処理装置50から出力される測定結果に基づいて、動作不良の原因となる欠陥を検出することができる。
検査管理装置40は、検査処理動作の制御や、検査結果に基づく動作不良の判定処理等を行う制御部41と、検査条件や検査結果等のデータが記憶される記憶部42とを有している。
制御部41は、検査処理部411と、動作不良判定部412と、動作不良箇所特定部413と、出力部414とを備えている。第1工程ないし第3工程における各測定値は、出力部414によって、検査管理装置40が備えるディスプレイ等の表示部(不図示)や、通信媒体、即ち有線、無線、光などのネットワークを介して検査管理装置40と協働する別の装置、例えば汎用コンピュータの表示部や、アプリケーションを導入したタブレットあるいはスマートフォンの表示部等に出力させることができる。
記憶部42は、検査条件データ421と、検査データ422と、動作不良判定データ423を記憶する記憶領域と、動作不良箇所データ424とを記憶する記憶領域を有する。
検査処理部411は、記憶部42から検査条件データ421を読み出し、該検査条件データ421に基づいて、検査処理装置50に、動作不良の検査を実行させる。
検査条件データ421には、テストボード62の寸法及び面積、接続端子部25を介してセンサーSに印加される電圧や周波数、該電圧の印加時間、テストボード62のセンサーSへの近接回数、センサーSにおけるテストボード62との近接場所、テストボード62の押圧の有無、該押圧時の圧力、テストボード62の質量等の情報が含まれる。
検査処理装置50は、電極間又は電極列間のインピーダンスを測定することにより、意図しない導通や、電極及び導線部間の導通不良などの種々の不具合を検出することができるものである。検査処理装置50は、各接続端子部25A,25Bに接続するプラグ部64を介して、センサーSにおける各正電極21a及び各負電極21bに所定電圧を所定の時間印加することができる。
テストユニット60は、テストボード62を備える第1可動部61Aと、コネクター部63及びプラグ部64とを備える第2可動部61Bとを含んで構成されている。テストユニット60における各可動部61A,61Bは、それぞれ独立して、各可動部61A,61Bに備えられた可動機構(図示せず)によって上下に移動可能となっている。これによって、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62とを近接させたり、センサーSにおける接続端子部25と検査装置100とを電気的に接続したりできるようになっている。
ここで、「近接」とは、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62との間隔が10μm以上となるように配することを指し、両者間に空間を設けた状態で近づけること、及びテストボード62と正電極列21A及び負電極列21Bとの間に絶縁体が介在した状態でテストボード62をセンサーSに押し付けることの何れもが含まれる。「絶縁体が介在した状態」としては、センサーSの表面に絶縁性の被膜が設けられた場合、テストボード62のセンサーSと対向する面に絶縁性の被膜が設けられた場合、あるいは、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62との間に、後述する繊維体80が配される場合等が挙げられる。絶縁性の被膜は、例えば基材27等を含んで形成されていてもよい。
コネクター部63は、プラグ部64を介してセンサーSにおける接続端子部25に接続して、検査装置100から供給された交流電圧をセンサーSに印加する。コネクター部63は、センサーSにおけるインピーダンスを取得し、該インピーダンスを検査管理装置40へ送る。
第1可動部61Aとテストボード62との間は、一対の第1装着部材61aを介して連結されている。また、第2可動部61Bとコネクター部63との間は、第2装着部材61bを介して連結している。
載置ユニット70は、センサーSを備える尿取りパッド1を上面に保持するステージ71と、該ステージ71をセンサーSの平面方向に移動させる移動機構72とを有している。移動機構72は、例えば、複数のモータ(図示せず)によって、センサーSの平面方向(長手方向X及び幅方向Y)に移動させることができる。
以上の構成を有する検査装置100を用いて、センサー付き吸収性物品(尿取りパッド1)におけるセンサーの検査を行う。本発明の検査方法の一実施形態を図6(a)ないし(c)並びに図7(a)及び(b)に示す。図6(a)ないし(c)は、本発明の検査方法の各工程における尿取りパッド1と、テストユニット60との配置関係を示す図であり、図7(a)及び(b)は、センサーSにおいて、幅方向Yに隣接する正電極列及び負電極列間のインピーダンス、並びに長手方向Xに隣接する正電極及び負電極間のインピーダンスをそれぞれ説明する図である。以下の説明では、説明の便宜上、検査対象となる尿取りパッド1と、テストユニット60におけるテストボード62、コネクター部63及びプラグ部64とに着目し、他の部材を省略して説明するが、尿取りパッド1及びテストユニット60を含む検査装置100に関して特に説明しない点は、上述の説明が適宜適用される。
まず、センサーSの接続端子部25と検査装置100とを電気的に接続しない状態で、第1測定値を得る(第1工程)。後述する各検査工程を効率良く行う観点から、図6(a)に示すように、テストユニット60におけるテストボード62、コネクター部63及びプラグ部64はいずれも、尿取りパッド1に接触せず且つ近接していない状態で本工程を行うことが好ましく、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bと、テストユニット60との間隔を0.8cm超とした状態で本工程を行うことがより好ましい。
尿取りパッド1の配置形態は、センサーSが配置されている面(非肌対向面)がテストボード62の面と対向するように配置されていれば特に制限はなく、図6(a)に示すように、尿取りパッド1をその幅方向Yに三つ折りした状態で配置してもよく、これに代えて、展開状態で配置してもよい。いずれの状態であっても、検査対象となる吸収性物品(尿取りパッド1)は、張力を付与しない状態で配置してもよく、張力を付与した状態で配置してもよい。検査対象に張力を付与する場合、例えば、検査装置100に張力付与機構(図示せず)等を備えて、センサーSの平面方向に沿って張力が付与されていることが、検査精度の向上の観点から好ましい。
第1工程において得られる第1測定値は、検査装置100自体が有するインピーダンスの値であり、出力された第1測定値によって、検査装置100自体が正常に動作しているか否かを判定することができる。例えば、第1測定値が一定の正の値を示していれば、検査装置100が正常に動作していると判定することができる。また、第1測定値は、後述の工程を経て得られる第2測定値及び第3測定値との対比の際の基準値として用いられる。
次いで、接続端子部25と検査装置100とを接続した状態で、第2測定値を得る(第2工程)。本工程では、図6(b)に示すように、尿取りパッド1における接続端子部25と、プラグ部64とを、接触、圧接又は嵌合等により電気的に接続して、センサーSに対して所定の交流電圧を所定時間印加させる。このとき、テストボード62とセンサーSとは離間させた状態でインピーダンスを測定し、第2測定値を得る。つまり、本工程は、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bと、テストボード62とを離間させた状態で、検査装置から出力される第2測定値を得る。テストボード62とセンサーSとを離間させたときの間隔は、好ましくは0.8cm超とする。
第2工程において得られる第2測定値は、センサーSを構成する正電極列21Aと負電極列21Bとの間のインピーダンスを測定した値であり、出力される第2測定値と、上述した第1測定値とを対比することで、正電極列21Aと負電極列21Bとの間の導通の有無を判定することができる。センサーSの動作を良好とするには、正電極列21Aと負電極列21Bとの間は導通していないことが好ましい。
詳細には、正電極列21Aと負電極列21Bとがいずれも導通していない場合、図7(a)に示すように、第1正電極列21A1と、第1負電極列21B1との間に第1インピーダンスZ1を有しており、また、第2正電極列21A2と、第2負電極列21B2との間に第2インピーダンスZ2を有しているので、検査装置100から出力される第2測定値は、各インピーダンスZ1,Z2の合成インピーダンスとなる。センサーSの動作が正常である場合、第2測定値は、第1測定値とほぼ等しく変化しない値となる。
一方、正電極列21Aと負電極列21Bとが導通している場合、すなわちセンサーSの動作が正常でない場合、上述した第1インピーダンスZ1及び第2インピーダンスZ2の少なくとも一方が低下するので、各インピーダンスZ1,Z2の合成インピーダンスとして検査装置100から出力される第2測定値は、第1測定値よりも低下するように変化する。
正電極列21Aと負電極列21Bとの間が導通しているか否かの判定は、第1測定値と第2測定値との対比によって判定することができる。例えば、「第1測定値±(第1測定値×5%)」を上限及び下限とする範囲を許容範囲として設定し、第2測定値が許容値の範囲内で変化した場合、「正電極列21Aと負電極列21Bとの間は導通していない」と判定することができる。これに対して、第2測定値が許容値範囲外となるように変化した場合、「正電極列21Aと負電極列21Bとの間が導通している」と判定することができる。また許容値及びその範囲の設定は、測定対象となる吸収性物品及びセンサーの材料や構成、測定環境等の測定条件等によって適宜変更することができる。
このように、第1工程及び第2工程を行うことによって、検査装置100は、正電極列21Aと負電極列21Bとの間の意図しない導通を検出することができ、センサーの動作不良が生じる欠陥の有無の検査を簡便且つ短時間で行うことができる。
続いて、接続端子部25と検査装置100とを接続した状態で、且つ正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62とを近接させた状態で、第3測定値を得る(第3工程)。本工程では、図6(c)に示すように、尿取りパッド1における接続端子部25と、プラグ部64とを、第2工程と同様に電気的に接続して、センサーSに対し所定の交流電圧を所定時間印加させるとともに、正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62とを近接させた状態でインピーダンスを測定し、第3測定値を得る。本工程では、接続端子部25と検査装置100との接続、及び正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62との近接とを同時に行ってもよく、これらのうち一方を行った後で他方を行ってもよい。また、載置ユニット70の移動機構72によって、ステージ71上に載置したセンサーSを、テストボード62の鉛直方向下方に位置するように調整しておくことも好ましい。
第3工程において得られる第3測定値は、センサーSを構成する正電極21aと負電極21bとの間のインピーダンスを測定した値であり、出力される第3測定値と、上述した第2測定値とを対比することで、各正電極21a,21aどうしの間の導通、及び各負電極21b,21bどうしの間の導通の有無を判定することができる。センサーSの動作を良好とするには、正電極21aどうしの間、及び負電極21bどうしの間は、それぞれ導通していることが好ましい。
図7(b)に示すように、二つの正電極と二つの負電極とを有する部位を例にとって説明すると、正電極21aどうしの間、及び負電極21bどうしの間がいずれも導通している場合、同図に示すように、第1正電極21a1と第1負電極21b1との間の第3インピーダンスZ3、第1負電極21b1と第2正電極21a2との間の第4インピーダンスZ4、及び第2正電極21a2と第2負電極21b2との間の第5インピーダンスZ5をそれぞれ有しているので、検査装置100から出力される第3測定値は、各インピーダンスZ3,Z4,Z5の合成インピーダンスとなる。この場合、テストボード62が近接した状態となっているので、第3測定値は、第2測定値よりも低下するように変化する。
一方、正電極21aどうし、及び負電極21bどうしの少なくとも一方が導通していない場合、電極間のインピーダンスが測定されない箇所が存在するので、この場合も、第3測定値は、第2測定値と同等となるか、又は低下するように変化する。
具体的には、導通不良が起きている接続箇所よりも接続端子部25側に位置する電極間のインピーダンスのみ測定可能である。例えば、図7(b)に示すように、第2正電極21a2と、それに接合しており且つ第2正電極21a2よりも接続端子部25側に位置する第1導線部21cとの接続箇所P1が接続不良を起こしている場合、測定されるインピーダンスは、第3インピーダンスZ3のみとなる。この場合、第4インピーダンスZ4及び第5インピーダンスZ5が測定されないため、これらインピーダンスZ4,Z5に関係する第2正電極21a2及び第2負電極21b2の内の少なくとも一方において、導線部との接続不良が起きていることを特定することができる。
また、一部のインピーダンスが測定されない場合、測定されないインピーダンスのうち、接続端子部25側に位置する接続箇所で導通不良が起きている。例えば、第1負電極21b1と、それに接合しており且つ第1負電極21b1よりも接続端子部25側とは反対側に位置する第2導線部21dとの接続箇所P2が接続不良を起こしている場合、測定されるインピーダンスは、第3インピーダンスZ3及び第4インピーダンスZ4の合成インピーダンスであり、第5インピーダンスZ5は測定されない。これにより、導通不良が起きている接続箇所を、第5インピーダンスZ5に関係する第1負電極21b1と第2負電極21b2との間に絞ることができる。
各正電極21a,21aどうしの間、及び各負電極21b,21bどうしの間がそれぞれ導通しているか否かの判定は、第2測定値と第3測定値との対比によって判定することができる。例えば、「第2測定値-(第2測定値×11%)」の値を閾値として設定して、第3測定値が閾値以下となるように変化した場合、「正電極間どうしの間、及び負電極どうしの間はそれぞれ導通している」と判定することができる。一方、第3測定値が閾値以下に変化していないとき、すなわち第3測定値が閾値よりも高い値であるとき、「正電極間どうしの間、及び負電極どうしの間の少なくとも一つが導通していない」と判定することができる。また閾値及びその範囲の設定は、測定対象となる吸収性物品及びセンサーの材料や構成、測定環境等の測定条件等によって適宜変更することができるが、第1工程及び第2工程と同様の測定条件で第3工程を行うことが好ましい。
このように、第3工程を行うことによって、検査装置100は、テストボード62が近接している範囲で、複数の正電極21a又は複数の負電極21bと、各導線部21c,21dとの導通不良などを網羅的に検出することができ、動作不良検査を簡便且つ短時間で行うことができる。例えば、電極と導線部との接続箇所に接続不良が起きている場合、接続不良が起きている可能性のある接続箇所をある程度絞ることができるため、導通不良が起きている接続箇所の特定を容易に行うことができる。
センサーSの動作不良を生じる欠陥の有無の判定において、第1測定値と第2測定値との対比は、第1工程及び第2工程を行った後、第3工程を行う前に行ってもよく、第3工程を行った後で行ってもよい。また同様に、第2測定値と第3測定値との対比は、第1測定値及び第2測定値との対比と同時に行ってもよい。あるいは、第1測定値と第2測定値との対比と行った後で、第2測定値と第3測定値との対比を行ってもよい。これらの対比及びセンサーSの欠陥の有無の判定は、人手で行ってもよく、あるいは検査管理装置40内で処理させてもよい。
上述の説明では、第1工程、第2工程及び第3工程をこの順で行った場合について説明したが、第2工程及び第3工程の順序を入れ替えて行ってもよく、これに代えて、第3工程を行わなくてもよい。すなわち、本発明の検査方法は、第1工程、第2工程及び第3工程をこの順で行ってもよく(以下、この工程順序を「方法A」ともいう。)、第1工程、第3工程及び第2工程をこの順で行ってもよく、(以下、この工程順序を「方法B」ともいう。)、第1工程及び第2工程のみをこの順で行ってもよい(以下、この工程順序を「方法C」ともいう。)。これらのうち、第2工程において判定可能な「正電極列21Aと負電極列21Bとの間の意図しない導通の有無」は、第3工程のみでは判定が困難であるということを踏まえ、センサーSの欠陥の有無の判定をより精度良く且つより短時間で行う観点から、方法A又は方法Cの順序で各工程を行うことが好ましく、方法Aの順序で行うことが好ましい。特に、方法Aでは、センサーSの欠陥の有無を第2工程までの段階で判別することが可能になり、第3工程を行わずに不良品を排除することができるので有利である。
第3工程においては、テストボード62とセンサーSとの間に何も介在させずに検査を行ってもよいが、テストボード62の表面に付着した汚れなどによる凹凸に起因した検査精度の低下を防止する観点から、テストボード62とセンサーSとの間に、繊維体80を配した状態で行うことが好ましい。繊維体80は、好ましくは絶縁体である。
繊維体80は、検査装置100を用いた測定時において、テストボード62とセンサーSとの間に挟まれる状態となるよう配置すれば、その配置手段は特に制限されない。例えば、繊維体80は、テストボード62におけるセンサーSとの対向面側に予め直接貼り付けてもよく、センサーSにおけるテストボード62との対向面側に予め貼りつけてもよい。本実施形態における繊維体80は、図4並びに図6(a)ないし(c)に示すように、被覆シート7を繊維体80として用いており、被覆シート7をセンサーS上に予め貼りつけた形態となっている。これに代えて、又はこれに加えて、被覆シート7とは別体の繊維体80を用いてもよい。
繊維体80として、テストボード62の表面の凹凸を吸収し得る繊維素材からなるものを用いることができる。例えば、不織布、織物等の繊維シートが挙げられる。
繊維素材としては、例えば、パルプ繊維等のセルロース系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等の各種公知の合成繊維が挙げられる。合成繊維は、複数種類の樹脂成分からなる芯鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維でも良い。これらの繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの材料の単独または複数の種類からなる繊維シートを用いてもよい。不織布としては、例えばスパンレース不織布、メルトブローン不織布等の各種製法による不織布が挙げられる。
被覆シート7を繊維体80として用いる場合には、上述した各種不織布等を用いることができる。
テストボード62の表面の凹凸をより吸収する観点から、繊維体80の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上であり、また好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。なお、テストボード62及び各電極の表面が後述する絶縁性被膜などの絶縁処理がなされていないときは、繊維体80を好ましくは絶縁体の材料で構成する。
また、センサーSを構成する正電極列21A及び負電極列21Bの表面に、絶縁性インクを印刷したり、あるいは絶縁性フィルム等を配置したりすることによって、絶縁性被膜を形成しても良い。絶縁性インクとしては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の樹脂からなる絶縁層を形成し得る組成物を用いることができる。また、電極として導電性インクを塗布するのではなく、銅箔などの金属箔を用いることもできるが、そのようなときは酸化被膜などを形成する表面処理を施して絶縁層とすることもできる。これらの絶縁層は真空に対する比誘電率が2以上のものを用いることが好ましい。
テストボード62とセンサーSとの間に、上述した絶縁性被膜あるいは繊維体80が介在する場合、第3工程は、テストボード62をセンサーSに対して押し付けた状態で行うことが好ましい。この場合、テストボード62とセンサーSとは、絶縁性被膜あるいは繊維体80を介して近接している。
第3工程において、テストボード62をセンサーSに対して押し付ける場合、テストボード62により加える圧力は、テストボード62とセンサーSとを均一に密着させ、検査精度を向上させる観点から、テストボード62の質量と面積との商が、好ましくは4g/cm2以上、より好ましくは5g/cm2以上であり、好ましくは7g/cm2以下、より好ましくは6g/cm2以下となるような押圧荷重とする。このような状態で第3工程を行うことによって、尿取りパッド1等の吸収性物品に配される弾性部材の収縮等に起因する厚み差が生じている場合であっても、テストボード62とセンサーSとの間隔を一定にすることができ、検査精度を一層向上させることができる。
第3工程においては、検査対象の尿取りパッド1に対して、張力を付与しない状態で配置してもよく、張力を付与した状態で配置してもよい。尿取りパッド1等の吸収性物品に配される弾性部材の収縮等に起因する厚み差が生じている場合であっても、その厚み差を少なくして、検査精度を向上させる観点から、測定対象の吸収性物品に対して、長手方向又は幅方向に張力を付与した状態で第3工程を行うことも好ましい。この場合、付与する張力及びその方向は、測定対象の吸収性物品や検査装置100の寸法に応じて適宜変更することができるが、尿取りパッド1を例にとると、好ましくは0.5N以上10N以下の張力を長手方向Xに付与する。張力の付与は、例えば載置ユニット70に張力付与機構(図示せず)等を設けて行うことができる。
テストボード62の素材として、金属、導電性カーボン、導電性樹脂等の導電性材料を用いることができる。インピーダンスの測定精度を上げる観点から、テストボード62は導電性金属を用いることが好ましい。テストボード62に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、タングステン、ステンレス合金等が挙げられる。錆びにくさや軽くて扱いやすいという観点から、テストボード62は、アルミニウム及び不可避不純物からなる金属であるか、又は、アルミニウムを含む合金を用いることが好ましい。また、合成樹脂などの非金属製部材の表面に、これら金属を蒸着したり、箔としてはりつけたものをテストボード62として用いることもできる。これに加えて、テストボード62は、センサーSと対向する面に後述する絶縁コート層が設けられていても良いし、酸化被膜などを形成する表面処理を施して絶縁層を形成してもよい。これらの絶縁層は真空に対する比誘電率が2以上のものを用いることが好ましい。
テストボード62の形状は、特に限定されず任意の形状とすることができるが、複数の電極に容易に近接させる観点から、図4並びに図6(a)ないし(c)に示すように、板状であることが好ましい。また、テストボード62の寸法も特に制限はないが、テストボード62の面積は、少なくとも、インピーダンスを生じ得る1組の正電極21a及び負電極21b、並びに電極を接続する各導線部21c,21dを覆い得る面積を有していればよい。一度の検査でセンサーSの不具合の有無を判定して、検査の簡便性を図る観点から、テストボード62の面積は、センサーSにおける全ての組の正電極21a及び負電極21b、並びに電極を接続する各導線部21c,21dの全体を覆い得る面積であることが好ましい。また、テストボード62の厚みはテストボードが変形しなければよく、厚さは好ましくは1mm以上25mm以下である。これに加えて、テストボード62の剛性を高めるための部材を更に設けてもよい。
プラグ部64を介してセンサーSに印加される電圧は、交流電圧であることが好ましく、特に300kHz以上2MHz以下程度の矩形波であることが好ましい。また、電圧の印加時間は、省電力の観点から短時間であることが好ましく、より好ましくは100ミリ秒(ms)以下である。
図5に示すように、第1測定値と第2測定値との対比、及び第2測定値と第3測定値との対比、並びにセンサーSの欠陥の有無の判定は、検査管理装置40内で自動的に行ってもよい。
検査処理部411は、検査条件データ421の検査条件に基づき、前述の動作不良検査を検査処理装置50に実行させる。そして、検査処理部411は、検査処理装置50が測定したインピーダンスの測定結果(第1測定値、第2測定値及び第3測定値)をそれぞれ取得し、検査データ422として記憶部42に記憶する。
動作不良判定部412は、記憶部42に記憶された検査データ422及び動作不良判定データ423に基づき、センサーSの動作不良の有無を判定する。動作不良判定データ423には、検査データ422に記憶された第1測定値、第2測定値及び第3測定値に基づいて、一定の範囲の許容値を設定させること、及びその許容値を記憶させてもよい。
具体的には、第2工程における正電極列及び負電極列間の意図しない導通の有無について、第1測定値と第2測定値とを対比して、第2測定値が第1測定値に基づいて設定される許容値の範囲内に収まっていれば、正電極列及び負電極列間の意図しない導通は無いと判定される。一方、第1測定値と第2測定値とを対比して、第2測定値が第1測定値に基づく許容値の範囲外となれば、正電極列及び負電極列間の意図しない導通が存在すると判定される。
また、第3工程における、正電極どうしの間及び負電極どうしの間の導通不良の有無について、第2測定値と第3測定値とを対比して、第3測定値が第2測定値に基づいて設定される許容値の範囲内に収まっていれば、正電極どうしの間及び負電極どうしの間の導通不良は無いと判定される。一方、第2測定値と第3測定値とを対比して、第3測定値が第2測定値に基づく許容値の範囲外となれば、テストボード62と近接している範囲に、正電極どうしの間及び負電極どうしの間の導通不良又は意図しない導通が生じている箇所が存在すると判定される。動作不良判定部412は、これらの判定結果を、動作不良判定データ423として、記憶部42に記憶する。
動作不良箇所特定部413は、動作不良判定部412によって動作不良があると判定されたセンサーSについて、動作不良が起きている可能性がある、正電極列及び負電極列の接続箇所を絞り込む。具体的には、テストボード62と近接している範囲において、インピーダンスが測定されなかった隣接電極のうち、最も接続端子部25側に近い電極や、これに接続する導線部を、接続不良や電極等の形成不良が起きている可能性のある箇所として特定する。動作不良箇所特定部413は、接続不良や電極等の形成不良が起きている可能性のある箇所の情報を、記憶部42の動作不良箇所データ424として記憶する。
制御部41における各処理部は、Central Processing Unit(CPU)、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、及びHDD(Hard Disk Drive)等を備える検査管理装置40に所定のプログラムあるいはソフトウェアを組み込むことによりその機能を実現している。つまり、上述した各情報処理は、ハードウェア資源を用いて実現されている。
検査装置100が実行する好ましい処理手順について、図8を参照して説明する。同図には、検査装置100が実行する処理手順を示すフローチャートを示す。
検査装置100における検査管理装置40は、検査処理装置50にセンサーSに対する動作不良検査を実行させる。より具体的には、検査管理装置40における制御部41の検査処理部411は、記憶部42に記憶された検査条件データ421に基づく動作不良検査を、検査処理装置50に実行させ、検査結果である検査データ422を記憶部42に記憶する(ステップS1)。
次に、動作不良判定部412は、記憶部42に記憶された検査データ422に基づいて、センサーSにおける動作不良の有無を判定し、その判定結果である動作不良判定データ423を記憶部42に記憶する(ステップS2)。動作不良の有無は、第1測定値と第2測定値との対比、あるいは及び第2測定値と第3測定値との対比によって、各測定値が許容値の範囲内に収まっているか否かで判定される。この判定において、動作不良があると判定された場合(ステップS2,Yes)、動作不良箇所特定部413は、記憶部42に記憶された動作不良判定データ423に基づいて、センサーSにおける動作不良箇所の可能性がある箇所の特定、又は範囲の絞りこみを行い、動作不良箇所データ424を記憶部42に記憶する(ステップS3)。
次に、出力部414は、記憶部42に記憶された動作不良判定データ423及び動作不良箇所データ424を、検査装置100に設けられた表示部(不図示)、又は通信媒体を介して該装置100と協働する別の装置の表示部等に出力し(ステップS4)、検査処理を終了する。センサーSに動作不良がないと判定された場合(ステップS2,No)、出力部414は、動作不良が無いという判定結果である動作不良判定データ423を、前述した表示部に出力し(ステップS4)、検査処理を終了する。
上述した検査方法は、センサー付き吸収性物品の製造方法における検査工程として組み入れることができる。例えば、表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備する吸収性本体1Aと、センサーSとを備える所定の形状の吸収性物品を公知の方法で製造する。そのあと、センサーSにおける接続端子部25と検査装置100とを接続して、正電極列と負電極列との間のインピーダンスを測定して、第2測定値を得る工程と、接続端子部25と検査装置100とを接続した状態で、且つ正電極列21A及び負電極列21Bとテストボード62とを近接させた状態で、正電極21aどうしの間及び負電極21bどうしの間のインピーダンスを測定して、第3測定値を得る工程とを含む検査工程を行う。
本製造方法において、上述した検査方法における第1工程は、センサー付き吸収性物品を製造する前に行って、第1測定値に基づく許容値及びその範囲を予め設定しておくことが好ましい。また、第2測定値を得る工程を行った後、第3測定値を得る工程を行う前に、不良品と判定された吸収性物品を除去する工程を備えていてもよい。この場合、第3測定値を得る工程を不良品に対して行わなくてもよいので、製造時の検査効率を高め、生産性の向上に寄与することができる。
上述した検査方法を、センサー付き吸収性物品の製造方法における一工程として組み入れる場合、生産効率向上の観点から、載置ユニット70は、図4に示す形態に代えて、図9(a)ないし(d)に示すように、尿取りパッド1を載置して搬送するベルトコンベア73とすることが好ましい。ベルトコンベア73は、その長手方向の両端部が結合された無端状のベルト73aと、一対のローラ(図示せず)とを備える。
図9(a)に示すベルトコンベア73は、センサーSの長手方向Xと搬送方向Lとを一致させた状態で、尿取りパッド1を所定の位置まで移動させる。同図では、センサーSと、テストボード62とを近接させるために、尿取りパッド1をテストユニット60の直下まで搬送する。これに代えて、センサーSの幅方向Yと搬送方向Lとを一致させた状態で搬送してもよい。いずれの搬送形態であっても、テストユニット60は、センサーSにおける正電極列21A及び負電極列21Bを覆い得る方向を向いて配置されている。
次いで、図9(b)に示すように、搬送された尿取りパッド1におけるセンサーSに対し、テストユニット60におけるコネクター部63及びプラグ部64を下降させて接続し、第2工程を行う。
続いて、図9(c)に示すように、センサーSとプラグ部64とを接続させた状態で、搬送された尿取りパッド1における正電極列21A及び負電極列21Bに対してテストボード62を下降させて、第3工程を行う。
検査終了後、テストユニット60は図9(d)に示すように上昇し、センサーSは搬送方向Lへさらに搬送される(不図示)。このように、ベルトコンベア73上で動作不良検査を行うことにより、多数のセンサーSの動作不良検査を効率良く行うことができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、種々の変更が可能である。例えば、本検査対象となるセンサー付き吸収性物品として、尿取りパッドを例にとり説明したが、体液を吸収するために用いられる吸収性物品であれば特に制限されず、おむつ、失禁パッド等の各種の吸収性物品にも適用可能である。
また、本検査対象として、センサーSを備える吸収性物品を対象として説明したが、これに代えて、センサーSのみを検査対象として行ってもよい。センサーSのみを検査対象とする場合、センサーSの製造後からセンサーSを吸収性物品に配置する前までの間に、上述した検査方法を行えばよい。
また、本検査対象を構成するセンサーSにおける各接続端子部25A,25Bの数はそれぞれ異なっていたが、これらは同じであってもよい。また、各接続端子部25A,25Bの形状は同一であってもよく、異なっていてもよい。このような場合、接続端子部の位置や形状、数などに対応するようにプラグ部64を構成する。
センサーSは、他のセンサーと共に用いられても良い。例えば、吸収性物品1にセンサーSと、加速度センサーとを取り付けて、排尿の検出と共に着用者の姿勢を検出する態様としても良い。
検査管理装置40において前記制御部41を構成する検査処理部411等の各処理部は、これらの一部がソフトウェア(プログラム)であってもよいし、これらの一部又は全部がハードウェア回路であってもよい。
出力部414は、検査データ422、動作不良判定データ423及び動作不良箇所データ424のデータのうち、少なくとも何れか1つのデータを出力すれば良く、3つ全てのデータを出力しても良い。
また、吸収性物品の製造工程において不良品を排出するためであれば、動作不良判定データ423として、上述のように、正常基準値、及び該正常基準値から一定の範囲の許容値を設定してもよい。正常基準値は、例えば、正常時、即ち動作不良がない場合の合成インピーダンスとすることができる。このような検査方法では、測定値が正常基準値から許容値を超えて外れた場合には不良とすることでもよい。この場合であっても、不良個所の特定はできないが、電極と導線部の間の接続不良、電極と端子部との接続不良、導線部と端子部との接続不良、電極の欠損や破損、導線部の破損や断線、端子部の破損、導電性インクの印刷不良などの種々の位置における種々の不良を検出することはできるので、製造時の検査効率ひいては生産性の向上に寄与するものとなる。
テストユニット60は、上下に移動可能であるが、検査処理装置50が具備する移動機構により自動的に移動可能であっても良いし、手動によって上下に移動可能であっても良い。また、テストユニット60および載置ユニット70の双方を上下に移動可能としてもよいし、載置ユニット70のみを上下に移動可能としてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔正常例1及び2〕
図1及び図2に示す形態を有するセンサー付き尿取りパッド1を製造した。各尿取りパッド1は、これを幅方向Yに沿って見たときに、二列の負電極列21Bが、幅方向Yに隣り合う二列の正電極列21Aを挟むように配されていた。各尿取りパッド1は、正電極列21A一列当たり6個の正電極21aと、負電極列21B一列当たり5個の負電極21bとを有しており、これらを長手方向Xに沿って見たときに、個々の正電極21aと個々の負電極21bとが互いに隣り合った状態に配置されていた。つまり、接続端子部25の最も近い側から遠い側に向かって長手方向Xに沿って見たときに、正電極、負電極、正電極、負電極、・・・の順で交互に配されていた。
〔不良例1ないし4〕
正常例1と同様の形態を有するセンサー付き尿取りパッドのセンサーSに対して、導電性糸(銀被覆ポリエステル繊維、株式会社ケンエー製)を幅方向Yに取り付けて、正電極列及び負電極列との間に意図的に導通を発生させた不良品の例を用意した。導電性糸は、以下の位置に取り付けた。
・不良例1:接続端子部25の最も近い側から数えて1番目の各負電極21bと、第1及び第2正電極列21A1,21A2との間の箇所(計1箇所)。
・不良例2:接続端子部25の最も近い側から数えて5番目の各負電極21bと、第1及び第2正電極列21A1,21A2との間の箇所(計1箇所)。
・不良例3:不良例1に示す箇所及び不良例2に示す箇所(計2箇所)。
・不良例4、不良例2に示す箇所、並びに、接続端子部25の最も近い側から数えて6番目の各正電極21aと、第1及び第2負電極列21B1,21B2との間の箇所(計2箇所)。
〔不良例5〕
正常例1と同様の形態を有するセンサー付き尿取りパッドのセンサーSに対して、以下の場所の導線部を断線させて、導通不良を発生させた不良品の例を用意した。
・不良例5:第2負電極列21B2における、負電極側接続端子部25Bと、該接続端子部25Bの最も近い側から数えて1番目の負電極21bとの間に配された第2導線部21d(計1箇所)。
〔吸収性物品の検査及びセンサーの欠陥の有無の判定〕
気温24~26℃、湿度35~46%RHの環境下で、正常例及び不良例のセンサー付き尿取りパッドをアクリル板に載置した。次いで、同環境下で、これらの尿取りパッドに対して、図6(a)ないし(c)に示すように、上述した第1工程、第2工程及び第3工程をこの順で行い、センサーの欠陥の有無を判定した。テストボード62は、センサーSとの対向面の寸法が435mm×100mmである平面視矩形状のアルミニウム板であり、テストボード62の長手方向と、センサーSの長手方向とが一致するように配した。本判定に用いたテストボード62の寸法は、センサーSにおける全ての組の正電極21a及び負電極21b、並びに電極を接続する各導線部21c,21dの全体を一度に覆うことができる寸法であった。
欠陥の有無の判定は、以下の基準で評価した。
・第1工程:第1測定値として正の値が出力されている場合は良好と判定し、正の値が出力されていない場合は不良と判定した。
・第2工程:第1測定値に基づく許容値を「第1測定値±(第1測定値×5%)」の範囲に設定し、得られた第2測定値と、前記許容値とを対比した。対比の結果、第2測定値が第1測定値に基づく許容値の範囲内である場合は良好と判定し、前記許容値の範囲外である場合は不良と判定した。
・第3工程:第2測定値に基づく許容値を「『第2測定値-(第2測定値×11%)』以下」に設定し、得られた第3測定値と、前記許容値とを対比した。対比の結果、第3測定値が第2測定値に基づく許容値の範囲内である場合は良好と判定し、前記許容値の範囲外である場合は不良と判定した。結果を以下の表1に示す。第1ないし第3工程における欠陥の有無の判定はそれぞれ、表1中、良好と判定されたものを「OK」と示し、不良と判定されたものを「NG」と示す。
また、欠陥の有無の総合判定は、第1測定値と第2測定値の対比、及び第2測定値と第3測定値との対比から、第2測定値が第1測定値に基づく許容値の範囲内に収まり、且つ第3測定値が第2測定値に基づく許容値の範囲内に収まるもの(すなわち、第1ないし第3工程において判定が全て良好となったもの)を「欠陥なし」と判定し、いずれかの値が許容値の範囲外となるもの(すなわち、第1ないし第3工程の少なくとも1つにおいて不良の判定があるもの)を「欠陥あり」と判定した。結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、センサー付き尿取りパッドに対して、第1工程ないし第3工程を備える検査を行うことによって、第1測定値と第2測定値との対比、及び第2測定値と第3測定値との対比から、正常例のセンサー付き尿取りパッドは、センサーの欠陥は無く、良品(正常)であると判定されることが判る。特に第2工程を行なわずにセンサーの検査を行う場合、第3工程で得られる第3測定値は、意図しない導通の有無によらず、第1測定値と比較して低い値が出力されるので、第1測定値と第3測定値との対比のみでは、意図しない導通の有無の判定が困難である。その結果、不良例の尿取りパッドに対して「欠陥なし」との誤った総合判定がなされることがある。この点に関して、第2工程を備える本発明によれば、第1工程及び第3工程のみの実施では判定が困難な、意図しない導通の有無の判定を行うことができるので、従来誤った判定がなされていたセンサー付き尿取りパッドを簡便に排除でき、その結果、検査精度の向上につながる。