次に、本発明の実施形態を図1~図41に基づいて説明する。図1~6は、第1実施形態に係る卓上切断機1の全体を示している。図1及び図2において、使用者は、当該卓上切断機1の右側に位置して切断作業を行う。以下の説明において、部材及び構成の前後左右上下の各方向については使用者を基準にして用いる。使用者から見て手前側を前側(使用者側)とする。
この卓上切断機1は、スライドマルノコとも称される卓上形の切断機で、切断材Wを載置するためのテーブル20と、このテーブル20を水平回転可能に支持するベース10と、円形の刃具102を備えた切断機本体100を備えている。図1~6では見えていないが、テーブル20は、ベース10の上面ほぼ中央に設けた回転支軸21を介して水平回転可能に支持されている。回転支軸21は、図7において刃口板22の下方に見えている。刃口板22は、刃具102を逃がすための溝孔を有する帯板部材で、テーブル20の上面に面一に取り付けられている。刃口板22の溝孔は、回転支軸21(テーブル20の回転中心)を通って半径方向に長く設けられている。
テーブル20の上面側には、刃口板22と、切断材Wを面方向に位置決めするための位置決めフェンス80が設けられている。テーブル20の前部には、その回転位置をロックするための回転ロック操作部30が設けられている。テーブル20の後部には、本体支持部60を介して切断機本体100が支持されている。本体支持部60は、テーブル20に上方において切断機本体100を上下に揺動操作可能、左右に傾斜操作可能かつ前後にスライド操作可能に支持する機能を備えている。切断機本体100を下方へ揺動操作してテーブル20上に載置した切断材Wに刃具102が切り込まれる。また、刃具102の切り込み状態で切断機本体100を後方へスライドさせることにより、切断材Wの切断加工が後方へ進行して幅広の切断材Wを切断加工することができる。
[テーブル20の回転ロック機構]
ベース10に対するテーブル20の回転位置は、第1の回転ロック機構31と第2の回転ロック機構32の何れか一方を選択して用いることにより一定の角度位置にロックすることができる。図7及び図8に示すように第1及び第2の回転ロック機構31,32の操作部はテーブル20の前部に設けた回転ロック操作部30に配置されている。第1及び第2の回転ロック機構31,32の詳細が図9以降に示されている。第1の回転ロック機構31は、テーブル20を任意の角度位置にロックする機能を有している。第1の回転ロック機構31は回転ロック操作部30に配置した操作部材33を回転操作することによりロック、アンロック操作される。第2の回転ロック機構32は、同じく回転ロック操作部30に配置した操作部材34を上下に揺動操作することによりロック、アンロック操作される。
図10及び図11に示すように第1の回転ロック機構31の操作部材33は、ねじ軸部35の端部に取り付けられている。ねじ軸部35は、テーブル20の前部に設けた2つの支持壁部20a,20b間に跨って支持されている。ねじ軸部35は、2つの支持壁部20a,20bを貫通する状態でその軸回りに回転可能に支持されている。ねじ軸部35は、前側の支持壁部20aに設けた支持孔20d内に径方向にガタつきなく軸方向に変位可能に挿通されている。ねじ軸部35の後部には、ねじ部35aが設けられている。ねじ部35aは、後側の支持壁部20bに設けたねじ孔20cに締め込まれている。このため、操作部材33を回転操作すると、ねじ部35aのねじ孔20cに対するねじ嵌合作用により、ねじ軸部35がその軸方向(前後方向)に進退する。操作部材33をロック側に回転操作すると、ねじ部35aがねじ孔20cに対して締め込まれてねじ軸部35が後側へ変位する。逆に、操作部材33をアンロック側に回転操作すると、ねじ部35aがねじ孔20cに対して緩められてねじ軸部35が前側へ変位する。
ねじ軸部35の後方には、伝達ブラケット36が支持されている。伝達ブラケット36は、左右に長い帯鋼板を図示するように断面クランク形に折り曲げた金属製の中間介在物で、上側当接部36aと下側当接部36bを備えている。図12に示すように伝達ブラケット36は、テーブル20の下面に設けた左右一対の台座部20eに跨って移動可能に取り付けられている。伝達ブラケット36は、2本の固定ねじ37で取り付けられている。伝達ブラケット36には、右側の挿通孔36cと、左側の挿通溝孔36dが設けられている。右側の挿通孔36cは円形孔に形成され、左側の挿通溝孔36dは前後に長い長溝孔形状に形成されている。右側の挿通孔36cと左側の挿通溝孔36dには、それぞれ鉄を素材とする円環形状のスリーブ部材38が装着されている。2つのスリーブ部材38の内周側にそれぞれ固定ねじ37が挿通されている。伝達ブラケット36は、右側のスリーブ部材38を中心として水平に回転可能に支持されており、この回転動作によって伝達ロッド40が後方に押される。
伝達ブラケット36の上側当接部36aの前面にねじ軸部35の後端が当接されている。このため、上記したように操作部材33をロック方向に回転操作すると、ねじ軸部35が後側へ変位して伝達ブラケット36が後方へ押される。伝達ブラケット36は、ねじ軸部35の押圧力によりスリーブ部材38を中心に回転しつつ、後方へ移動する。
伝達ブラケット36の下側当接部36bの後面には、伝達ロッド40の前端が当接されている。伝達ロッド40は、テーブル20の下面に設けたロッド受け部41を介してその軸方向(前後方向)に変位可能に支持されている。また、図9に示すように伝達ロッド40は、ねじ軸部35に対して左側にずれて平行に配置されている。伝達ブラケット36が後方へ回転することにより、伝達ロッド40が後方へ移動する。
図10に示すように伝達ロッド40の後方には、ロック部材42が支持されている。ロック部材42は、テーブル20の下面に支軸43を介して上下に回動可能に支持されている。ロック部材42は、支軸43から上方へ延びる入力部42aと、支軸43が前方へ延びる出力部42bを有するL字形を有している。入力部42aの前面に、伝達ロッド40の後端部が当接されている。このため、伝達ロッド40が後方へ移動すると、入力部42aが後方へ押され、その結果ロック部材42が支軸43を中心にしてロック側(入力部42aを後方へ変位させる方向であって、図10において時計回り方向)に回動する。このように、第1実施形態では、伝達ブラケット36と伝達ロッド40が、操作部材33の回転操作により発生するねじ力をロック部材42に伝達するための伝達部材として機能する。
入力部42aが後方へ押されてロック部材42がロック側に回動すると、出力部42bが上方へ変位する。出力部42bの上方には、ベース10側に設けた被ロック部が位置している。第1実施形態では、ベース10側にロック板部11を固定して被ロック部としている。ロック板部11の上方には、テーブル20の下面に設けた挟み込みリブ20fが位置している。ロック部材42がロック側に回動すると、その出力部42bが上方へ変位してロック板部11が出力部42bと挟み込みリブ20fとの間に挟み込まれる。
操作部材33の回転操作によりなされるねじ軸部35の後退動作によりねじ力が発生する。このねじ力が、伝達ブラケット36及び伝達ロッド40を経てロック部材42に伝達される。ねじ軸部35の後退動作によりロック部材42の出力部42bが上方へ変位することにより、ロック板部11が挟み込まれてベース10に対するテーブル20の回転位置がロックされる。ロック板部11を出力部42bと挟み込みリブ20fとの間に挟み込んでロックする構成であることから、テーブル20を一定の角度範囲で任意の角度位置にロックすることができる。
このように上記第1の回転ロック機構31によれば、伝達部材としての伝達ブラケット36と伝達ロッド40を介してねじ力をロック部材42に間接的に伝達する構成であり、ねじ軸部35は比較的使用者に近い部位において伝達ブラケット36に押圧される構成となっている。これに対して、従来特開平9-131701号公報に開示されているように、長いねじ軸部をロック部材に押圧する構成では、ねじ軸部先端のロック部材に対する変位(押圧位置のずれ)が大きく、結果として伝達ロスが大きくなってロック部材の固定力が十分に発揮されなくなる問題があった。上記例示した第1の回転ロック機構31では、伝達部材の分だけ短いねじ軸を押圧する構成であることから、ねじ力の伝達ロスを従来よりも低減させることができ、これによりロック部材42の十分なテーブルロック力を発揮させることができる。
また、第1の回転ロック機構31によれば、ベース10側のロック板部11を上下で挟み込んでテーブル20の回転位置をロックする構成であるので、ロック時におけるテーブル20の変位をなくすことができる。この点、例えば特開平5-318402号公報、特開平9-131701号公報、特開2002-200602号公報、特開2010-58229号公報に開示されているように従来は、ロック部材をベース側に一方的に押圧してテーブルの回転位置をロックする構成であったことから、ロック部材の押圧に伴う反動によりテーブルが僅かに浮き上がる等して切断精度が損なわる問題があった。上記例示した第1の回転ロック機構31では、ベース10側のロック板部11を、ロック部材42の出力部42bとテーブル20の挟み込みリブ20fとにより上下で挟み込んでロックする構成であるので押圧による反動が上下で相殺される結果、ベース10に対するテーブル20の浮き上がり等の位置ずれを生ずることがなく、これにより高い切断精度を確保することができる。
第1実施形態に係る卓上切断機1は、第1の回転ロック機構31に加えて第2の回転ロック機構32を備えている。第2の回転ロック機構32は、テーブル20を一定の角度範囲で、予め設定した複数の角度位置にテーブルをロックすることができる(ポジティブロック)。第2の回転ロック機構32の操作部材34は、同じく回転ロック操作部30に配置されている。回転ロック操作部30の左側部には、操作部材34の押し下げ位置(アンロック位置)を保持するための操作ノブ39が設けられている。図10及び図11に示すように操作部材34は、その後部側に一体に設けた揺動軸部34cを介して回転ロック操作部30に上下に揺動操作可能に支持されている。操作部材34の前部に、使用者が押し下げ操作する操作部34aが設けられている。
揺動軸部34cよりも前側において、操作部材34には、係合軸46を介して突部が連携されている。第1実施形態では、突部としてロックピン47が用いられている。係合軸46はロックピン47よりも十分に細径のピンで、ロックピン47の中心軸を通って径方向に挿入されて左右両方向に突き出す状態に設けられている。係合軸46は、操作部材34の斜面部34bに下方から当接されている。ロックピン47は、支持壁部20aとロッド受け部41を介して前後に変位可能に支持されている。ロックピン47は、前記第1の回転ロック機構31のねじ軸部35と平行に配置されている。また、ロックピン47は、図9に示すように平面的に見ると、ねじ軸部35と同軸に配置されている。このため、ロックピン47は、第1の回転ロック機構31の伝達ロッド40とは左右方向にずれて平行に配置されている。
操作部材34は、係合軸46と支持壁部20aとの間に介装した圧縮ばね48によりロックピン47を後方に付勢し、係合軸46が斜面部34bを下方から押圧することにより上方(ロック側)へ揺動する方向に付勢されている。この圧縮ばね48に抗して操作部34aを押し下げ操作することにより操作部材34を下方(アンロック側)に揺動操作することができる。操作部材34を上下に揺動操作すると、ロックピン47が前後に進退する。ロックピン47の後方であって、ベース10の前部一定の角度範囲には、複数のロック凹部12が設けられている。複数のロック凹部12は、予め設定した角度ごとに設けられている。
図11に示すように操作部材34が圧縮ばね48の付勢力により上方のロック位置側に位置する状態では、ロックピン47が後方へ変位する。ロックピン47が後方へ変位して何れかのロック凹部12に進入することにより、テーブル20の回転位置がロックされる。ロックピン47のロック位置は圧縮ばね48の付勢力により保持される。操作部材34の操作部34aを圧縮ばね48の付勢力に抗して下方(アンロック側)へ押し下げ操作すると、係合軸46が斜面部34bで下方へ押されることによりロックピン47が前方へ変位する。ロックピン47が前方へ変位すると、その後部がロック凹部12から抜き出される。ロックピン47が前方へ変位してロック凹部12から抜き出されることにより、第2の回転ロック機構32がアンロックされてテーブル20を回転可能な状態となる。
操作部材34の押し下げ操作(アンロック操作)は、左側に併設した操作ノブ39を操作することによりロックすることができる。操作部材34を押し下げた状態にロックすることにより、ロックピン47をロック凹部12から離脱させた状態に維持することができる。前記した第1の回転ロック機構31によりテーブル20を任意の角度位置に位置決めする際には、ロックピン47をロック凹部12から離脱させた状態で行われる。このことから、第1の回転ロック機構31によりテーブル20の回転位置を位置決めする際には、操作ノブ39を操作して第2の回転ロック機構32の操作部材34をアンロック位置にロックしておくことにより、第1の回転ロック機構31による位置決め操作を迅速かつ確実に行うことができる。第1の回転ロック機構31による位置決めを行わない場合には、操作ノブ39のロック操作を解除して操作部材34の押し下げ操作のロック状態を解除する。これにより、操作部材34が圧縮ばね48の付勢力により上方のロック位置に戻される。操作部材34が上方のロック位置に戻されることによりロックピン47が後退して、その後端部がロック凹部12に挿入されることにより、テーブル20が予め設定した一定の角度位置に位置決めされる。
図7に示すようにベース10の前部には、テーブル20の回転位置を表示するための角度目盛り13が張り付けられている。テーブル20の左側と右側の対称位置には、それぞれ指針部23が設けられている。指針部23が指し示す角度目盛り13の目盛りを読み取ることにより、テーブル20の角度位置を確認することができる。図7では、テーブル20が角度位置0°にロックされた状態が示されている。第1実施形態では、テーブル20の回転位置を左右に約60°の角度範囲で変更することができる。第1の回転ロック機構31によれば、左右に約60°の角度範囲の任意の角度位置にテーブル20をロックすることができる。第2の回転ロック機構32によれば、左右に約60°の角度範囲のうち、例えば10°間隔でテーブル20の角度位置を繰り返し精度よくロックすることができる。第2の回転ロック機構32によりロックできない角度位置については、第1の回転ロック機構31によりロックすることができる。
[切断機本体100の傾斜位置決め機構62]
テーブル20の後部に本体支持部60を介して切断機本体100が支持されている。切断機本体100は、テーブル20の上面に対して上下に揺動可能かつ前後にスライド可能であるとともに、左右方向にも傾斜可能に支持されている。本体支持部60は、テーブル20の後部から上方へ延びる本体支持アーム61を備えている。本体支持アーム61の下部とテーブル20の後部との間に、直角位置決め機構90と傾斜位置決め機構62が構成されている。
テーブル20の後部には円筒形の傾斜受け部63が一体に設けられている。本体支持アーム61の下部前面には円筒形の合わせ面を有する傾斜支持部64が一体に設けられている。図17に示すように傾斜支持部64は、1本の左右傾斜軸65を介して傾斜受け部63に回転可能に結合されている。図2、図19及び図20に左右傾斜軸65が示されている。この左右傾斜軸65の軸線を中心にして本体支持アーム61及び切断機本体100が左右に傾斜可能に支持されている。左右傾斜軸65の軸線は、上下方向についてテーブル20の上面に一致している。
直角位置決め機構90の詳細が図13、図14及び図17に示されている。直角位置決め機構90は、直角位置決めボルト91と、直角位置決め解除ボタン68と、直角位置決め部69を備えている。直角位置決めボルト91は、傾斜受け部63の上部に締め込まれている。直角位置決めボルト91の締め込み方向前方に直角位置決め部69が配置されている。直角位置決め部69は、傾斜支持部64側に支持されている。直角位置決め部69は、支軸92を介して上下に傾動可能に支持されている。直角位置決め部69は、捩じりばね92によりその傾動先端部に設けた当接部69aを上方へ変位させる方向(図14において左回り方向)に付勢されている。
図17に示すように直角位置決め部69の左側部には、係合部69bが設けられている。係合部69bの左側に、直角位置決め解除ボタン68が配置されている。直角位置決め解除ボタン68は、傾斜支持部64の左側部に設けられている。直角位置決め解除ボタン68は左右に進退させることができる。直角位置決め解除ボタン68は、圧縮ばね94により左方の直角位置決め位置(図17中実線で示す位置)側に付勢されている。直角位置決め解除ボタン68を圧縮ばね71の付勢力により左側の直角位置決め位置に位置させた状態では、直角位置決め部69が捩じりばね93の付勢力によって図14中実線で示す直角位置決め位置に位置する。本体支持アーム61ひいては切断機本体100を左側から右側(図14において右回り方向)へ傾動させて、直角位置決め位置に位置する直角位置決め部69の当接部69aを直角位置決めボルト91に当接させることにより、本体支持アーム61ひいては切断機本体100が直角切り位置に位置決めされる。
直角位置決め解除ボタン68を圧縮ばね94に抗して右方の解除位置(図17中二点鎖線で示す位置)に押し込み操作すると、その先端部が係合部69bに当接して右方へ押される。係合部69bが右方へ押されることにより、直角位置決め部69が図14において二点鎖線で示す解除位置に移動する。直角位置決め解除ボタン68の押し操作を維持して直角位置決め部69を解除位置に位置させた状態では、当接部69aに直角位置決めボルト91が当接しないため、本体支持部60ひいては切断機本体100を直角切り位置を通過して右側へ傾斜させることができる。切断機本体100を直角切り位置から左側へ傾斜させる場合には、直角位置決め部69の当接部69aが直角位置決めボルト91から左方へ離間する方向に変位することから、直角位置決め機構90の解除操作は必要ない。
傾斜位置決め機構62の詳細が図15~図18に示されている。図17に示すように傾斜支持部64の左右両側部には傾斜ストッパボルト66,67が設けられている。両傾斜ストッパボルト66,67は、その先端部を斜め下方へ向けて締め込まれている。これに対して傾斜受け部63の下部には傾斜位置決めロッド70が設けられている。図15及び図16に示すように傾斜位置決めロッド70は、テーブル20の後部に前後方向(軸方向)に移動可能に支持されている。傾斜位置決めロッド70は、圧縮ばね71により後方の45°位置決め位置へ移動する方向に付勢されている。傾斜位置決めロッド70の後部は、左右の傾斜ストッパボルト66,67が向けられた斜め下方(軸線方向前方)に位置している。
傾斜位置決めロッド70の前部には、操作ブラケット72が取り付けられている。図18に傾斜位置決めロッド70と操作ブラケット72が部品の状態で示されている。操作ブラケット72の上部には、傾斜角度を切り替え操作するための切り替え操作部材として、左右一対の操作ノブ72aが一体に設けられている。図7に示すように左右の操作ノブ72aは、テーブル20の後部に設けた挿通窓部20gを経てそれぞれテーブル20の上面から上方へ突き出されている。左右の挿通窓部20gは、それぞれ操作ノブ72aを挿通可能な矩形に形成されており、テーブル20の中心線に対して左右対称位置に配置されている。左右の挿通窓部20gの前後幅は、操作ノブ72aを前側の48°位置決め位置と後側の45°位置決め位置との間で移動操作可能な前後幅に設定されている。当該卓上切断機1の使用者は、左側若しくは右側の操作ノブ72aを摘まんで前後に移動操作することにより、傾斜位置決めロッド70を前後に移動させることができる。
操作ノブ72aは、圧縮ばね71の付勢力により後方へ変位した位置が初期位置となる。従って、傾斜位置決めロッド70は圧縮ばね71の付勢力により後方の45°位置決め位置に保持される。図7は、操作ノブ72aの初期位置を示し、図15は傾斜位置決めロッド70の45°位置決め位置を示している。傾斜位置決めロッド70を48°位置決め位置に移動させるための操作であって操作ノブ72aを前側へ移動させる操作は圧縮ばね71に抗してなされる。
図15及び図16に示すように傾斜位置決めロッド70の後部には、相互に平行な2つの平坦な面である当接部70aが設けられている。傾斜位置決めロッド70を前後に移動させることにより、当接部70aが前後に変位する。図15は、傾斜位置決めロッド70が圧縮ばね71の付勢力により後方の45°位置決め位置に位置する状態を示している。この状態では、当接部70aが左右の傾斜ストッパボルト66,67の軸線方向前方から後方へ外れた状態となっている。このため、切断機本体100を直角切り位置から左方又は右方へ傾斜させて本体支持アーム61が左右に傾斜されると、左右の傾斜ストッパボルト66,67は傾斜位置決めロッド70の外周面に当接する。左側若しくは右側の傾斜ストッパボルト66,67が傾斜位置決めロッド70の外周面に当接することにより、切断機本体100が左方若しくは右方へ45°傾斜した位置に位置決めされる。
図16に示すように、左側若しくは右側の操作ノブ72aを指先で前側(手前側)へ移動操作することにより、傾斜位置決めロッド70を圧縮ばね71の付勢力に抗して前側の48°位置決め位置に移動させることができる。傾斜位置決めロッド70を前側の48°位置決め位置に移動させると、左右の傾斜ストッパボルト66,67の軸線方向前方に当接部70aが位置する状態となる。このため、切断機本体100を直角切り位置から左方又は右方へ傾斜させて本体支持アーム61が左右に傾斜されると、左右の傾斜ストッパボルト66,67は傾斜位置決めロッド70の当接部70aに当接する。左側若しくは右側の傾斜ストッパボルト66,67が傾斜位置決めロッド70の当接部70aに当接することにより、切断機本体100が左方若しくは右方へ48°傾斜した位置に位置決めされる。
図17に示すように、切断機本体100を左方へ傾斜させる場合には、左側の傾斜ストッパボルト66が傾斜位置決めロッド70に突き当てられて、45°若しくは48°に位置決めされる。切断機本体100を右方へ傾斜させる場合には、右側の傾斜ストッパボルト67が傾斜位置決めロッド70に当接されて、45°若しくは48°に位置決めされる。このように、切断機本体100の左右傾斜位置を45°若しくは48°に傾斜させた位置に位置決めするための傾斜位置決めロッド70は、テーブル20の外周縁若しくは外周縁を通る仮想円の後端よりも前側であって傾斜位置決め機構62よりも使用者側(前側)に配置された操作ノブ72aを操作することにより、45°位置決め位置若しくは48°位置決め位置に切り替えることができる。従来、例えば特開2011-41999号公報、特開2014-138961号公報に開示されているように、この種の切り替えレバーが本体支持アーム61の後面側や側面に配置されていた。係る従来の構成に比して、第1実施形態に係る操作ノブ72aはより使用者に近い部位(テーブル20の上面後部)に配置されていることから、使用者はより楽な姿勢で操作ノブ72aの移動操作を行うことができ、この点で当該卓上切断機1の操作性を向上させることができる。また、操作ノブ72aは左右に配置されているので、使用者は左手若しくは右手の何れによっても当該操作ノブ72aを楽に移動操作することができる。さらに、左傾斜のときは、右側の操作ノブ72aの付近に広い空間ができ、反対に右傾斜のときは、左側の操作ノブ72aの付近に広い空間ができる。このことから左右いずれの傾斜のときも操作ノブ72aの操作が妨げられることがない。
[切断機本体100の傾斜固定機構50]
切断機本体100の直角切り位置及び左右傾斜位置は、直角位置決め部69若しくは傾斜位置決めロッド70により位置決めされた後、以下説明する傾斜固定機構50により固定される。傾斜固定機構50の詳細が図19~図21に示されている。左右傾斜軸65は、傾斜受け部63から後方へ突き出す状態に一体に設けられている。左右傾斜軸65は、挿通孔64aを経て傾斜支持部64の後面から後方へ突き出されている。左右傾斜軸65の後部には、ねじ軸部65aが設けられている。ねじ軸部65aには、第1プーリ51が結合されている。第1プーリ51は、ねじ軸部65aに対して回転されるとその軸線方向(前後方向)に変位する。第1プーリ51は、ねじ軸部65aに対して締め込まれることにより、スラストベアリング52とフランジ53を介して傾斜支持部64の段差部64bに押圧される。第1プーリ51がねじ軸部65aに締め込まれて段差部64bに押圧されることにより、傾斜支持部64が傾斜受け部63に対して固定されて本体支持アーム61の左右傾斜位置が固定される。第1プーリ51のねじ軸部65aに対する締め込みが緩められると、傾斜支持部64が傾斜受け部63に対して回転可能となって本体支持アーム61を左右に傾斜可能となる。
図20に示すように本体支持アーム61の上部には、第2プーリ54が回転可能に支持されている。第1プーリ51と第2プーリ54との間に伝達ベルト55が架け渡されている。第1プーリ51と第2プーリ54には、歯付きプーリが用いられている。このため、伝達ベルト55には歯付きベルトが用いられている。第1及び第2プーリ51,54と伝達ベルト55が噛み合うことにより、滑りを生ずることなく動力が確実に伝達される。本体支持アーム61の伝達経路の中途には、アイドラ56が回転可能に支持されている。このアイドラ56により、伝達ベルト55の適正なテンションが持たされている。アイドラ56により伝達ベルト55に適正なテンションが持たされることにより、伝達ベルト55に対する第1及び第2プーリ51,54の歯飛びが防止され、この点でも確実な動力伝達がなされるようになっている。
本体支持アーム61の後面側には、樹脂製のアームカバー57が取り付けられている。アームカバー57は本体支持アーム61の後面をほぼ全面にわたって覆う状態に取り付けられている。このアームカバー57により、第1及び第2プーリ51,54と伝達ベルト55による動力伝達経路が覆われることにより、これら各部材51,54,55に対する他物品等との干渉若しくは噛み込みが防止されるとともに、粉塵等から保護されている。
図20に示すように本体支持アーム61の上部であって、第2プーリ54の右側方にはベルト押圧部57aが設けられている。第1実施形態の場合、ベルト押圧部57aは、アームカバー57に一体に設けられている。ベルト押圧部57aは、アームカバー57の壁部から内方へ張り出す状態に設けられている。図示するようにこのベルト押圧部57aは、伝達ベルト55の背面(歯面の反対面)に押圧されている。ベルト押圧部57aは、第2プーリ54の締め付け回転方向(図20において反時計回り方向、使用者から見て時計回り方向)の前方側に配置されている。図20において、左右傾斜軸65のねじ軸部65aに対する第1プーリ51の締め付け回転方向が白抜き矢印で示されている。白抜き矢印と同じ方向に第2プーリ54が回転することにより、本体支持アーム61の左右傾斜位置が傾斜受け部63に対して固定され、従って切断機本体100の左右傾斜位置が固定される。このため、第2プーリ54の締め付け回転方向の前方側(図20において第2プーリ54の左側)において伝達ベルト55のたるみが発生しやすい。このたるみの発生がベルト押圧部57aにより回避される。伝達ベルト55のたるみの発生が回避されることにより、第2プーリ54に対する伝達ベルト55の歯飛びが防止されて確実な動力伝達がなされる。
係るベルト押圧部57aによれば、アイドラを配置できない狭小な部位においても伝達ベルト55のたるみの発生を防止することができる。ベルト押圧部57aを複数個所設けることにより、伝達ベルト55のたるみをより確実に回避することができる。なお、ベルト押圧部57aは、本体支持アーム61側に設けることもできる。
図20及び図21に示すように第2プーリ54にはフランジ部54aが設けられている。フランジ部54aの後面には、複数の係合凹部54bが設けられている。複数の係合凹部54bは、当該第2プーリ54の回転中心を中心とする同心円に沿って等間隔で配置されている。一方、アームカバー57の上部には、一つの係合ピン58が圧縮ばね59により突き出し方向に付勢された状態で設けられている。圧縮ばね59で突き出し方向に付勢された係合ピン58が第2プーリ54の係合凹部54bに押圧されている。圧縮ばね59により係合ピン58が係合凹部54bに弾性的に押圧されることにより、第2プーリ54に回転方向のクリック感が持たされている。
図2に示すように本体支持アーム61の上部には、2本のスライドバー75,76が支持されている。2本のスライドバー75,76は、本体支持アーム61の上部前面から前方へ長く延びる状態に固定されており、その先端側はテーブル20の中央上方に至っている。2本のスライドバー75,76は、上下方向に一定の間隔をおいて相互に平行に支持されている。2本のスライドバー75,76の前端部は、結合部材78により相互に一定の間隔で結合されている。上下2本のスライドバー75,76を介して本体スライダ77が前後方向にスライド可能に支持されている。本体スライダ77に切断機本体100が支持されている。切断機本体100は、本体スライダ77及び上下2本のスライドバー75,76を介して前後にスライド可能に支持されている。
図2に示すように上下のスライドバー75,76には、鋼管(パイプ材)が用いられている。上側のスライドバー75の内周側には、伝達ロッド79が挿通されている。伝達ロッド79は、後部側の軸受79aと前部側の軸受79bを介してその軸線回りに回転可能に支持されている。後部側の軸受79aは、本体支持アーム61に保持されている。前部側の軸受79bは、結合部材78に保持されている。伝達ロッド79の後部に第2プーリ54が結合されている。第2プーリ54は伝達ロッド79と一体で回転する。
伝達ロッド79の前部には、操作ノブ73が結合されている。操作ノブ73を右回りに回転操作することにより、伝達ロッド79を介して第2プーリ54を締め付け方向(ねじ軸部65aに対する第1プーリ51の締め付け方向)に回転させることができる。使用者は、第2プーリ54に並設したクリック機構により、操作ノブ73の回転操作について一定角度ごとにクリック感を直接受けながら第2プーリ54を回転させることができる。第2プーリ54の回転は、伝達ベルト55を介して第1プーリ51に伝達される。操作ノブ73の回転操作により、第1プーリ51を回転させて本体支持アーム61ひいては切断機本体100の左右傾斜位置を変更し、固定することができる。
以上説明した傾斜固定機構50によれば、操作ノブ73を回転操作して傾斜固定機構50を遠隔操作することができる。操作ノブ73は、テーブル20のほぼ中央上方に位置することから、使用者は大きく手を伸ばして窮屈な姿勢をとることなく、楽に操作ノブ73を回転操作することができる。また、第2プーリ54には、圧縮ばね59でばね付勢された係合ピン58(クリック機構)により回転についてクリック感が持たせられている。このため、使用者はクリック感を受けながら操作ノブ73を回転操作することができ、この点で例えば特開2015-150633号公報に開示された従来構成に比して当該傾斜固定機構50の操作性が高められている。さらに、ベルト押圧部61aにより第2プーリ54の締め付け回転方向の前方側における伝達ベルト55のたるみが回避されて、第2プーリ54に対する伝達ベルト55の歯飛びが回避される。
[切断機本体100]
切断機本体100は、本体支持部60の2本のスライドバー75,76を介して前後にスライド可能に支持されている。切断機本体100の詳細が図22~図25に示されている。切断機本体100は、交流電源式の電動モータ101を駆動源として回転する円形の刃具102を備えている。刃具102の上側半周の範囲は固定カバー103で覆われている。刃具102の下側半周の範囲は、可動カバー104で覆われている。図23に示すように可動カバー104は、ボス部104aの外周側に取り付けた軸受(ボールベアリング)109を介して固定カバー103の左側面に回転可能(上下に開閉可能)に支持されている。可動カバー104は、切断機本体100の上下動に連動して開閉される。可動カバー104が開かれると、刃具102の下部が露出される。この露出部分が切断材Wに切り込まれる。可動カバー104は、当該切断機本体100が上死点に位置する状態(図1~図5に示す状態)で全閉される。可動カバー104は、切断機本体100を上死点から下動させると徐々に開かれていく。可動カバー104は、切断機本体100を下死点にまで下動させた状態(図22に示す状態)で全開される。
図5に示すように固定カバー103の後部には、基台部107が一体に設けられている。基台部107は後方へ延びている。一方、本体スライダ77の右側部には、二股形状の本体支持部77aが設けられている。基台部107の後部が本体支持部77aに挿入されて、上下揺動支軸105を介して上下に揺動可能な状態で結合されることにより、切断機本体100が本体スライダ77に対して上下に揺動可能に支持されている。切断機本体100は、上下揺動支軸105を中心にして上下に揺動させることができる。切断機本体100は上下揺動支軸105の周囲に装着した捩じりばね106(図4にその一部が見えている)により上方の待機位置へ戻される方向に付勢されている。
図23及び図25に示すように電動モータ101は、円筒形のモータハウジング110に、固定子111と、回転子112を内装した構成を備えている。モータハウジング110の内周側に固定子111が固定されている。固定子111の内周側に回転子112が回転可能に支持されている。回転子112はモータ軸113に結合されている。モータ軸113はモータ軸線J方向前後の軸受114,115を介して回転自在に支持されている。回転子112のモータ軸線方向前側(左下)においてモータ軸113に冷却ファン116が取り付けられている。回転子112のモータ軸線J方向後部(右上)には、整流子112aを備えている。整流子112aには、2つのカーボンブラシ117が相互に反対側から摺接されている。
図22に示すようにモータハウジング110のモータ軸線J方向の後面には、複数の吸気口110aが設けられている。電動モータ101が起動して冷却ファン116が回転する状態では、吸気口110aを経てモータハウジング110内に外気が導入される。吸気口110aから導入された外気(冷却風)はモータ軸線J方向前側へ流れて、固定子111及び回転子112等の冷却がなされる。
電動モータ101は、そのモータ軸線J方向後部側を上方へ変位させる方向に傾斜した姿勢に取り付けられている。図23に示すように切断機本体100を、刃具102がテーブル20の上面に対して直交する直角切り位置に位置させた状態で、電動モータ101は、そのモータ軸線Jをテーブル20の上面に対して平行ではなく傾斜させた姿勢に配置されている。電動モータ101を傾斜させて配置することにより、切断機本体100の右側への許容される傾斜角度をより大きく設定することができる。
電動モータ101は、ギヤヘッド部120を介して固定カバー103の背面側(右側部)に結合されている。ギヤヘッド部120は、ギヤハウジング121に2段減速ギヤ列が内装された構成を備えている。ギヤハウジング121は、固定カバー103の背面側に一体に設けられている。電動モータ101のモータ軸113の先端には、出力ギヤ部113aが設けられている。出力ギヤ部113aは、第1従動ギヤ122に噛み合わされている。第1従動ギヤ122は第1従動軸123上に固定されている。第1従動ギヤ122の左側において第1従動軸123上には、第2従動ギヤ124が固定されている。第1従動軸123は軸受123a,123bを介してギヤハウジング121に回転可能に支持されている。
第2従動ギヤ124は、第3従動ギヤ125に噛み合わされている。第3従動ギヤ125は、第2従動軸126上に固定されている。第2従動軸126は、軸受126a,126bを介してギヤハウジング121に回転可能に支持されている。第2従動軸126は第1従動軸123に平行に配置されている。第3従動ギヤ125は、第4従動ギヤ127に噛み合わされている。第4従動ギヤ127は、スピンドル130上に固定されている。スピンドル130は、軸受130a,130bを介してギヤハウジング121の下部に回転可能に支持されている。スピンドル130は、第1及び第2従動軸123,126と平行に配置されている。
スピンドル130は、固定カバー103内に突き出されている。この突き出し部分に刃具102が取り付けられている。刃具102は、その中心をアウタフランジ131とインナフランジ132で挟んだ状態で刃具固定ねじ134の締め込みにより取り付けられている。
電動モータ101の上面には、コントローラ収容部140が設けられている。コントローラ収容部140は、主として電動モータ101の動作を制御するためのコントローラ141が収容されている。コントローラ141では、例えば定回転制御やソフトスタート等の制御がなされる。コントローラ収容部140内には、冷却ファン116の回転によりモータハウジング110内に流入した外気(モータ冷却風)の一部が流れ込む。コントローラ収容部140の内部に流れ込んだモータ冷却風の一部によりコントローラ141の冷却がなされる。図5,6,22,23に示すように、ギヤヘッド部120の後部側にモータ冷却風を排気する排気口145が設けられている。
電動モータ101の使用者から見て手前側の側部には、使用者が把持するハンドル部150が設けられている。ハンドル部150は、刃具102の回転軸線(スピンドル130の軸線)にほぼ平行に配置されて、横握りタイプのハンドル部となっている。ハンドル部150の左右両側が脚部151,151を経て電動モータ101の前側の側部に結合されている。ハンドル部150の後面に、スイッチレバー152が配置されている。ハンドル部150を把持して手でスイッチレバー152を手前側へ引き操作することにより電動モータ101が起動して刃具102が回転する。ハンドル部150の前面には、ロックオフスイッチ153が設けられている。このロックオフスイッチ153を押し込み操作した状態でスイッチレバー152を引き操作(オン操作)することができる。
図5に示すように、固定カバー103の後部には、持ち運び用のキャリングハンドル154が設けられている。キャリングハンドル154は、固定カバー103の上部後面から基台部107の後部に跨っている。キャリングハンドル154は、切断機本体100を後述する揺動ロック機構210により下死点付近にロックした状態でほぼ水平方向に延びる状態に設けられている。切断機本体100を下死点付近にロックして当該卓上切断機1を持ち運ぶ際にこのキャリングハンドル154を把持することにより、当該卓上切断機1を前後左右に傾くことなくバランスのとれた姿勢で楽に持ち運ぶことができる。
[集塵ホース]
図1及び図2に示すように固定カバー103の左側部(正面側)には、刃具102の回転方向を示す矢印103aが表示されている。刃具102は、左側方から見て時計回り方向に回転する。このため、切断加工により発生する切断粉は固定カバー103の後部側において切断材Wの上面から吹き上げられる。基台部107の後部下面には、吹き上げられた切断粉を受けるための粉塵ガイド160が取り付けられている。また、キャリングハンドル154の後部であって基台部107の後部上面には、集塵ホース接続用の本体側接続口161が設けられている。本体側接続口161はスリーブ形状を有し、その内部側は基台部107の内部を経て粉塵ガイド160に連通されている。粉塵ガイド160に受けられた粉塵は、基台部107の内部を経て本体側接続口161の内部に吹き上げられる。本体側接続口161に、接続部材163を介して集塵ホース162が接続されている。集塵ホース162及び接続部材163の本体側接続口161に対する接続構造が図5に示されている。
集塵ホース162は、適度な伸縮性及び可撓性を有する蛇腹形のフレキシブルホースで、本体支持部60の右側部に設けたホース中間接続部としての中継ダクト170に接続されている。図5に示すように集塵ホース162は、本体側接続口161と中継ダクト170との間で例えば上方へ大きく湾曲した取り回し経路を経て接続されている。本体側接続口161と中継ダクト170との間における集塵ホース162の長さ(第1実施形態では、集塵ホース162の全長)は、切断機本体100の上下方向の全揺動範囲及び前後方向の全スライド範囲での移動を許容する長さに設定されている。集塵ホース162の本体側接続口161に対する接続構造が図26に示され、中継ダクト170に対する接続構造が図27に示されている。図26に示すように集塵ホース162の上流側端部には、円筒形の接続部材163が取り付けられている。集塵ホース162の上流側端部は、接続部材163の内周側に接続されている。接続部材163の外周面には一定幅の溝部163aが全周にわたって設けられている。
本体側接続口161の内周側には、保持部材164が装着されている保持部材164は、円環形状を有する樹脂製の介在部品で、拡径方向に弾性を有している。保持部材164の外周面の周方向二等分位置には、係合凸部164aが一体に設けられている。2つの係合凸部164aは、本体側接続口161の周方向二等分位置に設けた係合孔161aにそれぞれ嵌まり込んでいる。2つの係合凸部164aがそれぞれ係合孔161aに嵌まり込むことにより、保持部材164が軸線H回り及び軸線H方向に位置ずれしない状態で本体側接続口161の内周面に沿って保持されている。
本体側接続口161の内周面に沿って保持した円環形状の保持部材164が図示するように接続部材163の溝部163aに嵌まり込んでいることにより、集塵ホース162がその軸線H回りに回転自在な状態で本体側接続口161に接続されている。2つの係合凸部164aを係合孔161aの奥部に押し込んで保持部材164を縮径方向に弾性変形させることにより、接続部材163を本体側接続口161の内周側から抜き出すことができ、これにより集塵ホース162を本体側接続口161から容易に取り外すことができる。
図27に示すように集塵ホース162の下流側端部にも同様の接続部材165が取り付けられている。集塵ホース162の下流側端部は接続部材165を介して中継ダクト170の支持側接続口171に接続されている。接続部材165の外周面にも溝部165aが全周にわたって設けられている。支持側接続口171の内周側にも円環形状の保持部材172が保持されている。保持部材172の外周面二等分位置には、係合凸部172aが一体に形成されている。この2つの係合凸部172aが、支持側接続口171の周方向二等分位置に設けた係合孔171aにそれぞれ嵌まり込んで、当該保持部材172が軸線H回り及び軸線H方向に位置ずれしない状態で支持側接続口171の内周面に沿って保持されている。このため、上流側と同様下流側についても、集塵ホース162は、支持側接続口171に対してその軸線H回りに小さな外力でも円滑に回転自在な状態に接続されている。
図28に示すように中継ダクト170は、本体支持部60の本体支持アーム61に一体に設けた基台部173を備えている。基台部173の前部には、大型の集塵ダクト174が取り付けられている。この集塵ダクト174は、位置決めフェンス80の後方に向けられている。位置決めフェンス80の後方に吹き上げられた切断粉がこの集塵ダクト174により集塵される。基台部173の右側部には、ジョイント175を介して排出ノズル176が接続されている。図5に示すように基台部173の上部に、上記した支持側接続口171が若干斜め後方へ傾いた状態に設けられている。
図28に示すように集塵ダクト174と支持側接続口171は、基台部173の内部通路173aを経て排出ノズル176に連通されている。排出ノズル176は、ジョイント175を介して上下に回動可能(首振り可能)に支持されている。排出ノズル176には、別途用意される集塵機のホースが接続される。
上記の集塵ホース162の上流側(前側)が本体側接続口161にその軸線H回りに回転自在な状態で接続され、また下流側(後側)が支持側接続口171にその軸線H回りに回転自在な状態で接続されている。係る接続構造によれば、例えば切断機本体100が上下方向に揺動され、また前後方向にスライド操作されることによりその取り回し経路が変化した場合に、上下両端部が軸線H回りに回転して、当該集塵ホース162の経路中途に無理な屈曲や捩じれ(断面積の狭小化)を発生することがないことから滑らかに湾曲した取り回し経路が維持され、これによりその全体にわたって本来の断面積が確保されて高い集塵効率を確実に維持することができる。
この点、例えば特開平6-210605号公報に開示されているように、集塵ホースの端部がその軸線回りに固定された状態で接続口に接続されていると、その取り回し経路が変化した場合に、取り回し経路の途中に無理な屈曲や捩じりが生じて十分な断面積の集塵通路が確保されなくなる。上記例示した集塵ホース162の接続構造(回転接続構造)によれば、係る問題が解消される。この点は、例えば卓上切断機1を建物の壁面等を背にして設置、保管しておく場合に、集塵ホース162が壁面に干渉しても両端部が軸線H回りに回転してその取り回し経路が壁面に沿ってスムーズに追従され、これにより当該集塵ホース162の変形若しくは損傷を回避してその耐久性を高めることができる。
保持部材164,172に代えて、ボールベアリングやニードルベアリング等のころがり軸受を介在させて集塵ホース162の上流側端部及び下流側端部をその軸線H回りに回転自在に接続する構成としてもよい。また、本体側接続口161を取り外して、取り外した筒状部位に、集塵ホース162の替わりにダストバッグやダストボックスを取り付けることも可能である。
[補助フェンス82の収納構造]
図1~図5に示すようにテーブル20の上面側には、切断材Wを面方向に位置決めするための位置決めフェンス80が設けられている。位置決めフェンス80の前面(位置決め面80a)は、テーブル20の回転中心(回転支軸21の軸線)に一致している。位置決めフェンス80の位置決め面80aに切断材Wの後面を当接させて左右に位置合わせすることにより当該切断材Wがテーブル20の上面(テーブル面方向)に対して位置決めされる。
位置決めフェンス80は、刃具102に対して左右一対の基台部81と左右一対の補助フェンス82を有する上下二段構造を備えている。左右一対の基台部81は、その後面側において半円形の結合部83を介して左右一体に結合されている。ベース10の左右側部は、テーブル20の下方から側方へ張り出している。左右の張り出し部14には上方へ盛り上がる台座部14aが設けられている。左右の台座部14aに跨って基台部81がテーブル20の上面に沿って支持されている。図7では、位置決めフェンス80を取り外した状態が示されている。テーブル20の下方であってベース10の上面には、補助台座部14bが2箇所設けられている。図7では2箇所の補助台座部14bが、テーブル20に設けた円弧形の挿通溝24を経て見えている。この補助台座部14bに取り付けた支持柱(図示省略)によっても基台部81がテーブル20の上面に沿って支持されている。
左右の補助フェンス82は、基台部81の上側に面一(位置決め面80aを正確に一致させて)に支持されている。左右の基台部81の上側にさらに補助フェンス82を取り付けて位置決め面80aの高さを高くすることにより、高さ寸法の大きな切断材Wをより高精度で位置決めすることができ、また切断材Wをテーブル20の上面と位置決め面80aとの間に斜めに立て掛けた状態で切断加工を行うことができる。左右の補助フェンス82は、それぞれ基台部81から取り外すことができる。補助フェンス82を取り外しておくことにより切断機本体100をより大きな角度で左方または右方へ傾斜させることができる。左右の補助フェンス82を基台部81から取り外した状態が図29に示されている。図示するように取り外した左右の補助フェンス82は、それぞれホルダ金具15上に収納しておくことができる。左右のホルダ金具15は、それぞれ棒鋼をU字形に折り曲げて製作した枠部材で、図8に示すようにベース10の張り出し部14に、左右へスライド可能に支持されている。図8では、左右のホルダ金具15を収納した状態が示されている。図29に示すように左右のホルダ金具15を側方へ引き出して、その上面側に補助フェンス82を載置して収納しておくことができる。
図31に示すように補助フェンス82には、位置決めピン部82aと、クリップ部82bが設けられている。位置決めピン部82aは、当該補助フェンス82を基台部81に対して面一に取り付ける場合に、基台部81に設けた位置決め孔81aに挿入される。基台部81から取り外してホルダ金具15上に収納する際に、クリップ部82bが用いられる。図30に示すように、クリップ部82bにホルダ金具15の一部を弾性保持させて補助フェンス82がホルダ金具15上に保持される。図30では、ホルダ金具15の前支持部15aをクリップ部82bで保持して補助フェンス82を収納した状態を示しているが、補助フェンス82を前後反転させてクリップ部82bでホルダ金具15の後支持部15bを保持して収納することもできる。
例えば特開2010-280013号公報に開示されているように、この種の卓上切断機において取り外した補助フェンスを収容する部位については従来特に考慮されていなかった。このため、取り外した補助フェンスを探し出す手間がかかり、あるいは紛失した場合には低い位置決め面のまま切断材を位置決めせざるを得ず、結果として切断精度の低下を招く等作業性が損なわれるおそれがあった。上記例示した補助フェンス収納構造によれば、ベース10の左右に収納しておくことができるので、必要時に探し出す手間がかからず、また紛失する恐れもないことから、作業性の低下を招くことがない。
図32に示すようにベース10の左右の張り出し部14には、切断材Wを固定するための縦バイス180を取り付けることができる。縦バイス180により、切断材Wを上方からテーブル20の上面に押し付けて板厚方向に挟み込んで固定することができる。縦バイス180は、第1支柱181と、第1支柱181の上部に結合した第1アーム部182と、第1アーム部182の先端に支持した第2支柱183と、第2支柱183の下部に結合した第2アーム部184と、第2アーム部184の先端に支持したねじ軸185を備えている。第1支柱181は、台座部14aの後部側に設けた支持孔14cに抜き差し可能かつガタつきなく挿入されている。第1支柱181は、台座部14aの後部に設けた固定ねじ(図32では見えていない)を締め込むことにより支持孔14cへの挿入状態に固定される。第1アーム部182は、第1支柱181を中心にして左右に回動可能に支持されている。第2支柱183は、上下に位置調整可能な状態で第1アーム部182の回動先端側に支持されている。第2アーム部184は、第2支柱183を中心にして左右に回動可能に支持されている。ねじ軸185は、第2アーム部184の回動先端側に締め込まれている。ねじ軸185の上端部に使用者が締め込み操作時に把持するノブ187が設けられている。ねじ軸185の下端部に切断材Wの上面に押し付けされる円形の押圧板186が支持されている。
テーブル20上に載置した切断材Wの上面に押圧板186を当接させた状態で、ねじ軸185を締め込み方向に回転操作することにより、押圧板186をねじ力により切断材Wの上面に押し付けて当該切断材Wをテーブル20上に固定することができる。図32に示す状態では、左右の補助フェンス82をそれぞれ基台部81の上面側に支持して高い位置決め面80aを形成した状態となっている。縦バイス180は、位置決めフェンス80に対して後側から前側へ跨ぐ状態に支持されている。このように縦バイス180は、台座部14aの支持孔14cを利用して支持する他、取り外して台座部14aに収納した補助フェンス82を利用して支持することもできる。
図33に示すように、基台部81から取り外した補助フェンス82は、その位置決めピン部82aを台座部14aの側部に設けた保持孔14dに差し込んで側方へ張り出させた状態に保持することができる。位置決めピン部82aの保持孔14dに対する差し込み状態は、固定ねじ16を締め込んでおくことによりロックされる。補助フェンス82の後部82cは張り出し部14の上面に載せ掛けて保持される。このように補助フェンス82は、その位置決め面80aをテーブル20の上面と面一に揃えた状態で保持しておくことにより、左右幅の大きな切断材Wをより安定してテーブル20上に載置することができ、ひいては当該左右幅の大きな切断材Wの切断加工を精度よく行うことができる。
図34に示すようにこのように保持した補助フェンス82を利用して縦バイス180を支持することができる。図34では、左側のみに縦バイス180を支持した状態を示しているが、右側の台座部14aに保持した補助フェンス82を利用して右側にも縦バイス180を支持することができる。補助フェンス82には、支持孔82dが設けられている。この支持孔82dに第1支柱181を差し込んで縦バイス180を支持することができる。図では見えていないが支持孔82dの後部側には固定ねじが設けられている。この固定ねじを締め込むことにより、第1支柱181が支持孔82dに差し込まれた状態に固定される。補助フェンス82の支持孔82dを利用して縦バイス180を支持することにより、当該縦バイス180を台座部14aよりも左方若しくは右方へずれた位置に保持することができることから、より左右幅の大きな切断材Wをより左右方向に大きなスパンで固定することができ、従ってより左右幅の大きな切断材Wをより確実に固定することができる。
[下限位置切り替え機構200]
次に、第1実施形態に係る卓上切断機1は、下限位置切り替え機構200と、揺動ロック機構210と、スライド中間ストッパ機構220と、スライド後端位置ロック機構230とを備えている。下限位置切り替え機構200は、切断機本体100の上下揺動範囲の下限位置を切り替えるための機構で、切断材Wに対する刃具102の切り込み深さを調整若しくは切り替える機能を有している。図22、図29、図32、図35に示すように、本体スライダ77の下部には、ストッパ受け台が一体に設けられている。ストッパ受け台の上面には、ストッパプレート201が左右方向に位置変更可能に設けられている。ストッパプレート201には、つまみ部201aが設けられている。使用者はつまみ部201aを摘まんでストッパプレート201を右方の第1位置と左方の第2位置との間で水平方向(左右方向)に移動させることができる。右方の第1位置に位置させた状態ではストッパプレート201に設けた長孔形の逃がし孔201bとストッパ受け台に上下に貫通して設けた挿通孔(図では見えていない)が重なり合う。ストッパプレート201を左側の第2位置に移動させると、逃がし孔201bはストッパ受け台の挿通孔に対して左側に位置ずれる結果、ストッパ受け台の挿通孔はストッパプレート201により塞がれる。
切断機本体100の基台部107の左側部には、ストッパ支持部202が側方へ張り出す状態に一体に設けられている。ストッパ支持部202には、前後2本のストッパねじ203,204が締め込まれている。後側の第2ストッパねじ204の上部には、使用者が締め込み操作をする際に把持するノブ204aが設けられている。2本のストッパねじ203,204の下部側は、ストッパ支持部202の下面から下方へ突き出されている。前側のストッパねじ203よりも後側のストッパねじ204の方がより下方へより長く延びている。2本のストッパねじ203,204は、それぞれ回転させることにより、ストッパ支持部202の下面からの突き出し寸法を調整することができる。図35に示すように切断機本体100を下動させたときに、ストッパプレート201を右側の第1位置に位置させた状態では、相互に重なり合った逃がし孔201bと挿通孔に後側の第2ストッパねじ204が進入して逃がされる(空振り)。この場合、前側の第1ストッパねじ203がストッパプレート201に突き当てられて切断機本体100の下動端位置が規制される。
図では示していないがストッパプレート201を第2位置に移動させた状態で、切断機本体100を下動させた場合には、逃がし孔201bが挿通孔に対して左方へ位置ずれしているため、より下方に延びた後側の第2ストッパねじ204がストッパプレート201に突き当てられて切断機本体100の下動端位置が規制される。このように下限位置切り替え機構200によれば、ストッパプレート201を右側の第1位置に位置させて逃がし孔201bと挿通孔を重ね合わせた状態と、左側の第2位置に位置させて逃がし孔201bを挿通孔に対して位置ずれさせた状態とに切り替えることにより、第1ストッパねじ203がストッパプレート201に当接する状態と、第2ストッパねじ204がストッパプレート201に当接する状態を切り替えることができ、これにより切断機本体100の下動端位置を上下2箇所に切り替えることができる。第1ストッパねじ203により規制される切断機本体100の下動端位置は、刃具102と刃口板22との位置関係により設定される最下降端位置に設定されている。第1ストッパねじ203により規制される最下降端位置よりも上側の下動位置であって第2ストッパねじ204により規制される下動端位置により、例えば溝切り加工等を迅速に行うことができる。この上下2箇所の下動端位置は、第1ストッパねじ203と第2ストッパねじ204を回転させてストッパ支持部202に対する締め込み量を調整することによりそれぞれ個別に調整することができる。
[揺動ロック機構210]
切断機本体100の下動端位置は、上記第1及び第2ストッパねじ203,204により規制される他、揺動ロック機構210によっても規制される。揺動ロック機構210により、切断機本体100を図35に示すように下方へ揺動させてロック位置にロックすることができる。揺動ロック機構210の詳細が図36及び図37に示されている。揺動ロック機構210は、本体スライダ77の本体支持部77aに設けられている。本体支持部77aの先端には、支持筒部77bが設けられている。支持筒部77bの内周側に、ロックピン211がその軸回りに回転可能かつ左右方向に移動可能に支持されている。ロックピン211は、支持筒部77bとの間に介装した圧縮ばね212により左方へ移動する方向(ロック側)に付勢されている。ロックピン211の右端部(頭部)には、使用者が操作時に摘まむノブ213が取り付けられている。ノブ213の左端部には、係合凸部213aが径方向に沿って設けられている。
支持筒部77bの左端部には、浅い係合溝77cと深い係合溝77dが相互に直交する十字形に設けられている。図37に示すようにノブ213を回転させて係合凸部213aを浅い係合溝77cに挿入すると、ロックピン211が右方へ変位したアンロック位置に保持される。このアンロック位置からノブ213を約90°回転させて係合凸部213aを深い係合溝77dに挿入することにより、ロックピン211を左方のロック位置に移動させることができる。
切断機本体100の基台部107の右側部には、ロック孔108が設けられている。図5にも、ロック孔108が示されている。切断機本体100を下方のロック位置まで下動させた状態で、ロックピン211を左方のロック位置に移動させると、その先端部がロック孔108に挿入される。ロックピン211がロック孔108に挿入されることにより、切断機本体100が下方のロック位置にロックされた状態となる。前記したように切断機本体100がロック位置にロックされた状態では、キャリングハンドル154がほぼ水平に位置する状態となる。図38に示すように揺動ロック機構210により切断機本体100を下方のロック位置にロックし、かつ後述するスライド後端位置ロック機構230により切断機本体100をスライド後端位置にロックすることにより、使用者はキャリングハンドル154を把持して当該卓上切断機1をバランスよく楽に持ち運ぶことができる。
[スライド中間ストッパ機構220]
図3、図5、図32~図34に示すようにスライド中間ストッパ機構220は、本体支持部60の上部右側部に設けられている。スライド中間ストッパ機構220は、ストッパプレート221を支軸222を介して前後に回動可能に支持した構成を備えている。ストッパプレート221の側部には、左方へ張り出すストッパ部221aが折り曲げて設けられている。ストッパプレート221は、図5中白抜き矢印で示すように本体支持部60の右側部に沿った退避位置(図示する位置)から支軸222を中心にして前方へ回動させることにより、上側のスライドバー75の側方へ張り出すストッパ位置(図では示されていない)に移動させることができる。ストッパプレート221をストッパ位置に移動させるとストッパ部221aが、本体スライダ77の移動経路中に進入した状態となる。このため、ストッパプレート221をストッパ位置に移動させた状態で切断機本体100を後方へスライドさせると、本体スライダ77の後端面がストッパ部221aに当接して、それ以上の後方へのスライド動作が規制される。
ストッパプレート221を退避位置に位置させた状態では、本体スライダ77はその後端面を本体支持部60の前面に当接させた位置(全スライド範囲)までスライドさせることができる。ストッパプレート221を前側のストッパ位置に移動させることにより、全スライド範囲の後退端位置をストッパ部221aの長さ分だけ前側へ変位させることができる。このスライド中間ストッパ機構220により、スライド後退端位置を規制することにより、例えばクラウンモールド材と称される切断材Wを位置決めフェンス80に斜めに立て掛けて切断作業を行う場合に、刃具102の取り付け部位(アウタフランジ131、インナフランジ132、刃具固定ねじ134の頭部)が切断材Wに干渉する手前で切断機本体100のスライド動作を規制することができ、これにより切断材Wの傷つきを未然に回避することができる。
[スライド後端位置ロック機構230]
切断機本体100は、スライド後端位置ロック機構230により全スライド範囲の後退端位置(スライド後端位置)でロックすることができる。スライド後端位置ロック機構230は、本体支持部60の上部左側部に設けられている。スライド後端位置ロック機構230は、上記した揺動ロック機構210と同様のロック側にばね付勢されたノブ231a付きのロックピン231を備えている。本体スライダ77の左側部の後部には、当該スライド後端位置ロック機構230を逃がすための逃がし凹部77eが設けられている。図2に示すように逃がし凹部77eの底部にロック孔77fが設けられている。図38に示すように切断機本体100を上記した揺動ロック機構210により下方のロック位置にロックした状態でスライド後退端位置までスライドさせてロックピン231をロック孔77fに挿入することにより本体スライダ77ひいては切断機本体100がスライド後退端位置にロックされる。ノブ231aを摘まんでロックピン231をばね付勢力に抗してアンロック位置に移動させて約90°回転させることによりロックピン231をアンロック位置に保持することができる。ロックピン231をアンロック位置に保持しておくことにより、本体スライダ77ひいては切断機本体100を前後にスライドさせることができる。
以上説明した第1実施形態の卓上切断機1によれば、切断粉集塵用の集塵ホース162が、切断機本体100側の本体側接続口161及び本体支持部60に設けたホース中間接続部としての中継ダクト170の支持側接続口171に対してそれぞれ軸線H回りに小さな外力で円滑に回転可能な状態で接続されている。このため、集塵ホース162に湾曲形状の取り回し経路を折り曲げるような無理な外力が付加される等した場合、あるいは切断機本体100の上下方向の揺動動作や前後方向へのスライド動作により取り回し経路が変化する場合には、当該集塵ホース162がその軸線H回りに回転して無理な外力等が逃がされることから、滑らかな湾曲形状の取り回し経路が維持されて折れ曲がり防止され、これにより粉塵のスムーズな流れが確保される。
また、例えば集塵機を接続するための排出ノズル176が上下に排出方向を変更(首振り)可能に設けられていることから、排出ノズル176に接続ホースを接続する場合に、排出ノズル176が接続ホースに倣って上下方向に排出向きを変更することにより、接続ホースの捩じれや折れ曲がりが回避され、この点で当該接続ホースを接続する際の便宜が図られる。
さらに、集塵ホース162の長さが本体支持部60で設定された切断機本体100の上下方向の全揺動範囲及び前後方向の全スライド範囲にわたる揺動若しくはスライド動作を許容する長さに設定されている。このため、切断機本体100の上下方向の揺動動作及び前後方向のスライド動作が集塵ホース162により阻害されることがない。
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、集塵ホース162を切断機本体100側の本体側接続口161と本体支持部60側の支持側接続口171の双方について軸線H回りに回転可能な状態で接続した構成を例示したが、何れか一方のみを小さな外力であっても円滑に回転可能な状態で接続する構成としてもよい。集塵ホース162が軸線H回りに円滑に回転可能に接続される接続口は、切断機本体100の他の部位、本体支持部60の他の部位、あるいはベース10やテーブル20に設けられた接続口についても同様に適用することができる。
また、円環形状の保持部材164,172を用いて集塵ホース162を軸線H回りに回転可能に接続する構成を例示したが、ニードルベアリング等の転がり軸受を用いて回転可能に接続する構成としてもよい。
さらに、排出ノズル176を上下方向又は左右方向に首振り可能かつ軸線回りに回転可能に設けて集塵機の接続ホースを軸線回りに回転可能に接続する構成としてもよい。
また、集塵ホース162の下流側端部を、支持側接続口171に接続する場合を例示したが、集塵ホース162の中途位置をホース中間接続部としての中継ダクト170に例えば円環形状のクリップを用いて保持する場合に、当該クリップの内周側に集塵ホース162をその軸線H回りに円滑に回転可能な状態で挿通させておくことにより、同様の作用効果を得ることができる。
また、交流電源式の卓上切断機1を例示したが、充電により繰り返し使用できるバッテリを電源とするバッテリ式の卓上切断機についても同様に適用することができる。
さらに、図39以降には、外部機器としての集塵機を接続する部位に変更を加えた第2実施形態に係る卓上切断機300が示されている。前記例示した第1実施形態に係る卓上切断機1では、外部機器としての集塵機が本体支持部60側に設けた中継ダクト170と連通する排出ノズル176に接続される構成を備えている。これに対して以下説明する第2実施形態の卓上切断機300では、切断機本体100側に外部機器としての集塵機320が接続される構成を備えている。また、第2実施形態の卓上切断機300は、2個のバッテリパック301を電源とする充電式の卓上切断機となっている。2個のバッテリパック301は、ねじ締め機等の他の充電式電動工具の電源としても利用できる汎用性の高いスライド取り付け形式のリチウムイオンバッテリで、それぞれ切断機本体100の基台部107の右側部に設けたバッテリ取り付け部307に取り付けられる。取り付けたバッテリパック301は、上方へスライドさせて取り外すことができる。取り外したバッテリパック301は、別途用意する充電器で充電すれば繰り返し使用することができる。その他、第1実施形態の卓上切断機1と同様の部材及び構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。
固定カバー103の後部に一体に設けた基台部107の後部下面には、吹き上げられた切断粉を受けるための粉塵ガイド160が取り付けられている。また、キャリングハンドル154の後部であって基台部107の後部上面には、集塵ホース接続用の本体側接続口310が設けられている。図39に示すように本体側接続口310は、基台部107の内部を経て粉塵ガイド160に連通されている。粉塵ガイド160に受けられた切断粉は、基台部107の内部を経て本体側接続口310の内部に吹き上げられる。本体側接続口310は、切断粉発生部位の接線方向に沿って後方へ延びている。
本体側接続口310の先端側は、第1接続口311と第2接続口315に分岐されている。本体側接続口310に対して第1及び第2接続口311,315はそれぞれ異なる方向に屈曲している。図39に示すように切断機本体100を下動端に位置させた状態で、第2接続口315は、鉛直方向ほぼ真っ直ぐ上方に向けて開口する方向に屈曲している。第2接続口315は、本体側接続口310の先端部から右側真横へ向けて開口する方向(直交方向)に屈曲している。第1接続口311に、集塵ホース162の一端側が接続されている。集塵ホース162の第1接続口311に対する接続構造は、第1実施形態とは異なりホース軸線H周りに固定された状態で接続された構成を備えている。
集塵ホース162の他端側は、本体支持部60の右側部に設けたホース中間接続部としての中継ダクト312の支持側接続口313に接続されている。第1実施形態と同じく、集塵ホース162の他端側は、その軸線H周りに回転自在な状態で支持側接続口313に接続されている。図39中二点鎖線で示すように集塵ホース162は、切断機本体100側の第1接続口311と、本体支持部60側の支持側接続口313との間で例えば上方へ大きく湾曲した取り回し経路を経て接続されている。第1接続口311と支持側接続口313との間における集塵ホース162の長さは、第1実施形態と同じく切断機本体100の上下方向の全揺動範囲及び前後方向の全スライド範囲での移動を許容する長さに設定されている。
中継ダクト312及び支持側接続口313の内部は、集塵ダクト174に連通されている。粉塵ガイド160から洩れて後方へ飛散した粉塵はこの集塵ダクト174で受けられた後、中継ダクト312及び支持側接続口313の内部に流入する。集塵ホース162内の粉塵が流れる方向は、第1実施形態とは反対に支持側接続口313から第2接続口315に向けて流れる。第2実施形態では、第1実施形態における排出ノズル176に相当する部位が中継ダクト312から省略されている。第2実施形態では、上記本体側接続口310の第2接続口315に、集塵機接続用の接続ホース321が接続されている。従って、第2実施形態では、第2接続口315が、外部機器としての集塵機320を接続するための排出ノズルに相当する。
図41に示すように本体側接続口310は、切断機本体100を上死点位置に戻した状態において、後方へほぼ水平に延びる向きに設けられている。このため、図39に示すように切断機本体100が下動端に位置して切断加工がなされる状態では、接続ホース321が第2接続口315から鉛直方向ほぼ真っ直ぐ上方へ向けて延びる状態となる。接続ホース321が上方へ延びる向きに接続されることから、後方の壁面等に接続ホース321が干渉してしまうといった問題を生ずることなく、切断機本体100を前後にスライドさせて切断加工をスムーズに行うことができる。また、接続ホース321が上方へ延びる向きに接続されることから、当該接続ホース321の後方壁面への干渉を避けつつ集塵機320を接続しておくことができ、これによりこの接続状態のまま切断機本体100を下動端位置にロックして当該卓上切断機300を収納しておくことができ、また持ち運ぶことができる。
このように集塵ホース162の一端側が本体側接続口310の第1接続口311に接続され、また他端側が支持側接続口313にその軸線H回りに回転自在な状態で接続されている。このため、第1実施形態と同じく、例えば切断機本体100が上下方向に揺動され、また前後方向にスライド操作されることによりその取り回し経路が変化した場合であっても、集塵ホース162の両端部が軸線H回りに回転して、当該集塵ホース162の経路中途に無理な屈曲や捩じれ(断面積の狭小化)を発生することがないことから滑らかに湾曲した取り回し経路が維持され、これによりその全体にわたって本来の断面積が確保されて高い集塵効率を確実に維持することができる。
また、第2実施形態の卓上切断機300では、外部機器としての集塵機320が、切断機本体100側であって集塵ガイド160により近い部位に設けた第2接続口315に接続される。このため、回転刃具102が比較的小径である結果、その回転により発生する集塵風の風力が十分に大きくない場合であっても、集塵ガイド160で受けられた切断粉等を効率よく集塵機320で集塵することができる。第2実施形態の場合、本体支持側の集塵ダクト174で受けられた切断粉は、中継ダクト312及び集塵ホース162を経て第2接続口315内に流れた後、接続ホース321を経て集塵機320で集塵される。
第2実施形態の卓上切断機300は、外部機器としての集塵機320の起動、停止を切断機本体100側の起動、停止に連動させる機能を備えている。図39及び図40に示すようにハンドル部150の基部上面側に、集塵機320との間で無線通信を行うための通信アダプタ302が装着されている。通信アダプタ302は、予め集塵機320との間で無線通信を行うための関連付け(ペアリング)がなされている。通信アダプタ302は、ハンドル部150の内部に上方向に取り外し可能に装着されている。内部に装着されることにより、当該通信アダプタ302の防塵性及び防水性が確保されている。また、通信アダプタ302は、取り外し可能であることから、無線通信を行わない場合には、簡単に取り外して例えば別の機器に流用することができ、この点で当該通信アダプタ302ひいては無線通信機能若しくは卓上切断機300の使い勝手及び汎用性を高めることができる。通信アダプタ302を介した無線通信により、当該卓上切断機300の起動、停止操作に連動して集塵機320を起動、停止させることができ、これにより外部機器としての当該集塵機320の操作性及び作業性を高めることができる。
第2実施形態では、第1実施形態とは異なって電動モータ303にDCブラシレスモータが用いられている。電動モータ303の上部には、第1実施形態と同じく、コントローラ収容部305が設けられている。コントローラ収容部305には、主として当該電動モータ303の動作制御等を行うための制御基板を底浅のケースに収容して樹脂モールドした矩形平板形状のコントローラが収容されている。コントローラの制御基板には、例えば電動モータ303に内装したセンサ基板で検知された回転子の回転位置情報に基づいて制御信号を送信するマイコンからなる制御回路、この制御回路から受信した制御信号に基づいて電動モータ303の電流をスイッチングするFETからなる駆動回路、及び電源としてのバッテリ301の状態の検出結果に応じて過放電又は過電流状態とならないように電動モータ303への電力供給を遮断するオートストップ回路等が搭載されている。
図39~図41では示されていないが、電動モータ303はモータハウジング304内に冷却ファンを内装している。冷却ファンは電動モータ303が起動すれば出力軸と一体で回転する。冷却ファンの回転によりモータハウジング304内に外気が導入される。モータハウジング304の右端(後面)には、外気導入用の吸気口304aが設けられている。コントローラ収容部305の右端面(後面)にも外気導入用の吸気口305aが設けられている。また、コントローラ収容部305の内部は、連通路を経てモータハウジング304の内部に連通されている。このため、電動モータ303が起動して冷却ファンが回転すると、モータハウジング304内に外気が導入されるとともに、コントローラ収容部305内にも吸気口305aを経て外気が導入される。吸気口305aを経て導入された外気によりコントローラ収容部305の内部及び制御基板の冷却がなされる。ギヤヘッド部120の後面側には排気口306が設けられている。モータハウジング304及びコントローラ収容部305内に導入された外気(冷却風)は、この排気口306から外部に排気される。図39及び図41に排気口306の一部が見えている。