JP7163887B2 - 耐疲労特性に優れた耐摩耗鋼材 - Google Patents
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(1)質量%で、
C:0.12~0.50%、 Si:0.01~1.0%、
Mn:0.01~2.5%、 P:0.040%以下、
S:0.040%以下、 Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、 B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、 N:0.050%以下、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
ブリネル硬さで300HBW以上の表面硬さを有し、かつ表面から1mmの深さの組織が、面積率で90%以上のマルテンサイト相を含む組織であり、かつ板厚中央位置の組織が、基地相中に炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1種または2種以上が析出した組織を有し、繰返し降伏強さが500MPa以上で、低温靭性に優れ、かつ疲労強度特性および耐疲労き裂伝播特性に優れることを特徴とする耐摩耗鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.001~1.0%、Ni:0.001~10.0%、Mo:0.001~2.0%、Nb:0.0001~0.10%、V:0.0001~0.10%、W:0.001~1.0%、Co:0.001~1.0%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、REM: 0.0001~0.01%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材。
(4)鋼素材に、熱間圧延工程と、焼入工程と、を施す耐摩耗鋼材の製造方法であって、
前記鋼素材が、質量%で、
C:0.12~0.50%、 Si:0.01~1.0%、
Mn:0.01~2.5%、 P:0.040%以下、
S:0.040%以下、 Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、 B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、 N:0.050%以下、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を加熱温度:1000~1350℃の範囲に加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率:50%以上の熱間圧延を施す工程であり、
前記焼入工程を、前記熱間圧延工程に引続き、Ar3変態点以上の温度域から冷却速度:50℃/s以上の冷却速度で冷却し、冷却停止温度:150~350℃の温度域で冷却停止する直接焼入工程と、
することを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(5)鋼素材に、熱間圧延工程と、焼入工程と、さらに焼戻工程と、を施す耐摩耗鋼材の製造方法であって、
前記鋼素材が、質量%で、
C:0.12~0.50%、 Si:0.01~1.0%、
Mn:0.01~2.5%、 P:0.040%以下、
S:0.040%以下、 Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、 B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、 N:0.050%以下、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を加熱温度:1000℃~1350℃の範囲に加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率:50%以上の熱間圧延を施す工程であり、
前記焼入工程を、前記熱間圧延工程に引続き、Ar3変態点以上の温度域から冷却速度:50℃/s以上の冷却速度で、100℃以下の温度域まで冷却する直接焼入れ工程とし、
前記焼戻工程が、前記直接焼入工程に引き続きインラインで0.5℃/s以上の昇温速度で150~350℃の温度域まで加熱し、該温度域で1s以上保持する工程と、
することを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(6)(5)において、前記焼戻工程に代えて、前記焼戻工程を、前記直接焼入工程を行ったのち、オフラインで、焼戻温度:150~350℃で、1s以上保持する工程とすることを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(7)(4)ないし(6)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.001~1.0%、Ni:0.001~10.0%、Mo:0.001~2.0%、Nb:0.0001~0.10%、V:0.0001~0.10%、W:0.001~1.0%、Co:0.001~1.0%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(8)(4)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、REM: 0.0001~0.01%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(9)鋼素材に、熱間圧延工程と、焼入工程と、を施す耐摩耗鋼材の製造方法であって、
前記鋼素材が、質量%で、
C:0.12~0.50%、 Si:0.01~1.0%、
Mn:0.01~2.5%、 P:0.040%以下、
S:0.040%以下、 Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、 B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、 N:0.050%以下、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を加熱温度:1000~1350℃の範囲に加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率:50%以上の熱間圧延を施し、熱間圧延終了後、空冷または水冷する工程であり、
前記焼入工程を、加熱温度:Ac3変態点以上の温度に再加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域から冷却速度:50℃/s以上で冷却し、冷却停止温度:150℃~350℃の温度域で冷却停止する再加熱焼入工程と、
することを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(10)鋼素材に、熱間圧延工程と、焼入工程と、さらに焼戻工程と、を施す耐摩耗鋼材の製造方法であって、
前記鋼素材が、質量%で、
C:0.12~0.50%、 Si:0.01~1.0%、
Mn:0.01~2.5%、 P:0.040%以下、
S:0.040%以下、 Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、 B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、 N:0.050%以下、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延工程が、前記鋼素材を加熱温度:1000~1350℃の範囲に加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域で累積圧下率:50%以上の熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、空冷または水冷する工程であり、
前記焼入工程を、加熱温度:Ac3変態点以上の温度に再加熱したのち、Ar3変態点以上の温度域から冷却速度:50℃/s以上で、100℃以下の温度域まで冷却する再加熱焼入工程とし、
前記焼戻工程を、前記再加熱焼入工程終了後、オフラインで、焼戻温度:150~350℃で、1s以上保持する工程と、
することを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(11)(9)または(10)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.001~1.0%、Ni:0.001~10.0%、Mo:0.001~2.0%、Nb:0.0001~0.10%、V:0.0001~0.10%、W:0.001~1.0%、Co:0.001~1.0%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
(12)(9)ないし(11)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001~0.01%、Mg:0.0001~0.01%、REM: 0.0001~0.01%からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼材の製造方法。
Cは、固溶強化により鋼材の強度、硬さの増加に寄与する元素であり、本発明ではとくに所望の表面硬さ(300HBW以上)を確保するために、0.12%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超えて含有すると、鋼材の延性や曲げ加工性が低下するとともに、溶接性が低下する。このため、Cは0.12~0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.12~0.40%、より好ましくは0.12~0.35%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼材の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は靱性を低下させるとともに溶接性を低下させる。このため、Siは0.01~1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01~0.80%、より好ましくは0.01~0.70%である。
Mnは、焼入れ性の向上を通して、鋼材の強度、靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.5%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.01~2.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01~2.0%、より好ましくは0.01~1.90%である。
Pは、通常、不可避的不純物として鋼中に含まれる元素であるが、Pの含有は靱性の劣化に繋がるため、Pはできるだけ低減することが好ましいが、0.040%までは許容できる。このため、Pは0.040%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.030%以下、より好ましくは0.020%以下である。
Sは、鋼中で介在物として存在し、鋼材の延性、靱性を劣化させる。このため、Sはできるだけ低減することが好ましいが、0.040%までは許容できる。このため、Sは0.040%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.030%以下、より好ましくは0.020%以下である。
Crは、焼入れ性の向上や焼戻軟化抵抗の増加を通して、鋼材の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える含有は、溶接性や靱性を低下させる。このため、Crは0.01~3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01~2.5%、より好ましくは0.01~2.0%である。
Tiは、窒化物を形成し、とくに溶接熱影響部において、オーステナイト粒を微細化し靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上の含有を必要とする。一方、1.5%を超える含有は、靱性を低下させるとともに、鋼材コストの高騰を招く。このため、Tiは0.001~1.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.001~1.0%、より好ましくは0.001~0.9%である。
Bは、少量の含有で焼入れ性を向上させ、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.0001%以上の含有を必要とする。一方、0.010%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Bは0.0001~0.010%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.0001~0.005%、より好ましくは0.0001~0.004%である。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化にも寄与する元素である。このような効果を得るためには0.020%以上含有することが好ましい。一方、0.10%を超える過剰の含有は、靱性の低下に繋がる。このため、Alは0.10%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.020~0.050%、より好ましくは0.020~0.040%である。
Nは、Cと同様に、固溶強化により鋼材の強度増加に寄与する元素である。しかし、過剰の含有は靱性の低下に繋がる。このため、Nは0.050%以下に限定した。なお、好ましくは0.0050%以下、より好ましくは0.001~0.0045%である。
Cu、Ni、Mo、Nb、V、W、Coはいずれも、鋼材の強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Cuは、焼入れ性増加や固溶強化を通して、鋼材の強度増加に寄与する元素である。このような効果を確保するには0.001%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超える含有は、溶接性が低下するとともに、鋼材製造時に疵が生じやすくなる。このため、含有する場合には、Cuは0.001~1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~0.5%、さらに好ましくは0.001~0.4%である。
Niは、鋼材の強度増加に加えて、さらに低温靱性の向上、焼入れ性の向上、Cu含有時にCuの熱間脆性の防止に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが好ましい。一方、10.0%を超える含有は、鋼材コストの高騰を招くうえ、溶接性が低下する。このため、含有する場合には、Niは0.001~10.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~5.0%、さらに好ましくは0.001~4.0%である。
Moは、焼入れ性向上や焼戻軟化抵抗の増加を通して、鋼材の強度増加に寄与する元素である、このような効果を得るためには0.001%以上含有することが好ましい。一方、2.0%を超える含有は、溶接性や靱性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.001~2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~1.0%、さらに好ましくは0.001~0.90%である。
Nbは、焼戻し時に炭化物や炭窒化物として析出し析出強化を通して、鋼材の強度増加に寄与する元素である。また、Nbは、圧延時にオーステナイト粒を微細化させて、靱性を向上させる効果も有する。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.10%を超える含有は靱性を低下させる。このため、含有する場合には、Nbは0.0001~0.10%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0001~0.05%、さらに好ましくは0.001~0.04%である。
Vは、焼戻し時に炭化物や炭窒化物として析出し析出強化を通して、鋼材の強度増加に寄与する元素である。また、Vは、圧延時にオーステナイト粒を微細化させて、靱性を向上させる効果も有する。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.10%を超える含有は靱性および溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.0001~0.10%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0001~0.05%、さらに好ましくは0.0001~0.045%である。
Wは、焼戻し時に炭化物や炭窒化物として析出し析出強化を通して、鋼材の強度増加に寄与する元素である。また、Wは、TiとWの複合炭化物を生成させ、耐摩耗性向上に大きく貢献する。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超える多量の含有は、材料コストの高騰を招くとともに、Wが複合炭化物中に固溶できなくなり耐摩耗性向上効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になる。また、溶接性や加工性が低下する。このため、含有する場合には、Wは0.001~1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~0.50%、さらに好ましくは0.001~0.45%である。
Coは、Cuと同様に、焼入れ性向上に寄与する元素であり、鋼板内部の硬さを増加させるために含有できる。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超える含有は、溶接性の低下、材料コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Coは0.001~1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~0.50%、さらに好ましくは0.001~0.45%である。
Ca、Mg、REMはいずれも、介在物(硫化物)の形態制御に寄与する元素であり、必要に応じて選択して、1種または2種以上含有できる。
Caは、Sと結合して、球状の介在物(CaS)を形成し、圧延方向に長く伸びるMnS等の介在物(硫化物)の生成を抑制する介在物(硫化物)の形態制御を通して、鋼材の母材靭性向上、さらには溶接熱影響部の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、Caは0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.01%を超える含有は、介在物量が増加し、鋼材の母材靭性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0001~0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001~0.009%、さらに好ましくは0.001~0.008%である。
Mgは、Caと同様にSと結合し、球状の介在物を形成し、圧延方向に長く伸びるMnS等の生成を抑制する介在物(硫化物)の形態制御を通して、鋼材の母材靭性向上に、さらには溶接熱影響部の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.01%を超える含有は、介在物量が増加し、鋼材の清浄度が低下し、表面疵の増加など表面性状が低下し、曲げ加工性の低下を招く。このため、含有する場合には、Mgは0.0001~0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0001~0.006%、さらに好ましくは0.001~0.005%である。
REMは、Ca、Mgと同様に、Sと結合して硫化物の形態制御を通して、鋼材の母材靭性向上、さらには溶接熱影響部の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0001%以上含有することが好ましい。一方、0.01%を超えて含有すると、鋼材の母材靭性、溶接熱影響部靭性の低下を招く。
Ar3(℃)=910―310C―80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo
ここで、C、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo:各元素の含有量(質量%)
により算出した値を用いるものとする。
Ac3変態点(℃)=910-203C+44.7Si-30Mn-20Cu-15.2Ni+31.5Mo+104V+700P+400Al
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Mo、V、P、Al:各元素の含有量(質量%)
を用いて算出するものとする。
表1に示す組成の鋼を、真空溶解炉で溶製して得られた鋼素材に、表2に示すような条件で、熱間圧延工程、焼入工程、あるいはさらに焼戻工程を施し、表2に示す板厚の鋼板(鋼材)とした。なお、焼入工程は、直接焼入工程とし、冷却停止温度を種々変更した。なお、焼入れ冷却停止温度を100℃以下とした直接焼入工程では、焼入冷却を行ったのち、焼戻工程を施した。なお、焼戻工程はインラインまたはオフラインとした。
(a)組織観察
得られた鋼材(鋼板)の表面から深さ1mmの位置から組織観察用試験片を採取し、研磨、腐食(ナイタール腐食)して、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:500倍)で組織観察を行い、撮像して画像解析装置を用いて、マルテンサイト相の組織分率(面積率)を求めた。また、得られた鋼材(鋼板)の板厚中央位置から組織観察用試験片を採取し、研磨、腐食(ナイタール腐食)して、分析装置付き走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:5000倍)で組織観察を行い、分析装置を用いて炭化物、窒化物、炭窒化物を同定し、析出の有無を調査した。
(b)硬さ試験
得られた厚鋼板(鋼材)から硬さ試験片を採取し、JIS Z 2243-1に準拠して、ブリネル硬度計を用いて表面硬さHBW10/3000を測定した。
(c)衝撃試験
得られた鋼材(鋼板)の板厚中央位置から、試験片長手方向が圧延方向となるようにシャルピー衝撃試験片(Vノッチ)を採取し、JIS Z 2242に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:-40℃における吸収エネルギー(J)を求めた。なお、繰り返し試験片本数は3本とし、3本の平均値を当該鋼材の平均吸収エネルギー値(J)とした。
(d)繰返し応力歪試験
得られた鋼材(鋼板)の板厚中央位置から、図2に示す疲労試験片を、荷重負荷方向が圧延方向に直交する方向(C方向)となるように採取した。
(e)疲労試験
得られた鋼材(鋼板)の板厚中央位置から、図2に示す疲労試験片を、荷重負荷方向が圧延方向に直交する方向(C方向)となるように採取し、疲労試験を実施した。疲労試験は、室温大気中で、応力比:0.1、周波数:20Hzで行い、疲労強度σmax(2×106回)を求めた。
(f)疲労き裂伝播試験
得られた鋼材(鋼板)の板厚中央位置から、図3に示すCT試験片を採取し、ASTM E647に準拠して、室温大気中で、応力比:0.1、周波数:20Hzの条件で疲労き裂伝播試験を実施した。疲労き裂伝播試験では、疲労き裂伝播速度を測定し、疲労き裂が進展するときの応力拡大係数範囲ΔKI=15MPa√mにおける疲労き裂伝播速度を求めた。
(実施例2)
表4に示す組成の鋼を、真空溶解炉で溶製して得られた鋼素材に、表5に示すような条件で、熱間圧延工程、焼入工程、あるいはさらに焼戻工程を施し、表5に示す板厚の鋼板(鋼材)とした。なお、熱間圧延工程は、熱間圧延終了後、空冷または水冷とした。焼入工程は、再加熱焼入工程とし、冷却停止温度を種々変更した。なお、冷却停止温度を100℃以下とした再加熱焼入工程では、焼入冷却を行ったのち、焼戻工程を施した。なお、焼戻工程はオフラインで実施した。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.16~0.50%、
Si:0.25~1.0%、
Mn:1.09~2.50%、
P:0.040%以下、
S:0.002~0.040%、
Cr:0.01~3.0%、
Ti:0.001~1.5%、
B:0.0001~0.010%、
Al:0.10%以下、
N:0.0040~0.0500%、
を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
ブリネル硬さで300HBW以上の表面硬さを有し、
かつ表面から1mmの深さの組織が、面積率で90%以上のマルテンサイト相を含む組織であり、
かつ板厚中央位置の組織が、基地相中に炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1種または2種以上が析出した組織を有し、
板厚が12.5~100.0mmであり、
繰返し降伏強さが500MPa以上で、低温靭性に優れ、
かつ疲労強度特性σmax(2×10 6 回)が500MPa以上で、
耐疲労き裂伝播特性が応力拡大係数範囲ΔK I =15MPa√mにおける疲労き裂伝播速度が1.75×10 -8 m/cycle以下である
ことを特徴とする耐摩耗鋼材。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Cu:0.001~1.0%、
Ni:0.001~10.0%、
Mo:0.001~2.0%、
Nb:0.0001~0.10%、
V:0.0001~0.10%、
W:0.001~1.0%、
Co:0.001~1.0%
からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼材。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ca:0.0001~0.01%、
Mg:0.0001~0.01%、
REM:0.0001~0.01%
からなる群より選択された1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗鋼材。
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