JP7158859B2 - 二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、二相ステンレス鋼の溶接方法に関し、詳しくは、二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法に関する。
オーステナイト系ステンレス鋼は、孔食や隙間腐食などの腐食に対する耐食性に優れている一方で、応力腐食割れが発生しやすいという欠点がある。
このようなオーステナイト系ステンレス鋼に対して、フェライト系ステンレス鋼は、応力腐食割れに対する耐性に優れているが、靭性の点ではオーステナイト系ステンレス鋼よりも劣るという欠点がある。
上述のようなオーステナイト系ステンレス鋼およびフェライト系ステンレス鋼がかかえる課題を解消する材料として、耐食性や応力腐食割れに対する耐性、および靭性に優れた二相ステンレス鋼が知られている。
この二相ステンレス鋼は、ステンレス鋼として、フェライト相とオーステナイト相の二相が混在した組織を有するステンレス鋼である。
ところで、一般に知られている二相ステンレス鋼は、Cr、Ni、Moなどを主要合金元素とし、フェライトとオーステナイトの相比率を、約50体積%となるように調整したステンレス鋼であるが、近年、Ni量およびMo量を低減した低コストの二相ステンレス鋼も開発されるに至っている。
そして、この二相ステンレス鋼(例えば、SUS329J1など)は、化学工場などに設置されるプラントにおいて、配管などに多く使用されている。
しかしながら、SUS329J1などの二相ステンレス鋼は、溶接時に溶接金属部にてフェライト単相組織を形成し、このフェライト単相組織部で溶接割れ(低温割れ)や耐食性の低下を引き起こす場合がある。
そこで、このような問題点を解決するため、近年、窒素(N)などを含有する、特定の組成の二相ステンレス鋼が用いられるようになっている。
そして、そのような二相ステンレス鋼を溶接する方法として、特許文献1には、窒素含有量が0.08質量%未満の二相ステンレス鋼を母材とした、二相ステンレス鋼の溶接方法が開示されている。
すなわち、特許文献1には、二相ステンレス鋼からなる母材に対向して溶接材料を配置し、母材と溶接材料との間に交流または直流の電圧を印加してアークを発生させることで溶接材料を溶融させ、該溶接材料が溶融した溶滴を母材に溶着させて、窒素含有量が0.17~0.40質量%の溶接金属を母材に形成するようにした二相ステンレス鋼の溶接方法が開示されている。
また、特許文献2には、二相ステンレス鋼溶接部の耐食性改善方法が開示されており、具体的には、溶接部の熱影響部(母材で高温に晒される部分)の耐食性改善するための技術が開示されている。
すなわち、特許文献2では、溶接材料の添加の寄与が得られない熱影響部の耐食性を改善する方法として、熱処理を行うことで、二相ステンレス鋼溶接部の耐食性改善方法が提案されている。
具体的には、溶接継手の溶融境界線上に沿って、円筒状の回転部材を、0.5~2tonの押付荷重で垂直に押し付けながら、回転速度100~400rpmの範囲で回転させ、摩擦熱により熱処理を施すようにしている。
そして、特許文献2によれば、二相ステンレス鋼を溶接して形成された溶接熱影響部の中でも、特に、最高到達温度が約1100℃以上の高温に加熱された領域の耐食性を回復し、腐食環境下で溶接部の耐食性を大幅に改善させることができるとされている。
特開2014-014830号公報 特開2015-217434号公報
ところで、特許文献1の二相ステンレス鋼の溶接方法の場合、二相ステンレス鋼の溶接品質を確保するために、溶接材料(溶接棒)を用いることを前提としており、溶接材料(溶接棒)を別途用意することが必要になる。
また、特許文献1では、溶接金属の組織を改善するために、母材よりも窒素とニッケルを多く含んだ特別な溶接材料(溶接棒)を別途用意することが必要になるため、コストの増大を招くという問題点がある。
また、溶接材料(溶接棒)を用いる溶接方法の場合、溶接工程において、溶接材料(溶接棒)を用いることによる制約があり、生産性の向上を図ることが困難である。
一方、溶接材料を用いないノンフィラー溶接の場合には、溶接金属のフェライト相量が非常に多くなりやすいため、溶接材料(溶接棒)を用いないプラズマ溶接は技術的に適用が困難とされている。
例外的に鋼管の製造時の溶接など、溶接後に熱処理を行う場合は、熱処理によってフェライト相とオーステナイト相の相比が改善されるため、プラズマ溶接が適用されているものの、熱処理を前提とすることが原則となる。
また、特許文献2の二相ステンレス鋼溶接部の耐食性改善方法は、熱処理を施すようことにより、耐食性を改善させているが、溶接対象物が、大型の機器(例えば、反応容器などの構造体)であるような場合には、特許文献2の方法を適用することができないという問題点がある。
また、他の方法で熱処理を行うにしても、大型の熱処理炉が必要になるなど、コストの増大を招くという問題点がある。
また、溶接対象物(機器)を熱処理炉に収容することができたとしても、1000°C以上での熱処理は、機器が軟化して座屈が起こりやすく、現実的ではない。
さらに、二相ステンレス鋼は400~1000°Cでは熱的に脆化しやすくなるため、局部熱処理などの方法をとることも困難である。したがって、熱処理を前提とするプラズマ溶接は、二相ステンレス鋼に対してはほとんど用いられていないのが実情である。
本発明は、上記課題を解決するものであり、母材とは別に溶接棒などの溶接材料を用いずに、また、溶接後に熱処理を行うことを必要とせずに、二相ステンレス鋼を確実に溶接することが可能で、溶接部における溶接割れや耐食性の低下などを引き起こすことのない二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法は、
溶接材料を用いないプラズマ溶接の方法により、二相ステンレス鋼どうしを溶接する溶接方法であって、
プラズマアークを発生させるためのプラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上15重量%以下の割合で含む不活性ガスを用い、
発生させた前記プラズマアークをシールドするトーチシールドガスとして、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用い、
発生させた前記プラズマアークが供給される側とは逆の母材の裏面側をシールドするバックシールドガスとして、可燃性ガスを含まず、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用い、
前記プラズマアークが供給されることで前記二相ステンレス鋼どうしが溶接される溶接部を、治具を用いて攪拌することなく溶接を行うこと
を特徴としている。
本発明においては、前記プラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上5重量%以下の割合で含む不活性ガスを用いることがより好ましい。
また、前記不活性ガスが、アルゴンガスおよびヘリウムガスのいずれかを主成分とするものであることが好ましい。
本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法は、プラズマガスとして、窒素ガスを含む不活性ガスを用いるようにしているので、溶接部(溶接金属部)の金属組成中に窒素が含まれた状態を維持することが可能になり、フェライト相とオーステナイト相の相比を適切な比率に保って、溶接部の金属組成を改善し、溶接部における溶接割れや耐食性の低下などを引き起こすことのない信頼性の高い溶接を、効率よく行うことが可能になる。
すなわち、本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法によれば、熱処理なしでフェライト相とオーステナイト相の相比を良好に保ち、耐食性や耐水素性の低下を抑制することができるため、上記の従来技術の課題を解決することが可能になる。
また、本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法においては、プラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上15重量%以下の割合で含む不活性ガスを用いるようにしているので、フェライト相とオーステナイト相の相比を確実に適切な比率に保つことが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
また、トーチシールドガスとして、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用いるようにしているので、母材にプラズマアークが当たる領域である溶接部(溶接金属部)を、不活性ガスにより、大気雰囲気から確実に遮断することが可能になり、かつ、トーチシールドガスは、窒素ガスを0.5重量%以上含有しているので、溶接部におけるフェライト相とオーステナイト相の相比を、より確実に適切な比率に保つことが可能になる。
また、母材の裏面側をシールドするバックシールドガスとして、可燃性ガスを含まず、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用いるようにしているので、母材の裏面側においても、溶接部(溶接金属部)のフェライト相とオーステナイト相の相比を適切な比率に保つことが可能になり、溶接部における溶接割れや耐食性の低下などを引き起こすことのない信頼性の高い溶接を、より確実に行うことが可能になる。
また、プラズマアークが供給されることで二相ステンレス鋼どうしが溶接される溶接部を、治具を用いて攪拌することなくプラズマ溶接を行うようにしているので、溶接部を攪拌するための機構を必要としない溶接装置を用いて二相ステンレス鋼どうしの溶接を行うことができる。
また、本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法においては、プラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上5重量%以下の割合で含む不活性ガスを用いることにより、アークが不安定になることを抑制して安定した溶接作業性を確保しつつ、二相ステンレス鋼のプラズマ溶接をさらに良好に行うことが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
また、不活性ガスとして、アルゴンガスおよびヘリウムガスのいずれかを主成分とするものを用いることにより、本発明の本来の効果を確実に得ることが可能な、安定した二相ステンレス鋼の溶接方法を実現することができる。
本発明の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法を実施するのに用いたプラズマ溶接装置の要部構成を模式的に示す図である。 試料番号1の試料(本発明の要件を備えていない方法でプラズマ溶接された試料)の溶接部断面の光学顕微鏡写真を示す図である。 試料番号3の試料(本発明の要件を備えた方法でプラズマ溶接された試料)の溶接部断面の光学顕微鏡写真を示す図である。 プラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部中の窒素含有量の関係を線図化したグラフを示す図である。 プラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部におけるフェライト相量の割合の関係を線図化したグラフを示す図である。
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法を実施するのに用いたプラズマ溶接装置の要部構成を示す図である。
本発明の実施形態にかかるプラズマ溶接装置Aは、図1に示すように、二相ステンレス鋼(母材)20どうしを溶接するために用いられるプラズマ溶接装置であって、タングステン電極1と、タングステン電極1が挿入される中空部2aを備えた水冷ノズル2と、水冷ノズル2の外周部との間に、トーチシールドガスを通過させるためのトーチシールドガス通路3aを形成する外側ノズル3とを有するトーチ10を備えている。
そして、水冷ノズル2の中空部2aの、タングステン電極1の外周領域を経て、プラズマガス11が供給され、プラズマアーク12が形成されるように構成されている。なお、水冷ノズル2は冷却水を通すための冷却水通路2bを備えている。
また、上述のトーチシールドガス通路3aを経て供給されるトーチシールドガス13は、プラズマアーク12の周囲を覆うように供給されるように構成されている。
また、プラズマ溶接装置Aは、プラズマアーク12が供給される側とは逆の母材20の裏面側(図1では下面側)にシールドガス(バックシールドガス)14を供給し、母材20の裏面側に滞留させるためのバックシールド用カップ5を備えている。
バックシールド用カップ5は、バックシールドガス14を供給するための供給口5aを備えており、この供給口5aからバックシールド用カップ5にバックシールドガス14が供給され、母材20の溶接部(溶接金属部)30の裏面側がシールドされるように構成されている。
なお、バックシールド用カップ5の周縁部と、母材20の裏面との間には、微細な隙間5bが存在し、供給口5aから供給されたバックシールドガス14は、この隙間5bから外部に排出されるように構成されている。
次に、このプラズマ溶接装置Aを用いて、二相ステンレス鋼を溶接する方法について説明する。
なお、この実施形態では、溶接の対象となる一対の二相ステンレス鋼(母材)20として、表1に示すような組成を有する二相ステンレス鋼:SUS329J4Lを用いた。
Figure 0007158859000001
また、母材20としては、平板状で、厚みが8mmの二相ステンレス鋼の板材であって、窒素を0.16重量%含有する二相ステンレス鋼の板材を用いた。
そして、上述のプラズマ溶接装置Aを使用するとともに、以下に説明するように、所定の割合で窒素ガスを含む不活性ガスを用いて、一対の二相ステンレス鋼(母材)20を溶接した。
具体的には、この実施形態では、プラズマアーク12を発生させるためのプラズマガス11として、窒素ガスをそれぞれ、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%の割合で含む不活性ガス(アルゴンガス)を用いて、二相ステンレス鋼(母材)20のプラズマ溶接を行った。なお、不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)ガスを用いた。
また、比較のため、窒素ガスを含まないアルゴンガス(不活性ガス)(窒素ガス0重量%)を用いて二相ステンレス鋼(母材)20のプラズマ溶接を行った。
また、発生させたプラズマアーク12をシールドするためのトーチシールドガス13として、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用いた。なお、トーチシールドガス13を構成する不活性ガスとしてアルゴンガスを用いた。
さらに、二相ステンレス鋼(母材)20の裏面側をシールドするためのバックシールドガス14としても、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用いた。なお、バックシールドガス14を構成する不活性ガスとしてアルゴンガスを用いた。
また、溶接を行うにあたっては、上述した条件の他に、次に示すような条件下で、溶接材料(溶接棒)を用いることなく、二相ステンレス鋼のプラズマ溶接を行った。
・アーク電流:200A
・アーク電圧:30V
・プラズマトーチの移動速度:180mm/min
・プラズマガス流量 :3L(リットル)/min
・トーチシールドガス流量 :20L(リットル)/min
・バックシールドガス流量 :20L(リットル)/min
ただし、溶接条件は、上記の条件に限られるものではなく、例えば、
・アーク電流:200~300A
・アーク電圧:30~35V
・プラズマトーチの移動速度:150~300mm/min
・プラズマガス流量 :2~4L(リットル)/min
・トーチシールドガス流量 :15~25L(リットル)/min
・バックシールドガス流量 :15~25L(リットル)/min
の範囲で幅を持たせることができる。
なお、上記の条件の幅も、あくまで例示であって、プラズマ溶接の条件は、上述の範囲に限られるものではない。
<特性の測定および評価>
窒素ガスを含まないプラズマガス(アルゴンガス)、および、窒素ガスをそれぞれ、0重量%、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、および15重量%の割合で含むプラズマガスを用いて、表1に示す組成を有する二相ステンレス鋼:SUS329J4Lをプラズマ溶接した各試料、すなわち、表2に示す試料番号1~7の試料について、
・溶接金属部の窒素含有量(重量%)、
・溶接金属部のフェライト相の量(体積%)、
・溶接金属部の耐食性、
・耐水素性、および、
・溶接作業性
を以下に説明する方法で調べた。
(1)溶接金属部における窒素含有量(含有率)
溶接部金属部(溶接部)を構成する金属における窒素含有量(含有率)は、不活性ガス融解伝導度法による測定結果に基づいて算出した。
(2)溶接金属部におけるフェライト量(フェライト相量)
溶接金属部(溶接部)におけるフェライト相とオーステナイト相の相比は、点算法(ASTM E562)により調べた。
なお、フェライト量(フェライト相量)は、各試料における溶接部の表側および裏側(図2、図3参照)について調べた。ここで、表側とはプラズマアークが供給される側で、裏側とはその逆側である。
ここで、溶接金属部(溶接部)におけるオーステナイト相量は、下記の式(1)、すなわち、
100-フェライト量(体積%)=オーステナイト量(体積%)……(1)
により求められるので、フェライト相量を測定することで、フェライト相とオーステナイト相の相比を知ることができる。
(3)溶接金属部の耐食性
溶接金属部の耐食性は、塩化第二鉄腐食試験(ASTM G48)により調べた。そして、腐食の発生が液Cの50℃以上で生じた試料を耐食性が「良」であると判定し、腐食の発生が液Aあるいは液Cの40℃以下で生じた試料を耐食性が「不良」であると判定した。
ただし、上述の液Aは、6重量%FeCl3水溶液であり、液Cは、6重量%FeCl3+1%HCl水溶液である。
(4)溶接金属部の耐水素性
また、溶接金属部の耐水素性については、フェライト相量が70体積%以上(すなわち、オーステナイト相量が30体積%未満)で水素に対して感受性を持つとされているため、フェライト相量が70体積%未満(すなわち、オーステナイト相量が30体積%超)であるものを、耐水素性が「良」であると判定した。
なお、フェライト相量、すなわち、フェライト相とオーステナイト相の相比は、上述のように、溶接部の表側と裏側(図2、図3参照)で異なるが、通常、プラズマ溶接により施工された製品は、裏側が腐食環境側(例えば接液部)となるため、この実施形態では、裏側におけるフェライト相とオーステナイト相の相比によって溶接金属部の耐水素性を評価した。
(5)溶接作業性
通常のプラズマ溶接の場合と比較して、アークが安定していて溶接作業が困難になるようなことのない場合には、溶接作業性が「良」であるとし、溶接は可能であるが、アークが不安定になるなどして溶接作業にやや問題がある場合には、溶接作業性が「可」であるとした。
試料番号1~7の各試料の、溶接金属部における窒素含有量(含有率)、溶接金属部におけるフェライト相の相量(体積%)(ただし、100-フェライト量(体積%)=オーステナイト量(体積%)となる)、溶接金属部の耐食性、耐水素性、および溶接作業性についての測定結果、評価結果を表2に示す。
Figure 0007158859000002
表2に示すように、窒素ガスを含まないプラズマガス(アルゴンガス)を用いてプラズマ溶接を行った試料番号1の試料は、溶接部(溶接金属部)を構成する金属における窒素含有量(含有率)が0.144重量%と少なく、溶接金属部の裏側におけるフェライト相の割合が表側で70体積%を大きく超えており、溶接金属部の耐食性および耐水素性はいずれも不良であることが確認された。
一方、窒素ガスをそれぞれ、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%を含むプラズマガス(アルゴンガス)を用いてプラズマ溶接を行った試料番号2、3、4、5、6および7の各試料は、表2に示すように、溶接部(溶接金属部)を構成する金属における窒素含有量(含有率)が、それぞれ0.189重量%(試料番号2)、0224重量%(試料番号3)、0.261重量%(試料番号4)、0310重量%(試料番号5)、0.360重量%(試料番号6)、0.370重量%(試料番号7)で、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いた試料番号1の試料(比較例の試料)に比べて、溶接金属部における窒素含有量が多くなっていることが確認された。
また、試料番号2、3、4、5、6および7の各試料は、溶接金属部の裏側におけるフェライト相量が55体積%~26体積%(オーステナイト相量は、45体積%~74体積%)で、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いてプラズマ溶接を行った試料番号1の試料(比較例の試料)よりもフェライト相量が少なくなっており、いずれもフェライト相量が70体積%以下であること、すなわち、オーステナイト相量が30%以上で、フェライト相とオーステナイト相の相比が好ましい範囲にあることが確認された。
また、試料番号2、3、4、5、6および7の各試料は、表2に示すように、溶接金属部の耐食性、および、耐水素性も良好であることが確認された。
一方、溶接作業性についてみると、窒素ガスをそれぞれ10重量%、15重量%含むプラズマガスを用いた試料番号6および7の試料の場合、アークが不安定になり、溶接作業性が必ずしも良好ではないことが確認された。
したがって、この実施形態からは、窒素ガスを1重量%、2重量%、3重量%、5重量%含有するプラズマガスを用いることが、良好な溶接作業性を確保する見地からは好ましいことがわかる。
ただし、上記実施形態における溶接作業性の評価結果は、溶接速度を180mm/minとしてプラズマ溶接を行った場合の評価結果であり、溶接速度が遅くなると、プラズマガス中の窒素ガスの含有量がより少なくても、フェライト相量70体積%以下の相比を確保することが可能になる。
また、溶接速度が速くなると、プラズマガス中の窒素ガスの含有量が多くないとフェライト相量70体積%以下の相比を確保することが困難になる場合があり、溶接条件によっては、窒素ガスを10重量%、15重量%含むプラズマガスを用いることが望ましい場合がある。
次に、窒素ガスの含有量が1重量%未満のプラズマガスを用いてプラズマ溶接を行った場合の溶接金属部における窒素含有量と、フェライト相とオーステナイト相の相比について、以下に説明するような検討を行った。
まず、表2のプラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部中の窒素含有量のデータから、プラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部中の窒素含有量との関係を線図化した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、プラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部中の窒素含有量の関係は略直線関係にあり、プラズマガス中の窒素含有量が1重量%未満の場合にも、図4のグラフから溶接金属部における窒素含有量を求めることができる。
また、表2のプラズマガス中の窒素ガス含有量と、溶接金属部の表側および裏側におけるフェライト相の相比の関係を線図化した。その結果を図5に示す。
プラズマガス中の窒素含有量と、溶接金属部中のフェライト相量との間には、図5に示すような関係があり、プラズマガス中の窒素含有量が1重量%未満の場合における、溶接金属部中のフェライト相量を求めることができる。
表2および図4から、例えば、窒素ガスを0.5重量%含むプラズマガスを用いてプラズマ溶接を行った場合の溶接金属部における窒素含有量を求めると、溶接金属部における窒素含有量は0.17重量%となる。
このように、プラズマガス中の窒素ガスの含有量が1重量%未満の場合にも、プラズマガスに窒素ガスが含まれていれば、窒素ガスの含有量に応じて、溶接金属部における窒素含有量が、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いて溶接を行った場合よりも多くなることがわかった。
また表2および図5から、例えば、窒素ガスを0.5重量%含むプラズマガスを用いてプラズマ溶接を行った場合の溶接金属部におけるフェライト相量を求めると、溶接金属部の裏側におけるフェライト相量は約66体積%となる。
このように、プラズマガス中の窒素ガスの含有量が1重量%未満の場合にも、プラズマガスに窒素ガスが含まれていれば、窒素ガスの含有量に応じて、溶接金属部におけるフェライト相量が少なくなり(溶接金属部におけるオーステナイト相量が多くなり)、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いて溶接を行った場合に比べて、フェライト相とオーステナイト相の相比が望ましい値となる。
さらに、上述のように、プラズマガス中の窒素ガスの含有量が1重量%未満の場合にも、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いて溶接を行った場合に比べて、溶接金属部における窒素含有量が多くなり、かつ、フェライト相とオーステナイト相の相比が望ましい値になることから、溶接金属部の耐食性や耐水素性も向上するものと考えられる。
また、プラズマガス中の窒素ガスの含有量を1重量%未満とした場合には、アークが不安定になるようなことはなく、良好な溶接作業性を確保ことができる。
したがって、上記実施形態から、
(a)プラズマガス中の窒素ガスの含有量が1重量%未満である場合にも、窒素ガスを含む不活性ガスを用いることにより、窒素ガスを含まないプラズマガスを用いて溶接を行う場合よりも、二相ステンレス鋼のプラズマ溶接を良好に行うことができること、
(b)窒素ガスを1重量%、2重量%、3重量%、5重量%含有するプラズマガスを用いることにより、さらに良好な二相ステンレス鋼のプラズマ溶接を行うことができること、
(c)窒素ガスを10重量%、15重量%含有するプラズマガスを用いた場合にも、溶接速度などの条件を適切に選択することにより実用的なプラズマ溶接を行うことができること
などが確認された。
以上の結果より、本発明によれば、母材とは別に溶接棒などの溶接材料を用いずに、また、溶接後に熱処理を行うことを必要とせずに、二相ステンレス鋼を確実に溶接できることがわかる。
なお、上記実施形態では、プラズマガスを構成する不活性ガスとしてアルゴンガスを用いた場合について説明したが、プラズマガスを構成する不活性ガスとしてヘリウムガスを用いることも可能である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
A プラズマ溶接装置
1 タングステン電極
2 ノズル
2a 中空部
2b 冷却水通路
3 外側ノズル
3a トーチシールドガス通路
5 バックシールド用カップ
5a 供給口
5b 隙間
10 トーチ
11 プラズマガス
12 プラズマアーク
13 トーチシールドガス
14 バックシールドガス
20 二相ステンレス鋼(母材)
30 溶接部(溶接金属部)

Claims (3)

  1. 溶接材料を用いないプラズマ溶接の方法により、二相ステンレス鋼どうしを溶接する溶接方法であって、
    プラズマアークを発生させるためのプラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上15重量%以下の割合で含む不活性ガスを用い、
    発生させた前記プラズマアークをシールドするトーチシールドガスとして、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用い、
    発生させた前記プラズマアークが供給される側とは逆の母材の裏面側をシールドするバックシールドガスとして、可燃性ガスを含まず、窒素ガスを0.5重量%以上の割合で含む不活性ガスを用い、
    前記プラズマアークが供給されることで前記二相ステンレス鋼どうしが溶接される溶接部を、治具を用いて攪拌することなく溶接を行うこと
    を特徴とする二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法。
  2. 前記プラズマガスとして、窒素ガスを1.0重量%以上5重量%以下の割合で含む不活性ガスを用いることを特徴とする請求項1記載の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法。
  3. 前記不活性ガスが、アルゴンガスおよびヘリウムガスのいずれかを主成分とするものであることを特徴とする請求項1または2に記載の二相ステンレス鋼のプラズマ溶接方法。
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