JP7158642B2 - 質量分析装置及び質量分析システム - Google Patents
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Description
例えば、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor cells:CTCもしくはCTSs)は、原発巣および転移巣を起源とする患者の末梢血中に存在する腫瘍細胞であり、様々なタイプのがん患者で検出されている。近年、CTCのDNA及びRNAプロファイルが解明されつつあり、CTCはがん再発転移や治療抵抗性に関与していることが明らかになってきている。がんの予後や化学療法の治療奏効を予測する臨床検査として、ますますCTCの高精度な検出が期待されている。
CTCを検出する方法として、CTCの細胞表面抗原に対する抗体を用いて処理することにより、染色後の細胞を顕微鏡観察する方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1から2参照)。
また、CTCに限らず、血液中の所望の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く検出が行える方法の提供が望まれていた。
前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、を有する。
また、本発明の質量分析システムは、本発明の質量分析装置と、
前記分析手段により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、を有する。
本発明の質量分析システムは、質量分析装置と解析装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
本発明の質量分析システムにおける質量分析装置により、血液中の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く、血液中の検査対象のプロファイル(分析結果)を取得することができる。
特に、検査対象に対し、抗体を添加するという従来行われてきたラベリングのための前処理を行わずとも、検査対象を直接イオン化し、生成したイオンを質量分析することで、血液中の検査対象のプロファイル(分析結果)を取得することができる。
また、本発明の質量分析システムによる質量分析の結果得られるマススペクトルを解析することにより、前記検査対象の血液中における存在状態を高精度に判定することができ、その結果、前記検査対象の存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定することができる。
つまり、本発明の質量分析システムにより、抗体を添加する(検出対象分子をラベリングする)という前処理なしに、検査対象自身がもっているプロファイル(分析結果)を取得することで、簡便、迅速、かつ高精度に、血液中における検査対象の検出を行うことができる。
例えば、検査対象がCTCである場合、抗体によるラベリングは行わずに、CTCを直接イオン化し、そのCTCの細胞自身がもっているプロファイル(分析結果)を利用することで、簡便、迅速、かつ高精度にCTCの検出を行うことができる。また、CTCに限らず、例えば、検査対象が脂質である場合には、本発明の質量分析システムにより、血液中の脂質の存在状態を検出することで、被検体が高脂血症等の脂質に由来した疾病であるか否かの疾病に該当する可能性を判定することができる。また、例えば、検査対象が糖質である場合には、本発明の質量分析システムにより、血液中の糖質の存在状態を検出することで、被検体が糖尿病等の糖質に由来した疾病であるか否かの疾病に該当する可能性を判定することができる。
本発明の質量分析装置は、イオン化手段と、分析手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の質量分析方法は、イオン化工程と、分析工程と、含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
イオン化工程は、被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化する工程であり、イオン化手段により実施される。
ここで、前記被検体としては、人間を含むあらゆる動物が対象となる。
本発明の質量分析の対象は、血液中に存在する検査対象である。
ここで、血液は、血球成分(細胞性成分、血液細胞)、血小板、血漿成分(液性成分)などを含む。
前記血球成分は、赤血球、白血球、血小板などを含む。前記白血球は、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などを含む。前記リンパ球は、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)などを含む。
前記血漿成分は、水分、タンパク質、脂肪、糖、無機塩類、低分子代謝産物、外来分子などを含む。
検査対象である前記細胞としては、例えば、血中循環腫瘍細胞(CTC)、赤血球、白血球などが挙げられる。
検査対象である前記タンパク質としては、例えば、アルブミン、ヘモグロビン、γ-グロブリン、フィブリノーゲン、アンチトロンビンIII、トランスフェリン、セルロプラスミン、成長因子を含むサイトカイン、ケモカインなどが挙げられる。
検査対象である前記脂質としては、例えば、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどが挙げられる。
検査対象である前記糖質としては、例えば、ブドウ糖、1.5AG(1.5アンヒドログリシトール)などが挙げられる。
検査対象である前記核酸としては、例えば、circulating normal DNA、circulating tumor DNA、non-coding RNA(miRNA、transfer RNA、ribosomal RNA等)などが挙げられる。
また、前記検査対象として、酵素、ホルモン、腫瘍マーカーなどであってもよい。ここで、腫瘍マーカーとは、悪性腫瘍の指標となる物質をいう。
前記酵素としては、例えば、γ-GTP、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、アミラーゼなどが挙げられる。
前記ホルモンとしては、例えば、副腎皮質刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、プロラクトン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、アルドステロン、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、成長ホルモンなどが挙げられる。
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、AFP(α-フェトプロテイン)、CA19-9(シリアルルイスA糖類)、CA125(糖タンパク)、CEA(癌胎児性抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、SSC(扁平上皮癌関連抗原)などが挙げられる。
前記単核球分離処理の処理方法としては、単核球層を分離できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、Ficoll(Ficoll-Paque PLUS、GEヘルスケアジャパン株式会社製)等のリンパ球分離用媒体を用いた一般的な分離法が挙げられる。
Ficollにより血液を分離した場合、例えば、図7で示すように、各層に分離される。そこで、本発明の質量分析方法で用いる検体試料としては、分離された層を用いるのが好ましい。
例えば、検査対象がCTCの場合、分離された層のうち、単核球層を用いるのが好ましい。
図7において、符号aは分離溶液(例えば、リンパ球分離溶液(比重:1.119))を、bは血液を、cは血漿を、dは単核球(リンパ球、単球)、血小板を、eは赤血球、顆粒球を示す。
例えば、単核球分離処理を行い、分離した単核球層を検体試料として用いる場合には、本発明の質量分析装置として、下記<第1の実施形態>又は下記<第2の実施形態>の項で記載しているイオン化手段を有する質量分析装置を用いることができる。
また、例えば、単核球分離処理を行わず、採取した血液のままを検体試料として用いる場合には、本発明の質量分析装置として、下記<第3の実施形態>の項で記載しているイオン化手段を有する質量分析装置を用いることができる。
本発明では、アンビエントイオン化法の一つの手法であるエレクトロスプレーイオン化法が好ましく挙げられる。また、以下に記載のライン式イオン化法も好ましく挙げられる。
前記イオン化手段の具体的な態様として、以下の場合を挙げることができる。
(1)針状部材、電源、及びイオン収集部材を有する態様(以下、探針エレクトロスプレーイオン化法(Probe Electrospray Ionization:以下、「PESI」と略することもある)と称する)を用いたイオン化手段、(2)第1の管状部材、第2の管状部材、電源、及びイオン誘導部材を有する態様(以下、リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法(Remote Sampling Electrospray Ionization)と称する)を用いたイオン化手段、(3)線状部材、及びイオン化部材を有する態様(以下、ライン式イオン化法と称する)を用いたイオン化手段がある。
本発明の質量分析装置を用いると、例えば、検体試料をイオン化させたら、約5分以内には質量分析の判断結果を得ることができ、リアルタイムな分析が可能となる。
探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)法を用いたイオン化手段は、針状部材と、電源と、イオン収集部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
PESI法を用いたイオン化手段は、検体試料を針状部材で採取した後、直ちにイオン化が行われるため、リアルタイムな質量分析が可能である。
前記電源は、針状部材の先端から採取した検体試料や検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるため、前記針状部材に電圧を印加するために使用する。
前記イオン収集部材は、生成した前記イオンを収集するために使用する。
針状部材の先端をごく細い形状としておけば、検体試料表面上でごく微小の範囲の検体試料が針状部材の先端に捕捉される。
先端に検体試料が付着した針状部材に高電圧が印加されると、針状部材の先端の検体試料に強い電場が作用し、エレクトロスプレー法により検体試料の分子が離脱しながらイオン化する。
針状部材は、検体試料に先端を接触乃至刺入させて検体を採取(捕捉)する部材である。
針状部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
針状部材の形状としては、エレクトロスプレー現象を生じることができる先端形状とすることができる。
針状部材の構造としては、中実構造、単層構造、複数層構造などが挙げられる。
針状部材の大きさ(針の太さ等も含む)としては、先端に捕捉させたい検体試料の量や検査対象の種類により、適宜選択することができる。
材質として、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられ、更にこれらの表面加工として、電界研磨、酸処理、化学処理により親水性あるいは疎水性を調整してもよい。
針状部材としては、具体的には、ステンレス鋼製の鍼灸針を加工したものなどを用いることができる。
電極は、針状部材の先端に検体試料が付着された状態で針状部材に電圧を印加する部材である。
電圧の目安は、2kV~3kVであり、針状部材に高電圧を印加することにより、エレクトロスプレーを生じさせることができる。
イオン収集部材は、針状部材の先端近傍に設けられ、針状部材に付着した検体試料や検査対象から生成したイオンを収集する部材である。
イオン収集部材としては、例えば、イオン収集・輸送チューブを用いることができる。イオン収集・輸送チューブの内径は1mm~5mmであることが好ましい。
イオン収集・輸送チューブの先端の開口部は、針状部材の移動を邪魔しない大きさ、形状に形成することができ、先端の開口部がラッパ状に広がった形状であることがイオンの収集効率の点から好ましい。
イオン収集部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、検体試料に応じて適宜選択することができる。
この際、イオン収集・輸送チューブの開口部を針状部材の先端と近接した位置とすることにより、生成したイオンの吸引を効率よく行うことができる。
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御部材などが挙げられる。
制御部材としては、各部材の動きを制御できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段は、第1の管状部材と、第2の管状部材と、ガス流発生部材と、電源と、イオン誘導部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
前記第2の管状部材は、前記第1の管状部材を同心で挿入するために使用する。
前記ガス流発生部材は、前記第2の管状部材にガスを高速に流すために使用する。
前記電源は、前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加するために使用する。
前記イオン誘導部材は、生成した前記イオンを前記質量分析手段へ導くために使用する。
第1の管状部材は、第2の管状部材内に同心で挿入されている。第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガスが高速で流れている。
高速ガス流は、ガス流発生部材により発生する。
第2の管状部材内の高速のガス流によって生成されるベンチュリ効果により、第1の管状部材の他端付近の圧力は減圧状態となる。第1の管状部材の一端と他端の端部間の圧力差により、検体試料が吸引され、第1の管状部材の一端から採取された検体試料は、第1の管状部材の他端側へ移動する。
第2の管状部材内の高速ガス流は、検体試料に対し吸引作用を示すとともに、帯電した液滴の噴霧を補助し、安定したイオン生成にも役立つ。
例えば、第1の管状部材の他端は、グランド又は検体試料に適した任意の電位で電気的に保持される。第1の管状部材の他端と対向電極との間で電位差が生じ、他端に高電位が印加されたときエレクトロスプレーが生成されるため、例えば、第1の管状部材をグランドの電位とし、対向電極に約-3kVの負電位を印加する。そうすると、第1の管状部材に人がふれても安全であり、他端には高電位が印加されるため、エレクトロスプレーが生成される。
生成したイオンは、イオン誘導部材を経由して質量分析計へと運ばれる。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析装置では、第1の管状部材が検体試料に接触するとほぼ直ちに質量分析計による質量分析結果が得られる。
例えば、図3に示すように、3軸電動自動サンプリング装置を構築することができる。
サンプルステージは、水平(x-y)軸の2つのリニアアクチュエータによって駆動させる。サンプリングプローブである第1の管状部材の位置は、垂直(z)軸の別のリニアアクチュエータによって制御させる。
サンプルステージには、複数の検体試料が配された96ウェルのサンプルプレートが載っている。
図4Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、検体試料に接触させると、ほぼ直ちに質量分析計による質量分析結果が得られる。
次に図4Bで示すように、第1の管状部材を上方の位置に移動させ検体試料から離す。96ウェルのサンプルプレートの位置を変更する。
また図4Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、次の検体試料に接触させ、その検体試料の質量分析結果を得る。
この繰り返し工程をコンピュータで制御することにより、連続サンプリングの自動化質量分析装置を構築することができる。
第1の管状部材は、検査対象に一端を接触させて検査対象を採取し、また、他端から採取した検体試料や検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させる部材である。
第1の管状部材の形状、構造、大きさ(長さ、太さ等)、材質等については、特に制限はなく、通過させる検体試料の量や検体試料の種類を考慮して、適宜選択することができる。
但し、第1の管状部材の長さは、検体試料が容易に吸引され、静電作用および毛細管作用によってイオンが噴霧されやすいよう、ある程度短いほうがよい。また、第1の管状部材の太さは、検体試料の詰まりが生じないよう、ある程度太いほうがよい。
第1の管状部材の管の長さとしては、1cm~5cmが好ましい。また、第1の管状部材の内径としては、0.1mm程度、外径としては、0.2mm程度が好ましい。
材質としては、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられる。
第2の管状部材は、第1の管状部材を同心で封入するための部材である。
第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガスが高速に流れている。
第2の管状部材の形状、構造、大きさ(長さ、太さ等)、材質等については、特に制限はなく、適宜選択することができるが、第2の管状部材の内径は、第1の管状部材の外径、及び通過させるガスの量や速度を考慮し、適宜選択するとよい。
また、ガスの逆流を生じさせぬよう、第1の管状部材の他端は、第2の管状部材からわずかに突出していることが好ましい。よって、例えば、第1の管状部材の他端が0.5mmから1mm程度、第2の管状部材より突出するように、第2の管状部材の長さを適宜選択するとよい。
第2の管状部材の管の長さとしては、1cm~3cmが好ましい。また、第2の管状部材の内径としては、0.3mm~0.5mm、外径としては、1.6mm程度が好ましい。
材質としては、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられる。
電極は、第1の管状部材の他端と、エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する部材である。
例えば、第1の管状部材をグランドの電位とする場合には、対向電極に3kV程度の負電位を印加すると、第1の管状部材の他端に高電圧が印加されるため、エレクトロスプレーを生じさせることができる。
ガス流発生部材としては、気体を圧縮して圧力を高め、連続的に送り出す装置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。取り扱う気体の種類、圧縮方式、装置の構造等は、適宜選択することができる。
例えば、ガス流発生部材としてエアーコンプレッサーを用いることができる。これにより、例えば、第2の管状部材内に高速の空気流を発生させることができる。第1の管状部材の太さと第2の管状部材内を流れる空気の流速によって、検体試料の移動速度を調整することができる。したがって、検体試料の移動速度が所望の範囲となるよう、空気の流速を調整するとよく、空気の流速が所望の範囲となるよう、ガス流発生部材の種々の条件を設定するとよい。
第2の管状部材内の空気流の速度としては、例えば、2L/min~5L/minが好ましい。
イオン誘導部材は、生成したイオンを質量分析手段へ導くため部材である。
イオン誘導部材としては、例えば、イオン輸送チューブを用いることができる。
イオン輸送部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、検査対象に応じて適宜選択することができる。
イオン輸送部材の材質としては、例えば、可撓性のポリマーチューブを選択することができる。
イオン輸送チューブの長さとしては、50cm~100cmが好ましい。また、内径は1mm~5mmであることが好ましい。
その他の部材としては、上記<<探針エレクトロスプレーイオン化法を用いた手段>>の項で説明したとおりである。
ライン式イオン化法を用いたイオン化手段は、線状部材と、イオン化部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
線状部材は、限界希釈法を用いて調製した試料液を用い、前記試料液の液滴を搬送するために使用する。ここで、試料液は、検体試料や検体試料に含まれる検査対象を含有する液状の試料(サンプル)をいう。
イオン化部材は、線状部材に付着した前記液滴から前記検査対象に由来するイオンを生成させるために使用する。
前記試料液は、限界希釈法を用いて調製されていることが好ましい。これにより、1細胞/液滴の滴下を可能とし、1細胞ごとのプロファイル(ここでは、質量分析の結果)を取得することができる。
滴下された試料液の液滴は、駆動部材(例えば、ローラ)により線状部材を移動させることにより、イオン化部材まで搬送される。
イオン化部材により線状部材に付着した液滴はイオン化され、生成されたイオンは、直ちに質量分析に供される。
線状部材の材質、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、検査対象に応じて適宜選択することができる。
線状部材の材質としては、例えば、金属線材、天然繊維、化学繊維などが挙げられる。
イオン化部材は、イオン化法により、線状部材に付着した試料液の液滴からイオンを生成する部材である。
イオン化法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、APCI(Atomospheric Pressure Chemical Ionization)法、EI(electron ionization;電子イオン化)法、CI(chemical ionization;化学イオン化)法、DEI(desorption electron ionization;脱離電子イオン化)法、DCI(desorption chemical ionization;脱離化学イオン化)法、FAB(fast atom bombardment;高速原子衝撃)法、FRIT-FAB(FRIT-fast atom bombardment;フリット高速原子衝撃)法、ESI(electrospray ionization;エレクトロスプレーイオン化)法、MALDI(matrix-assisted laser desorption ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法などが挙げられる。これらの中でも、APCI法、ESI法が特に好ましい。
その他の部材としては、上記<<探針エレクトロスプレーイオン化法を用いた手段>>の項で説明したとおりである。
また、ライン式イオン化法を用いたイオン化手段においては、さらに試料液供給素子、駆動部材、前処理部材、後処理部材を有していてもよい。
試料液供給素子としては、試料液を液滴ずつ滴下することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ピエゾ端子を使用することができる。
駆動部材は、線状部材を一定方向に移動させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラが挙げられる。
駆動部材による線状部材の移動スピードの調整は適宜行うことができる。
試料液供給素子による試料液の液滴の線状部材への付着からイオン化までの時間を利用して、試料液を前処理することができる。この前処理としては、例えば、除タンパク、塩除去の処理などが挙げられる。
イオン化工程を経た線状部材に対し、イオン化部材から試料液供給素子へ移動する間に後処理を施してもよい。この後処理としては、線状部材を洗浄するための洗浄、加熱、化学処理等の各処理が挙げられる。
分析工程は、イオン化工程により生成したイオンを質量分析する工程であり、分析手段により実施される。
質量分析においては、検体試料をイオン化し、そのイオンを質量電荷比(m/z)の違いにより分離する。したがって質量分析装置からは質量電荷比を横軸にとり、縦軸にイオン強度をとったマススペクトルを表すための基礎となるデータが生データとして出力される。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
図1は、第1の実施形態として、探針エレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図1の質量分析装置100は、イオン化手段101と、分析手段102とを備える。
この第1の実施形態では、針状部材1として、ステンレス鋼製の鍼灸針を用いている。
針状部材1は、リニアアクチュエータ5の作動によって、検体試料に対して上下動可能とされている。
針状部材1が下方の位置(下位端)に移動すると、検体試料に接触乃至刺入することで検体試料が針状部材1の先端に付着する。
針状部材1が上方の位置(上位端)に移動すると、電源7から高電圧が印加され、針状部材1の先端からエレクトロスプレーが発生する。
吸引されたイオンはイオン開口部10を経由して質量分析計12に運ばれる。
針状部材1の先端とイオン収集・輸送チューブ8の開口部との間には電圧がかかっているので、発生したイオンはイオン収集・輸送チューブ8の開口部で吸引される。
針状部材1の位置を下げると、針状部材1の先端は検体試料に接触乃至刺入する。針状部材1の位置を上げると、電圧が印加される。これにより、針状部材1の先端から、検体試料又は検査対象に由来したイオンが発生する。発生したイオンはイオン収集部材8としてのイオン収集・輸送チューブの開口部から直ちに吸引され、質量分析計12に運ばれる。
図2Aは、第2の実施形態として、リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図2Aの質量分析装置200は、イオン化手段201と、分析手段202とを備えている。
また、図2Aの第1の管状部材21の一端側の拡大写真を図2Bに示す。
第1の管状部材21としてステンレス鋼を用いる。
管状部材の保持部材23と対向電極26とは、絶縁部材27により絶縁されている。この第2の実施形態では、絶縁部材27として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いる。
第1の管状部材21は、検体試料に対して上下動可能である。
第1の管状部材21は、第2の管状部材22内に同心で挿入されている。
第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガス流発生部材(ここでは、エアーコンプレッサーを用いる)により高速の空気流が発生している。
この第2の実施形態では、第1の管状部材21の外径は0.2mm、第2の管状部材22の内径は0.5mmとする。第1の管状部材21と第2の管状部材22の隙間は、0.15mmであり、この隙間を空気が高速で流れている。
第2の管状部材22内の高速の空気流によって生成されるベンチュリ効果により、検体試料の吸引がスムーズに行われ、第1の管状部材21の一端から採取された検体試料は、第1の管状部材の他端24へと移動する。
第1の管状部材21の他端24と、エレクトロスプレーが生成される領域に前記他端24と対向する位置に配される対向電極26との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電源30から電圧が印加される。この第2の実施形態では、第1の管状部材21をグランド電位とし、対向電極26に-3kVの電圧を印加する。それにより、第1の管状部材21の他端24からエレクトロスプレーが発生する。
生成されたイオンは、空気流の流れに乗って、イオン誘導部材28を経由して質量分析計29へ供給される。ここで、この第2の実施形態では、イオン誘導部材28として、内径3mmの可撓性ポリマーチューブを用いる。
第1の管状部材21を上方の位置(上位端)に移動すると、検体試料の採取は中止する。
図5は、第3の実施形態として、ライン式イオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図5の質量分析装置300は、イオン化手段301と、分析手段302とを備えている。
分析手段302は、質量分析計36を備えている。
線状部材33は、試料液の液滴32を搬送する。
線状部材に試料液の液滴を付着させるには、試料液供給素子31を用い、1液滴ずつ線状部材に滴下することにより行う。この第3の実施形態においては、試料液供給素子として、ピエゾ端子を使用する。
駆動部材34である駆動ローラにより線状部材33を移動させ、試料液の液滴は、イオン化部材35まで搬送される。
イオン化部材35により生成された試料液や検査対象に由来するイオンは、直ちに質量分析に供される。
本発明の解析装置は、判定手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の解析方法は、判定工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
質量分析解析プログラムによる処理は、解析装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行される。
例えば、検査対象がCTCである場合、CTCを検出することにより、癌の早期発見や再発予測、癌細胞の抗がん剤に対する感受性などの臨床情報を入手することができる。血液単位あたりのCTCの個数がわかれば、癌の診断、あるいは予後の診断に結びつけることができる可能性がある。
また、CTCに限らず、例えば、検査対象が脂質である場合、血液中の脂質の存在状態がわかれば、高脂血症等の脂質に由来した疾病に該当する可能性を判定することができる。また、例えば、検査対象が糖質である場合、血液中の糖質の存在状態がわかれば、糖尿病等の糖質に由来した疾病に該当する可能性を判定することができる可能性がある。
判定工程は、マススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する工程であり、判定手段により実施される。
上記疾患陽性のパターンとしては、例えば、腫瘍陽性のパターンなどが挙げられる。
例えば、検査対象を含まない正常な検体試料が示すマススペクトルと、検査対象を含む非正常な検体試料が示すマススペクトルとでは、マススペクトルが示す形状に違いがあることから、これらのマススペクトルが示す情報と、測定した結果のマススペクトルとを比較すれば、測定した被検体における検査対象の存在状態を知ることができる。
例えば、血液における検査対象の存在状態が所定の許容範囲を超えている、つまり健常者が示すマススペクトルの形状やマーカーピークとは異なり、疾患をかかえる非正常な検査対象を有する患者が示すマススペクトルの形状やマーカーピークに近い測定結果がでた場合には、被検体は、係る疾患に該当している可能性が高いと判断できる。
この場合、マススペクトルの形状やマーカーピークが示す情報に対する測定結果の近さの程度により、疾患を抱えているか否かの2値の判定のみならず、疾患を発症している可能性の確からしさ(確率)も判定することができる。
図8で示すように、(i)で示すマススペクトルの情報と、(ii)で示す学習により得られたマススペクトルの解析結果の情報とを併用して、血液における検査対象の存在状態を把握してもよい。
(a)例えば、がん患者からの血液の質量分析結果を予め取得し、それらデータを分析することで、血液中のCTCの存在を判定する指標を用意しておく。ここで、指標としては、マススペクトルの特有のマーカーピーク、マススペクトルの全体のピーク形状、健常者のプロファイルの分布とがん患者のプロファイルの分布とを区別する基準等が挙げられる。
そして、事前に用意した指標と、被検体の測定結果とを比較することにより、被検体のCTCの存在の可能性を判定することができる。
尚、予め用意しておくがん患者の質量分析結果としては、CTCの質量分析結果のみに限られず、原発及び転移腫瘍組織の質量分析結果を使用することもできる。
(b)また、健常者が示すマススペクトルが示すデータと、非正常な検査対象を有する患者のマススペクトルデータとでは、差異があることから、上記(a)のように事前に指標となるデータを保有する場合でなくても、健常者が示すマススペクトルデータと違う測定結果が得られた場合には、何らかの疾患に該当する可能性があると疑うことができる。
(c)データベースに記憶されている事前に用意されたデータは、新しい測定結果が得られれば、逐次データを更新することができる。蓄積データを増やし、指標となる情報を更新することで、より正確な判定が行えるデータベースを構築することができる。
(d)また、被検者自身の測定結果を蓄積していき、被検者の測定データをその被検者の過去のデータと比較するようにしてもよい。それにより、被検者における検査対象の経過観察が行え、ひいては被検者の疾患の早期発見、最適な治療法の選択につなげることができる。
尚、下記説明では、測定対象が本発明の対象とする血液中の検査対象(例えば、CTC)を用いた例では記載されていはいないが、解析システムの動作としては同じである。下記に記載のコンピュータシステムの動作を本発明の解析装置でも同様に適用することができる。
本発明の解析装置において、代表マススペクトルを作成するには、例えば、測定データ入力処理と、最良時間帯検出処理と、代表マススペクトル作成処理と、を行う。
また、作成されたマススペクトルを学習して解析するには、以下に記載の各学習法を用いる。
測定データ入力処理は、質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する処理であり、測定データ入力部により実施される。
三次元測定データとは、質量分析部(本発明の質量分析装置)により得られる一般にイオンクロマトグラムといわれるものであり、所定時間(スキャニングインターバル)ごとに質量電荷比とイオン強度との関係を示すデータ(スペクトルとして表現可能なデータ)が得られる。したがって、上記測定時間はスキャン回数で表現され得る。
最良時間帯検出処理は、入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する処理であり、最良時間帯検出部により実施される。
代表マススペクトル作成処理は、検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する処理であり、代表マススペクトル作成部により実施される。
代表マススペクトルを作成する過程で算出される上記TIC、MIC、EIC(クロマトグラム)やこれらから得られる代表スペクトルを表示装置に表示すると、ユーザはこれをみながら、上記の質量電荷比の範囲(MICの場合)、特定のピーク(EICの場合)、上記の時間帯、その他のパラメータを適宜変更することができる。
更に、解析装置は、作成された代表マススペクトルにラベル情報を付加して記憶するマススペクトル蓄積部を更に有することが好ましい。
図11及び図12は、記憶部326に格納されたプログラムにしたがって、処理部321が実行する処理の手順を表すフローチャートである。これらの図面は、以下の説明の中で逐次参照される。
処理部321は、これらのフローチャートで表される機能を実現する手段を有する。
解析装置320では、上述した代表マススペクトルの手動生成、自動生成の処理(図11の、S12、S13)において、マススペクトルを表示するために、上記テキストデータはバイナリ形式のデータd3に変換される。代表マススペクトルデータ(テキスト形式)d4が得られると、ラベル情報等が入力され、代表マススペクトルデータに質量分析部310が付与したIDに代えて、又は加えてラベル情報が付加される(図11のS141)。そして、リレーショナルデータベース(RDB)構築用テキストファイルへのデータ変換が行われて、プロジェクトごとにデータベースに蓄積される。このデータベースを特に図10に符号327で示す。
「エクスポート」ボタンを押せば、エクスポートされる(図11のS143)。即ち、抽出されたマススペクトルデータはデータベースから記憶部326の所定の記憶場所に転送され、統計解析処理が使用できる状態となる(マススペクトルデータベース328の作成)(データセット指定部)。
・Welch t-test(ウェルチのt検定)
「2つの母集団の平均が等しい」という帰無仮説のもと、等分散を仮定しない両側検定を行うものである。
・WRST(Wilcoxon rank sum test)(ウィルコクソン順位和検定)
「両標本が同一母集団から抽出された」という帰無仮説に基づいてノンパラメトリックな検定を行うものである。
・ANOVA(Analysis of variance)(分散分析)
「全ての群の母平均に差が無い」という帰無仮説に基づいて多群のパラメトリック検定を行うものである。
次元縮約は多くの変数を少数の変数(スコア)に縮約するものである。
・PCA(Principal component analysis)(主成分分析)
教師無し次元縮約法である。
・PLS(Partial least squares)(部分的最小二乗法)
教師あり次元縮約法である。
・OPLS(Orthogonal Partial Least squares)(直交PLS)
PLSの改良版で、説明変数の直交成分を分離して解析する。
・KPLS(kernel partial least squares)(カーネルPLS)
カーネル法を用いてPLSを非線形拡張するので、分離性能が向上する。
・LDA(Linear discriminant analysis)(線形判別分析)
直線、超平面による判別関数を構成。
・QDA(Quadratic discriminant analysis)(二次判別分析)
曲線、超曲面による判別関数を構成。
・SVM(Support vector machine)(サポートベクターマシン)
マージンを最大化する識別面を特徴空間に構成する非線形識別法。
・LR(Logistic regression)(ロジスティック回帰)
事後確率の対数尤度比が線形式で表されると仮定する回帰モデル。
・RF(Random forest)(ランダムフォレスト)
決定木を弱学習器とする集団学習アルゴリズム。
機械学習法の診断精度を検証するものである。この検証結果により、最も適した機械学習法を自動的に選定することも可能となる。
標本群をk個に分割して、そのうちの一つをテストサンプル、残りを訓練サンプルとする検証法。
・LOOCV(Leave one out cross validation)(Leave-one-out交差検証)
標本群から1つのサンプルだけを抜き出してテストサンプルとし、残りを訓練サンプルとする検証法。
次に示す具体例のように、複数の統計解析法の組合せを用いて、対象であるマススペクトル群について、意味のある変化、例えば、疾患で特異的に変化する分子(マーカー)を手動又は自動(半自動を含む)で抽出することができる。図24に示す画面(ユーザインターフェイス)は、操作するのに簡便であり、かつ分りやすく、作業時間の短縮を図ることができる。
食物を通してコレステロール負荷を加えたウサギ10匹:C16と略記する
遺伝的にコレステロール代謝に異常を有するウサギ10匹:Wと略記する
Binサイズはm/z値のとりうる間隔(幅)を示し、ここでは1が設定されている。したがって、10.0、11.0、12.0、‥‥、999.0、1000.0のように1ずつ変化するm/z値に対応するイオン強度をもつマススペクトルを対象データとしている。データセット中のマススペクトルデータのBinサイズが1でない場合には、平均値又は加算値をとる(Binサイズが小さい場合)、又は補間をとる(Binサイズが大きい場合)などによりBinサイズが1となるように加工される。
(ii)強度が十分に大きいm/zを選出する。平均強度は図24の画面で設定されているように、1.0~inf.(無限)である。1.0は平均値で正規化しているので平均値を意味する。この条件(ii)は、いずれかのグループで、強度が1を上廻るピークに対応するm/zを選出することである。
(iii)各グループ内での強度のばらつきが十分に小さいm/zを選出する。ばらつきは図24の画面で設定された変動係数範囲(0.0~0.3)で定められる。変動係数は、各ピークの強度を1としたときの分散の値で定められる(ピークの強度によって分散の値が変ってしまうので、正規化している)。この条件(iii)は各グループで上記の分散が0.3未満となるようなピークに対応するm/zを選出することである。
2)統計的検定→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zを説明変数として、教師データの学習を行う。
3)次元縮約法→機械学習:全m/zの情報をより少ない変数(主成分やPLSスコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
4)統計的検定→次元縮約法→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zをより少ない変数(スコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
本発明の質量分析システムを用いて、血液中の癌細胞の検出確認試験を行った。
ヒト全血2mLにヒト扁平上皮癌細胞(SAS)の濃度を変えて混入させた試料に対し、SASの分析を行った。No.1の試料は、癌細胞を含まない全血の試料である。No.2~No.5の試料は、SASの濃度を変えた。
No.2の試料:1×105SAS/2mL blood
No.3の試料:0.5×105SAS/2mL blood
No.4の試料:1×104SAS/2mL blood
No.5の試料:1×103SAS/2mL blood
No.6の試料は、癌細胞のみのポジティブコントロールである。
i)血液を採取した。
ii)Ficollにより単核球分離処理を行った。
iii)上記第2の実施形態で記載のリモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する本発明の質量分析装置を用いて、質量分析を行った。
iv)上記本発明の解析装置(上記判別手段と、上記機械学習を含む統計解析手段とを含む)を用いて、質量分析の結果を出力した。
図29及び図30の結果から、No.2~No.4は、740、758、及び764(m/z)において、No.6と同様のピーク形状を示すことが確認できた。
1mLの血液に混入した5,000個の腫瘍細胞を検出することが可能であることが確認できた。
<1> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化するイオン化手段と、
前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、
を有することを特徴とする質量分析装置である。
<2> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<1>に記載の質量分析装置である。
<3> 前記検査対象が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質のいずれかである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<4> 前記細胞が、血中循環腫瘍細胞(CTC)である、前記<3>に記載の質量分析装置である。
<5> 前記検査対象が、前記血液を単核球分離して得られたものである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<6> 前記イオン化手段が、
前記検査対象に先端を接触乃至刺入させて検査対象を採取する針状部材と、
前記針状部材の前記先端から前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために、前記針状部材に電圧を印加する電源と、
生成したイオンを収集するイオン収集部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<7> 前記イオン化手段が、
一端が検査対象に接触させて検査対象を採取するために使用され、他端が前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用される第1の管状部材と、
前記第1の管状部材を同心で挿入する第2の管状部材と、
前記第2の管状部材にガスを流すガス流発生部材と、
前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する電源と、
生成したイオンを前記質量分析手段へ導くイオン誘導部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<8> 前記イオン化手段が、
限界希釈法を用いて調製した前記検査対象の試料液を用い、前記試料液の液滴を搬送する線状部材と、
前記線状部材に付着した前記液滴から前記検査対象に由来するイオンを生成させるイオン化部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<9> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化するイオン化工程と、
前記イオン化工程により生成したイオンを質量分析する分析工程と、
を有することを特徴とする質量分析方法である。
<10> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<9>に記載の質量分析方法である。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の質量分析装置と、
前記分析手段により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、
を有することを特徴とする質量分析システムである。
<12> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<11>に記載の質量分析システムである。
<13> 前記解析装置は、前記被検体の血液の1回分の測定試料に対して得られた質量分析の結果をもとに、一度に複数の疾患に該当する可能性を判定する、前記<11>から<12>のいずれかに記載の質量分析システムである。
<14> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化し、生成した前記イオンを質量分析することにより得られる質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超えると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする質量分析解析プログラムである。
<15> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<14>に記載の質量分析解析プログラムである。
7 電源
8 イオン収集部材
12 質量分析計
20 電源
21 第1の管状部材
22 第2の管状部材
25 ガス流発生部材
28 イオン誘導部材
29 質量分析計
33 線状部材
35 イオン化部材
36 質量分析計
100 質量分析装置
101 イオン化手段
102 分析手段
200 質量分析装置
201 イオン化手段
202 分析手段
300 質量分析装置
301 イオン化手段
302 分析手段
310 質量分析部
320 解析装置
321 処理部
322 入力部
323 出力部
324 表示部
325 プリンタ
326 記憶部
Claims (8)
- 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象をイオン化するイオン化手段と、
前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、を有する質量分析装置であって、
前記イオン化手段が、
一端が前記検査対象に接触させて前記検査対象を採取するために使用され、他端が前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用される第1の管状部材と、
前記第1の管状部材を同心で挿入する第2の管状部材と、
前記第2の管状部材にガスを流すガス流発生部材と、
前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する電源と、
生成したイオンを前記分析手段へ導くイオン誘導部材と、を有し、
前記第1の管状部材の両端が前記第2の管状部材から突出していることを特徴とする質量分析装置。 - 前記第1の管状部材の外径が0.2mmであり、
前記第2の管状部材の内径が0.3~0.5mmであり、
前記第1の管状部材の他端が前記第2の管状部材から0.5~1.0mm突出している請求項1に記載の質量分析装置。 - 前記被検体である血液は、検査対象を検出するための抗体が添加されていない、請求項1から2のいずれかに記載の質量分析装置。
- 前記検査対象が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質のいずれかである、請求項1から3のいずれかに記載の質量分析装置。
- 前記細胞が、血中循環腫瘍細胞(CTC)である、請求項4に記載の質量分析装置。
- 前記検査対象が、前記血液を単核球分離して得られたものである、請求項1から5のいずれかに記載の質量分析装置。
- 請求項1から6のいずれかに記載の質量分析装置と、
前記質量分析装置により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、
を有することを特徴とする質量分析システム。 - 前記解析装置は、前記被検体の血液の1回分の測定試料に対して得られた質量分析の結果をもとに、一度に複数の疾患に該当する可能性を判定する、請求項7に記載の質量分析システム。
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