JP7158642B2 - 質量分析装置及び質量分析システム - Google Patents

質量分析装置及び質量分析システム Download PDF

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Description

本発明は、質量分析装置、質量分析方法、質量分析システム、及び質量分析解析プログラムに関する。
近年、患者の疾患進行を診断するため、循環血液中のバイオマーカーを検出する方法が各種開発されている。
例えば、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor cells:CTCもしくはCTSs)は、原発巣および転移巣を起源とする患者の末梢血中に存在する腫瘍細胞であり、様々なタイプのがん患者で検出されている。近年、CTCのDNA及びRNAプロファイルが解明されつつあり、CTCはがん再発転移や治療抵抗性に関与していることが明らかになってきている。がんの予後や化学療法の治療奏効を予測する臨床検査として、ますますCTCの高精度な検出が期待されている。
CTCを検出する方法として、CTCの細胞表面抗原に対する抗体を用いて処理することにより、染色後の細胞を顕微鏡観察する方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1から2参照)。
特許第6052756号公報
しかしながら、上記特許文献1又は上記非特許文献1から2に記載のCTC検出法では、抗体による標識に係る一連の前処理を行わなくてはならず、手間や時間がかかっていた。そこで、簡便かつ迅速に、さらに精度高くCTCの検出が行える方法の提供が望まれていた。
また、CTCに限らず、血液中の所望の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く検出が行える方法の提供が望まれていた。
本発明は、血液中の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く検出が行える、血液中の検査対象を検出するための質量分析装置、質量分析方法、質量分析システム、及び質量分析解析プログラムを提供する。
前述の課題を解決するための手段として、本発明の質量分析装置は、被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化するイオン化手段と、
前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、を有する。
また、本発明の質量分析システムは、本発明の質量分析装置と、
前記分析手段により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、を有する。
本発明によると、血液中の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く検出が行える、血液中の検査対象を検出するための質量分析装置、質量分析方法、質量分析システム、及び質量分析解析プログラムを提供することができる。
図1は、第1の実施形態に係る質量分析装置の一例を示す概略図である。 図2Aは、第2の実施形態に係る質量分析装置の一例を示す概略図である。 図2Bは、第1の管状部材の先端部の一例を示す拡大写真である。 図3は、第2の実施形態に係る質量分析装置の使用状態を示す概略構成図のの一例を示す写真である。 図4Aは、図3の第2の実施形態に係る質量分析装置において、検査対象の採取を自動化して行う様子を示す概略図である。 図4Bは、図3の第2の実施形態に係る質量分析装置において、検査対象の採取を自動化して行う様子を示す概略図である。 図5は、第3の実施形態に係る質量分析装置の一例を示す概略図である。 図6は、第3の実施形態に係る質量分析装置の他の一例を示す概略図である。 図7は、血液を単核球分離する処理を説明する概略図である。 図8は、解析装置の判定手段で用いるマススペクトルの情報に由来する情報について説明する概略図である。 図9は、本発明の解析装置の一例を示すブロック図である。 図10は、データ構造の一例を示すブロック図である。 図11は、本発明の解析装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。 図12は、本発明の解析装置における処理を流れの他の一例を示すフローチャートである。 図13は、測定データ(テキスト形式)の一例を示す図である。 図14は、図13に示すデータをマススペクトルの形で表現した一例を示す図である。 図15は、クロマトグラムの一例を示す図である。 図16は、図15のクロマトグラムの指定された時間帯におけるデータにより作成される代表マススペクトルの一例を示す図である。 図17は、代表マススペクトルの自動(半自動)作成における入力画面(条件設定画面)の一例を示す図である。 図18は、代表マススペクトルの自動(半自動)作成において表示されるクロマトグラムと代表マススペクトルの一例を示す図である。 図19は、作成した代表マススペクトルの登録における入力画面の一例を示す図である。 図20が、作成した代表マススペクトルのラベリングにおけるラベル入力画面をの一例を示す図である。 図21は、統計解析を行うマススペクトルデータの出力のための設定画面の一例を示す図である。 図22は、内標決定における設定画面の一例を示す図である。 図23は、内標の決定と、決定した内標によるマススペクトル評価の処理のための入出力画面の一例を示す図である。 図24は、統計解析処理の設定画面(入力画面)の一例を示す図である。 図25は、検定法によるマーカー探索によって出力されるファイルの一例を示す図である。 図26は、縮約法によって2主成分に縮約された結果(スコアプロット)の一例を示す図である。 図27は、検証法の結果を示す正誤表の一例を示す図である。 図28は、統計解析、検証の結果をまとめて示す出力画面の一例を示す図である。 図29は、本発明の質量分析システムを用いて血液中のがん細胞の検出確認試験を行った結果の一例を示す図である。 図30は、本発明の質量分析システムを用いて血液中のがん細胞の検出確認試験を行った結果の一例を示す図である。
(質量分析システム)
本発明の質量分析システムは、質量分析装置と解析装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
本発明の質量分析システムにおける質量分析装置により、血液中の検査対象に対し、簡便かつ迅速に、さらに精度高く、血液中の検査対象のプロファイル(分析結果)を取得することができる。
特に、検査対象に対し、抗体を添加するという従来行われてきたラベリングのための前処理を行わずとも、検査対象を直接イオン化し、生成したイオンを質量分析することで、血液中の検査対象のプロファイル(分析結果)を取得することができる。
また、本発明の質量分析システムによる質量分析の結果得られるマススペクトルを解析することにより、前記検査対象の血液中における存在状態を高精度に判定することができ、その結果、前記検査対象の存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定することができる。
つまり、本発明の質量分析システムにより、抗体を添加する(検出対象分子をラベリングする)という前処理なしに、検査対象自身がもっているプロファイル(分析結果)を取得することで、簡便、迅速、かつ高精度に、血液中における検査対象の検出を行うことができる。
例えば、検査対象がCTCである場合、抗体によるラベリングは行わずに、CTCを直接イオン化し、そのCTCの細胞自身がもっているプロファイル(分析結果)を利用することで、簡便、迅速、かつ高精度にCTCの検出を行うことができる。また、CTCに限らず、例えば、検査対象が脂質である場合には、本発明の質量分析システムにより、血液中の脂質の存在状態を検出することで、被検体が高脂血症等の脂質に由来した疾病であるか否かの疾病に該当する可能性を判定することができる。また、例えば、検査対象が糖質である場合には、本発明の質量分析システムにより、血液中の糖質の存在状態を検出することで、被検体が糖尿病等の糖質に由来した疾病であるか否かの疾病に該当する可能性を判定することができる。
(1.質量分析装置及び質量分析方法)
本発明の質量分析装置は、イオン化手段と、分析手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の質量分析方法は、イオン化工程と、分析工程と、含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の質量分析方法は、本発明の質量分析装置により好適に実施することができ、イオン化工程はイオン化手段により行うことができ、分析工程は分析手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
<イオン化手段及びイオン化工程>
イオン化工程は、被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化する工程であり、イオン化手段により実施される。
ここで、前記被検体としては、人間を含むあらゆる動物が対象となる。
<<検査対象>>
本発明の質量分析の対象は、血液中に存在する検査対象である。
ここで、血液は、血球成分(細胞性成分、血液細胞)、血小板、血漿成分(液性成分)などを含む。
前記血球成分は、赤血球、白血球、血小板などを含む。前記白血球は、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などを含む。前記リンパ球は、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)などを含む。
前記血漿成分は、水分、タンパク質、脂肪、糖、無機塩類、低分子代謝産物、外来分子などを含む。
前記検査対象としては、血液中のバイオマーカーであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド(oligo DNA)、オリゴリボヌクレオチド(oligo RNA)、脂質、糖質、ビタミン、電解質、低分子代謝産物などが挙げられる。ここで、バイオマーカーとは、生物指標をいい、ある疾病の存在や進行度が認識できる血液中で測定される物質をいう。
検査対象である前記細胞としては、例えば、血中循環腫瘍細胞(CTC)、赤血球、白血球などが挙げられる。
検査対象である前記タンパク質としては、例えば、アルブミン、ヘモグロビン、γ-グロブリン、フィブリノーゲン、アンチトロンビンIII、トランスフェリン、セルロプラスミン、成長因子を含むサイトカイン、ケモカインなどが挙げられる。
検査対象である前記脂質としては、例えば、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどが挙げられる。
検査対象である前記糖質としては、例えば、ブドウ糖、1.5AG(1.5アンヒドログリシトール)などが挙げられる。
検査対象である前記核酸としては、例えば、circulating normal DNA、circulating tumor DNA、non-coding RNA(miRNA、transfer RNA、ribosomal RNA等)などが挙げられる。
前記検査対象として、タンパク質と糖質とが結びついた、フルクトサミン、HbA1c(グリコヘモグロビン)などであってもよい。
また、前記検査対象として、酵素、ホルモン、腫瘍マーカーなどであってもよい。ここで、腫瘍マーカーとは、悪性腫瘍の指標となる物質をいう。
前記酵素としては、例えば、γ-GTP、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、アミラーゼなどが挙げられる。
前記ホルモンとしては、例えば、副腎皮質刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、プロラクトン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、アルドステロン、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、成長ホルモンなどが挙げられる。
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、AFP(α-フェトプロテイン)、CA19-9(シリアルルイスA糖類)、CA125(糖タンパク)、CEA(癌胎児性抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、SSC(扁平上皮癌関連抗原)などが挙げられる。
前記検査対象は、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていないことが好ましい。抗体を添加する前処理を行わないことで、検査対象の検出を簡便かつ迅速に行うことができる。例えば、人の血液中のCTCを検出する場合、抗体(ヒト抗体を除く)が添加されていないCTCに対して、イオン化工程を施すことが好ましい。
質量分析に供する検体試料としては、被検体から採取した血液をそのまま用いてもよいし、採取した血液に対し単核球分離処理を施し、単核球層を分離して、該単核球層を用いてもよい。
前記単核球分離処理の処理方法としては、単核球層を分離できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、Ficoll(Ficoll-Paque PLUS、GEヘルスケアジャパン株式会社製)等のリンパ球分離用媒体を用いた一般的な分離法が挙げられる。
Ficollにより血液を分離した場合、例えば、図7で示すように、各層に分離される。そこで、本発明の質量分析方法で用いる検体試料としては、分離された層を用いるのが好ましい。
例えば、検査対象がCTCの場合、分離された層のうち、単核球層を用いるのが好ましい。
図7において、符号aは分離溶液(例えば、リンパ球分離溶液(比重:1.119))を、bは血液を、cは血漿を、dは単核球(リンパ球、単球)、血小板を、eは赤血球、顆粒球を示す。
検体試料として、採取した血液をそのまま用いる場合、血液を採取してからイオン化までに要する時間は短時間である。しかし、単核球分離処理を行った場合は、単核球分離の処理時間が加算されるが、この場合であっても、血液を採取してからイオン化までに要する時間は概ね60分以内である。これは、従来、例えばCTCの検出のために抗体を添加する前処理で要していた処理時間に比べるとはるかに短い時間である。
採取した血液をそのまま検体試料として用いる方が、処理は簡便で時間も短くて済むため好ましい。一方、血液から単核球層を分離し、その単核球層を検体試料として用いる方が、より精度よく検出するという観点からは好ましい。したがって、単核球分離処理を施すか否かは、検査対象の種類やイオン化手段の具体的な形態の違い(イオン化手段の具体的な形態については、後述する)を考慮し、適宜判断するとよい。
例えば、単核球分離処理を行い、分離した単核球層を検体試料として用いる場合には、本発明の質量分析装置として、下記<第1の実施形態>又は下記<第2の実施形態>の項で記載しているイオン化手段を有する質量分析装置を用いることができる。
また、例えば、単核球分離処理を行わず、採取した血液のままを検体試料として用いる場合には、本発明の質量分析装置として、下記<第3の実施形態>の項で記載しているイオン化手段を有する質量分析装置を用いることができる。
前記イオン化手段としては、例えば、アンビエントイオン化法を用いた手段が挙げられる。アンビエントイオン化法とは、通常環境下(例えば、常温、大気圧環境下)で検体試料を直接気相イオン化する手法である。
本発明では、アンビエントイオン化法の一つの手法であるエレクトロスプレーイオン化法が好ましく挙げられる。また、以下に記載のライン式イオン化法も好ましく挙げられる。
前記イオン化手段の具体的な態様として、以下の場合を挙げることができる。
(1)針状部材、電源、及びイオン収集部材を有する態様(以下、探針エレクトロスプレーイオン化法(Probe Electrospray Ionization:以下、「PESI」と略することもある)と称する)を用いたイオン化手段、(2)第1の管状部材、第2の管状部材、電源、及びイオン誘導部材を有する態様(以下、リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法(Remote Sampling Electrospray Ionization)と称する)を用いたイオン化手段、(3)線状部材、及びイオン化部材を有する態様(以下、ライン式イオン化法と称する)を用いたイオン化手段がある。
尚、上記(1)から(3)のイオン化手段は、いずれも検体試料をイオン化させてから質量分析の判断結果を得るまでの時間がごく短時間で済む。
本発明の質量分析装置を用いると、例えば、検体試料をイオン化させたら、約5分以内には質量分析の判断結果を得ることができ、リアルタイムな分析が可能となる。
<<探針エレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段>>
探針エレクトロスプレーイオン化(PESI)法を用いたイオン化手段は、針状部材と、電源と、イオン収集部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
PESI法を用いたイオン化手段は、検体試料を針状部材で採取した後、直ちにイオン化が行われるため、リアルタイムな質量分析が可能である。
このようなPESI法を用いたイオン化手段としては、例えば、国際公開第2010/047399号パンフレット等に開示されたものを用いることができる。
前記針状部材は、検体試料に先端を接触乃至刺入させて検体試料や検体試料に含まれている検査対象を採取するために使用する。
前記電源は、針状部材の先端から採取した検体試料や検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるため、前記針状部材に電圧を印加するために使用する。
前記イオン収集部材は、生成した前記イオンを収集するために使用する。
PESI法を用いたイオン化手段では、針状部材を移動させて、針状部材の先端を検体試料に接触乃至刺入させ、針状部材の先端に検体試料の一部を捕捉する。
針状部材の先端をごく細い形状としておけば、検体試料表面上でごく微小の範囲の検体試料が針状部材の先端に捕捉される。
先端に検体試料が付着した針状部材に高電圧が印加されると、針状部材の先端の検体試料に強い電場が作用し、エレクトロスプレー法により検体試料の分子が離脱しながらイオン化する。
PESI法を用いたイオン化手段の利点としては、(i)大気圧下で測定が可能である、(ii)試料が非常に微量で十分である(数ピコリットル)、(iii)低侵襲性である、(iv)検査対象の前処理が不要である、(v)塩や界面活性剤の影響を受けにくい、(vi)リアルタイム分析が可能である、などが挙げられる。
-針状部材-
針状部材は、検体試料に先端を接触乃至刺入させて検体を採取(捕捉)する部材である。
針状部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
針状部材の形状としては、エレクトロスプレー現象を生じることができる先端形状とすることができる。
針状部材の構造としては、中実構造、単層構造、複数層構造などが挙げられる。
針状部材の大きさ(針の太さ等も含む)としては、先端に捕捉させたい検体試料の量や検査対象の種類により、適宜選択することができる。
材質として、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられ、更にこれらの表面加工として、電界研磨、酸処理、化学処理により親水性あるいは疎水性を調整してもよい。
針状部材としては、具体的には、ステンレス鋼製の鍼灸針を加工したものなどを用いることができる。
-電極-
電極は、針状部材の先端に検体試料が付着された状態で針状部材に電圧を印加する部材である。
電圧の目安は、2kV~3kVであり、針状部材に高電圧を印加することにより、エレクトロスプレーを生じさせることができる。
-イオン収集部材-
イオン収集部材は、針状部材の先端近傍に設けられ、針状部材に付着した検体試料や検査対象から生成したイオンを収集する部材である。
イオン収集部材としては、例えば、イオン収集・輸送チューブを用いることができる。イオン収集・輸送チューブの内径は1mm~5mmであることが好ましい。
イオン収集・輸送チューブの先端の開口部は、針状部材の移動を邪魔しない大きさ、形状に形成することができ、先端の開口部がラッパ状に広がった形状であることがイオンの収集効率の点から好ましい。
イオン収集部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、検体試料に応じて適宜選択することができる。
この際、イオン収集・輸送チューブの開口部を針状部材の先端と近接した位置とすることにより、生成したイオンの吸引を効率よく行うことができる。
-その他の部材-
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御部材などが挙げられる。
制御部材としては、各部材の動きを制御できる部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
<<リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段>>
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段は、第1の管状部材と、第2の管状部材と、ガス流発生部材と、電源と、イオン誘導部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
前記第1の管状部材は、一端を検体試料に接触させて、検体試料や検体試料に含まれている検査対象を採取するために使用する。また、他端を採取した前記検体試料や前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用する。
前記第2の管状部材は、前記第1の管状部材を同心で挿入するために使用する。
前記ガス流発生部材は、前記第2の管状部材にガスを高速に流すために使用する。
前記電源は、前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加するために使用する。
前記イオン誘導部材は、生成した前記イオンを前記質量分析手段へ導くために使用する。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段では、第1の管状部材の一端を検体試料に接触させ、第1の管状部材の一端に検体試料を捕捉する。
第1の管状部材は、第2の管状部材内に同心で挿入されている。第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガスが高速で流れている。
高速ガス流は、ガス流発生部材により発生する。
第2の管状部材内の高速のガス流によって生成されるベンチュリ効果により、第1の管状部材の他端付近の圧力は減圧状態となる。第1の管状部材の一端と他端の端部間の圧力差により、検体試料が吸引され、第1の管状部材の一端から採取された検体試料は、第1の管状部材の他端側へ移動する。
第2の管状部材内の高速ガス流は、検体試料に対し吸引作用を示すとともに、帯電した液滴の噴霧を補助し、安定したイオン生成にも役立つ。
第1の管状部材の他端と、エレクトロスプレーが生成される領域に前記他端と対向する位置に配される対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧が印加されると、前記他端の検体試料に強い電場が作用し、エレクトロスプレー法により検体試料の分子が離脱しながらイオン化する。
例えば、第1の管状部材の他端は、グランド又は検体試料に適した任意の電位で電気的に保持される。第1の管状部材の他端と対向電極との間で電位差が生じ、他端に高電位が印加されたときエレクトロスプレーが生成されるため、例えば、第1の管状部材をグランドの電位とし、対向電極に約-3kVの負電位を印加する。そうすると、第1の管状部材に人がふれても安全であり、他端には高電位が印加されるため、エレクトロスプレーが生成される。
生成したイオンは、イオン誘導部材を経由して質量分析計へと運ばれる。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析装置では、第1の管状部材が検体試料に接触するとほぼ直ちに質量分析計による質量分析結果が得られる。
リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段の利点としては、上述したPESI法を用いたイオン化手段の利点に加え、多数のサンプルを連続的に測定できるという利点もある。検体試料を取得し、エレクトロスプレーによりイオンの噴霧を行う作業を一つの側だけで行うとすると、イオン化工程の間に、検体試料を取得する工程を入れ、これらの工程を繰り返し行うことになる。一方、一つの側から検体試料を取得し、直ちに他の側からエレクトロスプレーによりイオンの噴霧を行う場合には、イオンの噴霧で中断されることなく、連続して検体試料の取得を行うことができる。検体試料の取得に同期して、他の側ではイオンが噴霧され、瞬時に質量分析に供されるため、連続して、検体試料の測定が可能となる。これにより、より迅速な測定が可能となる。
また、本発明のリモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析装置を用いれば、複数のサンプルに対し、イオン化工程を自動化することもできる。
例えば、図3に示すように、3軸電動自動サンプリング装置を構築することができる。
サンプルステージは、水平(x-y)軸の2つのリニアアクチュエータによって駆動させる。サンプリングプローブである第1の管状部材の位置は、垂直(z)軸の別のリニアアクチュエータによって制御させる。
サンプルステージには、複数の検体試料が配された96ウェルのサンプルプレートが載っている。
図4Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、検体試料に接触させると、ほぼ直ちに質量分析計による質量分析結果が得られる。
次に図4Bで示すように、第1の管状部材を上方の位置に移動させ検体試料から離す。96ウェルのサンプルプレートの位置を変更する。
また図4Aで示すように、第1の管状部材を下方の位置に移動させ、次の検体試料に接触させ、その検体試料の質量分析結果を得る。
この繰り返し工程をコンピュータで制御することにより、連続サンプリングの自動化質量分析装置を構築することができる。
-第1の管状部材-
第1の管状部材は、検査対象に一端を接触させて検査対象を採取し、また、他端から採取した検体試料や検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させる部材である。
第1の管状部材の形状、構造、大きさ(長さ、太さ等)、材質等については、特に制限はなく、通過させる検体試料の量や検体試料の種類を考慮して、適宜選択することができる。
但し、第1の管状部材の長さは、検体試料が容易に吸引され、静電作用および毛細管作用によってイオンが噴霧されやすいよう、ある程度短いほうがよい。また、第1の管状部材の太さは、検体試料の詰まりが生じないよう、ある程度太いほうがよい。
第1の管状部材の管の長さとしては、1cm~5cmが好ましい。また、第1の管状部材の内径としては、0.1mm程度、外径としては、0.2mm程度が好ましい。
材質としては、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられる。
-第2の管状部材-
第2の管状部材は、第1の管状部材を同心で封入するための部材である。
第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガスが高速に流れている。
第2の管状部材の形状、構造、大きさ(長さ、太さ等)、材質等については、特に制限はなく、適宜選択することができるが、第2の管状部材の内径は、第1の管状部材の外径、及び通過させるガスの量や速度を考慮し、適宜選択するとよい。
また、ガスの逆流を生じさせぬよう、第1の管状部材の他端は、第2の管状部材からわずかに突出していることが好ましい。よって、例えば、第1の管状部材の他端が0.5mmから1mm程度、第2の管状部材より突出するように、第2の管状部材の長さを適宜選択するとよい。
第2の管状部材の管の長さとしては、1cm~3cmが好ましい。また、第2の管状部材の内径としては、0.3mm~0.5mm、外径としては、1.6mm程度が好ましい。
材質としては、耐久性があり、雑菌等による汚染が少なく、滅菌処理可能なものが好ましく、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、プラチナ、金、銀又はこれらによりメッキ加工したものなどが好適に挙げられる。
-電極-
電極は、第1の管状部材の他端と、エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する部材である。
例えば、第1の管状部材をグランドの電位とする場合には、対向電極に3kV程度の負電位を印加すると、第1の管状部材の他端に高電圧が印加されるため、エレクトロスプレーを生じさせることができる。
-ガス流発生部材-
ガス流発生部材としては、気体を圧縮して圧力を高め、連続的に送り出す装置であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。取り扱う気体の種類、圧縮方式、装置の構造等は、適宜選択することができる。
例えば、ガス流発生部材としてエアーコンプレッサーを用いることができる。これにより、例えば、第2の管状部材内に高速の空気流を発生させることができる。第1の管状部材の太さと第2の管状部材内を流れる空気の流速によって、検体試料の移動速度を調整することができる。したがって、検体試料の移動速度が所望の範囲となるよう、空気の流速を調整するとよく、空気の流速が所望の範囲となるよう、ガス流発生部材の種々の条件を設定するとよい。
第2の管状部材内の空気流の速度としては、例えば、2L/min~5L/minが好ましい。
-イオン誘導部材-
イオン誘導部材は、生成したイオンを質量分析手段へ導くため部材である。
イオン誘導部材としては、例えば、イオン輸送チューブを用いることができる。
イオン輸送部材の形状、構造、大きさ、材質等については、特に制限はなく、検査対象に応じて適宜選択することができる。
イオン輸送部材の材質としては、例えば、可撓性のポリマーチューブを選択することができる。
イオン輸送チューブの長さとしては、50cm~100cmが好ましい。また、内径は1mm~5mmであることが好ましい。
-その他の部材-
その他の部材としては、上記<<探針エレクトロスプレーイオン化法を用いた手段>>の項で説明したとおりである。
<<ライン式イオン化法を用いたイオン化手段>>
ライン式イオン化法を用いたイオン化手段は、線状部材と、イオン化部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有する。
線状部材は、限界希釈法を用いて調製した試料液を用い、前記試料液の液滴を搬送するために使用する。ここで、試料液は、検体試料や検体試料に含まれる検査対象を含有する液状の試料(サンプル)をいう。
イオン化部材は、線状部材に付着した前記液滴から前記検査対象に由来するイオンを生成させるために使用する。
線状部材に試料液の液滴を付着させるには、試料液供給素子を用い、前記試料液を液滴の単位で線状部材に滴下することにより行う。好ましくは、1液滴ずつ線状部材に滴下する。試料液供給素子の説明は、後述する。
前記試料液は、限界希釈法を用いて調製されていることが好ましい。これにより、1細胞/液滴の滴下を可能とし、1細胞ごとのプロファイル(ここでは、質量分析の結果)を取得することができる。
滴下された試料液の液滴は、駆動部材(例えば、ローラ)により線状部材を移動させることにより、イオン化部材まで搬送される。
イオン化部材により線状部材に付着した液滴はイオン化され、生成されたイオンは、直ちに質量分析に供される。
-線状部材-
線状部材の材質、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、検査対象に応じて適宜選択することができる。
線状部材の材質としては、例えば、金属線材、天然繊維、化学繊維などが挙げられる。
金属線材としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、タングステン、ピアノ線、コバルト系合金線材、擬弾性を示す合金線材(超弾性合金を含む)、スチール線、真鍮線、銅線、アルミニウム線などが挙げられる。
天然繊維としては、例えば、綿(コットン)、麻、マニラ麻、やし、いぐさ等の植物繊維、毛(ウール)、絹(シルク)ダウン、フェザー等の動物繊維などが挙げられ、これらを紡績した天然繊維糸が用いられる。
化学繊維としては、レーヨン、キュプラ、カゼイン繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系、ポリエーテルエステル系、ポリウレタン系等の合成繊維などが挙げられ、これらを紡糸した化学繊維糸が用いられる。
-イオン化部材-
イオン化部材は、イオン化法により、線状部材に付着した試料液の液滴からイオンを生成する部材である。
イオン化法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、APCI(Atomospheric Pressure Chemical Ionization)法、EI(electron ionization;電子イオン化)法、CI(chemical ionization;化学イオン化)法、DEI(desorption electron ionization;脱離電子イオン化)法、DCI(desorption chemical ionization;脱離化学イオン化)法、FAB(fast atom bombardment;高速原子衝撃)法、FRIT-FAB(FRIT-fast atom bombardment;フリット高速原子衝撃)法、ESI(electrospray ionization;エレクトロスプレーイオン化)法、MALDI(matrix-assisted laser desorption ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法などが挙げられる。これらの中でも、APCI法、ESI法が特に好ましい。
-その他の部材-
その他の部材としては、上記<<探針エレクトロスプレーイオン化法を用いた手段>>の項で説明したとおりである。
また、ライン式イオン化法を用いたイオン化手段においては、さらに試料液供給素子、駆動部材、前処理部材、後処理部材を有していてもよい。
-試料液供給素子-
試料液供給素子としては、試料液を液滴ずつ滴下することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ピエゾ端子を使用することができる。
-駆動部材-
駆動部材は、線状部材を一定方向に移動させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラが挙げられる。
駆動部材による線状部材の移動スピードの調整は適宜行うことができる。
-前処理部材-
試料液供給素子による試料液の液滴の線状部材への付着からイオン化までの時間を利用して、試料液を前処理することができる。この前処理としては、例えば、除タンパク、塩除去の処理などが挙げられる。
-後処理部材-
イオン化工程を経た線状部材に対し、イオン化部材から試料液供給素子へ移動する間に後処理を施してもよい。この後処理としては、線状部材を洗浄するための洗浄、加熱、化学処理等の各処理が挙げられる。
<分析手段及び分析工程>
分析工程は、イオン化工程により生成したイオンを質量分析する工程であり、分析手段により実施される。
質量分析に用いる質量分析計としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(直交型)飛行時間型質量分析計、(リニア)イオントラップ型質量分析計、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、及びこれらの質量分析計を適宜組み合わせた分析計などが挙げられる。
質量分析においては、検体試料をイオン化し、そのイオンを質量電荷比(m/z)の違いにより分離する。したがって質量分析装置からは質量電荷比を横軸にとり、縦軸にイオン強度をとったマススペクトルを表すための基礎となるデータが生データとして出力される。
ここで、本発明の質量分析装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
<第1の実施形態(PESI法を用いたイオン化手段の実施形態)>
図1は、第1の実施形態として、探針エレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図1の質量分析装置100は、イオン化手段101と、分析手段102とを備える。
イオン化手段101は、針状部材1と、電源7と、パーソナルコンピュータ(PC)と、イオン収集部材8とを有している。図1中、5はリニアアクチュエータ、11は吸引装置を示す。また、図1中、2は針状部材1が上下に移動する様子を、3は検体試料(サンプル)を、4はエレクトロスプレーによりイオンが生成されている様子を、9は生成されたイオンを示す。
この第1の実施形態では、針状部材1として、ステンレス鋼製の鍼灸針を用いている。
針状部材1は、リニアアクチュエータ5の作動によって、検体試料に対して上下動可能とされている。
針状部材1が下方の位置(下位端)に移動すると、検体試料に接触乃至刺入することで検体試料が針状部材1の先端に付着する。
針状部材1が上方の位置(上位端)に移動すると、電源7から高電圧が印加され、針状部材1の先端からエレクトロスプレーが発生する。
イオン収集部材8としては、内径1mm~5mmのイオン収集・輸送チューブ(帯電を防止するために内面に平滑処理が施されたフレキシブルな樹脂製)を用いており、吸引装置11の作動により、エレクトロスプレーで発生したイオンを吸引する。
吸引されたイオンはイオン開口部10を経由して質量分析計12に運ばれる。
針状部材1の先端とイオン収集・輸送チューブ8の開口部との間には電圧がかかっているので、発生したイオンはイオン収集・輸送チューブ8の開口部で吸引される。
図1中12は、質量分析計であり、イオン化手段101により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第1の実施形態では、質量分析計として、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、及び飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
PESIでは、リニアアクチュエータ5と電源7とはコントローラー(不図示)により同期をとって制御しているが、サンプリングしていない時のみに電源から電圧をかける構成とすることにより、コントローラーの使用を省略することができる。これにより、装置の簡略化が図れると共に、感電を防止でき、安全性が向上する。
次に、イオン化の際の動作について説明する。
針状部材1の位置を下げると、針状部材1の先端は検体試料に接触乃至刺入する。針状部材1の位置を上げると、電圧が印加される。これにより、針状部材1の先端から、検体試料又は検査対象に由来したイオンが発生する。発生したイオンはイオン収集部材8としてのイオン収集・輸送チューブの開口部から直ちに吸引され、質量分析計12に運ばれる。
<第2の実施形態(リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段の実施形態)>
図2Aは、第2の実施形態として、リモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図2Aの質量分析装置200は、イオン化手段201と、分析手段202とを備えている。
イオン化手段201は、第1の管状部材21と、第2の管状部材22と、ガス流発生部材25と、電源20と、イオン誘導部材28とを有している。図2A中、18は検体試料(サンプル)、19は生成された正イオン、23は管状部材の保持部材、24はエレクトロスプレーによりイオンが生成される第1の管状部材21の他端、26は対向電極、27は絶縁部材、29は質量分析計を示す。
また、図2Aの第1の管状部材21の一端側の拡大写真を図2Bに示す。
第1の管状部材21としてステンレス鋼を用いる。
管状部材の保持部材23と対向電極26とは、絶縁部材27により絶縁されている。この第2の実施形態では、絶縁部材27として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いる。
第1の管状部材21は、検体試料に対して上下動可能である。
第1の管状部材21は、第2の管状部材22内に同心で挿入されている。
第2の管状部材の内側と第1の管状部材の外側との隙間部分には、ガス流発生部材(ここでは、エアーコンプレッサーを用いる)により高速の空気流が発生している。
この第2の実施形態では、第1の管状部材21の外径は0.2mm、第2の管状部材22の内径は0.5mmとする。第1の管状部材21と第2の管状部材22の隙間は、0.15mmであり、この隙間を空気が高速で流れている。
第1の管状部材21を下方の位置(下位端)に移動すると、第1の管状部材21の一端が検体試料に接触することで検体試料は第1の管状部材21内に注入される。
第2の管状部材22内の高速の空気流によって生成されるベンチュリ効果により、検体試料の吸引がスムーズに行われ、第1の管状部材21の一端から採取された検体試料は、第1の管状部材の他端24へと移動する。
第1の管状部材21の他端24と、エレクトロスプレーが生成される領域に前記他端24と対向する位置に配される対向電極26との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電源30から電圧が印加される。この第2の実施形態では、第1の管状部材21をグランド電位とし、対向電極26に-3kVの電圧を印加する。それにより、第1の管状部材21の他端24からエレクトロスプレーが発生する。
生成されたイオンは、空気流の流れに乗って、イオン誘導部材28を経由して質量分析計29へ供給される。ここで、この第2の実施形態では、イオン誘導部材28として、内径3mmの可撓性ポリマーチューブを用いる。
第1の管状部材21を上方の位置(上位端)に移動すると、検体試料の採取は中止する。
質量分析計29では、イオン化手段201により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第2の実施形態では、質量分析計として、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、及び飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
<第3の実施形態(ライン式イオン化法を用いたイオン化手段の実施形態)>
図5は、第3の実施形態として、ライン式イオン化法を用いたイオン化手段を有する質量分析装置の一例を示す概略図である。
図5の質量分析装置300は、イオン化手段301と、分析手段302とを備えている。
イオン化手段301は、試料液供給素子31と、検体試料である試料液の液滴32と、線状部材33と、駆動部材34と、イオン化部材35と、を備えている。
分析手段302は、質量分析計36を備えている。
線状部材33は、試料液の液滴32を搬送する。
線状部材に試料液の液滴を付着させるには、試料液供給素子31を用い、1液滴ずつ線状部材に滴下することにより行う。この第3の実施形態においては、試料液供給素子として、ピエゾ端子を使用する。
駆動部材34である駆動ローラにより線状部材33を移動させ、試料液の液滴は、イオン化部材35まで搬送される。
イオン化部材35を用いて、前記線状部材に付着した前記液滴32をイオン化させる。この第3の実施形態においては、イオン化部材35としては、標的分子によってESIあるいはAPCIを切り替えて用いている。
イオン化部材35により生成された試料液や検査対象に由来するイオンは、直ちに質量分析に供される。
質量分析計36では、イオン化手段301により生成したイオンをリアルタイムに分析する。この第3の実施形態では、質量分析計として、四重極質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオントラップ型質量分析計、及び飛行時間型質量分析計のいずれかを用いている。
(2.解析装置及び解析方法)
本発明の解析装置は、判定手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の解析方法は、判定工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の解析方法は、本発明の解析装置により好適に実施することができ、判定工程は判定手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
質量分析解析プログラムによる処理は、解析装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行される。
本発明の解析装置により、本発明の質量分析装置により得られた質量分析の結果をもとに被検体が血液中における検査対象の存在状態に由来する疾患に該当するか否かの可能性を判定することができる。
例えば、検査対象がCTCである場合、CTCを検出することにより、癌の早期発見や再発予測、癌細胞の抗がん剤に対する感受性などの臨床情報を入手することができる。血液単位あたりのCTCの個数がわかれば、癌の診断、あるいは予後の診断に結びつけることができる可能性がある。
また、CTCに限らず、例えば、検査対象が脂質である場合、血液中の脂質の存在状態がわかれば、高脂血症等の脂質に由来した疾病に該当する可能性を判定することができる。また、例えば、検査対象が糖質である場合、血液中の糖質の存在状態がわかれば、糖尿病等の糖質に由来した疾病に該当する可能性を判定することができる可能性がある。
<判定工程及び判定手段>
判定工程は、マススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する工程であり、判定手段により実施される。
上記疾患陽性のパターンとしては、例えば、腫瘍陽性のパターンなどが挙げられる。
本発明の解析装置では、質量分析装置から出力されるスキャン生データに基づいて、適切な代表マススペクトルを作成する。代表マススペクトルは複数となる場合もある。この代表マススペクトルデータを使い、マススペクトルデータ全体の形状、あるいは図8の(i)で示すように検査対象に特有のマーカーピーク(例えば、図8(i)中、矢印で示すピーク)を見つけ、これらのピークを判定することにより、血液における検査対象の存在状態を把握することができる。
例えば、検査対象を含まない正常な検体試料が示すマススペクトルと、検査対象を含む非正常な検体試料が示すマススペクトルとでは、マススペクトルが示す形状に違いがあることから、これらのマススペクトルが示す情報と、測定した結果のマススペクトルとを比較すれば、測定した被検体における検査対象の存在状態を知ることができる。
例えば、血液における検査対象の存在状態が所定の許容範囲を超えている、つまり健常者が示すマススペクトルの形状やマーカーピークとは異なり、疾患をかかえる非正常な検査対象を有する患者が示すマススペクトルの形状やマーカーピークに近い測定結果がでた場合には、被検体は、係る疾患に該当している可能性が高いと判断できる。
この場合、マススペクトルの形状やマーカーピークが示す情報に対する測定結果の近さの程度により、疾患を抱えているか否かの2値の判定のみならず、疾患を発症している可能性の確からしさ(確率)も判定することができる。
また、本発明の解析装置では、上述した代表マススペクトルの情報を用いるだけでなく、図8の(ii)で示すように、マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報を用いて、血液における検査対象の存在状態を把握してもよい。
図8で示すように、(i)で示すマススペクトルの情報と、(ii)で示す学習により得られたマススペクトルの解析結果の情報とを併用して、血液における検査対象の存在状態を把握してもよい。
また、本発明の解析方法は、被検体の血液の1回分の測定試料に対し、1つの疾患に該当するか否かを判定するだけでなく、一度に複数の疾患に該当するか否かを判定することができる。つまり、本発明の解析方法により、被検体の血液の1回分の測定試料に対し得られた質量分析の結果をもとに、複数の疾患に該当するか否かの判定を行なってもよい。この場合には、一度の解析により複数の疾患に該当する可能性を判定することができる。
本発明の解析方法を用いて、被検体が血液における検査対象の存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する具体的態様について、以下説明する。
(a)例えば、がん患者からの血液の質量分析結果を予め取得し、それらデータを分析することで、血液中のCTCの存在を判定する指標を用意しておく。ここで、指標としては、マススペクトルの特有のマーカーピーク、マススペクトルの全体のピーク形状、健常者のプロファイルの分布とがん患者のプロファイルの分布とを区別する基準等が挙げられる。
そして、事前に用意した指標と、被検体の測定結果とを比較することにより、被検体のCTCの存在の可能性を判定することができる。
尚、予め用意しておくがん患者の質量分析結果としては、CTCの質量分析結果のみに限られず、原発及び転移腫瘍組織の質量分析結果を使用することもできる。
(b)また、健常者が示すマススペクトルが示すデータと、非正常な検査対象を有する患者のマススペクトルデータとでは、差異があることから、上記(a)のように事前に指標となるデータを保有する場合でなくても、健常者が示すマススペクトルデータと違う測定結果が得られた場合には、何らかの疾患に該当する可能性があると疑うことができる。
(c)データベースに記憶されている事前に用意されたデータは、新しい測定結果が得られれば、逐次データを更新することができる。蓄積データを増やし、指標となる情報を更新することで、より正確な判定が行えるデータベースを構築することができる。
(d)また、被検者自身の測定結果を蓄積していき、被検者の測定データをその被検者の過去のデータと比較するようにしてもよい。それにより、被検者における検査対象の経過観察が行え、ひいては被検者の疾患の早期発見、最適な治療法の選択につなげることができる。
上述したマススペクトルを作成、及びそのマススペクトルを学習により解析する方法としては、例えば、特開2016-200435号公報に開示されている方法を用いることができる。
質量分析装置から出力されるスキャン生データに基づいて、代表マススペクトルを適切に自動的に作成するマススペクトル解析方法、及び作成したマススペクトルを各学習法を用いて解析する解析方法について、以下詳しく説明する。
尚、下記説明では、測定対象が本発明の対象とする血液中の検査対象(例えば、CTC)を用いた例では記載されていはいないが、解析システムの動作としては同じである。下記に記載のコンピュータシステムの動作を本発明の解析装置でも同様に適用することができる。
<本発明の解析装置の具体的解析システム>
本発明の解析装置において、代表マススペクトルを作成するには、例えば、測定データ入力処理と、最良時間帯検出処理と、代表マススペクトル作成処理と、を行う。
また、作成されたマススペクトルを学習して解析するには、以下に記載の各学習法を用いる。
<<測定データ入力処理及び測定データ入力部>>
測定データ入力処理は、質量電荷比、イオン強度及び測定時間の三次元測定データを入力する処理であり、測定データ入力部により実施される。
三次元測定データとは、質量分析部(本発明の質量分析装置)により得られる一般にイオンクロマトグラムといわれるものであり、所定時間(スキャニングインターバル)ごとに質量電荷比とイオン強度との関係を示すデータ(スペクトルとして表現可能なデータ)が得られる。したがって、上記測定時間はスキャン回数で表現され得る。
三次元測定データは、一般的には、時間軸(スキャン回数軸)上でイオン強度総和を表すデータ(クロマトグラム)に変換される。このクロマトグラムには、イオン強度を測定データ中の全質量電荷比にわたって積算した全イオン強度(TIC)、質量電荷比の特定の範囲にわたってイオン強度を積算した隔合イオン強度(MIC)、特定の質量電荷比のイオン強度を示す単一ピークイオン強度(EIC)などがある。MICにおける質量電荷比の特定の範囲、EICにおける特定のピークはユーザが指定するようにしてもよいし、最大値を示す範囲又はピークを自動的に決定してもよい。これらの範囲や特定のピークを変化させて試行錯誤してもよい。
<<最良時間帯検出処理及び最良時間帯検出部>>
最良時間帯検出処理は、入力測定データの指定された質量電荷比に関し、イオン強度の総和が最大となる時間帯を算出する処理であり、最良時間帯検出部により実施される。
<<代表マススペクトル作成処理及び代表マススペクトル作成部>>
代表マススペクトル作成処理は、検出された最良時間帯の入力測定データのイオン強度に基づいて代表マススペクトルを作成する処理であり、代表マススペクトル作成部により実施される。
最良時間帯検出処理及び最良時間帯検出部並びに代表マススペクトル作成処理及び代表マススペクトル作成部により、最も安定し、サンプルの特徴を最もよく表していると考えられる時間帯の測定データに基づいて、代表マススペクトル(一般には、質量電荷比を横軸にとり、縦軸に、上記時間帯におけるイオン強度の和(又は平均値)がとられる)が作成されるので、その後の適切な解析が担保される。
代表マススペクトルを作成する過程で算出される上記TIC、MIC、EIC(クロマトグラム)やこれらから得られる代表スペクトルを表示装置に表示すると、ユーザはこれをみながら、上記の質量電荷比の範囲(MICの場合)、特定のピーク(EICの場合)、上記の時間帯、その他のパラメータを適宜変更することができる。
解析装置は、入力された測定データの中から、最良時間帯を検出するための対象となるデータ範囲を定める条件を設定する条件設定部を更に有することが好ましい。
また、解析装置は、検出された最良時間帯及び作成された代表マススペクトルを表示するマススペクトル表示部を更に有することが好ましい。
更に、解析装置は、作成された代表マススペクトルにラベル情報を付加して記憶するマススペクトル蓄積部を更に有することが好ましい。
質量分析部(本発明の質量分析装置)から出力される測定データには、日付と識別符号(ID)程度が付加されているにすぎない。そこで、作成した代表スペクトルに、ユーザが理解可能、理解容易なより豊富なラベル情報を付加して記憶しておくと、後におけるマススペクトルの管理、編集(グルーピングなど)、読出しを容易に行うことができるようになる。ラベル情報はユーザが理解できるものであれば何でもよいが、ユーザの組織、計画、行為に関する情報、サンプルに関する情報、サンプルを提供した人、物、場所、日時、時間、質量分析部における測定条件、測定環境等に関する情報などが含まれる。
解析装置は、作成した(又は既に記憶されている)マススペクトルの評価機能を持つ。この評価機能は、上述した代表マススペクトルの自動(半自動)作成機能を持つ解析装置に備えるようにしてもよいし、代表スペクトル自動(半自動)作成機能を持たない解析装置に備えるようにしてもよい。
マススペクトルの評価のためには、評価の対象となるマススペクトル群(1つのマススペクトルも含む)に加えて、評価の基準となる内標を作成するためのマススペクトル群が存在することが前提である。これらのマススペクトルを記憶しているマススペクトル蓄積部が存在する。評価の対象となるマススペクトルは、内標作成のためのマススペクトル群の記憶部とは別の記憶部(例えば、コンピュータのワークエリア)に記憶されていてもよい。これらの記憶装置をすべて含めてマススペクトル蓄積部という。
解析装置は、多数の作成されたマススペクトルを蓄積しているマススペクトル蓄積部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから内標作成のための特定の第1群のマススペクトルを指定する第1の指定部、指定された第1群のマススペクトルに基づいてイオン強度が高くかつ変動の少ない(イオン強度が所定値より高く(又は以上)、かつその変動が所定範囲以内の)1又は複数のピークを選定する内標候補作成部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから評価対象とすべき第2群のマススペクトル(1つのマススペクトルも含む)を指定する第2の指定部、及び内標候補作成部によって作成された内標候補のうちの1又は複数のピークを内標として第2群内の各マススペクトルの良否を判定する良否判定部を備えているものである。
第1群のマススペクトルは、ユーザによって、又は解析装置によって良好なものと判定されたマススペクトルの集まりであることが好ましい。特定の1又は複数のピークが内標として定められると、第2群のマススペクトルの対応するピークが内標を基準として、イオン強度が所定値以上でかつその変動が許容範囲内にあればそのマススペクトルは良好なものと判定される。それ以外のものは不良である。良好と判定されたマススペクトルは、管理、編集や後述する統計解析の対象として用いることができる。不良と判定されたものは再度、上述した代表マススペクトルの作成に戻って再作成が行なわれることが好ましい。
次に、統計解析機能について述べる。上述した代表マススペクトル作成機能とマススペクトル評価機能の両方を備えている解析装置、いずれか一方の機能を備えている解析装置、いずれの機能も備えていない解析装置のどれに対しても、以下に述べる統計解析機能を設けることができる。
統計解析には、その主なものとして、有意差検定、次元縮約、機械学習及び検証がある。そして、有意差検定にも具体的には多くの種類のものがあり、同様に次元縮約、機械学習、検証のそれぞれにも多くの種類のものが既に開発されている。
まず、有意差検定機能を備えている解析装置は、多数のマススペクトルのデータを記憶するマススペクトル蓄積部、複数種類の有意差検定法を選択可能に表示するとともに選択された有意差検定法についての所望の有意水準を入力可能な統計解析法入力部、マススペクトル蓄積部に蓄積されているマススペクトルから、選択された有意差検定法を適用すべきデータセット(特定の複数のマススペクトルの集まり)を指定するデータセット指定手段、及び統計解析法入力部に表示される複数種類の有意差検定法を実行するプログラムルーチンを有し、選択された有意差検定法を指定されたデータセットに対して実行する統計解析実行部を備え、この統計解析実行部は、群間で有意差があると判断されたピークを選出するものである。
次に、機械学習機能をもつ解析装置は、複数種類の機械学習法を選択可能に表示する統計解析法入力部、統計解析法入力部に表示される機械学習法を実行するプログラムルーチンを有し、選択された機械学習法を、所定のデータセットに対して、実行する統計解析実行部を備えるものである。
機械学習法は、複数種類の機械学習法を選択可能に表示するとともに、選択された機械学習法の入力を受付け、表示される機械学習法を実行するプログラムルーチンのうち、選択された機械学習法に関するプログラムルーチンを、所定のデータセットに対して、実行するものである。
このようにして、ユーザは、複数の機械学習法の中から所望の1つを選んで、学習を実行させることができる。ユーザは、複数の学習法を選んで、その結果を比較することができる。この比較には後述する検証法を用いることができる。
機械学習の対象となる上記所定のデータセットには、幾種類のものがある。
その一つ目は、多数のマススペクトルデータを記憶するマススペクトル蓄積部から、選択すべき学習法を適用すべきデータセットを指定して選択するものである。
その二つ目は、上述した有意差検定法により有意差ありと判定されたピークに学習法を適用するものである。
その三つ目は、マススペクトル蓄積部から選択したデータセット又は有意差検定により有意差ありと判定されたデータを、所定の次元縮約法により縮約して、縮約されたスコアのデータに対して学習法を適用するものである。
縮約法もまた、複数種類の縮約法を表示してその中から一つ又は複数個をユーザに選択させることができる。特に、縮約法と機械学習は関連するので、複数種類の縮約法と複数種類の学習法を表示し、ユーザによって選択されたものを、表示画面上で紐付けて明示するとよい。
少なくとも一つの交差検証法を選択可能に表示し、選択された機械学習法の学習結果を、選択された交差検証法により検証するようにするとよい。
交差検証法も複数種類表示してユーザに選択させるとよい。
有意差検定法、機械学習法、縮約法、交差検証法を複数種類ずつ選択可能に表示し、ユーザによってこれらの組合せを選択させて、各組合せごとに検証法によって検証してどの組合せが最適かを判断することもできる。コンピュータにすべての(又はデフォルトで選んで)組合せを実行させてどの組合せが最良であるかを検証法により検証させることもできる。その結果は表示される。このようにして、ユーザの主観によらずに客観的な組合せを選ぶこともできるし、判別可能なピークの提示等も可能となる。
ここで、図9は、本発明の解析装置の一例を示すブロック図である。この図9の解析装置は、以下に説明するようにプログラムされたコンピュータシステムによって実現される。
解析装置320は、機能的に分けると、コンピュータシステムの中枢で、代表マススペクトルの作成、内標に基づくマススペクトル評価、ラベリング、さまざまな統計解析処理、検証処理等を実行する処理部321、質量分析部310で得られたマススペクトルデータを入力する入力部322、解析処理等の処理結果、途中経過等を出力するとともに、ユーザインターフェイスとして用いられる出力部323、及び記憶部326から構成されている。なお、質量分析部310は、本発明の質量分析装置に該当する。
入力部322は、キーボード、マウス等の通常の入力装置に加えて、USBメモリ、CD-ROM等に記憶されたデータを読込む媒体リーダ、有線、無線を問わず通信によりデータ(命令を含む)を受信する通信装置等を含む。
出力部323は、入力部322と表示画面の一部を共有してもよい。出力部323は、各種データ(マススペクトルを含む)のグラフ、その他のデータを見易い形態で表示するとともに、ユーザインターフェイスとして各種入力、設定画面を表示する表示部324、各種データや処理結果を印刷して出力するプリンタ325を有し、更に明示的な図示は省略されているが、各種データ等を記憶媒体に書込む媒体ライタ、通信(送信)により出力する通信装置(入力部322の通信装置と兼用してもよい)を有する。
記憶部326は、入力されたマス(質量)スペクトルデータの一時格納、代表マススペクトルデータの蓄積(図10に示すデータベース)、各種処理(図11、図12に示され、後述する代表マススペクトルの手動生成、代表マススペクトルの自動作成、データの編集、管理、マススペクトルの評価、統計解析処理、検証処理等)のプログラムの格納等に用いられるとともにワークエリアを提供する。記憶部326は、半導体メモリ、ハードディスク等により実現される。
処理部321は、コンピュータの本体部分であり、記憶部326に格納された各種プログラムにしたがって、入力部322を通して入力されたマススペクトルデータに対して図11、図12に示す処理を実行する。このとき、必要な情報(ユーザインターフェイス画面)を表示部324に表示したり、処理の途中のデータ、処理結果のデータを記憶部326に記憶する。
図10は、質量分析部310から得られる測定データから始まり、記憶部326に作成されるデータベースまでを示すデータ構造図である。
図11及び図12は、記憶部326に格納されたプログラムにしたがって、処理部321が実行する処理の手順を表すフローチャートである。これらの図面は、以下の説明の中で逐次参照される。
処理部321は、これらのフローチャートで表される機能を実現する手段を有する。
なお、解析装置320は、スキャン機能をもつ多くの種類の質量分析部310から得られる測定データに適用することができる。
図13は、質量分析部310から出力されるテキスト形式の生データ(テキストデータ)の一例を示している。これは一つのサンプルについて、スキャン法により、一定時間間隔で(一例として0.05秒から0.5秒間隔で)、低質量側から高質量側にスキャニングを繰返すことにより得られたものである。各スキャニングにより得られたイオン強度(任意目盛、以下同じ)データが、質量電荷比(m/z)の値(一例として700~800の範囲のみ示されている)に対応して、スキャン1、2、3、4等の列に数値として並べられている。これは、質量電荷比(m/z)、イオン強度及び測定時間(スキャニング順を表すデータ)の3次元データ(テキストファイル)である。
図14は、図13に示すデータを、スキャンごとにマススペクトルの形で表現したものである。横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸はイオン強度を示し、奥行方向(矢印で示す)は、時間又はスキャン回数を表している。
解析装置320の入力部322は、質量分析部310からこのような生データを取得する(図11のS11)(測定データ入力部)。質量分析部310からデータを送信し、入力部322がこれを受信してもよいし、質量分析部310においてデータをUSBメモリのような記憶媒体に格納し、入力部322がこれを読取ってもよい。
図15は、上述の生データを用いたTIC、MIC、又はEIC(次に説明する)のクロマトグラムを示している。横軸は時間(スキャン回数)、縦軸はイオン強度である。縦軸のイオン強度はTIC、MIC、EICによって異なる値をとるが、図15は、EICのものと理解されたい(イオン強度は任意目盛であるから、その値そのものに大きな意味はないので、TIC、MIC、及びEICのいずれのものと考えても支障はない)。クロマトグラムは、イオン強度の総和(次に述べるように、何らかの形でまとめられた、又は抽出された)を経時的に(時間軸に沿って、即ちスキャンの順序に並べて)描画したものである。
TICは、合計又は全イオン強度(又は電流)(Total Ion Current)の略称であり、取得したマススペクトルに含まれるすべてのピークの(データが表す)(すべての質量電荷比に対応する)イオン強度の合計を意味する。
TICCは、TICのクロマトグラム(Chromatogram)(TICを経時的に描画したもの)を表す。
MICは、加算(又は融合)イオン強度(又は電流)(Merged Ion Current)の略称であり、特定の質量電荷比(以下、単にm/zという)範囲におけるピークの(データが表す)(m/zに対応する)イオン強度の合計を意味する。MICCはMICのクロマトグラムを表す。
EICは、単一(又は抽出)ピークイオン強度(又は電流)(Extracted Ion Current)の略称であり、特定の(m/zに対応する)ピークのイオン強度を表す。EICCはEICのクロマトグラムである。
解析装置320の表示部324には、代表マススペクトルの作成に関してモード選択画面(図示を省略)が表示され、ユーザはこのモード選択画面にしたがって、手動モードか、自動モードを選択する。手動モードが選択されたときには処理部321は、次に述べる代表マススペクトルの手動生成処理(図11のS12)を実行する。
手動生成処理では、ユーザによってTIC、MIC、及びEICのいずれかが選択される。TICの場合には、取得した全m/z範囲の生データが用いられるが、MICの場合にはユーザによって使用するm/zの範囲が指定され、EICの場合には特定のピークが指定される。このようにしてユーザによって指定されたTIC、MIC又はEICの(図15に示すような)クロマトグラムが、処理部321によって作成され、表示部324に表示される。
ユーザは、このクロマトグラム上において、最も良く分析結果を表しているであろうと考えられる時間範囲を、カーソル等の入力装置(入力部322に含まれる)を用いて入力する。時間範囲は、例えば、下限PLと上限PHを指定することにより定まる。時間範囲が定まると、処理部321は、その時間範囲内において各スキャンのマススペクトルの同じm/z値をもつピークごとに加算して(又は平均値をとり)、代表マススペクトルを作成し、表示部324に表示する。作成された代表マススペクトルの一例が図16に示されている。代表マススペクトルデータは質量電荷比(m/z)とイオン強度の2変数からなるテキストデータであり、記憶部326のデータベースに格納される。
代表マススペクトル作成に関するモード選択画面において、ユーザが自動を選択すると、図17に示すような、条件設定画面が表示部324に表示される(図11のS131)(条件設定部)。この画面を用いてユーザは所望の条件を設定することができる。
条件設定画面において、対象ファイルはS11で質量分析部310から取得した生データ(測定データ)を格納しているファイルであり、質量分析部310によって割り当てられたファイル名がボックス内に表示される。
TIC閾値、MIC閾値、及びEIC閾値は、それぞれTICC、MICC、EICCにおいて雑音等を除去するための閾値であり(図17参照)、閾値を超える値をもつデータのみが以下の演算で用いられる。ユーザは、TIC、MIC、及びEICのうちで演算に使用したいものにチェックを入れて選択し(図17に示すように、すべてにチェックを入れてもよい)、選択したものについて閾値を入力する。閾値の入力がなければデフォルト値(規定値)が用いられる。
MICは、特定のm/z範囲におけるイオン強度の合計であるから、MICが選択された場合には、m/zの範囲の入力が要求される。また、EICは特定のピークのイオン強度を表すものであるから、EICが選択された場合には、特定のピークのm/z値(指定スペクトル)の入力が必要である。
以上の入力(即ち、条件設定)が終了し、ユーザが「実行」ボタンを押すと(クリックすると、以下同じ)、TIC、MIC、及びEICのうち選択された(チェックを入れることにより指定された)ものに関するクロマトグラムについて、下記式(1)を求める演算が処理部321によって実行される。
Figure 0007158642000001
前述の式(1)はS(t)のうちの最大のものを求めることを意味し、S(t)はTICの場合、下記式(2)で与えられる。
Figure 0007158642000002
MIC、及びEICの場合には、TICに代えてMIC、EICを使えばよい。
τはTICの横軸、即ち、時間を表す。前述の式(2)はτがtからt+Δtまでの時間幅においてTICの総和を求めることを意味し、前述の式(1)によってこのクロマトグラムの総和が最大となるt(又はt+Δt)が示す時間(時刻又はサンプル時点)又は時間帯が求められる。Δtは前もって設定しておいてもよいし(例えば、数秒~数十秒程度)、条件設定画面(図17参照)においてユーザに入力させてもよい。
前述の式(1)及び(2)の演算によって、クロマトグラムにおけるイオン強度の総和が最も高い時間帯が求められる(図11のS132)(最良時間帯検出部)。イオン強度の総和が最も高いということは、マススペクトルが最も安定し、かつサンプルの特徴を最もよく表していると考えられる。
前述の式(1)、(2)を満たすt~t+Δtの時間帯のイオン強度データを用いて代表マススペクトルが、TIC、MIC、及びEICのうち選択されたものについて作成される(図11のS133)(代表マススペクトル作成部)。そして、図18に示す画面が表示される。
図18に示す画面において、TIC、MIC、及びEICのそれぞれについて(これらのすべてについて選択されたものとする)、そのクロマトグラムが左側に表示され、各クロマトグラムにおいて、前述の式(1)、(2)を満足する時間帯が破線の縦に長い直方形で示されている。図18の画面の右側には、それぞれ、前述の式(1)、(2)を満足する時間帯のイオン強度データの質量電荷比m/zごとの総和(又は平均値)によって作成された代表マススペクトルが示されている(マススペクトル表示部)。なお、図18においては、代表マススペクトルが単に代表スペクトル又はスペクトルと表記されている。またマススペクトルが単にスペクトルと表記されている。
これらの代表マススペクトルのうちいずれか一つが質量分析されたサンプルを最も良く表すものとして記憶部326に格納される。この代表マススペクトルは質量電荷比、イオン強度の2変数からなるテキストデータである。図18において、ユーザは、各クロマトグラムの左側のボックスに、記憶部326に格納する一つを「採用するスペクトル」として選択すべきことが求められる。図18では、ユーザはMICにチェックを入れて選択している。なお、後述する代表マススペクトルの再作成等のためにバイナリ形式のデータも保存される。チェックボタンについては後述する。
代表マススペクトルの作成をやり直す場合には、図17に示す条件設定に戻って、閾値やm/z範囲、指定スペクトル、要すれば時間帯Δtの値を再入力することになる。
上述のようにして、処理部321において作成された一つのサンプルについての代表マススペクトルは記憶部326のデータベースに登録される。この際、データの管理、編集を簡便に行うことができるようにするために、測定条件情報や検体情報についてのラベルを付与する。このラベルはデータの集まりがヒエラルキー構造(階層構造)をもつように作成されることが好ましい。この実施例では、最も上位のラベルはプロジェクト名である。
そこで、表示部324の表示画面には、図19に示すようなプロジェクト名の選択画面が表示される。ユーザはプルダウン方式で表示されるプロジェクト名の中からいずれかを選択して入力する。ここではプロジェクト名として「ヒトがん検体」が選択されたものとする。そして、ユーザは「登録」ボタンを押す(クリックする)。
すると、図20に示すように、ラベル情報を入力する画面が表示部324に表示される。プロジェクト名は既に入力されたものである。ラベル情報としては、ユーザにとって分りやすく、検体の由来、属性、特性等を端的に表すものが好ましい。この実施例では、ラベルには、ファイル名、検体を提供した人の性別及び年齢、並びに検体の疾患名、ステージ(進行程度)及び組織型が用いられている。プロジェクト名を、当然、ラベル情報に含ませてもよい。また、測定条件情報を加えてもよい。そして、これらの内容が図20に図示のように入力され、「蓄積」ボタンが押されると、この代表マススペクトルデータは入力されたラベル情報を伴ってデータベースに格納される(図11のS141)(マススペクトル蓄積部)。
ここで、図10を参照して、データ構造について説明する。
質量分析部310における測定(質量分析)により得られる一つのサンプルについての測定データd1は、質量分析部310によって生データのフォーマットが異なるので、テキスト形式のデータd2として質量分析部310から解析装置320に与えられる。このマススペクトルデータには、質量分析部310、又はユーザが付与したID(識別符号)が付けられている。
解析装置320では、上述した代表マススペクトルの手動生成、自動生成の処理(図11の、S12、S13)において、マススペクトルを表示するために、上記テキストデータはバイナリ形式のデータd3に変換される。代表マススペクトルデータ(テキスト形式)d4が得られると、ラベル情報等が入力され、代表マススペクトルデータに質量分析部310が付与したIDに代えて、又は加えてラベル情報が付加される(図11のS141)。そして、リレーショナルデータベース(RDB)構築用テキストファイルへのデータ変換が行われて、プロジェクトごとにデータベースに蓄積される。このデータベースを特に図10に符号327で示す。
このようにしてマススペクトルデータベース327に蓄積された代表マススペクトルデータは、さまざまな目的のために使用(利用)される。そのうちの一つが後述する統計解析処理であり、もう一つが次に説明する内標検索処理である。これらの各処理のために、蓄積されたマススペクトルデータ中から、データのあるグループ(データセット)が選択される。これが図10に符号328で示す選択されたマススペクトルデータセットのフォルダである。
一例として、統計解析を行うために、既にマススペクトルデータベース327に蓄積されているマススペクトルデータの中から特定のグループに属するものを選択するための表示画面の例が図21に示されている。プロジェクト名(ヒトがん検体)と、グループを定めるラベル情報の範囲、即ち、性別(指定無し)、年齢(50~80)、疾患(肝がん)、ステージ(1~3)、組織型(原発HCC)がユーザによって入力される。そして「選択」ボタンを押すと、マススペクトルデータベース327が検索され、上記のプロジェクト名とラベル範囲を満足するマススペクトルデータが抽出される(図11のS142)。抽出されたデータのラベル情報が図21の下段に示すように一覧表の形で表示される。
「エクスポート」ボタンを押せば、エクスポートされる(図11のS143)。即ち、抽出されたマススペクトルデータはデータベースから記憶部326の所定の記憶場所に転送され、統計解析処理が使用できる状態となる(マススペクトルデータベース328の作成)(データセット指定部)。
このように、すべての代表マススペクトルデータにラベル情報を付加しておくことにより、ユーザが理解できる用語、概念(ラベル)を用いてデータのグルーピング、検索、抽出(選択)等が容易となる。
先に説明した代表マススペクトルの作成処理(図11の、S12、S13)において(特に、自動作成処理(図11のS13)において)作成されたマススペクトルがすべて品質(クオリティ)の高いものとは限らない。作成した、又は既にマススペクトルデータベース327に蓄積されたマススペクトルの品質が次のようにして評価される。この評価処理はメニュー画面(図示を省略)において指定することにより実行されるが、図18の表示画面において「チェック」ボタンを押してもこの評価処理に進むことができる。
まず、評価のための指標(これを内標と呼ぶ)が決定(検索、選定)される。次に、この内標を用いて、特定のマススペクトルの良否が判定(弁別)(個別スペクトル判定)されるか、又は特定のグループ内のマススペクトルの良否が判定(弁別)(フォルダ内スペクトル一括判定)される。
内標の決定は蓄積された既存の多数のマススペクトルデータを用いて行われる。内標の決定に用いられるマススペクトルデータは、過去に行われたマススペクトルの評価において良好マススペクトルと判定された群、又はユーザが目視で良好マススペクトルと判定されたものの集まりを用いることが好ましい。
まず、図22に示す表示画面において、内標の決定に用いる多数のマススペクトルデータが指定され、かつ条件が設定される。ここでは、選択されたマススペクトルデータセットフォルダ(図10の符号328)の一つが対象フォルダとして指定される(第1の指定手段)。ラベル情報を入力して対象フォルダ等を特定することもできる。また、条件として、検出強度の下限値と変動係数の上限値が入力される。マススペクトルは特定のm/z値に対応して多数のピークを有する。内標はこれらのピークのうちの安定して現われる(変動の少ない)一つ又は複数を選択することにより定められる。即ち、内標は特定の安定したピークである。検出強度下限値は、内標として採用するピークのイオン強度(平均強度)の下限値を定めるものである。即ち、この下限値よりも平均強度の高い値をもつピークが内標の候補となりうる。変動係数は、特定のm/z値に対応するピークの値(イオン強度)の集合が正規分布にしたがうとして、分散を平均値で除した値である。入力された変動係数上限値を下廻る変動係数をもつピークが内標の候補となりうる。これらの2つの条件は、AND条件である。
対象ファイルが特定され、検出強度下限と変動係数上限の条件が入力され、「実行」ボタンが押されると、対象フォルダ内の全マススペクトルについて、各m/z値に対応するピークの値の集合に関してその変動係数と平均イオン強度とが算出され、得られた結果のうち上記条件を満たすものが、内標候補として、図23の上半部に示されるように、変動係数の小さい順に並べて表示される(内標候補作成部)。表示されるのは、順位、変動係数、m/z、平均イオン強度である。ユーザはこの内標候補の中から、マススペクトル評価に用いる内標としてふさわしいものを選択し、対応するボックスにチェックを入れる。図23の例ではm/zが208のピークの内標として選択されている。ユーザによって選択されない場合には、変動係数の最も小さいピークが内標として自動選定される(図16のS151)。
この内標を用いたマススペクトルの評価は次の考え方による。即ち、内標は上述のようにマススペクトルにおいて安定して現われるピークであるから、評価の対象となるマススペクトルにおいても、対応するピーク(m/z値が同じピーク)は、同程度のイオン強度をもつことが期待できる。そこで、一例として、内標であるピークの平均イオン強度を中心として上下に許容範囲を設定し、評価対象のマススペクトルの対応ピークのイオン強度がこの許容範囲内にあれば良好マススペクトルと判定し、許容範囲外であれば不良マススペクトルと判定する。
図23の画面の下半分において、評価の対象となるマススペクトルデータファイルが含まれるフォルダがユーザによって入力される。上述したラベル情報によって評価の対象となるマススペクトルデータを指定してもよい(以上、「フォルダ内スペクトル一括判定)。また、図11のS13の代表マススペクトル自動作成処理で作成した1つのマススペクトルデータの良否を判定してもよい(個別スペクトル判定)(以上、第2の指定部)。この個別スペクトル判定は、代表的には図18において、「すぐにマススペクトルのチェックを行う場合にはこちらを押して下さい」という文の次にある「チェック」ボタンが押されたときに行われるものである。
「実行」ボタンが押されると、上記内標を基準として、対応するピークのイオン強度が内標の平均イオン強度の上下の許容範囲内にあるかどうかが判断され、許容範囲内にあれば良好マススペクトル、許容範囲外の場合には不良マススペクトルと判断される(図11のS152)(良否判定手段)。図23の画面の最下段では、判定された良好スペクトルと不良スペクトルのファイル名が列挙されている。
内標を決定するために用いる基礎マススペクトルデータ群(図22で指定された対象フォルダ)と、良否判定の対象のマススペクトルデータとは同種の検体についての質量分析から得られたものである。同種の検体とは、肝がんのように同じ疾病の細胞、特定の動物又はヒトの肝臓のように同じ臓器、同じ部位の細胞、同種の生体の一部等、同じm/z値のピークが出現することが期待される(異なるm/z値のピークが含まれていてもよい)ものである。内標として決定されたピークを用いたときに、良好スペクトルと判定されるものが不良スペクトルと判定されるものに比べて少ない場合には、内標が正しくない場合もありうるので、内標の決定処理をやり直したり(基礎マススペクトルデータを変えるなど)、順位が2番目以降の変動係数をもつピーク(m/z値)を内標とするなど、試行すればよい。複数の内標(ピーク)を決定した場合には、各内標を基準とした良否判定結果のAND論理又はOR論理により最終判定結果を得るようにすることができる。
個別スペクトル判定において、作成したマススペクトルが不良と判定されたときには、代表スペクトルの自動作成(図11のS13)に戻り、図17の画面において閾値を変更したり(閾値による条件を緩和する)、図18の画面においてMICではなく、TIC又はEICを選択したりすることにより代表マススペクトルの作成のやり直し(再作成)を行うことができる。
さまざまな総計解析手法があるが、ここでは4つに大きく分類し、各分類ごとにそこに含まれるいくつかの代表的な手法を説明する。
1)有意差検定
・Welch t-test(ウェルチのt検定)
「2つの母集団の平均が等しい」という帰無仮説のもと、等分散を仮定しない両側検定を行うものである。
・WRST(Wilcoxon rank sum test)(ウィルコクソン順位和検定)
「両標本が同一母集団から抽出された」という帰無仮説に基づいてノンパラメトリックな検定を行うものである。
・ANOVA(Analysis of variance)(分散分析)
「全ての群の母平均に差が無い」という帰無仮説に基づいて多群のパラメトリック検定を行うものである。
有意差検定は、解析装置では、マススペクトルのピーク(m/z値)ごとに検定を行い、マススペクトル群(グループ)の間で有意な差があるピークの探索に有用であり、マーカー探索や分子メカニズム解明に利用できる。群間で有意差があるとされたピーク(m/z)を選出し、対応するデータを後述する機械学習で利用できる。
2)次元縮約
次元縮約は多くの変数を少数の変数(スコア)に縮約するものである。
・PCA(Principal component analysis)(主成分分析)
教師無し次元縮約法である。
・PLS(Partial least squares)(部分的最小二乗法)
教師あり次元縮約法である。
・OPLS(Orthogonal Partial Least squares)(直交PLS)
PLSの改良版で、説明変数の直交成分を分離して解析する。
・KPLS(kernel partial least squares)(カーネルPLS)
カーネル法を用いてPLSを非線形拡張するので、分離性能が向上する。
解析装置では、マススペクトルに含まれる多くのピーク(変数)を2、3の少ないスコア(主成分)に縮約できるのでスコア間の相関が判別できるとともに、その結果を機械学習に利用できる。スコアの数はユーザが指定できる。
3)機械学習法
・LDA(Linear discriminant analysis)(線形判別分析)
直線、超平面による判別関数を構成。
・QDA(Quadratic discriminant analysis)(二次判別分析)
曲線、超曲面による判別関数を構成。
・SVM(Support vector machine)(サポートベクターマシン)
マージンを最大化する識別面を特徴空間に構成する非線形識別法。
・LR(Logistic regression)(ロジスティック回帰)
事後確率の対数尤度比が線形式で表されると仮定する回帰モデル。
・RF(Random forest)(ランダムフォレスト)
決定木を弱学習器とする集団学習アルゴリズム。
解析装置では、これらの学習法で作成された判別関数を用いて未知のマススペクトルの診断をすることができる。したがって、診断や治療方針の決定に利用できる。
4)検証法
機械学習法の診断精度を検証するものである。この検証結果により、最も適した機械学習法を自動的に選定することも可能となる。
・k-fold CV(k-fold cross validation)(k-分割交差検証)
標本群をk個に分割して、そのうちの一つをテストサンプル、残りを訓練サンプルとする検証法。
・LOOCV(Leave one out cross validation)(Leave-one-out交差検証)
標本群から1つのサンプルだけを抜き出してテストサンプルとし、残りを訓練サンプルとする検証法。
解析装置320の記憶部326には、上述した有意差検定法に含まれるすべての個別の検証法(Welch t-test、WRST、ANOVAなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)、次元縮約法に含まれるすべての個別の縮約法(PCA、PLS、OPLS、KPLSなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)、機械学習法に含まれるすべての個別の学習法(LDA、QDA、SVM、LR、RFなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)及び検証法に含まれるすべての個別の検証法(k-fold CV、LOOCVなど)をそれぞれ実行するプログラム(ルーチン)(手段)が格納されており、処理部321はこれらのプログラムにしたがって、各統計解析法、検証法を個別に、又は同時に実行することができる。
即ち、図24に示すように、表示部324の表示画面には、上述したすべての統計解析法、検証法が表示され、ユーザは、これらの表示された解析法及び検証法のいずれか1つ以上を選択することができる。すべての解析法及び検証法を選択することもできる。また、検証法中の1つ以上と、縮約法中の1つ以上と、学習法の1つ以上と、検証法の1つ以上とを組合せて選択することもできるし、その組合せの中から1つ以上を除くこともできる。即ち、任意の組合せの選択が可能となる(図12のS21)(統計解析法入力部)。そして、処理部321は選択された解析法、検証法を個別に、もしくは並行して、又は組合せにしたがって順を追って実行することができる(図12の、S30、S40、S50、S60)(統計解析実行部)。これらの処理の結果(統計解析の結果得られる各種の数値情報、図10の符号329)は、表示部324の画面上に表示して、プリンタ325でプリントして、又はデータの形で通信回線を介して、もしくは記憶媒体に出力して提示される(図12の、S31、S41、S52、S61)。
選択された検定法の実行の結果、選定されたピークに対応するデータは、選択された縮約法に渡されてその処理(縮約)対象データとして用いるか、又は選択された学習法に渡されてその処理(学習)対象データとして用いることもできる(図12のS32)。同様に、選択された縮約法で処理されて出力されるスコアデータは、選択された学習法に渡されてその処理(学習)対象データとして用いることもできる(図12のS42)。特に、選択された縮約法と選択された学習法の組合せは、表示画面上にそれらを結ぶ線として表示される(図24参照)。選択された検証法は選択された学習法の診断精度を検証する(図12の、S50、S60)。選択された学習法で決定された判別関数により未知データの診断処理も可能で(図12のS51)、その診断結果は提示される(図12のS52)。選択された解析法、検証法は、「実行」ボタンの押下(クリック)に応答して実行される(図23参照)。
このように、多くの種類の統計解析法、検証法を実行するプログラムのルーチンが備えられているので、ユーザはこれらの汎用的なものから高度なものまでのプログラムルーチンのうちの所望のもの(1又は複数)を実行することができる。未だ備えられていない統計解析法や検証法のプログラムルーチンを追加してインストールすることもできる(拡散性が高い)。検定法、縮約法、及び学習法の中から適切な組合せ(検定法を除いた組合せでもよい)を設定して、対象であるマススペクトル群について試行することができ、そのマススペクトル群の解析のために最適な組合せを選ぶことができる。このとき、検証法を用いて、設定した組合せが適切であったかどうかを判定することができる。
次に示す具体例のように、複数の統計解析法の組合せを用いて、対象であるマススペクトル群について、意味のある変化、例えば、疾患で特異的に変化する分子(マーカー)を手動又は自動(半自動を含む)で抽出することができる。図24に示す画面(ユーザインターフェイス)は、操作するのに簡便であり、かつ分りやすく、作業時間の短縮を図ることができる。
図24に示すように、検定法としてANOVAが、縮約法としてPCAが、学習法としてLDAが、そして検証法としてLOOCVが選択された場合の具体例について以下に説明する。
解析に使用するデータセット(「使用するデータセットを含むフォルダを選択」と表示されたボックス)のフォルダには、3群(グループ)のウサギ血漿のマススペクトルデータが入っている(図11の、S142、S143)(データセット指定部)。3群のウサギとは次の通りである。
正常なウサギ10匹(コントロールとして位置づける):C0と略記する
食物を通してコレステロール負荷を加えたウサギ10匹:C16と略記する
遺伝的にコレステロール代謝に異常を有するウサギ10匹:Wと略記する
したがって、これら30匹のウサギ血漿の30のマススペクトルデータが統計解析の対象となる。
m/z範囲はマススペクトルにおいて解析に使用するm/z値の範囲を定めるもので、ここでは10.0~1000.0の範囲が指定されている。
Binサイズはm/z値のとりうる間隔(幅)を示し、ここでは1が設定されている。したがって、10.0、11.0、12.0、‥‥、999.0、1000.0のように1ずつ変化するm/z値に対応するイオン強度をもつマススペクトルを対象データとしている。データセット中のマススペクトルデータのBinサイズが1でない場合には、平均値又は加算値をとる(Binサイズが小さい場合)、又は補間をとる(Binサイズが大きい場合)などによりBinサイズが1となるように加工される。
統計解析法として、上述したようにANOVA、PCA、及びLDAが選択され、検証法としてLOOCVが選択される。PCAによる縮約結果を学習法LDAで用いるので、これらの文字のブロックが線で結ばれている。有意水準、多重検定補正、変動係数範囲及び平均強度範囲は検定法ANOVAに関するもので、これについては、次のマーカー探索の項で説明する。縮約法PCAで縮約の結果出力されるスコアの数は2と設定されている。以上の設定ののち(図12のS21)、実行ボタンが押されると、設定された統計解析、検証が実行される。
統計解析ルーチン、検証ルーチンの実行に先だってデータの加工が行われる(図12のS22)。マススペクトルデータベース328(図10参照)から読出されたデータセットのマススペクトルデータについて、設定されたm/z範囲になり、かつ設定されたBinサイズを持つように加工が行われる。また、30のマススペクトルについて、C0、C16、Wの各グループごとにイオン強度の正規化(ノースライズ)が行われる。即ち、各スペクトルの平均強度が算出され、各ピークの値がこの平均強度で除されることにより正規化が行われる。
マーカー探索の目的は、3つのグループの識別に有用なマーカー物質を、m/z=10~1000の中から見つけることである。
マーカー探索は以下の条件(i)、(ii)、(iii)を満たすような物質(m/z)を絞り込む(探索する)ことにより行われる。
(i)グループ間で強度(イオン強度)が大きく異なるm/zを選出する。これは、次に詳述する検定法ANOVAにより達成される。
(ii)強度が十分に大きいm/zを選出する。平均強度は図24の画面で設定されているように、1.0~inf.(無限)である。1.0は平均値で正規化しているので平均値を意味する。この条件(ii)は、いずれかのグループで、強度が1を上廻るピークに対応するm/zを選出することである。
(iii)各グループ内での強度のばらつきが十分に小さいm/zを選出する。ばらつきは図24の画面で設定された変動係数範囲(0.0~0.3)で定められる。変動係数は、各ピークの強度を1としたときの分散の値で定められる(ピークの強度によって分散の値が変ってしまうので、正規化している)。この条件(iii)は各グループで上記の分散が0.3未満となるようなピークに対応するm/zを選出することである。
上記条件(i)を満たすm/zを選出するANOVA法について説明する。
ANOVA法は各グループの平均強度が等しいという帰無仮説のもとで(各グループの平均強度をμ1、μ2、μ3とするとμ1=μ2=μ3)、ピーク毎の(m/z値ごとの)P値を算出する。P値は帰無仮説が成立つ確率を示す。P値が大きいほど、グループ間で同じm/z値について強度の差が小さい(帰無仮説が正しい)。
P値の有意水準は0.05に設定されている(図24の画面)。上のようにして算出されたP値がこの有意水準0.05より小さいm/zを、グループ間で強度が異なるm/z(ピーク)として選出する。なお、図24で多重検定補正がBF(Bonferroni)法というのは、検定をN回繰返す場合(N>2)、Bonferroni法に基づいてP値の有意水準を0.05/Nとすることを意味する。
上記の条件(i)、(ii)、(iii)を満足するものとして選出されたm/z値(ピーク)と、それに対応するP値(-logで表されている)、変動係数(CV_C0、CV_C16、CV_WはそれぞれグループC0、C16、Wを示す)及び平均強度(M_C0、M_C16、M_WはそれぞれグループC0、C16、Wを示す)が出力ファイルとして、図25に示されている。
マーカー探索で上記(i)、(ii)、(iii)の条件を満たすm/zが上記のように(図25参照)選出されたが、変数(m/z)の数が多いので、次元縮約法により、変数の数を減らす。次元縮約法により情報量を削減することで、学習/診断の精度が向上することがあるからである。
次元縮約法については主成分分析(PCA)が設定されており、スコアの数は2である(図24参照)。
30のマススペクトルデータ中の全てのピークのイオン強度をPCAにより2つの主成分(第1、第2主成分)に縮約した結果が図26に示されている。図25に示す選出されたm/zのすべてのピークのイオン強度を縮約してもよい。
PC1、PC2は、それぞれ第1、第2主成分である。jw-0W、JW-16W、WHHLがそれぞれグループC0、C16、Wに対応する。これらのグループはこれらの主成分PC1、PC2で分離(判別)可能性が高いことがわかる。
上記条件(i)、(ii)、(iii)を満たすものとして図25に示すように選定されたm/zを用いた次元縮約以外に、元の3グループのデータのすべて(すべてのm/z)を用いて次元縮約を行うこともできる。
教師データを用いて機械学習を行い、この学習結果(判別関数)に基づいて、未知のスペクトルが属するグループを高精度に推定することを目的とするものである。最も好ましくは、上述した統計的検定、次元縮約法、機械学習法を組み合わせて、より高精度な判別器を構成することができる。
一例として、図26に示す縮約法により得られた結果に基づいて、第1、第2主成分を説明変数として、目的変数(グループ)を推定する判別器(PCA-LDA)を構成することができる。この場合、検定した(ANOVA)の結果(図23)を用いて縮約を行ったものに基づいて学習を行っても、元の3グループのマススペクトルデータを用いて縮約を行ったものに基づいて学習を行ってもどちらでもよい。
未知のスペクトルが属するグループを推定する方法をまとめると、次の4種類がある。
1)機械学習:全m/zを説明変数として教師データの学習を行う(目的変数はグループ名)。
2)統計的検定→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zを説明変数として、教師データの学習を行う。
3)次元縮約法→機械学習:全m/zの情報をより少ない変数(主成分やPLSスコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
4)統計的検定→次元縮約法→機械学習:検定において識別に重要であるとみなされたm/zをより少ない変数(スコア)に縮約し、それらを説明変数として教師データの学習を行う。
図24に示す画面には、検証法として、Leave-one-out交差検証(LOOCV)が設定されている。これは「全サンプルから一つのサンプルを検証用に取り出して残りのサンプルで学習を行い、検証用のサンプルが属するグループを正しく推定できるか」という過程を全サンプル数繰り返し、機械学習による推定の正答率を出力する。
上述の判別器(PCA-LDA)による推定の正答率をLOOCVにより検証した結果(正誤表)が、図27に示されている。[1]が正答、[0]が誤答を示しており、正答率は27/30=90%であった。検証結果は、上記以外に、ROC曲線、AUC等の成績データで出力することもできる。
縮約法と学習法の組合せを変え、場合によっては更に検定法との組合せを変えて、それぞれの学習結果に基づく推定の精度を検証法(検証法を変えてもよい)に求め、組合せごとの推定精度の結果に基づいて、より高精度にデータの学習/診断が行えるような判別法(検定法、縮約法、学習法の組合せ)を自動的に(又はユーザが組合せを選択する半自動で)選出することも可能である。
図28は、図25、図26、及び図27に示す統計解析、検証の結果を一つの表示画面にまとめて示すものである。このような画面を表示することにより、ユーザは一連の解析、検証の結果を網羅的に見ることができる。
(本発明の質量分析システムを用いた試験例)
本発明の質量分析システムを用いて、血液中の癌細胞の検出確認試験を行った。
ヒト全血2mLにヒト扁平上皮癌細胞(SAS)の濃度を変えて混入させた試料に対し、SASの分析を行った。No.1の試料は、癌細胞を含まない全血の試料である。No.2~No.5の試料は、SASの濃度を変えた。
No.2の試料:1×10SAS/2mL blood
No.3の試料:0.5×10SAS/2mL blood
No.4の試料:1×10SAS/2mL blood
No.5の試料:1×10SAS/2mL blood
No.6の試料は、癌細胞のみのポジティブコントロールである。
試験は下記手順に従い行った。
i)血液を採取した。
ii)Ficollにより単核球分離処理を行った。
iii)上記第2の実施形態で記載のリモートサンプリングエレクトロスプレーイオン化法を用いたイオン化手段を有する本発明の質量分析装置を用いて、質量分析を行った。
iv)上記本発明の解析装置(上記判別手段と、上記機械学習を含む統計解析手段とを含む)を用いて、質量分析の結果を出力した。
試験結果を図29及び図30に示す。
図29及び図30の結果から、No.2~No.4は、740、758、及び764(m/z)において、No.6と同様のピーク形状を示すことが確認できた。
1mLの血液に混入した5,000個の腫瘍細胞を検出することが可能であることが確認できた。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化するイオン化手段と、
前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、
を有することを特徴とする質量分析装置である。
<2> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<1>に記載の質量分析装置である。
<3> 前記検査対象が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質のいずれかである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<4> 前記細胞が、血中循環腫瘍細胞(CTC)である、前記<3>に記載の質量分析装置である。
<5> 前記検査対象が、前記血液を単核球分離して得られたものである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<6> 前記イオン化手段が、
前記検査対象に先端を接触乃至刺入させて検査対象を採取する針状部材と、
前記針状部材の前記先端から前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために、前記針状部材に電圧を印加する電源と、
生成したイオンを収集するイオン収集部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<7> 前記イオン化手段が、
一端が検査対象に接触させて検査対象を採取するために使用され、他端が前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用される第1の管状部材と、
前記第1の管状部材を同心で挿入する第2の管状部材と、
前記第2の管状部材にガスを流すガス流発生部材と、
前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する電源と、
生成したイオンを前記質量分析手段へ導くイオン誘導部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<8> 前記イオン化手段が、
限界希釈法を用いて調製した前記検査対象の試料液を用い、前記試料液の液滴を搬送する線状部材と、
前記線状部材に付着した前記液滴から前記検査対象に由来するイオンを生成させるイオン化部材と、
を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の質量分析装置である。
<9> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化するイオン化工程と、
前記イオン化工程により生成したイオンを質量分析する分析工程と、
を有することを特徴とする質量分析方法である。
<10> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<9>に記載の質量分析方法である。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の質量分析装置と、
前記分析手段により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、
を有することを特徴とする質量分析システムである。
<12> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<11>に記載の質量分析システムである。
<13> 前記解析装置は、前記被検体の血液の1回分の測定試料に対して得られた質量分析の結果をもとに、一度に複数の疾患に該当する可能性を判定する、前記<11>から<12>のいずれかに記載の質量分析システムである。
<14> 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象の成分をイオン化し、生成した前記イオンを質量分析することにより得られる質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか否かを判定し、
前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超えると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする質量分析解析プログラムである。
<15> 前記検査対象には、抗体(前記被検体と同種由来の抗体を除く)が添加されていない、前記<14>に記載の質量分析解析プログラムである。
前述の<1>から<8>のいずれかに記載の質量分析装置、前述の<9>から<10>のいずれかに記載の質量分析方法、前述の<11>から<13>のいずれかに記載の質量分析システム、及び前述の<14>から<15>のいずれかに記載の質量分析解析プログラムによると、従来における前述の諸問題を解決し、前述の本発明の目的を達成することができる。
1 針状部材
7 電源
8 イオン収集部材
12 質量分析計
20 電源
21 第1の管状部材
22 第2の管状部材
25 ガス流発生部材
28 イオン誘導部材
29 質量分析計
33 線状部材
35 イオン化部材
36 質量分析計
100 質量分析装置
101 イオン化手段
102 分析手段
200 質量分析装置
201 イオン化手段
202 分析手段
300 質量分析装置
301 イオン化手段
302 分析手段
310 質量分析部
320 解析装置
321 処理部
322 入力部
323 出力部
324 表示部
325 プリンタ
326 記憶部

Claims (8)

  1. 被検体の血液中の検査対象に対し、前記検査対象をイオン化するイオン化手段と、
    前記イオン化手段により生成したイオンを質量分析する分析手段と、を有する質量分析装置であって、
    前記イオン化手段が、
    一端が前記検査対象に接触させて前記検査対象を採取するために使用され、他端が前記検査対象に由来するイオンをエレクトロスプレーにより生成させるために使用される第1の管状部材と、
    前記第1の管状部材を同心で挿入する第2の管状部材と、
    前記第2の管状部材にガスを流すガス流発生部材と、
    前記第1の管状部材の前記他端と、前記エレクトロスプレーが生成される領域に配される前記他端に対向する対向電極との間で電位差が生じるように、前記対向電極に電圧を印加する電源と、
    生成したイオンを前記分析手段へ導くイオン誘導部材と、を有し、
    前記第1の管状部材の両端が前記第2の管状部材から突出していることを特徴とする質量分析装置。
  2. 前記第1の管状部材の外径が0.2mmであり、
    前記第2の管状部材の内径が0.3~0.5mmであり、
    前記第1の管状部材の他端が前記第2の管状部材から0.5~1.0mm突出している請求項に記載の質量分析装置。
  3. 前記被検体である血液は、検査対象を検出するための抗体が添加されていない、請求項1からのいずれかに記載の質量分析装置。
  4. 前記検査対象が、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質のいずれかである、請求項1からのいずれかに記載の質量分析装置。
  5. 前記細胞が、血中循環腫瘍細胞(CTC)である、請求項に記載の質量分析装置。
  6. 前記検査対象が、前記血液を単核球分離して得られたものである、請求項1からのいずれかに記載の質量分析装置。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の質量分析装置と、
    前記質量分析装置により得られた質量分析の結果をもとに作成されたマススペクトルの情報、及び前記マススペクトルの情報を学習することにより得られたマススペクトルの解析結果の情報の少なくともいずれかの情報を用いることにより、血液における前記検査対象の存在状態が、所定の許容範囲を超えるか前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈しているか、否かを判定し、
    前記検査対象の前記存在状態が前記所定の許容範囲を超える、あるいは前記マススペクトルが疾患陽性のパターンを呈していると判定される場合には、前記被検体が前記検査対象の前記存在状態に由来する疾患に該当する可能性を判定する、判定手段を有する解析装置と、
    を有することを特徴とする質量分析システム。
  8. 前記解析装置は、前記被検体の血液の1回分の測定試料に対して得られた質量分析の結果をもとに、一度に複数の疾患に該当する可能性を判定する、請求項に記載の質量分析システム。
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