ところで、上述の特許文献1に開示されている自動二輪車のフレーム構造体では、フレーム構造体に金属を用いた場合に比べて車両の軽量化を図れる。しかしながら、フレーム構造体の強度を確保しつつ、さらなる車両の軽量化を図りたいという要求がある。
本発明は、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両において、フレーム構造体の強度を確保しつつ、さらなる軽量化を図れるような構成を得ることを目的とする。
傾斜姿勢で旋回する傾斜車両において、フレーム構造体の強度を確保しつつ、さらなる軽量化を図るためには、以下のような手法が考えられる。例えば、繊維強化樹脂の特性を利用して、フレーム構造体に、モノコック構造、セミモノコック構造、または、カバー等の他物品との一体形成等の構成を採用することが考えられる。
しかしながら、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両は、停車状態で左右方向に転倒する特性を有する。前記傾斜車両が、停車状態で左右方向に転倒すると、前記傾斜車両の車体が路面から荷重を受ける。したがって、フレーム構造体を、繊維強化樹脂によって構成されたモノコック構造等にすると、前記車体が路面から荷重を受けた際、前記フレーム構造体の繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する場合がある。
さらに、前記傾斜車両が停車状態で左右方向に転倒した際に車体が路面から荷重を受ける位置は、前記傾斜車両のデザインによって、車両ごとに異なる。また、前記車体は、前記傾斜車両の重量及び転倒時における路面との接触位置によって、停車状態で転倒した際に路面から受ける荷重の大きさが異なる。上述のようにフレーム構造体を繊維強化樹脂によって構成されたモノコック構造等とした場合、傾斜車両が停車状態で転倒した際の路面との接触によって前記フレーム構造体の繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する。そのため、前記傾斜車両の重量及び転倒時における路面との接触位置とを考慮して、前記傾斜車両のデザイン等を検討する必要がある。よって、傾斜車両の設計は制約を受ける。したがって、繊維強化樹脂によって構成されたフレーム構造体を採用可能な車両は、限られていた。
そこで、本発明者は、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両において、設計自由度を向上させる手法を検討した。
まず、本発明者は、傾斜車両が停車状態で左右方向に転倒した際の車体に対する荷重の入力に着目し、詳細に検討した。傾斜車両は、左右方向に転倒する際、接地しているタイヤを中心に、左方向または右方向に傾く。前記車体が路面に接触した際に、前記車体には、路面との接触部分に荷重が作用する。そのため、本発明者は、車両の構造等から、前記接触部分の位置を特定しやすいことに気がついた。
また、傾斜車両は、該傾斜車両が停車状態で左右方向に転倒した際に、バウンドすることが分かった。バウンドの際に前記傾斜車両に生じる振動の加速度は、振動の初期段階では大きいが、最終的には小さくなる。そのため、本発明者は、前記加速度が最も大きい時に車体が受ける荷重を小さくすることが好ましいことに気がついた。
そこで、本発明者は、前記フレーム構造体に入力される荷重を、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化しないような大きさに抑えることを検討した。その結果、本発明者は、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記フレーム構造体に入力される荷重を低減するような部材を設ければよいことに気付いた。すなわち、前記フレーム構造体に入力される荷重を小さくする変形部を含む側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を、前記フレーム構造体とは別の部材によって構成するとともに、前記フレーム構造体において前記傾斜車両が停車状態で転倒した際に路面等に接触する部位に取り付けることを思いついた。
これにより、前記傾斜車両の転倒によるフレーム構造体の前記繊維強化樹脂における構造の変化を、フレーム構造体とは別の部材によって抑制できる。よって、フレーム構造体とは別の部材を用いない場合に比べて、傾斜車両の設計自由度を向上できる。すなわち、繊維強化樹脂を含むフレーム構造体において、傾斜車両の設計に制約を受けることなく、フレーム構造体の強度を確保することができる。
したがって、上述の構成により、フレーム構造体の強度を確保しつつ、繊維強化樹脂を用いることにより、さらなる軽量化を図れるような構成を得ることができる。
上述のような検討結果に基づいて、本発明者は、以下のような構成に想到した。
本発明の一実施形態に係る傾斜車両は、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両である。この傾斜車両は、左方向に旋回する際に左方向に傾斜し、右方向に旋回する際に右方向に傾斜する車体を備える。前記車体は、繊維によって樹脂が強化された繊維強化樹脂を含み、前記車体の一部を構成するフレーム構造体と、前記フレーム構造体の左側面に取り付けられた少なくとも一つの左取付部、車両の左右方向において、前記左取付部よりも左方に位置し、前記車体が停車状態で左方向に傾斜した際に路面と接触して荷重を受ける左荷重受け部、及び、前記左取付部と前記左荷重受け部との間の伝達経路内に位置し、前記左荷重受け部が荷重を受けた際に、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する、少なくとも一つの第1左変形部、を含む、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材と、前記フレーム構造体の右側面に取り付けられた少なくとも一つの右取付部、前記左右方向において、前記右取付部よりも右方に位置し、前記車体が停車状態で右方向に傾斜した際に路面と接触して荷重を受ける右荷重受け部、及び前記右取付部と前記右荷重受け部との間の伝達経路内に位置し、前記右荷重受け部が荷重を受けた際に、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する、少なくとも一つの第1右変形部、を含む、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材と、を有する。
上述のように、フレーム構造体を、繊維によって樹脂が強化された繊維強化樹脂を含む構成とすることで、フレーム構造体の軽量化を図ることができる。よって、傾斜車両の軽量化を図ることができる。
ところで、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両は、停車状態で左右方向に転倒する場合がある。前記傾斜車両が停車状態で転倒した際に、前記傾斜車両のフレーム構造体は、路面と接触して荷重を受ける。上述のように繊維強化樹脂を含むフレーム構造体は、前記傾斜車両の転倒時に荷重を受けた場合、フレーム構造体の繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する可能性がある。
これに対し、上述の構成のように、フレーム構造体の左側面及び右側面に、それぞれ左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を取り付ける。これにより、前記傾斜車両が停車状態で左右方向に転倒した際に、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材または前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が荷重を受ける。
具体的には、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際には、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が路面等に接触する。この際、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の左荷重受け部に対して荷重が入力される。前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1左変形部は、前記左荷重受け部に入力された荷重によって、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する。前記第1左変形部が変形することにより、前記フレーム構造体に入力される荷重を低減することができる。そのため、前記フレーム構造体の繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
同様に、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際には、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が路面等に接触する。この際、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の右荷重受け部に対して荷重が入力される。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部は、前記右荷重受け部に入力された荷重によって、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する。前記第1右変形部が変形することにより、前記フレーム構造体に入力される荷重を低減することができる。そのため、前記フレーム構造体の繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
しかも、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記フレーム構造体とは別の部材であるため、前記傾斜車両の転倒を考慮して前記フレーム構造体を設計する必要がない。よって、前記フレーム構造体の設計自由度を向上させることができる。
したがって、上述の構成により、前記フレーム構造体の設計自由度を低下させることなく前記傾斜車両の強度を確保することができる。よって、前記傾斜車両の強度を確保しつつ、該傾斜車両のさらなる軽量化を図ることが可能になる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記左取付部と前記左荷重受け部との間の伝達経路内に位置し、前記第1左変形部が変形した後で且つ前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記荷重によって変形する第2左変形部をさらに有していてもよい。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記右取付部と前記右荷重受け部との間の伝達経路内に位置し、前記第1右変形部が変形した後で且つ前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記荷重によって変形する第2右変形部をさらに有していてもよい。
これにより、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際に、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記左荷重受け部に荷重が入力されると、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記第1左変形部の変形に続いて前記第2左変形部も変形する。よって、前記傾斜車両の左方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより抑制できる。
同様に、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際に、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記右荷重受け部に荷重が入力されると、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記第1右変形部の変形に続いて前記第2右変形部が変形する。よって、前記傾斜車両の右方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより抑制できる。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを、より抑制できる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記フレーム構造体の左側面の外表面に、前記傾斜車両の左方に突出するように設けられていてもよい。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記フレーム構造体の右側面の外表面に、前記傾斜車両の右方に突出するように設けられていてもよい。
上述の構成により、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際、前記フレーム構造体よりも先に前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が路面と接触する。この際、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記左荷重受け部が荷重を受けることによって、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記第1左変形部が変形する。これにより、前記傾斜車両の左方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。
同様に、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際、前記フレーム構造体よりも先に前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が路面と接触する。この際、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記右荷重受け部が荷重を受けることによって、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に、前記第1右変形部が変形する。これにより、前記傾斜車両の右方向の転倒によって、前記フレーム構造体に入力される荷重をより確実に低減できる。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを、より抑制することができる。
前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂の前記繊維は、厚み方向に積層された複数の繊維シートを含んでもよい。前記車体が停車状態で左方向に傾斜して路面と接触した際に前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重は、前記フレーム構造体における前記繊維シートの積層方向の荷重であってもよい。前記車体が停車状態で右方向に傾斜して路面と接触した際に前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重は、前記フレーム構造体における前記繊維シートの積層方向の荷重であってもよい。
本発明者は、傾斜車両が停車状態で左右方向に転倒した際、繊維強化樹脂を含むフレーム構造体が、荷重を受ける様子について検討した。具体的には、本発明者は、前記繊維強化樹脂に含まれる繊維の積層方向に対して荷重の入力方向を変えて検討した。その結果、前記繊維の積層方向に荷重が入力された場合には、その際の衝撃が前記フレーム構造体の内部に伝播されることにより、前記フレーム構造体の内部の構造が変化する場合があることが分かった。
これに対し、既述のように、前記フレーム構造体の左側面及び右側面にそれぞれ左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を取り付けることにより、傾斜車両が左右方向に転倒した際に、前記フレーム構造体に入力される荷重を低減できる。よって、前記フレーム構造体に前記繊維シートの積層方向に荷重が入力された場合でも、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂の前記繊維は、厚み方向に積層された複数の繊維シートを含んでもよい。前記車体が停車状態で左方向に傾斜して路面と接触した際に前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重は、前記フレーム構造体における前記繊維シートの繊維方向の荷重であってもよい。前記車体が停車状態で右方向に傾斜して路面と接触した際に前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重は、前記フレーム構造体における前記繊維シートの繊維方向の荷重であってもよい。
上述のように、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂の前記繊維が厚み方向に積層された複数の繊維シートを含む場合、前記フレーム構造体に対して前記繊維シートの繊維方向に荷重が入力されると、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する場合がある。
これに対し、既述のように、前記フレーム構造体の左側面及び右側面にそれぞれ左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を取り付けることにより、傾斜車両が左右方向に転倒した際に、前記フレーム構造体に入力される荷重を低減できる。よって、前記フレーム構造体に前記繊維シートの繊維方向に荷重が入力された場合でも、前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1左変形部の厚さは、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材における他の部分の厚さよりも小さくてもよい。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1右変形部の厚さは、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材における他の部分の厚さよりも小さくてもよい。
これにより、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際に路面との接触によって前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に荷重が入力された場合、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材のうち他の部分よりも厚さが小さい前記第1左変形部で変形が生じやすい。よって、前記傾斜車両の左方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重を、より低減できる。
同様に、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際に路面との接触によって前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に荷重が入力された場合、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材のうち他の部分よりも厚みが小さい第1右変形部で変形が生じやすい。よって、前記傾斜車両の右方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重を、より低減できる。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを、より抑制できる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1左変形部は、左変形切り欠き部を有してもよい。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1右変形部は、右変形切り欠き部を有してもよい。
このように第1左変形部に左変形切り欠き部を設けることにより、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際に、路面との接触によって前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記左荷重受け部に荷重が入力されると、前記左変形切り欠き部で変形が生じやすい。これにより、前記傾斜車両が左方向に転倒した際に前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重を、前記第1左変形部でより吸収することができる。したがって、前記傾斜車両の左方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。
同様に、第1右変形部に右変形切り欠き部を設けることにより、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際に、路面との接触によって前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記右荷重受け部に荷重が入力されると、前記右変形切り欠き部で変形が生じやすい。これにより、前記傾斜車両が右方向に転倒した際に前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力される荷重を、前記第1右変形部でより吸収することができる。したがって、前記傾斜車両の右方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを、より抑制できる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記フレーム構造体と前記左荷重受け部との間に左空間部が形成されるように、前記フレーム構造体に取り付けられていてもよい。前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、前記フレーム構造体と前記右荷重受け部との間に右空間部が形成されるように、前記フレーム構造体に取り付けられていてもよい。
上述のように前記フレーム構造体と前記左荷重受け部との間に前記左空間部を形成することにより、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際に、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1左変形部の変形が容易になるとともに、前記左空間部によって前記左荷重受け部に入力された荷重の少なくとも一部を吸収できる。同様に、前記フレーム構造体と前記右荷重受け部との間に前記右空間部を形成することにより、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際に、前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記第1右変形部の変形が容易になるとともに、前記右空間部によって前記右荷重受け部に入力された荷重の少なくとも一部を吸収できる。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。よって、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することをより抑制できる。
前記フレーム構造体と前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材における前記左荷重受け部との間には、前記左荷重受け部に入力される荷重を吸収する左荷重吸収部材が配置されていてもよい。前記フレーム構造体と前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材における前記右荷重受け部との間には、前記右荷重受け部に入力される荷重を吸収する右荷重吸収部材が配置されていてもよい。
これにより、前記傾斜車両が停車状態で左方向に転倒した際に、路面との接触によって前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記左荷重受け部に入力された荷重は、左荷重吸収部材によって少なくとも一部が吸収される。同様に、前記傾斜車両が停車状態で右方向に転倒した際に、路面との接触によって前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の前記右荷重受け部に入力された荷重は、右荷重吸収部材によって少なくとも一部が吸収される。
したがって、上述の構成により、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。よって、前記傾斜車両の左右方向の転倒によって前記フレーム構造体の前記繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することをより抑制できる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、それぞれ、樹脂が繊維によって強化された繊維強化樹脂を含でいてもよい。
これにより、軽量で且つある程度の強度を有する左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が得られる。よって、前記傾斜車両のさらなる軽量化を図れる。
前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材において、前記左取付部及び前記右取付部は、接着剤によって前記フレーム構造体に固定されていてもよい。
これにより、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を、前記フレーム構造体に対して、該フレーム構造体の強度を低下させることなく容易に取り付けることができる。すなわち、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材をボルト等によって前記フレーム構造体に固定する場合、前記フレーム構造体にボルト穴等を形成する必要があるため、前記フレーム構造体の強度が部分的に低下する可能性がある。これに対し、上述のように、前記左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び前記右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を、前記フレーム構造体に対して接着剤によって固定することにより、前記フレーム構造体を加工する必要がないため、前記フレーム構造体の強度低下を抑制できる。
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、いくつもの技術および工程が開示されていると理解される。これらの各々は、個別の利益を有し、他に開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、本発明の説明では、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、本発明に係る傾斜車両の実施形態について説明する。
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
<フレーム構造体の定義>
本明細書において、フレーム構造体とは、車両の走行中に応力が生じる主骨格部材であり、一般的なフレームはもちろんのこと、応力外皮構造体等も含む。
<変形の定義>
本明細書において、変形とは、形状の変化を意味する。すなわち、力が加わることによって、物の形状が元の形状から変化する場合を変形と呼ぶ。よって、以下の説明において、変形には、物が破損することにより、物の形状が変化する場合も含む。また、以下の説明において、変形には、弾性変形及び塑性変形の両方が含まれる。
<樹脂及び繊維の構造変化の定義>
本明細書において、繊維及び樹脂の構造変化(繊維及び樹脂の構造が変化する)とは、樹脂が繊維に対して剥離したり、樹脂が割れたりすることを意味する。
<繊維方向の定義>
本明細書において、繊維方向とは、繊維の長手方向を意味する。繊維を用いてシート状に形成された繊維シートでは、該繊維シートに含まれる繊維の長手方向が、繊維方向に対応する。繊維が交差するように配置されているシート状の部材の場合には、交差する繊維のそれぞれの方向を、繊維方向と呼ぶ。
本発明の適用対象は、自動二輪車に限らない。本発明は、自動二輪車以外の傾斜車両に適用してもよい。傾斜車両とは、右旋回時に車両の右方に傾斜し、左旋回時に車両の左方に傾斜する車体フレームを有する車両である。
本発明の一実施形態に係る傾斜車両によれば、強度を確保しつつ、さらなる軽量化を図れるような構成が得られる。
以下で、実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
以下、図中の矢印Fは、車両の前方向を示す。図中の矢印RRは、車両の後方向を示す。図中の矢印Uは、車両の上方向を示す。図中の矢印Lは、車両の左方向を示す。図中の矢印Rは、車両の右方向を示す。また、以下の説明において前後左右の方向は、それぞれ、車両を運転する乗員から見た場合の前後左右の方向を意味する。
[実施形態1]
<全体構成>
図1は、実施形態1に係る車両1(傾斜車両)の全体構成の概略を示す側面図である。車両1は、例えば、自動二輪車であり、車体2と、前輪3と、後輪4とを備える。車両1は、傾斜姿勢で旋回する傾斜車両である。すなわち、車両1は、左方向に旋回する際に左方向に傾斜し、右方向に旋回する際に右方向に傾斜する。
車体2は、車体カバー5、ハンドル6、シート7及びパワーユニット8等の各構成部品を支持する。本実施形態では、車体2は、フレーム10と、リア構造体20(フレーム構造体)と、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41(図2参照)とを含む。車体2は、フレーム10及びリア構造体20を含み、且つ、車両1の各構成部品を支持する構造体である。
フレーム10は、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12とを有する。ヘッドパイプ11は、車両1の前部に位置し、ハンドル6に接続されたステアリングシャフト(図示省略)を回転可能に支持する。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から車両後方に向かって延びるように、ヘッドパイプ11に接続されている。メインフレーム12には、パワーユニット8等が支持されている。なお、フレーム10は、一部が車体カバー5によって覆われている。
フレーム10は、金属材料によって構成されていてもよいし、炭素などの繊維によって樹脂が強化された繊維強化樹脂によって構成されていてもよい。
リア構造体20は、リア構造体20が支持する構成部品の荷重及びリア構造体20に入力される力を、壁部21(図2から図4参照)によって負担する、いわゆる応力外皮構造を有する。リア構造体20は、車体2の外表面を構成する。すなわち、リア構造体20は、前記荷重及び力を負担する構造部材としての機能と、車体2の外表面の一部を構成するカバー部材としての機能とを有する。
図2は、車両の上面図、後述する左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の断面図及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の断面図である。図2における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の断面図及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の断面図を、図4及び図7に拡大して示す。図3は、リア構造体20の概略構成を示す斜視図である。図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。図7は、図3におけるVII-VII線断面図である。
本実施形態では、リア構造体20は、車両1のリアフレームとして機能するとともに、車両1のリアカバーとしても機能する。
リア構造体20は、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。本実施形態では、前記炭素繊維は、厚み方向に複数積層された繊維シートを含む。この繊維シートの積層方向は、リア構造体20の壁部21の厚み方向である。前記繊維シートは、繊維を例えば編んだり固めたりすることによって、シート状(平面状)に形成された部材を意味する。
図3に示すように、リア構造体20は、車両1の前後方向に長い形状を有する。リア構造体20は、内部に空間20aを形成するように該空間20aを囲む壁部21を有する。リア構造体20は、壁部21によって、構造部材としての機能を有するとともに、車体2の外表面の一部として機能する。なお、リア構造体20の前部には、シート7を配置するための切り欠き部22が設けられている。
図3及び図4に示すように、リア構造体20は、車両1の左方向の端部に、後述する左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31が配置される左側面21aを有する。また、リア構造体20は、車両1の右方向の端部に、後述する右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41が配置される右側面21bを有する(図3及び図7参照)。本実施形態では、左側面21a及び右側面21bは、平面である。左側面21a及び右側面21bは、壁部21の一部である。
上述のように、本実施形態のリア構造体20は、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されているため、外部から衝撃が加わると、繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する可能性がある。具体的には、車両1が停車状態で左右方向に転倒した場合、リア構造体20は、路面と接触した際に入力される荷重によって、炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する可能性がある。
なお、本実施形態では、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂は、厚み方向に積層された複数の繊維シートを含む。車両1が停車状態で左右方向に転倒した場合、路面との接触によって、リア構造体20に対して前記繊維シートの積層方向に荷重が入力される。
これに対し、本実施形態では、図3に示すように、リア構造体20に対し、車両1の左右方向の両側面に、リア構造体20とは別部材である左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41が取り付けられている。すなわち、リア構造体20の左側面21aの外表面上に、左方に突出するように左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31が設けられているとともに、リア構造体20の右側面21bの外表面上に、右方に突出するように右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41が設けられている。
本実施形態において、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41とは同様の構成を有するため、以下では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31の構成についてのみ説明する。
図4に示すように、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、凸状に湾曲した板状部材である。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、車両1の左方に突出するように、リア構造体20の左側面21a上に取り付けられている。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、リア構造体20と同様、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。
左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、車両1が停車状態で左方向に転倒した場合(図5の場合)に、路面Gと接触する。これにより、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31には、荷重が入力される。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じて、入力された荷重を吸収または分散する。したがって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、車両1が停車状態で左方向に転倒した場合にリア構造体20に入力される荷重を低減することができる。すなわち、リア構造体20に対して、炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化するような荷重が入力されることを抑制できる。
詳しくは、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、左取付部32と、左荷重受け部33と、第1左変形部34とを有する。左取付部32は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31のうち、リア構造体20の左側面21a上に固定される部分である。すなわち、左取付部32は、車両1の左方に突出する左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31において、基端部に位置する。本実施形態では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、車両1の左右方向の断面で見て、一対の左取付部32を有する。
左取付部32は、例えば接着剤によって、左側面21a上に固定されている。すなわち、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、例えば接着剤によって、リア構造体20に固定されている。このように、接着剤等を用いて左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31をリア構造体20に固定することにより、リア構造体20にボルト穴等の加工を行う必要がないため、リア構造体20の強度低下を防止できる。
左荷重受け部33は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31のうち、リア構造体20の左方に位置する突出端である。すなわち、左荷重受け部33は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31において、突出方向(車両1の左方向)の先端(凸の先端)である。よって、左荷重受け部33は、左取付部32よりも左方に位置する。左荷重受け部33は、車両1が停車状態で左方向に転倒した際に、路面に接触する。よって、左荷重受け部33には、車両1が左方向に転倒した際の路面との接触によって、図4に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。
上述のように左荷重受け部33に入力された荷重は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31において、一対の左取付部32にそれぞれ伝達される。すなわち、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31において、左荷重受け部33と一対の左取付部32との間に、荷重の伝達経路が形成されている。
第1左変形部34は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31における突出方向の先端部分に位置する。第1左変形部34は、前記伝達経路内に位置し、且つ、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31の突出方向において、左取付部32よりも左荷重受け部33に近い。第1左変形部34は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31のうち、他の部分に比べて厚みが小さい。すなわち、第1左変形部34は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31における薄肉部分である。第1左変形部34は、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じるような厚みを有する。
左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、左荷重受け部33と、リア構造体20の左側面21aとの間に、左空間部35を有する。これにより、左荷重受け部33に荷重が入力された場合に、第1左変形部34はより容易に変形する。
以上の構成により、第1左変形部34は、車両1が停車状態で左方向に転倒した場合に、左荷重受け部33を介して路面から入力される荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。よって、第1左変形部34は、車両1が停車状態で左方向に転倒した際に左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31に入力される荷重の少なくとも一部を吸収または分散することができる。これにより、車両1が停車時に左方向に転倒した際に、左取付部32を介してリア構造体20に入力される荷重を低減することができる。
図5に示すように車両1が停車状態で左方向に傾斜して転倒した場合、車両1が路面Gと接触した際に車両1に生じる振動値(振動の加速度)は、図6に示すように変動する。すなわち、図6に示すように、車両1が路面Gと接触した際に車両1に生じる振動値は、初期段階では大きく、時間の経過とともに徐々に減少する。これは、車両1が路面Gと接触した際に、車両1が路面に対してバウンドすることが理由と考えられる。したがって、路面Gとの接触によって車両1に入力される荷重は、接触の初期段階で大きい。
上述のような車両1と路面Gとの接触において、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31は、車両1に入力される荷重のピークを低減する。よって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31によって、車両1が左方向に転倒した場合に路面Gとの接触によって車両1に入力される荷重を低減できる。
右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、リア構造体20に対して車両1の右方に設けられている点以外、上述の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と同様の構成及び作用効果を有する。図7に、図3におけるVII-VII線断面を示す。図7に示すように、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、右取付部42と、右荷重受け部43と、第1右変形部44とを有する。右荷重受け部43は、右取付部42よりも右方に位置する。第1右変形部44は、右取付部42と右荷重受け部43との間の荷重の伝達経路内に位置する。右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、右荷重受け部43と、リア構造体20の右側面21bとの間に、右空間部45を有する。
車両1が停車状態で右方向に転倒した際に、右荷重受け部43が路面と接触する。これにより、右荷重受け部43に、図7に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。右荷重受け部43に入力された荷重は、第1右変形部44に伝達される。よって、第1右変形部44は、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。第1右変形部44の変形によって、前記荷重の少なくとも一部を吸収または分散させることができる。
これにより、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、車両1が停車状態で右方向に転倒した際にリア構造体20に入力される荷重を低減することができる。
以上より、本実施形態の構成では、リア構造体20を、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む構成とすることで、リア構造体20の軽量化を図ることができる。よって、車両1の軽量化を図ることができる。
また、リア構造体20の左側面21a及び右側面21bに、それぞれ左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41を取り付ける。これにより、車両1が停車状態で左右方向に転倒した際に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41に荷重が入力される。
具体的には、車両1が停車状態で左方向に転倒した際には、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31が路面Gに接触する。この際、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31の左荷重受け部33に対して荷重が入力される。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31の第1左変形部34は、左荷重受け部33に入力された荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する。第1左変形部34が変形することにより、リア構造体20に入力される荷重を低減できる。そのため、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
同様に、車両1が停車状態で右方向に転倒した際には、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41が路面等に接触する。この際、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41の右荷重受け部43に対して荷重が入力される。右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41の第1右変形部44は、右荷重受け部43に入力された荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形する。第1右変形部44が変形することにより、リア構造体20に入力される荷重を低減できる。そのため、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
また、上述のように、リア構造体20の左右両側面にそれぞれ左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41を設けることにより、車体2の後部の側面に、付属品や乗員等が接触した場合でも、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
しかも、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、リア構造体20とは別の部材であるため、リア構造体20の設計に際して、車両1の転倒を考慮する必要がない。よって、リア構造体20の設計自由度を向上させることができる。
したがって、上述の構成により、リア構造体20の設計自由度を低下させることなく車両1の強度を確保しつつ、車両1のさらなる軽量化を図ることができる。
[実施形態2]
図8に、実施形態2に係る車両の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の断面を示す。この実施形態2における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131は、第1左変形部134の構成が実施形態1の構成とは異なる。よって、以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。なお、以下では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の構成について説明するが、実施形態1と同様、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材も左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131と同様の構成を有する。
図8に示すように、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131は、内面に、車両1の前後方向に延びる一対の切り欠き部131a(左変形切り欠き部)を有する。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131において一対の切り欠き部131aが設けられた部分によって、第1左変形部134が構成される。すなわち、第1左変形部134は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131において、他の部分に比べて厚みが小さい。
なお、一対の切り欠き部131aは、車両1の左右方向の断面で見て、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の内面に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の突出方向(車両1の左方向)において、左荷重受け部133から等しい距離の位置に設けられることが好ましい。しかしながら、一対の切り欠き部131aは、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の内面に、前記突出方向において左荷重受け部133から異なる距離の位置に設けられていてもよい。
車両1が停車状態で左方向に転倒した場合、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131が路面に接触するため、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の左荷重受け部133に、図8に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。切り欠き部131aは、左荷重受け部133に入力された荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に第1左変形部134が変形を生じる。すなわち、切り欠き部131aの溝幅及び溝高さの各寸法は、前記荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に第1左変形部134が変形を生じる寸法である。
なお、本実施形態における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131も、実施形態1の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と同様、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。また、実施形態1と同様、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131は、その内部、すなわち、左荷重受け部133と、リア構造体20の左側面21aとの間に、左空間部135を有する。第1左変形部134は、左荷重受け部133と左取付部132との間の荷重の伝達経路内に位置する。
したがって、車両1が停車状態で左方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の第1左変形部134が、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。これにより、車両1が停車状態で左方向に転倒した場合に左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131が受ける荷重を、吸収または分散させることができる。よって、リア構造体20に入力される荷重を低減することができる。
なお、図8において、符号132は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131の左取付部である。左取付部132は、実施形態1と同様、接着剤等によって、リア構造体20の左側面21a上に固定されている。よって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131は、実施形態1における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と同様、接着剤によってリア構造体20の左側面21a上に固定されている。
特に図示しないが、同様に、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部にも切り欠き部(右変形切り欠き部)を設けることにより、車両1が停車状態で右方向に転倒した場合に、右荷重受け部に入力された荷重によって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に前記第1右変形部が変形を生じる。この第1右変形部の変形によって、前記荷重を吸収または分散させることができる。よって、車両1が右方向に転倒した場合にリア構造体20に入力される荷重を低減することができる。
以上の構成により、車両1が停車状態で左右方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材によって、リア構造体20に入力される荷重を低減することができる。したがって、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
[実施形態3]
図9に、実施形態3に係る車両201の左側面図を示す。図10に、車両201の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231の断面を示す。この実施形態3における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231は、車両201のフロント構造体220の外表面上に取り付けられているとともに、台形状の断面を有する点で、実施形態1の構成とは異なる。よって、以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。なお、以下では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231の構成について説明するが、実施形態1と同様、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材も左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231と同様の構成を有する。
図9に示すように、車両201の車体202は、フロント構造体220(フレーム構造体)と、フレーム210と、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231と、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材(図示省略)とを含む。すなわち、車体202は、フロント構造体220と、フレーム210とを含み、且つ、車両201の各構成部品を支持する。
フロント構造体220は、フロント構造体220によって支持する構成部品の荷重及びフロント構造体220に入力される力を、壁部221(図10参照)によって負担する、いわゆる応力外皮構造を有する。フロント構造体220は、車体202の外表面を構成する。すなわち、フロント構造体220は、前記荷重及び力を負担する構造部材としての機能と、車体202の外表面の一部を構成するカバー部材としての機能とを有する。具体的には、フロント構造体220は、車両201のメインフレームとして機能するとともに、車両201のフロントカバーとしても機能する。
フロント構造体220は、炭素繊維によって樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなど)が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。
フロント構造体220の後部には、フレーム210の前部が接続されている。フレーム210は、フロント構造体220から車両201の後方に向かって延びている。フレーム210は、金属材料によって構成されていてもよいし、炭素などの繊維によって樹脂が強化された繊維強化樹脂を含む材料によって構成されていてもよい。
本実施形態では、フロント構造体220に対し、車両201の左右方向の両側面に、フロント構造体220とは別部材である左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材(図示省略)が取り付けられている。本実施形態において、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231と右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材とは同様の構成を有するため、以下では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231の構成についてのみ説明する。
左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231は、図10に示すように、車両201の前後方向に切断した場合の断面で見て、接触平面部231aと、接触平面部231aを支持する一対の脚部231bとを有する。接触平面部231a及び脚部231bは、それぞれ、平板状である。接触平面部231a及び脚部231bは、一体で形成されている。
一対の脚部231bは、接触平面部231aに接続された基端部から先端部に向かって間隔が大きくなるように拡がっている。一対の脚部231bは、それぞれ、先端部がフロント構造体220の外表面上に接着剤等によって固定されている。すなわち、一対の脚部231bの先端部によって、左取付部232が構成される。
本実施形態では、接触平面部231aの厚みは、脚部231bの厚みよりも小さい。
車両1が停車状態で左方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231は、接触平面部231aの平面である外面231c(左荷重受け部)が路面Gと接触する。車両1が停車状態で左方向に転倒した場合に、外面231cには、図10に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。
接触平面部231aの外面231cに入力された荷重によって、接触平面部231aは、脚部231bよりも変形を生じやすい。すなわち、接触平面部231aによって、第1左変形部が構成される。接触平面部231aの厚みは、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる厚みである。
図10において、符号232は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231の左取付部である。左取付部232は、接着剤等によって、フロント構造体220の外表面上に固定されている。よって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231は、実施形態1における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31と同様、接着剤によってフロント構造体220の外表面上に固定されている。
なお、本実施形態における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231も、フロント構造体220と同様、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。また、実施形態1と同様、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231は、その内部、すなわち、外面231cと、フロント構造体220の外表面との間に、左空間部235を有する。
特に図示しないが、同様に、フロント構造体220の右側面上にも、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231と同様の構成を有する右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材が取り付けられる。これにより、車両201が停車状態で右方向に転倒した場合に、右荷重受け部に入力された荷重によって、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に第1右変形部が変形を生じる。この第1右変形部の変形によって、前記荷重を吸収または分散させることができる。よって、車両201が右方向に転倒した場合にフロント構造体220に入力される荷重を低減することができる。
以上の構成により、車両201が停車状態で左右方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材によって、フロント構造体220に入力される荷重を低減することができる。したがって、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
[実施形態4]
図11に、実施形態4に係る車両の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の構成を断面で示す。この実施形態4における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331は、接触平面部331aの厚み及び脚部331bの構成が実施形態3の構成とは異なる。よって、以下では、実施形態3と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。なお、以下では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の構成について説明するが、実施形態3と同様、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材も同様の構成を有する。
図11に示すように、接触平面部331aの厚みは、脚部331bの厚みと同等である。一対の脚部331bは、それぞれ、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の内面に、車両1の前後方向に延びる切り欠き部331dを有する。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の脚部331bにおいて一対の切り欠き部331dが設けられた部分によって、第1左変形部334が構成される。すなわち、脚部331bにおいて、切り欠き部331dが設けられている第1左変形部334は、他の部分に比べて厚みが小さい。
なお、一対の脚部331bに設けられた切り欠き部331dは、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の突出方向において、接触平面部331aから等しい距離の位置に設けられることが好ましい。しかしながら、一対の脚部331bに設けられた切り欠き部331dは、一対の脚部331bにおいて、前記突出方向で接触平面部331aから異なる距離の位置に設けられていてもよい。
車両が停車状態で左方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331が路面に接触するため、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の外面331c(左荷重受け部)に、図11に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。第1左変形部334は、外面331cに入力された荷重によって、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。すなわち、切り欠き部331dの溝幅及び溝高さの各寸法は、前記荷重によって、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に第1左変形部334が変形を生じる寸法である。
なお、本実施形態における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331も、実施形態3の左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331と同様、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。また、実施形態1と同様、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331は、その内部、すなわち、外面331cと、フロント構造体220の外表面との間に、左空間部335を有する。
したがって、車両が停車状態で左方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の第1左変形部334が、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。これにより、車両が停車状態で左方向に転倒した場合に左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331が受ける荷重を、吸収または分散させることができる。よって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331によって、フロント構造体220に入力される荷重を低減することができる。
なお、図11において、符号332は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331の左取付部である。左取付部332は、実施形態3と同様、接着剤等によって、フロント構造体220の外表面上に固定されている。よって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331は、実施形態3における左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材231と同様、接着剤によってフロント構造体220の外表面上に固定されている。
特に図示しないが、同様に、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部にも切り欠き部を設けることにより、車両が停車状態で右方向に転倒した場合に、右荷重受け部に入力された荷重によって前記第1右変形部が変形を生じる。この第1右変形部の変形によって、前記荷重を吸収または分散させることができる。よって、車両が停車状態で右方向に転倒した場合にフロント構造体220に入力される荷重を低減することができる。
以上の構成により、車両が停車状態で左右方向に転倒した場合に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材331または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材によって、フロント構造体220に入力される荷重を低減することができる。したがって、フロント構造体220の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態1、2では、リア構造体20の平面状の左側面21aに、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131が固定されている。しかしながら、図12及び図13に示すように、曲面121aを有するリア構造体120(フレーム構造体)に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131が固定されていてもよい。すなわち、リア構造体120の曲面121a上に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131が取り付けられてもよい。この場合、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131の左取付部32,132は、接着剤によって曲面121aに固定されている。
なお、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材についても、同様に、リア構造体120の曲面121a上に固定されていてもよい。また、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の一方のみが、リア構造体120の曲面121a上に固定されていてもよい。さらに、実施形態3、4におけるフロント構造体が曲面を有する場合、該曲面上に左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の少なくとも一方が固定されていてもよい。
図12及び図13に示す構成では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131の左取付部32,132は、リア構造体120の曲面121aに対し、リア構造体120の外表面に沿うように取り付けられる。これにより、車両が停車状態で左方向に転倒した場合に左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131に入力された荷重は、リア構造体120に対し、外表面に沿う方向に入力される。
ここで、リア構造体120は、実施形態1のリア構造体20と同様、リア構造体120の壁部の厚み方向に積層された炭素繊維シートを含む。そのため、図12及び図13に示す構成において上述のように左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131からリア構造体120に入力される荷重は、前記炭素繊維シートの繊維方向に入力される。
この場合、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131から入力された荷重によって、リア構造体120の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の構造が変化する場合がある。
これに対し、図12及び図13に示す構成でも、前記実施形態1、2の場合と同様、車両が左方向に転倒した場合、路面から図12及び図13に白抜き矢印で示す方向に入力された荷重によって、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131の第1左変形部34,134が、リア構造体120の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。これにより、前記荷重を吸収または分散させることができる。よって、車両が停車時に左方向に傾斜して転倒した場合に、リア構造体120の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することを抑制できる。
前記各実施形態では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に設けられた第1左変形部と、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に設けられた第1右変形部とは、同じ構成を有する。しかしながら、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1左変形部と右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部とを異なる構成にしてもよい。例えば、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1左変形部及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部のいずれか一方を、実施形態1、3のような薄肉部分とし、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1左変形部及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の第1右変形部の他方を、実施形態2、4のような切り欠き部を設けることによって構成してもよい。
また、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の少なくとも一方に、変形部として、薄肉部分及び切り欠き部の両方を設けてもよい。すなわち、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の少なくとも一方において、実施形態1の薄肉部分の構成と、実施形態2の切り欠き部の構成とを組み合わせることにより、図14に示す構成にしてもよい。図14は、切り欠き部431aを有する第1左変形部434が設けられているとともに、薄肉部分である第2左変形部435が設けられた左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の断面図である。なお、実施形態1、2と同様、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の左取付部432は、接着剤によってリア構造体20の左側面21a上に固定されている。
図14に示すように、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の内面には、実施形態2と同様に、車両の前後方向に延びる一対の切り欠き部431aが設けられている。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431において一対の切り欠き部431aが設けられた部分によって、第1左変形部434が構成される。すなわち、第1左変形部434は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431において、他の部分に比べて厚みが小さい。
一対の切り欠き部431aは、車両の左右方向の断面で見て、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の内面に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の突出方向において、左荷重受け部433から等しい距離の位置に設けられることが好ましい。左荷重受け部433は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の先端に位置し、且つ、車両が左方向に転倒した場合に路面から荷重が入力される部分である。
第2左変形部435は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431における突出方向の先端部分に位置する。第2左変形部435は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431のうち、他の部分に比べて厚みが小さい。すなわち、第2左変形部435は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431における薄肉部分である。
第1左変形部434及び第2左変形部435は、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431において、車両が左方向に転倒した場合に左荷重受け部433に入力される荷重の伝達経路(左荷重受け部433から左取付部432まで)内に位置する。左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431は、その内部、すなわち、左荷重受け部433と、リア構造体20の外表面との間に、左空間部436を有する。
車両が左方向に転倒した場合、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431が路面に接触する。その際、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の左荷重受け部433に、図14に白抜き矢印で示す方向に荷重が入力される。この荷重によって、まず、第1左変形部434が、リア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。この第1左変形部434の変形によって前記荷重の少なくとも一部が吸収または分散される。前記荷重を第1左変形部434によって十分に吸収または分散できなかった場合、前記荷重によって、第2左変形部435もリア構造体20の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化する前に変形を生じる。この第2左変形部435の変形によって、前記荷重の少なくとも一部が吸収または分散される。
これにより、車両が停車時に左方向に転倒した際に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431の左取付部432を介してリア構造体20に入力される荷重をより低減することができる。
なお、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、リア構造体20の右方に取り付けられている以外、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材431と同様の構成を有するため、図示及び説明を省略する。
上述の説明では、一対の切り欠き部431aを第1左変形部434とし、薄肉部分を第2左変形部435としているが、前記薄肉部分を第1左変形部とし、一対の切り欠き部431aを第2左変形部としてもよい。
前記各実施形態では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131,231,331及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、その内部に、それぞれ、左空間部35,135,235,335及び右空間部45を有する。しかしながら、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の内部に、それぞれ、左荷重吸収部材及び右荷重吸収部材を配置してもよい。例えば図15に示すように、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の内部、すなわちリア構造体20の左側面21aと左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31の左荷重受け部33との間に、左荷重吸収部材50を配置してもよい。特に図示しないが、同様に、右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の内部、すなわちリア構造体の右側面と右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の右荷重受け部との間に、右荷重吸収部材を配置してもよい。
左荷重吸収部材50及び右荷重吸収部材は、例えば、発泡樹脂などの樹脂、ゴム、ゲル状材料など、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力された荷重を吸収可能な材料であれば、どのような材料であってもよい。
これにより、車両が停車状態で左右方向に転倒した際に、路面との接触によって左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材に入力された荷重(左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31に入力される荷重の方向は、図15に白抜き矢印で示す方向)は、左荷重吸収部材50または右荷重吸収部材によって少なくとも一部が吸収される。したがって、上述の構成により、車両の左右方向の転倒によってフレーム構造体に入力される荷重をより低減できる。よって、車両の左右方向の転倒によってフレーム構造体の炭素繊維強化樹脂における繊維及び樹脂の少なくとも一部の構造が変化することをより抑制できる。
なお、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材の一方のみに、荷重吸収部材を設けてもよい。
前記実施形態2、4では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材131,331に、一対の切り欠き部131a,331dが設けられている。しかしながら、切り欠き部を一つのみ設けてもよい。
前記各実施形態では、リア構造体20,120、フロント構造体220、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131,231,331、及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。しかしながら、リア構造体、フロント構造体、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131,231,331、及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を、炭素繊維以外の繊維(例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維など)によって樹脂が強化された繊維強化樹脂によって構成してもよい。また、前記実施形態では、リア構造体20,120、フロント構造体220、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131,231,331、及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂によって構成されている。しかしながら、樹脂は、繊維によって強化可能な樹脂であれば、他の種類の樹脂であってもよい。
さらに、リア構造体、フロント構造体、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材、及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、例えば金属や樹脂など、繊維強化樹脂以外の材料を含んでいてもよい。
前記各実施形態において、炭素繊維強化樹脂に用いられる炭素繊維は、繊維同士が編まれていてもよいし、編まれていない状態であってもよい。また、前記炭素繊維は、所定長さ(例えば1mm)以上、連続した繊維であってもよいし、不連続繊維であってもよい。
前記各実施形態において、炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維によって強化された炭素繊維強化樹脂層と、発泡合成樹脂を含む発泡樹脂層とが厚み方向に積層された複合材料によって構成されていてもよい。この複合材料は、一対の前記炭素繊維強化樹脂層を有し、それらの炭素繊維強化樹脂層の間に、前記発泡樹脂層が配置された材料である。前記複合材料を用いることにより、炭素繊維強化樹脂層のみを用いる場合に比べて、炭素繊維強化樹脂を含む各部材の軽量化を図れるとともに、前記各部材の厚みを容易に変えることができる。なお、前記発泡樹脂層の前記発泡合成樹脂として、振動を吸収可能な樹脂を用いてもよい。
前記各実施形態では、車体は、応力外皮構造を有するリア構造体20,120またはフロント構造体220を有する。しかしながら、車体は、メインフレーム及びシートレールを含むフレーム構造を有していてもよい。この場合には、フレーム構造は、炭素繊維によって樹脂が強化された炭素繊維強化樹脂を含む材料によって構成されている。そして、前記フレーム構造の外表面上で、且つ、車両が停車状態で左右方向に転倒した場合に接触する位置に、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材または右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材を取り付ければよい。
前記各実施形態では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材31,131,231,331、及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材41は、リア構造体20,120、フロント構造体220に対し、接着剤によって固定されている。しかしながら、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、溶着またはボルト固定など、接着剤以外の方法によって、リア構造体及びフロント構造体に固定されていてもよい。
前記各実施形態では、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、リア構造体20,120及びフロント構造体220に対して固定されている。しかしながら、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、リア構造体及びフロント構造体以外に取り付けてもよい。すなわち、左側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材及び右側面繊維強化樹脂構造変化抑制部材は、車両の骨格を形成するフレーム構造体に取り付けられていればよい。