JP7155601B2 - 転がり軸受用樹脂製保持器及びその製造方法、並びに転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受用樹脂製保持器及びその製造方法、並びに転がり軸受 Download PDF

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Description

本発明は、転がり軸受用の樹脂製保持器、並びに前記保持器を射出成形して製造する方法に関する。また、本発明は、前記樹脂製保持器を備える転がり軸受に関する。
一般的に、樹脂製保持器は、射出成形により製造される。保持器として、例えば図13に示すような冠型保持器100が知られているが、この冠型保持器100は、略円環状の基部110と、基部110の軸方向一端側面112から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部120とを有し、隣り合う一対の柱部120,120の互いに対向する面122,122と基部110の軸方向一端側面112とによってポケット130を形成する。そして、この冠型保持器100を射出成形して製造するには、図13に示すように、基部110、柱部120及びポケット130に対応する形状のキャビティ140が形成された成形金型を用い、柱部120に対応する位置にゲート150を設け、溶融樹脂組成物を流入し、冷却固化させる。
このような射出成形では、ゲート150から供給された溶融樹脂組成物は、図14の矢印で示すように、キャビティ140を左右方向に分かれて流動し、ゲート150の周方向反対側の位置にて会合し、固化する際に接合面(以下「ウェルドラインW」)が形成される。このウェルドラインWにおいて強度が低下することが知られており、溶融樹脂組成物に炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を配合した場合には、この会合部において強化繊維が溶融樹脂組成物の流動方向に対し垂直に配向して補強効果が十分に発現しない。しかも、ウェルドラインW以外の部分では、強化繊維が溶融樹脂組成物の流動方向に対して平行に配向するため、ウェルドラインWとの強度差が大きくなってしまう。
このように、射出成形により製造された樹脂製保持器では、ウェルドラインWから破損することが多いことから、溶融樹脂組成物の会合部、あるいはその近傍に樹脂溜まりを付設し、樹脂溜まりに溶融樹脂組成物を流入させて溶融樹脂組成物の流動を乱すことにより、明確なウェルドラインWが形成されないようにすることが行われている。
そして、本出願人も、特許文献1,2において、樹脂溜まりとキャビティとの連通部の断面積を、ゲートの断面積の1/4以下とすることにより、ウェルドラインWでの強度低下をより抑えることを提案している。
特開2016-50616号公報 特開2016-75295号公報
上記特許文献1,2では、樹脂溜まりの連通部の断面積とゲートの断面積との比率を規定しているが、例えば小径の樹脂製保持器を射出成形で製造する場合ではゲートの断面積が小さくなるため、樹脂溜まりの連通部の断面積が過度に小さくなり、溶融樹脂組成物が流入する前に連通部の開口で溶融樹脂組成物が固化しまう。その結果、溶融樹脂組成物の流動に、十分な乱れを引き起こすことができず、ウェルドラインの発生を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、保持器が小径の場合でも、ウェルドラインの発生をより抑えることができる射出成形による樹脂製保持器の製造方法を提供することを目的とする。また、ウェルド位置の強度低下による保持器損傷を抑制でき、高強度の樹脂製保持器を提供することを目的とする。更には、高強度の樹脂製保持器を備え、耐久性に優れる転がり軸受を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は下記の転がり軸受用樹脂製保持器及びその製造方法、並びに転がり軸受を提供する。
(1)略円環状の基部と、前記基部の軸方向一端側面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数個の柱部と、隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成されたポケットを前記柱部と同数個有する樹脂製保持器であって、
ウェルドラインの周方向両側の前記柱部の周面に、それぞれ第1の切断跡と第2の切断跡を有し、
且つ、前記第1の切断跡の切断面と前記第2の切断跡の切断面とは、該保持器の周面における面積が異なることを特徴とする樹脂製保持器。
(2)前記ウェルドラインは前記基部の前記ポケットの下部で、且つ、該ポケットの最深位置から離れた位置にあることを特徴とする上記(1)に記載の樹脂製保持器。
(3)前記ウェルドラインとは径方向対向位置の近傍に、第3の切断跡を有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の樹脂製保持器。
(4)内輪と外輪との間に、複数の転動体を保持器により転動自在に保持してなる転がり軸受において、
前記保持器が、上記(1)~(3)の何れか1項に記載の樹脂製保持器であることを特徴とする転がり軸受。
(5)略円環状の基部と、前記基部の軸方向一端側面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数個の柱部と、隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成されたポケットを有する樹脂製保持器を、樹脂と強化繊維とを含有する溶融樹脂組成物を射出成形して製造する方法において、
前記基部に対応する形状の基部相当部、前記柱部に対応する形状の柱部相当部及び前記ポケットに対応する形状のポケット相当部を有するキャビティが形成されているとともに、単一のゲートが前記柱部相当部と当接して設けられ、
前記ゲートと該ゲートの径方向に対向する位置とを結んだ仮想線の周方向両側に、一方の前記柱部相当部に第1の樹脂溜まり、他方の前記柱部相当部に第2の樹脂溜まりがそれぞれ付設されており、かつ、前記第1の樹脂溜まりの前記柱部相当部との連通部の該保持器周面における開口面積と、前記第2の樹脂溜まりの前記柱部相当部との連通部の該保持器周面における開口面積とが異なっている成形金型を用い、
前記ゲートから当接の前記柱部相当部に向けて前記溶融樹脂組成物を注入することを特徴とする転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
(6)前記第1の樹脂溜まり及び前記第2の樹脂溜まりが共に、前記基部相当部の径方向外側に設けられていることを特徴とする上記(5)に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
(7)前記第1の樹脂溜まり及び前記第2の樹脂溜まりが共に、前記基部相当部の径方向内側に設けられていることを特徴とする上記(5)に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
(8)前記第1の樹脂溜まりが前記柱部相当部を挟んで対向して設けられており、かつ、前記第2の樹脂溜まりが前記柱部相当部を挟んで対向して設けられていることを特徴とする上記(5)に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
(9)前記第1の樹脂溜まりの前記開口面積に相当する相当円の直径と、前記第2の樹脂溜まりの前記開口面積に相当する相当円の直径との差が、0.5mm以上であることを特徴とする上記(5)~(8)の何れか1項に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
本発明によれば、溶融樹脂組成物の会合位置(ウェルド位置)において、溶融樹脂組成物中の強化繊維の配向は、水平に配向した強化繊維が主となり、溶融樹脂組成物が会合する位置における強度低下を抑制することができ、高強度の樹脂製保持器が得られる。また、本発明によれば、このように高強度の樹脂製保持器を備えるため、耐久性に優れる転がり軸受が得られる。
本発明の製造方法で用いる成形金型のキャビティ、並びにその周辺部材を示す模式図である。 キャビティ及び樹脂溜まりを、キャビティの基部相当部側から見た図である。 キャビティ内での溶融樹脂組成物の流動状態(ファンテンフロー)を説明するための模式図である。 (a)、(b)共に強化繊維の配向状態を説明するための模式図である。 大開口樹脂溜まりの連通部周辺での溶融樹脂組成物の流動状態を説明するための模式図である。 会合位置の周辺での溶融樹脂組成物の流動状態を説明するためのもしき図である。 本発明の製造方法の第2実施形態について、樹脂溜まりの周辺を示す模式図である。 本発明の製造方法の第3実施形態について、樹脂溜まりの周辺を示す模式図である。 (A)は本発明の樹脂製保持器の第1実施形態を示す斜視図であり、(B)はウェルドライン周辺の拡大図である。 (A)は本発明の樹脂製保持器の第2実施形態を示す斜視図であり、(B)はウェルドライン周辺の拡大図である。 本発明の樹脂製保持器の第3実施形態を示す図であり、そのウェルドライン周辺を示す。 溶融樹脂組成物の流動をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)→(B)→(C)の順に流動する。 冠型保持器の一例を示す斜視図である。 図13に示す冠型保持器を射出成形により製造する従来法を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、保持器として図13に示した冠型保持器を例示して説明する。先ず、製造方法について説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は示すに、キャビティ100Aは、図13に示した冠型保持器100の基部110に対応する基部相当部110A、柱部120に対応する柱部相当部120A及びポケット130に対応するポケット相当部130Aで構成されている。
また、キャビティ100Aの一つの柱部120Aの内周側に、ゲート10が接続してり、射出成形機(図示せず)からの溶融樹脂組成物30が、スプルー11及びライナー12を通じてゲート10からキャビティ100Aに供給される。そして、溶融樹脂組成物30は、図中の矢印で示すように、ゲート10から2方向に分かれ、溶融樹脂組成物30aと溶融樹脂組成物30bとなって、キャビティ100Aの左右の各半周分をそれぞれ流動し、ゲート10とは周方向反対側の位置近傍で会合する。
溶融樹脂組成物30は、樹脂と強化繊維とを含む。樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができるが、樹脂自身の強度が優れることから、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられ、酸化防止剤や潤滑剤、帯電防止剤、可塑剤、硬化剤、硬化助剤等を適量添加してもよい。
強化繊維にも制限はなく、ガラス繊維や炭素繊維、金属繊維等を、樹脂との合計量の50質量%以下の範囲で配合することができる。含有量が50質量%を超えると溶融樹脂組成物としての流動性が低下することが懸念される。また、得られる樹脂製保持器の強度面から、繊維径は5~13μmが好ましい。更に、樹脂との接着性を考慮すると、カップリング剤やサイジング剤等で表面処理されていることが好ましい。
その他、樹脂製保持器に含まれる各種配合物を添加してもよい。
図2に示すように、ゲート10と、ゲート10と径方向で対向する位置とを通る線を仮想線Xとすると、この仮想線Xの周方向両側の隣り合う柱部相当部120A1,120A2のそれぞれに、樹脂溜まり15,16を付設する。樹脂溜まり15,16は、それぞれ対面する柱部相当部120A1,120A2とは、連通部17,18を介して接続している。連通部17,18は、それぞれ対面する柱部相当部120A1,120A2の周方向の幅の中央部に接続している。また、樹脂溜まり15,16の容量は同一でも、異なっていてもよい。
また、一方の樹脂溜まり15の連通部17と、他方の樹脂溜まり16の連通部18において、それぞれの柱部相当部側の開口の大きさが異なっている。図2の例では、樹脂溜まり15の連通部17において保持器の周面での開口面積が大きくなっており、以降の説明では連通部の保持器の周面における開口面積が大きい方の樹脂溜まり15を「大開口樹脂溜まり15」と呼び、連通部の保持器の周面における開口面積が小さい方の樹脂溜まり16を「小開口樹脂溜まり16」と呼ぶ。
大開口樹脂溜まり15の開口19と小開口樹脂溜まり16の開口20との大きさの差は、連通部17の保持器周面における開口面積に相当する相当円の直径をD1、連通部18の保持器周面における開口面積に相当する相当円の直径をD2とするとき、D1とD2との差が0.5mm以上であることが好ましい。
ところで、流路を流動する溶融樹脂組成物は「ファンテンフロー」になることが知られている。図3に示すように、このファンテンフローでは、溶融樹脂組成物30はキャビティ100Aの中心部の流速が最も速く、キャビティ100Aの壁面に向かうほど流速が漸次遅くなる流速分布を有する。また、図中に符号Fで示すように、溶融樹脂組成物30の先端の中心部からキャビティ100Aの壁面に向かって流動方向とは逆向きに流れる流動状態となる。射出成形では成形金型を冷却して溶融樹脂組成物30を固化させるが、その際、キャビティ100Aの壁面側から固化して「スキン層」と呼ばれる固化層33が形成され、この固化層33が徐々に厚く成長していく。
また、図4(a)に示すように、溶融樹脂組成物30に配合されている強化繊維35は、流れの中心部の流速が速いため、この中心部に位置する強化繊維35はキャビティ100Aの壁面とほぼ平行に配向している。しかし、溶融樹脂組成物30はキャビティ100Aの壁面に近いほど流速が遅く、しかも固化層33が形成されていない部分では、固化層33が形成された部分よりも流路が広くなるため流速が遅くなり、更には先端付近では流動方向とは逆向きの流れになるため、強化繊維35は溶融樹脂組成物30の先端に近いほど水平からの傾斜が大きくなる。そして、傾斜の大きな強化繊維35は、流れの抵抗となり、流速が更に遅くなる。その結果、同図(b)に示すように、溶融樹脂組成物30の先端付近では、傾斜が大きく、遅い強化繊維35(符号35Aで示す)に、上流側(図中左側)からの強化繊維35が次々と衝突して強化繊維35が折れ曲がり、屈曲部で破断するもののある。以降の説明では、大きく折れ曲がったり、破断した強化繊維35を「折損した強化繊維35」と呼ぶ。
更に、仮想線Xよりもゲート10に近い側に樹脂溜まりが配置されると、溶融樹脂組成物30は、樹脂溜まりの開口に近い一部が樹脂溜まりに流入する。また、樹脂溜まりの開口付近では溶融樹脂組成物30の流速が速くなるため、固化層33が形成しにくくなり、溶融樹脂組成物30がより流入しやすくなる。また、樹脂溜まりの開口が大きいほど、溶融樹脂組成物30が流入しやすい。
強化繊維35を含有する溶融樹脂組成物30は、このような流動状態となる。本発明では大開口樹脂溜まり15と小開口樹脂溜まり16とを備えるため、図5に示すように、大開口樹脂溜まり15が配置された図中右半周側のキャビティ100Aを流動する溶融樹脂組成物30aの一部は、大開口樹脂溜まり15に流入する。それに伴って、小開口樹脂溜まり16が配置された図中左半周側のキャビティ100Aを流動する溶融樹脂組成物30bの一部が大開口樹脂溜まり15の開口19にまで流動し、開口19の中央付近Yにて溶融樹脂組成物30aと会合する。溶融樹脂組成物30a,30bともに、それぞれの先端付近には傾斜角が大きな強化繊維35や、折損した強化繊維35が多く存在しており、これら強化繊維35の多くが大開口樹脂溜まり15に流入する。また、溶融樹脂組成物30aと溶融樹脂組成物30bとが会合することによって強化繊維35同士が衝突して、折損し、大開口樹脂溜まり15に流入する。このように、折損した強化樹脂35の多くが大開口樹脂溜まり15に流入し、大開口樹脂溜まり15は折損した強化繊維35の回収部として機能する。
大開口樹脂溜まり15が溶融樹脂組成物30で充満されると、図6に示すように、溶融樹脂組成物30aは小開口樹脂溜まり16に向かって流動する。それに伴って、大開口樹脂溜まり15の開口19の近傍では溶融樹脂組成物30の流動が無くなるため、固化層33が形成して開口19を閉鎖し、固化層33が厚く成長していく。そのため、大開口樹脂溜まり15の開口19から小開口樹脂溜まり16に続く流路が狭くなり、溶融樹脂組成物30aの流速が高まり、強化繊維35も傾斜が小さく、水平に近いものが多くなる。
大開口樹脂溜まり15と小開口樹脂溜まり16との間も固化層33が形成されており、流路が狭くなっているため、小開口樹脂溜まり16には、このような傾斜が小さく、水平に近い強化繊維35が多く存在する溶融樹脂組成物30aが流入する。そのため、小開口樹脂溜まり16では、大開口樹脂溜まり15に比べて、折損した強化繊維35が大幅に少なくなる。そして、小開口樹脂溜まり16は、充満後には開口20が固化層33で閉鎖される。
大開口樹脂溜まり15と小開口樹脂溜まり16とは、仮想線Xに対して等間隔であるため、両樹脂溜まり15,16が充満した後には、溶融樹脂組成物30aと溶融樹脂組成物30bとは均衡を保つために仮想線Xの付近にて会合する。上記したように、仮想線Xの周辺を流動する溶融樹脂組成物30a,30bともに、強化繊維35は傾斜が小さく、水平なものが主であり、会合しても強化繊維同士が衝突することが少なく、折損も少なくなる。そのため、会合位置(ウェルド位置)において、水平に配向した強化繊維35が主となり、溶融樹脂組成物30a,30bが会合する位置における強度低下を抑制することができ、高強度の樹脂製保持器が得られる。
本発明では、ゲート10の開口の大きさには制限がないため、小径の樹脂製保持器を製造する場合にも有効である。
(第2実施形態)
第1実施形態では、大開口樹脂溜まり15及び小開口樹脂溜まり16が共に、基部相当部110Aの径方向外周側に配置されているが、図7に示すように、径方向内周側に配置することもできる。この場合も、大開口樹脂溜まり15の開口19の相当円の直径D1と、小開口樹脂溜まり16の開口20の相当円の直径D2とが異なり、好ましくは0.5mm以上の直径差にする。
(第3実施形態)
図8に示すように、大開口樹脂溜まり15と、小開口樹脂溜まり16とをそれぞれ、基部相当部110Aを挟んで、径方向内周側と径方向外周側の両方に対向して配置することもできる。このような対向配置により、折損した強化繊維35の回収率を高めるとともに、強化繊維35の傾斜をより小さく揃えることができ、会合位置での強度低下をより抑えることができる。
上記の実施形態1,2の製造方法によれば、例えば、以下に示すような冠型保持器が得られる。尚、図1に示すように、ゲート10が基部相当部100Aの内周側で、大開口樹脂溜まり15及び小開口樹脂溜まり16が柱部相当部120Aの外周側に設置された場合を説明する。
図9に示す冠型保持器100では、奇数個のポケットと奇数本の柱部がそれぞれ同数ずつ設けられており、ゲート10の周方向対向位置にウェルドラインWが形成され、その両側の柱部120a,120bの一方の柱部120aに大開口樹脂溜まり15に由来する切断跡160が形成され、他方の柱部120bに小開口樹脂溜まり16に由来する切断跡170が形成される。2つの切断跡160,170の保持器の周面における面積は異なっている。
また、冠型保持器100には、図示されように、ゲート10に由来する切断跡180も形成される。
尚、図9(B)は、図9(A)のウェルドラインWの周辺(丸で囲んだ部分)の拡大図であり、ウェルドラインWは大開口樹脂溜まりに由来する切断跡160の側に凸となる湾曲状を呈している。
ゲート10の位置や、溶融樹脂組成物30の流動条件(流速や粘度等)により、ウェルドラインWの位置を変えることができる。図9に示す冠型保持器100では、ウェルドラインWは、基部110のポケット130aの幅の中央、即ち最深位置の近傍に形成されているが、例えば図10に示すように、大開口樹脂溜まり15に由来する切断跡160が形成された柱部120a側に変位させることができる。基部110は、厚い部分ほど強度が高いため、ポケット130aの最深位置よりも、柱部120a,120bに近くなるほど強度が高くなる。従って、ウェルドラインWを柱部120aに近づけることにより、より高強度の冠型保持器100となる。尚、ウェルドラインWを小開口樹脂溜まり16に由来する切断跡170が形成された柱部120b側に変位させても同様の効果が得られる。
尚、図10に示す冠型保持器100では、奇数個のポケットと奇数本の柱部とがそれぞれ同数ずつ設けられている。図10(B)は、図10(A)のウェルドラインWの周辺(丸で囲んだ部分)の拡大図であり、ウェルドラインWは大開口樹脂溜まりに由来する切断跡160の側に凸となる湾曲状を呈している。
同様の理由から、ウェルドラインWを柱部120に形成することにより、更に強度を増すことができる。その際、柱部とポケットとが共に同数で、偶数であり、任意の柱部の位置にゲートを設けると、ゲートと対向する位置が柱部となる。そして、得られる冠型保持器には、このゲートと対向する柱部にウェルドラインWが形成される。
具体的には、図11にウェルドラインWの周辺部分を示すが、ゲートと対向する柱部120cにウェルドラインWが形成されている。この柱部120cを挟んで、その一方の隣の柱部120aに大開口樹脂溜まりに由来する切断跡160が形成され、他方の隣の柱部120bに小開口樹脂溜まりに由来する切断跡170が形成される。即ち、大開口樹脂溜まりと小開口樹脂溜まりとは、ゲートと、ゲートと対向する位置とを結ぶ仮想線を中心にして対称に設けられる。また、ウェルドラインWは大開口樹脂溜まりに由来する切断跡160の側に凸となる湾曲状を呈している。
(シミュレーション)
また、本発明の保持器の製造方法について、シミュレーションを行った。尚、金型のキャビティは、柱部相当部120Aやポケット相当部130Aの無い、基部相当部110Aのみの円環状とし、大開口樹脂溜まり15と小開口樹脂溜まり16を、それぞれ仮想線Xから等間隔で設けている。大開口樹脂溜まり15と小開口樹脂溜まり16とは同じ容量とし、D1を1.5mm、D2を0.5mmとした。溶融樹脂組成物は、ガラス繊維を25質量%含有するポリアミド樹脂組成物を想定し、ゲート10からの供給量を10cc/sとした。解析ソフトには、「3D TIMON」を用いた。
結果を図12に示すが、同図(A)に示すように、ゲート10から供給された溶融樹脂組成物30は、ゲート10と径方向対向する位置に向かって流動する。そして、先ず同図(B)に示すように大開口樹脂溜まり15に流入し、同図(C)に示すように大開口樹脂溜まり15が充満すると、小開口樹脂溜まり16に流入する。
以上、本発明の樹脂製保持器及びその製造方法に関して、図13に示すような冠型保持器100を例示して説明したが、保持器の種類には制限はなく、櫛型保持器等の各種保持器の製造にも適用することができる。
また、本発明は、このような高強度の樹脂製保持器を備える転がり軸受に関する。即ち、図示は省略するが、内輪と外輪との間に、複数の転動体を、例えば上記の樹脂製の冠型保持器100により転動自在に保持した転がり軸受とすることができる。そして、上記のように冠型保持器100が高強度であるため、本発明の転がり軸受は耐久性に優れるようになる。
10 ゲート
11 スプルー
12 ライナー
15 大開口樹脂溜まり
16 小開口樹脂溜まり
17,18 連通部
19,20 開口
30,30a,30b 溶融樹脂組成物
33 固化層
35,35A 強化繊維
100 冠型保持器
110 基部
120、120a,120b、120c 柱部
130、130a ポケット
160、170 切断跡
100A キャビティ
110A 基部相当部
120A、120A1、120A2 柱部相当部
130A ポケット相当部

Claims (9)

  1. 略円環状の基部と、前記基部の軸方向一端側面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数個の柱部と、隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成されたポケットを前記柱部と同数個有し、強化繊維を含有する樹脂製保持器であって、
    ウェルドラインの周方向両側且つ前記ウェルドラインに最も近い前記柱部の周面に、それぞれ第1の切断跡と第2の切断跡を有し、
    且つ、前記第1の切断跡の切断面と前記第2の切断跡の切断面とは、該保持器の周面における面積が異なることを特徴とする樹脂製保持器。
  2. 前記ウェルドラインは前記基部の前記ポケットの下部で、且つ、該ポケットの最深位置から離れた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製保持器。
  3. 前記ウェルドラインとは径方向対向位置の近傍に、第3の切断跡を有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製保持器。
  4. 内輪と外輪との間に、複数の転動体を保持器により転動自在に保持してなる転がり軸受において、
    前記保持器が、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂製保持器であることを特徴とする転がり軸受。
  5. 略円環状の基部と、前記基部の軸方向一端側面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数個の柱部と、隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成されたポケットを有する樹脂製保持器を、樹脂と強化繊維とを含有する溶融樹脂組成物を射出成形して製造する方法において、
    前記基部に対応する形状の基部相当部、前記柱部に対応する形状の柱部相当部及び前記ポケットに対応する形状のポケット相当部を有するキャビティが形成されているとともに、単一のゲートが前記柱部相当部と当接して設けられ、
    前記ゲートと該ゲートの径方向に対向する位置とを結んだ仮想線の周方向両側且つ前記仮想線に最も近い一対の前記柱部相当部のうち、一方の前記柱部相当部に第1の樹脂溜まり、他方の前記柱部相当部に第2の樹脂溜まりがそれぞれ付設されており、かつ、前記第1の樹脂溜まりの前記柱部相当部との連通部の該保持器周面における開口面積と、前記第2の樹脂溜まりの前記柱部相当部との連通部の該保持器周面における開口面積とが異なっている成形金型を用い、
    前記ゲートから当接の前記柱部相当部に向けて前記溶融樹脂組成物を注入することを特徴とする転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
  6. 前記第1の樹脂溜まり及び前記第2の樹脂溜まりが共に、前記柱部相当部の径方向外側に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
  7. 前記第1の樹脂溜まり及び前記第2の樹脂溜まりが共に、前記柱部相当部の径方向内側に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
  8. 前記第1の樹脂溜まりが前記柱部相当部を挟んで対向して設けられており、かつ、前記第2の樹脂溜まりが前記柱部相当部を挟んで対向して設けられていることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
  9. 前記第1の樹脂溜まりの前記開口面積に相当する相当円の直径と、前記第2の樹脂溜まりの前記開口面積に相当する相当円の直径との差が、0.5mm以上であることを特徴とする請求項5~8の何れか1項に記載の転がり軸受用樹脂製保持器の製造方法。
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