以下、本開示の伸縮性回路基板について詳細に説明する。本開示の伸縮性回路基板は、2つの態様を有する。以下、各態様に分けて説明する。
A.第1態様
本開示の第1態様の伸縮性回路基板は、伸縮性を有する基材と、粘着層と、支持基材と、配線と、をこの順に有し、上記配線、上記支持基材および上記粘着層が、上記伸縮性を有する基材の第1面側に位置し、上記基材の上記第1面の法線方向における山部及び谷部が上記基材の上記第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、上記粘着層のヤング率が、上記伸縮性を有する基材のヤング率よりも小さい。
ここで、「伸縮性」とは、伸び縮みすることができる性質、すなわち、常態である非伸長状態から伸長することができ、この伸長状態から解放したときに復元することができる性質をいう。非伸長状態とは、引張応力が加えられていないときの状態である。伸縮性は、ストレッチャブルともいう。
また、「伸縮性を有する基材」を単に「基材」と称する場合がある。
本態様の伸縮性回路基板について図面を参照して説明する。なお、本開示で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
図1(a)、(b)は、本態様の伸縮性回路基板の一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A線断面図である。図1(a)、(b)に例示する伸縮性回路基板1は、伸縮性を有する基材2と、粘着層8と、支持基材7と、配線4と、をこの順に有しており、粘着層8のヤング率が、基材2のヤング率よりも小さくなっている。また、伸縮性回路基板1は、支持基材7の配線4側の面に機能性部材5を有することができる。
伸縮性回路基板1において、配線4と支持基材7と粘着層8とは、基材2の第1面2a側に位置しており、基材2の第1面2aの法線方向における山部31、33、35及び谷部32、34、36が基材2の第1面2aの面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部30を有する。図1(a)、(b)において、山部31は、配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に現れる山部であり、山部33は、配線4の支持基材7側の面に現れる山部、および支持基材7の配線4側の面に現れる山部であり、山部35は、支持基材7の粘着層8側の面に現れる山部、および粘着層8の支持基材7側の面に現れる山部である。また、谷部32は、配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に現れる谷部であり、谷部34は、配線4の支持基材7側の面に現れる谷部、および支持基材7の配線4側の面に現れる谷部であり、谷部36は、支持基材7の粘着層8側の面に現れる谷部、および粘着層8の支持基材7側の面に現れる谷部である。
図2(a)~(e)は、本態様の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、支持基材7の一方の面に、配線4および機能性部材5を配置して、積層体を作製する。次に、図2(b)~(c)に示すように、伸縮性を有する基材2を伸長する。次いで、図2(d)に示すように、基材2を伸長させた状態で、基材2の第1面2aに、粘着層8を介して、上記積層体の支持基材7側の面を貼合する。続いて、図2(e)に示すように、基材2の引張応力を取り除く。この際、伸縮性を有する基材2が収縮するのに伴い、配線4、支持基材7および粘着層8が変形し、蛇腹形状部30を有するようになる。これにより、伸縮性回路基板1が得られる。
なお、以下、蛇腹形状部の山部及び谷部が繰り返し現れる方向を第1方向と称する場合がある。図1(a)、(b)において、配線4は、第1方向D1に平行に延びている。
本開示において、配線は蛇腹形状部を有する。基材は伸縮性を有することから、伸縮性回路基板を伸長させた場合、基材は、弾性変形によって伸長することができる。ここで、仮に配線も同様に弾性変形によって伸長すると、配線の全長が増加し、配線の断面積が減少するので、配線の抵抗値が増加してしまう。また、配線の弾性変形に起因して配線にクラック等の破損が生じてしまうことも考えられる。これに対して、本開示においては、配線が蛇腹形状部を有するため、基材が伸張する際、配線は、蛇腹形状部の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材の伸張に追従することができる。このため、基材の伸張に伴って配線の全長が増加することや、配線の断面積が減少することを抑制することができる。これにより、伸縮性回路基板の伸張に起因して配線の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、配線にクラック等の破損が生じるのを抑制することができる。
ところで、伸縮性回路基板の製造方法において、配線が蛇腹状に変形する際、変形の度合いが、伸長の際の基材伸びのばらつきや、基材上の配線の分布密度の差等に起因して、位置によってばらついてしまう。配線の変形の度合いにばらつきがあると、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きくなることがある。配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所では、応力が集中する。また、一般に、伸縮性を有する基材にはエラストマーが用いられ、配線には金属や合金等が用いられることから、配線のヤング率は基材のヤング率よりも非常に大きい。すなわち、配線は基材よりも硬く変形しにくい。そのため、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所では、応力が集中しやすくなる。配線において応力が集中する箇所では、折れ等の破損が生じたり、また伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に抵抗値が上昇したりしてしまう。
これに対し、本態様によれば、伸縮性を有する基材および支持基材の間に、伸縮性を有する基材よりも小さいヤング率を有する、すなわち伸縮性を有する基材よりも柔らかく変形しやすい粘着層が位置していることにより、配線が破損したり、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に配線の抵抗値が上昇したりするのを抑制することができる。この理由は明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、一般に、伸縮性を有する基材にはエラストマーが用いられ、配線には金属や合金等が用いられ、支持基材には樹脂が用いられることから、通常、伸縮性を有する基材のヤング率は、配線のヤング率よりも小さく、支持基材のヤング率よりも小さくなる。そのため、粘着層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率よりも小さいことから、配線のヤング率よりも小さく、支持基材のヤング率よりも小さくなる。よって、伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも小さいヤング率を有し、つまり伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも柔らかく変形しやすい粘着層が、伸縮性を有する基材および支持基材の間に位置していることにより、応力を分散させることができる。したがって、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きくなった場合であっても、湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所での応力集中を低減することができる。
また、粘着層は、伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも小さいヤング率を有し、つまり伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも柔らかく変形しやすいため、本開示の伸縮性回路基板の製造方法において、図2(e)に示すように、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部30を有するようになる際に、粘着層8は、蛇腹形状部30の山部35に偏在しやすくなる。そのため、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。また、粘着層が蛇腹形状部の山部に偏在することにより、蛇腹形状部の周期を比較的大きくすることができると考えられる。そのため、蛇腹形状部の周期が大きくなることによっても、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
図3(a)は、伸長状態の伸縮性回路基板の一例を示す断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す伸縮性回路基板が弛緩した状態の一例を示す断面図である。粘着層は、上述したように、伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも小さいヤング率を有し、つまり伸縮性を有する基材、配線および支持基材よりも柔らかく変形しやすいため、図3(a)~(b)に示すように、伸縮性回路基板1が伸長した状態から弛緩した状態になり、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部を有するようになる際に、粘着層8は、蛇腹形状部の山部35に偏在しやすくなる。そのため、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮する際にも、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
さらには、伸縮性回路基板1が弛緩した状態から伸長した状態になると、図3(a)に示すように粘着層8の偏在が少なくなり、再度、伸縮性回路基板1が弛緩した状態になると、図3(b)に示すように粘着層8は蛇腹形状部の山部35に偏在するようになる。このとき、蛇腹形状部の山部31、33、35および谷部32、34、36の位置は、伸縮性回路基1が繰り返し伸縮するたびに、同じ位置になるとは限らず、異なる位置になる傾向にある。
ここで、蛇腹形状部の山部及び谷部の折り目の部分には応力が集中するため、伸縮性回路基が繰り返し伸縮するたびに、蛇腹形状部の山部及び谷部の位置が同じ位置になると、配線に折れ等の破損が生じやすくなる。
これに対し、本態様においては、粘着層が柔軟性、変形性に富むことにより、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮させるたびに、蛇腹形状部の山部及び谷部の位置を異ならせることができる。これにより、伸縮性回路基板が繰り返し伸縮する際に、同じ位置に応力が集中するのを低減することができる。
したがって、本態様においては、配線に折れ等の破損が生じて断線したり、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に配線の抵抗値が上昇したりするのを抑制することが可能である。
本態様の伸縮性回路基板は、伸縮性を有する基材、支持基材、配線および粘着層を少なくとも有する。以下、本態様の伸縮性回路基板の各構成について説明する。
1.粘着層
本態様における粘着層は、伸縮性を有する基材および支持基材の間に位置し、伸縮性を有する基材の第1面の法線方向における山部及び谷部が基材の第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、伸縮性を有する基材よりも小さいヤング率を有する部材である。
粘着層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率よりも小さい。また、粘着層のヤング率は、通常、配線のヤング率よりも小さく、支持基材のヤング率よりも小さい。
具体的には、粘着層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率の4/5以下とすることができ、好ましくは1/2以下であり、より好ましくは1/10以下である。また、粘着層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率の1/10000以上とすることができ、好ましくは1/1000以上であり、より好ましくは1/100以上である。粘着層のヤング率が小さすぎると、取り扱いが困難になる場合がある。また、粘着層のヤング率が大きすぎると、粘着層が柔軟性や変形性に劣る場合がある。
また、粘着層のヤング率は、例えば、1×106Pa以下とすることができ、好ましくは1×105Pa以下である。また、粘着層のヤング率は、例えば、1×102Pa以上とすることができ、好ましくは1×103Pa以上である。粘着層のヤング率が小さすぎると、取り扱いが困難になる場合がある。また、粘着層のヤング率が大きすぎると、粘着層が柔軟性や変形性に劣る場合がある。
なお、各部材のヤング率は、室温でのヤング率である。
粘着層のヤング率の測定方法としては、ISO14577に準拠する、ナノインデーション法による測定方法を採用することができる。具体的には、粘着層のヤング率は、ナノインデンターを用いて測定することができる。また、粘着層のヤング率を求める方法としては、粘着層のサンプルを用いて引張試験を実施するという方法を採用することもできる。粘着層のサンプルを準備する方法としては、伸縮性回路基板から粘着層の一部をサンプルとして取り出す方法や、伸縮性回路基板を構成する前の粘着層の一部をサンプルとして取り出す方法が挙げられる。その他にも、粘着層のヤング率を求める方法として、粘着層を構成する材料を分析し、材料の既存のデータベースに基づいて粘着層のヤング率を求めるという方法を採用することもできる。
なお、配線、伸縮性を有する基材、および支持基材のヤング率を求める方法は、上記粘着層のヤング率を求める方法と同様である。
また、粘着層は、透明性を有することが好ましい。本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材以外の部材が透明性を有する場合には、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、本態様の伸縮性回路基板における配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、粘着層の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
なお、全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定することができる。他の部材の全光線透過率の測定方法も同様とすることができる。
粘着層の材料は、上述のヤング率を有するものであればよく、一般的な粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤から適宜選択して使用することができる。中でも、透明性、加工性及び耐久性等の観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤のベースポリマーは、1種単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系粘着剤のベースポリマーとして用いられるアクリル系ポリマーは、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマーのホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。ここで、「(メタ)アクリル」という表現は、「アクリル」及び「メタクリル」のうちのいずれか一方又は両方を意味する。他の場合も同様である。
具体的には、粘着剤を構成するポリマーの分子量、架橋密度およびガラス転移温度や、粘着剤を構成するポリマーの形成に用いられるモノマーの種類およびガラス転移温度等を調整することによって、粘着層のヤング率を調整することができる。例えば、ポリマーの分子量を小さくすることにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。また、ポリマーの架橋密度を低くすることにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。また、ポリマーのガラス転移温度やモノマーのガラス転移温度を低くすることにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。また、モノマーの構造を適宜選択することにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。具体的には、芳香環構造、脂環構造、複素環構造等の環構造を有さないモノマーを用いたり、モノマーが環構造を有する場合であっても、ポリマー中の環構造の含有量を少なくしたりすることにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。また、水素結合による相互作用、水素原子とπ電子との相互作用、π電子間の相互作用等の分子間相互作用を生じる構造を有さないモノマーを用いたり、モノマーが当該構造を有する場合であっても、ポリマー中の上記構造の含有量を少なくしたりすることにより、粘着層のヤング率を小さくすることができる。
粘着層は、蛇腹形状部を有する。粘着層が有する蛇腹形状部においては、粘着層が柔軟性、変形性に富むため、図1(b)および図3(b)に示すように、粘着層8の伸縮性を有する基材2側の面に現れる山部及び谷部の曲がり具合が、粘着層8の支持基材7側の面に現れる山部35及び谷部36の曲がり具合よりも大幅に緩やかであるか、あるいは、粘着層8の伸縮性を有する基材2側の面には山部及び谷部がほとんど現れないと考えられる。
粘着層が有する蛇腹形状部の振幅は、例えば1μm以上とすることができ、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。また、粘着層の蛇腹形状部の振幅は、例えば1000μm以下とすることができ、好ましくは700μm以下であり、より好ましくは500μm以下である。ここで、蛇腹形状部の振幅が大きくなると、蛇腹形状部の周期が大きくなる傾向にある。そのため、粘着層の蛇腹形状部の振幅が上記範囲内であれば、蛇腹形状部の周期を比較的大きくすることができ、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができると考えられる。また、粘着層の蛇腹形状部の振幅を上記範囲とすることにより、基材の伸張に追従して粘着層が変形し易くなると考えられる。
なお、粘着層の蛇腹形状部の振幅は、図3(b)に示す符号S3で示されるような、粘着層8の支持基材7側の面において、隣り合う山部35と谷部36との間の、基材2の第1面の法線方向における距離である。すなわち、粘着層8の蛇腹形状部の振幅S3は、粘着層8の支持基材7側の面における蛇腹形状部の、基材2の法線方向における振幅である。
粘着層の蛇腹形状部の振幅は、例えば、粘着層の支持基材側の面において、第1方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部と谷部との間の、基材の第1面の法線方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。第1方向における一定の範囲は、例えば10mmとすることができる。隣り合う山部と谷部との間の距離は、断面写真などの画像に基づいて、測定することができる。
粘着層が有する蛇腹形状部の周期としては、後述の配線が有する蛇腹形状部の周期と同様とすることができる。具体的には、粘着層の蛇腹形状部の周期は、例えば10μm以上とすることができ、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上である。また、粘着層の蛇腹形状部の周期は、例えば3mm以下とすることができ、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。粘着層の蛇腹形状部の周期が上記範囲内であれば、蛇腹形状部の山部および谷部の曲率半径を比較的大きくすることができ、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
なお、粘着層の蛇腹形状部の周期は、図3(b)に示す符号F3で示されるような、粘着層8の支持基材7側の面において、第1方向D1における、隣り合う山部35の間隔である。
粘着層の蛇腹形状部の周期は、例えば、粘着層の支持基材側の面において、第1方向における一定の範囲にわたって、第1方向における、隣り合う山部の間隔を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。第1方向における一定の範囲は、例えば10mmとすることができる。隣り合う山部の間隔は、断面写真などの画像に基づいて、測定することができる。
粘着層の厚みとしては、伸縮可能であり、粘着層を介して基材の第1面側に支持基材および配線を貼合可能な厚みであればよい。
中でも、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の振幅以上であることが好ましい。これにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
具体的には、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の振幅の1倍以上とすることができ、好ましくは1.3倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上である。また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の振幅の50倍以下とすることができ、好ましくは10倍以下であり、より好ましくは5倍以下である。
また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
具体的には、粘着層の蛇腹形状部の谷部T2の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部T1の厚みの比(T1/T2)が、1.1以上であることが好ましく、中でも1.3以上であることが好ましい。また、粘着層の蛇腹形状部の谷部T2の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部T1の厚みの比(T1/T2)は、例えば50以下とすることができ、中でも10以下であることが好ましく、特に5以下であることが好ましい。上記比を上記範囲とすることにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の振幅以上であり、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みよりも大きければよいが、例えば5μm以上とすることができ、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上である。また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、例えば1000μm以下とすることができ、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みを上記範囲とすることにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
また、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みよりも小さければよいが、例えば900μm以下とすることができ、好ましくは450μm以下であり、より好ましくは75μm以下である。また、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは、例えば5μm以上とすることができ、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みを上記範囲とすることにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。また、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みが小さすぎると、基材の伸張に追従して粘着層が変形しにくくなったり、また基材および支持基材が剥がれてしまい耐久性が低下したりするおそれがある。
なお、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、図3(b)に示す符号T1で示されるような、粘着層8の支持基材7側の面の山部35における、粘着層8の厚みである。また、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは、図3(b)に示す符号T2で示されるような、粘着層8の支持基材7側の面の谷部36における、粘着層8の厚みである。
粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、例えば、第1方向における一定の範囲にわたって、粘着層の蛇腹形状部の山部における粘着層の厚みを測定し、それらの平均を求めることにより算出される。同様に、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは、例えば、第1方向における一定の範囲にわたって、粘着層の蛇腹形状部の谷部における粘着層の厚みを測定し、それらの平均を求めることにより算出される。第1方向における一定の範囲は、例えば10mmとすることができる。粘着層の蛇腹形状部の山部及び谷部の厚みは、断面写真などの画像に基づいて、測定することができる。
また、本態様の伸縮性回路基板の製造に用いられる粘着層の厚み、すなわち貼合前の粘着層の厚みとしては、伸縮可能であり、粘着層を介して基材の第1面側に支持基材および配線を貼合可能な厚みであればよく、例えば5μm以上、200μm以下の範囲内とすることができ、好ましくは10μm以上、100μm以下の範囲内である。
粘着層の位置としては、粘着層を介して基材の第1面側に支持基材および配線を貼合可能なように粘着層が位置しており、かつ、少なくとも配線が位置する配線領域に粘着層が位置していればよく、例えば、粘着層は、基材の第1面側の全面に位置していてもよく、基材の第1面側に部分的に位置していてもよい。
粘着層が基材の第1面側に部分的に位置している場合には、例えば、図4(b)に示すように、粘着層8が、配線4が位置する配線領域21に少なくとも位置し、さらに基材2の外縁に枠状に位置することができる。なお、図4(b)は図4(a)において支持基材、配線および機能性部材を省略した図である。
中でも、例えば図4(b)に示すように、粘着層8は、配線領域21と、配線領域21に隣接し、機能性部材5が搭載される機能性部材領域22とに連続して位置していることが好ましい。
ここで、伸縮性回路基板においては、蛇腹形状部の山部の高さが、基材の厚みのばらつきや、基材に設けられる配線の分布密度の差等に起因して、局所的に大きくなることがある。例えば、配線と機能性部材との境界近傍において、配線に大きな山部が生じることがある。この場合、配線と機能性部材との間の電気接合部に大きな応力が加わり、電気接合部が破壊してしまうおそれがある。
これに対し、粘着層が、配線領域および機能性部材領域に連続して位置していることにより、配線と機能性部材との境界近傍において、配線に大きな山部が生じるのを抑制することができる。これにより、配線と機能性部材との間の電気接合部が破壊するのを抑制することができる。
粘着層が、配線領域および機能性部材領域に連続して位置している場合、粘着層は、少なくとも、配線領域および機能性部材領域に連続して位置していればよく、例えば、粘着層は、機能性部材領域の全域に位置していてもよく、機能性部材領域に部分的に位置していてもよい。
また、粘着層は、機能性部材領域には位置しておらず、すなわち、配線領域および機能性部材領域に連続して位置していなくてもよい。この場合には、後述するように、本態様の伸縮性回路基板が、基材の第1面側、基材の第2面側、または基材の内部に位置し、かつ、機能性部材領域の周囲に位置する機能性部材周囲領域に位置し、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がる第2の伸縮制御部を有することが好ましい。機能性部材周囲領域に第2の伸縮制御部が設けられており、また、第2の伸縮制御部が、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がっていることにより、機能性部材の近傍において配線に大きな山部が生じるのを抑制することができるからである。これにより、配線と機能性部材との間の電気接合部が破損するのを抑制することができる。
特に、粘着層は、基材の第1面側の全面に位置していることが好ましい。
粘着層の配置方法としては、例えば、粘着剤を塗布する方法や、剥離層の一方の面に粘着層を有する粘着フィルムを準備し、粘着フィルムの粘着層側の面を貼合する方法が挙げられる。また、本態様の伸縮性回路基板を製造する際、粘着層は、伸縮性を有する基材側に配置してもよく、支持基材側に配置してもよく、伸縮性を有する基材側および支持基材側の両方に配置してもよい。
2.配線
本態様における配線は、支持基材の粘着層側の面とは反対側の面に位置し、基材の第1面の法線方向における山部及び谷部が基材の第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、導電性を有する部材である。
本態様の伸縮性回路基板は、複数の配線を有していてもよい。図1(a)、(b)に示す例において、配線4は、蛇腹形状部30の山部31、33、35及び谷部32、34、36が繰り返し現れる第1方向D1に平行に延びている。また、図示はしないが、伸縮性回路基板は、第1方向とは異なる方向に延びる配線を有していてもよい。
配線の蛇腹形状部の振幅は、例えば1μm以上とすることができ、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。また、配線の蛇腹形状部の振幅は、例えば1000μm以下とすることができ、好ましくは700μm以下であり、より好ましくは500μm以下である。ここで、上述したように、蛇腹形状部の振幅が大きくなると、蛇腹形状部の周期が大きくなる傾向にある。そのため、配線の蛇腹形状部の振幅が上記範囲内であれば、配線の蛇腹形状部の周期を比較的大きくすることができ、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができると考えられる。また、配線の蛇腹形状部の振幅を上記範囲とすることにより、基材の伸張に追従して配線が変形し易くなる。
なお、配線の蛇腹形状部の振幅は、図5に示す符号S1、S2で示されるような、隣り合う山部と谷部との間の、基材の第1面の法線方向における距離である。振幅S1は、配線4の基材2側の面とは反対側の面における蛇腹形状部の、基材の法線方向における振幅である。また、振幅S2は、配線4の基材2側の面における蛇腹形状部の、基材の法線方向における振幅である。
配線の蛇腹形状部の振幅は、例えば、配線の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部と谷部との間の、基材の第1面の法線方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。配線の長さ方向における一定の範囲は、例えば10mmとすることができる。隣り合う山部と谷部との間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡等を用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部と谷部との間の距離を測定してもよい。
配線の蛇腹形状部の周期は、例えば10μm以上とすることができ、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは100μm以上である。また、蛇腹形状部の周期は、例えば3mm以下とすることができ、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。配線の蛇腹形状部の周期が上記範囲内であれば、配線の蛇腹形状部の周期を比較的大きくすることができ、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
なお、配線の蛇腹形状部の周期は、図5に示す符号Fで示されるような、第1方向D1における、隣り合う山部の間隔である。
配線の蛇腹形状部の周期は、例えば、配線の長さ方向における一定の範囲にわたって、第1方向における、隣り合う山部の間隔を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。配線の長さ方向における一定の範囲は、例えば10mmとすることができる。隣り合う山部の間隔を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡等を用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部の間隔を測定してもよい。
配線のヤング率は、通常、上記粘着層のヤング率よりも大きく、また伸縮性を有する基材のヤング率よりも大きい。配線のヤング率は、例えば、100MPa以上とすることができ、好ましくは200MPa以上である。また、配線のヤング率は、例えば、300GPa以下とすることができ、好ましくは200GPa以下であり、より好ましくは100GPa以下である。配線のヤング率が上記範囲内である場合には応力集中が生じやすいが、本態様においては基材および支持基材の間に粘着層が配置されていることにより、応力集中を低減することが可能である。
なお、配線のヤング率を求める方法は、上記粘着層のヤング率を求める方法と同様である。
配線の材料としては、蛇腹形状部の解消及び生成を利用して基材の伸張及び収縮に追従することができる材料であればよい。配線の材料は、それ自体が伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有していなくてもよい。
配線に用いられる伸縮性を有さない材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。配線の材料が伸縮性を有さない場合、配線としては、金属膜を用いることができる。
配線に用いられる伸縮性を有する材料の伸縮性としては、後述の伸縮性を有する基材の伸縮性と同様とすることができる。
配線に用いられる伸縮性を有する材料としては、例えば、導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物が挙げられる。すなわち、導電性粒子およびエラストマーを含む配線とすることができる。導電性粒子としては、配線に使用できるものであればよく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子が挙げられる。中でも、銀粒子が好ましく用いられる。また、エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレンが挙げられる。
また、平面視における配線の形状は、特に限定されるものではないが、中でも図1(a)例示するように直線状であることが好ましい。伸縮性回路基板の設計が容易になるからである。
配線の厚みとしては、伸縮に耐え得る厚みであればよく、配線の材料等に応じて適宜選択される。
例えば、配線の材料が伸縮性を有さない場合、配線の厚みは、25nm以上とすることができ、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。また、この場合、配線の厚みは、10μm以下とすることができ、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
また、配線の材料が伸縮性を有する場合、配線の厚みは、5μm以上とすることができ、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、この場合、配線の厚みは、60μm以下とすることができ、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。
配線の幅は、例えば50μm以上とすることができ、また10mm以下とすることができる。
配線の形成方法としては、材料等に応じて適宜選択される。配線の材料が伸縮性を有さない場合、例えば支持基材上に蒸着法やスパッタリング法等により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により金属膜をパターニングする方法が挙げられる。また、配線の材料が伸縮性を有する場合、例えば支持基材上に一般的な印刷法により上記の導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物をパターン状に印刷する方法が挙げられる。
3.伸縮性を有する基材
本態様における基材は、伸縮性を有する板状の部材である。基材は、配線側に位置する第1面と、第1面の反対側に位置する第2面と、を含む。
基材は、伸縮性を有する。基材の伸縮性を表すパラメータの例として、復元率を挙げることができる。基材の復元率は、常態(非伸長状態)を基準として50%(初期の長さの1.5倍)に伸長した後、この伸長状態から解放したときの復元率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、復元率の上限は100%である。
なお、復元率は、幅25mmの試験片を準備し、試験片を50%伸長して1時間保持した後、伸長を解放して1時間放置して復元させ、下記の計算式により求めることができる。
復元率(%)=(伸長直後の長さ-復元後の長さ)÷(伸長直後の長さ-引張前の長さ)×100
なお、伸長直後の長さとは、50%伸長した状態の長さをいう。
また、基材の伸縮性を表すパラメータの他の例として、伸長率を挙げることができる。基材は、破壊されることなく非伸長状態から1%以上伸長することができることが好ましく、より好ましくは20%以上伸長することができ、さらに好ましくは75%以上伸長することができる。このような伸縮性を有する基材を用いることにより、伸縮性回路基板が全体に伸縮性を有することができる。さらに、人の腕等の身体の一部に取り付けるという、高い伸縮が必要な製品や用途において、伸縮性回路基板を使用することができる。一般に、人の脇の下に取り付ける製品には、垂直方向において72%、水平方向において27%の伸縮性が必要であるといわれている。また、人の膝、肘、臀部、足首、脇部に取り付ける製品には、垂直方向において26%以上42%以下の伸縮性が必要であるといわれている。また、人のその他の部位に取り付ける製品には、20%未満の伸縮性が必要であるといわれている。
また、非伸長状態にある基材の形状と、非伸長状態から伸長された後に再び非伸長状態に戻ったときの基材の形状との差が小さいことが好ましい。なお、以下、この差を、形状変化と称する場合がある。基材の形状変化は、例えば面積比で20%以下とすることができ、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。形状変化の小さい基材を用いることにより、蛇腹形状部の形成が容易になる。
基材のヤング率は、上記粘着層のヤング率よりも大きければよく、例えば1kPa以上とすることができる。また、基材のヤング率は、例えば10MPa以下とすることができ、好ましくは1MPa以下である。このようなヤング率を有する基材を用いることにより、伸縮性回路基板全体に伸縮性を持たせることができる。
なお、基材のヤング率を求める方法は、上記粘着層のヤング率を求める方法と同様である。
また、基材は、透明性を有することが好ましい。本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材以外の部材が透明性を有する場合には、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、本態様の伸縮性回路基板における配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、基材の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
基材の材料としては、伸縮性を有するものであればよく、例えばエラストマーを挙げることができ、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、ニトリル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、1,2-ポリブタジエン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリスチレンブタジエン、ポリクロロプレン等が挙げられる。機械的強度や耐磨耗性を考慮すると、ウレタン系エラストマーを用いることが好ましい。また、基材がシリコーンを含んでいてもよい。シリコーンは、耐熱性、耐薬品性、難燃性に優れており、基材の材料として好ましい。
基材の厚みは、特に限定されないが、基材の材料に応じて適宜選択されるものであり、例えば10μm以上とすることができ、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上であり、また10mm以下とすることができ、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。基材の厚みを上記の値以上にすることにより、基材の耐久性を確保することができる。また、基材の厚みを上記の値以下にすることにより、伸縮性回路基板の装着快適性を確保することができる。なお、基材の厚みを薄くしすぎると、基材の伸縮性が損なわれる場合がある。
4.支持基材
本態様における支持基材は、粘着層と配線との間に位置し、基材の第1面の法線方向における山部及び谷部が基材の第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、配線を支持する部材である。
支持基材の特性や寸法は、蛇腹形状部が形成され易くなるよう設定されている。
支持基材のヤング率は、通常、上記粘着層のヤング率よりも大きく、また伸縮性を有する基材のヤング率よりも大きい。支持基材のヤング率は、例えば100MPa以上とすることができ、好ましくは1GPa以上である。また、支持基材のヤング率は、例えば基材のヤング率の100倍以上、50000倍以下とすることができ、好ましくは1000倍以上、10000倍以下である。このように支持基材のヤング率を設定することにより、蛇腹形状部の周期が小さくなり過ぎるのを抑制することができる。また、蛇腹形状部において局所的な折れ曲がりが生じるのを抑制することができる。また、支持基材のヤング率が大きすぎると、弛緩時の基材の復元が難しくなり、また基材の割れや折れが発生し易くなる。また、後述するように、本態様の伸縮性回路基板が、配線領域に位置し、蛇腹形状部の山部及び谷部が繰り返し現れる第1方向に沿って並ぶ複数の伸縮制御部を有する場合には、支持基材のヤング率が小さすぎると、伸縮制御部の形成工程中に支持基材が変形し易く、その結果、配線および機能性部材に対する伸縮制御部の位置合わせが難しくなる。
また、支持基材のヤング率は、基材のヤング率の100倍以下であってもよい。
なお、支持基材のヤング率を求める方法は、上記粘着層のヤング率を求める方法と同様である。
また、支持基材は、透明性を有することが好ましい。本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材以外の部材が透明性を有する場合には、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、本態様の伸縮性回路基板における配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、支持基材の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
支持基材は、蛇腹形状部を有する。支持基材が有する蛇腹形状部については、上記配線が有する蛇腹形状部と同様とすることができる。
支持基材としては、伸縮に耐え得るものであればよく、例えば、樹脂基材を挙げることができる。樹脂基材を構成する材料としては、具体的には、ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、耐久性や耐熱性が良いことから、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドが好ましく用いられる。
支持基材の厚みは、蛇腹形状部を有することにより伸縮可能な厚みであればよく、例えば500nm以上とすることができ、好ましくは1μm以上であり、また、10μm以下とすることができ、好ましくは5μm以下である。支持基材の厚みが薄すぎると、支持基材の製造工程や、支持基材上に部材を形成する工程における、支持基材の取り扱いが難しくなる。また、支持基材の厚みが厚すぎると、弛緩時の基材の復元が難しくなり、目標の基材の伸縮が得られなくなる場合がある。
5.機能性部材
本態様の伸縮性回路基板は、支持基材の配線側の面に位置する機能性部材を有することができる。
機能性部材としては、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択されるものであり、能動素子であってもよく、受動素子であってもよい。能動素子としては、例えば、トランジスタ、IC、LSI(Large-Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、LED、OLED等の発光素子、センサ等を挙げることができる。受動素子としては、例えば、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バッテリー等を挙げることができる。
中でも、センサが好ましく用いられる。センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、磁気センサ等を挙げることができる。特に、センサは、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度、筋電、脳波等の生体情報を測定することができる生体センサであることが好ましい。
機能性部材は、配線に接続されている。機能性部材および配線の接続構造については、一般的なものを適用することができる。
機能性部材は、伸縮に耐え得るものである場合には、蛇腹形状部を有していてもよい。例えば、機能性部材がTFTやOLED等である場合、蛇腹形状部を有することができる。
6.調整層
本態様の伸縮性回路基板は、配線の支持基材側の面とは反対側の面、または支持基材および配線の間に位置し、かつ、配線領域に位置し、基材の第1面の法線方向における山部及び谷部が基材の第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、配線のヤング率よりも小さいヤング率を有する調整層を有することができる。
図6(a)、(b)は、本態様の伸縮性回路基板の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図6(b)は図6(a)のA-A線断面図である。図6(a)、(b)に示すように、伸縮性回路基板1は、配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に、配線4よりも小さいヤング率を有する調整層3を有することができる。図1(a)、(b)において、調整層3は、基材2の第1面2a側の全面に位置しており、配線領域21だけでなく、配線領域21に隣接し、機能性部材5が搭載される機能性部材領域22にも位置している。なお、調整層3は、少なくとも配線領域21に位置していればよい。
なお、図6(a)、(b)に示す例においては、調整層3は、配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に位置しているが、これに限定されるものではなく、図示しないが、支持基材7および配線4の間に位置していてもよい。
配線の支持基材側の面とは反対側の面、または支持基材および配線の間であって、配線領域に、配線よりも小さいヤング率を有する、すなわち配線よりも柔らかく変形しやすい調整層が位置していることにより、応力を分散させることができる。そのため、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きくなった場合であっても、湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所での応力集中を低減することができる。これにより、配線が破損したり、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に配線の抵抗値が上昇したりするのを抑制することができる。
調整層のヤング率は、配線のヤング率よりも小さい。また、調整層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率よりも大きいことが好ましい。すなわち、調整層は、配線および基材の中間のヤング率を有することが好ましい。配線の支持基材側の面とは反対側の面、または支持基材および配線の間であって、配線領域に、配線および基材の中間のヤング率を有する、すなわち配線よりも柔らかくて変形しやすく、基材よりも硬くて変形しにくい調整層が位置していることにより、応力集中を低減することができるからである。
また、調整層のヤング率は、支持基材のヤング率よりも小さくてもよく、支持基材のヤング率と同じであってもよく、支持基材のヤング率よりも大きくてもよい。中でも、調整層のヤング率は、支持基材のヤング率よりも小さいことが好ましい。配線の支持基材側の面とは反対側の面、または支持基材および配線の間であって、配線領域に、配線および支持基材よりも小さいヤング率を有する、すなわち配線および支持基材よりも柔らかく変形しやすい調整層が位置していることにより、応力集中を低減することができるからである。
具体的には、調整層のヤング率は、配線のヤング率の1倍未満とすることができ、好ましくは0.1倍以下であり、より好ましくは0.05倍以下である。また、調整層のヤング率は、配線のヤング率の0.001倍以上とすることができ、好ましくは0.01倍以上である。
また、調整層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率の1倍超とすることができ、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは2倍以上である。また、調整層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率の100倍以下とすることができ、好ましくは10倍以下である。
調整層のヤング率が小さすぎても大きすぎても、応力集中を低減することが困難になる場合があるからである。
また、調整層のヤング率は、例えば、1GPa以下とすることができ、好ましくは100MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下である。また、調整層のヤング率は、例えば、10kPa以上とすることができ、好ましくは1MPa以上である。調整層のヤング率が小さすぎても大きすぎても、応力集中を低減することが困難になる場合があるからである。
なお、調整層のヤング率を求める方法は、上記粘着層のヤング率を求める方法と同様である。
また、調整層は、透明性を有することが好ましい。本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材以外の部材が透明性を有する場合には、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、本態様の伸縮性回路基板における配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、調整層の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
調整層は、蛇腹形状部を有する。なお、調整層の蛇腹形状部については、上記配線が有する蛇腹形状部と同様とすることができる。
調整層の材料は、上述のヤング率を有するものであればよく、伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有していなくてもよい。中でも、調整層の材料は伸縮性を有することが好ましい。調整層が伸縮性を有する材料を含む場合には、変形に対する耐性を有することができるからである。
調整層に用いられる伸縮性を有さない材料としては、例えば、樹脂を挙げることができる。樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等のいずれも用いることができる。また、調整層が樹脂を含む場合、調整層としては、樹脂基材を用いることもできる。
調整層に用いられる伸縮性を有する材料の伸縮性としては、後述の伸縮性を有する基材の伸縮性と同様とすることができる。
調整層に用いられる伸縮性を有する材料としては、例えば、エラストマーを挙げることができる。エラストマーとしては、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリスチレンブタジエン、ポリクロロプレン等が挙げられる。
また、調整層は、配線に接しているため、絶縁性を有することが好ましい。樹脂やエラストマーであれば、絶縁性を有する調整層とすることができる。
調整層は、少なくとも配線領域に位置していればよく、例えば、基材の第1面側の全面に位置していてもよく、基材の第1面側に部分的に位置していてもよい。
中でも、例えば図6(b)に示すように、調整層3は、配線領域21と、配線領域21に隣接し、機能性部材5が搭載される機能性部材領域22とに連続して位置していることが好ましい。
ここで、伸縮性回路基板においては、蛇腹形状部の山部の高さが、基材の厚みのばらつきや、基材に設けられる配線の分布密度の差等に起因して、局所的に大きくなることがある。例えば、配線と機能性部材との境界近傍において、配線に大きな山部が生じることがある。この場合、配線と機能性部材との間の電気接合部に大きな応力が加わり、電気接合部が破壊してしまうおそれがある。
これに対し、調整層が、配線領域および機能性部材領域に連続して位置していることにより、配線と機能性部材との境界近傍において、配線に大きな山部が生じるのを抑制することができる。これにより、配線と機能性部材との間の電気接合部が破壊するのを抑制することができる。
調整層が、配線領域および機能性部材領域に連続して位置している場合、調整層は、少なくとも、配線領域および機能性部材領域に連続して位置していればよく、例えば、調整層3は、図6(b)に例示するように機能性部材領域22の全域に位置していてもよく、図7(a)に例示するように機能性部材領域22に部分的に位置していてもよい。調整層が機能性部材領域に部分的に位置している場合には、例えば、調整層は、平面視において、機能性部材の一部が露出する開口部を有する形状を有していてもよい。
また、調整層3は、図7(b)に例示するように、機能性部材領域22には位置しておらず、すなわち、配線領域21および機能性部材領域22に連続して位置していなくてもよい。この場合には、後述するように、本態様の伸縮性回路基板が、基材の第1面側、基材の第2面側、または基材の内部に位置し、かつ、機能性部材領域の周囲に位置する機能性部材周囲領域に位置し、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がる第2の伸縮制御部を有することが好ましい。機能性部材周囲領域に第2の伸縮制御部が設けられており、また、第2の伸縮制御部が、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がっていることにより、機能性部材の近傍において配線に大きな山部が生じるのを抑制することができるからである。これにより、配線と機能性部材との間の電気接合部が破損するのを抑制することができる。
調整層は、通常、粘着性を有さない。調整層が粘着性を有すると、後工程が困難となるからである。また、本態様の伸縮性回路基板は、後述するように、対象物に貼付するための第2の粘着層を有する場合があるが、調整層は、そのような第2の粘着層とは区別されるものである。
ここで、粘着性を有さないとは、調整層の粘着力が0.01N/25mm以下であることをいい、好ましくは0.005N/25mm以下、より好ましくは0.001N/25mm以下である。
調整層の粘着力の測定方法としては、調整層のサンプルを用いて180°剥離試験を実施するという方法を採用することができる。調整層のサンプルを準備する方法としては、伸縮性回路基板から調整層の一部をサンプルとして取り出す方法や、伸縮性回路基板を構成する前の調整層の一部をサンプルとして取り出す方法が挙げられる。その他にも、調整層の粘着力の測定方法として、調整層を構成する材料を分析し、材料の既存のデータベースに基づいて調整層の粘着力を求めるという方法を採用することもできる。180°剥離試験においては、まず、25mm幅の試験片を採取し、試験片の調整層側の面に、25mm幅のガラス板を貼り合せる。次に、引張試験機を用いて、引張速度:1200mm/分、剥離角:180°、温度:20℃、湿度:50%の条件で、ガラス板に対する粘着力(N/25mm)を測定する。
調整層の厚みとしては、伸縮に耐え得る厚みであればよく、調整層の材料等に応じて適宜選択される。調整層の厚みは、例えば、0.1μm以上とすることができ、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、調整層の厚みは、例えば、1mm以下とすることができ、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。調整層が薄すぎると、応力集中を低減する効果が十分に得られない場合がある。また、調整層が厚すぎると、ヤング率が上述の関係を満たしていても、調整層の曲げ剛性が大きくなり、応力集中を低減することが困難になる場合がある。なお、曲げ剛性は、対象となる部材の断面二次モーメントと、対象となる部材の材料のヤング率との積で表される。
調整層を、配線の支持基材側の面とは反対側の面、または支持基材および配線の間に配置する方法としては、調整層の材料や伸縮性回路基板の層構成等に応じて適宜選択される。例えば、調整層用樹脂組成物を塗布する方法、調整層を接着層を介して貼合する方法等が挙げられる。
接着層としては、特に限定されるものではなく、回路基板に使用される一般的な接着剤や粘着剤を用いることができる。
接着層は、通常、蛇腹形状部を有する。接着層の蛇腹形状部については、上記配線が有する蛇腹形状部と同様とすることができる。
接着層の厚みとしては、伸縮可能であり、調整層を接着層を介して貼合可能な厚みであればよく、例えば10μm以上、100μm以下の範囲内とすることができる。
7.第1の伸縮制御部
本態様の伸縮性回路基板は、基材の第1面側、基材の第2面側、または基材の内部に位置し、かつ、配線領域に位置し、蛇腹形状部の山部及び谷部が繰り返し現れる第1方向に沿って並ぶ複数の伸縮制御部を有することができる。なお、以下、この伸縮制御部を第1の伸縮制御部と称する場合がある。
第1の伸縮制御部は、基材の伸縮を制御するために設けられる部材である。
ここで、第1の伸縮制御部が「基材の第1面側に位置する」とは、第1の伸縮制御部が基材の第1面に直接位置していてもよく、第1の伸縮制御部が基材の第1面に他の部材を介して間接的に位置していてもよいことをいう。
また、第1の伸縮制御部が「基材の第2面側に位置する」とは、第1の伸縮制御部が基材の第2面に直接位置していてもよく、第1の伸縮制御部が基材の第2面に他の部材を介して間接的に位置していてもよいことをいう。
なお、後述する第2の伸縮制御部が基材の第1面側に位置する場合、および基材の第2面側に位置する場合についても、上記と同様とすることができる。
図8(a)、(b)は本態様の伸縮性回路基板の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図8(b)は図8(a)のB-B線断面図である。図8(a)、(b)に示すように、伸縮性回路基板1は、配線領域21に位置し、蛇腹形状部30の山部31、33、35及び谷部32、34、36が繰り返し現れる第1方向D1に沿って並ぶ複数の第1の伸縮制御部41を有することができる。図8(a)、(b)において、第1の伸縮制御部41は、基材2の第1面2a側に位置し、かつ、配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に位置している。
配線領域に第1の伸縮制御部を設けることにより、蛇腹形状部の周期や振幅等を制御することができる。このため、配線に局所的に大きな湾曲や屈曲が生じるのを抑制することができる。これにより、配線が破損するのを抑制することができる。
図9は、図8(b)の配線領域の拡大図である。図9に示すように、配線領域においては、基材2の第1面2aの面内方向において山部31及び谷部32が繰り返し現れる第1方向D1に沿って複数の第1の伸縮制御部41が周期F2で並んでいる。これにより、基材2には、伸縮が生じやすい部分と、伸縮が生じにくい部分とが、配線4が延びる方向に沿って周期F2で繰り返し存在するようになる。この場合、基材2を弛緩させたとき、配線4に、第1の伸縮制御部41の周期F2に対応した周期F1を有する蛇腹形状部30が生じ易くなる。すなわち、第1の伸縮制御部41によって配線4の蛇腹形状部30の周期F1を制御することができる。
以下、蛇腹形状部の周期を制御することの利点について説明する。蛇腹形状部が現れる第1方向に沿って複数の第1の伸縮制御部を周期F2で並べることにより、配線に現れる蛇腹形状部の周期F1を制御することができる。これにより、蛇腹形状部の周期F1が乱れて蛇腹形状部の山部の高さが局所的に大きくなることを抑制することができる。これにより、配線に大きな応力が加わって配線が破損するのを抑制することができる。
なお、第1の伸縮制御部によって蛇腹形状部の周期が制御される場合であっても、粘着層が柔軟性、変形性に富むため、蛇腹形状部の山部及び谷部の位置は、伸縮性回路基が繰り返し伸縮するたびに、同じ位置になるとは限らず、若干異なる位置になる傾向にある。そのため、伸縮性回路基板が繰り返し伸縮する際に、同じ位置に応力が集中するのを低減することができる。
ここで、蛇腹形状部の周期とは、第1方向における、蛇腹形状部の複数の山部の間隔の平均値である。また、第1の伸縮制御部の周期とは、第1方向における、複数の第1の伸縮制御部の間隔の平均値である。なお、以下、蛇腹形状部の周期のことを第1周期と称し、第1の伸縮制御部の周期のことを第2周期と称する場合がある。
第1の伸縮制御部による蛇腹形状部の第1周期の制御が適切に実現されている場合、第1の伸縮制御部が、蛇腹形状部の第1周期に対応する第2周期で並ぶことになる。図9に示す例において、第1の伸縮制御部41の第2周期F2は、蛇腹形状部の第1周期F1と同一である。この場合、第1の伸縮制御部41は、蛇腹形状部の特定の位相の部分に位置しており、例えば蛇腹形状部の谷部32に位置している。
なお、基材のヤング率や厚みによっては、基材に設けられる配線に現れる蛇腹形状部の第1周期と、複数の第1の伸縮制御部の第2周期とが一致しない場合がある。例えば、第1の伸縮制御部の第2周期が、蛇腹形状部の第1周期よりも大きい場合もあれば、蛇腹形状部の第1周期よりも小さい場合もある。いずれの場合であっても、配線領域のうち第1の伸縮制御部が設けられている部分が、蛇腹形状部の特定の位相の部分になり易い。例えば、基材のうち第1の伸縮制御部が設けられている部分を、蛇腹形状部の山部又は谷部にすることができる。このため、蛇腹形状部の第1周期が乱れるのを抑制することができるので、蛇腹形状部の山部の高さが局所的に大きくなるのを抑制することができる。
このように、複数の第1の伸縮制御部は、配線に生じる蛇腹形状部の第1周期を制御するという役割を果たすことができる。
第1の伸縮制御部の第2周期は、例えば、蛇腹形状部の第1周期のm倍又は1/nとすることができる。ここで、m及びnは正の整数である。好ましくは、mは3以下であり、nは4以下である。第1の伸縮制御部の第2周期は、例えば5μm以上、10mm以下とすることができる。
第1の伸縮制御部のヤング率は、基材のヤング率よりも大きくてもよく、基材のヤング率以下であってもよい。
第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率よりも大きい場合、第1の伸縮制御部のヤング率は、例えば10GPa以上、500GPa以下とすることができ、好ましくは1GPa以上、300GPa以下である。第1の伸縮制御部のヤング率が小さすぎると、伸縮の制御がしにくい場合がある。また、第1の伸縮制御部のヤング率が大きすぎると、基材が伸縮した際に、割れやひび等の構造の破壊が第1の伸縮制御部に起こる場合がある。
この場合、第1の伸縮制御部のヤング率は、例えば基材のヤング率の1.1倍以上、5000倍以下とすることができ、好ましくは10倍以上、3000倍以下である。このような第1の伸縮制御部を基材に設けることにより、基材のうち第1の伸縮制御部と平面視上重なる部分が伸縮することを抑制することができる。このため、基材を、伸縮が生じやすい部分と、伸縮が生じにくい部分とに区画することができる。これにより、蛇腹形状部の周期や振幅等を制御することができる。
なお、第1の伸縮制御部のヤング率を求める方法は、上記粘着層の場合と同様である。
第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率よりも大きい場合、第1の伸縮制御部を構成する材料として、金属材料を用いることができる。金属材料の例としては、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等を挙げることができる。また、第1の伸縮制御部を構成する材料として、一般的な熱可塑性エラストマーや、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、ビニルエーテル系、ポリエン・チオール系又はシリコーン系等のオリゴマー、ポリマー等を用いてもよい。
第1の伸縮制御部の厚みは、例えば1μm以上、100μm以下とすることができる。
また、第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率以下である場合、第1の伸縮制御部のヤング率は、例えば10MPa以下とすることができ、1MPa以下であってもよい。また、第1の伸縮制御部のヤング率は、例えば基材のヤング率の1倍以下とすることができ、0.8倍以下であってもよい。この場合、第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率よりも大きい場合に比べて、基材に現れる蛇腹形状部の振幅が大きくなるので、伸縮性回路基板の伸縮性も大きくなる。また、第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率以下の場合であっても、基材のうち第1の伸縮制御部に平面視上重なる部分と第1の伸縮制御部に平面視上重ならない部分との間で、伸縮性の差が生じる。すなわち、基材を、伸縮が生じやすい部分と、伸縮が生じにくい部分とに区画することができる。これにより、蛇腹形状部の周期や振幅等を制御することができる。
第1の伸縮制御部のヤング率が基材のヤング率以下の場合、第1の伸縮制御部を構成する材料として、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレンが挙げられる。
第1の伸縮制御部の厚みは、例えば1μm以上、100μm以下とすることができる。
また、第1の伸縮制御部の特性を、ヤング率に替えて曲げ剛性によって表してもよい。すなわち、第1の伸縮制御部の曲げ剛性は、基材の曲げ剛性よりも大きくてもよく、基材の曲げ剛性以下であってもよい。
なお、第1の伸縮制御部の断面二次モーメントは、伸縮性回路基板の伸縮方向に直交する平面によって第1の伸縮制御部を切断した場合の断面に基づいて算出される。
第1の伸縮制御部の曲げ剛性が基材の曲げ剛性よりも大きい場合、第1の伸縮制御部の曲げ剛性は、例えば基材の曲げ剛性の1.1倍以上とすることができ、好ましくは2倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上である。
また、第1の伸縮制御部の曲げ剛性が基材の曲げ剛性以下である場合、第1の伸縮制御部の曲げ剛性は、例えば基材の曲げ剛性の1倍以下とすることができ、0.8倍以下であってもよい。
第1の伸縮制御部は、均一な変形性を有していてもよく、位置によって異なる変形性を示すように構成されていてもよい。例えば、第1の伸縮制御部が均一な厚みを有する場合には、均一な変形性を有することができる。また、第1の伸縮制御部は、第1部分と、第1部分よりも高い変形性を有する第2部分と、を含んでいてもよく、この場合には、第1の伸縮制御部を位置によって異なる変形性を示すように構成することができる。
第1の伸縮制御部41では、例えば図10(a)、(b)に示すように、第1部分41aが、第1方向D1における第1の伸縮制御部41の中央部を構成し、第2部分41bが、第1方向D1における第1の伸縮制御部41の両端部を構成していてもよい。すなわち、第1の伸縮制御部41が、第1部分41aと、第1部分41aを挟む一対の第2部分41bと、を含んでいてもよい。なお、図10(a)は、伸長状態の伸縮性回路基板を示す断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す伸縮性回路基板が弛緩した状態を示す断面図である。
また、図示はしないが、第1の伸縮制御部において、第2部分が第1の伸縮制御部の中央部を構成し、第1部分が第1の伸縮制御部の両端部を構成していてもよい。
第1の伸縮制御部の第2部分の厚みは、第1部分の厚みよりも薄くすることができる。また、第2部分の厚みは、少なくとも部分的に、第1部分から離れるにつれて減少していてもよい。図10(a)に示す例において、第2部分41bの厚みは、第1部分41a側から離れるにつれて単調に減少している。この場合、基材の配線領域の変形性が、第1の伸縮制御部の端部に向かうにつれて高くなる。この結果、図10(b)に示すように、第1の伸縮制御部41の中央部、ここでは第1部分41aが、谷部等の蛇腹形状部の特定の位相の部分になり易くなる。また、第1部分は、蛇腹形状部の山部又は谷部の形状に沿って変形し易い。このため、第1の伸縮制御部の中央部によって蛇腹形状部の周期の安定性を確保しながら、基材の配線領域の変形性や伸縮性を維持することができる。
第1の伸縮制御部41は、例えば図11(a)に示すように、半球状の形状を有していてもよい。この場合、第1の伸縮制御部の端部近傍においては、その厚みが、端部に向かうにつれて減少する。そのため、第1の伸縮制御部に上述の第1部分及び第2部分を構成することができる。
この場合においても、第1の伸縮制御部の第1部分が、蛇腹形状部の特定の位相の部分になり易くなる。また、第1の伸縮制御部の第2部分は、蛇腹形状部の山部又は谷部の形状に沿って変形し易い。このため、蛇腹形状部の周期の安定性を確保しながら、基材の配線領域の変形性や伸縮性を維持することができる。
第1の伸縮制御部は、例えば図11(b)に示すように、第1の伸縮制御部41の第2部分41bの密度分布が、第1の伸縮制御部41の第1部分41aの密度分布よりも小さくなっていてもよい。図11(b)に示す例において、第2部分41bは、隙間を空けて配置された複数の部材を含む。また、第2部分の密度分布は、第1部分から離れるにつれて小さくなっていてもよい。例えば、第2部材を構成する複数の部材の幅が、第1部分から離れるにつれて小さくなっていてもよく、また、第2部材を構成する複数の部材の間の隙間が、第1部分から離れるにつれて大きくなっていてもよい。第2部分の各部材は、例えば、第1部分と同一の材料によって構成されている。
この場合においても、基材の配線領域の変形性が、第1の伸縮制御部の第1部分に比べて第2部分において高くなる。このため、第1部分が、蛇腹形状部の特定の位相の部分になり易くなる。また、第2部分は、蛇腹形状部の山部又は谷部の形状に沿って変形し易い。このため、蛇腹形状部の周期の安定性を確保しながら、基材の配線領域の変形性や伸縮性を維持することができる。
第1の伸縮制御部は、第2部分のヤング率が第1部分のヤング率よりも小さくなっていてもよい。この場合、基材の配線領域の変形性が、第1の伸縮制御部の第1部分に比べて第2部分において高くなる。このため、第1部分が、蛇腹形状部の特定の位相の部分になり易くなる。また、第2部分は、蛇腹形状部の山部又は谷部の形状に沿って変形し易い。このため、蛇腹形状部の周期の安定性を確保しながら、基材の配線領域の変形性や伸縮性を維持することができる。
また、第1の伸縮制御部が支持基材と基材との間に位置する場合、第1の伸縮制御部の第2部分のヤング率が第1部分のヤング率よりも小さくなるよう、第1の伸縮制御部を構成してもよい。この場合、第1の伸縮制御部は、粘着層によって構成することができる。すなわち、粘着層が、第1の伸縮制御部を兼ねることができる。
第1の伸縮制御部は、例えば図11(c)に示すように、少なくとも2つの第1の伸縮制御部41が、蛇腹形状部の1周期の範囲内に位置し、かつ互いに接触していてもよい。この場合、蛇腹形状部の山部の高さが拡大しようとすると、互いに接触している第1の伸縮制御部が圧縮され、反発力が生じる。このため、互いに接触している第1の伸縮制御部が設けられた蛇腹形状部の山部の高さが拡大するのを抑制することができる。
第1の伸縮制御部は、基材の第1面側に位置していてもよく、基材の第2面側に位置していてもよく、基材の内部に位置していてもよい。
第1の伸縮制御部が基材の第1面側に位置している場合、第1の伸縮制御部41は、例えば図9に示すように配線4の支持基材7側の面とは反対側の面に位置していてもよく、図示しないが支持基材と配線との間に位置していてもよく、図12(a)に示すように基材2と粘着層8との間に位置していてもよい。第1の伸縮制御部が基材と粘着層との間に位置している場合、第1の伸縮制御部は、基材の第1面上に位置していてもよく、基材の第1面に設けられた凹部に位置していてもよい。
第1の伸縮制御部が基材の内部に位置している場合、例えば図12(b)に示すように、第1の伸縮制御部41は、基材2の内部に埋め込まれている。このような基材及び第1の伸縮制御部は、例えば、型の中に樹脂を流し込み、型の樹脂を固めることによって基材を作製する場合に、型の中に第1の伸縮制御部を適切なタイミングで投入することによって得られる。
第1の伸縮制御部が基材の第2面側に位置している場合、第1の伸縮制御部41は、例えば図12(c)に示すように基材2とは別々に構成されていてもよく、図12(d)、(e)に示すように基材2と一体的に構成されていてもよい。また、第1の伸縮制御部が基材と一体的に構成されている場合、第1の伸縮制御41は、例えば図12(d)に示すように基材2に設けられた凸部であってもよく、図12(d)に示すように基材2に設けられた凹部であってもよい。なお「一体的」とは、基材と第1の伸縮制御部との間に界面が存在しないことを意味する。
凹部から構成される第1の伸縮制御部を基材に設ける場合においても、基材の配線領域には、伸縮が生じやすい部分と、伸縮が生じにくい部分とが、配線が延びる方向に沿って繰り返し存在するようになる。このため、蛇腹形状部の周期が乱れて蛇腹形状部の山部の高さが局所的に大きくなるのを抑制することができる。これにより、配線に大きな応力が加わって配線が破損するのを抑制することができる。
第1の伸縮制御部41は、例えば図13(a)、(b)に示すように、基材2の第1面2a側及び第2面2b側の両方に設けられていてもよい。この場合、図13(a)に示すように、基材2の第1面2a側に位置する第1の伸縮制御部41の第1部分41aと、基材2の第2面2b側に位置する第1の伸縮制御部41の第1部分41aとが、平面視上重ならないよう、第1の伸縮制御部41が配置されていてもよい。なお、図13(a)は、伸長状態の伸縮性回路基板を示す断面図であり、図13(b)は、図13(a)に示す伸縮性回路基板が弛緩した様子を示す断面図である。図13(b)に示す例において、基材2の第1面2a側に位置する第1の伸縮制御部41は、蛇腹形状部の谷部に対応し、基材2の第2面2b側に位置する第1の伸縮制御部41は、蛇腹形状部の山部に対応している。
第1の伸縮制御部41は、例えば図8(a)に示すように配線4と平面視上重なるように位置してもよく、図14(a)に示すように配線4と平面視上重ならないように位置していてもよい。
第1の伸縮制御部が配線と平面視上重ならない場合、第1の伸縮制御部と配線とは同一平面上に位置することができる。第1の伸縮制御部が配線と平面視上重ならない場合であっても、蛇腹形状部が現れる第1方向に沿って複数の第1の伸縮制御部を並べることにより、蛇腹形状部の周期が乱れて蛇腹形状部の山部の高さが局所的に大きくなるのを抑制することができる。これにより、配線に大きな応力が加わって配線が破損するのを抑制することができる。なお、第1の伸縮制御部と配線とが同一平面上に位置する場合、両者を同一の工程で同時に形成することができる。
平面視における第1の伸縮制御部の形状は特に限定されない。例えば図8(a)に示すように、第1の伸縮制御部41は、蛇腹形状部が現れる第1方向D1に対して交差する方向、例えば直交する方向に延びていてもよく、図14(b)に示すように、第1の伸縮制御部41は、円形状を有していてもよく、図14(c)に示すように、第1の伸縮制御部41は、ハニカム形状を有していてもよい。第1の伸縮制御部が円形状を有する場合、円形状は、真円の形状であってもよく、楕円の形状であってもよい。
円形状やハニカム形状は、矩形状に比べて等方的な形状である。このため、基材に引張応力等の力を加えたときに、基材のうち第1の伸縮制御部と平面視上重なる部分及びその周辺において等方的な伸長を生じさせることができる。
第1の伸縮制御部の形成方法は、材料等に応じて適宜選択される。例えば、基材上または支持基材上に蒸着法やスパッタリング法等により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により金属膜をパターニングする方法が挙げられる。また、基材上または支持基材上にスピンコート法等の塗布法等により全面に有機層等の樹脂膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により樹脂膜をパターニングする方法が挙げられる。また、例えば、基材上または支持基材上に一般的な印刷法により第1の伸縮制御部の材料をパターン状に印刷する方法が挙げられる。これらの方法のうち、材料効率が良く安価に製作できる印刷法が好ましく用いられる。
8.第2の伸縮制御部
本態様の伸縮性回路基板は、基材の第1面側、基材の第2面側、または基材の内部に位置し、かつ、機能性部材領域の周囲に位置する機能性部材周囲領域に位置し、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がる第2の伸縮制御部を有することができる。
図8(a)、(b)に示すように、伸縮性回路基板1は、機能性部材領域22の周囲に位置する機能性部材周囲領域23に位置し、機能性部材周囲領域23と機能性部材領域22との間の境界まで広がる第2の伸縮制御部42を有することができる。図8(a)、(b)において、第2の伸縮制御部42は、機能性部材周囲領域23と機能性部材領域22との間の境界を越えて機能性部材領域22まで広がり、機能性部材領域22の全域に位置している。また、第2の伸縮制御部42は、基材2の第1面2a側に位置し、かつ、機能性部材5の支持基材7側の面とは反対側の面に位置している。
機能性部材周囲領域に第2の伸縮制御部が設けられており、また、第2の伸縮制御部が、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がっていることにより、機能性部材の近傍において配線に大きな山部が生じるのを抑制することができる。これにより、機能性部材と配線との間の電気接合部が破損するのを抑制することができる。
なお、第2の伸縮制御部のヤング率、曲げ剛性、材料、厚み等については、上記第1の伸縮制御部と同様とすることができる。
第1の伸縮制御部のヤング率と、後述の第2の伸縮制御部のヤング率とは、同一であってもよい。この場合、第1の伸縮制御部及び第2の伸縮制御部を同一の工程で同時に形成することができるので、第1の伸縮制御部の形成工程が簡便になる。
また、第1の伸縮制御部のヤング率と第2の伸縮制御部のヤング率とは、異なっていてもよい。この場合、第2の伸縮制御部のヤング率が、第1の伸縮制御部のヤング率よりも大きいことが好ましい。
基材のヤング率をE1と称し、第2の伸縮制御部のヤング率をE21と称し、第1の伸縮制御部のヤング率をE22と称する場合、以下のような組み合わせの例が挙げられる。
例1:E1<E21=E22
例2:E1<E22<E21
例3:E22≦E1<E21
例4:E21=E22≦E1
第1の伸縮制御部の材料や厚みと第2の伸縮制御部の材料や厚みとは、同一であってもよい。この場合、第1の伸縮制御部の形成工程が簡便になる。
また、第1の伸縮制御部の材料や厚みと第2の伸縮制御部の材料や厚みとは、異なっていてもよい。この場合、第2の伸縮制御部の厚みが、第1の伸縮制御部の厚みよりも薄いことが好ましい。これは、一般に、機能性部材の方が配線よりも厚いからである。第2の伸縮制御部の厚みを第1の伸縮制御部の厚みよりも薄くすることにより、配線領域と機能性部材領域との間における凹凸や段差を小さくすることができる。これにより、引っかかりによる素子剥がれが生じることを抑制できる。また、使用者が伸縮性回路基板を備える電子デバイスを装着した時の違和感を低減することができる。
第2の伸縮制御部は、均一な変形性を有していてもよく、位置によって異なる変形性を示すように構成されていてもよい。例えば、第2の伸縮制御部が均一な厚みを有する場合には、均一な変形性を有することができる。また、第2の伸縮制御部は、第1部分と、第1部分よりも高い変形性を有する第2部分と、を含んでいてもよく、この場合には、第2の伸縮制御部を位置によって異なる変形性を示すように構成することができる。例えば、図15(a)、(b)に示す例において、第2の伸縮制御部42は、第1部分42aと、第1部分42aよりも高い変形性を有する第2部分42bと、を含み、第2部分42bは第1部分42aよりも配線領域21側に位置する。なお、図15(a)は、伸長状態の伸縮性回路基板を示す断面図であり、図15(b)は、図15(a)に示す伸縮性回路基板が弛緩した状態を示す断面図である。
第2の伸縮制御部の第2部分の厚みは、第1部分の厚みよりも薄くすることができる。また、第2部分の厚みは、少なくとも部分的に、配線領域側に向かうにつれて減少していてもよい。図15(a)に示す例において、第2の伸縮制御部42の第2部分42bの厚みは、第1部分42a側から配線領域21側へ向かうにつれて単調に減少している。この場合、基材2の機能性部材周囲領域23の変形性が、配線領域21に向かうにつれて高くなる。したがって、機能性部材領域22と配線領域21との間の境界又はその近傍で基材2の変形性が急激に変化することを抑制することができる。このため、伸縮性回路基板1を弛緩させたとき、図15(b)に示すように、機能性部材周囲領域23に位置する基材2及び配線4に、配線領域21に現れる蛇腹形状部に適合する変形を生じさせることができる。これにより、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で配線が破損してしまうのを抑制することができる。
第2の伸縮制御部42は、例えば図16(a)に示すように、機能性部材領域22に位置する機能性部材5の全域を覆う半球状の形状を有していてもよい。この場合、第2の伸縮制御部42のうち第1部分42aよりも配線領域21側に位置する第2部分42bにおいては、その厚みが、配線領域21側に向かうにつれて減少する。このため、基材の機能性部材周囲領域の変形性が、配線領域に向かうにつれて高くなる。したがって、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で基材の変形性が急激に変化することを抑制することができる。これにより、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で配線が破損するのを抑制することができる。
第2の伸縮制御部は、例えば図16(b)に示すように、第2の伸縮制御部42の第2部分42bの密度分布が、第2の伸縮制御部42の第1部分42aの密度分布よりも小さくなっていてもよい。第2部分42bは、図16(b)に示すように、隙間を空けて配置された複数の部材を含む。第2部分42bの密度分布は、配線領域21に向かうにつれて小さくなっていてもよい。例えば、第2部材を構成する複数の部材の幅が、配線領域に向かうにつれて小さくなっていてもよく、第2部材を構成する複数の部材の間の隙間が、配線領域に向かうにつれて大きくなっていてもよい。第2部分の各部材は、例えば、第1部分と同一の材料によって構成されている。
この場合、基材の機能性部材周囲領域の変形性が、配線領域に向かうにつれて高くなる。したがって、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で基材の変形性が急激に変化するのを抑制することができる。これにより、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で配線が破損するのを抑制することができる。
なお、第2の伸縮制御部の第1部分も、隙間を空けて配置された複数の部材を含んでいてもよい。
第2の伸縮制御部は、第2の伸縮制御部の第2部分のヤング率が、第2の伸縮制御部の第1部分のヤング率よりも小さくなっていてもよい。この場合、基材の機能性部材周囲領域の変形性が、配線領域に向かうにつれて高くなる。したがって、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で基材の変形性が急激に変化することを抑制することができる。これにより、機能性部材領域と配線領域との間の境界又はその近傍で配線が破損するのを抑制することができる。
また、第2の伸縮制御部が支持基材と基材との間に位置する場合、第2の伸縮制御部の第2部分のヤング率が第1部分のヤング率よりも小さくなるよう、第2の伸縮制御部を構成してもよい。この場合、第2の伸縮制御部は、粘着層によって構成することができる。すなわち、粘着層が、第2の伸縮制御部を兼ねることができる。
第2の伸縮制御部42は、図16(c)に示すように、機能性部材5に寄り掛かっていてもよい。この場合、第2の伸縮制御部42が設けられた蛇腹形状部の山部が更に機能性部材領域22側に変位しようとすると、機能性部材5に寄り掛かっている第2の伸縮制御部42が圧縮され、反発力が生じる。このため、第2の伸縮制御部が設けられた蛇腹形状部の山部の高さが拡大することを抑制することができる。これにより、機能性部材と配線との間の電気接合部が破損するのを抑制することができる。なお、第2の伸縮制御部42は、図16(c)に示すように、その他の第2の伸縮制御部等を介して間接的に機能性部材5に寄り掛かっていてもよく、図示はしないが、直接的に機能性部材に寄り掛かっていてもよい。
第2の伸縮制御部は、基材の第1面側に位置していてもよく、基材の第2面側に位置していてもよく、基材の内部に位置していてもよい。
第2の伸縮制御部が基材の第1面側に位置している場合、第2の伸縮制御部42は、例えば図8(b)に示すように機能性部材5の支持基材7側の面とは反対側の面に位置していてもよく、図示しないが支持基材と機能性部材との間に位置していてもよく、図17(a)に示すように基材2と粘着層8との間に位置していてもよい。第2の伸縮制御部が基材と粘着層との間に位置している場合、第2の伸縮制御部は、基材の第1面上に位置していてもよく、基材の第1面に設けられた凹部に位置していてもよい。
第2の伸縮制御部が基材の内部に位置している場合、例えば図17(b)に示すように、第2の伸縮制御部42は、基材2の内部に埋め込まれている。このような基材及び第2の伸縮制御部は、例えば、型の中に樹脂を流し込み、型の樹脂を固めることによって基材を作製する場合に、型の中に第2の伸縮制御部を適切なタイミングで投入することによって得られる。
第2の伸縮制御部が基材の第2面側に位置している場合、第2の伸縮制御部42は、例えば図17(c)に示すように基材と別々に構成されていてもよく、図17(d)、(e)に示すように一体的に構成されていてもよい。第2の伸縮制御部が基材と一体的に構成されている場合、第2の伸縮制御部42は、例えば図17(e)に示すように、基材2の第2面2bから突出した凸部であってもよく、図17(d)に示すように、機能性部材周囲領域23の周囲の配線領域21に凹部を形成することによって機能性部材周囲領域23に現れるものであってもよい。なお「一体的」とは、基材と第2の伸縮制御部との間に界面が存在しないことを意味する。
なお、基材の第1面の法線方向における第2の伸縮制御部の位置は、基材の第1面の法線方向における第1の伸縮制御部の位置と、同じあってもよく、異なっていてもよい。
第2の伸縮制御部は、少なくとも機能性部材周囲領域に位置し、機能性部材周囲領域と機能性部材領域との間の境界まで広がっていればよい。例えば図8(b)に示すように、第2の伸縮制御部42は、機能性部材周囲領域23と機能性部材領域22との間の境界を越えて機能性部材領域22にまで広がっていてもよく、さらに機能性部材領域22の全域にわたって広がっていてもよい。また、例えば図18(a)に示すように、第2の伸縮制御部42は、機能性部材周囲領域23と機能性部材領域22との間の境界に沿って延びる枠状のパターンを有していてもよい。
また、第2の伸縮制御部は、位置に応じて異なるパターンを有していてもよい。例えば図18(b)に示すように、機能性部材領域22に位置する第2の伸縮制御部42は正方形状を有し、機能性部材周囲領域23に位置する第2の伸縮制御部42は円形状を有していてもよい。なお、図18(b)に示す例において、第1の伸縮制御部41は長方形状を有している。
機能性部材周囲領域は、機能性部材領域の周囲に位置する領域である。機能性部材周囲領域は、機能性部材と配線との間の境界部に応力が集中するのを抑制するために、第2の伸縮制御部が設けられる領域である。機能性部材周囲領域の寸法は、機能性部材と配線との間の境界部に応力が集中するのを抑制することができるよう定められる。
機能性部材周囲領域の面積は、例えば、機能性部材領域の面積の1/4以上とすることができ、機能性部材領域の面積の1/2以上であってもよい。また、機能性部材周囲領域の面積は、例えば、機能性部材領域の面積以下とすることができ、機能性部材領域の面積の3/4以下であってもよい。
機能性部材周囲領域は、機能性部材の端部から一定の距離以内の領域として定められていてもよい。機能性部材周囲領域は、例えば、機能性部材の端部から5mm以内の領域とすることができ、2mm以内の領域であってもよい。
なお、機能性部材領域には、第2の伸縮制御部とは別の、機能性部材領域の変形を抑制するための部材が設けられていてもよい。
9.第2の粘着層
本態様の伸縮性回路基板は、配線および機能性部材の支持基材側の面とは反対側の面側、または基材の第2面側に第2の粘着層を有していてもよい。第2の粘着層は、本態様の伸縮性回路基板を人の身体等の対象物に貼付するために設けられるものである。
第2の粘着層は、通常、蛇腹形状部を有する配線等を形成した後に配置されるものであることから、蛇腹形状部は有さない。
また、第2の粘着層は、透明性を有することが好ましい。本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材以外の部材が透明性を有する場合には、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、本態様の伸縮性回路基板における配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、第2の粘着層の全光線透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
第2の粘着層としては、特に限定されるものではなく、一般的な粘着剤を用いることができ、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
第2の粘着層の厚みとしては、伸縮可能であり、伸縮性回路基板を対象物に貼付可能な厚みであればよく、伸縮性回路基板の用途等に応じて適宜選択される。第2の粘着層の厚みは、例えば10μm以上、100μm以下の範囲内とすることができる。
また、第2の粘着層の基材側の面とは反対側の面に、剥離層が位置していてもよい。剥離層としては、一般的なものを使用することができる。
第2の粘着層の配置方法としては、例えば、粘着剤を塗布する方法や、剥離層の一方の面に第2の粘着層を有する粘着フィルムを準備し、粘着フィルムの第2の粘着層側の面を貼合する方法が挙げられる。
10.伸縮性回路基板の製造方法
本態様の伸縮性回路基板は、伸縮性回路基板を予め伸長する方法により作製することができる。
本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、例えば、支持基材の一方の面に配線を有する積層体を準備する準備工程と、伸縮性を有する基材を伸長する伸長工程と、基材を伸長した状態で、基材の第1面側に粘着層を介して上記積層体の支持基材側の面を貼合する配線配置工程と、配線配置工程後、基材の引張応力を取り除く解放工程とを有することができる。
図2(a)~(e)は、本態様の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、支持基材7の一方の面に、配線4および機能性部材5を配置して、積層体を作製する。また、図2(b)~(c)に示すように、伸縮性を有する基材2を伸長する。本工程は、伸縮性を有する基材をプレストレッチするともいう。次いで、図2(d)に示すように、基材2を伸長させた状態で、基材2の第1面2aに、粘着層8を介して、上記積層体の支持基材7側の面を貼合する。続いて、図2(e)に示すように、基材2の引張応力を取り除く。この際、伸縮性を有する基材2が収縮するのに伴い、配線4、支持基材7および粘着層8が変形し、蛇腹形状部を有するようになる。これにより、伸縮性回路基板1が得られる。
伸長工程において、基材を伸長する際には、例えば一軸方向に伸長してもよく、二軸方向に伸長してもよい。
伸長工程において、基材は、常態(非伸長状態)を基準として、20%(初期の長さの1.2倍)以上に伸長することが好ましく、30%(初期の長さの1.3倍)以上に伸長することがより好ましく、50%(初期の長さの1.5倍)以上に伸長することがさらに好ましい。なお、基材の伸長率の上限は、200%程度である。基材を上記の範囲で伸長することにより、伸縮可能な配線を得ることができる。
本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、準備工程において、支持基材の一方の面に配線を配置した後、配線の支持基材側の面とは反対側の面に調整層を配置してもよい。
また、本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、基材の第1面側または基材の第2面側に第1の伸縮制御部を配置する第1の伸縮制御部配置工程や、基材の第1面側または基材の第2面側に第2の伸縮制御部を配置する第2の伸縮制御部配置工程を有することができる。
また、本態様の伸縮性回路基板において、基材の内部に第1の伸縮制御部や第2の伸縮制御部が埋め込まれている場合には、上述したように、予め第1の伸縮制御部や第2の伸縮制御部を内包する基材を得ることができる。
また、本態様の伸縮性回路基板の製造方法は、解放工程後に、第2の粘着層を配置する第2の粘着層配置工程を有してもよい。
11.伸縮性回路基板
本態様の伸縮性回路基板において、配線および機能性部材が位置する領域以外の領域は、透明性を有することが好ましい。この場合、使用者が伸縮性回路基板を装着した時の違和感を低減することができる。また、配線および機能性部材が位置する領域以外の領域で、伸縮性回路基板が装着された対象の様子を確認することができる。
具体的には、配線および機能性部材が位置する領域以外の領域の全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
本態様の伸縮性回路基板は、伸縮性を有することから、曲面や複雑な形状に適用することができ、かつ、変形に追従することができる。このような利点から、本態様の伸縮性回路基板は、例えば、ウェアラブルデバイス、医療機器、生体センサ、ロボット、自動車、建築部材、包装用部材等に用いることができる。
本態様の伸縮性回路基板は、例えば、人の皮膚に貼付して用いてもよく、ウェアラブルデバイスやロボットに装着して用いてもよい。
B.第2態様
本開示の第2態様の伸縮性回路基板は、伸縮性を有する基材と、粘着層と、支持基材と、配線と、をこの順に有し、上記配線、上記支持基材および上記粘着層が、上記伸縮性を有する基材の第1面側に位置し、上記基材の上記第1面の法線方向における山部及び谷部が上記基材の上記第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、上記粘着層の上記蛇腹形状部の上記谷部の厚みT2に対する、上記粘着層の上記蛇腹形状部の上記山部の厚みT1の比(T1/T2)が、1.1以上である。
図1(a)、(b)は、本態様の伸縮性回路基板の一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A線断面図である。図1(a)、(b)に例示する伸縮性回路基板1は、伸縮性を有する基材2と、粘着層8と、支持基材7と、配線4と、をこの順に有している。また、伸縮性回路基板1は、支持基材7の配線4側の面に機能性部材5を有することができる。
伸縮性回路基板1において、配線4と支持基材7と粘着層8とは、基材2の第1面2a側に位置しており、基材2の第1面2aの法線方向における山部31、33、35及び谷部32、34、36が基材2の第1面2aの面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部30を有する。なお、図1(a)、(b)に示す蛇腹形状部については、上記第1の態様の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
図2(a)~(e)は、本態様の伸縮性回路基板の製造方法の一例を示す工程図である。なお、図2(a)~(e)については、上記第1の態様の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。伸縮性回路基板の製造方法において、予め伸長させた状態の基材2から引張応力を取り除いて基材2を収縮させたとき、図2(e)に示すように、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部30を有するようになる。
図3(a)は、伸長状態の伸縮性回路基板の一例を示す断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す伸縮性回路基板が弛緩した状態の一例を示す断面図である。図3(a)~(b)に示すように、伸縮性回路基板1が伸長した状態から弛緩した状態になると、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部を有するようになる。図3(b)に示すように、粘着層8においては、粘着層8の蛇腹形状部の谷部36の厚みT2に対する、粘着層8の蛇腹形状部の山部35の厚みT1の比(T1/T2)が所定の値以上となっている。
ここで、伸縮性回路基板の製造方法において、配線が蛇腹状に変形する際、変形の度合いが、伸長の際の基材伸びのばらつきや、基材上の配線の分布密度の差等に起因して、位置によってばらついてしまう。配線の変形の度合いにばらつきがあると、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きくなることがある。配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所では、応力が集中する。また、一般に、伸縮性を有する基材にはエラストマーが用いられ、配線には金属や合金等が用いられることから、配線のヤング率は基材のヤング率よりも非常に大きい。すなわち、配線は基材よりも硬く変形しにくい。そのため、配線に生じる湾曲や屈曲の程度が局所的に大きい箇所では、応力が集中しやすくなる。配線において応力が集中する箇所では、折れ等の破損が生じたり、また伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に抵抗値が上昇したりしてしまう。
これに対し、本態様によれば、伸縮性を有する基材および支持基材の間に粘着層が位置しており、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みの比が所定の値以上であることにより、配線が破損したり、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に配線の抵抗値が上昇したりするのを抑制することができる。この理由は明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みの比が所定の値以上であるため、本態様の伸縮性回路基板の製造方法において、図2(e)に示すように、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部30を有するようになる際に、粘着層8は、蛇腹形状部30の山部35に偏在することになるということができる。そのため、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。また、粘着層が蛇腹形状部の山部に偏在することにより、蛇腹形状部の周期を比較的大きくすることができると考えられる。そのため、蛇腹形状部の周期が大きくなることによっても、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
また、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みの比が所定の値以上であるため、図3(a)~(b)に示すように、伸縮性回路基板1が伸長した状態から弛緩した状態になり、配線4、支持基材7および粘着層8が蛇腹状に変形して、蛇腹形状部を有するようになる際に、粘着層8は、蛇腹形状部の山部35に偏在することになるということができる。そのため、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮する際にも、配線に生じる湾曲や屈曲の程度を緩やかにすることができる。
さらには、伸縮性回路基板1が弛緩した状態から伸長した状態になると、図3(a)に示すように粘着層8の偏在が少なくなり、再度、伸縮性回路基板1が弛緩した状態になると、図3(b)に示すように粘着層8は蛇腹形状部30の山部35に偏在するようになると考えられる。このとき、蛇腹形状部30の山部31、33、35および谷部32、34、36の位置は、伸縮性回路基1が繰り返し伸縮するたびに、同じ位置になるとは限らず、異なる位置になる傾向にある。
ここで、蛇腹形状部の山部及び谷部の折り目の部分には応力が集中するため、伸縮性回路基が繰り返し伸縮するたびに、蛇腹形状部の山部及び谷部の位置が同じ位置になると、配線に折れ等の破損が生じやすくなる。
これに対し、本態様においては、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みの比が所定の値以上であることにより、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮させるたびに、蛇腹形状部の山部及び谷部の位置を異ならせることができる。これにより、伸縮性回路基板が繰り返し伸縮する際に、同じ位置に応力が集中するのを低減することができる。
したがって、本態様においては、配線に折れ等の破損が生じて断線したり、伸縮性回路基板を繰り返し伸縮した際に配線の抵抗値が上昇したりするのを抑制することが可能である。
なお、伸縮性を有する基材、配線、支持基材、機能性部材、調整層、第1の伸縮制御部、第2の伸縮制御部、第2の粘着層、および伸縮性回路基板の製造方法については、上記第1態様の伸縮性回路基板と同様であるので、ここでの説明は省略する。以下、本態様の伸縮性回路基板の粘着層について説明する。
(粘着層)
本態様における粘着層は、伸縮性を有する基材および支持基材の間に位置し、伸縮性を有する基材の第1面の法線方向における山部及び谷部が基材の第1面の面内方向に沿って繰り返し現れる蛇腹形状部を有し、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みの比が所定の値以上である部材である。
粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みよりも大きく、着層の蛇腹形状部の谷部T2の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部T1の厚みの比(T1/T2)が、1.1以上であり、中でも1.3以上であることが好ましい。また、粘着層の蛇腹形状部の谷部T2の厚みに対する、粘着層の蛇腹形状部の山部T1の厚みの比(T1/T2)は、例えば50以下とすることができ、中でも10以下であることが好ましく、特に5以下であることが好ましい。上記比を上記範囲とすることにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは、粘着層の蛇腹形状部の振幅以上であることが好ましい。これにより、粘着層の蛇腹形状部の周期をより大きくし、配線の蛇腹形状部の山部及び谷部の曲がり具合をより緩やかにすることができると考えられる。
なお、粘着層の蛇腹形状部の山部及び谷部の厚みについては、上記第1態様の伸縮性回路基板と同様とすることができる。
また、本態様の伸縮性回路基板の製造に用いられる粘着層の厚み、すなわち貼合前の粘着層の厚みとしては、伸縮可能であり、粘着層を介して基材の第1面側に支持基材および配線を貼合可能な厚みであればよく、例えば5μm以上、200μm以下の範囲内とすることができ、好ましくは10μm以上、100μm以下の範囲内である。
粘着層のヤング率は、伸縮性を有する基材のヤング率よりも小さいことが好ましい。また、粘着層のヤング率は、配線のヤング率よりも小さく、支持基材のヤング率よりも小さいことが好ましい。
なお、粘着層のヤング率については、上記第1態様の伸縮性回路基板と同様とすることができる。
また、粘着層の材料、粘着層が有する蛇腹形状部、粘着層の位置、および粘着層の配置方法については、上記第1態様の伸縮性回路基板と同様とすることができる。
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
[実施例]
(伸縮性基材の作製)
粘着層として厚み50μmのアクリル系粘着シートを用い、その粘着シート上に2液付加縮合のポリジメチルシロキサン(PDMS)を厚さ900μmになるよう塗布し、PDMSを硬化させて、粘着層および伸縮性基材の第1積層体を作製した。
(配線の形成)
支持基材として厚さ2.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用い、PENフィルム上にAgペーストをスクリーン印刷して、幅200μm、長さ40mmの配線を設けた。これにより、支持基材および配線の第2積層体を得た。
ここで、PDMSの伸縮性基材、PENの支持基材、Agの配線および粘着層のヤング率の大小関係は、下記の通りであった。
粘着層<伸縮性基材<配線<支持基材
(伸縮性回路基板の作製)
上記の第1積層体を1軸に50%伸長させた状態で、第1積層体の粘着層側の面に、上記の第2積層体の支持基材側の面を貼合させた。この際の配線の抵抗は42Ωであった。
次いで、伸長を解放することで伸縮性基材を収縮させた。これにより、支持基材の表面に凹凸形状が生じて収縮した。この際、5周期分の周期の平均は470μm、最小曲率半径は45μmであった。また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは56μm、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは42μmであった。また、配線の抵抗は73Ωであった。
また、伸縮性回路基板について、1万回、30%伸縮耐久試験を行ったところ、試験前後での抵抗値上昇は2.6倍であった。
[比較例]
実施例で用いた粘着シートとは異なるアクリル系粘着シートを用いたこと以外は、実施例と同様にして、第1積層体および第2積層体を作製した。
PDMSの伸縮性基材、PENの支持基材、Agの配線および粘着層のヤング率の大小関係は、下記の通りであった。
伸縮性基材<粘着層<配線<支持基材
上記の第1積層体を1軸に50%伸長させた状態で、第1積層体の粘着層側の面に、上記の第2積層体の支持基材側の面を貼合させた。この際の配線の抵抗は44Ωであった。
次いで、伸長を解放することで伸縮性基材を収縮させた。これにより、支持基材の表面に凹凸形状が生じて収縮した。この際、5周期分の周期の平均は670μm、最小曲率半径は49μmであった。また、粘着層の蛇腹形状部の山部の厚みは51μm、粘着層の蛇腹形状部の谷部の厚みは50μmであった。また、配線の抵抗は75Ωであった。
また、伸縮性回路基板について、1万回、30%伸縮耐久試験を行ったところ、試験前後での抵抗値上昇は6.4倍であった。