JP7153337B2 - スピロシロキサン化合物、主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサン及びそれらの製造方法 - Google Patents
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即ち、本発明は以下を含む。
(式(C)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、R5は水素、または-(CH2)2R6で表わされる炭素原子数2~22の炭化水素基(R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基)を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表し、n=1の場合、末端は炭素原子数1~20の炭化水素基、水素、及び-SiR4H2で表されるシリル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む。)
<2> nが2以上である、<1>に記載のスピロシロキサン化合物。
<3> nが3以上の大環状ポリシロキサンである、<2>に記載のスピロシロキサン化合物。
<4> ルイス酸性を有するホウ素化合物の存在下、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物とを反応させて下記式(c)で表される構造を有する化合物を生成する工程(I)を含む、スピロシロキサン化合物の製造方法。
(式(a)~(c)中、R0はそれぞれ独立して、炭素原子数1~20の炭化水素基を、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表す。)
<5> 白金触媒の存在下、下記式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物と下記式(d)で表される化合物とを反応させて下記式(c’)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物を生成する工程(II)を含む、スピロシロキサン化合物の製造方法。
(式(c)、(c’)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表し、式(d)、(c’)中、R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。)
<6> nが2以上である、<4>又は<5>に記載のスピロシロキサン化合物の製造方法。
<7> nが3以上の大環状ポリシロキサンである、<6>に記載のスピロシロキサン化合物の製造方法。
本発明の一態様は、下記式(C)で表される構造を有することを特徴とする、スピロシロキサン化合物である。以下、式(C)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物を説明する。
(式(C)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、R5は水素、または-(CH2)2R6で表わされる炭素原子数2~22の炭化水素基(R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基)を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表し、n=1の場合、末端は炭素原子数1~20の炭化水素基、水素、及び-SiR4H2で表されるシリル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む。)
式(C)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して「窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)」を表しているが、「窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子が窒素原子を含む1価の官能基又はハロゲン原子で置換されていてもよいほか、炭化水素基の炭素骨格内部の炭素原子が窒素原子を含む2価以上の官能基(連結基)で置換されていてもよいことを意味する。中でも、少なくとも1つのハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基が好ましい。
「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。
R1、R2、R3、及びR4の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下であり、R1、R2、R3、及びR4が芳香族炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R1、R2、R3、及びR4の炭化水素基に含まれる官能基としては、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。なお、官能基がアルケニル基、アルキニル基等、炭素原子を含む場合、炭化水素基の炭素数に含める。また、R1、R2、R3、及びR4が窒素原子を含む場合は、NH結合以外であり、例えば、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ピリジル基等が挙げられる。
R1、R2、R3、及びR4としては、メチル基(-CH3,-Me)、エチル基(-C2H5,-Et)、n-プロピル基(-nC3H7,-nPr)、i-プロピル基(-iC3H7,-iPr)、n-ブチル基(-nC4H9,-nBu)、t-ブチル基(-tC4H9,-tBu)、n-ペンチル基(-nC5H11)、n-ヘキシル基(-nC6H13,-nHex)、シクロヘキシル基(-cC6H11,-Cy)、アリル基(-CH2CH=CH2)、ベンジル基(-CH2C6H5)、ビニル基(-CH=CH2)、フェニル基(-C6H5,-Ph)、クロロメチル基(-CH2Cl)、トリフルオロメチル基(-CF3)等が挙げられる。
式(C)中、R5は水素、または-(CH2)2R6で表わされる炭素原子数2~22の炭化水素基(R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基)である。
(R6)
式(C)中、R6は「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基」を表しているが、有機基としては、好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素原子数1~20の炭化水素基並びにシリル基が挙げられる。
1価の有機基が炭化水素基である場合、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子が窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を含む1価の官能基で置換されていてもよいほか、炭化水素基の炭素骨格内部の炭素原子が窒素原子、酸素原子、ケイ素原子等を含む2価以上の官能基(連結基)で置換されていてもよいことを意味する。また、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。R6が脂肪族炭化水素基の場合の炭素原子数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下であり、R6が芳香族炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常6以上である。
また、1価の有機基がシリル基である場合、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、シリル基のケイ素原子に窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子等を含む1価の官能基が結合されていてもよいことを意味する。
R6に含まれていてもよい官能基としては、水酸基(-OH)、エーテル基(オキサ基,-O-)、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)、ヨード基(-I)、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
従って、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」炭素原子数1~20の炭化水素基には、例えば-CF3のようにハロゲンを含んでいる炭素数1の炭化水素基、-CF2CF3のようにハロゲンを含んでいる炭素数2の炭化水素基、-CH2CH2CH2-Clのようにハロゲンを含んでいる炭素数3の炭化水素基、-CH2-O-CH3のようにエーテル基を炭素骨格の内部に含んでいる炭素数2の炭化水素基等が含まれ、R6としては、メチル基(-CH3,-Me)、エチル基(-C2H5,-Et)、n-プロピル基(-nC3H7,-nPr)、i-プロピル基(-iC3H7,-iPr)、n-ブチル基(-nC4H9,-nBu)、t-ブチル基(-tC4H9,-tBu)、n-ペンチル基(-nC5H11)、n-ヘキシル基(-nC6H13,-nHex)、シクロヘキシル基(-cC6H11,-Cy)、アリル基(-CH2CH=CH2)、ベンジル基(-CH2C6H5)、ビニル基(-CH=CH2)、フェニル基(-C6H5,-Ph)、4-クロロフェニル基(-C6H4Cl)、グリシジルエーテル基、ヒドロキシエトキシメチル基(-CH2O(CH2)2OH)等が挙げられる。
また、「窒素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」シリル基には、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基、トリハロシリル基等が挙げられ、中でも、トリアルキルシリル基が好ましい。R6としては、例えば、トリメチルシリル基(-Si(CH3)3,-TMS)、トリメトキシシリル基(-Si(OCH3)3)、トリエトキシシリル基(-Si(OC2H5)3)、トリエチルシリル基(-Si(C2H5)3,-TES)、トリイソプロピルシリル基(-Si(C4H9)3,-TIPS)、t-ブチルジメチルシリル基(-Si(CH3)2C(CH3)3,-TBDMS)、ジ
メチルフェニルシリル基(-SiPh(CH3)2)、t-ブチルジフェニルシリル基(-SiPh2C(CH3)3,-TBDPS)、ジメトキシメチルシリル基(-SiCH3(OCH3)2)、メトキシジメチルシリル基(-Si(CH3)2(OCH3))、トリクロロシリル基(-SiCl3)等が挙げられる。
式(C)中、kは、合成のし易さ、ポリシロキサンの定序性の確保の観点から、好ましくは、4以下、より好ましくは2以下である。
nは1~100であり、好ましくは2~50であり、より好ましくは2~20である。
nは1~100であり、好ましくは2~50であり、より好ましくは2~20である。
次に、式(C)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物の製造方法について説明する。
本発明の一態様であるシロキサン化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、ルイス酸性を有するホウ素化合物の存在下、下記式(a)で表される化合物であるスピロシロキサンと下記式(b)で表される化合物であるトリヒドロシランとを反応させて下記式(c)で表される構造を有する、スピロシロキサン構造とSi-H基を有するスピロシロキサン化合物を生成する工程(I)を含む。また、白金触媒存在下、上記工程(I)により得られる下記式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物と下記式(d)で表される化合物とを反応させて下記式(c’)で表される構造を有する、スピロシロキサン化合物を生成する工程(II)(以下、「ヒドロシリル化工程」と表記する場合がある。)を含む。
(式(a)~(c)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、R0はそれぞれ独立して、炭素原子数1~20の炭化水素基を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表す。)
(式(c)、(c’)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表し、式(d)、(c’)中、R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。)
クロロシラン類やアルコキシシラン類の加水分解/脱水縮合によるシロキサン結合形成法では、シロキサンの配列を精密に制御して定序性ポリシロキサンを得ることはできない。また、ルイス酸性を有するホウ素化合物を触媒とするアルコキシシラン類とヒドロシラン類の脱炭化水素縮合反応では、シロキサン結合の組み替えなどの副反応が起こるため、シロキサンの配列を制御して定序性ポリシロキサンを合成することは極めて困難であり、単環式の環状4量体構造を含む定序性大環状ポリシロキサンの合成が報告されているのみである。
本発明者らは、ルイス酸性を有するホウ素化合物を触媒とするアルコキシシランとヒドロシランの脱炭化水素縮合反応を、アルコキシ基を2つ有するスピロシロキサンとトリヒドロシランに適用することにより新規な化合物の合成に成功し、さらに、ルイス酸性を有するホウ素化合物を触媒とするアルコキシシランとヒドロシランの脱炭化水素縮合反応を、アルコキシ基を2つ有するスピロシロキサンとトリヒドロシランの共重合に適用することによって、シロキサン結合の組み替え反応を抑制して、主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを効率よく製造することができることを見出したのである。
以下、「工程(I)」、「工程(II)」について詳細に説明する。
工程(I)、すなわち、脱炭化水素縮合反応は、ルイス酸性を有するホウ素化合物の存在下、式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物とを反応させて式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン構造とSi-H基を有するスピロシロキサン化合物を生成する工程である。
式(a)で表される化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるスピロシロキサン化合物に応じて適宜選択されるべきであるが、基本的に、製造目的であるスピロシロキサン化合物と共通の構造を有する化合物を選択すべきでありアルコキシ基を2つ有するスピロシロキサンである下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
(式(a)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、R0はそれぞれ独立して、炭素原子数1~20の炭化水素基を、kは1~5の整数を表す。)
式(a)中、R1、R2、及びR3は、式(C)で説明したR1、R2、及びR3と同
義であり、好ましい態様も同様である。
R0はそれぞれ独立して、「炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。また、炭素原子数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下であり、Rが芳香族炭化水素基である場合の炭素原子数は、通常6以上である。
R0としては、メチル基(-CH3,-Me)、エチル基(-C2H5,-Et)、n-プロピル基(-nC3H7,-nPr)、i-プロピル基(-iC3H7,-iPr)、n-ブチル基(-nC4H9,-nBu)、t-ブチル基(-tC4H9,-tBu)、n-ペンチル基(-nC5H11)、n-ヘキシル基(-nC6H13,-nHex)、シクロヘキシル基(-cC6H11,-Cy)、アリル基(-CH2CH=CH2)、ベンジル基(-CH2C6H5)、ビニル基(-CH=CH2)、フェニル基(-C6H5,-Ph)等が挙げられる。
-OR0で表される基としては、例えば下記式で表されるアルコキシ基が挙げられる。
を参照して合成することが出来る。
トリヒドロシランである、式(b)で表される化合物の具体的種類は、目的とするスピロシロキサン化合物に応じて適宜選択される。以下、式(b)で表される化合物について説明する。
(R4は窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
式(b)中、R4は式(C)で説明したR1、R2、及びR3と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(b)で表される化合物としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
上記範囲内であると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
ルイス酸性を有するホウ素化合物の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、ルイス酸性を有するホウ素化合物は、1種類に限られず、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ルイス酸性を有するホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C6F5)3)、トリス(ペンタクロロフェニル)ボラン(B(C6Cl5)3)、トリフェニルボラン(BPh3)、三フッ化ホウ素(BF3)、三塩化ホウ素(BCl3)、三臭化ホウ素(BBr3)等が挙げられるが、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが特に好ましい。
上記のものであると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
上記範囲内であると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
工程(I)は、無溶媒で行ってもよいが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒の種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。この中でもトルエンが特に好ましい。
また、大環状のポリシロキサンを選択的に生成させる場合、溶媒を使用することが好ましく、式(a)で表される化合物が溶媒に対し、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
上記のものであると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
工程(I)の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは40℃以下である。
工程(I)の反応時間は、通常10分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、通常96時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは12時間以下である。
工程(I)は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
上記範囲内であると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
工程(I)によって生成する式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物は、製造目的に応じて適宜選択することができる。また、上述した通り、式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物は、式(C)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物の一実施形態である。なお、生成物の同定は、29Si{1H} NMR測定、MALDI-TOFMSにより行うことができる。また、重量平均分子量及び数平均分子量(ポリスチレン換算)は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により、決定することもできる。
式(c)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基(但し、NH結合を含まない)を、nは2~100の整数を、kは1~10の整数を表す。
R1~R4は「式(a)で表される化合物」、「式(b)で表される化合物」のものと同義であり、好ましい態様も同様である。nは1~100、好ましくは2~50、より好ましくは2~20の整数である。nは好ましくは、2以上、50以下であり、より好ましくは2以上20以下である。kは、合成のし易さ、ポリシロキサンの定序性の確保の観点から、好ましくは、4以下、より好ましくは2以下である。
(式(c1)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、nは1~100の整数を表す。)
式(c1)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
nは好ましくは、1~100の整数であり、好ましくは2以上、50以下であり、より好ましくは2以上20以下である。
工程(II)(ヒドロシリル化工程)は、白金触媒存在下、工程(I)で生成される式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物とオレフィンである式(d)で表される化合物とを反応させて式(c’)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物を生成する工程を含む。式(d)で表される化合物の具体的種類は、製造目的であるスピロシロキサン化合物に応じて適宜選択されるべきであるが、下記式(d)で表される化合物が挙げられる
(式(d)中、R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。)
式(d)中、R6は式(C)で説明したR6と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(d)で表されるオレフィンとしては、下記式で表されるものが挙げられる。
は0.9当量以上、より好ましくは0.95当量以上であり、通常10当量以下、好ましくは5当量以下、より好ましくは1.5当量以下である。上記範囲内であると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
白金触媒の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、白金触媒は、1種類に限られず、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
白金触媒としては、白金炭素、カールステッド触媒、塩化白金(PtCl2)、塩化白金(PtCl4)、塩化白金酸(H2PtCl4)、塩化白金酸(H2PtCl6)、アダムス触媒(PtO2-H2O)等が挙げられるが、カールステッド触媒が特に好ましい。上記のものであると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
ヒドロシリル化工程は、無溶媒であっても良いが、溶媒を使用することが好ましい。溶媒の種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。この中でもトルエンが特に好ましい。
上記のものであると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
ヒドロシリル化工程の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常150℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下である。
ヒドロシリル化工程の反応時間は、通常10分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、通常96時間以下、好ましくは48時間以下、より好ましくは12時間以下である。
ヒドロシリル化工程は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
上記範囲内であると、より効率良く主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンを製造することができる。
NMR測定、MALDI-TOFMSにより行うことができる。また、重量平均分子量及び数平均分子量(ポリスチレン換算)は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により、決定することもできる。
式(c’)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、nは1~100の整数を、kは1~10の整数を表し、式(d)、(c’)中、R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基を表す。
式(c’)中、R1~R4、R6、n及びkは、「式(c)で表される化合物」、「式(d)で表される化合物」と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(c’)で表されるスピロシロキサン化合物としては、好ましくは、下記式(c2)で表される化合物が挙げられる。
式(c2)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、窒素原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、R6は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい1価の有機基を、nは2~100の整数を表す。
式(c2)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。nは1~100の整数であり、好ましくは2以上、50以下であり、より好ましくは2以上20以下である。中でも、nが3~20の大環状ポリシロキサンが好ましい。
B(C6F5)3(3.6mg,0.0070mmol)をトルエン(56mL)に溶
解させた。この溶液に、4,12-diisopropoxy-2,2,6,6,10,10,14,14-octamethyl-4,12-diphenyl-1,3,4,7,9,11,13,15-octaoxa-2,4,6,8,10,12,14-heptasilaspiro[7.7]pentadecane(505mg,0.704mmol)を加えた。さらに、PhSiH3(87.0μL,0.704mmol)を加えて室温で撹拌した。12時間後、反応混合物をアルミナパッドによりろ過し(溶出液:ヘキサン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)によって、n=3~10の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.42、-16.44、-16.54、-16.56、-48.6、-78.125、-78.134、-105.6.
B(C6F5)3(5.1mg,0.010mmol)をトルエン(80mL)に溶解させた。この溶液に、4,12-diisopropoxy-2,2,6,6,10,10,14,14-octamethyl-4,12-diphenyl-1,3,4,7,9,11,13,15-octaoxa-2,4,6,8,10,12,14-heptasilaspiro[7.7]pentadecane(717mg,1.00mmol)を加えた。さらに、nHexSiH3(161μL,1.00mmol)を加えて室温で撹拌した。18時間後、反応混合物をアルミナパッドによりろ過し(溶出液:ヘキサン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~7の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.61、-16.63、-16.68、-16.71、-35.2、-78.3、-105.5.
B(C6F5)3(1.2mg,0.0024mmol)をトルエン(20mL)に溶解させた。この溶液に、4,12-dihexyl-4,12-diisopropoxy-2,2,6,6,10,10,14,14-octamethyl-1,3,4,7,9,11,13,15-octaoxa-2,4,6,8,10,12,14-heptasilaspiro[7.7]pentadecane(176mg,0.240mmol)を加えた。さらに、PhSiH3(32.6μL,0.264mmol)を加え
て室温で撹拌した。18時間後、反応混合物をアルミナパッドによりろ過し(溶出液:トルエン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造とSi-H基を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~10の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-17.58、-17.60、-17.74、-17.76、-49.8、-65、31、-65.32、-105.5.
カールステッド触媒(0.1mg,0.0001mmol)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。この溶液に、実施例1と同様にして合成したポリシロキサン(74mg,0.10mmol)を加えた。さらに、1-Octene(16μL,0.10mmol)を加えて室温で撹拌した。10時間後、反応混合物をシリカゲルパッドによりろ過し(溶出液:ヘキサン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~5の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.84、-16.90、-16.94、-17.0、-33.9、-79.05、-79.06、-105.6.
カールステッド触媒(0.1mg,0.0001mmol)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。この溶液に、実施例1と同様にして合成したポリシロキサン(74mg,
0.10mmol)を加えた。さらに、1-(Trimethylsilyl)ethene(15μL,0.10mmol)を加えて室温で撹拌した。22時間後、反応混合物をシリカゲルパッドによりろ過し(溶出液:トルエン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~6の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):3.0、-16.8、-16.91、-16.94、-17.0、-33.8、-79.0、-105.6.
カールステッド触媒(0.1mg,0.0001mmol)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。この溶液に、実施例1と同様にして合成したポリシロキサン(74mg,0.10mmol)を加えた。さらに、ビニルグリシジルエーテル(12μL,0.10mmol)を加えて室温で撹拌した。1時間後、反応混合物をシリカゲルパッドによりろ過し(溶出液:トルエン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~7の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.7、-16.8、-33.8、-48.6、-78.97、-78.98、-105.5.
カールステッド触媒(0.1mg,0.0001mmol)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。この溶液に、実施例1と同様にして合成したポリシロキサン(74mg,0.10mmol)を加えた。さらに、2-アリルオキシエタノール(11μL,0.10mmol)を加えて室温で撹拌した。1時間後、反応混合物をシリカゲルパッドによりろ過し(溶出液:トルエン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~6の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.62、-16.64、-16.76、-16.78、-33.9、-78.9、-105.5.
B(C6F5)3(0.1mg,0.0001mmol)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。この溶液に、実施例1と同様にして合成したポリシロキサン(74mg,0.10mmol)を加えた。さらに、4-クロロスチレン(13μL,0.10mmol)を加えて室温で撹拌した。1時間後、反応混合物をシリカゲルパッドによりろ過し(溶出液:トルエン)、目的とする主鎖中にスピロシロキサン構造を有する定序性ポリシロキサンが得られたことを29Si{1H} NMR測定によって確認した。また、MALDI-TOFMSによって、n=3~6の大環状ポリシロキサンを検出した。
29Si{1H}NMR(C6D6):-16.56、-16.59、-16.7、-16.8、-35.2、-78.9、-105.6.
Claims (7)
- 下記式(C)で表される構造を有する、スピロシロキサン化合物。
- nが2以上である、請求項1に記載のスピロシロキサン化合物。
- nが3以上の大環状ポリシロキサンである、請求項2に記載のスピロシロキサン化合物。
- ルイス酸性を有するホウ素化合物の存在下、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物とを反応させて下記式(c)で表される構造を有する化合物を生成する工程(I)を含む、スピロシロキサン化合物の製造方法。
- 白金触媒の存在下、下記式(c)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物と下記式(d)で表される化合物とを反応させて下記式(c’)で表される構造を有するスピロシロキサン化合物を生成する工程(II)を含む、スピロシロキサン化合物の製造方法。
- nが2以上である、請求項4又は5に記載のスピロシロキサン化合物の製造方法。
- nが3以上の大環状ポリシロキサンである、請求項6に記載のスピロシロキサン化合物の製造方法。
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2019
- 2019-02-07 JP JP2019020790A patent/JP7153337B2/ja active Active
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Matsumoto, Kazuhiro et al,One-Pot Sequence-Controlled Synthesis of Oligosiloxanes,Angewandte Chemie, International Edition,2018年,Vol.57(17),p.4637-4641 |
Zhdanov, A. A.; Kurasheva, N. A.; Khynku, E. S.,Synthesis of spirocyclic poly(organosiloxanes) by polycondensation,Izvestiya Akademii Nauk Kazakhskoi SSR, Seriya Khimicheskaya,1981年,Vol.6,p.38-47 |
田中 陵二 ら,スピロシロキサンの合成、構造、および性質,日本化学会講演予稿集,Vol.91(2),2011年,p.264 |
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