JP7151913B2 - デジタル/アナログ合成積分器とそれを用いたδς変調器 - Google Patents
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Description
本明細書が開示する技術は、デジタル/アナログ合成積分器とそれを用いたΔΣ変調器に関する。
ΔΣ型A/D変換器(Delta-Sigma Analog-to-Digital Converter、ΔΣADC)は、高分解能(例えば分解能14ビット以上)を実現できるA/D変換方式として広く知られており、実用化されている。ΔΣ型A/D変換器は、前段のΔΣ変調器と後段のデジタルフィルタで構成される。ΔΣ変調器は、アナログ入力をサンプリングし、1ビットまたは数ビット(例えば2~6ビット)の比較的少ないビット数で粗く量子化されたデジタル値(デジタル信号列)に変換し出力する。このΔΣ変調器出力のデジタル信号列に対して、後段デジタルフィルタで高周波側に偏った(ノイズシェイプされた)量子化雑音成分を除去すると、最終的に高分解能なA/D変換されたデジタル出力を得る。
ΔΣ変調器内には、アナログ入力値とデジタル出力値との差(正確には、アナログ入力値と、デジタル出力値をフィードバックデジタル/アナログ(D/A)変換器(フィードバックDAC)でアナログ量に変換した値との差)を、積分する「積分器」を有している。A/D変換器の入力がアナログ電圧であることに対応して、ΔΣ変調器の積分器は、一般的にはアナログ回路演算によって積分処理を実現する「アナログ積分器」である。一方で、ΔΣ変調器出力がデジタル値であることから、これをアナログ値に変換するDACが必要である。一般にアナログ積分器を回路共用して、アナログ入力サンプリング値とフィードバックDAC出力値の差を積分演算する。
キャパシタ素子は、本来において電圧を電荷として蓄える積分素子であるため、アナログ積分器に一般に用いられる。例えば、非特許文献1に、オペアンプを用いた積分器が2種類、入力サンプリング素子に抵抗を用いた連続時間積分器(Continuous-time integrator)、入力サンプリング素子にキャパシタを用いた離散時間積分器(Discrete-time integrator)の記述がある。基準電圧Vref+、Vref-を、デジタル入力値に対応して切り替えれば1ビットDACとして動作するため、非特許文献1のp441のFigure12.56のVinとしてVref+またはVref-を切り替えて入力し積分演算を行えば、1ビットDACと積分器が実現できる。C1として複数のキャパシタを用いれば、マルチビットDACと積分器となる。
一方、ΔΣ変調器に用いられる積分器は、オペアンプを使った積分器(アクティブ積分器、Active Integrator)だけでなく、オペアンプを使用しない積分器(パッシブ積分器、Passive Integrator)を用いることがある。例えば特許文献1には、このようなΔΣ変調器が開示されている。1ビットデジタル出力のΔΣ変調器は、フィードバックDACの入力が1ビットであり、1素子(差動回路の場合は1ペア)のスイッチ切り替えで実現でき、回路規模が小さく、かつ素子マッチングの影響がなく線形なD/A変換特性が得られるため、しばしば用いられてきた。
一方で、マルチビット(2ビット以上)出力のΔΣ変調器では、マルチビットデジタル入力のフィードバックDACが必要で、一般に回路がやや複雑となるが、1ビットΔΣ変調器にない利点を数多く持っており、これもしばしば設計選択される(非特許文献2のChapter 6参照)。特に、特許文献1に開示されるように、積分器としてパッシブ積分器を用いた場合、マルチビット化により積分器出力振幅が小さくなるため、後段量子化器の入力振幅が小さくなりリニアリティが向上する、積分器リークが小さくなる、などの利点があり、A/D変換器の特性を向上できる。
Behzad Razavi著, 「Design of Analog CMOS Integrated Circuits」, McGraw-Hill Education, 2016
Richard Schreier and Gabor C. Temes著, 「Understanding Delta-Sigma Data Converters」, Wiley IEEE Press, 2005
Rex T. Baird and Terri S. Fiez, 「Linearity Enhancement of Multibit ΔΣ A/D and D/A Converters Using Data Weighted Averaging」, IEEE Transactions on Circuits and Systems II, Vol. 42, No. 12, pp. 753-762, December 1995
Akira Yasuda, Hiroshi Tanimoto and Tetsuya Iida, 「A 100kHz 9.6mW Multi-bit ΔΣ DAC and ADC using Noise Shaping Dynamic Elements Matching with Tree Structure」, ISSCC Digest of Technical Papers, February 1998
上記の通り、マルチビット出力のΔΣ変調器は、マルチビットDACを必要とする。実際の集積回路では、マルチビットDACには、これを構成する素子群(例えばキャパシタ列)のミスマッチによる誤差がある。DAC出力の後段に積分器がある場合、ミスマッチ誤差が積分器に定常的に積分され、線形性が悪化する、という欠点がある。
これを改善する方法として、ダイナミックエレメントマッチング(Dynamic Element Matching:DEM)技術が知られている。これは、素子ミスマッチによる誤差が偏って積分されないよう、選択する素子を順次切り替えて平均化するというものである。その一つが、非特許文献3に記載されている「データ重みづけ平均化」(Data-Weighted Averaging:DWA)または「素子循環法」(Element rotation)と呼ばれる技術である。
DWAについて簡単に説明する。デジタルバイナリコードをまず温度計コード(Thermometer code)に変換し、DACを構成する複数のユニット素子を温度計コードの各ビットに対応させる。そして、素子を順次切り替えるための内部ポインタ(デジタル値)を持っており、素子が偏らないよう循環的に選択させることでミスマッチを平均化する、ポインタが一周すれば素子ミスマッチはキャンセルされる。このほか、DACの素子ミスマッチをキャンセルする方法としてはいくつかの方法が提案されており、例えば非特許文献4には他の例が記載されている。
ところが、従来のDEM技術において、ビット数が増すと、DACを構成するMOSスイッチとキャパシタの素子数が指数関数的に増加し、それぞれの素子をDEMで個々にスイッチング制御するためには、回路が複雑で設計が困難、かつチップ面積が増大し高コストとなる。例えばデジタル入力が6ビット000000~100000(10進数で0~32)のDACでは、32個のユニットキャパシタ(差動回路構成の場合は32対のユニットキャパシタペア)と、対応するアナログスイッチ(MOSスイッチ)が必要である。DACのビット数が増すにつれて、アナログ回路規模が大きくなって配線レイアウトは複雑となり、配線やスイッチの寄生容量による誤差が発生し、非線形性や意図せぬオフセット電圧発生の原因となりやすい。一般にアナログ集積回路では、デジタル回路と異なりレイアウトの自動生成は困難で、設計者が目と手でレイアウト設計しチェックせざるを得ない。このため、多ビットのDACで高いリニアリティ特性を得るには、設計、評価、そして設計修正を繰り返すことがしばしば発生し、開発は相当の困難を伴う、あるいは開発労力(人件費)、期間、試作費用などから開発不成立となることがある。
上記の実情を鑑み、本明細書が開示する技術は、デジタル値Dinを入力として、このデジタル値列(Din(1),Din(2),...)を時間軸または時系列で積分した値(ΣDin)をアナログ値(一般的にはアナログ電圧Vo)に変換して出力する、デジタル/アナログ合成積分器に具現化される。
このデジタル/アナログ合成積分器は、デジタル入力Dinの上位ビット分をDinH、下位ビット分をDinLとして(Din=DinH+DinL)、下位ビット分DinLについて、これをデジタル演算で積分する(ΣDinL)下位ビットデジタル積分器を持つ。この下位ビットデジタル積分器では、下位ビット分DinLのデジタル積分の結果、オーバーフローが発生する場合は、桁上げ分(Carry)を上位ビットDinHへ出力してデジタル演算で加算する(DinH+Carry)桁上げ処理を行い、それと同時に下位ビットデジタル積分器からは同じ桁上げ分を減算する(Σ(DinL-Carry))。つまり下位ビット分DinLのデジタル積分の結果から上位ビットへの桁上げ処理を行った後、下位ビットデジタル積分器は桁上げ分を無視したものを自己の出力とする。そして、デジタル/アナログ合成積分器は、下位ビットデジタル積分器の出力(Σ(DinL-Carry))をアナログ値に変換する下位ビットD/A変換器(DAC-L)をさらに持つ。
デジタル/アナログ合成積分器は、上位ビット分DinHについては、先の桁上げ分を加算した上位ビット分デジタル値(DinH+Carry)をアナログ値に変換する上位ビットD/A変換器(DAC-H)と、上位ビットD/A変換器による変換後のアナログ値をアナログ演算により積分する(Σ(DinH+Carry))上位ビットアナログ積分器を持つ。
そして、本技術に係るデジタル/アナログ合成積分器は、上位ビットアナログ積分器の出力と下位ビットD/A変換器(DAC-L)のアナログ出力をアナログ回路で加算演算し、最終積分器出力Voを得ることを特徴とする。
上記の構成では、下位ビットDAC-Lのミスマッチによる誤差は積分されないため、積分器出力に現れる平均誤差は、時間軸上で分散される。例えば、オーバサンプリングシステムでは、出力に現れる信号帯域の誤差が大幅に低減される。このため高分解能マルチビットDACで通常必要とされるミスマッチキャンセルDEMは、上位ビットDAC-Hのみの少ビットのDEMで十分なリニアリティを確保できるようになり、大規模な多ビットDEM回路が不必要となって回路規模を格段に小さくできる。その結果、回路、レイアウト設計が容易となり、かつチップ面積が小さくなって低コスト化できる。
本技術の一実施形態では、上位ビットD/A変換器は、上位ビット分DinHのビット数に応じた一又は複数の上位キャパシタを備えてもよい。上位キャパシタが複数の場合には、複数の上位キャパシタは互いに等しい容量を有してもよい。さらに、下位ビットD/A変換器は、下位ビット分DinLのビット数に応じた一又は複数の下位キャパシタを備えてもよい。下位キャパシタが複数の場合には、複数の下位キャパシタは、それぞれ対応するビットの位置に応じて互いに異なる容量を有してもよい。さらに、上位キャパシタのそれぞれは、同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成されるとともに、下位キャパシタのそれぞれは、上記の同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成されてもよい。このような構成によると、複数のキャパシタのミスマッチ誤差を低減することができる。
本技術の一実施形態では、下位ビット分DinLのビット数は、4ビット以下であってもよい。下位ビット分DinLのビット数を大きくすると、ビットに対応した容量を有するキャパシタを実現する際に、より多くの所定の容量を有するキャパシタを並列に接続させる必要がある。即ち、所定の容量を有するキャパシタの数が多くなるため、回路、レイアウト設計が困難になる。この点に関して、上記の構成によると、ビットに対応した容量を有するキャパシタを実現する際に、所定の容量を有するキャパシタの数が過度に増えることを抑制し得る。従って、回路、レイアウト設計が容易となる。
上記の構成に加えて、又は代えて、上位ビット分DinHが2ビット以上である場合に、上位ビットD/A変換器は、線形性補償アルゴリズムに基づいて制御されてもよい。ここでいう線形性補償アルゴリズムは、上位ビットD/A変換器の線形性を補償し得る任意のアルゴリズムを意図しており、特に限定されないが、例えばダイナミックエレメントマッチング(Dynamic Element Matching:DEM)を含んでもよい。この場合、上位ビット分DinHのビット数は、5ビット以下であってもよい。このような構成によると、DEM回路が比較的簡単となり、回路規模を小さくできる。その結果、回路、レイアウト設計が容易となり、かつチップ面積が小さくなって低コスト化できる。
入力されたアナログ値に対してデジタル値を出力するΔΣ変調器であって、上記のデジタル/アナログ合成積分器を備えるフィードバック回路を有するΔΣ変調器も新規で有用である。
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
図面を参照して実施例のデジタル/アナログ合成積分器(以下では「D/A合成積分器」と記載する)100を説明する。D/A合成積分器100は、デジタル入力Dinを入力として、このデジタル値列(Din(1),Din(2),・・・)を時間軸または時系列で積分した値(ΣDin)をアナログ値(一般的にはアナログ電圧Vo)に変換して出力する。図1に示すように、D/A合成積分器100は、デジタル入力Dinの上位ビット分をDinH、下位ビット分をDinLとする(Din=DinH+DinL)。以下、本実施例ではデジタル入力Dinは6ビット(000000~100000、10進数で0~32)であり、上位ビット分DinHは3ビット(000~100)、下位ビット分DinLは3ビット(000~111)の場合について説明する。しかしながら、デジタル入力Din、下位ビット分DinL、及び上位ビット分DinHのビット数は上記のビット数に限定されない。
D/A合成積分器100は、下位ビット分DinLについて、これをデジタル演算で積分する(ΣDinL)下位ビットデジタル積分器12を持つ。この下位ビットデジタル積分器12では、下位ビット分DinLのデジタル積分の結果、オーバーフローが発生する場合は、桁上げ分(Carry)を上位ビットDinHへ出力してデジタル演算で加算する(DinH+Carry)桁上げ処理を行い、それと同時に下位ビット積分器12からは同じ桁上げ分を減算する(Σ(DinL-Carry))。つまり、下位ビット分DinLのデジタル積分の結果から上位ビットへの桁上げ処理を行った後、下位ビットデジタル積分器12は桁上げ分を無視したものを自己の出力とする。そして、D/A合成積分器100は、下位ビットデジタル積分器12の出力(Σ(DinL-Carry))をアナログ値に変換する下位ビットD/A変換器(以下では「DAC-L」と記載する)14を持つ。
D/A合成積分器100は、上位ビット分DinHについて、先の桁上げ分を加算した値(DinH+Carry)を出力するデジタル加算器22と、デジタル加算器22が出力する上位ビット分デジタル値(DinH+Carry)をアナログ値に変換する上位ビットD/A変換器(以下では「DAC-H」と記載する)24と、DAC-H24による変換後のアナログ値をアナログ演算により積分する(Σ(DinH+Carry))上位ビットアナログ積分器26を持つ。
そして、D/A合成積分器100は、上位ビットアナログ積分器26の出力とDAC-L14のアナログ出力をアナログ回路(アナログ加算器30)で加算演算し、最終積分器出力Voを得る。
図2は、デジタル入力Dinを全6ビット(000000~100000、10進数で0~32)として、上位ビット部分DinHを3ビット(000~100)、下位ビット部分DinLを3ビット(000~111)とした場合の回路設計例である。最上位ビット(MSB)b5加算器のC(Carry)出力は使用しなくてもよいため、点線で表示した。図2に示すデジタル積分器12及びデジタル加算器22の回路構成については当業者によく知られているため、その詳細な説明を省略する。
上位ビット分DinHがマルチビット(2ビット以上)の場合、DAC-H24においてダイナミックエレメントマッチング(Dynamic Element Matching:DEM)技術などの素子ミスマッチキャンセル技術を用いてもよい。図2はこの場合の回路例である。下位3ビットDinLは下位ビットデジタル積分器12を用いて積分され、3ビット(000~111)バイナリコードで出力する。下位ビットデジタル積分器12の桁上げCarryはデジタル加算器22において上位3ビットDinHに加算され、これを温度計コード(Thermometer code)化し、さらにDEMコントロールロジックで、DAC-H24を構成する各キャパシタの接続を制御するDEM制御信号として出力する。DEM制御の内部ロジックについては当業者によく知られているため、その詳細な説明を省略する。
DAC-H24と上位ビットアナログ積分器(Analog Integrator)26、DAC-L14とアナログ加算器(Analog Adder)30は、積分キャパシタCIを共用し、合体した回路構成とすることができる。図3は、上位ビットアナログ積分器26として、オペアンプを使わずにキャパシタとスイッチで構成した積分器(パッシブ積分器)、加算器としてはキャパシタ分圧回路を用いて、全差動回路構成で実現した回路例である。このような回路では、オペアンプのスルーレートや発振安定性の制約がないため、上位ビットアナログ積分器26を高い動作周波数で動作させることができる。従って、D/A合成積分器100を高い動作周波数で動作させることができる。
図2のデジタル回路に対応して、デジタル入力Dinは全6ビット(000000~100000)で、上位3ビットをDEM制御信号としてDAC-H24を制御、下位3ビットはバイナリコードでDAC-L14を制御する。DAC-H24は差動回路構成のキャパシタペアCrefp1~4とCrefn1~4で構成され、DAC-L14はCaddp0~2とCaddn0~2で構成される。Vref+、Vref-は基準電位で、この間の電位差Vref=(Vref+)-(Vref-)がD/A変換の基準電圧となる。
DAC-H24を構成するキャパシタペアCrefp1~4、Crefn1~4は、全て同一容量値のキャパシタとする。DAC-L14のキャパシタペアについては、Caddp2=Caddn2をDAC-H24キャパシタCref1~4の1/2、Caddp1=Caddn1を1/4、Caddp0=Caddn0を1/8の容量値にそれぞれ設計する。
DAC-H24とDAC-L14をマッチング良く設計するためには、同一容量値、同一レイアウト形状のユニットキャパシタC0を基本素子として用いて、各キャパシタをこの並列接続とすることが望ましい。例えば、Crefp1~4=Crefn1~4=8×C0、Caddp2=Caddn2=4×C0、Caddp1=Caddn1=2×C0、Caddp0=Caddn0=C0のように設計するとよい。
また、図3で例に挙げた積分器回路は、オペアンプを使わないパッシブ積分器である。この場合は、積分器リークを十分小さく抑えるために、積分キャパシタCIの静電容量値を、DAC用キャパシタの容量値よりも十分大きく設計することが望ましい。すなわち、CI>>Crefp1~4、Crefn1~4と設計することが望ましい。
図4に、クロックの一例について、そのタイミングチャートを示す。このクロックは、スイッチトキャパシタ回路技術で一般的に知られている「ノンオーバーラップクロック」である。ここでは、フェーズφ1をゼロサンプリングフェーズ、φ2を積分フェーズとして、φ2最終タイミングで積分器出力が確定される。
図3において、回路コモンモード電位Vicm側スイッチのフェーズφ1A、φ2Aは、それぞれφ1、φ2よりもわずかに早いタイミングでON/OFF動作させることを表す。ここで、回路動作開始時に、積分キャパシタCIの出力Vo+とVo-の初期電位は回路コモンモード電位Vicmであるとする。一般的には回路動作前(電源投入直後など)この電位は定まっていないが、以下に述べるゼロサンプリングと積分動作を繰り返すうちに、Vo+とVo-の中点電位は徐々に回路コモンモード電位Vicmに近づいていく。
まず、DAC-H24を構成するキャパシタペアCrefp1~4、Crefn1~4の接続と積分器の動作について説明する。フェーズφ1で、Crefp1~4、Crefn1~4の右側電極はコモンモード電位Vicmに接続、左側(Vref側)電極は基準電位(Vref+、Vref-)の中点Vref0(図3には表示されていない)に接続する。この状態で、DAC-H24の全てのキャパシタはゼロサンプリング状態となる。
なお、基準電位中点Vref0は、フェーズφ1でDAC-H24を構成する各キャパシタをゼロサンプリング状態にするために説明上で用いたが、実際の設計ではこの電位を発生させなくても、ゼロサンプリングと等価の中点サンプリング動作を実現できる。例えば、フェーズφ1でCref1~4の複数のキャパシタペアを一回おき(交互)に基準電位Vref+とVref-に接続、または「データ重みづけ平均化」(Data-Weighted
Averaging:DWA)の要領でVref+とVref-に素子循環させて接続し平均化させれば、基準電位中点Vref0をサンプリングするのと等価となる。
Averaging:DWA)の要領でVref+とVref-に素子循環させて接続し平均化させれば、基準電位中点Vref0をサンプリングするのと等価となる。
次のフェーズφ2で、Crefp1~4、Crefn1~4の右側電極を積分キャパシタCIに接続し、左側(Vref側)電極を、DAC-H24デジタル入力(High-order bits)に従って基準電位Vref+またはVref-のいずれかにスイッチ接続すると、DAC-H24出力がCrefp1~4、Crefn1~4を介してCIに電荷転送され、積分動作が行われる。
なお、図3の回路例のようなパッシブ積分器では、電荷が全て積分キャパシタCIに転送されずに、一部がキャパシタCref側に残って、これが積分器リークとなる。オペアンプを使ったアクティブ積分器を使えば、DAC-H24出力はほぼ理想的に積分器に電荷転送される。オペアンプを使ったアクティブ積分器の動作は広く知られており当業者には明らかであるため、回路図と動作説明を省略する。
次に、DAC-L14を構成するキャパシタペアCaddp0~2、Caddn0~2の接続と加算器の動作について説明する。Caddp0~2、Caddn0~2の左側電極は、図3の回路図のように常時積分キャパシタCIに接続されている。Caddの右側(Vref側)電極は、最初のフェーズφ1ではDAC-L14入力「000」に相当する接続状態(ゼロサンプリング状態、例えばCaddp0~2をVref-、Caddn0~2をVref+に接続)とする。次にフェーズφ2で、Caddp0~2、Caddn0~2の右側(Vref側)電極を、DAC-L14デジタル入力(Low-order bits)に従ってVref+またはVref-に接続すれば、DAC-L14出力がCaddp0~2、Caddn0~2を介してキャパシタ分圧によりCI端子間電圧へ加算され、出力電圧Vo(=(Vo+)-(Vo-))に加算される。
DAC-L14では、キャパシタCadd左側電極は積分キャパシタCIに常時接続されているため、フェーズφ2でCaddを介して出力VoにDAC出力を加算しても、次のフェーズφ1で再びCaddのVref側電極をゼロサンプリング状態に戻せば、加算された電圧は元に戻り、CIに積分されない。つまり、DAC-L14とキャパシタCIとは、アナログ加算器として動作する。
このDAC-L14とアナログ加算器30の特性は、DAC-L14に誤差がある場合に有益に作用する。DAC-L14出力にはキャパシタCaddp0~2、Caddn0~2の容量ミスマッチによる誤差があり、DAC-L14出力の加算に伴いこのミスマッチによる誤差も積分器出力に加算される。しかし、この誤差は一時的に積分器出力に加算されても、積分キャパシタCIに積分はされない。DAC-L14入力が元の値に戻りCaddのVref側接続状態が元に戻れば、一時加算された誤差は減算されゼロとなる。下位ビットデジタル積分器12とDAC-L14とアナログ加算器30による下位ビット積分器が持つこの効果により、DAC-L14が発生する誤差の積分器出力への影響は、上位ビットDAC-H24が発生する誤差の積分器出力への影響と比較して格段に低減される。これについては、後の「本技術に係る構成でDAC出力誤差が全体積分器出力Voへ与える影響」で詳述する。
ここで、積分器出力Voはフェーズφ2最終タイミングで確定すればよいため、この後のフェーズφ1ではDAC-L14のキャパシタCaddのVref側電極をゼロサンプリング状態に戻さなくても(あるいはVref側電極電位が不定であっても)、フェーズφ2の時点でCaddのVref側接続を確定してDAC-L14出力が確定されていれば、加算動作は正常に行われ積分器出力Voは確定される。
以上、今回の設計例では、デジタル入力Dinを全6ビット(000000~100000)として、上位ビットDinHを3ビット(000~100)、下位ビットDinLを3ビット(000~111)として説明した。各ビット数については、この例に限定されるものではなく、設計変更可能であることは言うまでもない。
また、CrefpおよびCrefnのVref側電極を、DAC-H24入力デジタル値によって、それぞれVref+/Vref-あるいはその逆に接続する様に記述しているが、この限りでない。例えば入力デジタル値によってCrefp及びCrefnのVref側電極をVref+とVref-の中間電位に接続する、あるいはVref側電極間を単に短絡する(電位固定しない)ものであってもよい。
DAC-H24とDAC-L14のマッチング向上のため、各キャパシタのレイアウトは、同一容量値、同一レイアウト形状のユニットキャパシタC0の並列接続とするのが望ましいことを既に述べた。一方でDAC-L14のビット数が大きくなると、DAC-H24の基本キャパシタCref1~4と、DAC-L14最下位ビット用のキャパシタCadd0のサイズ比が大きくなり、ユニットキャパシタC0が小さくなる、あるいはCref1~4の並列素子数が増して、DAC-H24とDAC-L14の間のマッチングを確保するのが難しくなる。もし、DAC-L14の基準電圧Vref(=(Vref+)-(Vref-))をDAC-H24の半分(1/2)Vrefにできれば、この素子サイズ比が半分に小さくなる。例えばDAC-L14入力(即ち下位ビット分)が3ビットの場合、素子サイズ比は8:1→4:1となる。これにより、DAC-H24とDAC-L14のマッチングを取りやすくなり、ミスマッチによる誤差を小さくできる、または設計が容易となる。
しかし、この方法では、DAC-L14用基準電圧(1/2)Vrefを発生する回路が別に必要となる。そこで他の方法として、DAC-L14のキャパシタ接続を、入力デジタルビット値の0/1に対応して-Vref/+Vrefと切り替えるのではなく、一方を0(電圧ゼロ)にして-Vref/0と切り替えることで、同じ容量値で設計しても加算電圧が半分になり、基準電圧を半分にするのと同様の効果となる。加算0(ゼロ)の演算は、差動回路を構成するキャパシタペア(Caddp0~2とCaddn0~2)のVref側端子間を電圧ゼロ、つまりスイッチでショートすれば実現できる(Vref0や他の基準電位に接続して電位固定する必要はない)。
具体的には、DAC-H24とDAC-L14とで、デジタル入力に対して各キャパシタを以下の様に接続する。即ち、DAC-H24では、デジタル入力の各ビットの値が0の時、対応するCrefp1~4をVref-に接続、Crefn1~4をVref+に接続する。また、デジタル入力の各ビットの値が1の時、対応するCrefp1~4をVref+に接続、Crefn1~4をVref-に接続する。一方、DAC-L14では、デジタル入力の各ビットの値が0の時、対応するCaddp0~2をVref-に接続、Caddn0~2をVref+に接続する(即ちDAC-H24と同様)。また、デジタル入力の各ビットの値が1の時、対応するCaddp0~2とCaddn0~2のVref側電極間をスイッチでショートする。
上記のようなスイッチ接続に設計すれば、DAC-L14入力が3ビットでも、DAC-H24とDAC-L14間の基本キャパシタの比は4:1となり、8:1の場合に比べて設計が容易となり、マッチングの向上が期待できる。例えば、各キャパシタの容量値は、ユニットキャパシタC0を基本素子として、Crefp1~4=Crefn1~4=4×C0、Caddp2=Caddn2=4×C0、Caddp1=Caddn1=2×C0、Caddp0=Caddn0=C0のように設計できる。
次に、本技術に係る構成でDAC出力誤差が全体積分器出力Voへ与える影響について説明する。DAC出力の誤差は、DACを構成するキャパシタ素子のミスマッチにより発生する。ここで上位ビット分については、DAC-H24において従来と同様のDEM技術を用いることができ、これにより素子ミスマッチによる誤差の影響は十分に小さく抑えられるため、回路全体の誤差の主要因とはならないと考えられる。次に、下位ビット分の回路は、下位ビットデジタル積分器12、DAC-L14、アナログ加算器30により構成されるが、このうち下位ビットデジタル積分器12は、デジタル演算であり誤差は発生しない。従って、本構成で全体積分器出力Voに現れる誤差は、(DAC-H24に対する相対誤差としての)DAC-L14のキャパシタミスマッチによる誤差が主要因と考えられる。この誤差は、DAC-L14デジタル入力の各ビット0/1が反転し、対応するキャパシタのVref側接続が切り替わり、DAC-L14出力が変化するのに伴って発生する。
以下、DAC-H24出力に対するDAC-L14出力の誤差が積分器出力Voへ及ぼす影響について考察する。DAC-L14を構成するキャパシタCaddp0~2、Caddn0~2には容量ミスマッチがあり、DAC-L14出力の積分器出力Voへの加算に伴い、このミスマッチによる誤差も出力に加算される。しかし、図3に示すように、Caddp0~2、Caddn0~2の左側電極は積分キャパシタCIに常時接続されたままであるため、この誤差は一時的に積分器出力Voに加算されても、積分キャパシタCIに積分はされない。DAC-L14入力デジタル値が元の値に戻りCaddのVref側接続状態が元に戻れば、一時加算された誤差は減算されキャンセルされる。つまりDAC-L14による誤差は、デジタル積分器出力値が変化(遷移)した時に、一時的に積分器出力Voに現れると考えられる。従って、下位ビットデジタル積分器12出力がカウントアップ/ダウンを繰り返しながら緩やかに値が遷移している場合は、積分器出力Voに現れる1サンプル当たりの平均誤差振幅は、下位ビットデジタル積分器12出力がその値の遷移に要した時間(またはサンプル数)で割ったものとなる。つまりDAC-L14の誤差は時間軸上で分散されて小さくなる。
デジタル入力Dinの下位ビット分DinLが比較的大きい値の場合は、下位ビットデジタル積分器12が積分によるカウントアップ/ダウンと桁上げを繰り返すが、下位ビットデジタル積分器12出力値(=DAC-L14デジタル入力値)が周回してDAC-L14の素子接続状態が元に戻れば、一時的に積分器出力Voに加算されたDAC-L14ミスマッチ分による誤差は減算されキャンセルされるため、その平均値はゼロである。下位ビットデジタル積分器12が積分による周回と桁上げを繰り返すと、出力誤差は一定の範囲内で増加と減少を繰り返し、DAC-L14誤差が出力に周期的に現れる周期雑音となる。
ここで、オーバサンプリングシステムに応用した場合(信号帯域fsignal、サンプリング周波数fsとして、fsignal<<fs/2の場合)、周期雑音の成分がシステムで取り扱う信号帯域外であれば、後段フィルタ処理により除去することが可能である。例えば本回路をΔΣ型A/D変換器の積分器に応用した場合は、一般にΔΣ変調器の後段にデジタルLPF(ローパスフィルタ)があり、信号帯域を超える高周波雑音成分はこのデジタルLPFにより除去されるため、これより後のデジタル出力には現れない。一方、この周期雑音の成分が信号帯域内にあると、アイドルトーン(Idle Tone)として出力に現れることがある。
しかしオーバサンプリングシステムでは、出力に現れる雑音成分はサンプリング周波数fsよりも十分周波数の低い、つまり周期の長いものに限られるため、これは先に述べたDAC-L14誤差の時間軸上分散効果により、1サンプル当たりに換算すると誤差振幅は小さく抑えられたものとなる。
本構成の、下位ビットデジタル積分器12とDAC-L14とアナログ加算器30が持つこの効果により、下位ビットDAC-L14が発生する誤差の全体積分器出力Voへの影響は、上位ビットDAC-H24の誤差によるものと比較して格段に低減される。
以上の構成によると、DAC-L14のミスマッチによる誤差は積分されないため、積分器出力に現れる平均誤差は時間軸上で分散され、オーバサンプリングシステムでは、出力に現れる信号帯域の誤差が大幅に低減される。このため高分解能マルチビットDACで通常必要とされるミスマッチキャンセルDEMは、DAC-H24のみの少ビットDEMで十分なリニアリティを確保できるようになり、大規模な多ビットDEM回路が不必要となって回路規模を格段に小さくできる。その結果、回路、レイアウト設計が容易となり、かつチップ面積が小さくなって低コスト化できる。
本構成によれば、マルチビットデジタル入力のうちDEMを用いるのはDAC-H24だけであり、下位ビット分を差し引いた少ビット数(例えば、全6ビットで、下位ビットを3ビットとした場合、上位は6-3=3ビット)のDEMで済むため、格段に小規模な回路構成で実現できる。例えば先に挙げた例では、デジタル入力が6ビット000000~100000の差動回路構成DACでDEMを用いると、32対のユニットキャパシタペアと、これをVref接続制御するMOSスイッチが必要である。本技術に係る構成を用いて、上位ビット分DinHを3ビット000~100、下位ビット分DinLを3ビット000~111と設計すれば、必要なキャパシタペアは、DEMを用いる上位ビット分(DAC-H24)4対、下位ビット分(DAC-L14)3対で、合計7対のキャパシタペアと対応するMOSスイッチで済む。また、上位ビット分DinHを1ビットに設計することも可能で、この場合は上位ビット分DinHについてDEMを用いる必要がない。本技術に係るD/A合成積分器100は、マルチビット出力のΔΣ変調器へ広く応用できる。
また、以上の構成によると、テスト容易性の効果を得ることができる。既に説明したように、本構成でDAC-H24に対するDAC-L14のミスマッチが大きいと、DAC-L14各ビットが0/1反転する時に誤差が発生し、デジタル積分器12の周回に同期した周期雑音が出力に現れることがある。この周期雑音が問題になる場合は、IC出荷テストで良品/不良品選別、あるいは特性ランク分けを実施することは容易である。
具体的には、積分器へのデジタル入力から、出力に現れる周期雑音のパターンと周期は設計予測できるため、DAC-L14の各ビットが周期的に0/1反転するようなデジタル値を入力し、出力に現れる周期変動分を測定することで、各ビットに対応する素子のミスマッチを個別に測定できる。出力の後段にバンドパスフィルタを置けば、DAC-L14各ビットが反転する時に発生する特定の周期の誤差成分だけを取り出すことも可能であり、各キャパシタのミスマッチを個別に計測して容量値のトリミング調整を行うこともできる。
ΔΣ型A/D変換器に当技術を適用した場合も、同様の出荷テストは容易である。ADCデジタル出力をモニタし、所定の周期雑音が現れるようにアナログ入力を調整し、デジタル出力に現れる周期雑音を測定すればよい。
図5は、上記のD/A合成積分器100を「Passive-DigitalΔΣ変調器」に適用した回路例である。「Passive-DigitalΔΣ変調器」については、特許文献1を参照されたい。ΔΣ変調器40のデジタル出力(Digital Out)をD/A合成積分器100に入力Vinと逆極性となるよう入力して、フィードバックDACと積分器として使用している。Vin+及びVin-は、ΔΣ変調器のアナログ入力で、差動電圧Vin(=(Vin+)-(Vin-))として入力する。入力サンプリングキャパシタとして、CspとCsnとを追加している。
ΔΣ変調器40のデジタル出力を上位ビット分と下位ビット分に分け、下位ビット分はデジタル積分器で積分してこの出力でDAC-L14を制御する。デジタル積分器12の桁上げ(Carry)と上位ビット分を加算し、この加算値でDAC-H24を制御する。これらの合成でフィードバックDACと積分器を構成し、アナログ入力VinとΔΣ変調器40デジタル出力のD/A変換値との差を積分する。図5では、ΔΣ変調器40の入力Vinの極性を基準に表示しているため、図3とは積分器出力Vo+とVo-の表示が逆となっている。ΔΣ変調器40の積分器は、入力VinとフィードバックDAC出力の差を積分するため、入力Vinの極性で考えると極性が逆になるからである。
パッシブ積分器を使ったPassive-DigitalΔΣ変調器に本技術を適用すれば、フィードバックDACのビット数、つまり分解能が増して積分器出力振幅をより小さく抑えられるため、後段の量子化器の入力範囲がより小さく抑えられ、量子化器の線形性が向上する、また積分器リークを小さくできる。その結果、A/D変換器の特性を向上できる、または全回路規模を簡単化し低コスト化できる。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。今回、積分器回路として、代表的応用である全差動回路構成によるパッシブ積分器を例として説明したが、オペアンプを使った積分器(アクティブ積分器)やシングルエンド回路の積分器であっても、同様の思想の回路を設計することは容易である。アクティブ積分器のほうが、積分器リークのない高精度なものが容易に設計実現できる。
D/A変換器について、キャパシタ列により構成したもので説明したが、DAC-H24、DAC-L14の一方もしくは両方に抵抗その他の素子を用いたものでもよい。
デジタル積分器とそれに対応するアナログ加算器で加減算できる範囲には、素子数で決まる有限値限界がある。一定の入力の積分を続けると、デジタル積分器とアナログ加算器がいつかこの限界に達して(演算オーバーフローして)、これ以上積分できなくなる。一方、アナログ積分器の場合はこのようなオーバーフローを生じない。このため、デジタル積分器を下位ビット分に用いて、これがオーバーフローした場合は桁上げ(Carry)を出して上位ビット分に加算してオーバーフローを吸収し、Carry分は上位ビット側アナログ積分器で積分することで、積分器全体としては演算オーバーフローを発生することなく、積分動作を続けることができる。以上の理由により、Carry分の1ビット以上を、アナログ積分器で積分する上位ビット分として確保しておく必要がある(換言すると、デジタル積分器がオーバーフローした時のCarry分を演算処理する別の方法が必要である)。従って、全ビットをデジタル積分器で積分する構成は好ましくない。同様に、上位ビット分をデジタル積分器、下位ビット分をアナログ積分器でそれぞれ積分する構成も好ましくない。
DAC-H24については、(マルチビットの場合は)各キャパシタのミスマッチキャンセルのためにDEMが必要である。上位ビット分DinHのビット数が増すと、ユニットキャパシタの数が2の累乗で増加し、さらにDEMロジックも複雑となるため、回路が複雑で設計が困難となる。従って、上位ビット分DinHは、例えば5ビット以下としておくのが適切である。
一方、下位ビット分DinLについては、DAC-L14のキャパシタミスマッチによる誤差は周期雑音の原因となり、特にDAC-H24とのミスマッチがあると、桁上げを生じるときにこの誤差の影響が大きく現れてしまう。既に述べたように、DAC-H24とDAC-L14の構成素子は、どちらも同一素子形状のユニット素子を使ってレイアウトマッチングのとれる回路とすべきである。DAC-L14のビット数を大きくすると、このユニット素子サイズが小さいものとなって、かえってレイアウト上のマッチングが取りづらくなる。DAC-H24とDAC-L14間のマッチングを考慮すると、下位ビット分DinLとしては、例えば4ビット以下が適切ではないかと思われる。実際には、ICプロセスで決まるキャパシタの最小サイズとマッチングデータ、またシステムで求められるOSR(Oversampling Ratio)とリニアリティ仕様を考慮して、システムシミュレーションをして、最適なビット数は決定される。
キャパシタCref、キャパシタCadd、ユニットキャパシタC0が、それぞれ、「上位キャパシタ」、「下位キャパシタ」、「同一の容量を有するキャパシタ」の一例に相当する。
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
12:下位ビットデジタル積分器
14:DAC-L
22:デジタル加算器
24:DAC-H
26:上位ビットアナログ積分器
30:アナログ加算器
40:ΔΣ変調器
100:D/A合成積分器
14:DAC-L
22:デジタル加算器
24:DAC-H
26:上位ビットアナログ積分器
30:アナログ加算器
40:ΔΣ変調器
100:D/A合成積分器
Claims (13)
- デジタル値Dinを入力として、このデジタル値列(Din(1),Din(2),・・・)を時間軸または時系列で積分した値(ΣDin)をアナログ値に変換して出力する、デジタル入力/アナログ出力のデジタル/アナログ合成積分器であって、
前記デジタル入力Dinの上位ビット分をDinH、下位ビット分をDinLとして(Din=DinH+DinL)、前記下位ビット分DinLについて、これをデジタル演算で積分する(ΣDinL)下位ビットデジタル積分器を持つ、
前記下位ビット分DinLのデジタル積分の結果、オーバーフローが発生する場合は、桁上げ分(Carry)を前記上位ビットDinHへ出力してデジタル演算で加算する(DinH+Carry)桁上げ処理を行い、それと同時に前記下位ビットデジタル積分器からは同じ桁上げ分を減算する(Σ(DinL-Carry))、つまり前記下位ビットDinLの前記デジタル積分の結果から前記上位ビットへの前記桁上げ処理を行った後、前記下位ビットデジタル積分器は前記桁上げ分を無視したものを自己の出力とする、
そして前記下位ビットデジタル積分器の前記出力(Σ(DinL-Carry))をアナログ値に変換する下位ビットD/A変換器(DAC-L)を持つ、
前記上位ビット分DinHについては、前記桁上げ分を加算した上位ビット分デジタル値(DinH+Carry)をアナログ値に変換する上位ビットD/A変換器(DAC-H)と、前記上位ビットD/A変換器による変換後の前記アナログ値をアナログ演算により積分する(Σ(DinH+Carry))上位ビットアナログ積分器を持つ、
そして、前記上位ビットアナログ積分器の出力と前記下位ビットD/A変換器(DAC-L)のアナログ出力をアナログ回路で加算演算し、最終積分器出力Voを得ることを特徴とする、
デジタル/アナログ合成積分器。 - 前記上位ビットD/A変換器は、前記上位ビット分DinHのビット数に応じた一又は複数の上位キャパシタを備える、請求項1に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記上位ビットD/A変換器は、前記上位ビット分DinHのビット数に応じた複数の上位キャパシタを備え、
前記複数の上位キャパシタは、互いに等しい容量を有する、請求項1に記載のデジタル/アナログ合成積分器。 - 前記上位キャパシタのそれぞれは、同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成される、請求項2又は3に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記下位ビットD/A変換器は、前記下位ビット分DinLのビット数に応じた一又は複数の下位キャパシタを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記下位ビットD/A変換器は、前記下位ビット分DinLのビット数に応じた複数の下位キャパシタを備え、
前記複数の下位キャパシタは、それぞれ対応するビットの位置に応じて互いに異なる容量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル/アナログ合成積分器。 - 前記下位キャパシタのそれぞれは、同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成される、請求項5又は6に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記上位ビットD/A変換器は、前記上位ビット分DinHのビット数に応じた複数の上位キャパシタを備え、
前記複数の上位キャパシタは、互いに等しい容量を有し、
前記下位ビットD/A変換器は、前記下位ビット分DinLのビット数に応じた複数の下位キャパシタを備え、
前記複数の下位キャパシタは、それぞれ対応するビットの位置に応じて互いに異なる容量を有し、
前記上位キャパシタのそれぞれは、同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成されるとともに、前記下位キャパシタのそれぞれは、前記同一の容量を有する複数のキャパシタが並列に接続されることによって構成される、請求項1に記載のデジタル/アナログ合成積分器。 - 前記下位ビット分DinLの前記ビット数は4ビット以下である、請求項8に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記上位ビット分DinHが2ビット以上である場合に、前記上位ビットD/A変換器は、線形性補償アルゴリズムに基づいて制御される、請求項1~9のいずれか一項に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記線形性補償アルゴリズムは、ダイナミックエレメントマッチング(Dynamic Element Matching:DEM)を含む、請求項10に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 前記上位ビット分DinHのビット数は5ビット以下である、請求項11に記載のデジタル/アナログ合成積分器。
- 入力されたアナログ値に対してデジタル値を出力するΔΣ変調器であって、
前記アナログ値と前記デジタル値との差を演算するフィードバック回路を備え、
前記フィードバック回路は、請求項1~12のいずれか一項に記載のデジタル/アナログ合成積分器を備える、ΔΣ変調器。
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Non-Patent Citations (1)
Title |
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ZIERHOFER, Clemens M.,Analysis of a Switched-Capacitor Second-Order Delta-Sigma Modulator Using Integrator Multiplexing,IEEE Transactions on Circuits and Systems II: Express Briefs,IEEE,2006年08月28日,Volume: 53, Issue: 8, Aug. 2006,P. 787 - 791,インターネット<https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=1684001> |
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