JP7149842B2 - 樹脂組成物、成形体、多層構造体、農業用フィルム及びジオメンブレン - Google Patents

樹脂組成物、成形体、多層構造体、農業用フィルム及びジオメンブレン Download PDF

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Description

本発明は樹脂組成物、成形体及び多層構造体に関する。
一般的に、エチレン-ビニルアルコール共重合体は、透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れ、かかる特性を生かして、食品、医薬品、工業薬品、農薬等の各種包装材料等のフィルムやシート、あるいはボトル等の容器等に利用されている。また、エチレン-ビニルアルコール共重合体は、そのバリア性や保温性、耐汚染性を活かして農業用フィルム、ジオメンブレン等の用途にも使用されている。
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、他の樹脂と比較すると熱安定性が低く、製造条件等により、着色が生じることがある。また、屋外での使用により、光、熱等に暴露されると、着色が生じると共に機械的強度が低下することもある。エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物に関し、特許文献1には、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)及び桂皮酸エステル(B)を含有し、かつ桂皮酸エステル(B)の含有量がエチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)に対して0.01~10ppmである樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は優れた透明性を維持しつつ、特定の紫外線領域の波長(例えば、波長320nm未満のUV-B、UV-C)を吸収し、さらに臭気問題等が発生しないフィルムを形成できるとされている。また、特許文献2には、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)、桂皮酸類(B)、並びにアルカリ金属塩(C1)及びアルカリ土類金属塩(C2)の少なくとも一方(C)(ただし、成分(C)は桂皮酸塩を除く)を含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は特定の紫外線領域の波長を吸収し、アルコール成分を含む内容物による紫外線吸収効果の低下や、臭気の発生が抑制される成形品を形成できるとされている。
国際公開第2016/199827号 国際公開第2017/104673号
上述したエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物によっても、屋外での使用に伴う着色の発生や、機械的強度の低下という不都合はなお改善の余地があることが判明した。一方、エチレン-ビニルアルコール共重合体の溶融成形に際しては、臭気やゲル状のブツが発生しないことが望ましい。なお、ゲル状のブツは、成形品の外観を損ねるだけでなく性能劣化をも引き起こすため、これらの発生を抑制することが必要とされる。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、溶融成形時などでの臭気やブツの発生が抑制され、屋外での使用に伴う着色の発生や機械的強度の低下が少ない成形体を得ることができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体及び多層構造体等を提供することである。
本発明によれば上記の目的は、
[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)、桂皮酸類(B)、及び炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)(以下、単に「アルミニウム塩(C)」と称することがある)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が1~100ppmであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対するアルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmである樹脂組成物;
[2]アルミニウム塩(C)が、酢酸アルミニウム及び/又はプロピオン酸アルミニウムである[1]の樹脂組成物;
[3]桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)中のアルミニウムとのモル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が0.7~60である[1]又は[2]の樹脂組成物;
[4][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物から成形される成形体;
[5][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有する多層構造体;
[6][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有する農業用フィルム;
[7]ラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ又はサイレージフィルムに用いられる[5]の多層構造体;
[8][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有するジオメンブレン;
を提供することで達成される。
本発明によれば、溶融成形時などでの臭気やブツの発生が抑制され、屋外での使用に伴う着色の発生や機械的強度の低下が少ない成形体を得ることができる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた成形体及び多層構造体等、特に農業用フィルム、ラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ、サイレージフィルム及びジオメンブレンを提供できる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」と称することがある)、桂皮酸類(B)、及びアルミニウム塩(C)を含み、EVOH(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が1~100ppmであり、アルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmである。なお、本明細書において、「ppm」は質量基準の含有割合である。
(EVOH(A))
EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコ-ル単位とを有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体のケン化により得られる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
EVOH(A)のエチレン単位含有量の下限は10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%がよりさらに好ましい。一方、EVOH(A)のエチレン単位含有量の上限は60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、45モル%がさらに好ましい。エチレン単位含有量が10モル%以上の場合、熱安定性がより向上する傾向にある。また、エチレン単位含有量が60モル%以下の場合、酸素バリア性やメルトテンションが向上する傾向にある。
EVOH(A)のケン化度は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。EVOH(A)のケン化度が90モル%以上であると、得られる成形体等におけるガスバリア性、熱安定性、耐湿性が良好となる傾向がある。また、ケン化度は100モル%以下であっても、99.97モル%以下であっても、99.94モル%以下であってもよい。
EVOH(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。他の単量体由来の単位(エチレン単位、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位以外の単位)のEVOH(A)の全構造単位に対する含有量は30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下がよりさらに好ましく、1モル%以下が特に好ましい。また、EVOH(A)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その含有量は0.05モル%以上であっても、0.1モル%以上であってもよい。
他の単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸またはその無水物、塩、またはモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸またはその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、他の単量体由来の単位は、下記式(I)で表される構造単位(I)、下記式(II)で表される構造単位(II)、及び下記式(III)で表される構造単位(III)の少なくともいずれか一種であってもよい。
Figure 0007149842000001
上記式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基または水酸基を表す。R、R及びRのうちの一対、RとR、RとRは結合していてもよい。また、上記炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基及び炭素数6~10の芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部または全部は、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。上記式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基または炭素数2~10のアルカノイル基を表す。
EVOH(A)が構造単位(I)、(II)または(III)を有する場合、樹脂組成物の柔軟性及び加工特性が向上し、得られる成形体や多層構造体における延伸性及び熱成形性等が良好になる傾向がある。
構造単位(I)、(II)または(III)において、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基等が挙げられる。炭素数3~10の脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。炭素数6~10の芳香族炭化水素基としてはフェニル基等が挙げられる。
構造単位(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、水酸基、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基であることが好ましく、中でも、得られる多層構造体等における延伸性及び熱成形性をさらに向上できる観点から、それぞれ独立して水素原子、メチル基、水酸基及びヒドロキシメチル基であることがより好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(I)を含有させる方法は特に限定されず、例えば上記エチレンとビニルエステルとの重合において、構造単位(I)に誘導される単量体を共重合させる方法等が挙げられる。構造単位(I)に誘導される単量体としては、例えばプロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-ヒドロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、3-ヒドロキシ-1-ブテン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-ヒドロキシ-1-ペンテン、5-ヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、4-ヒドロキシ-1-ヘキセン、5-ヒドロキシ-1-ヘキセン、6-ヒドロキシ-1-ヘキセン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン等の水酸基あるいはエステル基を有するアルケンが挙げられる。中でも、共重合反応性、及び得られる成形体及び多層構造体の加工性、ガスバリア性の観点からは、プロピレン、3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテンが好ましい。なお、“アシロキシ”はアセトキシであることが好ましく、具体的には3-アセトキシ-1-プロペン、3-アセトキシ-1-ブテン、4-アセトキシ-1-ブテン及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが好ましい。エステルを有するアルケンの場合は、ケン化反応の際に構造単位(I)に誘導される。
構造単位(II)において、R及びRは共に水素原子であることが好ましい。特にR及びRが共に水素原子であり、上記R及びRのうちの一方が炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、他方が水素原子であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基としてはアルキル基及びアルケニル基が好ましい。得られる多層構造体におけるガスバリア性を特に重視する観点からは、R及びRのうちの一方がメチル基またはエチル基、他方が水素原子であることがより好ましい。また上記R及びRのうちの一方が(CHOHで表される置換基(但し、hは1~8の整数)、他方が水素原子であることがさらに好ましい。なお、hは1~4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(II)を含有させる方法は特に限定されず、ケン化反応によって得られたEVOH(A)に一価エポキシ化合物を反応させる方法等が用いられる。一価エポキシ化合物としては、下記式(IV)~(X)で示される化合物が好適に用いられる。
Figure 0007149842000002
上記式中、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基等)、炭素数3~10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)または炭素数6~10の脂肪族炭化水素基(フェニル基等)を表す。また、i、j、k、p及びqは、それぞれ独立して1~8の整数を表す。ただし、R17が水素原子である場合、R18は水素原子以外の置換基を有する。
式(IV)で表される一価エポキシ化合物としては、例えばエポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、3-メチル-1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、3-メチル-1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、2,3-エポキシヘキサン、3,4-エポキシヘキサン、3-メチル-1,2-エポキシヘキサン、3-メチル-1,2-エポキシヘプタン、4-メチル-1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、2,3-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、2,3-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1-フェニル-1,2-エポキシプロパン、3-フェニル-1,2-エポキシプロパン等が挙げられる。式(V)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。式(VI)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルキレングリコ-ルモノグリシジルエーテルが挙げられる。式(VII)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルケニルグリシジルエーテルが挙げられる。式(VIII)で表される一価エポキシ化合物としては、グリシドール等の各種エポキシアルカノールが挙げられる。式(IX)で表される一価エポキシ化合物としては、各種エポキシシクロアルカンが挙げられる。式(X)で表される一価エポキシ化合物としては、各種エポキシシクロアルケンが挙げられる。
一価エポキシ化合物の中では炭素数が2~8のエポキシ化合物が好ましい。特に取り扱いの容易さ及び反応性の観点から、一価エポキシ化合物の炭素数は2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。また、一価エポキシ化合物は式(IV)または式(V)で表される化合物であることが特に好ましい。具体的には、EVOH(A)との反応性及び得られる多層構造体及び熱成形体の加工性、ガスバリア性等の観点からは、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタンまたはグリシド-ルが好ましく、中でもエポキシプロパンまたはグリシド-ルがより好ましい。
構造単位(III)において、R、R、R10及びR11は水素原子または炭素数1~5の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基またはn-ペンチル基が好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(III)を含有させる方法については、特に限定されず、例えば、特開2014-034647号公報に記載の方法が挙げられる。
EVOH(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物におけるEVOH(A)の含有量の下限は80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、97質量%、98質量%又は99質量%がよりさらに好ましい場合もある。一方、EVOH(A)の含有量の上限は例えば99.9質量%であってよい。なお、EVOH(A)の含有量とは、乾燥状態の樹脂組成物における含有量(含有割合)をいう。以下、樹脂組成物を基準にした含有量について同様である。
(桂皮酸類(B))
桂皮酸類(B)としては、桂皮酸(シス-桂皮酸、トランス-桂皮酸、またはこれらの混合物)、並びに桂皮酸エステル及び桂皮酸塩等の桂皮酸誘導体が挙げられる。桂皮酸誘導体とは、桂皮酸を反応させて得られる化合物等を言う。桂皮酸エステルとしては、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル等が挙げられる。桂皮酸塩としては、桂皮酸ナトリウム、桂皮酸マグネシウム、桂皮酸カルシウム等が挙げられる。中でも、桂皮酸類(B)として桂皮酸、特に安定性と価格の観点からトランス-桂皮酸を用いることが好ましい。なお、桂皮酸を用いた場合、アルミニウム塩(C)と共存することなどにより、桂皮酸の一部又は全部が桂皮酸塩となっていてもよい。
本発明の樹脂組成物における桂皮酸類(B)の含有量の下限は、EVOH(A)に対して1ppmであり、3ppmが好ましく、6ppmがより好ましい。桂皮酸類(B)の含有量が1ppmよりも少ない場合は、充分な耐熱性及び耐光性が得られず、本発明の効果を十分に発揮できない。一方、桂皮酸類(B)の含有量の上限は、EVOH(A)に対して100ppmであり、70ppmが好ましく、40ppmがより好ましい。桂皮酸類(B)の含有量が100ppmよりも多い場合は、臭気やブツの発生等が問題となる傾向があり、また耐熱性及び耐光性も低下する場合がある。
(アルミニウム塩(C))
アルミニウム塩(C)は、炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩であり、ギ酸アルミニウム(トリギ酸アルミニウム等)、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム(トリプロピオン酸アルミニウム等)、酪酸アルミニウム(三酪酸アルミニウム等)が挙げられる。中でも、酢酸アルミニウム及び/又はトリプロピオン酸アルミニウムを用いることが好ましい。ここで、酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム等に代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称である。溶媒への溶解性等の観点から、これらの中のいずれか1種又は2種以上が適宜使用される。炭素数が5より大きい脂肪酸のアルミニウム塩は水に難溶のため、製造工程で添加すると析出し、異物発生の原因となる。
本発明の樹脂組成物におけるアルミニウム塩(C)の含有量の下限は、EVOH(A)に対してアルミニウム換算で0.08ppmであり、0.2ppmが好ましく、0.5ppmがより好ましく、1ppmがよりさらに好ましいこともある。一方、アルミニウム塩(C)の含有量の上限は、EVOH(A)に対して6ppmであり、4ppmが好ましく、3ppmがより好ましいこともある。本発明の樹脂組成物においては、桂皮酸類(B)と共にアルミニウム塩(C)を含有させることにより、溶融成形時の臭気やブツの発生が抑制され、また、得られる成形体等の屋外での使用において着色の発生や機械的強度の低下が抑制される。アルミニウム塩(C)を含有させることにより上記効果が生じる理由の詳細は不明だが、桂皮酸類(B)と相互作用し、桂皮酸類(B)の耐熱性や耐光性向上効果に寄与すると推定している。アルミニウム塩(C)の含有量が0.08ppmよりも少ない場合は、桂皮酸類(B)との相互作用効果を十分発揮できず、優れた耐熱性及び耐光性を得ることができない。一方、アルミニウム塩(C)の含有量が6ppmよりも多い場合は、アルミニウムに起因するブツの発生や着色の増加が問題となる傾向がある。
桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)中のアルミニウムとのモル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)の下限は0.7が好ましく、1がより好ましく、2がさらに好ましい。一方、上記モル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)の上限は60が好ましく、40がより好ましく、20がさらに好ましく、10がよりさらに好ましい。アルミニウム塩(C)には、通常、アルミニウムを中心として炭素数5以下の脂肪酸が3個配位しており、構造の類似する桂皮酸類(B)と相互作用し、桂皮酸類(B)の安定化に寄与していると推測される。上記モル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が0.7以上の場合、アルミニウム塩(C)が相対的に過剰となることを抑え、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加をより抑制することができる。一方、上記モル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が60以下の場合、アルミニウム塩(C)が相対的に十分に存在するため、桂皮酸類(B)との相互作用がより十分に生じ、耐熱性や耐光性がより高まる傾向にある。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の樹脂、アルミニウム塩(C)以外の金属塩、酸(桂皮酸を除く)、ホウ素化合物、酸化防止剤、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、補強材等、他の成分を有していてもよい。中でも、熱安定性や他樹脂との接着性の観点から、アルミニウム塩(C)以外の金属塩及び/又は酸(桂皮酸を除く)を含むことが好ましい。
アルミニウム塩(C)以外の金属塩としては、層間接着性をより高める観点からはアルカリ金属塩が好ましく、熱安定性の観点からはアルカリ土類金属塩が好ましい。本発明の樹脂組成物がかかる金属塩を含む場合、その含有量は樹脂組成物に対し金属塩の金属原子換算で1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましく、20ppm以上が特に好ましい。またアルミニウム塩(C)以外の金属塩の含有量は、樹脂組成物に対し金属塩の金属原子換算で10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましく、1000ppm以下がさらに好ましく、500ppm以下が特に好ましい。アルミニウム塩(C)以外の金属塩の含有量が上記範囲にあると、層間接着性を良好に保ちつつ、リサイクルを行った際の熱安定性が良好となる傾向になる。
酸(桂皮酸を除く)としては、カルボン酸又はリン酸が溶融成形時の熱安定性を高める観点から好ましい。本発明の樹脂組成物がカルボン酸を含む場合、カルボン酸の含有量は樹脂組成物に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、カルボン酸の含有量は10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。本発明の樹脂組成物がリン酸を含む場合、リン酸の含有量は樹脂組成物に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましい。一方、リン酸化合物の含有量は10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。本発明の樹脂組成物がカルボン酸又はリン酸を上記範囲内で含むと、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
本発明の樹脂組成物がホウ素化合物を含む場合、その含有量は樹脂組成物に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、ホウ素化合物の含有量は2000ppm以上が好ましく、1000ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記範囲内であると、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
本発明の樹脂組成物は、屋外での使用における着色や強度低下をより低減させる観点から、酸化防止剤をさらに含有していることも好ましい。酸化防止剤の種類は特に限定されないが、ヒンダードフェノール基を有する化合物及びヒンダードアミン基を有する化合物が好ましく、工業的に製造され入手できる市販品を適宜用いることができる。酸化防止剤の含有量は、EVOH(A)100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3質量部以下がより好ましい。
これらの各成分を本発明の樹脂組成物に含有させる方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。
本発明の樹脂組成物におけるEVOH(A)、桂皮酸類(B)、アルミニウム塩(C)、アルミニウム塩(C)以外の金属塩、酸(桂皮酸を除く)、ホウ素化合物及び酸化防止剤以外の成分の含有量の上限は10質量%が好ましく、1質量%、0.1質量%、0.01質量%又は0.001質量%であってもよい。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造法としては、例えば1)含水率20~80質量%のEVOH(A)の多孔性析出物を、桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)を含有する水分散液と接触させて、EVOH(A)に桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを含有させてから乾燥する方法、2)EVOH(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、3)EVOH(A)と桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを一括してドライブレンドする方法、4)EVOH(A)と桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを一括してドライブレンドしてから押出機等で溶融混練する方法、5)EVOH(A)の製造時においてエチレン酢酸ビニル共重合体を得た後に、桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを添加する方法などを挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るには、1)、2)及び5)の方法が桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)の分散性に優れることから好ましい。
上記1)及び2)の方法で得られた樹脂組成物の調製方法においては、桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)が添加された後、また、5)の方法においては、エチレン酢酸ビニル共重合体を得た後、ケン化工程、洗浄工程を経た後、通常、乾燥が行われる。かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用できる。例えば、実質的にペレット状の樹脂組成物が、機械的に又は熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状の樹脂組成物が、撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられる。流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられる。静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げられる。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行ってもよい。
乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては、空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、40~150℃が、生産性とEVOH(A)の熱劣化抑制の点で好ましい。乾燥処理の時間としては、樹脂組成物の含水量やその処理量にもよるが、通常は15分~72時間程度が、生産性とEVOH(A)の熱劣化防止の点で好ましい。
また、上記4)の方法としては、例えば単軸または二軸の押出成形機等で溶融混練する方法がある。溶融混練温度は、通常150~300℃、好ましくは170~250℃である。
本発明の樹脂組成物は、ペレット、粉末等の任意の形態に加工し、成形材料として使用でき、通常、乾燥状態である。本発明の樹脂組成物の全固形分に対する水の含有割合の上限は1質量%が好ましいことがあり、0.1質量%又は0.01質量%がより好ましいことがある。本発明の樹脂組成物が乾燥状態であると、良好な溶融成形性等を発揮できる。
<成形体>
本発明の樹脂組成物は、溶融成形等により、フィルム、シート、チューブ、袋、容器等の成形体に成形できる。すなわち、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物から成形される成形体である。本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物のみから形成されていてもよく、他の材料から形成された部分を有していてもよい。例えば後述する多層構造体も、成形体の一形態である。
本発明の樹脂組成物を溶融成形する方法としては、例えば押出成形、キャスト成形、インフレーション押出成形、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が挙げられる。溶融成形温度はEVOH(A)の融点等により異なるが、150~270℃程度が好ましい。これらの成形体は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート等を一軸または二軸延伸することも可能である。
本発明の成形体の一例であるフィルムまたはシート等は、上述の成形体を製造する方法で製造できる。中でも、本発明の樹脂組成物をキャスティングロール上に溶融押出するキャスト成形工程や、当該樹脂組成物から得られる無延伸フィルムを延伸する工程(一軸延伸工程、逐次二軸工程、同時二軸延伸工程、インフレ-ション成形工程)を備える方法が好ましい。
単層のフィルム又はシートの平均厚さは特に限定されず、下限は例えば1μm、5μm又は10μmであってよい。一方、平均厚さの上限は例えば3mm、1mm、300μm又は100μmであってもよい。
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する。本発明の多層構造体は、通常、本発明の樹脂組成物からなる層と、他の成分からなる層とを有する。本発明の多層構造体の層数の下限は例えば2であり、3であってよく、4であってよい。この層数の上限は例えば1,000であり、100であってよく、20であってもよい。
上記他の成分からなる層としては、例えば、EVOH(A)以外の他の熱可塑性樹脂、紙、織布、不織布、金属綿条、木質面、熱可塑性樹脂からなる層が挙げられ、中でも他の熱可塑性樹脂層が好ましい。本発明の多層構造体の層構造は特に限定されず、本発明の樹脂組成物からなる層をE、接着層をAd、他の熱可塑性樹脂から得られる層をTで表わす場合、T/E/T、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等の構造が挙げられる。これらの各層は単層であっても多層であってもよい。
本発明の多層構造体を製造する方法は特に限定されず、例えば本発明の樹脂組成物から得られる成形体(フィルム、シート等)に熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、本発明の樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共射出する方法、本発明の樹脂組成物から得られるバリア層と他の熱可塑性樹脂層とをイソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法等が挙げられる。
上記の他の熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独またはその共重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルポリエステルエラストマー、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン及びポリエステルが好ましく用いられる。
上記接着層としては、本発明の樹脂組成物の層及び他の熱可塑性樹脂の層との接着性を有していればよく、カルボン酸変性ポリオレフィンを含有する接着性樹脂が好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとしては、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその無水物を化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を好適に用いることができる。ここでオレフィン系重合体とは、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、オレフィンと他のモノマーとの共重合体を意味する。中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチルエステル共重合体が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
本発明の多層構造体が、多層のフィルム又はシートである場合、平均厚さは特に限定されず、下限は例えば1μm、5μm又は10μmであってよい。一方、平均厚さの上限は例えば3mm、1mm、300μm又は100μmであってもよい。
本発明の成形体及び多層構造体は、溶融成形時などでの臭気やブツの発生が抑制され、屋外での使用に伴う着色の発生や機械的強度の低下が生じ難い。このため、屋外で使用される日用品、包装材、機械部品等に好適である。上記成形体等の特長が特に効果的に発揮される用途の例としては、飲食品用包装材、容器用パッキング材、農業用フィルム、ジオメンブレン、医療用輸液バッグ材、高圧タンク材、ガソリンタンク材、燃料容器、タイヤ用チューブ材、靴用クッション材、バッグインボックス用内袋材、有機液体貯蔵用タンク材、有機液体輸送用パイプ材、暖房用温水パイプ材(床暖房用温水パイプ材等)、樹脂製壁紙等が挙げられる。特に、屋外で使用され、熱や光による劣化が生じ易い、農業用フィルム及びジオメンブレンとして、本発明の成形体及び多層構造体を好適に用いることができる。
<農業用フィルム>
本発明の農業用フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する。本発明の農業用フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。本発明の農業用フィルムの具体的構造等は、上述した成形体の一例としてのフィルム及び多層構造体と同様である。本発明の農業用フィルムの平均厚さは特に限定されず、上述した単層又は多層のフィルム又はシートの平均厚さとして例示した値と同じであってよい。
本発明の農業用フィルム及び本発明の多層構造体は、例えばラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ、サイレージフィルム、ビニルハウス用フィルム、マルチフィルム等、農業の分野で用いられる各種フィルムに用いることができる。以下、各用途について述べる。
<ラージサイロフィルム>
ラージサイロフィルムとは、穀物を包んで保存するためのフィルムである。ラージサイロフィルムで穀物を包んで保存することで、穀物を湿気、カビ、虫等から守ることができる。本発明の一実施形態に係るラージサイロフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、ガスバリア性に優れる。ラージサイロフィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。ラージサイロフィルムの一辺の長さは、例えば1m以上であり、2m、3m、5m又は10m以上であってもよい。また、ラージサイロフィルムは袋状等に加工されていてもよい。
<土壌燻蒸用フィルム>
土壌燻蒸用フィルムは、畑等において土壌燻蒸を行うとき、土壌燻蒸剤の蒸散防止のためなどに用いられるフィルムである。本発明の一実施形態に係る土壌燻蒸用フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、土壌燻蒸剤のバリア性に優れる。土壌燻蒸用フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
<穀物保存バッグ>
穀物保存バッグは、穀物を湿気、カビ、虫等から守るために、穀物を保存するバッグであり、ヘルメティックバッグ(Hermetic bag)等とも称される。本発明の一実施形態に係る穀物保存バッグは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する単層フィルム又は多層フィルムをバッグ状、袋状、その他容器状に成形したものである。当該穀物保存バッグを構成するフィルムの平均厚さは特に限定されず、上述した単層又は多層のフィルム又はシートの平均厚さとして例示した値と同じであってよい。当該穀物保存バッグが例えば方形の袋状である場合、その一辺の長さは例えば0.5~2mである。
<サイレージフィルム>
サイレージフィルムとは、サイレージの製造・包装等に用いられるフィルムである。牧草などを嫌気性条件下で発酵させて得られるサイレージは、家畜の飼料等に用いられる。サイレージフィルムを用いるサイロの形態は特に限定されず、バンカーサイロ、地下型(もしくは半地下型)サイロ、バッグサイロ、チューブサイロ、スタックサイロ、ラップサイロなどの種々の形態が挙げられる。
本発明の一実施形態に係るサイレージフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、ガスバリア性に優れる。サイレージフィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
例えばラップサイロを作成する場合には、まず牧草を所望の容量(たとえば0.1~50m、好ましくは1~30m)に成形する。例えば円筒状のロールベールサイロの場合、その大きさは通常直径0.5~3m、好ましくは1~2m、高さは通常0.5~3m、好ましくは1~2mである。ついで、通常のラップ巻きつけ機を使用してサイレージフィルムを成形した牧草に巻きつけ、牧草を密封する。
<ジオメンブレン>
ジオメンブレンとは、透水性の極めて小さい、又は不透水性の膜状構造の製品であり、例えば廃棄物処理場などに遮水工として使用される。本発明のジオメンブレンは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、有機溶剤バリア性に優れる。ジオメンブレンは、単層フィルム又は多層フィルムであってよい。ジオメンブレンの具体的構造は、上述した成形体の一例としてのフィルム及び多層構造体と同様である。
以下、本発明を実施例等で具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、測定、算出及び評価の方法はそれぞれ以下の方法に従った。
<トランス-桂皮酸含有量の測定>
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、アセトン100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたアセトン抽出液中のトランス-桂皮酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のトランス-桂皮酸の量を定量した。なお、定量に際しては、トランス-桂皮酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
<ソルビン酸含有量の測定>
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたクロロホルム抽出液中のソルビン酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のソルビン酸の量を定量した。なお、定量に際しては、ソルビン酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
<アルミニウム含有量の測定>
乾燥樹脂組成物ペレット15gを白金るつぼに量り取り、硝酸と硫酸とを用いて乾式分解を行った。灰化した試料に塩酸約2mLを加え、50mL容ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メスフラスコに定容し、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過して試料溶液を調製した。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置「IRIS AP」)により樹脂組成物中のアルミニウム含有量(ppm)を得た。
<EVOH(A)の合成>
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン-酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル 83kg
メタノール 26.6kg
2,2’-アゾビスイソブチルニトリル供給量 1119.5mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.8MPa
重合時間 5時間
得られた共重合反応液における酢酸ビニルの重合転化率は約40%であった。この共重合反応液にトランス-桂皮酸のメタノール溶液を、仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppmとなるように添加した。その後、共重合反応液を追出塔に供給し、塔下部からメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン含有量が32モル%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体の41質量%メタノール溶液を得た。このエチレン-酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、水酸化ナトリウム/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル単位に対して0.4当量となるように添加し、さらにメタノールを加えて共重合体濃度が20質量%になるように調整した後、60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間ケン化反応を行った。得られたケン化反応液を円形の開口部を有する金板から水中に押出して析出させ、切断してペレット化し、遠心分離機で脱液後、さらに大量の水を加えて脱液する操作を繰り返して洗浄し直径約3m、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結後、真空乾燥機により凍結乾燥させて凍結乾燥ペレットを得、YI(黄色度、イエローインデックス)をJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは11であった。
[合成例2]
重合後に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結させた後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは7であった。
[合成例3]
重合後に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、ソルビン酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してソルビン酸が100ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結させた後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは12であった。
[合成例4]
重合槽エチレン圧力を3.2MPa、重合時間を4時間40分とした以外は、合成例1と同様にし、酢酸ビニルの重合転化率が約40%、エチレン含有量27モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む共重合反応液を得た。この共重合反応液に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加し、その後は合成例1と同様にしてケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは8であった。
[合成例5]
重合槽エチレン圧力を5.2MPa、重合時間を6時間とした以外は、合成例1と同様にし、酢酸ビニルの重合転化率が約40%、エチレン含有量44モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む共重合反応液を得た。この共重合反応液にトランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは6であった。
<樹脂組成物の調製>
[実施例1~12、及び比較例2~4]
上記合成例2で脱液して得られたペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液にトランス桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムを添加し、さらに1時間攪拌してトランス桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムを完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させ、次いでペレタイザーに導入して樹脂組成物チップを得た。得られた樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、トランス-桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。なお、表1中の各成分の含有量は、EVOHの量を基準とした含有量である。また、表1中の「-」は、該当する成分が含有されていないことを示す。
[実施例13]
合成例4で脱液して得られたペレットを使用したこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
[実施例14]
合成例5で脱液して得られたペレットを使用したこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
[比較例1]
合成例1で脱液して得られたペレットを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
[比較例5]
上記合成例3で脱液して得られたペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液にソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムを添加し、さらに1時間攪拌してソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムを完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させ、次いでペレタイザーに導入して樹脂組成物チップを得た。得られた樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、ソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。
上記実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物を、下記条件で製膜し、膜厚20μmの単層フィルムを得た。
・押出機:単軸押出機(ラボプラストミル、東洋精機製作所製)、20mmφ
・設定温度:C1/C2/C3/D=180℃/210℃/210℃/210℃
<臭気評価>
フィルムの成形時及び150℃雰囲気中で5時間放置した後の臭気の有無を確認した。評価は5人の被験者を対象に行い、以下の3段階評価で判定させて、平均値を求めた。
1:何れの場合も臭気はなかった
2:何れかにおいて僅かに臭気があった
3:何れの場合も確かな臭気があった
求めた平均値を以下のA~Cで評価した。評価結果を表1に示す。
A:1.5未満
B:1.5以上2.5未満
C:2.5以上
<ブツ発生評価>
得られたフィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる150μm以上のもの)を数え、1.0mあたりに換算した。1.0mあたりのブツの個数によって以下のように判定した。評価結果を表1に示す。
A:20個未満
B:20個以上40個未満
C:40個以上
<耐熱性・耐光性試験>
得られたフィルムについて、アイ・スーパーUVテスター(SUV W-151、岩崎電気製)を用い、放射照度1000W/m、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で8時間の促進耐熱性・耐光性試験を行った。試験前後の破断伸度、試験前後でのYI変化量、及び試験前後での破断伸度減少率を求めることで評価した。なお、破断伸度は引っ張りに対しての破断し難さを表す。従って、破断伸度減少率を機械的強度の低下が小さいことを示す指標とした。YI測定及び引張試験は下記の方法で行った。評価試験結果を表1に示す。
<YI測定>
色差計(NF-902、日本電色工業製)を用いて行った。促進耐熱性・耐光性試験前のフィルムのYIをYI、試験後のフィルムのYIをYIとしたとき、ΔYIを以下の式により求めた。ΔYIがマイナスの値となった時は、ΔYIは、0とした。
ΔYI=YI-YI
<引張試験>
破断伸度の評価として、オートグラフ(AGS-H、島津製作所製)を用い、温度23℃、相対湿度50%RH、引張速度500mm/minの条件で行った。試験片は縦50mm×横15mmに裁断したものを用いた。
Figure 0007149842000003
表1に示されるように、実施例1~14においては、臭気評価がA又はB、ブツ発生評価がA又はBであり、臭気やブツの発生が抑制されていることがわかる。また、実施例1~14においては、耐熱性・耐光性試験前後でのYIの変化量(ΔYI)が0.5以下、破断伸度減少率が35%以下であり、屋外での使用に伴う着色の発生や機械的強度の低下が少ない成形体が得られていることがわかる。
[実施例15]
実施例4の樹脂組成物100質量部と、酸化防止剤としてN-アルコキシ-2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン構造を有するTINUVIN NOR 371(BASFジャパン社製:ヒンダードアミン系化合物)1質量部とをドライブレンド後、溶融混練し、樹脂組成物ペレットを作製した。
[実施例16]サイレージフィルムの作製
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂組成物を用いて以下の条件で製膜し、トリムをカットし500mm幅、総厚み25.5μmのサイレージフィルムを作製した。
・装置:7種7層ブローンフィルム製膜機(ブランプトン社製)
・層構成及び各層の厚み:
外層1/外層2/接着性樹脂層1/樹脂組成物層/接着性樹脂層2/外層3/外層4
・外層1、4:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))97質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)3質量%の溶融混練物 各6μm
・外層2、3:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))90質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)10質量%の溶融混練物 各4μm
・接着性樹脂層1、2:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、アドマーNF498) 各2μm
・樹脂組成物層:1.5μm
[製膜条件]
押出機
・押出機1:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層1
・押出機2:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層2
・押出機3:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層3
・押出機4:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層4
・押出機5:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層1
・押出機6:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層2
・押出機7:30mmφ単軸押出機(L/D=20)・・・樹脂組成物層
設定温度及び回転数:
・押出機1、4:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、27rpm
・押出機2、3:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、69rpm
・押出機5、6:C1/C2/C3/A=190℃/225℃/215℃/220℃、26rpm
・押出機7:C1/C2/C3/A=180℃/210℃/215℃/220℃、19rpm
・ダイ:150mm、設定温度220℃
・延伸比率(Blow up rate):3.09
<ラッピング試験>
得られたサイレージフィルムとリモコンラップマシーンWM1600R(株式会社タカキタ社製)とを用いて、φ120cm×120cmの大きさに成型した牧草のラッピングを行った。得られたサイレージフィルムは牧草を良好にラッピングでき、サイレージフィルムとして適していることを確認した。
[実施例17]土壌燻蒸用フィルムの作製
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂組成物を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂組成物を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂組成物を、押出機5、6にて接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂組成物を、押出機7にて樹脂組成物層を構成する樹脂組成物をそれぞれ押出したこと以外は、実施例16のサイレージフィルムの製造条件と同様にして、トリムをカットし1400mm幅、総厚み35μmの土壌燻蒸用フィルムを作製した。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
LLDPE:SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製)
mLLDPE:ELITE5401G(Dow Chemical社製)
黒色MB:Ampacet 190580(Ampacet社製)
白色MB: Ampacet 112122(Ampacet社製)
UVI MB:Ampacet 100840(Ampacet社製)
Slip MBAmpacet 10090(Ampacet社製)
・外層A:LLDPE/mLLDPE/黒色MB/UVI MB/Slip MB=68/20/10/4/4質量%の溶融混練物 押出機1:10μm、押出機2:4.5μm 合計:14.5μm
・外層D:LLDPE/mLLDPE/白色MB/UVI MB/Slip MB=68/20/10/4/4質量%の溶融混練物 押出機3:10μm、押出機4:4.5μm 合計:14.5μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーAT2474A(三井化学株式会社製) 各2μm
・樹脂組成物層:2μm
<巻き戻し耐性試験>
土壌燻蒸用フィルムは、フィルムロールから圃場に延伸されて巻き出され、使用後、フィルムロールに巻き戻されて繰り返し使用される。土壌燻蒸用フィルムの巻き出し、及び巻き戻し処理を100回行った後、フィルム破損を評価した。
[実施例18]穀物保存バッグの作製
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂を、押出機5、6に接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂を、押出機7に樹脂組成物層を構成する樹脂をそれぞれ押出し、ダイ:75mm、延伸比率:1.5とした以外は、実施例16のサイレージフィルムの製造条件と同様にして、トリムをカットし900mm幅、総厚み230μmの穀物保存バッグ用フィルムを作製した。得られたフィルムから、400mm×700mmのバッグを作り、穀物保存バッグとした。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
・外層A、D:LLDPE;SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製) 押出機1、3:各50μm、押出機2、4:各47μm 合計:各97μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーNF498A(三井化学株式会社製) 各12μm
・樹脂組成物層:12μm
<発芽力試験>
得られた穀物保存バッグに、50kgのコーンを詰めて屋外に180日間保存した。保存後、コーンの発芽力を評価した。保存後のコーンの発芽力は保存前のコーンと同程度であった。
[実施例19]ジオメンブレンの作製
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂を、押出機5、6にて接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂を、押出機7に樹脂組成物層を構成する樹脂をそれぞれ押出したこと以外は実施例18の穀物保存バッグの製造条件と同様にして、トリムをカットし225mm幅、総厚み500μmのジオメンブレンを作製した。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
・外層A、D:LLDPE;SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製) 押出機1、3:各110μm、押出機2、4:各110μm 合計:各220μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーAT2474A(三井化学株式会社製) 各20μm
・樹脂組成物層:20μm
<埋め立て試験>
地面に50cm×50cm幅、深さ30cmの穴を二つ掘り、ごみを敷き詰め、片方の穴を500μmのポリエチレンフィルムで、もう片方の穴を得られたジオメンブレンで被覆した。30日経過後、周囲の臭気を評価した。ポリエチレンフィルムの周囲では臭いが感じられたが、ジオメンブレンの周囲では臭いは感じられなかった。
本発明の樹脂組成物は、成形時の臭気やブツの発生が抑制されており、屋外での使用においても、着色や強度低下が抑制された成形体を得ることができる。このため本発明の樹脂組成物は、各種成形体、多層構造体等の成形材料として有用である。

Claims (7)

  1. エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)、桂皮酸類(B)、及び炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が、1~100ppmであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmであり、炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)が酢酸アルミニウム及び/又はプロピオン酸アルミニウムである樹脂組成物。
  2. 桂皮酸類(B)と炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)中のアルミニウムとのモル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が、0.7~60である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物から成形される成形体。
  4. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層構造体。
  5. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する農業用フィルム。
  6. ラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ又はサイレージフィルムに用いられる請求項に記載の多層構造体。
  7. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するジオメンブレン。
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