JP7149842B2 - 樹脂組成物、成形体、多層構造体、農業用フィルム及びジオメンブレン - Google Patents
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Description
[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)、桂皮酸類(B)、及び炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)(以下、単に「アルミニウム塩(C)」と称することがある)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が1~100ppmであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対するアルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmである樹脂組成物;
[2]アルミニウム塩(C)が、酢酸アルミニウム及び/又はプロピオン酸アルミニウムである[1]の樹脂組成物;
[3]桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)中のアルミニウムとのモル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が0.7~60である[1]又は[2]の樹脂組成物;
[4][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物から成形される成形体;
[5][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有する多層構造体;
[6][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有する農業用フィルム;
[7]ラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ又はサイレージフィルムに用いられる[5]の多層構造体;
[8][1]~[3]のいずれかの樹脂組成物からなる層を有するジオメンブレン;
を提供することで達成される。
本発明の樹脂組成物は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」と称することがある)、桂皮酸類(B)、及びアルミニウム塩(C)を含み、EVOH(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が1~100ppmであり、アルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmである。なお、本明細書において、「ppm」は質量基準の含有割合である。
EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコ-ル単位とを有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体のケン化により得られる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
桂皮酸類(B)としては、桂皮酸(シス-桂皮酸、トランス-桂皮酸、またはこれらの混合物)、並びに桂皮酸エステル及び桂皮酸塩等の桂皮酸誘導体が挙げられる。桂皮酸誘導体とは、桂皮酸を反応させて得られる化合物等を言う。桂皮酸エステルとしては、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル等が挙げられる。桂皮酸塩としては、桂皮酸ナトリウム、桂皮酸マグネシウム、桂皮酸カルシウム等が挙げられる。中でも、桂皮酸類(B)として桂皮酸、特に安定性と価格の観点からトランス-桂皮酸を用いることが好ましい。なお、桂皮酸を用いた場合、アルミニウム塩(C)と共存することなどにより、桂皮酸の一部又は全部が桂皮酸塩となっていてもよい。
アルミニウム塩(C)は、炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩であり、ギ酸アルミニウム(トリギ酸アルミニウム等)、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム(トリプロピオン酸アルミニウム等)、酪酸アルミニウム(三酪酸アルミニウム等)が挙げられる。中でも、酢酸アルミニウム及び/又はトリプロピオン酸アルミニウムを用いることが好ましい。ここで、酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム等に代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称である。溶媒への溶解性等の観点から、これらの中のいずれか1種又は2種以上が適宜使用される。炭素数が5より大きい脂肪酸のアルミニウム塩は水に難溶のため、製造工程で添加すると析出し、異物発生の原因となる。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の樹脂、アルミニウム塩(C)以外の金属塩、酸(桂皮酸を除く)、ホウ素化合物、酸化防止剤、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、補強材等、他の成分を有していてもよい。中でも、熱安定性や他樹脂との接着性の観点から、アルミニウム塩(C)以外の金属塩及び/又は酸(桂皮酸を除く)を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造法としては、例えば1)含水率20~80質量%のEVOH(A)の多孔性析出物を、桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)を含有する水分散液と接触させて、EVOH(A)に桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを含有させてから乾燥する方法、2)EVOH(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、3)EVOH(A)と桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを一括してドライブレンドする方法、4)EVOH(A)と桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを一括してドライブレンドしてから押出機等で溶融混練する方法、5)EVOH(A)の製造時においてエチレン酢酸ビニル共重合体を得た後に、桂皮酸類(B)とアルミニウム塩(C)とを添加する方法などを挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るには、1)、2)及び5)の方法が桂皮酸類(B)及びアルミニウム塩(C)の分散性に優れることから好ましい。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形等により、フィルム、シート、チューブ、袋、容器等の成形体に成形できる。すなわち、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物から成形される成形体である。本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物のみから形成されていてもよく、他の材料から形成された部分を有していてもよい。例えば後述する多層構造体も、成形体の一形態である。
本発明の多層構造体は、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する。本発明の多層構造体は、通常、本発明の樹脂組成物からなる層と、他の成分からなる層とを有する。本発明の多層構造体の層数の下限は例えば2であり、3であってよく、4であってよい。この層数の上限は例えば1,000であり、100であってよく、20であってもよい。
本発明の農業用フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する。本発明の農業用フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。本発明の農業用フィルムの具体的構造等は、上述した成形体の一例としてのフィルム及び多層構造体と同様である。本発明の農業用フィルムの平均厚さは特に限定されず、上述した単層又は多層のフィルム又はシートの平均厚さとして例示した値と同じであってよい。
ラージサイロフィルムとは、穀物を包んで保存するためのフィルムである。ラージサイロフィルムで穀物を包んで保存することで、穀物を湿気、カビ、虫等から守ることができる。本発明の一実施形態に係るラージサイロフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、ガスバリア性に優れる。ラージサイロフィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。ラージサイロフィルムの一辺の長さは、例えば1m以上であり、2m、3m、5m又は10m以上であってもよい。また、ラージサイロフィルムは袋状等に加工されていてもよい。
土壌燻蒸用フィルムは、畑等において土壌燻蒸を行うとき、土壌燻蒸剤の蒸散防止のためなどに用いられるフィルムである。本発明の一実施形態に係る土壌燻蒸用フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、土壌燻蒸剤のバリア性に優れる。土壌燻蒸用フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
穀物保存バッグは、穀物を湿気、カビ、虫等から守るために、穀物を保存するバッグであり、ヘルメティックバッグ(Hermetic bag)等とも称される。本発明の一実施形態に係る穀物保存バッグは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する単層フィルム又は多層フィルムをバッグ状、袋状、その他容器状に成形したものである。当該穀物保存バッグを構成するフィルムの平均厚さは特に限定されず、上述した単層又は多層のフィルム又はシートの平均厚さとして例示した値と同じであってよい。当該穀物保存バッグが例えば方形の袋状である場合、その一辺の長さは例えば0.5~2mである。
サイレージフィルムとは、サイレージの製造・包装等に用いられるフィルムである。牧草などを嫌気性条件下で発酵させて得られるサイレージは、家畜の飼料等に用いられる。サイレージフィルムを用いるサイロの形態は特に限定されず、バンカーサイロ、地下型(もしくは半地下型)サイロ、バッグサイロ、チューブサイロ、スタックサイロ、ラップサイロなどの種々の形態が挙げられる。
ジオメンブレンとは、透水性の極めて小さい、又は不透水性の膜状構造の製品であり、例えば廃棄物処理場などに遮水工として使用される。本発明のジオメンブレンは、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有しており、有機溶剤バリア性に優れる。ジオメンブレンは、単層フィルム又は多層フィルムであってよい。ジオメンブレンの具体的構造は、上述した成形体の一例としてのフィルム及び多層構造体と同様である。
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、アセトン100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたアセトン抽出液中のトランス-桂皮酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のトランス-桂皮酸の量を定量した。なお、定量に際しては、トランス-桂皮酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたクロロホルム抽出液中のソルビン酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のソルビン酸の量を定量した。なお、定量に際しては、ソルビン酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
乾燥樹脂組成物ペレット15gを白金るつぼに量り取り、硝酸と硫酸とを用いて乾式分解を行った。灰化した試料に塩酸約2mLを加え、50mL容ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メスフラスコに定容し、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過して試料溶液を調製した。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置「IRIS AP」)により樹脂組成物中のアルミニウム含有量(ppm)を得た。
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン-酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル 83kg
メタノール 26.6kg
2,2’-アゾビスイソブチルニトリル供給量 1119.5mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 3.8MPa
重合時間 5時間
重合後に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結させた後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは7であった。
重合後に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、ソルビン酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してソルビン酸が100ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結させた後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは12であった。
重合槽エチレン圧力を3.2MPa、重合時間を4時間40分とした以外は、合成例1と同様にし、酢酸ビニルの重合転化率が約40%、エチレン含有量27モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む共重合反応液を得た。この共重合反応液に、トランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加し、その後は合成例1と同様にしてケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは8であった。
重合槽エチレン圧力を5.2MPa、重合時間を6時間とした以外は、合成例1と同様にし、酢酸ビニルの重合転化率が約40%、エチレン含有量44モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む共重合反応液を得た。この共重合反応液にトランス-桂皮酸のメタノール溶液の代わりに、トランス-桂皮酸及び塩基性酢酸アルミニウムのメタノール溶液を仕込み酢酸ビニルに対してトランス-桂皮酸が130ppm、塩基性酢酸アルミニウムが8ppmとなるように添加した以外は合成例1と同様にして重合、ケン化、ペレット化及び洗浄を行ってペレットを得た。得られたペレットの一部を-80℃の冷凍庫で凍結後、真空乾燥機により凍結乾燥させて得た凍結乾燥ペレットのYIをJIS-K-7103に準じて測定したところ、YIは6であった。
[実施例1~12、及び比較例2~4]
上記合成例2で脱液して得られたペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液にトランス桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムを添加し、さらに1時間攪拌してトランス桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムを完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させ、次いでペレタイザーに導入して樹脂組成物チップを得た。得られた樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、トランス-桂皮酸、及びトリ酢酸アルミニウムの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。なお、表1中の各成分の含有量は、EVOHの量を基準とした含有量である。また、表1中の「-」は、該当する成分が含有されていないことを示す。
合成例4で脱液して得られたペレットを使用したこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
合成例5で脱液して得られたペレットを使用したこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
合成例1で脱液して得られたペレットを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量の定量結果を表1に示す。
上記合成例3で脱液して得られたペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液にソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムを添加し、さらに1時間攪拌してソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムを完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させ、次いでペレタイザーに導入して樹脂組成物チップを得た。得られた樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。樹脂組成物チップを脱液後、熱風乾燥機を用いて80℃で4時間、その後さらに100℃で16時間乾燥を行って樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、ソルビン酸及びトリ酢酸アルミニウムの添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。
・押出機:単軸押出機(ラボプラストミル、東洋精機製作所製)、20mmφ
・設定温度:C1/C2/C3/D=180℃/210℃/210℃/210℃
フィルムの成形時及び150℃雰囲気中で5時間放置した後の臭気の有無を確認した。評価は5人の被験者を対象に行い、以下の3段階評価で判定させて、平均値を求めた。
1:何れの場合も臭気はなかった
2:何れかにおいて僅かに臭気があった
3:何れの場合も確かな臭気があった
求めた平均値を以下のA~Cで評価した。評価結果を表1に示す。
A:1.5未満
B:1.5以上2.5未満
C:2.5以上
得られたフィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる150μm以上のもの)を数え、1.0m2あたりに換算した。1.0m2あたりのブツの個数によって以下のように判定した。評価結果を表1に示す。
A:20個未満
B:20個以上40個未満
C:40個以上
得られたフィルムについて、アイ・スーパーUVテスター(SUV W-151、岩崎電気製)を用い、放射照度1000W/m2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で8時間の促進耐熱性・耐光性試験を行った。試験前後の破断伸度、試験前後でのYI変化量、及び試験前後での破断伸度減少率を求めることで評価した。なお、破断伸度は引っ張りに対しての破断し難さを表す。従って、破断伸度減少率を機械的強度の低下が小さいことを示す指標とした。YI測定及び引張試験は下記の方法で行った。評価試験結果を表1に示す。
色差計(NF-902、日本電色工業製)を用いて行った。促進耐熱性・耐光性試験前のフィルムのYIをYI0、試験後のフィルムのYIをYI1としたとき、ΔYIを以下の式により求めた。ΔYIがマイナスの値となった時は、ΔYIは、0とした。
ΔYI=YI1-YI0
破断伸度の評価として、オートグラフ(AGS-H、島津製作所製)を用い、温度23℃、相対湿度50%RH、引張速度500mm/minの条件で行った。試験片は縦50mm×横15mmに裁断したものを用いた。
実施例4の樹脂組成物100質量部と、酸化防止剤としてN-アルコキシ-2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン構造を有するTINUVIN NOR 371(BASFジャパン社製:ヒンダードアミン系化合物)1質量部とをドライブレンド後、溶融混練し、樹脂組成物ペレットを作製した。
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂組成物を用いて以下の条件で製膜し、トリムをカットし500mm幅、総厚み25.5μmのサイレージフィルムを作製した。
・装置:7種7層ブローンフィルム製膜機(ブランプトン社製)
・層構成及び各層の厚み:
外層1/外層2/接着性樹脂層1/樹脂組成物層/接着性樹脂層2/外層3/外層4
・外層1、4:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))97質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)3質量%の溶融混練物 各6μm
・外層2、3:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製TUFLIN HS-7028 NT7(MFR1.0g/10分))90質量%、ポリイソブテン(Soltex社製、PB32)10質量%の溶融混練物 各4μm
・接着性樹脂層1、2:無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、アドマーNF498) 各2μm
・樹脂組成物層:1.5μm
[製膜条件]
押出機
・押出機1:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層1
・押出機2:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層2
・押出機3:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層3
・押出機4:45mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・外層4
・押出機5:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層1
・押出機6:30mmφ単軸押出機(L/D=24)・・・接着性樹脂層2
・押出機7:30mmφ単軸押出機(L/D=20)・・・樹脂組成物層
設定温度及び回転数:
・押出機1、4:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、27rpm
・押出機2、3:C1/C2/C3/A=180℃/190℃/205℃/205℃、69rpm
・押出機5、6:C1/C2/C3/A=190℃/225℃/215℃/220℃、26rpm
・押出機7:C1/C2/C3/A=180℃/210℃/215℃/220℃、19rpm
・ダイ:150mm、設定温度220℃
・延伸比率(Blow up rate):3.09
得られたサイレージフィルムとリモコンラップマシーンWM1600R(株式会社タカキタ社製)とを用いて、φ120cm×120cmの大きさに成型した牧草のラッピングを行った。得られたサイレージフィルムは牧草を良好にラッピングでき、サイレージフィルムとして適していることを確認した。
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂組成物を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂組成物を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂組成物を、押出機5、6にて接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂組成物を、押出機7にて樹脂組成物層を構成する樹脂組成物をそれぞれ押出したこと以外は、実施例16のサイレージフィルムの製造条件と同様にして、トリムをカットし1400mm幅、総厚み35μmの土壌燻蒸用フィルムを作製した。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
LLDPE:SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製)
mLLDPE:ELITE5401G(Dow Chemical社製)
黒色MB:Ampacet 190580(Ampacet社製)
白色MB: Ampacet 112122(Ampacet社製)
UVI MB:Ampacet 100840(Ampacet社製)
Slip MBAmpacet 10090(Ampacet社製)
・外層A:LLDPE/mLLDPE/黒色MB/UVI MB/Slip MB=68/20/10/4/4質量%の溶融混練物 押出機1:10μm、押出機2:4.5μm 合計:14.5μm
・外層D:LLDPE/mLLDPE/白色MB/UVI MB/Slip MB=68/20/10/4/4質量%の溶融混練物 押出機3:10μm、押出機4:4.5μm 合計:14.5μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーAT2474A(三井化学株式会社製) 各2μm
・樹脂組成物層:2μm
土壌燻蒸用フィルムは、フィルムロールから圃場に延伸されて巻き出され、使用後、フィルムロールに巻き戻されて繰り返し使用される。土壌燻蒸用フィルムの巻き出し、及び巻き戻し処理を100回行った後、フィルム破損を評価した。
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂を、押出機5、6に接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂を、押出機7に樹脂組成物層を構成する樹脂をそれぞれ押出し、ダイ:75mm、延伸比率:1.5とした以外は、実施例16のサイレージフィルムの製造条件と同様にして、トリムをカットし900mm幅、総厚み230μmの穀物保存バッグ用フィルムを作製した。得られたフィルムから、400mm×700mmのバッグを作り、穀物保存バッグとした。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
・外層A、D:LLDPE;SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製) 押出機1、3:各50μm、押出機2、4:各47μm 合計:各97μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーNF498A(三井化学株式会社製) 各12μm
・樹脂組成物層:12μm
得られた穀物保存バッグに、50kgのコーンを詰めて屋外に180日間保存した。保存後、コーンの発芽力を評価した。保存後のコーンの発芽力は保存前のコーンと同程度であった。
実施例15で作製した樹脂組成物ペレット及び下記樹脂を用い、押出機1、2にて外層Aを構成する樹脂を、押出機3、4にて外層Dを構成する樹脂を、押出機5、6にて接着性樹脂層B、Cを構成する樹脂を、押出機7に樹脂組成物層を構成する樹脂をそれぞれ押出したこと以外は実施例18の穀物保存バッグの製造条件と同様にして、トリムをカットし225mm幅、総厚み500μmのジオメンブレンを作製した。
・層構成及び各層の厚み:
外層A/接着性樹脂層B/樹脂組成物層/接着性樹脂層C/外層D
(使用樹脂)
・外層A、D:LLDPE;SCLAIR FP120-A(NOVA Chemicals社製) 押出機1、3:各110μm、押出機2、4:各110μm 合計:各220μm
・接着性樹脂層B、C:アドマーAT2474A(三井化学株式会社製) 各20μm
・樹脂組成物層:20μm
地面に50cm×50cm幅、深さ30cmの穴を二つ掘り、ごみを敷き詰め、片方の穴を500μmのポリエチレンフィルムで、もう片方の穴を得られたジオメンブレンで被覆した。30日経過後、周囲の臭気を評価した。ポリエチレンフィルムの周囲では臭いが感じられたが、ジオメンブレンの周囲では臭いは感じられなかった。
Claims (7)
- エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)、桂皮酸類(B)、及び炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)を含み、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する桂皮酸類(B)の含有量が、1~100ppmであり、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)の含有量がアルミニウム換算で0.08~6ppmであり、炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)が酢酸アルミニウム及び/又はプロピオン酸アルミニウムである樹脂組成物。
- 桂皮酸類(B)と炭素数5以下の脂肪酸のアルミニウム塩(C)中のアルミニウムとのモル比(桂皮酸類(B)/アルミニウム)が、0.7~60である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物から成形される成形体。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する多層構造体。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有する農業用フィルム。
- ラージサイロフィルム、土壌燻蒸用フィルム、穀物保存バッグ又はサイレージフィルムに用いられる請求項4に記載の多層構造体。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するジオメンブレン。
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