JP7149379B1 - 球状窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記混合粉末を非酸化雰囲気中にて1450~1700℃で熱処理する第1熱処理工程と、
前記熱処理後に酸化雰囲気中にて500~800℃でさらに熱処理する第2熱処理工程と、
を含むことを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
前記カルシウム化合物は、カルシウムの酸化物、ハロゲン化物、硫化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシドよりなる群の少なくとも1種から選択される球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
従って、この球状窒化アルミニウム粉末を単独で高分子材料と混錬した場合、粒子径のばらつきが小さいため、高充填が可能であり、メジアン径(D50)が小さく、粒子径の大きい粉末が少ないため、従来よりも高分子成形体を薄くして使用することが可能である。
また、この球状窒化アルミニウム粉末を粒子径のより大きな粒子と併せて高分子材料と混錬した場合、粒子径のばらつきが少なく、凝集が少ないため、高充填が可能であり、粒子の分散性が良いため、混錬物の粘度が低くなり、高熱伝導率の樹脂成形体を得ることができる。さらに、軟質高分子材料と混ぜた場合は高分子材料本来の柔軟性が損なわれず、硬質高分子材料と混ぜた場合、3点曲げ強度が高くなる。
(ア)AlN及び希土類化合物について
球状窒化アルミニウム粉末における窒化アルミニウムと希土類化合物の比率は、特に限定されないが、窒化アルミニウム100質量%に対して酸化物換算で0.1~3.0質量%の希土類化合物を含有することが好ましく、同含有量は0.5~3.0質量%がより好ましい。希土類化合物が0.1質量%未満であると、球状窒化アルミニウム粉末中の固溶酸素の低減効果が十分に得られず、熱伝導率の低い球状窒化アルミニウム粉末となる。希土類化合物が3.0質量%超であると、窒化アルミニウムの純度が低下するため、熱伝導率の低下が懸念される。
希土類化合物としては、特に限定されないが、Y、Yb、La、Nd、Smの酸化物又はハロゲン化物、ないしは加熱中の分解により上記のものを生じる前駆体(炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシド等)よりなる群の少なくとも1種から選択されることが好ましい。
球状窒化アルミニウム粉末がカルシウムを含有すること自体に利点はない。しかし、カルシウムは、熱処理時に消耗しながら窒化アルミニウムの球形化・粒成長に寄与し、熱処理の途中で消尽すると該寄与が途絶するため、熱処理後の球状窒化アルミニウム粉末に0.01質量%以上残留することが好ましい。一方、カルシウムが0.5質量%超であると、窒化アルミニウムの純度が低下するため、熱伝導率の低下が懸念される。
メジアン径が1.9μm未満であると、下で詳述する圧縮度が上昇し、下で詳述する粘度が上昇する。
メジアン径が4.0μm超であると、当該球状窒化アルミニウム粉末を、粒子径がより大きい粒子と混ぜて作成した高分子成形体において、粘度が上昇し、硬度が上昇する。
粒子径0.9μm以下の粒子が10%超であると、圧縮度が上昇し、粘度が上昇し、下で詳述するD50/D50BETが上昇する。
粒子径7μm以上の粒子が10%超であると、D50/D50BETが上昇する。
球形度は、粒子の平面投影形状が真円にどれだけ近似しているかを示す指標であり、真球の球形度は1である。球形度は、次の数式によって求められる。
4πS/L2
ここで、Sが平面投影した粒子の面積であり、Lが平面投影した粒子の周囲長である。
球形度の値は、SEM写真を粒子ごとに画像解析することによって算出可能である。
粒子形状が真球に近い粒子が多いほど、充填性及び混練性が高いフィラー用粉末を得ることができる。
球形度が0.8未満であると、圧縮度が上昇し、粘度が上昇し、D50/D50BETが上昇する。
流動性の評価方法として圧縮度がある。圧縮度は、嵩密度(外力を加えずに容器に充填したときの密度)とタップ密度(外力を加えずに容器に充填後、所定の外力を加えたときの密度)とから、下記の計算式により算出できるパラメータであり、嵩密度とタップ密度はそれぞれJIS R1628に従って測定を行った。
圧縮度=(タップ密度-嵩密度)/(タップ密度)
流動性が悪い粉末は、外力を加えなければ容器に充填されにくく嵩密度が低くなるため圧縮度が大きい(比較例1~3)。
ただし、流動性が悪い粉末であっても、粒子径が大きい(粒子径7μm以上が10%以上である)と、流動性がある程度悪くても嵩密度が高くなる(比較例4~6)。この粉末をタップしたときの密度は、粒子径のバラツキが小さい(粒子径7μm以上が10%未満である)粉末をタップしたときの密度と比較して大きくなるため、嵩密度とタップ密度の差から算出する圧縮度が大きくなる。
粒子の凝集度を評価できるパラメータとしてD50/D50BETで評価を行った。
実測した比表面積SSAに対して、粒子が真球かつ凝集がないと仮定して算出した粒子径をD50BET(比表面積球相当径)とする。計算方法は以下の通りである。
凝集度D50/D50BET、粒子直径D、体積V、表面積S、密度ρ(AlNのρは3.26)、重量Mとし、公式より、
V=(π×D3)/6
S=π×D2
M=V×ρ=(π×D3×ρ)/6
実測した比表面積SSA=S/M=6/(D50BET×ρ)
→比表面積球相当径D50BET=6/(ρ×SSA)
=6/(3.26×SSA)
ガス吸着法により測定される比表面積は、測定する粒子より十分に小さいガス分子の粒子表面への付着量から算出される。そのため、凝集粒子が多い粉末においても粒子間の隙間に入り込み測定することが可能である。
一方、レーザー回折散乱系による粒度分布測定では液体中に粉末を分散させて測定するが、凝集が解消されない粒子は凝集した粒子の大きさがそのまま測定されるため、レーザー回折散乱計により測定された粒子径D50は、比表面積から計算されたD50BETより大きな値を取る。
この影響を凝集の度合いとして数値化したものがD50/D50BETであり、凝集が少ない粉末のD50は、D50BETとの差が小さくなる(D50が小さくなり結果としてD50/D50BETが小さくなる)。
高分子材料への充填性の評価方法として、原料粉末とシリコーンオイルを所定量混合したときの粘度で評価する方法がある。
後述する比較例4~6(特許文献3の実施例1~3)は、粒度分布のばらつきがあるもののメジアン径(D50)が3.0μm以上であることから、高分子材料との濡れ性が良いため、従来の球状窒化アルミニウム粉末でも粘度が低く、高分子材料への充填性が良いものが得られていた。
本発明では、粒子径をさらに小さく(3.0μm以下に)してもシリコーンオイルと混合したときの粘度が低いため、高分子材料への充填性が向上したことが示された。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末は高分子材料に充填することにより、熱伝導率が高い高分子成形体を作製して使用することができる。高分子材料としては、樹脂、ゴム、エラストマー等を例示できる。
ここで、粉末を高濃度で充填した方が、熱伝導率が高くなるため望ましく、樹脂中に多量の窒化アルミニウム粉末を充填する公知例は複数ある(例えば特開2020-125228号公報)。
しかし、多量の窒化アルミニウム粉末を充填すると、高分子成形体が硬くなり高分子材料の持つ柔軟性が損なわれ、凹凸部への密着性が悪化するという問題点がある。そのため、高充填しつつも柔軟性が保たれた高分子成形体が必要とされている。
粉末を高充填させるためには大粒子の隙間に小粒子が入り込む必要があり、理論上、粒子径のばらつきがない粒子同士(例えば全て30μmの粒子と全て2μmの粒子)を組み合わせることで高充填が可能となる。しかし、実際には粒子径には分布があり(例えば、中心径が30μmであっても7~50μmの粒子が含まれている粒子と、中心径が2μmであっても0.5~10μmの粒子が含まれている粒子)大粒子の隙間に入り込めない粒子や、隙間に対して小さい粒子が存在することで充填率が向上しない。この両者を同一の充填率で比較すると前者の方が混錬物の粘度が低くなり、硬化後の成形体硬度も低くなる。本発明の球状窒化アルミニウム粉末は粒子径のばらつきを抑えたことで、大粒子の隙間に入り込める粒子が増加しその結果として成形体の硬度が高くならず、柔軟性を備えた高分子成形体を得ることができる。
(ア)窒化アルミニウム原料粉末
母材としての窒化アルミニウム原料粉末は、金属不純物が少なく、酸素含有量が低い高純度微粉末であることが好ましい。窒化アルミニウム原料粉末は、還元窒化法、直接窒化法などの任意の方法によって合成され得る。
窒化アルミニウム原料粉末は、メジアン径(D50)0.01~2.0μmのものが採用され得る。出発原料としての窒化アルミニウム原料粉末のメジアン径が、最終製品である球状窒化アルミニウム粉末のメジアン径を左右する。本実施形態では、窒化アルミニウム原料粉末のメジアン径を1.9μm以下とすることにより、球状窒化アルミニウム粉末のメジアン径を1.9~4.0μmに制御し得る。より好ましくは、球状窒化アルミニウム粉末のメジアン径を1.94~3.98μmに制御し得る。
第1の助剤である希土類化合物は、Y、Yb、La、Nd、Smの酸化物又はハロゲン化物、ないしは加熱中の分解により上記のものを生じる前駆体(炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシド等)よりなる群の少なくとも1種から選択され得る。第1の助剤粉末は、金属不純物が少ない高純度微粉末であることが好ましい。
希土類化合物の添加量が酸化物換算で0.5質量%未満であると、粒子径0.9μm以下の小粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加する。
希土類化合物の添加量が酸化物換算で3.0質量%超であると、粒子径7μm以上の大粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加する。
ここで、酸化物換算とは、金属元素を含む化合物を、金属元素の酸化物に換算して計算した値を意味する。
第2の助剤であるカルシウム化合物は、カルシウムの酸化物又はハロゲン化物、ないしは加熱中の分解により上記のものを生じる前駆体(硫化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシド等)よりなる群の少なくとも1種から選択され得るが、CaF2が用いられることが好ましい。CaF2を添加すると、低融点のCaF2-CaO-Al2O3を生成して、窒化反応や粒成長をより一層促進させる効果がある。
カルシウム化合物の粒子径は、目的とする球状窒化アルミニウム粉末のメジアン径(D50)よりも小さいものが望ましく、0.5~2μmが好ましい。メジアン径が2μmよりも大きな粉末を使用すると、粗大粒子が不均一に生成してしまう原因になり得る。
カルシウム化合物の添加量が0.3質量%未満であると、粒子径0.9μm以下の小粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加し、製造される球状窒化アルミニウム粉末のカルシウム含有量が低下する。
カルシウム化合物の添加量が1.0質量%超であると、粒子径7μm以上の大粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加し、製造される球状窒化アルミニウム粉末のカルシウム含有量が増加する。
特許文献3(CaF2 2~8%)に対して、CaF2の添加量を減らした(0.3~1.0%)ことにより、原料粉末の過剰な粒成長を抑えることができる。ただし、0.3%よりも少なくすると、0.9μm以下の微粒子が粒成長しにくくなり、0.9μm以下の微粒子が多く残存するため粒子径のばらつきが大きくなり充填性が悪くなる原因となる。焼成時にカルシウム成分が揮発するため、完成品としては0.01~0.5%程度が残存する。
カーボン粉末は、第1熱処理工程における窒化アルミニウム同士の融着を防ぐために添加している。
さらに、カーボン粉末が、原料混合粉末中の酸素と高温で反応して酸素含有量を減少させることで、窒化アルミニウム粒子の高熱伝導率化にも寄与する。
カーボン粉末として、ファーネスブラックやアセチレンブラックのような炭素が主体となる微粒子を使用することができる。また、カーボン粉末は、メジアン径(D50)が10~50nm、灰分が0.1%以下のものを用いることが好ましい。
カーボン粉末の添加量が8質量%未満であると、粒子径7μm以上の大粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加する。
カーボン粉末の添加量が50質量%超であると、粒成長が抑制されるためメジアン径が低下し、粒子径0.9μm以下の小粒子の割合が増加する。加えて、第2熱処理工程時の脱炭に長時間を要するため生産効率が低下する。
準備した原料粉末を振動ミル、ボールミル、Vブレンダー等の一般的な手法によって均一に混ざるまで混合することで、原料混合粉末を得ることができる。
第1熱処理工程における非酸化雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等を例示できる。
第1熱処理工程において、1450~1700℃(以下「第1温度域」という。)まで温度上昇する際、添加したカルシウム化合物が、1230℃程度の比較的低温で液相を生成し、窒化アルミニウム粒子の表面を濡らすことで、粒子の最初の球形化及び粒成長を促す。このカルシウム化合物は、非酸化雰囲気中で分解しやすく、高温(例えば、約1350℃以上)で揮発しやすいため、窒化アルミニウム粒子がより粒成長する第1温度域などの高温域ではほとんど残っていない。
第1温度域に到達してカルシウム化合物の大部分がなくなった後、高温域では、続いて、希土類化合物等が窒化アルミニウム粒子の球形化及び粒成長を促すように働く。その結果、第1熱処理工程全体に亘って効果的な球形化及び粒成長が行われると考えられる。
つまり、助剤としてカルシウム化合物とともに希土類系化合物を併用したことで、低温域と高温域の2段階で効果的な球形化及び粒成長を行うことが可能となり、窒化アルミニウム粒子を従来よりもさらに球形化することが可能である。
第1温度域が1450℃未満であると、メジアン径(D50)が低下し、粒子径0.9μm以下の小粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加し、製造される球状窒化アルミニウム粉末のカルシウム含有量が増加する。
第1温度域が1700℃超であると、メジアン径が増加し、粒子径7μm以上の大粒子の割合が増加し、球形度が低下し、D50/D50BETが増加し、製造される球状窒化アルミニウム粉末のカルシウム含有量が減少する。
また、第1温度域での保持時間は、1~20時間であることが好ましい。保持時間が1時間未満であると、粒成長を抑えることができるが、粒子径が不均一になりやすく、保持時間が20時間超であると、生産効率が低下する。
第2熱処理工程における酸化雰囲気としては、大気中等を例示できる。
第2熱処理工程において、球形化粒子粉末を500~800℃(以下「第2温度域」という。)で数時間、熱処理することにより、炭素を燃焼させて脱炭する。これにより、球形化粒子粉末から炭素成分が除去される。
第2温度域が500℃未満であると、カーボンが除去しきれないため、高分子材料と混ぜると粘度が上昇する。
第2温度域が800℃超であると、酸素量が増加するため、フィラーの熱伝導率が低下する。
球状窒化アルミニウム粉末の用途としては、特に限定されないが、高分子材料、グリース、接着剤、塗料などの材料に混合するフィラーを例示できる。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末をフィラーとして高分子材料に充填してなる高分子成形体の用途としては、特に限定されないが、半導体モジュール、LEDパッケージ、ペルチェモジュール、プリンタ、複合機、半導体レーザー、光通信、高周波などで使用される回路基板や、汎用の放熱部材や、パワー半導体モジュール用放熱部材(ヒートシンク)や、絶縁板等を例示できる。
なお、比較例4,5,6は、それぞれ特許文献3の実施例1,2,3に相当するものである。
以下「各例」というときは、実施例1~14及び比較例1~6の各々を指すものとする。
主原料である窒化アルミニウム原料粉末として、メジアン径(D50)1.9μmのものを実施例及び比較例1~3に用い、メジアン径2.3μmのものを比較例4~6に用いた。
第1の助剤である希土類化合物として、Y2O3の粉末を、各例に用いた。
第2の助剤であるカルシウム化合物として、CaF2の粉末を、各例に用いた。
カーボン粉末として、メジアン径10~50nm、比表面積80m2/g、灰分0.1%以下のものを、各例に用いた。
(i)材料の混合工程
窒化アルミニウム原料粉末100質量%に対して、表1に示すように各例によって異なる質量%の、希土類化合物粉末、カルシウム化合物粉末及びカーボン粉末を配合した。そして、準備した原料粉末をボールミルに投入して十分に混合することで、原料混合粉末を得た。
次に、原料混合粉末を黒鉛製のサヤに敷き詰めて加熱炉に投入し、窒素雰囲気の下、表1に示すように1450~1700℃の範囲で各例によって異なる温度まで昇温させた後、各例によって異なる保持時間で保持する、第1の熱処理を行うことにより、球形化粒子粉末を得た。
続いて、球形化粒子粉末を、酸化雰囲気中(大気雰囲気中)で、各例とも750℃で3時間、加熱して第2の熱処理(脱炭処理)を行った。そして、株式会社堀場製作所のEMIA-221Vを用いた酸素気流中燃焼-赤外線吸収法により、各サンプルの残留炭素を測定し、炭素含有量が0.15質量%未満になったことを確認した。
得られた実施例1~14及び比較例1~6の球状窒化アルミニウム粉末について、以下の方法により特性等を測定した(測定結果を表2及び表3に示す)。
図1は実施例1、図2は実施例7、図3は実施例14、図4は比較例1のそれぞれ球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。
実施例1,7,14の球状窒化アルミニウム粉末は、表面に角部や凹凸部を殆ど有しない球形をなし、かつ、粒度のばらつきが小さく、凝集塊が少ない。
これに対して、比較例1の球状窒化アルミニウム粉末は、表面に角部や凹凸部を殆ど有しない球形をなしているが、粒度のばらつきが大きく、凝集塊がみられる。
株式会社リガク製の蛍光X線分析装置(型式:ZSX Primus IV)を使用して、Y量(酸化物換算)及びCa量(酸化物換算)を測定した。
0.1質量%のピロリン酸ナトリウム水溶液50mlに、球状窒化アルミニウム粉末0.5gを投入し、株式会社日本精機製作所製の型式US-300Eを使用して出力80%で3分間分散させたものを、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置、型式SALD-2200を使用して、メジアン径(D50)と、粒子径0.9μm以下の粒子の割合(体積基準)と、粒子径7μm以上の粒子の割合(体積基準)を測定した。
球状窒化アルミニウム粉末と、エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製エポトートYH-300)と、硬化剤(日立化成株式会社製HN-2200)とを混合したものをシリコン型に入れて熱硬化させて成形体を得た。次に、成形体を研磨し、その研磨面を走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 S-3400N)で倍率2000倍で撮影した。取得したSEM画像に対して、画像処理ソフト「ImageJ」を使用して任意の100個以上の粒子の画像解析を実行し、その全粒子の球形度を求めた上でその平均値を求めることによって、球形度(平均球形度)を算出した。
比表面積を窒素ガス吸着法であるBET一点法により測定した。測定装置は、Quantachrome社製のMonosorb、型式MS-21を用いた。
前述のとおり、次式により求めた。
D50/D50BET=D50/(6/(3.26*SSA))
前述のとおり、嵩密度とタップ密度はそれぞれJIS R1628に従って測定し、次式により圧縮度を求めた。
圧縮度=(タップ密度-嵩密度)/(タップ密度)
シリコーンオイル(ダウ・東レ株式会社製:DOWSIL-510)100gに対して球状窒化アルミニウム粉末150gを混合した際のスラリーの粘度を、ブルックフィールド製DV1MHBTJ0を使用して100rpmで測定した。
モメンティブ製シリコーン樹脂TSE3033AとTSE3033Bを重量比1:1で秤量し、自転公転ミキサーで混合した。
混合したシリコーン樹脂を16.6質量%(40体積%)、フィラーとしての各例の球状窒化アルミニウム粉末を83.4質量%(60体積%)となるように秤量して、自転公転ミキサーで混合した後、3本ロールミルで混錬した。混錬物をφ40mmの型に流し込み、150℃で2Hr硬化させ、φ40mm×厚み10mmの成形体を成形した。
TECLOCK製GS-721G TYPE Eを使用して、成形体の硬度を5回測定し、平均値を算出した。
また、成形体を厚み1.5mm×10mm×10mmに切り出し、ネッチ製LFA467を使用して、熱伝導率を測定した。
シリコーン樹脂とフィラーの混合比は上記(ix)と同様に16.6質量%:83.4質量%とし、但しそのフィラーとして、各例の球状窒化アルミニウム粉末30質量%と、中心径80μmのAlN粉末40質量%と、中心径30μmのAlN粉末30質量%との組合せフィラーを用いた以外は、上記(ix)と同様に混錬物を作製し、成形体を成形した。
そして、上記(ix)と同様に、硬度及び熱伝導率を測定した。
さらに、同混錬物を厚み約1mmのシート状に成形し、150℃で2時間硬化させた後、金型を使用して全長120mm、平行部長さ40mm、平行部幅10mm、つかみ部幅25mmのダンベル形状の試験片を作製した。その試験片を株式会社島津製作所製の型式AG-ISを使用し、試験速度15mm/分で引張強度を5回測定し、平均値を算出した。
使用した樹脂を新日鐵化学株式会社製のエポキシ樹脂YH-300とHN-2200とした以外は、上記(x)と同様に、樹脂と組合せフィラーとの混錬物を作製し、その混錬物を型に流し込み150℃で2hr硬化させ、長さ40mm、幅10mm、厚み1mmに加工した。株式会社島津製作所製の型式AG-ISを使用し、クロスヘッドスピード0.5mm/分、支点間距離20mmで3点曲げ強度を5回測定し、平均値を算出した。
比較例1~6に対して、実施例1~14は、
[1]メジアン径(D50)が1.9~4.0μmの範囲内にあり、粒子径0.9μm以下の粒子が10%以下であり、粒子径7μm以上の粒子が10%以下であり、球形度が0.8以上であることにより、又は、
[2]メジアン径(D50)が1.9~4.0μmの範囲内にあり、球形度が0.8以上であり、圧縮度が40%以下であることにより、
D50/D50BETが2以下であって凝集が少なく、上記粘度が10000cps以下であって樹脂への充填性が高い。
実施例1~14の球状窒化アルミニウム粉末は単独でシリコーン樹脂と混錬した場合、さほど低硬度・高熱伝導率の樹脂成形体とはならないが、高充填が可能で、メジアン径が小さく、粒子径の大きい粉末が少ないため、従来よりも樹脂成形体を薄くして使用することが可能である。
実施例1~14の球状窒化アルミニウム粉末を粒子径のより大きな粒子と組合せてシリコーン樹脂と混ぜた場合、低硬度(シリコーン樹脂本来の柔軟性が損なわれない)、高熱伝導率の樹脂成形体を得ることができる。また、同様に組み合わせてエポキシ樹脂と混ぜた場合、3点曲げ強度が高くなる。
Claims (8)
- 窒化アルミニウム及び希土類化合物を含有し、メジアン径(D50)が1.9~4.0μmであり、粒子径0.9μm以下の粒子が10%以下であり、粒子径7μm以上の粒子が10%以下であり、球形度が0.8以上である球状窒化アルミニウム粉末。
- 窒化アルミニウム及び希土類化合物を含有し、メジアン径(D50)が1.9~4.0μmであり、球形度が0.8以上であり、圧縮度が40%以下である球状窒化アルミニウム粉末。
- カルシウムを酸化物換算で0.01~0.5質量%含有する請求項1又は2に記載の球状窒化アルミニウム粉末。
- D50/D50BETが2以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の球状窒化アルミニウム粉末。
- 前記球状窒化アルミニウム粉末150gとシリコーンオイル100gを混合したときの粘度が10000cps以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の球状窒化アルミニウム粉末。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の球状窒化アルミニウム粉末を高分子材料に充填した高分子成形体。
- 窒化アルミニウム粉末100質量%に対して、酸化物換算で0.5~3.0質量%の希土類化合物と、酸化物換算で0.3~1.0質量%のカルシウム化合物と、8~50質量%のカーボン粉末とを混合して混合粉末を得る原料混合工程と、
前記混合粉末を非酸化雰囲気中にて1450~1700℃で熱処理する第1熱処理工程と、
前記熱処理後に酸化雰囲気中にて500~800℃でさらに熱処理する第2熱処理工程と、
を含むことを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。 - 前記希土類化合物は、Y、Yb、La、Nd、Smの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシドよりなる群の少なくとも1種から選択され、
前記カルシウム化合物は、カルシウムの酸化物、ハロゲン化物、硫化物、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシドよりなる群の少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項7に記載の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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