JP7147810B2 - 方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板に関し、特に、鋼板表面に線状溝を形成した方向性電磁鋼板であって、通板性に優れる方向性電磁鋼板に関するものである。
磁気特性に優れる方向性電磁鋼板は、主に変圧器の鉄心用材料として用いられており、変圧器のエネルギー使用効率向上のため、その低鉄損化が求められている。方向性電磁鋼板を低鉄損化する手法としては、鋼板中の二次再結晶粒をGoss方位に高度に揃える方法(先鋭化)や、鋼板表面に形成された張力コーティングの被膜張力を増大させる方法、鋼板の薄手化などに加えて、鋼板の表面加工による方法が知られている。
鋼板の表面加工による鉄損低減技術は、鋼板の表面に対して物理的な手法で不均一歪を導入し、磁区の幅を細分化して鉄損を低減するというものであり、その一つに、仕上げ焼鈍済みの鋼板表面に歯型ロールを用いて溝を形成する方法(突起ロール法)がある。この方法によれば、溝を形成することによって鋼板表面の磁区を細分化し、鋼板の鉄損を低減することができる。また、溝形成後に歪取り焼鈍等の熱処理を行った場合でも、導入した溝が消失しないため、鉄損低減効果が保持されることがわかっている。しかし、この方法には、歯型ロールの摩耗が激しいため溝形状が不均一になりやすいことに加え、歯型ロールの摩耗を抑制するためにロールを高温化したり潤滑剤を塗布したりすると製造コストが増大するという問題があった。
そこで、歯型ロールのような機械的手段によらず、エッチングによって鋼板の表面に線状溝を形成する方法が開発されている。具体的には、フォルステライト被膜が形成される前の鋼板表面にレジストインキをパターン状に塗布した後、前記レジストインキが塗布されていない部分を、電解エッチング等の方法を用いて選択的にエッチングすることによって鋼板表面に溝が形成されるというものである。この方法では、装置の機械的な摩耗がほとんど無いため、歯型ロールを用いる方法に比べてメンテナンスが容易である。
ところで、このような線状溝が形成された方向性電磁鋼板は、線状溝が形成されていない方向性電磁鋼板よりも通板性に劣ることが知られている。これは溝形成部と溝未形成部の板厚が相違することに起因している。鋼板をコイルから払い出して通板する際には鋼板に張力を付与するが、溝未形成部の板厚にあわせて張力を設定すると、溝形成部の薄い部分は過度な応力が付与され、破断のリスクが高まる。一方、溝形成部に合わせて張力を設定すると、溝未形成部では張力不足となり、蛇行や形状不良を招いて通板性を劣化させる。
通板性を改善させる手段として、コイル形状の劣化を防止して、形状矯正等に必要な張力を低減させることが有効である。コイル形状の劣化防止技術としては、仕上げ焼鈍時にコイル受け台と接するコイル下端部の側歪み変形(自重による座屈変形)を抑制させる技術が開示されている。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、側歪み変形を抑制するために、コイル下端部への細粒化剤の塗布や、突起物を付けたロール等により加工変形歪みを付与することによって、意図的にコイル下端部の結晶を細粒化させ、コイル下端部の機械的強度を変化させる技術が開示されている。この技術を適用すれば、コイル下端部の機械的強度が変化し、その部分が変形しにくくなり、側歪みは一定量抑制される。
また、特許文献3~6では、側歪み変形を抑制するために、コイル下端から一定幅の帯状部の二次再結晶を促進して、仕上げ焼鈍の早い時期に結晶粒径を大きくし、高温強度を向上させる方法が開示されている。さらに特許文献7にはレーザ照射によってコイル下端部に変形容易な溶融再凝固部を導入する技術が開示されている。これらの技術を適用するとある程度側歪みは抑制され、コイルから鋼板を払い出して通板する際に必要な張力は低減されるが、特に溝が形成された方向性電磁鋼板の通板性を改善させるには不十分であった。
特開昭63-100131号公報 特開昭64-42530号公報 特開平2-97622号公報 特開平3-177518号公報 特開2000-38616号公報 特開2001-323322号公報 国際公開第2014-080763号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鋼板表面に線状溝が形成された方向性電磁鋼板であって、通板性に優れる前記方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、溝が表面に形成された方向性電磁鋼板の通板性の改善策を検討した結果、以下の知見を得た。なお、本明細書において、特に断りのない限り、鋼板またはコイルの「端部」は、鋼板またはコイルの幅方向の端部を意味するものとする。
(1)破断トラブルは、方向性電磁鋼板の製造工程において、仕上げ焼鈍後(二次再結晶組織が形成されたあと)に多発しているので、仕上げ焼鈍後の鋼板について通板性を改善させることが重要である。
(2)破断は、鋼板の端部が起点になるケースが多いので、鋼板の通板性を改善させるには、特に鋼板両端部の機械強度アップが有効であり、鋼板両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲の組織を平均結晶粒径5mm以下に微細化することが重要となる。ただし、微細化していても各結晶粒の方位がほぼ同じ場合、すべり系が同じになるので、ある一定の方向に対する耐力しかアップしないので、できる限りランダムな結晶方位であることが好ましい。そのため、少なくともGoss方位からのずれ(ずれ角)が10°以下の結晶粒の存在頻度を50%以下とする必要がある。
(3)鋼板の通板性を改善させるのに有効な鋼板両端部の機械強度アップ手段として、鋼板両端部に溝が形成されていない溝非形成部を存在させることが有効である。より効果的に通板性をアップさせるためには、少なくとも鋼板両端から幅中央方向に1mmまでの範囲は、溝を形成しないことが好ましい。
(4)鋼板両端部以外も、破断の起点になり得るので、表面に形成されている溝を連続的に圧延方向と交差する方向に延在させ、溝を不連続に形成させる際に発生しやすい、溝のラップ部による板厚の薄い領域増大を防止することも、通板性の改善に有効である。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、以下の構成を有する。
[1]圧延方向と交差する方向に延在しかつ溝深さ方向が板厚方向となる溝が表面に形成された方向性電磁鋼板であって、
前記鋼板の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲の組織が微細化されてなり、
前記両端から幅中央方向に10mmまでの微細化された組織は、平均結晶粒径が5mm以下であり、かつ、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が50%以下である、方向性電磁鋼板。
[2]鋼板表面の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも1mmまでの範囲には、溝が形成されていない、[1]に記載の方向性電磁鋼板。
[3]鋼板表面に形成された溝が、連続的に圧延方向と交差する方向に延在する、[1]または[2]に記載の方向性電磁鋼板。
本発明によれば、鋼板表面に線状溝が形成された方向性電磁鋼板であって、通板性に優れる前記方向性電磁鋼板を提供することができる。
本発明によれば、鋼板表面に溝が形成されている方向性電磁鋼板コイルの機械強度が大幅に向上するので、コイルから前記鋼板を払い出して通板する際、通板性が改善することで破断による生産性低下が防止される。
図1は、各工程後の鋼板(組織)と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図2は、仕上げ焼鈍後(二次再結晶組織)と張力コーティング形成後(二次再結晶組織)の鋼板について、鋼板端部からの研削幅と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図3は、鋼板端部領域の組織の平均結晶粒径と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図4は、鋼板端部から幅中央方向に10mmの範囲の鋼板組織における二次再結晶粒の存在頻度と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図5は、溝未形成部の鋼板両端部から幅中央方向への幅と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図6は、複数のレーザ照射装置を使用して線状溝を形成した際の線状溝の形成パターンを説明する図である。 図7は、図6(c)の下側の図のラップ部の拡大図である。 図8は、ラップ代と破断発生張力比との関係を示すグラフである。 図9は、組織観察領域を説明する説明図である。 図10は、微細結晶組織の領域を判定する際に、基準となる二次再結晶組織の設定方法を説明する説明図である。 図11は、各ピッチにおける圧延方向単位距離当たりの結晶粒界の交差数の計測方法を説明する説明図である。 図12は、微細結晶組織の領域の判定方法を説明する説明図である。
<実験1>
まず、鋼板端部の組織と機械強度の関係を明らかにした実験結果を説明する。表面にレジストインクを塗布した板厚0.23mm、板幅800mmの冷間圧延板にレーザを圧延方向と直交する向きに走査して、圧延方向に5mmの間隔を置いてレーザを照射してレジストインクを剥離した。なお、この方法では、レーザが照射された部分のレジストインクが剥離(除去)される。レーザ照射は、2台のシングルモードファイバーレーザを鋼板幅方向に設置し、ガルバノスキャナー方式によってレーザ照射エネルギー25J/m、レーザ走査幅400mmで実施し、鋼板の幅方向の一方の端から他端まで連続的にレジストインクを完全に剥離した。
次に、このレジスト剥離したサンプルに電解エッチング処理を施し、鋼板表面に、深さ(板厚方向)20μm、幅100μmの溝を形成させ、820℃×120sec、N:H=40:60(体積比)、露点50℃で脱炭焼鈍を実施した。その後、鋼板両端部を研削して、鋼板表面に形成されたサブスケール性状を変化させた。このとき、鋼板の幅方向の両端から幅中央方向への研削幅は0~100mmまで変化させた。ここでは鋼板両端部の研削幅(一方の端部の研削幅と、他方の端部の研削幅)は同じとした。その後、公知の方法で焼鈍分離剤塗布、仕上げ焼鈍、張力コーティング形成などを行って、方向性電磁鋼板を製造した。また、比較として、溝を形成しない方向性電磁鋼板も溝の形成以外の製造条件を同じくして製造した。
上記の製造途中および最終工程完了後の鋼板、具体的には、エッチング後(冷間圧延組織)、脱炭焼鈍後(一次再結晶組織)、仕上げ焼鈍後(二次再結晶組織)、張力コーティング形成後(二次再結晶組織)の、溝を形成した鋼板、溝を形成しない鋼板に対し、試験的に破断が発生するまで張力(以下、破断発生張力とする)を付与し、破断発生張力と各工程後の鋼板(組織)の破断の関係を調査した。
結果は、溝を形成していない鋼板(溝なし)の破断発生張力に対する、溝を形成した鋼板(溝あり)の破断発生張力の比で表した(以下、破断発生張力比とする)。試験は室温25℃で行った。なお、鋼板両端部の研削を実施したのは、サブスケールの性状を変えることで、二次再結晶挙動を変化させ、鋼板両端部の組織変化による鋼板の機械強度変化を狙ったものである。
図1に、研削なし(研削幅0mm)の鋼板について調査した各工程後の鋼板(組織)と破断発生張力比との関係を示す。図1から、鋼板表面に溝を形成した場合、二次再結晶組織(仕上げ焼鈍後)になると破断発生張力が大幅に低下しており、通板性改善対策は、鋼板が二次再結晶組織である場合に検討することが重要であることが分かる。
図2に、仕上げ焼鈍後(二次再結晶組織)と張力コーティング形成後(二次再結晶組織)の鋼板について、鋼板端部からの研削幅と破断発生張力比との関係を示す。横軸は鋼板端部(両端)から幅中央方向へ研削した幅(mm)を示している。鋼板両端を少なくともそれぞれ10mm以上幅中央方向に研削することで、破断発生張力の低下が大幅に抑制され、通板性が改善していることが分かる。研削により通板性が改善した原因を調査するため、研削を施したそれぞれの鋼板を酸洗・エッチングして組織観察を行った。観察した結果、研削部(研削によりサブスケール性状に変化が現れた領域)の組織は、微細結晶組織になっており、平均結晶粒径が0.8mmであった。
なお、本発明において、微細化された組織(微細結晶組織)の領域は以下の方法で判定される。本発明における微細結晶組織の領域の判定方法を図9~12を参照しながら説明する。
(i)鋼板全幅×鋼板圧延方向100mmの領域を組織観察領域とする(図9)。板幅方向中央の[幅方向100mm]×[圧延方向100mm]の領域に関して組織観察および結晶方位測定を行う(図10)。
(ii)結晶方位測定結果から、上記[幅方向100mm]×[圧延方向100mm]の領域について、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が90%以上であれば、その領域を「基準となる二次再結晶組織」に設定する(図10)。
(iii)組織観察結果から、鋼板全幅にわたって5mmピッチで圧延方向に対して交差する結晶粒界を計測する(図11)。
(iv)各ピッチにおける圧延方向単位距離当たりの交差数を計算する(図11)。
(v)基準となる二次再結晶組織(領域)での平均交差数に対して、2倍以上の交差数となる点が連続的に出現する場合、その範囲(ピッチ間)を微細結晶組織の領域と判定する(図12)。
また、微細結晶組織について結晶方位解析を行ったところ、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が5%以下であり、大部分が二次再結晶組織ではなく、一次再結晶粒が、研削を施した後、仕上げ焼鈍によって正常粒成長したものであることが判明した。以上の結果より、二次再結晶組織が主組織である鋼板において、溝を形成した鋼板の破断発生張力の低下が大幅に抑制されたのは鋼帯両端部の細粒化組織による機械強度アップが原因と考えられる。
本発明における結晶方位測定は、X線ラウエ法を用いて1mmピッチで測定し、1つの結晶粒内の全測定点から結晶粒内の変動幅およびその結晶粒の平均結晶方位(α角、β角)を求めた。本発明においては、鋼板全幅×鋼板圧延方向100mmの領域に関して測定を行った(図9参照)。Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度は、板端から板幅中央の方向に10mmまでの領域において、Goss方位からのずれ角(ずれ量)が10°以下の結晶粒の面積をもとめ、その10mmまでの領域の面積との割合[(Goss方位からのずれ角が10°以下の結晶粒の面積/板端から幅中央方向10mmまでの領域の面積)×100]を存在頻度とし、ずれ角は√(α+β)で定義した。α角は二次再結晶粒方位の圧延面法線方向(ND)軸における(110)<001>理想方位からのずれ角、β角は二次再結晶粒方位の圧延直角方向(TD)軸における(110)<001>理想方位からのずれ角である。板端から幅中央方向10mmまでの領域における平均結晶粒径は、その領域内に存在する結晶粒を光学顕微鏡またはマイクロスコープで観察し、測定した結晶粒の個数とその領域の面積に基づき、円相当径により求めた。
<実験2>
次に、平均結晶粒径と破断張力の関係を調査した。実験1と異なる点は以下のとおりである。今回の実験では研削は実施せず、代わりに、焼鈍分離剤を塗布した後、各鋼板端部から幅中央方向に10mmの範囲にホウ酸水溶液をノズルで追加吹付けし、その後に焼き付け処理を行った。その際、ホウ酸水溶液の濃度を0質量%~10質量%に変化させた。それ以外は実験1と同様の方法で実験を行った。ホウ酸水溶液を塗布したのは、ホウ素が仕上げ焼鈍中に鋼板に浸入し、二次再結晶挙動に影響を与えることを狙ったためである。
図3に、張力コーティング形成後の鋼板について、ホウ酸水溶液を吹付けた範囲(鋼板端部から幅中央方向に10mmの範囲)の平均結晶粒径と破断発生張力比との関係を示す。前記範囲の平均結晶粒径が5mm以下では破断発生張力比が大きくばらついた。しかし、平均結晶粒径が少なくとも5mm超では破断発生張力の低下を抑制できないことが分かった。また、平均結晶粒径が2~5mmの範囲では破断発生張力比のバラつきが大きく、平均結晶粒径以外の因子が影響を及ぼしていることが示唆された。
前記範囲の平均結晶粒径が2~5mmの組織を観察すると、二次再結晶粒と一次再結晶粒が混在している場合が多いことが判明した。一方、平均結晶粒径が1mm以下では、一次再結晶組織が支配的であり、平均結晶粒径が5mm超では二次再結晶組織が支配的になっていた。このように組織に変化が見られたのは、ホウ酸添加の影響と考えられる。そこで、前記範囲の平均結晶粒径が5mmと3mmのサンプルに関して、二次再結晶粒(ここではGoss方位からのずれ角が10°以内の結晶粒)の存在頻度と破断発生張力比の関係を調査した。図4に結果を示すが、二次再結晶粒の存在頻度が50%以下であれば、溝を形成した鋼板の破断発生張力の低下が抑制でき、通板性の改善が顕著になることが判明した。
<実験3>
更なる通板性改善策として、鋼板両端部の領域に意図的に溝を形成しないことを検討した。溝を形成しないと磁区細分化効果が得られないので、磁気特性が劣化する問題が発生するが、鋼板両端部では、もともと鋼板を巻き取ってコイルとして載置したときのコイル下端部ではコイル重量による座屈変形、コイル上端部ではコイル焼鈍時の過加熱による温度分布差により発生する応力起因の変形が起こり、鋼板両端部からある程度の範囲は不可避的に製品が採取できない部分となる。よって、通板性改善に必要な溝の未形成部が大きくなければ、そのような製品が採取できない部分に溝の未形成部が収まるので、実現性が高いと考え、検討を行った。
公知の方法により得た板厚0.18mm、板幅800mmの冷間圧延板に公知のグラビアオフセット印刷によりレジストインクを塗布した。その際、鋼板の圧延方向と交差する方向に延在する未塗布部を有する塗布パターンとし、かつ、鋼板両端部に関しては意図的に鋼板両端から幅中央方向に0~15mmの範囲で前記未塗布部を形成しない範囲を設けた。すなわち、その後の電解エッチングにより、鋼板両端から幅中央方向に0~15mmの範囲に溝が形成されない溝未形成部が形成されるように塗布パターンを調整した。その後、電解エッチングおよびアルカリ液中でのレジスト剥離により、幅:200μm、深さ:25μmの線状溝を、圧延方向と直交する向きに対し7.5°の傾斜角度にて4.5mm間隔で形成した。ついで、エッジヒーターにより鋼板両端部から幅中央方向に10mmの範囲に対して追加加熱処理を行い、その部分のインヒビター状態および一次再結晶粒径を変化させた。その後、雰囲気酸化度P(HO)/P(H)=0.55、均熱温度:840℃で60秒保持する脱炭焼鈍を施したのち、公知の方法で焼鈍分離剤塗布、仕上げ焼鈍、張力コーティング塗布などを行って製品とした。なお、破断発生張力の評価は実験1、2と同じ方法で実施した。
図5に、溝未形成部の鋼板両端部から幅中央方向への幅と破断発生張力比との関係を示す。今回の評価サンプルは、エッジヒーターで加熱した両端部より10mmの範囲の組織は、二次再結晶粒の存在頻度が20%、平均結晶粒径が4mmであった。図5に示すように、溝未形成部がなくても(溝未形成部の幅が0mm)、溝を形成した鋼板の破断発生張力の大幅な低下は抑制され、通板性の大幅劣化は抑制されているが、鋼板端部からの溝未形成部の幅を1mm以上とすることで、溝を形成した鋼板の破断発生張力の低下がより抑制され、通板性の劣化が抑制されることが明らかになった。鋼板端部からの溝未形成部の幅は、好ましくは2mm以上である。
<実験4>
鋼板の端部領域の組織改善により、通板性は大幅に改善することが明らかになったが、二次再結晶組織中の溝形成挙動の改善によりさらに改善が可能かの検討を行った。溝形成は、図6(c)に示すように1本の連続溝(圧延方向と交差する方向に途切れなく連続的に延在する溝)で形成される場合もあるが、レーザ照射などでレジストを剥離した後エッチングで溝を形成する場合は複数のレーザ照射装置を使用して線状のレジスト剥離をつなぎ合わせる場合もある。すなわち、それぞれの照射装置から照射されるレーザが鋼板全幅にわたって走査される必要はなく、各照射装置による走査範囲の和が、鋼板全幅をカバーするように製造すればよい。この場合、溝の延伸方向に対して溝が不連続となる部分が生じる。この場合、図6(b)のように溝を形成すると鉄損が劣化するために、図6(a)に示すように板幅方向に隣り合う溝が、溝幅方向と直交する投影面上で重なるように溝を形成するのが一般的である。なお、以下、板幅方向に隣り合う溝を、溝幅方向と直交する投影面上に投射したときに溝同士が重なる領域をラップ部という(図6(a)参照)。ラップ部を有するように溝を形成した場合、ラップ部では板厚が薄い領域が大きくなるため、通板性が劣化する可能性があると考え、不連続な溝形成と通板性の関係を調査することとした。
表面にレジストインクを塗布した公知の方法により得た板厚0.20mm、板幅1200mmの冷間圧延板に公知のレーザ加工法で3台のレーザ発振器を用いて、隣接する溝とのラップ代を変化させながら溝形成を行った。ここで、ラップ代(%)とは、(ラップ幅/溝幅)×100で示され、前記ラップ幅は、幅方向に隣接する溝同士が溝幅方向で重なった場合の溝幅方向の重なり幅を示す(図6(c)の下側の図および図7のラップ部の拡大図を参照)。例えば、図6(c)の上側の図のように、隣接する溝が溝幅方向に完全に重なった場合はラップ代は100%であり、図6(a)のように板幅方向に隣接する溝同士が溝幅方向に離間している場合はラップ代は0%となる。溝は、幅:50μm、深さ(板厚方向):15μmの線状溝を、圧延方向と直交する向きに対し3.0°の傾斜角度にて圧延方向に3.0mm間隔で形成した。ついで、エッジヒーターにより鋼板両端部から幅中央方向に10mmの範囲に対して追加加熱処理を行い、その部分のインヒビター状態および一次再結晶粒径を変化させた。その後、雰囲気酸化度P(HO)/P(H)=0.55、均熱温度:840℃で60秒保持する脱炭焼鈍を施したのち、公知の方法で焼鈍分離剤塗布、仕上げ焼鈍、張力コーティング塗布などを行って製品とした。なお、破断発生張力の評価は実験1、2と同じ方法で実施した。エッジヒーターで加熱した各端部より幅中央方向10mmの範囲の組織は、二次再結晶粒の存在頻度が5%、平均結晶粒径が2mmであった。
評価結果を図8に示す。図6(a)のような隣接する溝の端部同士が重ならないラップ部(ラップ代0%)が存在することで、破断発生張力比は低下する(通板性が劣化)する傾向が認められたが、ラップ代が大きくなるにつれて破断発生張力比の低下が抑制された。以上より、ラップ代は5%以上が好ましく、より好ましくは、連続溝(ラップ代100%)を形成することであることが判明した。
以上の結果を踏まえ、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
[方向性電磁鋼板]
本発明は、表面に溝が形成された方向性電磁鋼板に関するものである。以下、本発明の方向性電磁鋼板の鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。前記方向性電磁鋼板としては、特に限定されず任意のものを用いることができるが、鉄損低減の観点からSiを2.0~8.0質量%の範囲で含有する成分組成を有することが好ましく、加えて通板性の観点からSiを2.5~4.5質量%の範囲で含有する成分組成を有することがより好ましい。
なお、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)として好適な、Si以外の成分組成は、次のとおりである。勿論、以下の成分組成に限定されることはなく、どのような電磁鋼板であっても本発明の適用により適用前の鋼板よりも通板性は確実に改善される。
C:0.01~0.08質量%
Cは、一次再結晶時の集合組織の改善のために必要な元素であり、その効果を得るためには0.01質量%以上含有させるのが好ましい。一方、Cが0.08質量%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.0050質量%以下に低減することが難しくなる。よって、Cは0.01~0.08質量%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.03~0.07質量%の範囲である。
Mn:0.005~1.0質量%
Mnは、熱間加工性を改善するのに有効な元素であるが、0.005質量%未満では、上記効果は得られず、一方、1.0質量%を超えると、磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005~1.0質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.010~0.2質量%の範囲である。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材の上記成分以外の基本成分は、二次再結晶を起こさせるためにインヒビターを利用する場合と、利用しない場合とで別れる。
二次再結晶を起こさせるためにインヒビターを用いる場合には、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNをそれぞれAl:0.01~0.065質量%、N:0.005~0.012質量%の範囲で含有させることが好ましく、また、MnS・MnSe系インヒビターを利用するときには、Seおよび/またはSを、それぞれS:0.005~0.03質量%、Se:0.005~0.03質量%の範囲で含有させることが好ましい。
一方、二次再結晶を起こさせるためにインヒビターを利用しない場合には、インヒビター形成成分であるAl、N、SおよびSeは、それぞれAl:0.0100質量%以下、N:0.0050質量%以下、S:0.0050質量%以下、Se:0.0050質量%以下に低減するのが好ましい。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材は、上記した基本成分の他に、磁気特性の改善を目的として、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.03~1.50質量%、Sn:0.01~1.50質量%、Sb:0.005~1.50質量%、Cu:0.03~3.0質量%、P:0.03~0.50質量%、Mo:0.005~0.10質量%およびCr:0.03~1.50質量%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有させてもよい。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるのに有用な元素である。しかし、0.03質量%未満では上記効果が小さく、一方、1.50質量%を超えると、二次再結晶が不安定となり、磁気特性が劣化する。また、Sn、Sb、Cu、P、MoおよびCrは、磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれも上記の各下限値未満では磁気特性向上効果が小さく、一方、上記した各上限値を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害されるようになるため、それぞれ上記範囲で含有させることが好ましい。
本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材において、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、Cは一次再結晶焼鈍で脱炭され、Al、N、SおよびSeは仕上げ焼鈍において純化されるため、仕上げ焼鈍後の鋼板(製品である方向性電磁鋼板)では、これらの成分は不可避的不純物程度の含有量に低減される。
[加熱]
上記成分組成を有するスラブを、常法に従い加熱する。加熱温度は、1150~1450℃が好ましい。
[熱間圧延]
上記加熱後に、熱間圧延を行う。鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延を行ってもよい。薄鋳片の場合には、熱間圧延を行うこととしてもよく、あるいは、熱間圧延を省略してもよい。熱間圧延を実施する場合は、粗圧延最終パスの圧延温度を900℃以上、仕上げ圧延最終パスの圧延温度を700℃以上で実施することが好ましい。
[熱延板焼鈍]
その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。このとき、ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度として800~1100℃の範囲が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると、熱間圧延でのバンド組織が残留し、整粒した一次再結晶組織を実現することが困難になり、二次再結晶の発達が阻害される。一方、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の結晶粒径が粗大化しすぎるために、整粒した一次再結晶組織の実現が極めて困難となる。
[冷間圧延]
その後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施す。中間焼鈍温度は800℃以上1150℃以下が好適である。また、中間焼鈍時間は、10~100秒程度とすることが好ましい。
[脱炭焼鈍]
その後、脱炭焼鈍を行う。脱炭焼鈍では、焼鈍温度を750~900℃とし、酸化性雰囲気P(HO)/P(H)を0.25~0.60とし、焼鈍時間を50~300秒程度とすることが好ましい。
[焼鈍分離剤の塗布]
その後、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤は、主成分をMgOとし、塗布量を8~15g/m程度とすることが好適である。
[仕上げ焼鈍]
その後、二次再結晶およびフォルステライト被膜の形成を目的として仕上げ焼鈍を施す。焼鈍温度は1100℃以上とし、焼鈍時間は30分以上とすることが好ましい。
[平坦化焼鈍および張力コーティング形成]
張力コーティングを形成する際のコーティング液の塗布・焼き付け処理にて平坦化焼鈍も同時に行い、形状を矯正することも可能である。平坦化焼鈍は、焼鈍温度を750~950℃とし、焼鈍時間10~200秒程度で実施するのが好適である。
なお、本発明では、平坦化焼鈍前または後に、鋼板表面に張力コーティングを形成する。ここでの張力コーティングとは、鉄損低減のために、鋼板に張力を付与するコーティング(張力コーティング)を意味する。張力コーティングとしては、絶縁性の張力コーティングが挙げられる。また、張力コーティングとしては、シリカを含有するリン酸塩系コーティングや物理蒸着法、化学蒸着法等によるセラミックコーティング等が挙げられる。
[溝形成工程]
本実施形態に係る方向性電磁鋼板への溝形成方法は、特に限定されるものではなく、レーザ法、プレス機械法、エッチング法等の公知の方法により溝を形成することができる。溝形成タイミングについても特に限定されるものではなく、最終板厚になった冷延板や脱炭焼鈍後の一次再結晶焼鈍板、あるいは仕上げ焼鈍後の二次再結晶焼鈍板いずれでも可能である。以上の3つでは、最終の平坦化焼鈍で溝加工による歪を除去できるので、工程削減の観点から好ましい。ただし、張力コーティング形成後の製品板に溝加工を行っても本発明の効果が損なわれることはない。
鋼板の両端部から幅中央方向に1mm以上の範囲に溝未形成部ができるように溝形成することで、すなわち、鋼板の両端部から幅中央方向に少なくとも1mmまでの範囲に溝が形成されないように溝形成することで、通板性はより改善する。溝未形成部は、磁気特性の劣化を招くが、例えば特許文献1に示されているようなコイル形状対策を実施しても、鋼板端部から幅中央方向に15~35mmの範囲の形状不良発生は不可避である。よって、本発明の溝未形成部の形成が新たな歩留り低下要因にはならない。また、溝は鋼板の幅方向に途切れなく、すなわち鋼板の幅方向に連続的に形成させる方が、板厚の薄い領域の割合が減少するので、通板性改善にはより好適である。
[鋼板(コイル)端部微細化工程]
本発明の最も重要なポイントは、(a)鋼板(コイル)両端の機械強度アップが有効であり、鋼板両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲において、鋼板組織を平均結晶粒径5mm以下に微細化させること、(b)微細化していても各結晶粒の方位がほぼ同じ場合、すべり系が同じになるため、ある一定の方向に対する耐力しかアップしないので、できる限りランダムな結晶方位であることが好ましいことから、少なくともGoss方位からのずれ角が10°以下の結晶粒の存在頻度を50%以下とすることである。
この平均結晶粒径を5mm以下およびGoss方位からのずれ角が10°以下の結晶粒の存在頻度を50%以下にする方法は特に限定されないが、二次再結晶挙動に影響を与える手段を採用し、一次再結晶粒の正常粒成長を促進させることが、より好ましい。二次再結晶粒に影響を与える手段としては、(a)サブスケール性状を研削やレーザ照射による酸化によって変化させ、仕上げ焼鈍時の窒化やインヒビターの分解挙動を、鋼板端部の特定範囲のみ変化させること、(b)鋼板端部の対象範囲のみに、焼鈍分離剤塗布工程中に、二次再結晶に影響をあたえる元素として知られているBやTi、Sr、Snなどを新たに添加する。あるいは既に添加されている場合は添加量を変化させる。添加量を変化させる手法も特には限定されないが、一度全面に通常の焼鈍分離剤を塗布し、その後ノズルなどから鋼板端部の対象範囲に追加で上記元素を供給することが好適である。(c)インヒビター性状および一次再結晶粒径を粗大化させることも有効で、手法としては、エッジヒーターなどを用いて鋼板端部領域のみ過加熱状態にしたり、熱延板焼鈍や一次再結晶焼鈍時に鋼板(コイル)両端部側から加熱したりすることで、鋼板幅方向に温度傾斜をつけ、鋼板端部領域を過加熱状態にすることも有効である。なお、通板性改善に必要な微細化範囲(微細結晶組織の領域)は鋼板端部からの幅で10mmあれば十分であり、先にも述べたが仕上げ焼鈍の実施により、コイルには両端15~35mmの形状不良発生は不可避である。よって、上述のような溝未形成部を形成しても新たな歩留り低下要因にはならない。なお、上記平均結晶粒径は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。上記結晶粒の存在頻度は、好ましくは35%以下であり、より好ましくは20%以下である。また、微細化範囲の上限は特に限定されないが、例えば、鋼板の両端から幅中央方向に35mmの範囲の組織を微細化することができ、鋼板の両端から幅中央方向に25mmの範囲の組織を微細化することができる。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更することが可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
方向性電磁鋼板としては、C:0.02質量%、Si:3.25質量%、Mn:0.09質量%、Al:0.012質量%、N:0.008質量%、S:0.005質量%およびSe:0.01質量%からなる成分組成を有し、インヒビター形成成分を含む鋼スラブを常法に従って熱間圧延し、900℃、60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して0.23mmの冷延板とした。その後、(a)グラビアオフセット印刷+電解エッチング法、(b)突起ロール法、および(c)レーザ加工法(レーザ照射+電解エッチング)により溝を形成させた。形成した溝の、溝幅、溝深さ、ラップ部の有無、ラップ代といった溝形状に関する情報を表1、2に記載した。
ついで、均熱温度830℃で300秒保持する脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶・フォルステライト被膜形成および純化を目的とした仕上げ焼鈍を1200℃、30時間の条件で実施した。そして、未反応分離剤を除去した後に、60質量%のコロイダルシリカとリン酸アルミニウムからなるコーティング液を塗布し、800℃にて焼付けて、張力コーティングを形成した。このコーティング塗布処理は、平坦化焼鈍も兼ねている。
鋼板両端部領域の細粒化手段としては、(a)脱炭焼鈍後の対象範囲へのレーザ照射による追加酸化処理、(b)焼鈍分離剤塗布後の対象範囲へのTiOの追加添加、(c)熱延板焼鈍後にエッジヒーターにて鋼板端部を均熱時間20秒の追加熱処理をすることで実現した。細粒化範囲やGoss方位からのずれ10°以下となる結晶粒の存在頻度は、レーザ照射範囲・レーザ照射エネルギー、追加TiOの塗布範囲・塗布量、追加加熱範囲・加熱温度をそれぞれ変更させることで実現した。仕上げ焼鈍後の鋼板よりサンプルを採取し、細粒化(微細化)範囲(微細結晶組織の領域)や平均結晶粒径、Goss方位からのずれ角が10°以下の結晶粒頻度を実験1で述べた方法と同様の方法で評価した。
表1、2に示す細粒化範囲の組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)は、両端から幅中央方向10mmまでの微細化された組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)をそれぞれ示す。なお、鋼板の幅方向の一方の端(端1)から幅中央方向10mmまでの組織と、鋼板の幅方向の他方の端(端2)から幅中央方向10mmまでの組織において、平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)が異なる場合には、それぞれの最大値を示す。また、微細化された組織が両端から幅中央方向10mm未満である場合は、両端から幅中央方向10mmまでの領域のうち微細化された組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)を示す。例えば、表1のNo.1-7の細粒化範囲の組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)は、端1から幅中央方向5mmまでの組織と、端2から幅中央方向5mmまでの組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)それぞれの最大値を示し、No.1-9の細粒化範囲の組織における平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)は、端1から幅中央方向10mmまでの組織の平均結晶粒径(mm)、Goss方位からのずれ角10°以下の結晶粒の存在頻度(%)をそれぞれ示す。
ここでは、仕上げ焼鈍後(途中工程材)、張力コーティング形成後(製品板)の破断発生張力(溝未形成の鋼板の破断発生張力に対する比)を調査した。評価結果を表1、2に示す。なお、表1、2に示す破断発生張力比は、上記仕上げ焼鈍後と張力コーティング形成後の破断発生張力のうち、大きい方の値を用いて求めたものである。なお、この破断発生張力比は1に近い方が破断発生張力が高く、通板性が良好と評価できる。
表1、2に示した結果から分かるように、本発明の要件を満たす方向性電磁鋼板は、溝の形成方法や鋼板端部領域の細粒化方法によらず、本発明範囲外のものよりも破断発生張力比が高く、良好な通板性を有していることが分かる。
Figure 0007147810000001
Figure 0007147810000002

Claims (3)

  1. 圧延方向と交差する方向に延在しかつ溝深さ方向が板厚方向となる溝が表面に形成された方向性電磁鋼板であって、
    前記鋼板の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも10mmまでの範囲の組織が微細化されてなり、
    前記両端から幅中央方向10mmまでの微細化された組織は、平均結晶粒径が5mm以下であり、かつ、Goss方位からのずれ角が10°以下となる結晶粒の存在頻度が50%以下である、方向性電磁鋼板。
  2. 鋼板表面の幅方向の両端から幅中央方向に少なくとも1mmまでの範囲には、溝が形成されていない、請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
  3. 鋼板表面に形成された溝が、連続的に圧延方向と交差する方向に延在する、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板。
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