本発明の一実施形態による無効電力補償装置について図1から図6を用いて説明する。まず、本実施形態による無効電力補償装置PCDの全体構成について図1及び図3を用いて説明する。図1では、理解を容易にするため、無効電力補償装置PCDが連系される電力系統と、電力系統に接続される負荷が併せて図示されている。
(無効電力補償装置)
図1に示すように、無効電力補償装置PCDが連系される電力系統2は、三相交流電源21と、三相交流電源21に接続された系統インピーダンス23とを有している。電力系統2には、アーク炉(負荷の一例)4が接続されている。
アーク炉4は動作中に、点弧期、ボーリング期、溶解期及び溶解末期などの複数の状況を有する。アーク炉4は、状況によらずにアークの状態を一定にするため、アークの状態を例えば電圧及び電流によって監視している。アーク炉4は、このアークの状態を監視するための電圧及び電流の少なくとも一方の情報を含む炉状況信号sigを制御装置1(詳細は後述)に所定周期(例えば1分周期)で出力するように構成されている。詳細は後述するが、制御装置1は、入力される炉状況信号sigに基づいて、電圧フリッカを補償するための補償ゲインを選択するように構成されている。
図1に示すように、本実施形態による無効電力補償装置PCDは、電力系統2に連系されて電力系統2に接続されたアーク炉4の無効電力に起因する電圧フリッカを補償する補償回路3と、本実施形態による制御装置1(詳細は後述)とを備えている。無効電力補償装置PCDは、電力系統2の系統インピーダンス23とアーク炉4との間に設置されている。
無効電力補償装置PCDは、電力系統の系統電圧Vsを降圧する電圧変成器(Potential Transformer:PT)5と、アーク炉4に流れる負荷電流Ifを低電圧かつ小電流に変成する電流変成器(Current Transformer:CT)7と備えている。電圧変成器5は、降圧した系統電圧Vsを制御装置1に出力するようになっている。電流変成器7は、変成した負荷電流Ifを制御装置1に出力するようになっている。詳細は後述するが、制御装置1は、入力される系統電圧Vs及び負荷電流Ifを用いて、無効電力を演算したり、電力系統2に発生することが予測される電圧フリッカである予測電圧フリッカを演算したりするように構成されている。
無効電力補償装置PCDは、電力系統2に発生する電圧フリッカを測定するフリッカメータ9を有している。フリッカメータ9は、補償回路3と電力系統2との接続ノードNで電力系統2に接続されている。無効電力補償装置PCDは、フリッカメータ9で測定される電圧フリッカが小さくなるように、制御装置1によって補償回路3を制御するようになっている。
ところで、フリッカメータ9で測定される電圧フリッカはΔV10とも呼ばれている。電圧フリッカΔV10は、電気学会技術報告書II部72号によると、電圧変動を1分間について周波数分析した結果得られる変動周波数fnの電圧変動成分の変動幅をΔVn、変動周波数fnに対応する視感度係数をanとすると、以下の式(1)によって定義される。また、図3に示すように、視感度係数anは、正弦波状電圧変動の変動周波数fn(Hz)に対して定義されている。
図1に示すように、補償回路3は、他励式の静止型フリッカ補償回路で構成されている。補償回路3は、系統インピーダンス23とアーク炉4との間に接続されて複数のリアクトル及びサイリスタを有する第一デルタ結線回路31を有している。また、補償回路3は、系統インピーダンス23とアーク炉4との間に接続されて複数のコンデンサを有する第二デルタ結線回路33を有している。
図2に示すように、第一デルタ結線回路31は、デルタ結線された第一直列回路311、第二直列回路313及び第三直列回路315を有している。第一直列回路311は、リアクトル311aと、リアクトル311aに直列に接続されたサイリスタ回路311bと、サイリスタ回路311bに直列に接続されたリアクトル311cとを有している。サイリスタ回路311bは、互いに逆並列に接続された2つのサイリスタを有している。第二直列回路313は、リアクトル313aと、リアクトル313aに直列に接続されたサイリスタ回路313bと、サイリスタ回路313bに直列に接続されたリアクトル313cとを有している。サイリスタ回路313bは、互いに逆並列に接続された2つのサイリスタを有している。第三直列回路315は、リアクトル315aと、リアクトル315aに直列に接続されたサイリスタ回路315bと、サイリスタ回路315bに直列に接続されたリアクトル315cとを有している。サイリスタ回路315bは、互いに逆並列に接続された2つのサイリスタを有している。
サイリスタ回路311bに接続されていない方のリアクトル311aの端子は、サイリスタ回路315bに接続されていない方のリアクトル315cの端子に接続されている。サイリスタ回路315bに接続されていない方のリアクトル315aの端子は、サイリスタ回路313bに接続されていない方のリアクトル313cの端子に接続されている。サイリスタ回路313bに接続されていない方のリアクトル313aの端子は、サイリスタ回路311bに接続されていない方のリアクトル311cの端子に接続されている。このように、第一直列回路311、第二直列回路313及び第三直列回路315は、デルタ結線されている。
図2に示すように、第二デルタ結線回路33は、デルタ結線されたコンデンサ331、コンデンサ333及びコンデンサ335を有している。コンデンサ331の一方の電極は、コンデンサ335の一方の電極に接続されている。コンデンサ335の他方の電極は、コンデンサ333の一方の電極に接続されている。コンデンサ333の他方の電極は、コンデンサ331の他方の電極に接続されている。このように、コンデンサ331、コンデンサ333及びコンデンサ335は、デルタ結線されている。
第一デルタ結線回路31のリアクトル311a及びリアクト315cの接続ノードと、第二デルタ結線回路33のコンデンサ331及びコンデンサ335の接続ノードとは、接続されて例えば電力系統2(図1参照)のU相に接続されている。第一デルタ結線回路31のリアクトル313a及びリアクト311cの接続ノードと、第二デルタ結線回路33のコンデンサ333及びコンデンサ331の接続ノードとは、接続されて例えば電力系統2(図1参照)のV相に接続されている。第一デルタ結線回路31のリアクトル315a及びリアクト313cの接続ノードと、第二デルタ結線回路33のコンデンサ335及びコンデンサ333の接続ノードとは、接続されて例えば電力系統2(図1参照)のW相に接続されている。このように、第一デルタ結線回路31及び第二デルタ結線回路33は、Δ(デルタ)-Δ(デルタ)結線されて電力系統2に接続されている。
第一デルタ結線回路31に設けられたサイリスタ回路311bを構成するサイリスタ、サイリスタ回路313bを構成するサイリスタ及びサイリスタ回路315bを構成するサイリスタは、制御装置1から出力される点弧角(制御値の一例)αに基づいてオン/オフ状態が制御される。
補償回路3は、第一直列回路311、第二直列回路313及び第三直列回路315がスター結線された第一スター結線回路と、コンデンサ331、コンデンサ333及びコンデンサ335がスター結線された第二スター結線回路とを有していてもよい。この場合、当該第一スター結線回路と当該第二スター結線回路は、Y(スター)-Y(スター)結線されて電力系統2に接続されていてもよい。また、補償回路3は、Y-Δ結線されて電力系統2に接続された当該第一スター結線回路及び第二デルタ結線回路33を有していてもよい。また、補償回路3は、Δ-Y結線されて電力系統2に接続された第一デルタ結線回路31及び当該第二スター結線回路を有していてもよい。
ここで、補償回路3の動作について説明する。以下、アーク炉4が発生する無効電力Qf、電力系統2の無効電力Qs、補償回路3の無効電力Qtの参照符号「Qf」、「Qs」及び「Qt」を各電力の値としても用いる場合がある。
アーク炉4が発生する無効電力Qfが変動すると、電力系統2と補償回路3との接続ノードNにおいて電圧変動が生じて電圧フリッカVFが発生する。電圧フリッカVFは、以下の式(2)で表すことができる。式(2)における「XL」は、系統インピーダンス23のリアクタンス分(p.u.)を示している。
VF=XL×Qs ・・・(2)
無効電力補償装置PCDは、接続ノードNでの電圧フリッカVFを低減するために、アーク炉4で発生する無効電力Qfに比例し補償回路3に流入する無効電力Qtを制御する。電力系統2の無効電力Qsは、以下の式(3)で表すことができる。
Qs=Qf-Qt ・・・(3)
式(2)及び式(3)から明らかなように、接続ノードNでの電圧フリッカVFは、補償回路3に流入する無効電力Qtと、アーク炉4で発生する無効電力Qfとが同一となるように補償回路3を制御することによってゼロにすることができる。そこで、無効電力補償装置PCDは、制御装置1において、電力系統2から取得した系統電圧Vs及び負荷電流Ifと、アーク炉4の状況とに基づいて演算された点弧角αを用いてサイリスタ35を制御し、電圧フリッカVFを低減するようになっている。
(制御装置)
次に、本実施形態による制御装置1の詳細な構成について図1を参照しつつ図4を用いて説明する。図4では、理解を容易にするため、電力系統2に接続されたアーク炉4と、無効電力補償装置PCDに設けられた電圧変成器5及び電流変成器7が併せて図示されている。また、制御装置1は、各相の所定電圧及び所定電流に基づいて、補償回路3に設けられたサイリスタ回路311b,313b,315b(図2参照)をそれぞれ個別に制御するように構成されている。制御装置1は、サイリスタ回路311b,313b,315bのいずれも同様の動作で制御するため、以下、サイリスタ回路311b,313b,315bを区別せずに説明する。
図4に示すように、制御装置1は、電力系統2(図1参照)に接続されたアーク炉(負荷の一例)4に起因して発生すると予測される予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3を、アーク炉4が発生する無効電力Qfを補償する補償ゲインの予備となる複数の予備ゲインごとに演算する予測電圧フリッカ演算部11を備えている。また、制御装置1は、現状のアーク炉4に対応するゲインを補償ゲインの初期値である初期ゲインに設定する初期ゲイン設定部13を備えている。ここで、現状のアーク炉4とは、動作中のアーク炉4の現在の状況をいう。つまり、本実施形態では、現状のアーク炉4には、現在が点弧期、ボーリング期、溶解期及び溶解末期などの状況が存在する。
また、制御装置1は、アーク炉4の状態に基づいて、予測電圧フリッカ演算部11で演算された複数(本実施形態では3つ)の予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3に対応する複数(本実施形態では3つ)の予備ゲイン及び初期ゲイン設定部13で設定された初期ゲインの中から補償ゲインを選択する補償ゲイン選択部15を備えている。ここで、アーク炉4の状態とは、アーク炉4が同一の状況が継続した状態及び異なる状況に変化した状態のいずれかをいう。アーク炉4の状態として、例えばアーク炉4が点弧期を継続している状態やアーク炉4が点弧期からボーリング期に変化した状態などがある。予測電圧フリッカ演算部11、初期ゲイン設定部13及び補償ゲイン選択部15の詳細は後述する。
制御装置1は、電力系統2の系統電圧Vs及びアーク炉4に流れる負荷電流Ifに基づいて無効電力Qを演算する無効電力演算回路(無効電力演算部の一例)12を備えている。また、制御装置1は、補償ゲイン選択部15で選択された補償ゲインを無効電力演算回路12で演算された無効電力Qに乗算するゲイン乗算回路(ゲイン乗算部)14を備えている。さらに、制御装置1は、ゲイン乗算回路14で補償ゲインが乗算された無効電力KQを用いて補償回路3(図1参照)を制御する点弧角(制御値の一例)αを演算する点弧角演算回路(制御値演算部の一例)16を備えている。
より具体的に、無効電力演算回路12は、電圧変成器5で検出されて降圧された系統電圧Vsと、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifとが入力される。無効電力演算回路12は、入力された系統電圧Vs及び負荷電流Ifを用いて無効電力を演算し、演算した無効電力をゲイン乗算回路14及び予測電圧フリッカ演算部11に出力するように構成されている。
ゲイン乗算回路14は、補償ゲインを記憶する記憶部(不図示)を有している。当該記憶部には、補償ゲイン選択部15から入力される補償ゲインKが記憶される。ゲイン乗算回路14は、無効電力演算回路12から無効電力Qが入力されると、入力された無効電力Qに当該記憶部から読み出した補償ゲインKを乗じた無効電力KQを点弧角演算回路16に出力するように構成されている。
点弧角演算回路16は、ゲイン乗算回路14から入力された無効電力KQに基づいて、補償回路3に設けられたサイリスタ35(図1参照)を制御するための点弧角αを演算する。点弧角演算回路16が演算して決定する点弧角αは、ゲイン乗算回路14から入力された無効電力KQに相当する無効電力Qtが補償回路3に流入するようにサイリスタ35を制御することができる値である。
このように、制御装置1は、検出された系統電圧Vs及び負荷電流Ifを用いて演算された無効電力Qに補償ゲインを乗じた無効電力KQに基づいて点弧角αを演算するようになっている。しかしながら、補償ゲインの最適値は、アーク炉4の状況によって変動する。このため、制御装置1は、アーク炉4の状況に基づいて、最適な補償ゲインを予測電圧フリッカ演算部11、初期ゲイン設定部13及び補償ゲイン選択部15によって決定するようになっている。
図4に示すように、予測電圧フリッカ演算部11は、無効電力演算回路12から無効電力Qが入力される前段演算部110aと、前段演算部110aの後段に設けられた後段演算部110bとを有している。前段演算部110aは、アーク炉4に起因する電圧フリッカVFを補償する補償回路3を模擬した補償回路モデル113a,113b,113cを有している。前段演算部110aは、補償回路3に流れると予測される予測電流It1,It2,It3を複数(本実施形態では3つ)の予備ゲイン及び補償回路モデル113a,113b,113cに基づいて複数の予備ゲインごとに演算するようになっている。
後段演算部110bは、電力系統2を模擬したモデルであって前段演算部110aで演算された予測電流It1,It2,It3を用いて電力系統2に発生すると予測される予測電圧V1,V2,V3を複数(本実施形態では3つ)の予測電流It1,It2,It3ごとに演算する系統モデル115a,115b,115cを有している。後段演算部110bは、系統モデル115a,115b,115cが演算した複数の予測電圧V1,V2,V3ごとに予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3を演算するようになっている。
前段演算部110aは、複数の予備ゲインを無効電力Qにそれぞれ乗算する予備ゲイン乗算回路(予備ゲイン乗算部の一例)111a,111b,111cを有している。また、前段演算部110aは、補償回路3を制御する点弧角αの予測値であって補償回路モデル113a,113b,113cに入力する点弧角予測値(制御予測値の一例)α1,α2,α3を、予備ゲイン乗算回路111a,111b,111cで予備ゲインがそれぞれ乗算された無効電力K1Q,K2Q,K3Qごとに演算する点弧角予測値演算回路(制御予測値演算部の一例)112a,112b,112cを有している。
より具体的に、前段演算部110aに設けられた予備ゲイン乗算回路111aには、無効電力演算回路12から出力された無効電力Qが入力されるようになっている。予備ゲイン乗算回路111aは、例えばゲイン乗算回路14と同一の構成を有している。予備ゲイン乗算回路111aは、予備ゲインを記憶する記憶部(不図示)を有している。当該記憶部には、補償ゲイン選択部15で選択された補償ゲインと同じ値の予備ゲインK1が記憶される。このため、予備ゲイン乗算回路111aは、ゲイン乗算回路14に記憶されている補償ゲインKと同じ値の予備ゲインを記憶する。ゲイン乗算回路14に記憶されている補償ゲインKは、補償回路3のサイリスタ35を制御している現時点の点弧角αの元になった補償ゲインである。予備ゲイン乗算回路111aは、無効電力演算回路12から無効電力Qが入力されると、入力された無効電力Qに当該記憶部から読み出した予備ゲインK1を乗じた無効電力K1Qを点弧角予測値演算回路112aに出力するように構成されている。
点弧角予測値演算回路112aは、例えば点弧角演算回路16と同一の構成を有している。点弧角予測値演算回路112aは、予備ゲイン乗算回路111aから入力された無効電力K1Qに基づいて、補償回路3に設けられたサイリスタ35を制御するための点弧角予測値α1を演算する。点弧角予測値演算回路112aが演算して決定する点弧角予測値α1は、予備ゲイン乗算回路111aから入力された無効電力K1Qに相当する無効電力Qtが補償回路3に流入するようにサイリスタ35を制御することができる値である。点弧角予測値演算回路112aは、演算した点弧角予測値α1を補償回路モデル113aに出力する。
補償回路モデル113aは、点弧角予測値演算回路112aから入力される点弧角予測値α1によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れると予測される予測電流It1を演算する。補償回路モデル113aは、補償回路3を模擬したモデルである。このため、補償回路モデル113aは、点弧角予測値α1によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れる電流を予測することができる。点弧角予測値α1を演算するために元となった予備ゲインK1は、ゲイン乗算回路14に記憶されている補償ゲインKと同じ値である。つまり、点弧角予測値α1の値は、補償回路3のサイリスタ35を制御している現時点の点弧角αとほぼ同じ値である。このため、補償回路モデル113aが演算した予測電流It1の値は、補償回路3に現時点で流れている電流とほぼ同じ値となる。
前段演算部110aに設けられた予備ゲイン乗算回路111bには、無効電力演算回路12から出力された無効電力Qが入力されるようになっている。予備ゲイン乗算回路111bは、例えば予備ゲイン乗算回路111aと同一の構成を有している。予備ゲイン乗算回路111bは、予備ゲインを記憶する記憶部(不図示)を有している。当該記憶部には、予備ゲイン乗算回路111aに記憶された予備ゲインK1とは異なる値の予備ゲインK2が記憶される。予備ゲインK2は、例えば予備ゲインK1に所定値G(例えば0.1)を加算した値である。予備ゲイン乗算回路111bは、無効電力演算回路12から無効電力Qが入力されると、入力された無効電力Qに当該記憶部から読み出した予備ゲインK2を乗じた無効電力K2Qを点弧角予測値演算回路112bに出力するように構成されている。
点弧角予測値演算回路112bは、例えば点弧角予測値演算回路112aと同一の構成を有している。点弧角予測値演算回路112bは、予備ゲイン乗算回路111bから入力された無効電力K2Qに基づいて、補償回路3に設けられたサイリスタ35を制御するための点弧角予測値α2を演算する。点弧角予測値演算回路112bが演算して決定する点弧角予測値α2は、予備ゲイン乗算回路111bから入力された無効電力K2Qに相当する無効電力Qtが補償回路3に流入するようにサイリスタ35を制御することができる値である。点弧角予測値演算回路112bは、演算した点弧角予測値α2を補償回路モデル113bに出力する。
補償回路モデル113bは、点弧角予測値演算回路112bから入力される点弧角予測値α2によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れると予測される予測電流It2を演算する。補償回路モデル113bは、補償回路3を模擬したモデルである。このため、補償回路モデル113bは、点弧角予測値α2によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れる電流を予測することができる。点弧角予測値α2を演算するために元となった予備ゲインK2は、予備ゲインK1よりも大きい値である。このため、補償回路モデル113bが演算した予測電流It2の電流量は、補償回路3に現時点で流れている電流の電流量と異なる値となる。
前段演算部110aに設けられた予備ゲイン乗算回路111cには、無効電力演算回路12から出力された無効電力Qが入力されるようになっている。予備ゲイン乗算回路111cは、例えば予備ゲイン乗算回路111aと同一の構成を有している。予備ゲイン乗算回路111cは、予備ゲインを記憶する記憶部(不図示)を有している。当該記憶部には、予備ゲイン乗算回路111aに記憶された予備ゲインK1とは異なる値の予備ゲインK3が記憶される。予備ゲインK3は、例えば予備ゲインK2における所定値と同じ値(例えば0.1)を予備ゲインK1から減算した値である。予備ゲイン乗算回路111cは、無効電力演算回路12から無効電力Qが入力されると、入力された無効電力Qに当該記憶部から読み出した予備ゲインK3を乗じた無効電力K3Qを点弧角予測値演算回路112cに出力するように構成されている。
点弧角予測値演算回路112cは、例えば点弧角予測値演算回路112aと同一の構成を有している。点弧角予測値演算回路112cは、予備ゲイン乗算回路111cから入力された無効電力K3Qに基づいて、補償回路3に設けられたサイリスタ35を制御するための点弧角予測値α3を演算する。点弧角予測値演算回路112cが演算して決定する点弧角予測値α3は、予備ゲイン乗算回路111cから入力された無効電力K3Qに相当する無効電力Qtが補償回路3に流入するようにサイリスタ35を制御することができる値である。点弧角予測値演算回路112cは、演算した点弧角予測値α3を補償回路モデル113cに出力する。
補償回路モデル113cは、点弧角予測値演算回路112cから入力される点弧角予測値α3によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れると予測される予測電流It3を演算する。補償回路モデル113cは、補償回路3を模擬したモデルである。このため、補償回路モデル113cは、点弧角予測値α3によってサイリスタ35を制御した場合に補償回路3に流れる電流を予測することができる。点弧角予測値α3を演算するために元となった予備ゲインK3は、予備ゲインK1よりも小さい値である。このため、補償回路モデル113cが演算した予測電流It3の電流量は、補償回路3に現時点で流れている電流の電流量と異なる値となる。
後段演算部110bは、前段演算部110aで演算された複数(本実施形態では3つ)の予測電流It1,It2,It3のそれぞれにアーク炉4に流れる負荷電流Ifを加算して電力系統2に流れると予測される予測系統電流Is1,Is2,Is3を演算する予測系統電流演算回路(予測系統電流演算部の一例)114a,114b,114cを有している。
後段演算部110bは、予測系統電流演算回路114a,114b,114cで演算された複数の予測系統電流Is1,Is2,Is3を用いて系統モデル115a,115b,115cで算出された複数の予測電圧V1,V2,V3ごとに予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3を検出する予測電圧フリッカ検出回路(予測電圧フリッカ検出部の一例)116a,116b,116cを有している。
後段演算部110bに設けられた予測系統電流演算回路114aは、例えば加算器で構成されている。予測系統電流演算回路114aには、補償回路モデル113aから出力される予測電流It1と、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifとが入力される。予測系統電流演算回路114aは、入力される予測電流It1及び負荷電流Ifを加算した電流を予測系統電流Is1として系統モデル115aに出力するように構成されている。予測電流It1を演算するために元となった点弧角予測値α1の値は、補償回路3のサイリスタ35を制御している現時点の点弧角αとほぼ同じ値である。また、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifは、現時点でアーク炉4に流れている電流である。このため、予測系統電流演算回路114aが演算した予測系統電流Is1の値は、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isとほぼ同じ値となる。
後段演算部110bに設けられた系統モデル115aには、予測系統電流演算回路114aから出力された予測系統電流Is1が入力するようになっている。系統モデル115aは、電力系統2を模擬したモデルである。また、予測系統電流Is1は、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isとほぼ同じ電流である。このため、系統モデル115aが演算する予測電圧V1は、電力系統2に現時点で発生している系統電圧Vsとほぼ同じ電圧となる。
後段演算部110bに設けられた予測電圧フリッカ検出回路116aには、系統モデル115aが演算した予測電圧V1が入力するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116aは、フリッカメータ9(図1参照)と同様の機能を発揮するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116aは、系統モデル115aから入力された予測電圧V1を用いて予測電圧フリッカPF1を検出し、補償ゲイン選択部15に出力するように構成されている。予測電圧フリッカ検出回路116aは、予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK1を予測電圧フリッカPF1に対応付けて補償ゲイン選択部15に出力するように構成されていてもよい。また、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカ検出回路116aから予測電圧フリッカPF1が入力された場合に、予測電圧フリッカ検出回路116aの前段に設けられた予備ゲイン乗算回路111aの記憶部に記憶された予備ゲインK1を取得するように構成されていてもよい。
後段演算部110bに設けられた予測系統電流演算回路114bは、例えば加算器で構成されている。予測系統電流演算回路114bには、補償回路モデル113bから出力される予測電流It2と、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifとが入力される。予測系統電流演算回路114bは、入力される予測電流It2及び負荷電流Ifを加算した電流を予測系統電流Is2として系統モデル115aに出力するように構成されている。予測電流It2を演算するために元となった点弧角予測値α2の値は、補償回路3のサイリスタ35を制御している現時点の点弧角αと異なる値である。また、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifは、現時点でアーク炉4に流れている電流である。このため、予測系統電流演算回路114bが演算した予測系統電流Is2の電流量、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isの電流量と異なる値となる。
後段演算部110bに設けられた系統モデル115bには、予測系統電流演算回路114bから出力された予測系統電流Is2が入力するようになっている。系統モデル115bは、電力系統2を模擬したモデルである。また、予測系統電流Is2は、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isよりも大きい電流値の電流である。このため、系統モデル115bが演算する予測電圧V2は、電力系統2に現時点で発生している系統電圧Vsよりも大きい電圧となる。
後段演算部110bに設けられた予測電圧フリッカ検出回路116bには、系統モデル115bが演算した予測電圧V2が入力するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116bは、フリッカメータ9(図1参照)と同様の機能を発揮するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116bは、系統モデル115bから入力された予測電圧V2を用いて予測電圧フリッカPF2を検出し、補償ゲイン選択部15に出力するように構成されている。予測電圧フリッカ検出回路116bは、予測電圧フリッカPF2の元となった予備ゲインK2を予測電圧フリッカPF2に対応付けて補償ゲイン選択部15に出力するように構成されていてもよい。また、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカ検出回路116bから予測電圧フリッカPF2が入力された場合に、予測電圧フリッカ検出回路116bの前段に設けられた予備ゲイン乗算回路111bの記憶部に記憶された予備ゲインK2を取得するように構成されていてもよい。
後段演算部110bに設けられた予測系統電流演算回路114cは、例えば加算器で構成されている。予測系統電流演算回路114cには、補償回路モデル113cから出力される予測電流It3と、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifとが入力される。予測系統電流演算回路114cは、入力される予測電流It3及び負荷電流Ifを加算した電流を予測系統電流Is3として系統モデル115cに出力するように構成されている。予測電流It3を演算するために元となった点弧角予測値α3の値は、補償回路3のサイリスタ35を制御している現時点の点弧角αと異なる値である。また、電流変成器7で検出されて変成された負荷電流Ifは、現時点でアーク炉4に流れている電流である。このため、予測系統電流演算回路114cが演算した予測系統電流Is3の電流量は、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isの電流量と異なる値となる。
後段演算部110bに設けられた系統モデル115cには、予測系統電流演算回路114cから出力された予測系統電流Is3が入力するようになっている。系統モデル115cは、電力系統2を模擬したモデルである。また、予測系統電流Is3は、電力系統2に現時点で流れている系統電流Isよりも小さい電流値の電流である。このため、系統モデル115cが演算する予測電圧V3は、電力系統2に現時点で発生している系統電圧Vsよりも小さい電圧となる。
後段演算部110bに設けられた予測電圧フリッカ検出回路116cには、系統モデル115cが演算した予測電圧V3が入力するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116cは、フリッカメータ9(図1参照)と同様の機能を発揮するようになっている。予測電圧フリッカ検出回路116cは、系統モデル115cから入力された予測電圧V3を用いて予測電圧フリッカPF3を検出し、補償ゲイン選択部15に出力するように構成されている。予測電圧フリッカ検出回路116cは、予測電圧フリッカPF3の元となった予備ゲインK3を予測電圧フリッカPF3に対応付けて補償ゲイン選択部15に出力するように構成されていてもよい。また、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカ検出回路116cから予測電圧フリッカPF3が入力された場合に、予測電圧フリッカ検出回路116cの前段に設けられた予備ゲイン乗算回路111cの記憶部に記憶された予備ゲインK3を取得するように構成されていてもよい。
初期ゲイン設定部13は、アーク炉4の複数の状況ごとに対応付けられたゲインを記憶して設定する設定器(記憶部の一例)132と、現状のアーク炉4に対応するゲインを設定器132に設定された複数のゲインの中から初期ゲインとして選択する選択回路(選択部)131とを有している。
設定器132は、アーク炉4の複数の状況と、当該複数の状況において最適なゲインとを対応付けて設定している。設定器132は、アーク炉4の状況の一例に相当する点弧期と、点弧期に最適なゲインKo1とを対応付けて設定している。また、設定器132は、アーク炉4の状況の一例に相当するボーリング期と、ボーリング期に最適なゲインKo2とを対応付けて設定している。また、設定器132は、アーク炉4の状況の一例に相当する溶解期と、溶解期に最適なゲインKo3とを対応付けて設定している。また、設定器132は、アーク炉4の状況の一例に相当する溶解末期と、溶解末期に最適なゲインKo4とを対応付けて設定している。さらに、設定器132は、アーク炉4のその他の状況と、当該その他の状況に最適なゲインKoiとを対応付けて設定していてもよい。
選択回路131は、アーク炉4から炉状況信号sigが入力するように構成されている。炉状況信号sigには、アーク炉4の現在の状況に関する情報が含まれている。選択回路131は、アーク炉4から入力される炉状況信号sigからアーク炉4の現在の状況に関する情報を取得する。選択回路131は、炉状況信号sigから取得したアーク炉4の現在の状況と一致する状況に対応付けられたゲインを初期ゲインとして選択するように構成されている。
補償ゲイン選択部15には、予測電圧フリッカ検出回路116aから予測電圧フリッカPF1が入力され、予測電圧フリッカ検出回路116bから予測電圧フリッカPF2が入力され、予測電圧フリッカ検出回路116cから予測電圧フリッカPF3が入力される。さらに、補償ゲイン選択部15には、初期ゲイン設定部13の選択回路131から初期ゲインが入力される。補償ゲイン選択部15は、アーク炉4の状況が変化した場合には、選択回路131から入力される初期ゲインを補償ゲインKとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力するように構成されている。また、補償ゲイン選択部15は、アーク炉4の状況が維持されている場合には、入力される予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3のうちの最小値の予測電圧フリッカの元となった予備ゲインを補償ゲインKとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力するように構成されている。例えば、予測電圧フリッカPF1が予測電圧フリッカPF2,PF3よりも小さい場合、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK1を補償ゲインKとして選択する。
このように、補償ゲイン選択部15は、アーク炉4の状況が変化した場合に、アーク炉4の状況の変化に追随して変化後のアーク炉4の状況に最適な補償ゲインKを設定できる。このため、制御装置1及び無効電力補償装置PCDは、アーク炉4の状況が変化してから最適な状態で電圧フリッカを補償するまでの時間遅れを防止することができる。
(制御装置及び無効電力補償装置の動作)
次に、本実施形態による制御装置1及び無効電力補償装置PCDの動作について、図1及び図4を参照しつつ図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6において、予備ゲインK2及び予備ゲインK3を決定する際に予備ゲインK1から加減算される所定値Gは、「0.1」に設定されている。
図5中及び図6中の1段目には、補償ゲインKに対する電圧フリッカの推移の一例が示されている。図5中及び図6中の2段目には、補償ゲインKの値が示されている。図5中の3段目には、炉状況信号sigの一例が示されている。図5中の5段目及び図6中の4段目には、アーク炉4の現在の状況が示されている。図5中及び図6中の1段目において左から右に向かって時の経過が表されている。図5中及び図6中の1段目に示すグラフの横軸は時間を表し、縦軸は電圧フリッカΔV10を表している。図5中及び図6中の1段目に示す「K=0.2」、「K=0.3」、「K=0.4」、「K=0.5」、「K=0.6」、「K=0.7」及び「K=0.8」は、補償ゲインKを0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7及び0.8に設定した場合の電圧フリッカΔV10を示している。図5中及び図6中に示す「VF」は、電力系統2に発生する電圧フリッカの推移を示している。
図5に示すように、時刻t0において、補償ゲインKには0.3が設定されている。このため、予備ゲインK1は0.3となる。0.3の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、1.2Vとなる。また、予備ゲインK2は0.4(=0.3+0.1(K1+G))となる。0.4の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、1.1Vとなる。また、予備ゲインK3は0.2(=0.3-0.1(K1-G))となる。0.2の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、1.3Vとなる。時刻t0において、アーク炉4の現状は状況Aが維持されている。このため、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF2の元となった予備ゲインK2(=0.4)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図5に示すように、時刻t0において補償ゲインKが0.4に変更される。
図5に示すように、時刻t0から1分間経過した後の時刻t1において、補償ゲインKには0.4が設定されている。このため、予備ゲインK1は0.4となる。0.4の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、1.1Vとなる。また、予備ゲインK2は0.5(=0.4+0.1(K1+G))となる。0.5の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、1.05Vとなる。また、予備ゲインK3は0.3(=0.4-0.1(K1-G))となる。0.3の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、1.25Vとなる。時刻t1において、アーク炉4の現状は状況Aが維持されている。このため、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF2の元となった予備ゲインK2(=0.5)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図5に示すように、時刻t1において補償ゲインKが0.5に変更される。
図5に示すように、時刻t1から1分間を経過する前にアーク炉4の状況が状況Aから状況Bに変化したとする。
図5に示すように、時刻t1から1分間経過した後の時刻t2において、補償ゲインKは0.5には設定がされている。このため、予備ゲインK1は0.5となる。0.5の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、1.0Vとなる。また、予備ゲインK2は0.6(=0.5+0.1(K1+G))となる。0.6の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、0.9Vとなる。また、予備ゲインK3は0.4(=0.5-0.1(K1-G))となる。0.4の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、1.2Vとなる。時刻t2において、アーク炉4の現状は状況Aから状況Bに変化している。このため、補償ゲイン選択部15は、初期ゲイン設定部13の選択回路131から入力された初期ゲイン(状況Bに対応付けられたゲイン(例えば0.7))を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図5に示すように、時刻t2において補償ゲインKが0.7に変更される。
図5に示すように、時刻t2から1分間経過した後の時刻t3において、補償ゲインKは0.7には設定がされている。このため、予備ゲインK1は0.7となる。0.7の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、0.65Vとなる。また、予備ゲインK2は0.8(=0.7+0.1(K1+G))となる。0.8の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、0.75Vとなる。また、予備ゲインK3は0.6(=0.7-0.1(K1-G))となる。0.6の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、0.9Vとなる。時刻t3において、アーク炉4の現状は状況Bが維持されている。このため、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK2(=0.7)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図5に示すように、時刻t3において補償ゲインKが0.7に維持される。
図5に示すように、時刻t4から時刻t9まで、アーク炉4の現状は状況Bで維持されている。このため、制御装置1及び無効電力補償装置PCDは、時刻t4以降も時刻t3と同様に実行し、電力系統2に発生する電圧フリッカVFを低減するように動作する。
次に、初期ゲイン設定部13及び補償ゲイン選択部15を有さない場合の参考例としての制御装置及び無効電力補償装置の動作例について図6を用いて説明する。参考例としての制御装置は、初期ゲイン設定部13を有しておらず、かつ補償ゲイン選択部の構成が異なる点を除いて、制御装置1と同様の構成を有している。参考例としての制御装置に設けられた補償ゲイン選択部は、予測電圧フリッカ検出回路116a,116b,116cから入力される予測電圧フリッカのうちの最小値の予測電圧フリッカに対応する予備ゲインを補償ゲインに選択するようになっている。参考例としての制御装置の動作の説明において、理解を容易にするため、制御装置1の各構成要件の参照符号を用いて説明する。
図6に示すように、参考例としての制御装置は、時刻t0及び時刻t1において、本実施形態による制御装置1と同様に動作するため、説明は省略する。
図6に示すように、時刻t1から1分間を経過する前にアーク炉4の状況が状況Aから状況Bに変化したとする。
図6に示すように、時刻t1から1分間経過した後の時刻t2において、補償ゲインKには0.5が設定されている。このため、予備ゲインK1は0.5となる。0.5の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、1.0Vとなる。また、予備ゲインK2は0.6(=0.5+0.1(K1+G))となる。0.6の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、0.9Vとなる。また、予備ゲインK3は0.4(=0.5-0.1(K1-G))となる。0.4の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、1.2Vとなる。時刻t2において、アーク炉4の現状は状況Aから状況Bに変化している。しかしながら、参考例としての制御装置は、初期ゲイン設定部13を有していない。さらに、当該制御装置に設けられた補償ゲイン選択部は、アーク炉4の状況にかかわらず、予測電圧フリッカ検出回路116a,116b,116cから入力される予測電圧フリッカのうちの最小値の予測電圧フリッカに対応する予備ゲインを補償ゲインに選択するようになっている。このため、補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK2(=0.6)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図6に示すように、時刻t2において補償ゲインKが0.6に変更される。
図6に示すように、時刻t1から1分間を経過する前にアーク炉4の状況が状況Aから状況Bに変化したとする。
図6に示すように、時刻t2から1分間経過した後の時刻t3において、補償ゲインKには0.6が設定されている。このため、予備ゲインK1は0.6となる。0.6の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、0.95Vとなる。また、予備ゲインK2は0.7(=0.6+0.1(K1+G))となる。0.7の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、0.7Vとなる。また、予備ゲインK3は0.5(=0.6-0.1(K1-G))となる。0.5の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、1.05Vとなる。補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK2(=0.7)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図6に示すように、時刻t3において補償ゲインKが0.7に変更される。
図6に示すように、時刻t3から1分間経過した後の時刻t4において、補償ゲインKには0.7が設定されている。このため、予備ゲインK1は0.7となる。0.7の予備ゲインK1を用いて予備ゲイン乗算回路111aから予測電圧フリッカ検出回路116aによって演算された予測電圧フリッカPF1は、0.75Vとなる。また、予備ゲインK2は0.8(=0.7+0.1(K1+G))となる。0.8の予備ゲインK2を用いて予備ゲイン乗算回路111bから予測電圧フリッカ検出回路116bによって演算された予測電圧フリッカPF2は、0.85Vとなる。また、予備ゲインK3は0.6(=0.7-0.1(K1-G))となる。0.6の予備ゲインK3を用いて予備ゲイン乗算回路111cから予測電圧フリッカ検出回路116cによって演算された予測電圧フリッカPF3は、0.975Vとなる。補償ゲイン選択部15は、予測電圧フリッカが最小値の予測電圧フリッカPF1の元となった予備ゲインK1(=0.7)を補償ゲインとして選択し、ゲイン乗算回路14に出力する。その結果、図6に示すように、時刻t4において補償ゲインKが0.7に維持される。
図6に示すように、時刻t5から時刻t9まで、補償ゲインKが0.7の場合に電圧フリッカが最小値となる。このため、参考例としての制御装置は、時刻t5以降も時刻t4と同様に実行し、電力系統2に発生する電圧フリッカVFを低減するように動作する。
図5及び図6を用いて説明したように、本実施形態による制御装置1は、アーク炉4の状況が変化した後に初めて実行する無効電力補償動作において、現状のアーク炉4に最適な補償ゲインKに設定することができる。これにより、制御装置1は、アーク炉4の状況の変化に追随して変化後のアーク炉4の状況に最適な補償ゲインKを設定できる。
これに対し、初期ゲイン設定部13を有さず、補償ゲイン選択部の構成が制御装置1とは異なる参考例としての制御装置は、アーク炉4の状況が変化した後に初めて実行する無効電力補償動作において、現状のアーク炉4に最適な補償ゲインKに設定することができない。このため、参考例としての制御装置は、アーク炉4の状況の変化に追随して変化後のアーク炉4の状況に最適な補償ゲインKを設定できない。
以上説明したように、本実施形態による制御装置1は、電力系統2に接続されたアーク炉4に起因して発生すると予測される予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3を、アーク炉4が発生する無効電力Qfを補償する補償ゲインの予備となる複数の予備ゲインごとに演算する予測電圧フリッカ演算部11と、現状のアーク炉4に対応するゲインを補償ゲインの初期値である初期ゲインに設定する初期ゲイン設定部13と、アーク炉4の状態に基づいて、予測電圧フリッカ演算部11で演算された複数の予測電圧フリッカPF1,PF2,PF3に対応する複数の予備ゲイン及び初期ゲイン設定部13で設定された初期ゲインの中から補償ゲインを選択する補償ゲイン選択部15とを備えている。
当該構成を備えた制御装置1及び制御装置1を備えた無効電力補償装置PCDは、負荷の状況が変化してから最適な状態で電圧フリッカを補償するまでに時間遅れを防止することができる。これにより、制御装置1及び無効電力補償装置PCDは、電力系統2の安定動作を図ることができる。
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
上記実施形態では、補償回路3は、他励式の静止型フリッカ補償回路で構成されているが、本発明はこれに限られない。補償回路3は、他励式の他の構成の回路でもよく、自励式の回路であってもよい。
制御装置1は、予備ゲイン乗算回路などをそれぞれ3つずつ有しているが、本発明はこれに限られない。制御装置1は、予備ゲイン乗算回路などをそれぞれ4つ以上有していてもよい。
無効電力を調整する時間間隔は、1分以外の間隔であってもよい。
制御装置1及び無効電力補償装置PCDは、電力系統に接続される負荷としてアーク炉以外の状況が変化する負荷(例えば再生エネルギーを生成する装置)であっても、無効電力を補償できる。
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。