JP7135972B2 - パネル積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はパネル積層体及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、高硬度で耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いパネル積層体と、このパネル積層体を製造する方法に関する。
ディスプレイ用カバーやスマートフォン等の小型機器用カバー材料としては、透明性、機械的強度、易加工性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が用いられている。従来、各種樹脂カバーや自動車のグレージング材料等の用途において、一般的なビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に対して硬度に優れるビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂の適用についても種々提案がなされている(例えば特許文献1,2)。
しかし、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に比べて高硬度で、耐擦傷性に優れるといった利点を有するものの衝撃強度が低く、衝撃によって割れて破片が飛散しやすいという問題がある。
熱可塑性エラストマー成形品の表面硬度を高める目的で、ハードコート剤を塗布した、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性合成樹脂シートを射出成形用金型に配置した後に、熱可塑性エラストマーを射出して、ハードコート層付き合成樹脂シートの表面層を形成した熱可塑性エラストマー合成樹脂成形品(特許文献3)が提案されている。しかし、特許文献3の成形品は、熱可塑性エラストマーよりなる本体の表面にハードコート層としてポリカーボネート樹脂シートを設けるものであり、特許文献3には、本発明で用いる特定のビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂及びこのビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂でパネル本体を形成することについての記載はなく、ましてやビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂よりなるパネル本体が衝撃により割れた場合の破片の飛散の問題についての認識はなく、本発明の課題及びその解決手段を何ら示唆するものではない。
特開2015-93888号公報 特開2012-177089号公報 特開平7-205192号公報
本発明は、高硬度であると共に耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いパネル積層体、このパネル積層体を用いたディスプレイ用カバー及び小型機器用カバーと、このパネル積層体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂を用いたパネル本体を熱可塑性エラストマーからなる層で裏打ちすることにより、耐衝撃性を高め、割れによる破片の飛散を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含むパネル本体と、熱可塑性エラストマーからなる層とを積層してなるパネル積層体であって、該パネル本体を表面層とするパネル積層体。
Figure 0007135972000001
(一般式(1)中、Rはメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
[2] 前記熱可塑性エラストマーが光透過性エラストマーである[1]に記載のパネル積層体。
[3] 前記熱可塑性エラストマーがポリウレタン系熱可塑性エラストマーである[1]又は[2]に記載のパネル積層体。
[4] 前記パネル本体からなる表面層にハードコート層が設けられている[1]ないし[3]のいずれかに記載のパネル積層体。
[5] 前記パネル本体からなる表面層上に反射防止層が設けられている[1]ないし[4]のいずれかに記載のパネル積層体。
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体からなるディスプレイ用カバー。
[7] [1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体からなる小型機器用カバー。
[8] 熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形により[1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
[9] 前記パネル本体からなる表面層に塗装又はフィルムの熱転写により機能層を積層する工程を含む[1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体の製造方法。
[10] 熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形と同時にインサートとは反対側の金型側で機能層を有する転写フィルムの転写工程を行う工程を含む[1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
本発明のパネル積層体は、高硬度で耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いため、安全性にも優れる。
高硬度かつ耐衝撃性、安全性に優れた本発明のパネル積層体は、液晶や有機EL等のディスプレイ用カバー、特にタッチパネル等のディスプレイ用液晶カバー、その他スマートフォンや小型ゲーム機等の小型機器用カバー(ディスプレイ以外の部分を含む)として有用である。
本発明における90度剥離試験の試験片の作製方法と試験方法を示す説明図である。 実施例における落球試験方法を示す説明図である。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「シート」と「フィルム」とは同義であり、シートの中でも比較的厚さの薄いものをフィルムと称し、シートはフィルムを包含するものとする。
よって、以下の説明において、「フィルム」は「シート」であってもよい。
また、本明細書において、「ポリカーボネート樹脂」を「PC」と略記する場合がある。
〔パネル積層体〕
本発明のパネル積層体は、下記一般式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(1)」と称す場合がある。)を有するポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカーボネート樹脂(i)」と称す場合がある。)を含むパネル本体と、熱可塑性エラストマーからなる層(以下、「熱可塑性エラストマー層」と称す場合がある。)とを積層してなるパネル積層体であって、該パネル本体を表面層とするものである。
Figure 0007135972000002
(一般式(1)中、Rはメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
[メカニズム]
本発明のパネル積層体のパネル本体を構成する構造単位(1)を有するポリカーボネート樹脂(i)は高硬度で耐傷付き性に優れる反面、衝撃強度が低く、衝撃により割れ易く、割れた場合は破片が飛散し易いという欠点がある。
本発明のパネル積層体では、このポリカーボネート樹脂(i)を用いたパネル本体に対して、熱可塑性エラストマー層を裏打ちすることで、表面層としてのポリカーボネート樹脂(i)による高硬度特性をそのまま維持した上で耐衝撃性を更に改善し、割れた場合でも裏面側の熱可塑性エラストマー層で破片をつなぎとめ、飛散を防止することができる。
[パネル本体]
本発明のパネル積層体のパネル本体(以下、「本発明のパネル本体」と称す場合がある。)は下記一般式(1)で表される構造単位(1)を有するポリカーボネート樹脂(i)を含むものであり、通常、ポリカーボネート樹脂(i)を含むポリカーボネート樹脂組成物(以下、「ポリカーボネート樹脂組成物(A)」と称す場合がある。)により形成される。
Figure 0007135972000003
(一般式(1)中、Rはメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
<ポリカーボネート樹脂(i)>
本発明のパネル本体に含まれるポリカーボネート樹脂(i)の構造単位を示す上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、アルキレン基又はアルキリデン基であるが、アルキレン基としては炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その例としては、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,6-へキシレン等を挙げることができる。
アルキリデン基としては、炭素数2~10のアルキリデン基が好ましく、例えばエチリデン、2,2-プロピリデン、2,2-ブチリデン、3,3-ヘキシリデン等を挙げることができる。
Xは、アルキリデン基であるのが好ましく、2,2-プロピリデン基(即ち、イソプロピリデン基)が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(i)としての好ましい具体例としては、以下のイ)、ロ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ち、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちRがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
上記のうち、特に上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらポリカーボネート樹脂(i)は、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(i)は、構造単位(1)以外のカーボネート構造単位を有することもでき、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位(以下、「構造単位(2)」と称す場合がある。)、あるいは後述のビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(i)の構造単位(1)以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であることが好ましい。
Figure 0007135972000004
(式中、Xは前記一般式(1)におけるXと同義である。)
上記構造単位(2)の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート構造単位である。
また、ビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000~28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよいパネル本体が得られやすく、16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出される値である。
η=1.23×10-4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂(i)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂(i)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
<その他のポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、落球衝撃等の耐衝撃性やヘイズ等の透明性、成形性等の点から、上記ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂(ii)を含有することが好ましく、ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂(ii)としては、前記した構造単位(2)を有するポリカーボネート樹脂(ii)が挙げられ、その好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA由来の構造単位を有するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(ii)は、構造単位(2)以外の構造単位を有することもでき、例えば、他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(ii)中の構造単位(2)以外の構造単位の共重合量は、50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂(ii)に含まれる他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、前記構造単位(1)以外の、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-5-トリメチルシクロヘキサン等の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(ii)の粘度平均分子量(Mv)は、12,000~30,000であることが好ましく、14,000~29,000がより好ましく、15,000~28,000がさらに好ましい。粘度平均分子量(Mv)がこの範囲であると、成形性が良く、且つ落球衝撃等の耐衝撃性や引張特性に優れたパネル本体を形成しやすく、12,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、フィルム成形が困難となりやすい。
なお、粘度平均分子量(Mv)の定義は、前述の通りである。
ポリカーボネート樹脂(ii)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(ii)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)がポリカーボネート樹脂(ii)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物(A)により形成されるパネル本体に要求される特性に応じて、適宜決定される。即ち、ポリカーボネート樹脂組成物(A)がポリカーボネート樹脂(ii)を含むことで、パネル本体の耐衝撃性、透明性、耐熱性、成形性が向上すると共に、ポリカーボネート樹脂(ii)はポリカーボネート樹脂(i)よりも安価であることから、積層体の材料コストを低減することができる。この観点からは、ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂(ii)を多く含むことが好ましいが、本発明においては、ポリカーボネート樹脂(i)による高い表面硬度、耐擦傷性を目的とするため、ポリカーボネート樹脂(ii)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。ただし、ポリカーボネート樹脂(ii)を配合することによる耐衝撃性、透明性、耐熱性、成形性の向上効果やコスト低減効果を得る上では、ポリカーボネート樹脂(ii)の含有量の下限はポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
<その他の樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂が挙げられる。また、表面硬度の点から、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂を含有してもよい。
<その他の成分>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分、例えば各種樹脂添加剤を含有していてもよい。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
これらの熱安定剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が熱安定剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(ii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(ii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸が挙げられる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等が挙げられる。
数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの離型剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が離型剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(ii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(ii)等のその他の樹脂成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
<ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(ii)等のその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
<パネル本体の厚さ>
本発明のパネル積層体において、ポリカーボネート樹脂(i)を含むパネル本体の厚さは、1~10mm、特に2~5mmであることが好ましい。
パネル本体の厚さが上記下限以上であると、十分な機械的強度を得ることができ、また表面硬度の観点から好ましい。パネル本体の厚さが上記上限以下であると、軽量化、コストの観点から好ましい。
[熱可塑性エラストマー層]
本発明のパネル本体の裏面に裏打ち層として形成される熱可塑性エラストマー層について説明する。ここで、熱可塑性エラストマーとは、使用温度では加硫されたゴムと同様の性質を持つが、昇温されると熱可塑性樹脂と同様に成形することができ、また、再成形することができるポリマー又はポリマーブレンドからなるものをさす。
熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーは、必要に応じて光透過性エラストマーであることが好ましい。ここで、光透過性とは、パネル本体に積層した熱可塑性エラストマー層の厚みで測定した必要な波長の光の透過率が50%以上であることをさす。必要な波長の光とは、例えば透明性が必要な窓であれば可視光線領域の光が該当する。
また、熱可塑性エラストマー層の熱可塑性エラストマーは、内容物保護や隙間防止の役割を付与できることから、ゴム弾性による復元性を有する熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、ポリエチレン系などの熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの熱可塑性エラストマーのうち、後述のインサート成形におけるポリカーボネート樹脂組成物(A)との溶着性、溶融拡散性の観点からは、ポリカーボネート樹脂(i)と相互作用する極性基を有するものが好ましく、そのようなものとしてポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
特に、光透過性でゴム弾性を有し、高強度で衝撃吸収性を持つため、衝撃により割れた場合の破片の飛散防止効果に優れることからポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ポリイソシアネートとポリオール及び鎖延長剤を用い、通常使用されるワンショット法またはプレポリマー法によって合成される。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含むポリオール成分からなる。
ポリウレタン成分のためのイソシアネートとしては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)などが例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIなどが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)などが例示される。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが例示される。
特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、黄変が抑制される。しかも、脂環式ジイソシアネートは強度に優れる。
一方、ポリオールとしては、カプラクトン系ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、より具体的にはポリラクトン、ポリカプラクトンポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンスクシネート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンセバセート)ポリオール、ポリ(ジエチレンエーテルアジペート)ポリオールなどが挙げられる。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、JISK7311 A形の方法に基づいて得られたA硬度が、60~99の範囲、JIS K7311 D形の方法に基づいて得られたD硬度が、50~74の範囲であることが、ゴム弾性や衝撃吸収性の観点から好ましい。
このようなポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、脂環式ジイソシアネートを用いたポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、BASF社製「エラストラン(登録商標)」NY585、NY998などを用いることができる。
上記熱可塑性エラストマーには、前述のポリカーボネート樹脂組成物(A)に配合し得る添加剤として例示した各種の添加剤、例えば離型剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤等を配合してもよい。背面から紫外線を含む光を透過するカバーに用いる場合は、特に紫外線吸収剤を配合することで、パネル積層体の紫外線劣化を防止して耐候性を高めることができる。また、これらの添加剤をポリカーボネート樹脂組成物(A)に前述の上限を超える量の配合が必要な場合、上限を超えて配合すると、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形時に添加剤に起因してガスが発生し、金型汚染、製品欠陥等の原因となるが、これらの添加剤を熱可塑性エラストマー側に配合しておくことで、この問題を軽減することができる。
本発明において、熱可塑性エラストマー層は、本発明のパネル積層体を使用する際の裏側(外側表面と反対側の内側表面、内面側)となる面に設けられるが、このように、パネル本体の裏打ち層として形成された熱可塑性エラストマー層は、パネル本体が衝撃で割れ た際に破砕が飛散するのを防止すると共に、パネル積層体の裏側(内面側)に設けられた機器本体等の内容物を外力から保護する緩衝材としても機能する。
このような熱可塑性エラストマー層の厚さは、薄過ぎるとこの熱可塑性エラストマー層を形成したことによる飛散防止効果等を十分に得ることができず、厚過ぎるとパネル全体が厚くなることから、通常0.01~2mm、特に0.05~1mmであることが好ましく、パネル本体を含め、合計の厚さが通常1.01~12mm、特に2.05~6mmであることが好ましい。
[その他の層]
本発明のパネル積層体は、パネル本体と熱可塑性エラストマー層に加えて、更にその他の層が形成されていてもよい。
その他の層としては、これらに限定されるものではないが、ハードコート層、反射防止層、防汚層、印刷層、接着層、ギラツキ防止層が挙げられる。
これらの機能層はそれぞれ以下に記載の方法で形成することもできるが、表側のインモールド転写で、裏面側の熱可塑性エラストマーのインサート成形時の射出成形で同時に形成することで、各機能層形成のための工程を省略することができ、好ましい。
<ハードコート層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体の表面側にハードコート層が形成されたものであってもよい。
この場合、ハードコート層を形成するためのハードコート剤としては、公知の材料を適宜使用することができ、例えば、シリコーン系、アクリル系、シラザン系、ウレタン系などの種々のハードコート剤を使用することができる。接着性や耐候性を向上させるために、ハードコート剤を塗布する前にプライマー層を設ける2コートタイプのハードコート剤であってもよい。ハードコート剤のコーティング方法としては、特に制限はないが、スプレーコート、ディップコート、フローコート、スピンコート、バーコート、カーテンコート、ダイコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート及びエアーナイフコート等のいずれの塗工方法によって塗布することもできる。
ハードコート層の厚みは、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~30μmである。
ハードコート層は、射出成形後のパネル積層体に前述のように塗装や熱転写フィルムの転写で形成してもよいが、金型内にハードコート層用の転写フィルムを型内に配置し裏面の熱可塑性エラストマーのインサート成形と同時に形成することにより、射出成形後のハードコート層形成のための工程を省略することができる。
<反射防止層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体の表面側又は裏面側に反射防止層が設けられていてもよく、反射防止層を設けることで光透過性を高めることができる。反射防止層はハードコート層の表面側に設けることが好ましい。
反射防止層は、例えば、TiO,ITO,ZrO,Nb等の高屈折材料、MgF,SiO等の低屈折材料を組み合わせて単層又は多層に積層形成することができ、積層方法としては、電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着法等の各種真空蒸着法;プラズマ蒸着法;2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法;DC法、RF法、多陰極法、活性化反応法、HCD法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法;CVD法等が挙げられる。さらに、反射防止層は、ZrOゾル、TiOゾル、Sbゾル、WOゾルのような高屈折率を有する金属酸化物ゾルをコーティング剤やプライマー中に分散させ、塗布・硬化させることによって形成したり、低屈折材料であるフッ素系材料等を同様に分散させたり、高屈折材料と低複屈折材料のコーティングを多層に塗布・硬化することによって形成することもできる。
反射防止層の厚さは、好ましくは1nm~20μm、より好ましくは10nm~10μmである。厚みを上記下限以上とすることにより、反射防止層の耐久性を維持でき、上記上限以下とすることにより、反射防止層にクラックが発生するのを防ぐことができる。
<防汚層>
本発明のパネル積層体のパネル本体の表面には防汚層を設けてもよい。防汚層を設けることでパネル積層体の表面に付着した汚れ(ヒトの指紋等)を落としやすくなる。防汚層は、その機能を十分に発揮するために、パネル積層体の外側最表面を構成する層であることが好ましい。防汚層はハードコート層や反射防止層の表面側に設けることが好ましい。
防汚層の形成方法としては、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等の乾式法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等の湿式法のどちらも使用できる。耐擦傷性の観点から、乾式法を用いることが好ましい。湿式法の場合は架橋性モノマーを硬化させ、3次元架橋による耐薬品性を併せ持つことが望ましい。
防汚層の構成材料は、防汚性、撥水性、撥油性を付与できる材料から適宜選択できる。具体的には、含フッ素化合物、及び/又は含シリコン化合物、及び/又はシリカ等の微粒子等が挙げられる。これらは、防汚性、撥水性および撥油性を付与できれば、特に限定されず使用できる。
防汚層の厚さは、通常2nm~20μmが好ましく、2nm~15μmがより好ましく、2nm~10μmが更に好ましい。
<印刷層>
本発明のパネル積層体には、さらにディスプレイが認識できる範囲内で画像部分の枠などの印刷層(加飾層)を設けることができる。印刷層は、熱可塑性エラストマー層にあらかじめ片面あるいは両面に印刷しておくのが好ましく、さらに印刷済みの熱可塑性エラストマー層をインサート成形によって積層しても良い。また表面を転写可能な印刷層を備えたフィルムを用いて成形時に転写させても良い。印刷層はハードコート層などの機能層と組み合わせるのがより高硬度も狙えるので好ましい。
印刷層は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷など、その他公知の印刷方法で設けられる。印刷層は黒枠印刷などのブラックアウト調などの単色の図柄、あるいは絵柄や文字であってもよい。また、印刷層は部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷層とベタ印刷層の両方が設けられていてもよい。また図柄、絵柄ではなく機能性のインク等を印刷してもよい。例えば、導電性を持つインクなどを用いて回路等を形成してもよい。また前述の防汚層や反射層やハードコート層を印刷で形成してもよい。
また、印刷層は本発明のパネル積層体において、以下の箇所の1又は2以上に設けることができる。
(1) 熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間
(2) ハードコート層、防汚層、反射防止層等の機能層をパネル本体の表面に有する場合、機能層とパネル本体の間、熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間、及び/又は、熱可塑性エラストマー層の裏面側
(3) パネル本体の裏面側に反射防止層を有する場合、反射防止層は通常熱可塑性エラストマー層のパネル本体と反対側に形成するため、パネル本体と熱可塑性エラストマー層との間、及び/又は、熱可塑性エラストマーと反射防止層との間
印刷層に用いられる印刷用インクに含有される顔料や溶剤は特に限定されること無く、一般的に利用されるものを適用することができる。特に、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂を含むものは、印刷層を設けた場合においても、本発明のパネル積層体を層間剥離等の支障なく作製することが可能となることから好適である。
<接着層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体と熱可塑性エラストマー層との間等、層間に、必要に応じて接着層が介在されていてもよい。
後述のインサート成形により本発明のパネル積層体を製造する場合、一般的にはパネル本体と熱可塑性エラストマー層との間には接着層を設けることなく、良好な密着性で一体成形することが可能であるが、熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間に印刷層を有する場合など、熱可塑性エラストマー層とパネル本体との密着強度が低下する傾向があることから、接着層を設けてもよい。
接着層に用いる接着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ブチラール系樹脂、ゼラチン、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ウレタン系樹脂等の樹脂から適切なものが選択される。これらの樹脂は、必要に応じてTダイ等から溶融押し出しにより、あるいは溶剤に溶解した組成物を塗布あるいは印刷などによって接着層の形成に用いられる。
接着層の厚みは、0.1~50μmが好ましく、さらに好ましくは1~10μmである。接着層が上記範囲より薄い場合には接着層による接着性向上効果が不十分となる傾向にあり、上記範囲を超えると印刷層より厚くなり、印刷による色等が、妨げられる。
<ギラツキ防止層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体の最表面側に微細な凹凸を設けることによって光の反射を小さくし画面のギラツキや映り込みを少なくして画面をみやすくすることもできる。
<その他の構成層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体、熱可塑性エラストマー層、及び必要に応じて設けられる上記のハードコート層、反射防止層、防汚層、印刷層、接着層等の他、他の任意の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、パネル積層体の裏側に設けられる防曇層や印刷層、タッチパネル用のタッチセンサー、液晶パネルと密着させる接着層等が挙げられる。
[パネル積層体の製造方法]
本発明のパネル積層体を製造するには、上記のパネル本体と熱可塑性エラストマー層との積層構造を有するパネル積層体を製造することができる方法であればよく、特に制限はない。
例えば、ポリカーボネート樹脂組成物(A)と熱可塑性エラストマーとを共押出成形することでパネル積層体とすることもできるし、予め成形されたポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体の裏側となる面に熱可塑性エラストマーフィルムをラミネートする方法で得ることもできる。
生産性、パネル本体と熱可塑性エラストマー層との密着性等の観点からは、インサート成形により本発明のパネル積層体を製造することが好ましい。
インサート成形により本発明のパネル積層体を製造する場合、射出成形金型のうちの一方の金型(可動金型)側に熱可塑性エラストマーフィルムを金型表面に沿うように配置し、その後型締めしてポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂を射出する。これにより、熱可塑性エラストマーフィルムとポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体とが積層一体化されたパネル積層体を得ることができる。
ここで使用される熱可塑性エラストマーフィルムとしては市販品を用いることができるが、市販の熱可塑性エラストマーフィルムは、通常、熱可塑性エラストマーフィルムの両面が保護フィルムで被覆された形態で製品化されている。
このような保護フィルム付き熱可塑性エラストマーフィルムを用いる場合、一方の保護フィルムのみを剥離し、一方の保護フィルムは残したままとし、この保護フィルム面側が金型面に当接するように配置して用いることが好ましい。これは以下の理由による。
即ち、熱可塑性エラストマーフィルムは柔軟で自立性が殆どないため、保護フィルムを剥離した状態で金型内に配置しようとすると、多くの場合、熱可塑性エラストマーフィルムのへたりのために、金型表面に密着性よく配置することができず、金型表面と熱可塑性エラストマーフィルムとの間に空気を巻き込み、熱可塑性エラストマーフィルムが一部浮き上ったような状態となる。この状態でポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂を射出すると、溶融樹脂が金型表面と熱可塑性エラストマーフィルムとの間に回り込んだり、シワが寄ったりし、製品欠陥の原因となる。また金型に密着させることができても気泡が混入し、成形後も気泡の跡が残る。
これに対して、ある程度剛直な保護フィルムとの積層フィルムとして熱可塑性エラストマーフィルムを用いることにより、金型表面に隙間なく、密着性よく、熱可塑性エラストマーフィルムを配置することができる。
この場合は、インサート成形後に、保護フィルムを剥離すればよい。
熱可塑性エラストマーフィルムの保護フィルムとしては特に制限はないが、射出成形温度に耐え得る耐熱性を有し、機械的強度が高く取り扱い性にも優れることから、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。通常この二軸延伸ポリエステルフィルムよりなる保護フィルムの厚さは30~200μm程度である。
反射防止層や印刷層等を設ける場合は、このインサート成形に先立ち予め熱可塑性エラストマーフィルムやパネル本体側にこれらの層を形成しておけばよい。インサート成形後にこれらの層を形成することもできる。
また、ハードコート層、反射防止層、ギラツキ防止層、防汚層等の機能層は、フィルム転写により形成することもできる。この場合、PET等の支持フィルムに機能層と接着層を設けた転写フィルムを用い、機能層と接着層のみを射出成形品に熱転写して加飾する。
特に射出成形の金型に転写フィルムを配置し、射出樹脂を転写フィルムの接着層に接触させるようにして射出成形する、インモールド転写成形は、型開きと同時に支持フィルムを成形品からはがし、転写による加飾が成形品に施される。また機能層が離脱した支持フィルムは巻き取られ、次の成形用の新しい転写可能な面が準備される。
[用途]
本発明のパネル積層体は、特にタッチパネル用カバーとして有用であり、例えば、スマートフォン等のタブレット型の各種携帯端末、小型ゲーム機等の小型機器用カバー、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションやカーオーディオ等のタッチパネル用カバーなど、ディスプレイの樹脂カバーとして有用である。またディスプレイ以外でも表面硬度が高く、割れにくく、割れても飛散しない、また内容物を保護可能であり、カバー類などに有用である。
いずれの用途においても、本発明のパネル積層体は、パネル本体側が表面側、熱可塑性エラストマー層側が裏面側、即ち、各種機器における内側となるように使用される。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下のとおりである。
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(i-1)の製造>
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断して、粘度平均分子量(Mv)26,000のビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂(i-1)のペレットを得た。
<製造例2:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造>
以下の原料成分を用いて、以下の方法でポリカーボネート樹脂組成物(A)を製造した。
ポリカーボネート樹脂(i-1):上記製造例1で製造した2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを原料とするビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量(Mv):26,000
ポリカーボネート樹脂(ii-1):ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロン(登録商標)S-3000)
粘度平均分子量(Mv):21,000
Tg=145℃
熱安定剤:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)
ポリカーボネート樹脂(i-1)、ポリカーボネート樹脂(ii-1)、及び熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤を、以下の割合で配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物(A)のペレットを得た。
ポリカーボネート樹脂(i-1):100質量部
ポリカーボネート樹脂(ii-1):17.7質量部
熱安定剤:0.04質量部
酸化防止剤:0.12質量部
離型剤:0.47質量部
紫外線吸収剤:0.36質量部
<熱可塑性エラストマーフィルム>
BASF社製ポリウレタン系熱可塑性エラストマー「エラストラン(登録商標)」NY585(JIS K7311によるタイプAのデュロメーターによる硬度(A硬度)が85)よりなる厚さ0.15mmのフィルム(以下「NY585フィルム」と記す。)
BASF社製ポリウレタン系熱可塑性エラストマー「エラストラン(登録商標)」NY998(A硬度98)よりなる厚さ0.15mmのフィルム(以下「NY998フィルム」と記す。)
なお、上記NY585フィルム、NY998フィルムは、いずれも両面が厚さ50および75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムよりなる保護フィルムで被覆されているものであるので、一方の厚さ50μmの保護フィルムのみ剥離し、他方の厚さ75μmの保護フィルムを残し、この保護フィルムが金型表面に当接するように配置してインサート成形を行った。
[実施例1,2]
NY585フィルム又はNY998フィルムを金型にセットし、ポリカーボネート樹脂組成物(A)を射出成形して、以下の方法でそれぞれ本発明のパネル積層体(NY585インサートPC,NY998インサートPC)のサンプルを作製し、90度剥離試験、落球試験、及び鉛筆による擦過試験を行った。結果を表1に示す。
なお、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形時の条件は以下の通りとした。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂温度(シリンダー温度):280℃
金型温度:80℃
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出速度:15mm/sec
保圧力:25MPa
保圧時間:20sec
[90度剥離試験方法:密着性]
<試験片の作製>
図1(a)に示す通り、可動側金型1A,固定側1Bのうちの可動側金型1Aの金型面に熱可塑性エラストマーフィルム2を、その下縁部をポリイミドテープ3で貼り付けた状態で装填した。その後型締めして、図1(b)の通り、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂4を金型1A,1Bのキャビティ内に射出して成形し、図1(c)のように、熱可塑性エラストマー層2Aとポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体4Aとが一部ポリイミドテープ3を介して積層一体化された積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)10を得た。
この積層体サンプル10のポリイミドテープ3部分は、射出樹脂と密着していないため、剥離試験における剥し口となる。
次いで、得られた積層体サンプル10を、図1(d)のように、ポリイミドテープ3の延在方向と直交する方向に15mm幅の短冊状にナイフで切断して、図1(e)に示す剥離試験用試験片10Aを得た。
<90度剥離試験>
上記の通り作製した試験片10Aを用い、図1(f)の通り、ポリイミドテープ3の剥し口を治具でつかみ、熱可塑性エラストマー層側をパネル本体に対して90°上方に20mm/sの速度で引き上げて15mm幅の試験片10Aの剥離強度(N/15mm)をプッシュアンドプルゲージで測定し、パネル本体と熱可塑性エラストマー層の接着強度とした。
[落球試験方法:飛散防止性]
上記積層体サンプル10の作製方法と同様にして作製した積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)を用い、図2に示す通り、1cmのクリアランスで積層体サンプル10をパネル本体側を上にして支持台5A,5Bに架け渡し、高さ174cmの上方から重さ3.6kgの錘6を落下させた(落下エネルギー61.4J)。
このときのサンプル10の破壊状態を観察し、独立した(飛び散った)破片が発生する場合を「×」、サンプル10が割れても破片が互いに密着し、飛散しない場合を「○」とした。
[鉛筆による擦過試験方法:表面硬度]
ポリイミドテープ3を用いないこと以外は上記積層体サンプル10の作製方法と同様にして作製した積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)のパネル本体の表面をISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、1kg荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機製作所社製を用いた。
[比較例1]
熱可塑性エラストマーフィルムを用いず、ポリカーボネート樹脂組成物(A)のみを実施例1と同様に射出成形して厚さ3.0mmの単層パネル(PC単体)を成形し、この単層パネルについて上記と同様に飛散防止性と表面硬度の評価を行い、結果を表1に示した。
Figure 0007135972000005
表1より、ポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体のみでは衝撃により割れた場合に破片の飛散の問題があるが、このパネル本体を熱可塑性エラストマー層で裏打ちした本発明のパネル積層体は、衝撃により割れても破片が飛散し難いことが分かる。
1A,1B 金型
2 熱可塑性エラストマーフィルム
2A 熱可塑性エラストマー層
3 ポリイミドテープ
4 ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂
4A パネル本体
5A,5B 支持台
6 錘
10 積層体サンプル
10A 試験片

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を含むパネル本体と、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる層とを積層してなるパネル積層体であって、該パネル本体を表面層とするパネル積層体。
    Figure 0007135972000006
    (一般式(1)中、Rはメチル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を示し、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
  2. 前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが光透過性エラストマーである請求項1に記載のパネル積層体。
  3. 前記パネル本体からなる表面層にハードコート層が設けられている請求項1又は2に記載のパネル積層体。
  4. 前記パネル本体からなる表面層上に反射防止層が設けられている請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体からなるディスプレイ用カバー。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体からなる小型機器用カバー。
  7. ポリウレタン系熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形により請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
  8. 前記パネル本体からなる表面層に塗装又はフィルムの熱転写により機能層を積層する工程を含む請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体の製造方法。
  9. ポリウレタン系熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形と同時にインサートとは反対側の金型側で機能層を有する転写フィルムの転写工程を行う工程を含む請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
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