本発明に係る自律型掃除装置の実施形態について図1から図6を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、いわゆるロボットクリーナである。自律型掃除装置1は、本体2に搭載される二次電池3の電力を消費して自律で移動(走行)する。自律型掃除装置1は、居室内の被掃除領域Aの被掃除面(床面)を動き回って(被掃除領域を網羅的に移動して)塵埃を捕集する。自律型掃除装置1は、掃除運転の後、充電台5へ帰巣して次の掃除運転を待機する。充電台5に帰巣した自律型掃除装置1は、次の掃除運転を待機している最中、二次電池3を充電する。そのため、自律型掃除装置1は、使用者による充電の手間を省き、かつ使用者の求めによる突発的な掃除運転に対応できる。
充電台5は、居室内の被掃除面に設置可能である。充電台5は、自律型掃除装置1を円滑に接続または離脱可能である。充電台5は、自律型掃除装置1が接続された状態で、商用交流電源から二次電池3へ電力を導く電源コード6を備えている。電源コード6は、二次電池3へ送電する電路である。
そして、自律型掃除装置1は、障害物Oが被掃除面に残されている場合には、障害物Oを回避し、その周囲を迂回して掃除を行う第一移動様式(第一移動パターン、回避移動様式)と、障害物Oを移動させて露出した被掃除面を掃除する第二移動様式(第二移動パターン、退け移動様式)と、を組み合わせて、被掃除面を掃除する。
なお、以下の説明では、自律型掃除装置1が検知する障害物Oを被検知物Oと呼ぶ。
図2は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置の右側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置の底面図である。
図1に加えて、図2および図3に示すように、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、本体2と、本体2を移動させる移動部11と、本体2の下方の被掃除面を掃除する掃除部12と、本体2の周囲の被検知物Oを検知する検知部13と、検知部13、移動部11、および掃除部12を制御して自律型掃除装置1の運転を制御する制御部15と、本体2の天面に設けられる表示部16と、移動部11、掃除部12、検知部13、制御部15、および表示部16を含む自律型掃除装置1の各部へ電力を供給する二次電池3と、を備えている。
本体2は、例えば合成樹脂製の本体ケース21と、本体ケース21の側面に設けられるバンパー22と、平面視において直線形状を有し、かつ被検知物Oに押し当て可能な位置に設けられた押当部23と、を備えている。
本体ケース21は、本体2の外殻である。本体ケース21は、扁平な円柱形状(円盤形状)を有している。平面視で実質的に円形の本体2は、他の形状に比べて旋回時の旋回半径を小さく抑制できる。
バンパー22は、本体ケース21の側面に設けられている。
押当部23は、本体2が被検知物Oを移動させる際の進行方向(前進方向Fまたは後退方向R)に直交する直線部分を有している。この直線部分は、本体2の前後方向に伸びる中心線を跨がっていることが好ましく、中心線で実質的に二等分される形状を有していればなお良い。押当部23は、平面視において本体ケース21の外側へ突出している。押当部23は、本体ケース21に一体化されていても良いし、本体ケース21に設けられている別部品であっても良い。押当部23は、平面視において本体ケース21の内側と外側との間で移動可能であっても良い。押当部23は、第一移動様式の際には本体ケース21の内側へ移動され、第二移動様式の際には本体ケース21の外側へ移動される。
移動部11は、複数の駆動輪26と、それぞれの駆動輪26を個別に駆動させる複数の電動機27と、駆動輪26とともに被掃除面上の本体2を支える従動輪28と、を備えている。
それぞれの駆動輪26は、本体2を移動させる力を被掃除面へ伝える。それぞれの駆動輪26は、本体2の幅方向(左右幅方向)に延びる車軸(図示省略)のまわりに転がる。複数の駆動輪26は、少なくとも一対の駆動輪26を含んでいる。一対の駆動輪26の車軸は、実質的に同一線上に配置されている。そのため、自律型掃除装置1は、容易に直進および旋回することができる。駆動輪26は、懸架装置(いわゆるサスペンション、図示省略)によって被掃除面に押さえつけられている。自律型掃除装置1は、駆動輪26に代えて、無限軌道(図示省略)を備えていても良い。
それぞれの電動機27は、それぞれの駆動輪26を独立して駆動させる。自律型掃除装置1は、左右の駆動輪26を同じ方向へ回転させることによって直進(前進、または後退)し、左右の駆動輪26を異なる方向へ回転させることによって旋回(右旋回、または左旋回)する。また、自律型掃除装置1は、左右の駆動輪26の出力を上下させて前進、または後退の速度を調整したり、左右の駆動輪26の出力を相違させて旋回半径の大小を調整したりすることができる。
従動輪28は、本体2の下部の幅方向の略中央部、かつ後部に配置されている。従動輪28は、円形の回転体であり、例えばキャスターである。従動輪28は、自律型掃除装置1の前進、後退、および旋回に容易に追従して向きを変え、自律型掃除装置1の走行(移動)を安定させる。なお、駆動輪26および従動輪28に支えられる自律型掃除装置1の重心は、一対の駆動輪26と従動輪28とがなす三角形の内側に配置されていることが好ましい。その場合、自律型掃除装置1が転倒する危険性は低下する。換言すると、自律型掃除装置1は、より安定して移動(走行)することができる。従動輪28はなくても良い。
掃除部12は、本体2の真下、およびその周囲の被掃除面の塵埃を掃除する。掃除部12は、例えば、負圧を生じさせて塵埃を吸引する吸込掃除部31、および本体2の下方の床面を拭き掃除もしくは磨き掃除する拭き掃除部32のいずれかを含んでいる。
吸込掃除部31は、本体2の底面に設けられる吸込口34と、吸込口34に配置される回転ブラシ35と、回転ブラシ35を回転駆動させるブラシ用電動機36と、本体2の後部に設けられる塵埃容器37と、本体2内に収容されて塵埃容器37に流体的に接続される電動送風機38と、を備えている。
吸込口34は、電動送風機38が発生させる負圧によって空気とともに塵埃を吸い込む。吸込口34は、本体2の前後左右の縁部のうち、前端部の近傍に配置されている。吸込口34は、本体2の幅方向に延びている。換言すると、吸込口34の左右方向の開口幅は、吸込口34の前後方向の開口幅よりも大きい。本体2の底面が自律走行時に被掃除面に対向(対面)しているため、吸込口34は、被掃除面上の塵埃、または回転ブラシ35が被掃除面から掻き上げた塵埃を容易に吸い込むことができる。
回転ブラシ35の回転中心線は、自律型掃除装置1の幅方向に向けられている。回転ブラシ35は、自律型掃除装置1を被掃除面上に走行可能な状態で置いたとき、被掃除面に接触する。そのため、回転駆動する回転ブラシ35は、被掃除面上の塵埃を掻き上げる。掻き上げられた塵埃は、吸込口34へ効率的に吸い込まれる。
ブラシ用電動機36は、回転ブラシ35を正転(前進時に自律型掃除装置1の推進力を補助する方向)または逆転(後退時に自律型掃除装置1の推進力を補助する方向)させる。
塵埃容器37は、電動送風機38が発生させる吸込負圧によって吸込口34から吸い込まれる塵埃を蓄積する。塵埃容器37は、塵埃を濾過捕集するフィルタや、遠心分離(サイクロン分離)や直進分離(直進する空気と塵埃との慣性力の差で塵埃と空気とを分離する分離方式)などの慣性分離によって塵埃を蓄積する分離装置である。塵埃容器37は、本体2へ着脱可能であり、また開閉可能である。使用者は、塵埃容器37を本体2から一時的に取り外して、塵埃容器37を開いて塵埃容器37に蓄積された塵埃を容易に廃棄したり、塵埃容器37を清掃したり、洗浄したりすることができる。
電動送風機38は、二次電池3の電力を消費して駆動する。電動送風機38は、塵埃容器37から空気を吸い込んで吸込負圧を生じさせる。塵埃容器37に発生した負圧は、吸込口34に作用する。本体2は、電動送風機38の排気(清浄な空気)を、本体2の外側へ流出させる排気口(図示省略)を有している。
拭き掃除部32は、本体2の前後左右の縁部のうち、前端部の近傍に配置されている。拭き掃除部32は、例えば本体2の底面に着脱可能な不織布等の繊維材料製の拭掃除シート39を備えている。拭掃除シート39は、自律型掃除装置1を被掃除面上に走行可能な状態で置いたとき、被掃除面に接触する。拭掃除シート39は、駆動輪26が被掃除面で空転しない程度の圧力で、被掃除面に押し当てられていることが好ましい。拭掃除シート39と本体2の底面との間には、発泡樹脂などの弾性部材(図示省略)が設けられている。この弾性部材は、拭掃除シート39を被掃除面に均一の圧力で押し当てる。
検知部13は、本体2の移動にともなって本体2に近づく被検知物O、または本体2に接触する被検知物Oを検知する。検知部13は、本体2に設けられて自律型掃除装置1の周囲の画像Iを撮影するカメラ部41と、本体2に設けられて本体2が自律型掃除装置1以外の物体、つまり被検知物Oに接近したことを検知する近接検知部42と、本体2に設けられて本体2が自律型掃除装置1以外の物体、つまり被検知物Oに接触したことを検知する接触検知部43と、を含んでいる。
カメラ部41は、本体2の正面に設けられて、自律型掃除装置1の前方、つまり前進時の走行方向を撮影する。カメラ部41は、いわゆるステレオカメラである。カメラ部41は、撮影する画像Iが、自律型掃除装置1の幅方向の中心線を延長した前方の位置を含む撮影範囲で重なり合っている。カメラ部41は、撮影範囲における奥行き(自律型掃除装置1からみた離間距離)の情報を得ることができる。奥行きの情報を含む画像Iを「距離画像」と呼ぶ。
カメラ部41には、LED(Light Emitting Diode)や電球などの照明装置(図示省略)が併設されていても良い。照明装置は、カメラ部41の撮影範囲の一部または全部を照らす。照明装置は、家具などの障害物の陰のような暗い場所や、夜間などの暗い環境下であっても、カメラ部41による適切な画像の取得を可能にする。
自律型掃除装置1は、カメラ部41に代えて、または加えて、ステレオカメラとは異なる原理によって撮影範囲における奥行きの情報を得る距離測定装置45を備えていても良い。
近接検知部42は、例えば赤外線センサーや、超音波センサーである。赤外線センサーを利用する近接検知部42は、赤外線を発する発光素子(図示省略)と、光を受けとって電気信号に変換する受光素子(図示省略)と、を備えている。近接検知部42は、発光素子から赤外線を放ち、被検知物Oで反射される赤外線を受光素子で受光して電力に変換し、変換された電力が一定以上になると、被検知物Oが一定距離内に近づいたことを、本体2が被検知物Oに接触する以前に検知する。超音波センサーを利用する近接検知部42は、赤外線に代えて超音波を利用して被検知物Oを検知する。
接触検知部43は、いわゆるバンパーセンサーである。接触検知部43は、移動する本体2が被検知物Oに接触した際に、本体2への衝撃を緩和するバンパー22に連動している。バンパー22は、被検知物Oに接触した際に、本体2の内側へ向かって押し込まれるように変位する。接触検知部43は、このバンパー22の変位を検知して本体2が被検知物Oに接触したことを検知する。接触検知部43は、例えばバンパー22の変位によって入り、切りされるマイクロスイッチ、またはバンパー22の変位量を非接触で測定する赤外線センサーや、超音波センサーを含んでいる。
表示部16は、点灯や点滅などの表示や、文字や図形の表示によって、使用者や自律型掃除装置1の周囲にいる第三者に運転の開始などの適宜の情報を知らせる。表示部16は、例えば、本体2の天面に設けられるディスプレーである。そのため、使用者は、自律型掃除装置1を被掃除面に置いた状態で表示部16に表示される情報を容易に目視することができる。また、使用者は、表示部16に表示される情報を通じて自律型掃除装置1から提示される様々な情報を取得することができる。
二次電池3は、移動部11、掃除部12、検知部13、および制御部15を含む自律型掃除装置1の各部で消費される電力を蓄えている。二次電池3は、例えばリチウムイオン電池であり、充放電を制御する制御回路(図示省略)を有している。この制御回路は、二次電池3の充放電に関する情報を制御部15へ出力している。
図4は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置のブロック図である。
図2から図3に加えて図4に示すように、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、制御部15、二次電池3、および表示部16に加えて通信部47を備えている。
通信部47は、充電台5に赤外線信号を送信する、例えば赤外線発光素子を含む送信部47aと、および充電台5やリモートコントローラー(図示省略)からの赤外線信号を受信する、例えばフォトトランジスタを含む受信部47bと、を備えている。
カメラ部41は、例えばデジタルカメラである。つまり、カメラ部41は、撮影した画像を電気信号に変換する撮像素子41a(イメージセンサー)と、撮像素子41aに像を結ぶ(生じさせる)光学系41bと、を備えている。撮像素子41aは、例えば、CCDイメージセンサー(Charge-Coupled Device image sensor)や、CMOSイメージセンサー(Complementary metal-oxide-semiconductor image sensor)である。そのため、自律型掃除装置1は、カメラ部41で撮影した画像Iのデジタルデータを即座に取り扱うことができる。つまり、カメラ部41で撮影される画像Iは、例えば画像処理回路(図示省略)を利用することで所定のデータ形式に圧縮したり、二値画像に変換したり、グレースケールに変換したりすることができる。カメラ部41は、例えば可視光領域の画像を撮影する。可視光領域の画像は、例えば赤外領域の画像に比べて画質が良好であり、複雑な画像処理を施すことなく使用者に視認可能な情報を容易に提供できる。
距離測定装置45は、奥行きの情報を得ようとする範囲に光を照射する発光部45aと、発光部45aから照射された光の反射光を受光する受光部45bと、を備えている。自律型掃除装置1は、発光部45aの発光開始から受光部45bで反射光を受光するまでの時間差に基づいて自律型掃除装置1から被検知物Oまでの距離情報を取得できる。発光部45aは、例えば赤外線や、可視光を照射する。
制御部15は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit、CPU、図示省略)、中央処理装置で実行(処理)される各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する補助記憶装置(例えば、Read Only Memory、ROM、図示省略)、プログラムの作業領域が動的に確保される主記憶装置(例えば、Random access memory、RAM、図示省略)を備えている。補助記憶装置は、例えば不揮発性メモリのように書き換え可能なものであることが好ましい。
制御部15は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池3、表示部16、および通信部47に電気的に接続されている。制御部15は、通信部47を介して充電台5、およびリモートコントローラーから受信する指令に応じて移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池3、表示部16を制御する。
制御部15は、自律型掃除装置1の自律移動を制御する自律移動制御部52と、検知部13の動作を制御する検知制御部53と、検知部13の検知結果に基づいて被検知物Oが予め定める移動対象条件を満たすか否かを判断する移動対象判断部55と、被検知物Oが移動対象条件を満たす場合には、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する第二移動制御部56と、を含んでいる。自律移動制御部52、検知制御部53、移動対象判断部55、および第二移動制御部56は、演算プログラムである。
制御部15は、自律移動制御部52、および検知制御部53を連携させて第一移動態様を実行することが可能である。また、制御部15は、自律移動制御部52、検知制御部53、移動対象判断部55、および第二移動制御部56を連携させて第二移動態様を実行することが可能である。
自律移動制御部52は、掃除場所の環境地図情報(Environment Map、図示省略)を記憶する地図情報記憶部51と、移動部11の電動機27の動作を制御する移動制御部58と、吸込掃除部31のブラシ用電動機36、および電動送風機38の動作を制御する掃除制御部59と、を備えている。
地図情報記憶部51は、補助記憶装置に確保される記憶領域に構築されたデータの集合であって、適宜のデータ構造を有している。地図情報記憶部51は、補助記憶装置から主記憶装置に読み込まれて利用され、適宜の更新を経て、補助記憶装置へ上書きされる。
環境地図情報は、自律型掃除装置1の自律移動に用いられる情報であり、少なくとも掃除対象となる場所において、自律型掃除装置1が移動可能な領域の形状を含む情報である。環境地図情報は、例えば整然と配列された一辺10センチメートルの矩形の集合として構築されている。環境地図情報は、自律型掃除装置1の使用に際して、事前に準備されるものであっても良いし、Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)によって自己位置推定と同時に作成されるものであっても良い。環境地図情報は、掃除運転にともなう移動の過程で作成、および更新されても良い。SLAMで環境地図情報を作成する場合には、自律型掃除装置1は、検知部13の他に、マップの作成に必要なカメラや、エンコーダなどの種々のセンサー(図示省略)を備えていることが好ましい。移動制御部58は、これらカメラやセンサーから取得する情報に基づいて環境地図情報を作成する。
制御部15は、環境地図情報を表示部16に表示することができる。使用者は、表示部16に表示される環境地図情報から、自律型掃除装置1が作成した環境地図情報の状態を容易に確認できる。
移動制御部58は、環境地図情報に基づいて自律型掃除装置1の自律移動を制御する。移動制御部58は、電動機27に流れる電流の大きさ、および向きを制御して、電動機27を正転、または逆転させる。移動制御部58は、電動機27を正転、または逆転させることで、駆動輪26の駆動を制御している。
また、移動制御部58は、近接検知部42、または接触検知部43の検知結果に基づいて、被検知物Oを回避できる。つまり、移動制御部58は、近接検知部42が被検知物Oを検知した場合には、本体2が被検知物Oへ接近、接触、および衝突することを回避する制御(障害物回避制御)を実行する。また、移動制御部58は、近接検知部42、および接触検知部43が被検知物Oを検知した場合には、本体2が被検知物Oへ接触、および衝突することを回避する制御(障害物回避制御)を実行する。なお、接触検知部43が被検知物Oを検知した場合には、例えばバンパー22は既に被検知物Oに接しているが、このような接触検知部43が被検知物Oを検知するために被検知物Oに接する状況は、障害物回避制御の開始条件(トリガー事象)として、許容される。
移動制御部58、および第二移動制御部56は、一体の演算プログラムであっても良い。
掃除制御部59は、ブラシ用電動機36、および電動送風機38を個別に制御する。掃除制御部59は、第二移動様式、つまり被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する際には、吸込掃除部31(ブラシ用電動機36、および電動送風機38)を停止させておく。
検知制御部53は、カメラ部41の動作を制御する。検知制御部53は、所定の時間間隔毎にカメラ部41に画像Iを撮影させる。検知制御部53は、カメラ部41で撮影された画像Iを検知結果記憶部61に記憶する。カメラ部41で撮影された画像Iは、検知結果記憶部61は、主記憶装置に確保されている。検知結果記憶部61は、カメラ部41で撮影された画像Iを記憶する。検知結果記憶部61は、複数の画像Iを記憶可能な容量を有している。検知制御部53は、検知結果記憶部61を介して移動対象判断部55に画像Iを提供する。
検知結果記憶部61は、カメラ部41で撮影された画像Iを表す画像情報を無加工で記憶しても良いし、画像Iの解析処理に必要な情報を残す限りにおいてデータサイズを減らすように加工した画像情報を記憶しても良い。検知結果記憶部61に記憶される画像情報は、例えば、カメラ部41で撮影された画像Iをグレースケールに変換した画像(以下、カメラ部41で撮影された元の画像Iと同じく画像Iと呼ぶ。)であっても良い。グレースケール画像の場合には、画像Iの画素値は輝度値と一致する。グレースケールに変換した画像Iを保存する場合には、制御部15は、元画像を記憶する場合に比べて、検知結果記憶部61に割り当てるメモリ領域の容量(リソース)を少量で済ませることが可能である。また、グレースケールに変換した画像Iを以後の解析処理に使用する場合には、制御部15は、元画像を処理する場合に比べて中央処理装置の負荷を軽減できる。画像Iのグレースケール化を含む画像処理は、カメラ部41で実行されても良い。カメラ部41で画像処理を実行することによって、中央処理装置の負荷が軽減される。
また、検知制御部53は、照明装置の点灯と消灯とを制御する。照明装置は、画像Iを明るくして解析処理の容易化と精度向上とを容易にする。
さらに、検知制御部53は、近接検知部42の検出結果、つまり被検知物Oが本体2に接近したこと、およびその時の被検知物Oと本体2との離間距離を検知結果記憶部61に記憶する。
また、検知制御部53は、接触検知部43の検出結果、つまり被検知物Oが本体2に接触したことを検知結果記憶部61に記憶する。
移動対象判断部55は、検知部13の検知結果に基づいて被検知物Oの幅寸法、高さ寸法、および奥行き寸法を測定可能である。また、移動対象判断部55は、検知部13の検知結果に基づいて被検知物Oの形状を認識可能である。
移動対象判断部55は、例えばカメラ部41が撮影する距離画像を解析して被検知物Oの幅寸法、高さ寸法、および奥行き寸法を測定する。また、移動対象判断部55は、例えばカメラ部41が撮影する距離画像を解析して被検知物Oの形状(稜線)や被検知物Oの表面の凹凸を認識する。移動対象判断部55は、カメラ部41が撮影する距離画像において、被検知物Oが撮影されていると推定される領域の、各画素における距離の差(深度の差)から被検知物Oの表面の凹凸を認識することができる。そして、移動対象判断部55は、被検知物Oの表面の凹凸を認識して、被検知物Oを移動させる際に、本体2を押し当てるのに適した箇所を探索する。
また、移動対象判断部55は、近接検知部42、または接触検知部43の検知結果に基づいて被検知物Oの幅寸法、および奥行き寸法を測定可能である。移動対象判断部55は、検知部13の検知結果に基づいて被検知物Oの形状を認識可能である。移動対象判断部55は、近接検知部42で被検知物Oの接近を検出する都度、または接触検知部43で被検知物Oの接触を検出する都度、被検知物Oの回りを右回り、または左回りで本体2を移動させながら近接検知部42での被検知物Oの接近の検出、または接触検知部43での被検知物Oの接触の検出を繰り返して、被検知物Oの幅寸法、および奥行き寸法の測定、および形状の認識を試みる。移動対象判断部55は、近接検知部42での被検知物Oの接近の検出、または接触検知部43での被検知物Oの接触の検出を繰り返す最中、本体2の移動経路を記憶したり、移動経路を環境地図上にマッピングしたりすることで、被検知物Oの幅寸法、および奥行き寸法を測定し、形状を認識する。
さらに、移動対象判断部55は、検知部13の検知結果から被検知物Oの奥行き寸法を取得不可能な場合には、被検知物Oの周囲を移動して被検知物Oの奥行き寸法の取得を試みる。例えば、移動対象判断部55は、カメラ部41が撮影する距離画像に被検知物Oの天面が撮影されていれば、被検知物Oの奥行き寸法を取得できる一方、カメラ部41が撮影する距離画像に被検知物Oの天面が撮影されていなければ、被検知物Oの奥行き寸法を取得できない。そこで、移動対象判断部55は、カメラ部41が撮影する距離画像から被検知物Oの奥行き寸法を取得することが不可能な場合には、例えば被検知物Oの側方へ回り込んで被検知物Oの撮影を行い、被検知物Oの奥行き寸法の取得を試みる。
移動対象条件は、移動対象判断部55が被検知物Oの移動の可否を判断する条件である。移動対象条件は、被検知物Oの幅寸法が予め定める第一判断基準値以下であることを含む(第一条件)。また、移動対象条件は、被検知物Oの高さ寸法が予め定める第二判断基準値以下であることを含む(第二条件)。さらに、移動対象条件は、被検知物Oの形状が予め定める判断基準形状を満たすことを含む(第三条件)。また、移動対象条件は、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御した結果、実際に移動可能と推定できることを含む(第四条件)。
移動対象条件は、これら第一条件から第四条件の少なくともいずれかを含んでいる。移動対象条件は、これら第一条件から第四条件のうち複数を含む場合には、論理和であっても良いし、論理積であっても良い。
ところで、検知部13で被検知物Oの重量を検知することは難しい。そこで、第一条件は、第一判断基準値、例えば本体2の幅寸法の2倍を基準にしている。第一判断基準値よりも幅寸法が大きい被検知物Oは、相応の重量を有することが推定される。したがって、第二移動制御部56は、被検知物Oの幅寸法が予め定める第一判断基準値以下の場合には、移動対象条件の成立を判断し、それ以外の場合には移動対象条件の不成立を判断する。
第二条件は、第二判断基準値、例えば本体2の高さ寸法の3倍を基準にしている。第二判断基準値よりも高さ寸法が大きい被検知物Oは、その底部を本体2で押されることで転倒することが推定される。したがって、第二移動制御部56は、被検知物Oの高さ寸法が予め定める第二判断基準値以下の場合には、移動対象条件の成立を判断し、それ以外の場合には移動対象条件の不成立を判断する。
第三条件は、判断基準形状、例えば予め定める面積以上の垂直な平面部、予め定める横幅寸法以上の直線部、これら平面部および直線部の高さ(被掃除面からの離間距離)の組み合わせを基準にしている。判断基準形状を満たさない被検知物Oは、本体2を押し付けて移動させる際に移動方向を特定し難く、自律型掃除装置1の移動方向から逸れてしまうことが推定される。また、判断基準形状を満たさない被検知物Oは、衣類のように本体2を押し付けて移動させる際に形状を変化させる可能性があり、自律型掃除装置1の移動方向から逸れてしまったり、移動部11に巻き込んで移動が不可能になってしまったりすることが推定される。したがって、第二移動制御部56は、被検知物Oが予め定める判断基準形状を満たす部分を有する場合には移動対象条件の成立を判断し、それ以外の場合には移動対象条件の不成立を判断する。
第四条件は、第一条件から第三条件とは性質の異なる条件である。第一条件から第三条件では、非接触で条件の成否を判断するのに対して、第四条件では、実際に本体2を被検知物Oに接触させて条件の成否を判断する。
第四条件は、例えば、本体2を被検知物Oに押し当てて被検知物Oを移動させることが可能か否か、換言すると、移動部11の駆動輪26が空転したり、回転が阻止されたりするか否かを基準にしている。したがって、第二移動制御部56は、本体2を被検知物Oに押し当てた状態で、本体2が予め定める移動基準距離以上移動する場合には、移動対象条件の成立を判断し、それ以外の場合、例えば駆動輪26が空転したり、回転が阻止されたりする場合には、移動対象条件の不成立を判断する。移動基準距離は、被掃除面の掃除を阻害する被検知物Oの大きさ、例えば雑誌等に比べて極めて小さい距離、例えば2mm~5mmに設定される。例えば、表面が柔らかい一方で自律型掃除装置1で移動困難な重量を有する被検知物Oでは、第四条件が満たされる一方で、被検知物Oの移動に失敗することが起こり得る。第四条件の成否は、通常の掃除を行う際の移動速度(第一移動態様における移動速度)、および移動対象条件が満たされた後に被検知物Oを移動させる際の移動速度よりも小さい速度で判断されることが好ましい。
また、第四条件の他の類型として、第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させることが可能か否かを試みた後に、被検知物Oを移動させるように移動部を11制御しても良い。被検知物Oを移動させることが可能か否かを試みる方法には、例えば、掃除場所における自律型掃除装置1の位置変化に基づいて移動の可否を試す方法と、自律型掃除装置1の位置変化を直接的に捉えるのではなく、種々のセンサーの検知結果から間接的に移動の可否を試す方法と、がある。
自律型掃除装置1の位置変化に基づいて移動の可否を試す方法には、次のような方法がある。先ず、本体2を被検知物Oに押し当てて被検知物Oの移動を試みる。そして、例えば、カメラ部41が撮影する画像Iに基づく自己位置推定から自律型掃除装置1が移動(自律型掃除装置1の位置が変化)している場合には、被検知物Oの移動が可能であることが判断できる。また、例えば、赤外線センサーを用いて被検知物O以外の周囲の物体、例えば居室の壁との相対的な距離が変化した場合には、被検知物Oの移動が可能であることが判断できる。
センサーの検知結果から間接的に移動の可否を試す方法には、次のような方法がある。先ず、本体2を被検知物Oに押し当てて被検知物Oの移動を試みる。そして、例えば、第四条件のように移動部11の駆動輪26が空転することなく回転している場合には、被検知物Oの移動が可能であることが判断できる。また、例えば、被検知物Oに押し当てたバンパーの変位量をバンパーセンサーで検知することで、被検知物Oの移動が可能であることが判断できる。具体的には、仮に移動させることが困難な被検知物Oにバンパーを押し当てている場合には、バンパーは、移動可能な範囲で最大変位量まで押し込まれる。そこで、バンパーが最大変位量まで押し込まれたことをパンパーセンサーが検知した場合には、被検知物Oの移動が不可能であることが判断できる。また、被検知物Oと被掃除面との摩擦力(または摩擦係数)の変化(静摩擦から動摩擦への変化)をバンパーの押し込み量の変化から判断することで、被検知物Oの移動が可能か否かを判断できる。被検知物Oが移動し始めると、被検知物Oと被掃除面との摩擦力は低下し、ひいてはバンパーの押し込み量は小さくなる。そして、被検知物Oが移動している最中は、被検知物Oと被掃除面との摩擦力は安定し、ひいてはバンパーの押し込み量も安定する。このようなバンパーの押し込み量の変化をパンパーセンサーが検知した場合には、被検知物Oの移動が可能であることが判断できる。
図5は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置が被検知物の移動を試みる様子の概略的な平面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る自律型掃除装置1の第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する前に被検知物Oの移動予定場所PSを予め掃除する。移動予定場所PSは、例えば、被検知物Oの現在位置を中心に、予め定める範囲PSaであっても良いし、被検知物Oの予定移動先PSbに限定されていても良い。また、移動予定場所PSの掃除は、被検知物Oが移動対象条件を満たす場合のみであっても良いし、被検知物Oが移動対象条件を満たすか否かを判断する前であっても良い。例えば、被検知物Oの奥行き寸法を測定するために被検知物Oの周囲を移動する際に、同時に移動予定場所PSとして被検知物Oの周囲を掃除しておいても良い。さらに、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する前に被検知物Oを移動させずに掃除可能な被掃除面を網羅的に掃除することを以て、移動予定場所PSの掃除に代えても良い。第四条件を判断する前には、被検知物Oの周囲を一周して掃除しておくことが好ましい。
そして、第二移動制御部56は、被検知物Oの移動予定場所PSを予め掃除した後であって、被検知物Oが移動対象条件を満たす場合には、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する(第二移動態様)。非接触で判断する第一条件から第三条件では、本体2は、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する際に、初めて被検知物Oに接触する。被検知物Oに接触して判断する第四条件では、本体2は、被検知物Oが移動基準距離以上移動した後、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する。
なお、被検知物Oが移動対象条件を満たす場合には、移動制御部58は、近接検知部42、または接触検知部43の検知結果に基づいて、本体2が被検知物Oへ接近、接触、および衝突することを回避する制御(障害物回避制御)を無効化する。つまり、非接触で判断する第一条件から第三条件では、移動制御部58は、近接検知部42が被検知物Oを検知した場合であっても、被検知物Oへ接近、接触、および衝突することを回避する制御(障害物回避制御)を無効化する。また、被検知物Oに接触して判断する第四条件では、移動制御部58は、近接検知部42、および接触検知部43が被検知物Oを検知した場合であっても、被検知物Oへ接触、および衝突することを回避する制御(障害物回避制御)を無効化する。
第二移動制御部56は、被検知物Oの移動が可能な場合には、予め定める移動量Lだけ被検知物Oを移動させる。この移動量Lは、例えば、被検知物Oの移動方向における寸法より大きく、被検知物Oの移動によって露出する被掃除面を掃除部12が確実に掃除可能な距離に設定される。この移動量Lは、被検知物Oや、掃除場所の環境によらず一定であっても良いし、被検知物Oの性質(例えば幅寸法、高さ寸法、奥行き寸法、形状)や、掃除場所の環境(壁に近いか否か)に応じて適宜に変更されるものであっても良い。このときの移動速度は、通常の掃除を行う際の移動速度(第一移動態様における移動速度)よりも小さく設定されることが好ましい。
例えば、第二移動制御部56は、検知部13の検知結果から被検知物Oの奥行き寸法を取得可能であり、かつ被検知物Oの移動が可能な場合には、奥行き寸法に応じて被検知物Oを移動させる。この移動量Lは、被検知物Oを正面(または背面)から押して移動させる場合には、被検知物Oの奥行き寸法より大きく、被検知物Oの移動によって露出する被掃除面を掃除部12が確実に掃除可能な距離に設定される。このときの移動速度も、通常の掃除を行う際の移動速度よりも小さく設定されることが好ましい。
また、第二移動制御部56は、掃除部12を被検知物Oに近づけた姿勢で被検知物Oを移動させるように移動部11を制御し、かつ被検知物Oを移動させる。本実施形態に係る掃除部12は、本体2の前端部の近傍に配置されている。そのため、第二移動制御部56は、本体2の前端部を被検知物Oに近づけた姿勢で前進方向へ被検知物Oを移動させるように移動部11を制御し、かつ被検知物Oを移動させる。なお、掃除部12が本体2の後端部の近傍に配置されている場合には、第二移動制御部56は、本体2を反転させて自律型掃除装置1の後退方向へ被検知物Oを移動させるように移動部11を制御し、かつ被検知物Oを移動させる。
移動対象条件を満たす被検知物Oが実際に移動可能か否かの判断は、第四条件と同じように、例えば駆動輪26が空転したり、回転が阻止されたりするか否かで行われる。駆動輪26が空転したり、回転が阻止されたりする場合には、自律型掃除装置1は、被検知物Oと被掃除面との間の摩擦抵抗に抗して被検知物Oを移動させることができない。そこで、第二移動制御部56は、駆動輪26が空転したり、回転が阻止されたりする場合には、被検知物Oを実際に移動させることが不可能である判断して被検知物Oの移動を中止する。
図6は、本発明の実施形態に係る自律型掃除装置が被検知物を移動させる際の移動先と環境地図との関係を説明する概略的な平面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る自律型掃除装置1の第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させた場合には、環境地図に被検知物Oの移動元PODと移動先POAとを識別する。ここで言う識別とは、例えば環境地図情報のデータ構造に移動元PODと移動先POAを記録するものであっても良いし、環境地図情報のデータ構造に関連付けられた別途のデータ構造に移動元PODと移動先POAを記録するものであっても良い。移動元PODとして識別される情報は、被検知物Oが移動前に置かれていた場所の情報と、平面視における被検知物Oの大きさの情報と、を含んでいる。移動先POAとして識別される情報は、被検知物Oが移動後に置かれている場所の情報と、平面視における被検知物Oの大きさの情報と、を含んでいる。
ところで、一般的な家庭のような掃除場所では、被検知物Oの移動先POAとして好ましくない場所がある。例えば、居室の出入口の扉Cの前、特に居室の内側へ回転する開き戸の前へ被検知物Oを移動させると(図6中、移動させることが好ましくない移動先nPOA)、使用者が居室に入るときの邪魔になったり、開き戸の移動によって被検知物Oを破損させてしまったりする虞がある。また、扉Cの無い居室の出入口や、扉Cを開いたままの居室の出入口であっても、被検知物Oを移動させたために、被検知物Oで出入口を塞いでしまって、自律型掃除装置1が居室から出て、廊下や他の居室へ移動できなくなることが考えられる。
そこで、自律型掃除装置1は、環境地図上に識別される被検知物Oの移動不可能領域MUA、または移動可能領域MEAを識別して、地図情報記憶部51に記憶する。ここで言う識別とは、例えば環境地図情報のデータ構造に移動不可能領域MUA、または移動可能領域MEAを記録するものであっても良いし、環境地図情報のデータ構造に関連付けられた別途のデータ構造に移動不可能領域MUA、または移動可能領域MEAを記録するものであっても良い。移動不可能領域MUA、および移動可能領域MEAは、一方が識別されていれば、他方はその残部として識別される。移動不可能領域MUA、および移動可能領域MEAは、表示部16に表示される環境地図上に使用者自らが識別することも可能であるし、第二移動制御部56によって自律的に識別することも可能である。
例えば、使用者は、居室の内側へ回転する開き戸のような、自律型掃除装置1が自律的に移動不可能領域MUAを識別困難な場所について、表示部16に表示される環境地図上にタッチペンのような入力装置(図示省略)を用いて移動不可能領域MUAを手動で識別する。
また、第二移動制御部56は、居室から廊下へと繋がる出入口のように、急峻に狭くなる箇所の周囲、例えば半径1メートルの範囲を移動不可能領域MUAとして識別する。居室から廊下へと繋がる出入口のように、急峻に狭くなる箇所へ被検知物Oを移動させると、居室と廊下との間で往来することができなくなってしまう。そこで、第二移動制御部56は、居室と廊下との間での往来を確実にするため、移動不可能領域MUAを自律的に識別する。
さらに、第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させたと仮定した場合に、被掃除面を網羅的に移動可能か否かをシミュレーションし、被掃除面を網羅的に移動することが阻害される可能性のある場所を移動不可能領域MUAとして識別しても良い。例えば、第二移動制御部56は、居室から廊下へと繋がる出入口のように、急峻に狭くなる箇所へ被検知物Oを移動させたと仮定した場合に、出入口を被検知物Oで塞いでしまって被掃除面を網羅的に移動することが妨げられないか否かをシミュレーションし、出入口を被検知物Oで塞いでしまう可能性のある場所(仮想的な移動先nPOA)を移動不可能領域MUAとして識別する。なお、被検知物Oが自律型掃除装置1の移動方向から逸れてしまい、意図通りに移動できないことが有り得る。そのため、第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させている最中にも、被掃除面を網羅的に移動可能か否かをシミュレーションし、被掃除面を網羅的に移動することが阻害される可能性のある場所を移動不可能領域MUAとして刻々と識別しても良い。
そして、第二移動制御部56は、移動不可能領域MUAを避けて被検知物Oを移動させる、または移動可能領域MEAへ被検知物Oを移動させる。これらの移動の制御は、被検知物Oが移動不可能領域MUAに侵入しないように、移動量Lを調整して被検知物Oを移動可能領域MEA内で移動させること、移動方向を調整して被検知物Oを移動可能領域MEA内で移動させること、を含んでいる。また、これらの移動の制御は、被検知物Oが移動不可能領域MUAから撤去されるように、移動量Lを調整して被検知物Oを移動可能領域MEA内へ移動させること、移動方向を調整して被検知物Oを移動可能領域MEA内へ移動させること、を含んでいる。
また、第二移動制御部56は、余地の広い場所へ向かって被検知物Oを移動させる。図6のような場合には、第二移動制御部56は、余地の広い場所として、被検知物Oを部屋の中央へ向かって移動させる。
第二移動制御部56は、掃除場所の境界線、つまり居室の壁と被検知物Oとの相対的な位置の都合上、被検知物Oを移動させても被検知物Oに覆われている被掃除面の全体を露出させられないことが有り得る。そこで、第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させても被検知物Oに覆われている被掃除面の全体を露出させられないことが明らかであっても、可能な範囲で被検知物Oを移動させ、露出した被掃除面(被検知物Oに覆われている被掃除面の一部に相当する)を掃除することが好ましい。
そして、掃除制御部59は、被検知物Oを移動させた後に、被検知物Oの移動によって表れた場所を掃除する。
第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させた場合には、移動元PODの被掃除面が掃除された後に、被検知物Oを移動前の元の場所(移動元POD)へ戻すように移動11を制御してもよい。
また、第二移動制御部56は、被検知物Oを移動させた場合には、環境地図上に識別される集荷場所へ被検知物Oを集めても良い。ここで言う識別とは、例えば環境地図情報のデータ構造に集荷場所を記録するものであっても良いし、環境地図情報のデータ構造に関連付けられた別途のデータ構造に集荷場所を記録するものであっても良い。集荷場所は、居室の隅のように、予め定められていても良いし、使用者によって任意に設定できるものであっても良い。
なお、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、本体2の押当部23を被検知物Oに接触させて被検知物Oを移動させるが、被検知物Oの移動動作は押し退けることに限られない。例えば、自律型掃除装置1は、被検知物Oに鉤爪を引っ掛けて引き退けるものであっても良い。
以上のように、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oが予め定める移動対象条件を満たすか否かを判断する移動対象判断部55と、被検知物Oが移動対象条件を満たす場合には、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、例えば居室の壁のように、移動させることが不可能なものや、移動部11が発生させる駆動力では、移動させることが困難と推定される被検知物Oの移動を避けつつ、可能な範囲で被掃除面に置かれた被検知物Oを退けて、露出した被掃除面を掃除し、掃除残しを減らすことができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oの移動が可能な場合には、予め定める移動量Lだけ被検知物Oを移動させる。そのため、自律型掃除装置1は、被掃除面に置かれた被検知物Oを退けて、露出した被掃除面を掃除し、掃除残しを減らすことができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oの幅寸法が予め定める第一判断基準値以下である場合に、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に適合すると推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御することができる。自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に不適合と推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くすことができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oの高さ寸法が予め定める第二判断基準値以下である場合に、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に適合すると推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御することができる。自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に不適合と推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くすことができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oの形状が予め定める判断基準形状を満たす場合に、移動部11が発生させる力によって被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に適合すると推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御することができる。自律型掃除装置1は、本体2の形状や大きさ、移動部11が発生可能な駆動力に不適合と推定される被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くしたり、衣類のような形の定まらない物を移動部11に巻き込む危険性を低減したりすることができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oの移動を移動させるように移動部11を制御する前に被検知物Oの移動予定場所を予め掃除する。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させることにともなって新たに生じる掃除残りを減らすことができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させた後に、被検知物Oの移動によって表れた場所を掃除する。つまり、自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させている最中に、被検知物Oを移動させながら露出した被掃除面を掃除するのでは無く、被検知物Oを移動させた後に、被検知物Oの移動によって表れた場所を掃除する。そのため、自律型掃除装置1は、露出した被掃除面をより確実に掃除することができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させるように移動部11を制御する際には、吸込掃除部31を停止させておく。そのため、自律型掃除装置1は、吸込掃除部31に吸い込んでしまうことが不適切な被検知物O、例えば折り畳まれ方によって偶発的に移動対象条件を満たした衣類を、移動させている最中に吸い込んでしまうことを避けることができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、掃除部12を被検知物Oに近づけた姿勢で被検知物Oを移動させるように移動部11を制御し、かつ被検知物Oを移動させる。自律型掃除装置1が拭き掃除部32を備えている場合、拭き掃除部32を被検知物Oに近づけた姿勢で被検知物Oを移動させるように移動部11を制御し、かつ被検知物Oを移動させることで、被検知物Oの移動量を抑制し、ひいては電力の消費を抑えることができる。また、自律型掃除装置1が吸込掃除部31を備えている場合、吸込掃除部31を被検知物Oに近づけた姿勢で被検知物Oを移動させるように移動部11を制御そ、かつ被検知物Oを移動させることで、被検知物Oを移動させた後に、被検知物Oの際を確実に掃除することができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、検知部13の検知結果から被検知物Oの奥行き寸法を取得可能であり、かつ被検知物Oの移動が可能な場合には、奥行き寸法に応じて被検知物Oを移動させる、そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを必要以上に移動させる無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くすことができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、検知部13の検知結果から被検知物Oの奥行き寸法を取得不可能な場合には、被検知物Oの周囲を移動して奥行き寸法の取得を試みる。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oの奥行き寸法を取得できた場合には、被検知物Oを必要以上に移動させる無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くすことができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、移動不可能領域MUAを避けて被検知物Oを移動させる、または移動可能領域MEAへ被検知物Oを移動させる。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させることにともなう不都合(移動させた被検知物Oが扉の開閉を阻害する等)を回避できる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させた場合には、環境地図に被検知物Oの移動先を識別する。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させたことにともなう無駄な作業、例えば1度動かして、既に移動元の被掃除面を掃除済みの被検知物Oを、再度移動させるような無駄(電力の無駄な消費や試行に費やす時間的な無駄)を無くすことができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させた場合には、被検知物Oを移動前の元の場所へ戻すように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、移動させたことによって使用者が被検知物Oの存在を失念し、探し回ってしまうような自体を避けることができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させた場合には、環境地図上に識別される集荷場所へ被検知物Oを集める。そのため、移動させたことによって使用者が被検知物Oの存在を失念し、探し回ってしまうような自体を避け、かつ被検知物Oを整頓させることができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、環境地図を表示可能な表示部16を備えている。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを移動させたことや、被検知物Oを移動させた場所(移動先)を知らせることができる。
さらに、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、被検知物Oを押して移動させるように移動部11を制御する。そのため、自律型掃除装置1は、特別な装置を用いること無く、本体2で被検知物Oを移動させることができる。
また、本実施形態に係る自律型掃除装置1は、平面視において直線形状を有し、かつ被検知物Oに押し当て可能な位置に設けられた押当部23を備えている。そのため、自律型掃除装置1は、被検知物Oを進行方向へ向かって真っ直ぐに押し出し、被検知物Oが意図しない方向へ逸れてしまうことを回避できる。
したがって、本実施形態に係る自律型掃除装置1によれば、被掃除面に残された被検知物O(障害物)に応じて、より確実に掃除を行い、掃除残しを減らすことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。