JP7131076B2 - プレス品を生産する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス品を生産する方法に関する。さらに詳しくは、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する方法に関する。
車両の車体フレームには高い強度が要求される。そのため、車体フレームの材料には高強度の鋼板等の金属が採用されることが多い。このような高強度の金属を材料とする車体フレームを構成する部品は、プレスによって成形される。
車体フレームを構成する部品の断面形状は、天板部及び縦壁部を含むU字形状又はハット形状であることが多い。また、車体フレームは湾曲した部分を有することが多い。湾曲した部分は例えば、4輪自動車の上下方向に延びるセンターピラーのT字形状の上端部及び下端部である。プレスによって湾曲した部分を有する部品を成形すると、材料の変形に伴い湾曲した部分が引張応力を受ける。この引張応力を受ける湾曲した部分は「伸びフランジ部」と言われる。伸びフランジ部に過剰な引張応力が負荷される成形を行うと、伸びフランジ部で破断が生じやすい。
破断を抑制したプレス品を生産する方法は例えば、特開2017-136624号公報(特許文献1)に開示されている。
特許文献1に記載のプレス品を生産する方法では、ダイ、ダイから突出する押圧部材、ダイ及び押圧部材と対向するブランクホルダ、及びダイと対向し、ブランクホルダの外側に配置されたパンチを含むプレス装置でブランクを曲げ成形する。具体的には、ブランクをブランクホルダと押圧部材とで挟み込む。その後、押圧部材と押圧部材の外側に配置されたダイの凸部とでブランクを曲げ成形する。これにより、プレス品の成形不良が抑制される、と特許文献1には記載されている。
特開2017-136624号公報
しかしながら、一般に、伸びフランジ部を含むプレス品を曲げ成形すれば、シワが生じやすい。特に、ハット断面形状等のプレス品の天板部にシワが発生しやすい。このようなシワの発生を抑えようとすると、伸びフランジ部を含むプレス品の端部等にて破断が生じやすい。そのため伸びフランジ部を含むプレス品の成形においては、所望の形状に成形しつつ、シワの発生及び破断の双方を回避することが困難であることが多い。
本発明の目的は、シワの発生及び破断を抑制しながら、所望の形状のプレス品を生産する方法を提供することである。
本実施形態のプレス品を生産する方法は、パンチ、パンチと対向するダイ及びパンチと対向するパッドを含むプレス装置によって、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する。プレス品を生産する方法は、配置工程と、第3領域拘束工程と、第1領域押し込み工程と、第2領域加工工程と、を含む。配置工程では、プレス品の伸びフランジ部の端となる部分を含む第1領域、第1領域よりも内側に位置する第2領域、第2領域よりも内側に位置する第3領域を含むブランクをプレス装置に配置する。第3領域拘束工程では、配置工程後、パッドとパンチとを近づけ、パッドとパンチとでブランクとパッドとの間に隙間を空けて第3領域を拘束する。第1領域押し込み工程では、第3領域拘束工程後、ダイとパンチとを近づけ、ダイと第1領域を接触させ、ダイによって第1領域をパンチ側に押し込む。第2領域加工工程では、第1領域押し込み工程の開始後、パンチと第2領域を接触させ、かつ、ダイと第2領域を接触させて、パンチ及びダイによって第2領域を加工する。
本発明によるプレス品を生産する方法によれば、シワの発生及び破断を抑制しながら、ブランクを所望の形状のプレス品を生産することができる。
図1は、曲げ成形を示す断面図である。 図2は、パッド曲げ成形を示す断面図である。 図3は、伸びフランジ部を含むプレス品の斜視図である。 図4は、図3中のIV-IV線での断面図である。 図5は、第1実施形態のプレス装置を示す断面図である。 図6は、ブランクの平面図である。 図7は、第1実施形態の配置工程を示す断面図である。 図8は、第1実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。 図9は、第1実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。 図10は、第1実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。 図11は、第1実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。 図12は、第2実施形態のプレス装置を示す断面図である。 図13は、第2実施形態の配置工程を示す断面図である。 図14は、第2実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。 図15は、第2実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。 図16は、第2実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。 図17は、第2実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。 図18は、第3実施形態のプレス装置を示す断面図である。 図19は、第3実施形態の配置工程を示す断面図である。 図20は、第3実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。 図21は、第3実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。 図22は、第3実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。 図23は、第3実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。 図24は、本実施例で成形したプレス品のモデルの斜視図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[曲げ成形及びパッド曲げ成形]
初めに、一般的な曲げ成形及び一般的なパッド曲げ成形について説明する。
図1は、曲げ成形を示す断面図である。以下、「断面」は特に断りのない限りプレス方向に沿った断面を意味する。図1を参照して、一般的な曲げ成形は、パンチ101及びダイ102によって行われる。ブランク10をパンチ101の上に配置し、ダイ102を下降させる。ダイのパンチに最も近いダイ頂部103がブランク10の一方の端部と接触する。ダイ頂部103がブランク10の一方の端部と接触すると、パンチ頂部104上のブランクの他方の端部がパンチ頂部104から離れる。ブランク10の他方の端部がパンチ頂部104から離れているため、ダイ102とパンチ頂部104との間に余剰な材料が存在する。この状態からダイ102を下死点に到達させると、この余剰な材料がシワとなる。この曲げ成形によるシワの発生を抑制する方法として、パッド曲げ成形がある。
図2は、パッド曲げ成形を示す断面図である。図2を参照して、一般的なパッド曲げ成形は、パンチ101、ダイ102及びパッド110によって行われる。上述したように、単なる曲げ成形では、ダイ頂部103がブランク10の一方の端部を加工し始めると、ブランク10の他方の端部がパンチ頂部104から離れる。そこで、パッド曲げ成形では、パッド110がパンチ頂部104にブランクの他方の端部を押し付ける。その後、ダイ頂部103がブランクの一方の端部を加工し始める。したがって、曲げ成形中、ブランクの他方の端部がパンチ頂部104から離れることがなく、シワの発生が抑制される。
しかしながら、パッド曲げ成形では、成形中、パンチ101とパッド110とによってブランク10が挟まれている。したがって、パッド曲げ成形中、パンチ101とパッド110とで挟まれているブランクの領域では、材料の流動が抑制される。そのため、特に伸びフランジ部を含むプレス品をパッド曲げ成形すると、ブランクの伸びフランジ部に破断が生じることがある。
[伸びフランジ部]
図3は、伸びフランジ部を含むプレス品の斜視図である。図3では、伸びフランジ部を含むプレス品の例として、4輪自動車のセンターピラーの下端部を示す。図4は、図3中のIV-IV線での断面図である。図3及び図4を参照して、センターピラー105の延伸方向に垂直な断面、すなわち水平方向断面は、ハット形状である。センターピラー105は、天板部107と、縦壁部108と、フランジ部109とを含む。センターピラー105の下端部はサイドステップ106と繋がるため、T字形状である。そのため、センターピラー105の下端部は略直角に湾曲している。この湾曲している部分の成形中、湾曲している縦壁部108及び湾曲しているフランジ部109では、材料が図3中の矢印の方向に移動する。したがって、湾曲している縦壁部108及び湾曲しているフランジ部109には引張応力が生じる。本明細書では、このような成形中に引張応力を受ける湾曲した部分を伸びフランジ部という。この引張応力が過剰に大きくなれば、ブランクは破断する。
本発明者は、シワを抑制し、かつ、伸びフランジ部での破断を抑制するパッド曲げ成形を検討した。上述したように、パッド曲げ成形では、パッドとパンチとでブランクを挟むことによって材料が流動し難い。そのため、パッド曲げ成形中に、伸びフランジ部に材料が流れ込まず、引張応力が大きくなり、破断しやすくなる。
そこで本発明者は、パッド曲げ成形において、僅かな隙間を空けてブランクをパッドとパンチとで挟む(拘束する)という着想に至った。これにより、パッド曲げ成形中、パッドとパンチとによってブランクが完全に挟まれないため、一般的なパッド曲げ成形と比べて材料が流動し易くなる。したがって、パッド曲げ成形中に伸びフランジ部に材料が流れ込みやすくなり、伸びフランジ部の破断を抑制できる。また、パッドとパンチとの間の距離はブランクの板厚よりも僅かに大きいだけであるので、パッド曲げ成形中にブランクがパンチから大きく離れることがなく、シワの発生も抑制できる。
さらに本発明者は、ダイによって最初に成形し始める領域を、パッドとパンチとでブランクを拘束する位置からより離すという着想に至った。換言すれば、ブランクの伸びフランジ部の端から最初にダイと接触するブランクの位置までの領域(第1領域)と、パッドとパンチとで拘束しているブランクの領域(第3領域)との間に、パッド曲げ成形開始後、一定時間ダイに接触しない領域(第2領域)を設ける。これにより、ブランクの第1領域がダイによってパンチ側に押し込まれ始めてから一定時間後に第2領域がダイによってパンチ側に押し込まれ始める。このことは、ダイの第1領域と接触する部分の成形ストロークが、ダイの第2領域と接触する部分の成形ストロークよりも大きいことを意味する。ブランクの第1領域の成形ストロークが増大することによって、ブランクの第1領域が成形されている時間が長くなる。また、パッドとパンチとで挟まれていないブランクの領域(第1領域及び第2領域)がパンチ側に押し込まれている間、パッドとパンチとで挟まれているブランクの領域(第3領域)の材料は流動する。したがって、第1領域が成形されている時間が長くなった分、ブランクの第3領域の材料が流動する時間も長くなる。これにより、成形中にブランクの第3領域から伸びフランジ部に材料が流れ込み易くなり、伸びフランジ部の破断が抑制できる。
(1)以上の知見に基づいた本実施形態のプレス品を生産する方法は、パンチ、パンチと対向するダイ及びパンチと対向するパッドを含むプレス装置によって、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する。プレス品を生産する方法は、配置工程と、第3領域拘束工程と、第1領域押し込み工程と、第2領域加工工程と、を含む。配置工程では、プレス品の伸びフランジ部の端となる部分を含む第1領域、第1領域よりも内側に位置する第2領域、第2領域よりも内側に位置する第3領域を含むブランクをプレス装置に配置する。第3領域拘束工程では、配置工程後、パッドとパンチとを近づけ、パッドとパンチとでブランクとパッドとの間に隙間を空けて第3領域を拘束する。第1領域押し込み工程では、第3領域拘束工程後、ダイとパンチとを近づけ、ダイと第1領域を接触させ、ダイによって第1領域をパンチ側に押し込む。第2領域加工工程では、第1領域押し込み工程の開始後、パンチと第2領域を接触させ、かつ、ダイと第2領域を接触させて、パンチ及びダイによって第2領域を加工する。
配置工程では、プレス方向においてパッドとパンチとの距離はブランクの板厚よりも僅かに大きい。すなわち、ブランクの第3領域とパッドとの間に僅かな隙間が設けられる。これにより、ブランクの第3領域の材料が流動し易くなり、曲げ成形中、伸びフランジ部にブランクの第3領域の材料が流れ込みやすい。そのため、伸びフランジ部での破断が抑制される。また、ブランクの第3領域とパッドとの隙間は僅かであるため、曲げ成形中、ブランクの第3領域がパンチから大きく離れない。したがって、プレス品のシワの発生が抑制される。また、第1領域押し込み工程では、伸びフランジ部の端側にあるブランクの第1領域が先行してダイによりパンチに向けて押し込まれる。第1領域の押し込みが開始されてから一定時間後に、ブランクの第2領域がパンチ及びダイによって加工される。つまり、ダイのブランクの第1領域と接触する部分の成形ストロークが、パッドのみを使用する場合(従来のパッド曲げ成形)と比べて増大する。そして、上述したように成形ストロークが増大することで、成形中にブランクの第3領域から伸びフランジ部への材料の流れ込みが多くなる。このため、伸びフランジ部に材料が供給されやすく、伸びフランジ部での破断が抑制される。
(2)上記(1)のプレス品を生産する方法において、第3領域拘束工程では、隙間はブランクの板厚の120%以下であるのが好ましい。また、隙間はブランクの板厚の110%以下であるのがより好ましい。
隙間が大きすぎれば、曲げ成形中にブランクの第3領域がパンチから大きく離れるため、隙間は所定以下である方がよい。なお、隙間とは、ブランクの第3領域を拘束するパンチの領域とパッドの領域とのプレス方向に沿った距離を意味する。
(3)上記(1)又は(2)のプレス品を生産する方法において、第2領域加工工程では、ダイ又はパンチを下死点に到達させ、第2領域の加工の終了と同時に第1領域の加工も終了させるのが好ましい。
一体のパンチ及び一体のダイを用い、曲げ成形を実施すれば、ブランクの第1領域及び第2領域は同時に加工が終了する。一体のパンチ及び一体のダイを用いれば、プレス装置の構造が簡素になる。
(4)上記(3)のプレス品を生産する方法において、ブランクは、第1領域押し込み工程の開始前に予め加熱されるのが好ましい。
ブランクを加熱することでブランクの延性が高くなり、難成形のプレス品を成形しやすくなる。また、本実施形態のプレス品を生産する方法では、第1領域の押し込み後第2領域の加工開始前までの一定時間、第2領域は金型と接触しない。これにより、ダイの下死点到達前におけるブランクと金型との接触時間及び接触領域を極力低減することができるので、局所的な変形や特性のムラの発生を回避でき、熱間又は温間での曲げ成形の成形性を向上させることができる。
(5)上記(4)のプレス品を生産する方法において、ブランクは鋼製であり、ブランクの加熱温度は700℃以上であるのが好ましい。
多くの鋼では、700℃以上に加熱することで金属組織がオーステナイト化する。700℃以上に加熱されたブランクをプレス成形すれば、ブランクと金型との接触により、ブランクが焼入れされる。これにより、高強度のプレス品が得られる。このような方法はホットスタンプと言われる。
(6)上記(1)~(5)のプレス品を生産する方法は次のような構成で実現できる。ダイは、ダイのダイ頂部よりもパンチに向かって突出する突起部を含む。第1領域押し込み工程では、突起部と第1領域を接触させ、突起部によって第1領域をパンチ側に押し込む。
(7)上記(1)~(6)のプレス品を生産する方法は次のような構成でも実現できる。パンチは、パンチの先端加工部よりもダイに向かって突出し、ダイ又はパンチが下死点に到達した際にパンチの凹部に収容されるインナーパッドを含む。配置工程において、第3領域がインナーパッドに対応する位置になるようにブランクを配置する。第3領域拘束工程では、パッドとインナーパッドとを近づけ、パッドとインナーパッドとで隙間を空けて第3領域を拘束する。
以下、本実施形態のプレス品を生産する方法について詳述する。プレス品を生産する方法は、配置工程と、第3領域拘束工程と、第1領域押し込み工程と、第2領域加工工程とを含む。本実施形態のプレス品を生産する方法は、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する方法である。
[第1実施形態]
[プレス装置]
第1実施形態のプレス装置について説明する。第1実施形態のプレス装置は、後述する第1実施形態のプレス品を生産する方法を実施するための装置である。
図5は、第1実施形態のプレス装置を示す断面図である。図5を参照して、プレス装置1は、パンチ3と、ダイ2と、パッド4と、ディスタンスブロック5とを含む。
パンチ3は、下型として配置され、プレス方向においてダイ2と対向する。パンチ3は例えば、ボルスタプレートに固定される。パンチ3は、パンチ頂部31と、パンチ肩部30と、パンチ縦壁部32と、パンチ底部33とを含む。パンチ頂部31は、プレス方向においてパンチ底部33よりもダイ2側に突出する。換言すれば、パンチ頂部31は、パンチ底部33よりも鉛直方向において上方に配置される。パンチ頂部31はプレス品の天板部の形状に対応する形状を有する。パンチ肩部30は、パンチ頂部31とパンチ縦壁部32との間に設けられ、両者をつなぐ。断面視で、パンチ肩部30は湾曲した形状を有する。
パンチ底部33は、パンチ頂部31の外側に配置される。別の言葉で言えば、パンチ底部33は、平面視で、パンチ頂部31の周囲に配置される。つまり、本明細書でいう「外側」とはプレス装置1の外枠方向を意味する。パンチ底部33は、パンチ頂部31よりも鉛直方向において下方に配置される。パンチ底部33はプレス品のフランジ部の形状に対応する形状を有する。
パンチ縦壁部32は、パンチ頂部31とパンチ底部33との間に配置され、パンチ頂部31とパンチ底部33とをつなぐ。パンチ縦壁部32は、鉛直方向に延びる。ここで、パンチ縦壁部32は厳密に鉛直方向に延びる場合に限定されず、鉛直方向から0~45度傾斜した方向に延びる場合も含む。後述する、ダイ縦壁部22も同様である。パンチ縦壁部32はプレス品の縦壁部の形状に対応する形状を有する。
ダイ2は、上型として配置される。ダイ2は例えば、スライドに取り付けられる。スライドは周知の構成に取り付けられ、スライドをパンチ3に接近及び離間させることで、ダイ2がパンチ3に接近及び離間する。
ダイ2は、突起部6と、ダイ頂部23と、ダイ肩部20と、ダイ縦壁部22と、凹部21とを含む。凹部21は、パッド4を収容可能である。凹部21は、パンチ頂部31と対向する。
ダイ頂部23は、凹部21の外側に配置される。ダイ頂部23は、パンチ底部33と対向する。ダイ頂部23は、プレス方向において凹部21よりもパンチ3側に突出する。すなわち、ダイ頂部23は、凹部21よりも鉛直方向において下方に配置される。ダイ頂部23は、プレス品のフランジ部の形状に対応する形状を有する。ダイ肩部20は、ダイ頂部23とダイ縦壁部22との間に設けられ、両者をつなぐ。断面視で、ダイ肩部20は湾曲した形状を有する。
ダイ縦壁部22は、凹部21とダイ頂部23との間に配置され、凹部21とダイ頂部23とをつなぐ。ダイ縦壁部22は、鉛直方向に延びる。ダイ縦壁部22は、プレス品の縦壁部の形状に対応する形状を有する。
突起部6は、ダイ頂部23の外側に配置される。突起部6は、先端部25を含む。突起部の先端部25は、プレス方向においてダイ頂部23よりもパンチ3側に突出する。すなわち、突起部6の先端部25は、ダイ頂部23よりも鉛直方向において下方に配置される。突起部6の先端部25は、ダイの各部分のうち最もパンチ3側に向けて突出する。突起部6の先端部25は、プレス品の形状に対応する形状を有さない。なぜなら、後述するように、ダイ2が下死点に到達した際、突起部6はブランクと接触しないからである。
パッド4は、ダイ2の凹部21に弾性部材7を介して取り付けられる。弾性部材7は例えば、スプリング、ダイクッション、油圧シリンダ等である。パッド4は、パッド先端部41を含む。パッド先端部41は、パンチ頂部31とプレス方向において対向する。ダイ2が上死点の位置であるとき、パッド先端部41は、プレス方向においてダイの突起部6の先端部25よりもパンチ3側に突出する。したがって、ダイ2が下降すると、最初にパッド先端部41とパンチ頂部31とでブランクの第3領域を拘束できる。
ディスタンスブロック5は、パンチのパンチ頂部31上に配置される。ディスタンスブロック5は、パッド4とプレス方向において対向する位置に配置される。ただし、ディスタンスブロック5はブランクが配置される位置には配置されない。ディスタンスブロック5は、パッド4とパンチ頂部31との距離をブランクの第3領域の板厚よりも大きく維持する。したがって、この機能を有するのであればディスタンスブロック5の材質は特に限定されない。しかしながら、パッド4がディスタンスブロック5に接触した後、ダイ2がさらに下降すると弾性部材7の弾性機能により、パッド4はディスタンスブロック5に力を加える。したがって、ディスタンスブロック5は、パッド4とパンチ3との距離を維持するため、鋼等の強度の高い金属であるのが好ましい。
[プレス品を生産する方法]
第1実施形態のプレス品を生産する方法について説明する。第1実施形態のプレス品を生産する方法では、上述の第1実施形態のプレス装置を用いる。第1実施形態のプレス品を生産する方法は、冷間で実施される。
[配置工程]
図6は、ブランクの平面図である。図6では、例として、センターピラーに成形されるブランクを示す。ブランク10は、端15を含む第1領域11、第1領域11よりも内側に位置する第2領域12、第2領域12よりも内側に位置する第3領域13を含む。ブランク10の第1領域11の端15は、プレス品の伸びフランジ部の端となる部分である。例えば図4中の符号111で示される部分がプレス品の伸びフランジ部の端となる部分に相当する。ブランクの内側とは、ブランクの伸びフランジ部の端15から離れる方向の領域を意味する。第1領域11は、ブランクの伸びフランジ部の端15から所定の距離の領域である。この所定の距離は、プレス品の形状による。すなわち、後述するように、第1領域11は、伸びフランジ部の端15からダイと最初に接触するブランクの位置までの領域である。第3領域13は、後述するように、パッドとパンチとで拘束されるブランクの領域である。第2領域12は、第1領域11と第3領域13との間の領域である。
ブランク10は、所定の形状に成形された鋼板等の金属板である。配置工程の前に、金属板を打抜き加工等により所定の形状に成形し、ブランクは得られる。ブランクの所定の形状は、成形するプレス品の形状に対応する。なお、本実施形態ではブランクの材料が鋼であることを前提に説明する。しかしながら、ブランクはこれに限定されない。ブランクは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等であってもよい。
図7は、第1実施形態の配置工程を示す断面図である。図7を参照して、配置工程では、ブランク10をプレス装置1に配置する。より具体的には、ブランク10の第3領域13をパンチ頂部31の上に配置する。配置工程では、ブランクの第1領域11及び第2領域12はパンチ3と接触していない。
[第3領域拘束工程]
図8は、第1実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。図8を参照して、第3領域拘束工程は、配置工程後に実施される。第3領域拘束工程では、パッド4とパンチ3とを近づける。より具体的には、パッド4はダイ2にスプリング等の弾性部材7を介して取り付けられている。したがって、ダイ2をパンチ3に向けて下降させることで、パッド4もパンチに近づく。プレス方向において、パッド先端部41は突起部6の先端部25よりもパンチ3側に突出している。そのため、ダイ2を下降させると、突起部6がブランクに接触する前に、パッド4とパンチ3とでブランクを拘束できる。
パッド4とパンチ3との接近は、パッドがパンチ上のブランク10に接触する前に停止する。すなわち、第3領域拘束工程では、パッド4とパンチ3とでブランクの第3領域13を隙間SPを空けて拘束する。換言すれば、パッド4はブランク10と接触せず、パッド4とブランク10との間に隙間SPがある。要するに、第3領域拘束工程では、パッド先端部41とパンチ頂部31とプレス方向に沿った距離はブランクの第3領域13の板厚よりも大きい。パッド4とブランク10とを接触させないために、パンチ頂部31上にはディスタンスブロック5が設けられる。ディスタンスブロック5はブランクの第3領域13の板厚よりも大きい厚さを有し、ブランクの第3領域13のパッド4側の表面よりもパッド4側に向かって突出する。これにより、パッド4とパンチ3との接近が停止する。プレス品の成形が完了するまで、すなわちダイ2が下死点に到達するまで、この隙間は維持される。
第3領域拘束工程後、ブランクを曲げ成形してもブランクの第3領域の材料は、隙間SPによりパッドとパンチとでブランクを隙間を空けずに完全に挟む場合と比べて流動しやすい。そのため、伸びフランジ部を含むプレス品を成形しても、成形中、伸びフランジ部にブランクの第3領域の材料が流れ込みやすく、伸びフランジ部の破断を抑制できる。また、第3領域拘束工程では、パッド4とブランクの第3領域13との隙間は所定の距離以下であり、小さい。そのため、曲げ成形中にブランクの第3領域13がパンチ頂部31から大きく離れない。したがって、プレス品の、特に天板部のシワの発生を抑制できる。
好ましくは、パッド4とパンチ3とでブランクの第3領域13を拘束したとき、パッド先端部41とパンチ頂部31との間の距離は、ブランクの第3領域13の板厚の120%以下である。上述したように、パッド曲げ成形でのシワの抑制は、成形中にパンチ頂部31からブランク10が離れることを抑制することで実現される。パッド4とブランク10との隙間が大きくなれば、成形中にブランクがパッドから離れやすくなり、シワが発生する可能性が高くなる。そのため、パッド4とブランク10との隙間は小さい方が好ましい。したがって、ブランク拘束時のパッド先端部41とパンチ頂部31との間の距離の上限は、ブランクの第3領域13の板厚の120%以下である。より好ましくは、ブランク拘束時のパッド4とパンチ頂部31との間の距離の上限は、ブランクの第3領域13の板厚の110%以下である。さらに好ましくは、ブランク拘束時のパッド4とパンチ頂部31との間の距離の上限は、ブランクの第3領域13の板厚の105%以下である。
一方、パッド4とパンチ3とでブランクの第3領域13を拘束したとき、パッド先端部41とパンチ頂部31との間の距離の下限は、特に限定されない。ブランクの拘束時、パッド4とブランク10との間に少しでも隙間が有れば、曲げ成形中にブランクの第3領域の材料が伸びフランジ部に流れ込みやすくなる。したがって、ブランク拘束時のパッド4とパンチ頂部31との間の距離の下限は特に限定されない。
[第1領域押し込み工程]
図9は、第1実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。図9を参照して、第1領域押し込み工程は、第3領域拘束工程後に実施される。第1領域押し込み工程では、ダイ2をさらに下降させ、ダイ2とパンチ3とを近づける。この際、パッド4は弾性部材7を介してダイ2に取り付けられるため、弾性部材7が縮むことでパッド4とダイ2との距離が近づく。また、パンチ頂部31にはディスタンスブロック5が設けられている。したがって、パッド4とパンチ頂部31との距離は第3領域拘束工程での距離で維持されたまま、ダイ2のみがパンチ3に近づく。
ダイ2には突起部6が設けられている。プレス方向において、突起部6の先端部25はダイ2のその他の部分と比べてパンチ3に向かって最も突出している。そのため、ダイ2が下降すると、突起部6がブランク10に最初に接触する。また、突起部6はダイ2の最も外側に設けられる。したがって、突起部6はブランクの端15から所定の距離の第1領域11と接触する。ダイ2がさらに下降すると、ダイの突起部6によってブランクの第1領域がパンチ3側に押し込まれる。その結果、ブランクの第3領域13と第2領域12との境界(パンチ肩部30と接触する部分)を起点として、ブランクの第1領域11及び第2領域12がダイの突起部6によって曲げられる。
第1領域押し込み工程では、ブランクの第2領域12はダイ2及びパンチ3と接触しない。より具体的には、ダイの突起部6の内側(パッド4側)に隣接して設けられるダイ頂部23よりも、突起部6はパンチ3側に突出している。そのため、突起部6の内側の、ダイ頂部23とパンチ底部33との間には空間が存在する。第1領域押し込み工程では、第2領域12はこの空間内に存在するため、第2領域12はダイ2及びパンチ3と接触しない。また、ブランクの第1領域11及び第2領域12が曲がり始めると、第1領域11と突起部6との接触部分は、徐々にブランクの端15側に相対的に移動する。
第1領域押し込み工程では、ブランクの第1領域11の突起部6との接触部分は、徐々にブランクの端15側に相対的に移動するため、ダイ2が下死点に到達する前にブランクの第1領域11側の端(伸びフランジ部の端15)はダイの突起部6から抜ける。より具体的には、伸びフランジ部の端15が突起部6の内側端24よりも第3領域13側(パッド4側)に移動する。これにより、第1領域押し込み工程は終了する。第1領域押し込み工程が終了した時、ダイ2は下死点に到達していない。すなわち、第1領域押し込み工程は、後述する第2領域加工工程よりも先に終了する。
[第2領域加工工程]
図10は、第1実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。図10を参照して、第2領域加工工程は、第1領域押し込み工程の開始後に実施される。すなわち、第2領域加工工程は、第1領域押し込み工程の開始後、第1領域押し込み工程の終了前(すなわち、突起部6から伸びフランジ部の端15が抜ける前)に実施されてもよい。第2領域加工工程は、第1領域押し込み工程の終了後に実施されてもよい。第2領域加工工程ではパンチ3及びダイ2とブランクの第2領域12とが接触する。
ダイ2の突起部6がブランクの第1領域11と接触した後、ダイ2が下降し続けると、一定時間後、ダイ2のダイ頂部23がブランクの第2領域12と接触する。ダイ2がさらに下降することでブランクの第2領域12は、ダイ頂部23によってパンチ3側に押し込まれる。上述したように、ダイ2が下死点に到達する前にブランクの第1領域11は突起部6の内側、すなわちダイ頂部23とパンチ底部33との間の空間に移動する。そのため、ブランクの第1領域11がダイ頂部23と対向する領域に移動した後、ダイ2が下死点に到達するまで、ブランクの第1領域11及び第2領域12はダイ頂部23によってパンチ3側に押し込まれる。
図11は、第1実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。図11を参照して、ダイ2が下死点に到達すると、ブランクの第1領域11及び第2領域12は、ハット断面形状のプレス品の縦壁部及びフランジ部に成形される。これにより、第2領域加工工程は終了し、プレス品が得られる。
以上説明したように、第1実施形態のプレス品を生産する方法では、第3領域拘束工程でパッドとパンチとがブランクの第3領域を隙間を空けて拘束する。この隙間は、所定の距離以下の小さな隙間であるため、曲げ成形中、ブランクの第3領域がパンチから大きく離れない。これにより、パッドとパンチとの間に余剰な材料が生じにくく、シワの発生が抑制される。また、曲げ成形中に第3領域の材料が第1領域及び第2領域側(すなわち伸びフランジ部側)に流れ込みやすい。そのため、伸びフランジ部で材料の流れ込み不足による破断が抑制される。さらに、プレス曲げ成形の本工程である第2領域加工工程の前に、第1領域押し込み工程において予めブランクの第1領域を押し込んでブランクを曲げる。これにより、第2領域加工工程におけるパンチ(又はダイ)の成形ストロークに、第1領域押し込み工程における突起部6の高さを成形ストロークとして加えることができる。そうすると、突起部6の高さ分、第1領域押し込み工程において先行的に曲げ成形を始めるため、成形中にブランクが曲げられる時間が長い。したがって、一成形ストロークにおけるブランクの第3領域からの材料の流動をより増大させることができる。これによって、伸びフランジ部に流れる材料が多くなり、板厚減少率が抑制される。ゆえに、伸びフランジ部の破断がさらに抑制される。
以上、本発明の第1実施形態について説明した。しかしながら、本発明の実施形態はこれに限定されない。以下、本発明の他の実施形態について説明する。
[第2実施形態]
[プレス装置]
第2実施形態のプレス装置について説明する。第2実施形態のプレス装置は、後述する第2実施形態のプレス品を生産する方法を実施するための装置である。第2実施形態のプレス装置は、第1実施形態のプレス装置と比べて、突起部が設けられず、パンチにインナーパッドが設けられる。なお、以下の説明では第1実施形態と重複する説明は省略する。
図12は、第2実施形態のプレス装置を示す断面図である。図12を参照して、プレス装置1は、パンチ3と、ダイ2と、パッド4と、ディスタンスブロック5とを含む。
パンチ3は、パンチ頂部31と、パンチ縦壁部32と、パンチ底部33と、インナーパッド34と、凹部26とを含む。インナーパッド34は、インナーパッド先端部35を含む。インナーパッド先端部35は、プレス方向においてパンチ頂部31よりもダイ2側に突出する。すなわち、インナーパッド先端部35は、パンチ頂部31よりも鉛直方向において上方に配置される。インナーパッド先端部35及びパンチ頂部31はプレス品の天板部の形状に対応する形状を有する。
インナーパッド34は、凹部26に弾性部材7を介して取り付けられる。弾性部材7は例えば、スプリング、ダイクッション、油圧シリンダ等である。インナーパッド先端部35は、パッド4のパッド先端部41とプレス方向において対向する。ダイ2が上死点の位置であるとき、パッド4のパッド先端部41はダイのダイ頂部23よりもパンチ3側に突出する。したがって、ダイ2が下降すると、最初にパッド先端部41とインナーパッド先端部35とでブランクの第3領域を拘束できる。
ディスタンスブロック5は、インナーパッドのインナーパッド先端部35上に配置される。ディスタンスブロック5は、パッド4とプレス方向において対向する位置に配置される。
[プレス品を生産する方法]
第2実施形態のプレス品を生産する方法について説明する。第2実施形態では、このインナーパッドによりパンチよりもダイ側でブランクが拘束される。ブランクの拘束位置がダイ側に寄る分、ブランクの第1領域と接触するパンチ(又はダイ)の成形ストロークを増大させることができる。したがって、第1実施形態と同様に、伸びフランジ部の破断を抑制することができる。第2実施形態のプレス品を生産する方法は、冷間で実施される。
[配置工程]
図13は、第2実施形態の配置工程を示す断面図である。図13を参照して、配置工程では、ブランク10の第3領域13をパンチ頂部31からパッド4側に向かって突出するインナーパッド34の上に配置する。ブランクの第3領域13がインナーパッド34と接触する。
[第3領域拘束工程]
図14は、第2実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。図14を参照して、第3領域拘束工程では、ダイ2をパンチ3に向けて下降させ、パッド4とパンチ3のインナーパッド34とを近づける。パッド先端部41はダイ頂部23よりもパンチ3側に突出している。そのため、ダイ2を下降させると、ダイ頂部23がブランクに接触する前に、パッド4とインナーパッド34とでブランクを拘束できる。
パンチのインナーパッド34上にはディスタンスブロック5が設けられる。したがって、第3領域拘束工程では、パッド4とパンチのインナーパッド34とでブランクの第3領域13を隙間SPを空けて拘束する。そのため、伸びフランジ部を含むプレス品を成形しても、成形中、伸びフランジ部にブランクの第3領域13の材料が流れ込みやすく、伸びフランジ部の破断が抑制できる。また、パッド4とブランクの第3領域13との隙間SPは所定の距離以下であり、小さい。そのため、曲げ成形中にブランクの第3領域13がパンチ3のインナーパッド先端部35から大きく離れない。したがって、プレス品の、特に天板部のシワの発生が抑制できる。
[第1領域押し込み工程]
図15は、第2実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。図15を参照して、第1領域押し込み工程では、さらにダイ2を下降させる。ディスタンスブロック5によって、パッド4とインナーパッド34との距離は第3領域拘束工程での距離で維持されたまま、ダイ2のみがパンチ3に近づく。
ダイ2のダイ頂部23は、プレス方向においてダイ2のその他の部分と比べてパンチ3に向かって最も突出している。また、ダイ頂部23はダイ2の最も外側に設けられる。したがって、ダイ頂部23はブランクの端(伸びフランジ部の端15)から所定の距離の第1領域11と接触する。ダイ2がさらに下降すると、ダイ頂部23によってブランクの第1領域11がパンチ3側に押し込まれる。
インナーパッド先端部35は、プレス方向においてパンチ頂部31よりもダイ2側に突出している。また、パンチ頂部31は、インナーパッド先端部35よりも外側に配置される。したがって、ブランクの第3領域13がインナーパッド先端部35と接触し、ブランクの第2領域12はパンチ頂部31及びダイ2とは接触しない。また、ブランクの第1領域11及び第2領域12が曲がり始めると、ブランクの第1領域11はダイ頂部23の内側端と接触するようになり、第1領域11とダイ頂部23との接触面積が減少する。第1領域11のダイ頂部23との接触部分は、徐々にブランクの端15側に相対的に移動する。
[第2領域加工工程]
図16は、第2実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。図16を参照して、ダイ頂部23がブランク10の第1領域11と接触した後、ダイ2がさらに下降すると、一定時間後にダイの肩部を起点としてブランクの第2領域が折れ曲がる。これにより、第2領域加工工程が開始される。そして、ダイのダイ縦壁部22とブランクの第2領域12とが接触する。また、パンチのパンチ頂部31とブランクの第2領域12とが接触する。
図17は、第2実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。図17を参照して、ダイ2が下死点に到達すると、ブランクの第1領域11及び第2領域12は、ハット断面形状のプレス品の縦壁部及びフランジ部に成形される。これにより、第2領域加工工程は終了し、プレス品が得られる。
以上説明したように、第2実施形態のプレス品を生産する方法においても、第3領域拘束工程でパッドとパンチ(インナーパッド)とがブランクの第3領域を隙間を空けて拘束する。この隙間は、所定の距離以下の小さな隙間であるため、曲げ成形中、ブランクの第3領域がインナーパッドから大きく離れない。これにより、パッドとインナーパッドとの間に余剰な材料が生じにくく、シワの発生が抑制される。また、ブランクの第1領域及び第2領域の曲げ成形中に、第3領域の材料が第1領域及び第2領域側(すなわち伸びフランジ部側)に流れ込みやすい。そのため、伸びフランジ部で材料の流れ込み不足による破断が抑制される。さらに、ダイによってブランクの第1領域が先行的にパンチ側に押し込まれる。ダイと第1領域との接触から一定時間後にブランクの第2領域がダイと接触する。これにより、本実施形態においては、第2領域加工工程におけるパンチの成形ストロークに、第1領域押し込み工程におけるインナーパッドの高さ(インナーパッド先端部35とパンチ頂部31との距離)を成形ストロークとして加えることができる。これによって、第1の実施形態と同様に、伸びフランジ部に流れる材料が多くなり、板厚減少率が抑制される。ゆえに、伸びフランジ部の破断がさらに抑制される。
[第3実施形態]
[プレス装置]
第3実施形態のプレス装置について説明する。第3実施形態のプレス装置は、後述する第3実施形態のプレス品を生産する方法を実施するための装置である。第3実施形態のプレス装置は、第1実施形態のプレス装置の突起部及び第2実施形態のパンチのインナーパッドの双方が設けられる。なお、以下の説明では第1実施形態及び第2実施形態と重複する説明は省略する。
図18は、第3実施形態のプレス装置を示す断面図である。図18を参照して、プレス装置1は、パンチ3と、ダイ2と、パッド4と、ディスタンスブロック5とを含む。
パンチ3は、パンチ頂部31と、パンチ縦壁部32と、パンチ底部33と、インナーパッド34とを含む。ディスタンスブロック5は、インナーパッドのインナーパッド先端部35上に配置される。
ダイ2は、突起部6と、ダイ頂部23と、ダイ縦壁部22と、凹部21とを含む。突起部6は、ダイ頂部23の外側に配置され、ダイの各部分のうち最もパンチ3側に向けて突出する。ダイ2が上死点の位置であるとき、パッド先端部41はダイの突起部6よりもパンチ3側に突出する。
[プレス品を生産する方法]
第3実施形態のプレス品を生産する方法について説明する。第3実施形態では、第1実施形態の突起部及び第2実施形態のインナーパッドの双方を含むプレス装置を用いる。第3実施形態のプレス品を生産する方法は、冷間で実施される。
[配置工程]
図19は、第3実施形態の配置工程を示す断面図である。図19を参照して、配置工程では、ブランク10の第3領域13をインナーパッド34の上に配置する。
[第3領域拘束工程]
図20は、第3実施形態の第3領域拘束工程を示す断面図である。図20を参照して、第3領域拘束工程では、ダイ2をパンチ3に向けて下降させ、パッド4とパンチ3のインナーパッド34とを近づける。パッド先端部41は突起部6よりもパンチ3側に突出している。そのため、ダイ2を下降させると、突起部6がブランク10に接触する前に、パッド4とインナーパッド34とでブランクを拘束できる。
パンチのインナーパッド34上にはディスタンスブロック5が設けられる。したがって、第3領域拘束工程では、パッド4とパンチのインナーパッド34とでブランクの第3領域13を隙間SPを空けて拘束する。そのため、伸びフランジ部を含むプレス品を成形しても、成形中、伸びフランジ部にブランクの第3領域の材料が流れ込みやすく、伸びフランジ部の破断が抑制できる。また、パッド4とブランクの第3領域13との隙間SPは所定の距離以下であり、小さい。そのため、曲げ成形中にブランクの第3領域13がインナーパッド先端部35から大きく離れない。したがって、プレス品の、特に天板部のシワの発生が抑制できる。
[第1領域押し込み工程]
図21は、第3実施形態の第1領域押し込み工程を示す断面図である。図21を参照して、第1領域押し込み工程は、さらにダイ2を下降させ、ダイ2とパンチ3とを近づける。ディスタンスブロック5によって、パッド4とインナーパッド34との距離は第3領域拘束工程での距離で維持されたまま、ダイ2のみがパンチ3に近づく。
ダイ2が下降すると、パンチ3側に突出している突起部6が最初にブランク10の第1領域11に接触する。ダイ2がさらに下降すると、ブランクの第1領域11及び第2領域12がダイの突起部6によって第2領域12と第3領域13との境界を起点として曲げられる。
[第2領域加工工程]
図22は、第3実施形態の第2領域加工工程を示す断面図である。図22を参照して、第2領域加工工程では、ダイのダイ頂部23とブランクの第2領域12とが接触する。また、第2領域加工工程では、パンチのパンチ頂部31とブランクの第2領域12とが接触する。上述したように、突起部6が設けられることによってブランク10の第1領域11と接触するダイ2の成形ストロークが増大する。これに加えて、インナーパッド34が設けられるため、ブランク10の第1領域11と接触するダイ2の成形ストロークがさらに増大する。そのため、第1領域押し込み工程の開始後、ブランクの第2領域12の加工が開始されるまでのブランクの第2領域12がパンチ3及びダイ2と接触しない一定時間がさらに長くなる。これにより、成形中にブランクの第3領域13から伸びフランジ部へ材料が流動する時間が長くなり、伸びフランジ部での破断が抑制される。
図23は、第3実施形態の第2領域加工工程終了時を示す断面図である。図23を参照して、ダイ2が下死点に到達すると、第2領域加工工程は終了し、プレス品が得られる。
要するに、第3実施形態のプレス品を生産する方法では、突起部6による伸びフランジ部への材料の流れ込み効果に加えて、インナーパッド34による伸びフランジ部への材料の流れ込み効果も加わる。したがって、第1実施形態及び第2実施形態と比べてさらに伸びフランジ部での破断が抑制される。
[第4実施形態]
第4実施形態では、加熱されたブランクからプレス品を成形する。すなわち、第4実施形態のプレス品を生産する方法は、熱間又は温間で実施される。例えば、ホットスタンプでは、プレス装置が加熱されたブランクを曲げ成形し、ダイが下死点に到達すると成形されたプレス品を急冷し、焼入れを行う。これにより、マルテンサイト組織を含むプレス品、すなわち高強度のプレス品が得られる。したがって、ホットスタンプでプレス品を成形し、焼入れを施す場合には、ブランクは鋼製である必要がある。
[プレス装置]
第4実施形態のプレス装置について説明する。第4実施形態のプレス装置として、上述した第1実施形態~第3実施形態のプレス装置のいずれも用いることができる。
好ましくは、突起部6はダイ2及びパンチ3よりも熱伝達率が低い。ホットスタンプの場合、ダイ2が下死点に到達した際、成形されたブランク(プレス品)を焼入れするため、ダイ2及びパンチ3の熱伝達率は高い方が好ましい。一方、上述したように、配置工程後ダイ2が下降し始めると、突起部6が最初にブランクに接触する。したがって、曲げ成形中のブランクの材料の流動のしやすさを確保する観点から、突起部6はブランクを冷却しない方が望ましい。また、ダイ2が下死点に到達した際、突起部6はプレス品とは接触しない。ホットスタンプを例にとると、突起部6はプレス品を焼入れしないため、熱伝達率が低くてもよい。
[プレス品を生産する方法]
第4実施形態のプレス品を生産する方法について説明する。
上述した第1実施形態~第3実施形態のいずれにおいても熱間、温間又はホットスタンプ等、加熱したブランクを加工対象とすることができる。以下の第4実施形態の説明では、例として、第1実施形態のプレス装置を用いてプレス品をホットスタンプにより生産する方法を説明する。第4実施形態のプレス品を生産する方法は、第1実施形態のプレス品を生産する方法に加えて、加熱工程と、冷却工程とを含む。
[ブランクの加熱]
ブランクの加熱は、図示しない加熱装置によって行われる。加熱装置は特に限定されない。加熱装置は例えば、連続式加熱炉、バッチ式加熱炉等がある。加熱方法も特に限定されない。加熱方法は例えば、ガス加熱、誘導加熱等がある。
例えば、ホットスタンプの場合、加熱工程では、ブランクをその材料のA1変態点以上に加熱し得る。この場合、加熱温度は例えば、700℃~900℃である。鋼を材料とするブランクをA1変態点以上に加熱することで、ブランク(プレス品)の焼入れ後、プレス品の組織がマルテンサイトとなる。そのため、プレス品の強度が高まる。なお、ホットスタンプ(すなわち焼入れ)を行わない場合は、加熱温度は特に限定されない。この場合は、ブランクの素材、ブランクの強度、成形するプレス品の形状等を考慮してブランクの加熱温度を適宜設定すればよい。ブランクの加熱後、搬送路、ロボットアーム等を用いて加熱されたブランクをプレス装置に配置する、すなわち配置工程を実施する。配置工程の説明は省略する。
第4実施形態では、配置工程の前にブランクが加熱される場合について説明している。しかしながら、ブランクの加熱はこの場合に限定されない。例えば、ブランクの加熱は、配置工程後、第3領域拘束工程の前に実施してもよいし、第3領域拘束工程の開始と同時又は開始後、第3領域拘束工程の終了前に実施してもよいし、第3領域拘束工程の終了と同時又は終了後に実施してもよい。要するに、金型によるブランクの変形が開始されるまでに加熱工程が実施されていればよい。配置工程後にブランクを加熱する場合、誘導加熱装置等を用いてブランクを加熱すればよい。
なお、加熱温度は、ダイ2が下降を開始した時点において、室温よりも高い温度、例えば200℃以上であればよい。かかるブランクの加熱温度は、放射温度計で測定される。
[第3領域拘束工程]
図8を参照して、第3領域拘束工程では、ディスタンスブロック5によりブランクの第3領域13とパッド先端部41との間に隙間SPが存在する。ホットスタンプにおける、この第3領域拘束工程の効果について説明する。
初めに述べたように、伸びフランジ部を含むプレス品を絞り成形すると、伸びフランジ部の縦壁部及びフランジ部では破断が生じやすい。一方で、破断を抑制するために一般的な曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を成形すると、天板部にシワが発生しやすい。このような難成形のプレス品を成形する方法として、熱間又は温間でのプレス成形が知られている。しかしながら、プレス品の形状がより複雑であれば、熱間又は温間でのプレス成形であっても、伸びフランジ部において破断が生じたり、天板部にシワが発生することがある。
第4実施形態の第3領域拘束工程では、パッド4とパンチ3とによってブランクの第3領域13を隙間を空けて拘束する。したがって、ブランクの第3領域の材料は、パッド4とパンチ3とでブランクを隙間を空けず完全に挟む場合と比べて流動しやすい。この効果は、上述した冷間(第1~第3実施形態)と同様に熱間又は温間でのプレス成形においても得られる。また、第3領域拘束工程では、パッド4とブランクの第3領域13との隙間は所定の距離以下であり、小さい。そのため、熱間又は温間でのプレス成形においてもプレス品の天板部のシワの発生が抑制できる。
加熱されたブランクの第3領域13は、パンチ頂部31と接触する。パンチ頂部31との接触により、ブランクの第3領域13が抜熱されるため、ブランクの第3領域13を冷却(ホットスタンプの場合は焼入れ)できる。
[第1領域押し込み工程]
図9を参照して、第3領域拘束工程後ダイ2による曲げ成形が始まると、ブランクの第1領域11及び第2領域12は、第2領域12と第3領域13との境界を起点として曲がる。この際、ブランクの第3領域はパッド4とパンチ3とで完全に挟まれていないため、ブランクの第3領域13も僅かにパンチ頂部31から離れ、パッド先端部41に接触することがある。この接触は、ブランクの材料の流動に対して抵抗となる。しかしながら、加熱されたブランクの延性は高いため、ブランクの第1領域11及び第2領域12が曲がっても、ブランクの第3領域13はパンチ頂部31から離れにくい。加熱されたブランクの第3領域13とパンチ頂部31との接触が抑制される。そのため、伸びフランジ部を含む難成形のプレス品を成形しても、成形中、伸びフランジ部にブランクの第3領域の材料が流れ込みやすく、伸びフランジ部の破断が抑制できる。
また上述したように、第1領域押し込み工程では、ダイ2(突起部6)がブランクの第1領域11をパンチ3側に押し込むため、ブランクの第2領域12はダイ2、パッド4及びパンチ3と接触しない。したがって、第1領域押し込み工程においては第2領域12は冷却されにくい。そのためこの後の第2領域加工工程において、ブランクの第2領域12の材料がさらに流動しやすくなり、伸びフランジ部の破断が抑制できる。
さらに、後述するように、プレス品を冷却するために金型が冷却される場合があるが、ブランクの第1領域11と接触する突起部6は、この場合であっても冷却されない。すなわち、突起部6がブランクの第1領域11と接触しても、ブランクの第1領域11は冷却れされにくい。なぜなら、上述したように、ダイ2が下死点に到達した際、突起部6はブランクと接触しないからである。突起部がブランクをほとんど冷却しないため、第1領域押し込み工程では、ブランクの第1領域の温度低下は小さい。したがって、ブランクの第1領域が抜熱されることによる、ブランクの高温領域の局所変形が抑制される。すなわち、ブランクの破断が抑制される。
[第2領域加工工程]
図9を参照して、上述した第1実施形態と同様に、ダイ2の突起部6がブランクの第1領域11と接触した後、ダイ2が下降し続けると、一定時間後、ダイ2のダイ頂部23がブランクの第2領域12と接触する。このように、ブランクの第2領域12が金型と接触するタイミングを遅らせることで、ブランクの第2領域12と第1領域11との冷却時間の差が小さくなり、冷却ムラ(ホットスタンプでは焼入れムラ)を低減することができる。ダイ2がさらに下降することでブランクの第2領域12は、ダイ頂部23によってパンチ3側に押し込まれる。その後、ダイ2が下死点に到達する。
第1領域押し込み工程及び第2領域加工工程において、パンチ3及びダイ2はブランク10よりも低温であるため、パンチ3及び/又はダイ2がブランク10と接触すれば、ブランク10は冷却される。なお、積極的にプレス品を冷却するためにパンチ3及び/又はダイ2(すなわち金型)を冷却していてもよい。例えば、金型に冷却媒体を流す冷却路を設けてもよいし、ブランクを直接水冷してもよい。ホットスタンプの場合、焼入れが終了すると、高強度のプレス品が得られる。なお、プレス品の冷却速度は、材料に合わせて適宜設定される。
本実施形態のプレス品を生産する方法の効果を数値計算により調べた。本発明例として本発明例1~本発明例3の3パターンの計算を行った。比較例として、比較例1~比較例5の5パターンの計算を行った。
本発明例1では、第1実施形態のプレス装置を想定し、プレス品を成形した。本発明例2では、第2実施形態のプレス装置を想定し、プレス品を成形した。本発明例3では、第3実施形態のプレス装置を想定し、プレス品を成形した。本発明例1~本発明例3のいずれも熱間プレスを想定した。
比較例1では、本発明例1においてディスタンスブロックを除いたプレス装置を想定し、プレス品を成形した。比較例2では、本発明例2においてディスタンスブロックを除いたプレス装置を想定し、プレス品を成形した。比較例3では、一般的なパッド曲げ成形のプレス装置を想定し(図2参照)、プレス品を成形した。比較例1~比較例3のいずれも熱間プレスを想定した。
[計算条件]
本発明例1~本発明例3及び比較例1~比較例3で共通する計算条件について説明する。数値計算は、Livermore Software Technology Corporation製ソフトウェアLS-DYNAを用いて行った。計算方法は、有限要素法(FEM)を用いた。ブランクは、板厚1.6mm、常温時の引張強さ600MPaの鋼板であった。ブランクの加熱温度は、900℃であった。パンチは下型として固定し、ダイの下降速度は4000mm/secであった。ダイが下死点に到達した際に弾性部材からパッドに加えられる荷重は、49000Nであった。
図24は、本実施例で成形したプレス品のモデルの斜視図である。図24を参照して、本実施例では、天板部16、縦壁部17及びフランジ部18を含むL字に90度湾曲したプレス品の成形を想定した。プレス品のL字に湾曲した領域、すなわち伸びフランジ部14は、半径30mmの1/4円であった。
本発明例1~本発明例3及び比較例1~比較例3で異なる計算条件について説明する。
図5を参照して、本発明例1及び比較例1では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてパッド4のパッド先端部41は、プレス方向においてパッド4側に位置する突起部の先端部25よりも66mmパンチ3に近かった。本発明例1及び比較例1では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向において突起部の先端部25は、ダイ頂部23よりも25mmパンチ3に近かった。
図12を参照して、本発明例2及び比較例2では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてパッド4のパッド先端部41は、ダイ頂部23よりも66mmパンチ3に近かった。ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてインナーパッド34のインナーパッド先端部35は、パンチ頂部31よりも10mmダイ2に近かった。ダイが下死点に到達した際に弾性部材からインナーパッドに加えられる荷重は、98000Nであった。
図18を参照して、本発明例3では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてパッド4のパッド先端部41は、突起部の先端部25よりも66mmパンチ3に近かった。本発明例3では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向において突起部の先端部25は、ダイ頂部23よりも25mmパンチ3に近かった。本発明例3では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてインナーパッド34のインナーパッド先端部35は、パンチ頂部31よりも10mmダイ2に近かった。ダイが下死点に到達した際に弾性部材からインナーパッドに加えられる荷重は、98000Nであった。
比較例3では、ダイ2が上死点の位置のとき、プレス方向においてパッド4のパッド先端部41は、ダイ2のダイ頂部23よりも66mmパンチ3に近かった。
本発明例1~本発明例3において、ディスタンスブロックのプレス方向の長さは、1.8mmであった。すなわち、ブランクとパッド先端部との間に0.2mmの隙間を設けた。
[計算結果]
図24を参照して、本発明例1~本発明例3及び比較例1~比較例3において、伸びフランジ部14における板厚減少率を算出した。板厚減少率の数値が大きいほど、板厚が減少し、破断が生じやすいことを意味する。なお、板厚減少率は、以下の式によって算出した。
(板厚減少率[%])=(成形前の板厚-成形後の板厚)×100/(成形前の板厚)
破断の評価として、破断が最も生じやすい伸びフランジ部14の湾曲中央の縦壁部17とフランジ部18との境界の板厚減少率を算出した。また、破断のしにくさの評価として、伸びフランジ部14の縦壁部17とフランジ部18において板厚減少率が17%以上である領域の面積を算出した。算出した値から比較例1の値を100とした、本発明例1~本発明例3、比較例1~比較例3の割合を算出した。
計算結果を表1に示す。
Figure 0007131076000001
本発明例1~本発明例3では、伸びフランジ部14の湾曲中央の板厚減少率は比較例での値以下であった。すなわち、本発明例1~本発明例3では、伸びフランジ部の破断が比較例よりも抑制された。また、本発明例1~本発明例3では、板厚減少率が17%以上である領域の面積は比較例よりも小さかった。すなわち、本発明例1~本発明例3では、縦壁部およびフランジ部の破断の発生する確率のある範囲が比較例よりも抑制された。なお、本発明例1~3においては、天板部16の板厚減少率は、シワの発生の可能性のある程度にまで大きくはなかった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
上述の実施形態では、ダイを上型、パンチを下型として配置する場合について説明した。しかしながら、パンチを上型、ダイを下型としてもよい。要するに、上述した実施形態のプレス装置の上下が反転してもよい。
上述の実施形態において、プレス品は製品でなくてもよい。すなわち、本実施形態のプレス品を生産する方法で得られたプレス品をさらに、曲げ成形、絞り成形、切削加工等してもよい。
上述の実施形態では、断面視で、ハット断面形状のプレス品の片側を成形する場合について説明した。しかしながら、本実施形態のプレス品を生産する方法において、断面視で、ハット断面形状のプレス品の両側を成形してもよいことは言うまでもない。また、プレス品は断面視で両側に伸びフランジ部を含んでいなくてもよい。すなわち、プレス品は断面視で片側にのみ伸びフランジ部を含んでいてもよい。
本実施形態のプレス品を生産する方法は伸びフランジ部を含むプレス品の生産に用いられる。伸びフランジ部を含むプレス品は例えば、4輪自動車のフロントピラー、センターピラー、リアピラー、フロントバンパー、リアバンパー、ロアアーム等の車体を構成する部品である。
1:プレス装置
2:ダイ
3:パンチ
4:パッド
5:ディスタンスブロック
6:突起部
7:弾性部材
10:ブランク
11:第1領域
12:第2領域
13:第3領域
14:伸びフランジ部
15:伸びフランジ部の端
21:凹部
22:ダイ縦壁部
23:ダイ頂部
24:突起部の内側端
25:突起部の先端部
31:パンチ頂部
32:パンチ縦壁部
33:パンチ底部
34:インナーパッド
35:インナーパッド先端部
41:パッド先端部

Claims (6)

  1. パンチ、前記パンチと対向するダイ及び前記パンチと対向するパッドを含むプレス装置によって、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する方法であって、
    前記プレス品の伸びフランジ部の端となる部分を含む第1領域、前記第1領域よりも内側に位置する第2領域、前記第2領域よりも内側に位置する第3領域を含むブランクを前記プレス装置に配置する配置工程と、
    前記配置工程後、前記パッドと前記パンチとを近づけ、前記パッドと前記パンチとで前記ブランクと前記パッドとの間に隙間を空けて前記第3領域を拘束する第3領域拘束工程と、
    前記第3領域拘束工程後、前記ダイと前記パンチとを近づけ、前記ダイと前記第1領域を接触させ、前記ダイによって前記第1領域を前記パンチ側に押し込む第1領域押し込み工程と、
    前記第1領域押し込み工程の開始後、前記パンチと前記第2領域を接触させ、かつ、前記ダイと前記第2領域を接触させて、前記パンチ及び前記ダイによって前記第2領域を加工する第2領域加工工程と、を備え、
    前記ダイは、前記ダイのダイ頂部よりも前記パンチに向かって突出する突起部を含み、
    前記第1領域押し込み工程では、前記突起部と前記第1領域を接触させ、前記突起部によって前記第1領域を前記パンチ側に押し込み、前記伸びフランジ部の端を前記突起部の内側端よりも前記第3領域側に移動させる、プレス品を生産する方法。
  2. パンチ、前記パンチと対向するダイ及び前記パンチと対向するパッドを含むプレス装置によって、曲げ成形により伸びフランジ部を含むプレス品を生産する方法であって、
    前記プレス品の伸びフランジ部の端となる部分を含む第1領域、前記第1領域よりも内側に位置する第2領域、前記第2領域よりも内側に位置する第3領域を含むブランクを前記プレス装置に配置する配置工程と、
    前記配置工程後、前記パッドと前記パンチとを近づけ、前記パッドと前記パンチとで前記ブランクと前記パッドとの間に隙間を空けて前記第3領域を拘束する第3領域拘束工程と、
    前記第3領域拘束工程後、前記ダイと前記パンチとを近づけ、前記ダイと前記第1領域を接触させ、前記ダイによって前記第1領域を前記パンチ側に押し込む第1領域押し込み工程と、
    前記第1領域押し込み工程の開始後、前記パンチと前記第2領域を接触させ、かつ、前記ダイと前記第2領域を接触させて、前記パンチ及び前記ダイによって前記第2領域を加工する第2領域加工工程と、を備え、
    前記パンチは、前記パンチの先端加工部よりも前記ダイに向かって突出し、前記ダイ又は前記パンチが下死点に到達した際に前記パンチの凹部に収容されるインナーパッドを含み、
    前記配置工程において、前記第3領域が前記インナーパッドに対応する位置になるように前記ブランクを配置し、
    前記第3領域拘束工程では、前記パッドと前記インナーパッドとを近づけ、前記パッドと前記インナーパッドとで隙間を空けて前記第3領域を拘束する、プレス品を生産する方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のプレス品を生産する方法であって、
    前記第3領域拘束工程では、前記パッドと前記パンチとの間の隙間は前記ブランクの板厚の120%以下である、プレス品を生産する方法。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレス品を生産する方法であって、
    前記第2領域加工工程では、前記ダイ又は前記パンチを下死点に到達させ、前記第2領域の加工の終了と同時に前記第1領域の加工も終了させる、プレス品を生産する方法。
  5. 請求項4に記載のプレス品を生産する方法であって、
    前記ブランクは、前記第1領域押し込み工程の開始前に予め加熱される、プレス品を生産する方法。
  6. 請求項5に記載のプレス品を生産する方法であって、
    前記ブランクは鋼製であり、
    前記ブランクの加熱温度は700℃以上である、プレス品を生産する方法。
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