JP7119539B2 - 炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
熱硬化性樹脂を炭素繊維束(1)に含浸させる方法としては、レジンバス槽(2)でディッピングによる方法が用いられている。
また、速硬化性樹脂に適した引抜成形方法の特許文献1では、樹脂含浸金型への複数穴による繊維の導入経路および複数の樹脂添加経路は、樹脂含浸金型が複雑な構造になるため樹脂含浸金型が高価になる問題があった。また、複数の樹脂添加経路は、個々の樹脂添加量が安定せず繊維束に含浸斑が発生し、炭素繊維のような細い繊維束では、成形品の中にボイドが発生してしまう問題があった。
工程[1]:連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げながら、当該炭素繊維束にスリットノズルから樹脂を添加する工程、
工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程
工程[3]:樹脂を添加した炭素繊維束を加圧して、炭素繊維束に樹脂の含浸を促進させる工程
工程[4]:樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる工程
(2) 前記工程[2]において、繊維含有率が60~70体積%となる樹脂量となるように余剰樹脂を取り除く、上記(1)に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
(3) 前記工程[2]と前記工程[3]をダイにより同時に行う、上記(1)または(2)に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
(4) 前記工程[2]の後に前記工程[3]を含む、上記(1)または(2)に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
(5) 前記工程[1]と工程[2]の間に、下記工程[5]を含む、上記(1)から(4)のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸工程
(6) 前記工程[4]の樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる工程が、樹脂が含浸した炭素繊維束を成形金型内へ引き込み、成形品形状を保持した状態で加熱硬化させる工程である、請求項1から5のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法
工程[1]:連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げながら、当該炭素繊維束にスリットノズルから樹脂を添加する工程、
工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程
工程[3]:樹脂を添加した炭素繊維束を加圧して、炭素繊維束に樹脂の含浸を促進させる工程
工程[4]:樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる工程
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸工程
本発明において「連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げ」とは、具体的には炭素繊維のトウ幅と厚みを均一に維持することを意味する。連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げる方法としては、固定式ロールおよび回転式ロール等が挙げられる。
本発明で用いる炭素繊維束に特に限定はないが、炭素繊維のJIS(日本工業規格)R 7601に準拠した引張強度が、3500MPa以上であることが好ましく、5000MPa以上であることがより好ましく、6000MPa以上であることがさらに好ましい。引張弾性率は150GPa以上であることが好ましく、200GPa以上であることがより好ましく、250GPa以上であることがさらに好ましい。
炭素繊維束における炭素繊維の本数は、1,000~70,000本が好ましい。
本発明で用いる樹脂としては特に限定はないが、成形性の観点から熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、具体的にはポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、速硬化性樹脂の観点から好ましくはポリウレタン樹脂である。
本発明において、炭素繊維束にスリットノズルから樹脂を添加する際の樹脂添加量は、任意のVFを設定し、当該VFになるように引抜成形の成形スピードまたは成形物の大きさにより適時調整すればよい。
工程[2]においては、樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く。余剰樹脂とは、炭素繊維束に樹脂含浸された後の樹脂であり、繊維含有率が60~70体積%となる樹脂量から算出できる。
工程[3]においては、樹脂を添加した炭素繊維束を加圧して、炭素繊維束に樹脂の含浸を促進させる。加圧条件は炭素繊維量とレジンコントロールダイの口金の断面積から算出される繊維含有率が60~70体積%となる樹脂量で加圧することが好ましい。
樹脂の含浸を促進させるためには、レジンコントロールダイの長さを50mm以上保持すればよい。
工程[4]においては、樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる。加熱条件は、樹脂の硬化温度以上であればよく、例えば、樹脂の硬化温度は室温+30~180℃であることが好ましい。
工程[5]においては、ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を予備含浸させる。具体的には、ロールで炭素繊維束のトウ幅と厚みを均一に保持しつつ炭素繊維束にかかる張力により樹脂を予備含浸させる。なお、予備含侵とは、炭素繊維束の内部への樹脂を含浸することである。当該予備含浸によって、工程[3]における最終的な樹脂の含浸を容易にコントロールすることができる。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法は下記の組合せの工程からなる。
工程[1]:連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げながら、当該炭素繊維束にスリットノズルから樹脂を添加する工程、
工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程
工程[3]:樹脂を添加した炭素繊維束を加圧して、炭素繊維束に樹脂の含浸を促進させる工程
工程[4]:樹脂が含浸した炭素繊維束を成形金型内へ引き込み、成形品形状を保持した状態で加熱硬化させる工程
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸工程、
工程[1]~工程[3]・工程[4]からなる本発明の炭素繊維強化樹脂成型品の製造方法を図2を用い説明する。
多錘の炭素繊維をそれぞれのクリールから引き出しガイドロール(11)を介して揃え炭素繊維束(10)が形成される。炭素繊維束(10)を樹脂注入レジンコントロール装置(20)へ導き、工程[1]:連続した炭素繊維束(10)をスリットノズル(21)の曲面に沿わせ、当該炭素繊維束の幅を広げかつトウ形態を均一に維持するよう広げながら、当該炭素繊維束にスリットノズル(21)から樹脂を添加し、当該炭素繊維束の集合体の幅を設定値(例えば60mm)に保持した。
樹脂供給部は、樹脂を供給するタンク(12a)および(12b)とポンプ(図示なし)からなる主剤(A液剤)供給路と硬化剤(B液剤)供給路からなり、これらを合流する合流金具(13)と樹脂を混合するスタティックミキサー(14)と樹脂を吐出するスリットノズル(21)からなる。
樹脂を混合するスタティックミキサー(14)は、ノードソン製の直径11.1mm×長さ322mmでエレメント数30を用いた。
エレメント数は特に限定はないが24以上を用いれば問題なく混合できる。
図4のスリットノズルは、直径10mm×長さ100mmの外形を要し、混合された樹脂が供給される樹脂供給口(22)と、樹脂を吐出するスリット部(23)が設けてあり、スリット部(23)の形状は、0.5mm×50mmのスリット状の穴である。
スリットの長さは炭素繊維束(10)のトウ幅と同じか若干狭い方が、樹脂が均等に添加され好ましい。
樹脂の吐出量は、引抜成形のスピードに応じて決めれば良く、引抜きスピードが0.25m/minでは樹脂の吐出量は10mg/minであった。
入口側テーパー状含浸路(26)に導かれた炭素繊維束(10)は、工程[1]で添加された樹脂を、工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程で、該炭素繊維束に添加された樹脂を、入口側テーパー状含浸路(26)に引込まれる該炭素繊維束からテーパー形状部で余剰樹脂を削ぎ落としながら、繊維含有率が60~70%の範囲になるよう樹脂量が調整される。
繊維含有率が低すぎると、成形品の表面がざらつく等製品品質の劣化原因となる。また、繊維含有率が高すぎると、製造する際に金型内に炭素繊維束が詰まるなどして製造できない場合がある。
成形金型(3)へ樹脂が含浸した炭素繊維束を成形金型内へ引き込み硬化させ成形したあと引取り機(4)で引抜き連続した炭素繊維強化樹脂成形品を得た。
工程[1]と工程[2]の間に、工程[5]を含み、工程[3]・工程[5]からなる炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法を図3を用いて説明する。
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸工程である。
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸行った以外は図2と同様の構成とした。
樹脂含浸ロール(25)の本数は必要に応じ増減すればよい。
そのあと、レジンコントロールダイ(24)の入口側テーパー状含浸路(26)に導かれた炭素繊維束(10)は、工程[1]・工程[5]をへて予備含浸された該炭素繊維束を、工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程で、該炭素繊維束に添加された樹脂を、入口側テーパー状含浸路(26)に引込まれる該炭素繊維束からテーパー形状部で余剰樹脂を削ぎ落としながら、繊維含有率が60~70%の範囲になるよう樹脂量が調整される。
成形金型(3)へ樹脂が含浸した炭素繊維束を成形金型内へ引き込み硬化させ成形したあと引取り機(4)で引抜き連続した炭素繊維強化樹脂成形品を得た。
以下、この発明の実施例を図2及び図4、図5を用いて説明する。
三菱ケミカル製の炭素繊維TRW40-50Lを31本用意した。上段のガイドロール(11)に16本、下段のガイドロール(11)に15本それぞれに炭素繊維束(10)を並べるように配置した。
スタティックミキサー(14)は、ノードソン製の直径11.1mm×長さ322mmでエレメント数30を用いた。
クリールから引き出された炭素繊維は、ガイドロール(11)を介して、上段のガイドロール(11)に16本、下段のガイドロール(11)に15本それぞれに炭素繊維束(10)を並べるように配置した。
図3中の樹脂注入レジンコントロール装置(30)では、スリットノズル(21)とレジンコントロールダイ(24)の間に樹脂含浸ロール(25)を介して含浸を行った以外は図2と同様の構成とした。
樹脂注入レジンコントロール装置(30)へ導かれた炭素繊維束(10)は、上段と下段とに分かれたスリットノズル(21)の曲面に沿って炭素繊維束(10)を沿わせ該炭素繊維束の幅を等間隔に広げかつトウ形態を均一に維持するようにし、該炭素繊維束の幅を60mmに保持した。
速硬化性樹脂でも、複雑な樹脂含浸金型を用いることなく安価な樹脂注入レジンコントロール装置で樹脂の含浸不良がない炭素繊維強化樹脂成形品が得られた。
(比較例):工程[1]を有さない製造方法。
樹脂含侵ダイ(41)は、炭素繊維束(10)の導入路から導出路まで、幅50mm×高さ2mm×長さ100mmの長方形の穴で形成されており、導入路の上部より樹脂供給用の樹脂供給スリットノズル(42)が取付く構造となっている。
10 〃
2 レジンバス槽
3 成形金型
4 引取り機
11 ガイドロール
12a タンク
12b タンク
13 合流金具
14 スタティックミキサー
20 樹脂注入レジンコントロール装置
30 〃
21 スリットノズル
22 樹脂供給口
23 スリット部
24 レジンコントロールダイ
25 樹脂含浸ロール
26 入口側テーパー状含浸路
27 出口側含浸路
40 樹脂注入レジンコントロール装置
41 樹脂含侵ダイ
42 樹脂供給スリットノズル
Claims (8)
- 以下の工程[1]~[4]及び引抜き工程を含む、引抜成形により炭素繊維強化樹脂成形品を製造する方法であって、工程[1]の後に工程[2]および[3]を含み、工程[2]および[3]の後に工程[4]を含み、更に工程[4]の後に引抜き工程を含む、炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
工程[1]:連続した炭素繊維束の繊維間隔を広げながら、当該炭素繊維束にスリットノズルから樹脂を添加する工程、
工程[2]:樹脂を添加した炭素繊維束から余剰樹脂を取除く工程
工程[3]:樹脂を添加した炭素繊維束を加圧して、炭素繊維束に樹脂の含浸を促進させる工程
工程[4]:樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる工程
引抜き工程:引取り機により引抜く工程 - 前記工程[2]において、繊維含有率が60~70体積%となる樹脂量となるように余剰樹脂を取り除く、請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 前記工程[2]と前記工程[3]をダイにより同時に行う、請求項1または2に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 前記工程[2]の後に前記工程[3]を含む、請求項1または2に記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 前記工程[1]と工程[2]の間に、下記工程[5]を含む、請求項1から4のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
工程[5]:ロールを用いて炭素繊維束に樹脂を含浸させる予備含浸工程 - 前記工程[4]の樹脂が含浸した炭素繊維束を加熱硬化させる工程が、樹脂が含浸した炭素繊維束を成形金型内へ引き込み、成形品形状を保持した状態で加熱硬化させる工程である、請求項1から5のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 前記工程[2]が、レジンコントロールダイで行われる、請求項1から6のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
- 前記工程[2]が、レジンコントロールダイの入口側テーパー状含浸路に引込まれた炭素繊維束からテーパー形状部で余剰樹脂を取り除かれる、請求項1から7のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形品の製造方法。
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