ここで本開示の主題を、添付の説明および図面を参照しながら以下でより詳細に説明するが、本開示の主題の実施形態の全てではなく一部が示される。本開示の主題は、多くの様々な形態で具体化でき、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、この開示が適用可能な法的な必要条件を満たすように提供されたものである。全体にわたり、類似の数値は類似の要素を指す。
前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を受ける本開示の主題の関連分野の当業者であれば、本明細書に記載された本開示の主題の多くの改変および他の実施形態を思い付くものと予想される。それゆえに、本開示の主題は、開示された具体的な実施形態に限定されず、改変および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されると予想される。本明細書において特定の用語が採用されるが、それらは、総称的に、単に説明的な意味でのみ使用され、限定する目的はない。本開示は、以下に示す略語を利用する。
定義
以下の用語は、当業者によって十分理解されると考えられるが、本開示の主題の記載を容易にするために以下の定義を明示する。他の定義は、本明細書にわたり見出される。別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、この本明細書に記載される主題が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、具体的な例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、本来的に、それらそれぞれの試験測定で見出される標準偏差の結果として必然的に生じる一定の誤差を含有する。さらに、本明細書で開示される全ての範囲は、そこに含まれるありとあらゆる部分範囲を包含することが理解されるものとする。例えば、「1から10」と述べられた範囲は、最小値の1から最大値の10の間(それらの値を含めて)のありとあらゆる部分範囲;すなわち、最小値の1またはそれより大きい値から始まる部分範囲、例えば1から6.1、および最大値の10またはそれより小さい値で終わる部分範囲、例えば5.5から10の全ての部分範囲を含むとみなされるものとする。加えて、「本明細書に組み込まれる」と称される全ての参考文献は、その全体が組み込まれると理解されるものとする。
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、特許請求の範囲を含めて本出願において使用される場合、「1つまたは複数の」を指す。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、文脈上明らかに、その逆であること(例えば、複数の細胞)などを示していない限り、複数のこのような細胞を含む。
用語「バイオマーカー」または「目的のバイオマーカー」は、本明細書で使用される場合、生物の生理学的な状態に関する生物学的な情報を提供する可能性があるあらゆる生体分子である。ある特定の実施形態において、バイオマーカーの存在または非存在は、情報を与え得る。他の実施形態において、バイオマーカーのレベルは、情報を与え得る。一実施形態において、目的のバイオマーカーは、ペプチド、ホルモン、核酸、脂質またはタンパク質を含み得る。または他のバイオマーカーが測定されてもよい。
用語「生体試料」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、動物、細胞培養物、臓器培養物を含む生物学的な源から得られた試料を指す。生体試料は、体液であり得る。好適な試料としては、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙、髄液、臓器、毛髪、筋肉、または他の組織試料が挙げられる。一実施形態において、試料は、層流デバイスで分離された血液から生産された乾燥させた血漿を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態において、層流デバイスは、液状の血漿より多くの赤血球の流れを制限し、したがって、血漿から液状の血液細胞を分離する。
用語「体液」は、本明細書で使用される場合、生物学的な源、例えば、これらに限定されないが、動物、細胞培養物、臓器培養物などから得られた液体試料を指す。好適な試料としては、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙、髄液、臓器、毛髪、筋肉、もしくは他の組織試料、または他の液体吸引物が挙げられ、これらは全て、収集および乾燥のために担体上に堆積させることが可能である。一実施形態において、試料体液は、乾燥の前に、担体上で分離することができる。例えば、血液は、サンプリング紙担体上に堆積させることができ、これは、分析のための乾燥させた血漿の試料を生産するために、赤血球の移動を制限して、乾燥の前に血漿画分の分離を可能にする。乾燥させた血漿も含んでいてもよい。
用語「個体」および「対象」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される。対象は、動物を含み得る。したがって、一部の実施形態において、生体試料は、これらに限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、サルを含む哺乳動物から得られる。一部の実施形態において、生体試料は、ヒト対象から得られる。一部の実施形態において、対象は、患者であり、すなわち、疾患または状態の診断、予後診断、または処置に関する臨床的な環境に自ら現れる生きている人である。
本明細書で使用される場合、用語「精製する」もしくは「分離する」またはそれらの派生語は、必ずしも、試料マトリックスからの目的の分析物以外の全ての材料の除去を指すとは限らない。その代わりに、一部の実施形態において、用語「精製する」または「分離する」は、試料マトリックス中に存在する1つまたは複数の他の成分に比べて、1つまたは複数の目的の分析物の量を高める手順を指す。一部の実施形態において、「精製」または「分離」手順は、目的のバイオマーカーの検出に干渉する可能性がある試料の1つまたは複数の成分、例えば、質量分析による分析物の検出に干渉する可能性がある1つまたは複数の成分を除去するのに使用することができる。
用語「指穿刺」は、本明細書で使用される場合、指先をランセットで切開し、毛細管血を収集する血液のサンプリング方法を指す。
用語「経皮」は、本明細書で使用される場合、微細針を皮膚表面に突き刺して、表皮または真皮(例えば、上腕)内の毛細管血に接触し、真空および/または重力により血液を収集する血液のサンプリング方法を指す。
「静脈穿刺」は、本明細書で使用される場合、シリンジに取り付けられた針を使用して静脈を刺すことによる血液のサンプリング方法を指す。
用語「群内の変動」または「CVg」は、本明細書で使用される場合、群中の対象間の測定値の変動の係数を指す。
「較正物質」は、本明細書で使用される場合、マトリックス中の公知のバイオマーカー濃度で作製された試料であって、必ずしもそうとは限らないが、理想的には目的のバイオマーカーを含まないものである。較正物質は、未知の試料におけるバイオマーカーの濃度を決定するのに使用される用量応答曲線を生成するために使用される。
「品質対照」は、本明細書で使用される場合、実験からの結果の品質を検証するのに使用される、目標とする濃度範囲を有する試料である。
「クロマトグラフィー」は、本明細書で使用される場合、液体またはガスによって運ばれる化学混合物が、静止している液相または固相の周りまたはその上にそれらが流動するときに化学実体が差次的に分配される結果として、成分に分離されるプロセスを指す。
「液体クロマトグラフィー」(LC)は、本明細書で使用される場合、流体が微粉化した物質のカラムを通って、またはキャピラリーの通路を通って均一に浸透するときの、流体溶液の1つまたは複数の成分の選択的な遅延のプロセスを意味する。遅延は、1つまたは複数の固定相とバルクの流体(すなわち、移動相)との間に混合物の成分が、この流体が固定相に対して移動するときに分配されることに起因する。「液体クロマトグラフィー」としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
用語「HPLC」または「高速液体クロマトグラフィー」は、本明細書で使用される場合、加圧下で移動相を固定相に、典型的には高密度に充填されたカラムに押し通すことによって分離の程度を増加させる液体クロマトグラフィーを指す。
クロマトグラフィーのカラムは、典型的には、化学部分の分離(すなわち、分画)を容易にするための媒体(すなわち、充填材料)を含む。媒体は、微細な粒子を含んでいてもよい。このような粒子は、本明細書に記載の実験で定量化されるバイオマーカー分析物などの様々な化学部分と相互作用して化学部分の分離を容易にする結合表面を含んでいてもよい。1つの好適な結合表面は、疎水性の結合表面、例えばアルキル結合表面である。アルキル結合表面は、C-4、C-8、またはC-18の結合アルキル基、好ましくはC-18の結合基を含んでいてもよい。クロマトグラフィーのカラムは、試料を受け取るための入口ポート、および分画された試料を含む流出物を放出するための出口ポートを含んでいてもよい。本方法において、試料(または精製前の試料)は、入口ポートでカラムに適用され、溶媒または溶媒混合物で溶出させ、出口ポートで放出させることができる。異なる目的の分析物を溶出させるために、異なる溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、均一モード、または複合型(polytyptic)(すなわち混合)モードを使用して実行することができる。一実施形態において、HPLCは、C18固相を有する多重分析HPLCシステムで、移動相として水:メタノールを用いた均一分離を使用して実行することができる。
用語「分析カラム」は、本明細書で使用される場合、試験試料マトリックスの成分の分離を実行するのに十分なクロマトグラフィープレートを有するクロマトグラフィーカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶出させた成分は、目的の分析物の存在または量の決定が可能になるような方法で分離される。一部の実施形態において、分析カラムは、約5μmの平均直径を有する粒子を含む。一部の実施形態において、分析カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばフェニル-ヘキシル官能化分析カラムである。
分析カラムは、保持された材料を保持されていない材料から分離または抽出して、さらなる精製または分析のための「精製した」試料を得るために通常使用される「抽出カラム」と区別することができる。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。
用語「ハートカット」は、クロマトグラムにおいて目的の領域を選択し、その目的の領域内で溶出する分析物を、第2の分離、例えば二次元目における分離に供することを指す。
用語「電子イオン化」は、本明細書で使用される場合、ガスまたは気相中の目的の分析物が電子流と相互作用する方法を指す。電子と分析物との衝突により分析物イオンが生産され、次いでこれを質量分析技術に供することができる。
用語「化学イオン化」は、本明細書で使用される場合、試薬ガス(例えばアンモニア)を電子衝撃に供することで、試薬ガスイオンと分析物分子との相互作用によって分析物イオンが形成される方法を指す。
用語「電界脱離」は、本明細書で使用される場合、不揮発性試験試料をイオン化表面上に置き、強い電場を使用して分析物イオンを生成する方法を指す。
用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」、または「MALDI」は、本明細書で使用される場合、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、それにより試料中の分析物を脱離させ、光イオン化、プロトン付加、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によってイオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、分析物分子の脱離を容易にするエネルギー吸収マトリックスと混合される。
用語「表面増強レーザー脱離イオン化」、または「SELDI」は、本明細書で使用される場合、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、それにより試料中の分析物を脱離させ、光イオン化、プロトン付加、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によってイオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、典型的には、1つまたは複数の目的の分析物を優先的に保持する表面に結合される。MALDIの場合と同様に、このプロセスも、イオン化を容易にするために、エネルギー吸収材料を採用する場合がある。
用語「エレクトロスプレーイオン化」、または「ESI」は、本明細書で使用される場合、溶液を長さが短い毛細管に沿って通過させて、その末端に高い正または負電位を適用する方法を指す。管の末端に到達したら、溶液を気化させて(霧状にして)、溶媒蒸気中の非常に小さい溶液の液滴のジェットまたはスプレーにすることができる。この液滴のミストは、液化を防ぎ、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱された蒸発チャンバーを通って流動させることができる。液滴が小さくなるにつれて、電気的な表面電荷密度は、類似の電荷間の自然の反発がイオンに加えて中性分子の放出を引き起こすような時点まで増加する。
用語「大気圧化学イオン化」、または「APCI」は、本明細書で使用される場合、ESIに類似した質量分析方法を指すが、APCIは、大気圧でのプラズマ内で起こるイオン-分子反応によってイオンを生産する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極との間の放電によって維持される。次いでイオンは、典型的には、一連の差次的にポンプ注入されるスキマーステージの使用によって質量分析計に抽出される。乾燥および予熱されたN2ガスの向流を使用して、溶媒の除去を改善することができる。より低い極性の種を分析する場合、APCIにおけるガス相イオン化が、ESIより有効な場合がある。
用語「大気圧光イオン化」(「APPI」)は、本明細書で使用される場合、分子Mの光イオン化のメカニズムが、光子の吸収および電子の放出による分子M+の形成である質量分析法の形態を指す。光子エネルギーは、典型的には、イオン化電位をちょうど超える程度であるため、分子イオンは、解離を受けにくい。多くの場合において、クロマトグラフィーを必要とすることなく試料を分析することが可能であるため、顕著な時間と費用の節約になる。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを抽出してMH+を形成することができる。これは、Mが高いプロトン親和性を有する場合、起こる傾向がある。M+とMH+の合計は一定であるため、これは定量精度に影響を与えない。プロトン性溶媒中の医薬化合物は通常、MH+として観察されるが、ナフタレンまたはテストステロンなどの非極性化合物は通常、M+を形成する(例えば、Robb et al., 2000, Anal. Chem. 72(15): 3653-3659を参照)。
用語「誘導結合プラズマ」は、本明細書で使用される場合、ほとんどの元素を原子にしてイオン化するのに十分に高い温度で、試料が、部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を指す。
用語「イオン化」および「イオン化する」は、本明細書で使用される場合、1またはそれより高い電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。陰イオンは、1つまたはそれより高い電子単位の正味の負電荷を有するイオンであり、一方で陽イオンは、1つまたはそれより高い電子単位の正味の正電荷を有するイオンである。
用語「脱離」は、本明細書で使用される場合、表面から分析物が除去されること、および/または分析物が気相に入ることを指す。
用語「溶血した」は、本明細書で使用される場合、赤血球膜が破裂して、血漿または血清にヘモグロビンと他の細胞内容物の放出が起こることを指し、用語「脂肪血症の」は、血液中の脂肪または脂質が過剰であることを指す。
「液体血漿」は、本明細書で使用される場合、患者からの採血から得られた血漿であって、赤血球から分離されているが液体状態のままのものである。液体血漿は、一般的に、静脈切開または静脈穿刺によって対象から得られる。
「乾燥させた血漿」は、本明細書で使用される場合、乾燥させた血漿である。乾燥させた血漿は、より詳細に本明細書に記載されるように、細胞の移動を制限する固体担体の孔を通る血漿の移動によって赤血球から分離した後に生産することができる。
用語「パンチ」は、本明細書で使用される場合、表面上に乾燥させた血液または血漿の試料を有する、乾燥させた担体の部分に対応する。例えば、一実施形態において、パンチは、ろ紙または他のサンプリング紙もしくは固体担体の9mm2の部分である。またはパンチは、丸形であってもよいし、または本明細書において示されるような別の形状であってもよい。
「サンプリング紙」または「フィルター」または「フィルター膜」または「層流紙」または「層流デバイス」は、本明細書で使用される場合、乾燥させた血液および血漿の収集のための固体担体を指すのに同義的に使用される用語であり、その上に血液をスポッティングでき、実質的に血漿である領域が生じるように赤血球から離れる血漿の移動を可能にし、乾燥させると乾燥させた血漿の試料を提供する濾紙または膜を含み得る。
「遺伝子型」は、本明細書で使用される場合、タンパク質配列をコードし得る遺伝子中に存在する2つの対立遺伝子のDNA配列である。
「サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質から得られ、タンパク質に関する配列情報を提供するペプチドである。用語「改変体特異的サロゲートペプチド」および/または「対立遺伝子特異的サロゲートペプチド」および/または「遺伝子型特異的サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質から得られ、そのタンパク質をコードする遺伝子のDNA配列に直接起因する可能性がある固有のアミノ酸配列を有するペプチドである。対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの配列の決定は、遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の遺伝子型を推測するのに使用することができる。したがって、「対立遺伝子特異的サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質をコードする対立遺伝子に関する配列情報を提供するペプチドである。例えば、ApoL1の場合、野生型サロゲートペプチドは、タンパク質が野生型対立遺伝子由来であることを示し、それに対してG1サロゲートペプチドは、タンパク質がG1対立遺伝子由来であることを示し、G2サロゲートペプチドは、タンパク質がG2対立遺伝子由来であることを示す。
「共通サロゲート」ペプチドまたは「認定ペプチド」または「認定サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、目的の遺伝子座におけるDNA配列が変動し得る場合でも変動しない固有のアミノ酸配列を有するペプチドである。したがって、「共通サロゲートペプチド」または「認定ペプチド」は、本明細書で使用される場合、野生型対立遺伝子に加えて照合される対立遺伝子の全てに共通のペプチド配列を含む。共通サロゲートペプチドの配列の決定は、目的の遺伝子座における遺伝子型の変化に応じて変動しないと予想され、したがって、試料処理誤差から真の負のシグナルを区別するための内部対照として使用することができる。
「タンパク質改変体」は、本明細書で使用される場合、最も一般的な、または野生型配列と異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。
「プロテオームのプロファイル」は、本明細書で使用される場合、目的の遺伝子座における個体の遺伝子型を決定するのに使用することができるサロゲートペプチドのプロファイルである。
LC-MS/MSのための簡易化した生体試料の処理
本開示の主題は、LC-MS/MSのための簡易化した生体試料の処理のための方法およびシステムに関する。一部の場合において、本方法およびシステムは、特にプロテオーム分析に適している。本発明は、様々な方法で具体化することができる。
LC-MS/MSのための簡易化した生体試料の処理の方法
一実施形態において、本発明は、生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するための方法であって、少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられる生体試料を提供するステップであって、生体試料は、体液を含む、ステップ;およびクロマトグラフィーによって分離された少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって分析して、試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するステップを含む、方法を含む。一実施形態において、本方法は、少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、試料中の他の成分からクロマトグラフィーによって分離するステップを含んでいてもよい。
例えば、一実施形態において、本方法は、少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられる生体試料を提供するステップであって、生体試料は、乾燥させた血漿を含む、ステップ;乾燥させた血漿の試料から、少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップ;液体溶液中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって測定するステップ;液体溶液中の目的の少なくとも1つの正規化マーカーを、適切な分析技術によって測定するステップ;ならびに少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび目的の少なくとも1つの正規化マーカーの測定値の比を使用して、生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するステップを含んでいてもよい。または血漿以外の体液を使用してもよい。
一実施形態において、目的のバイオマーカーは、ペプチドもしくはタンパク質(例えば、酵素および他のタンパク質)、ホルモン、サイトカイン、核酸、脂質またはタンパク質を含んでいてもよい。または他のバイオマーカーが測定されてもよい。また目的のバイオマーカーがタンパク質である一部の場合において、試料をタンパク質分解による消化に供して、そのタンパク質からペプチドを生成してもよい。
ある特定の実施形態において、正規化マーカーは、試料体積(すなわち、固体支持体における乾燥させた血漿の量)の変動を補正することができる。加えて、正規化マーカーは、ある特定の実施形態において、血漿を単離する(例えば、血漿がろ紙または他のサンプリング支持体の表面を通過して全血細胞から移動するとき)のに使用される固体支持体または他のインターフェースにおける血漿(およびその中のバイオマーカー)の濃度における変動を補正することができる。
正規化マーカーは、ある特定の実施形態において、目的のバイオマーカーのLC-MS/MSアッセイに対して具体的に選択される。例えば、米国特許第7,611,670号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)などの様々なバイオマーカーのための正規化マーカーとして、ナトリウムおよび塩化物の使用を記載しているが、分析技術としてLC-MS/MSの使用を記載していない。また米国特許第6,040,135号も、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、血液体積の概算としてのヘモグロビンの使用を記載している。
一実施形態において、正規化マーカーは、生体試料中にも存在する。正規化マーカーは、対象間の生物学的な変動(CVg)が低い化合物であるべきである。一実施形態において、試験群は、ヒトであり得る。または試験群は、動物または哺乳動物であり得る。または試験群は、より狭義に定義された群(例えば、女性、男性、特定の年齢より下または上の人、特定の民族集団または人種に属する人、特定のタイプの動物、例えばイヌまたはネコなど)であり得る。ある特定の実施形態において、正規化マーカーは、10.0%未満、または5.0%未満、または2.0%未満、または1.0%未満のCVgを有する。一実施形態において、正規化マーカーのCVgは、目的のバイオマーカーのCVg未満である。例えば、様々な実施形態において、正規化マーカーのCVgは、目的のバイオマーカーのCVgの、多くとも10分の1、または少なくとも5分の1、または少なくとも2分の1である。全体的なアッセイの分析精度は、CVgより優れていないこともあり(すなわち、より低い変動を有さない)、したがって、正規化のために選択されるマーカーは、部分的にアッセイの性質に基づいていてもよいことが理解されると予想される。表1に、使用することができる例示的な正規化マーカーを示す。または他の正規化マーカーを使用してもよい。したがって、一部の場合において、正規化マーカーは、乾燥血漿を生産するのに使用される血液試料中に存在する塩化物または血清アルブミンである。
表1
ある特定の実施形態において、バイオマーカーおよび正規化マーカーは、タンパク質を含有する溶液、例えば水または緩衝液に溶解させたウシ血清アルブミンを使用して、乾燥させた血漿の試料から液体溶液に抽出される。他の実施形態において、バイオマーカーおよび正規化マーカーは、水、水性緩衝液、非水性溶媒、またはそれらの混合物を使用して、乾燥させた血漿から液体溶液に抽出される。または他の抽出緩衝液(または水)を使用してもよい。
例えば、乾燥血漿中に存在するバイオマーカーの濃度は、例えば、デバイス上に堆積させた血液のヘマトクリット含量の差または層流担体における不均質性のために、層流デバイスにわたり均一に分配されない場合があることが予測される。さらに、デバイス上に堆積させた液体血液の体積は、分かっていなくてもよく、乾燥形態での分析される血漿の対応する体積は、分かっていなくてもよい。体積およびバイオマーカーの濃度分布における不確実性を補正するために、予測される濃度の正規化マーカーを測定して、この変動の源を正規化してもよい。例えば、抽出された乾燥血漿溶液中の正規化マーカーの測定された濃度が、その予測される濃度より30%低い場合、抽出された乾燥血漿溶液におけるバイオマーカー濃度の回収率も、その本当の濃度より30%低く、回収率喪失の補正を可能にすると仮定することができる。したがって、正規化マーカーが、1)しっかりと制御された予測される濃度、2)担体上における乾燥血漿の目的のバイオマーカーと類似の分布、および3)乾燥血漿から液体溶液への類似の抽出回収率を有することが理想的である。さらに、正規化マーカーの分析的測定は、バイオマーカー濃度の決定に対する分散をほとんどなくすために、理想的には、分析上の分散をほとんど有さないべきである。一部の場合において、回収率および体積を補正して、バイオマーカー濃度を、血漿の単位体積当たりのバイオマーカーの単位量(すなわち、血漿1デシリットル当たりのテストステロンのナノグラム)で得るために、正規化マーカーの測定値を使用するのではなく、正規化マーカー1単位当たりのバイオマーカーの量(例えば、塩化物1ミリモル当たりのテストステロンのナノグラム)として、乾燥血漿またはその抽出物中のバイオマーカーの濃度を決定することが適切であり得る。
正規化マーカーに加えて、内部標準を使用することができる。内部標準は、サンプリングの変動を補正するのに使用される正規化マーカーとは対照的に、アッセイのステップにおける変動を補正するのに添加することができる。したがって、ある特定の実施形態において、内部標準は、分析手順の開始時に添加される。または内部標準は、方法の間の異なるポイントで添加されてもよい。例えば、内部標準は、血液試料に直接添加されてもよいし、または内部標準は、分析手順中の後のステップで添加されてもよい。
例えば、ある特定の実施形態において、乾燥させた血漿の抽出に使用される溶液は、後続の抽出および測定中の変動(不正確さ)を補正するために、バイオマーカーのための内部標準を含有していてもよい。一部の場合において、内部標準は、バイオマーカーの安定同位体で標識された類似体であり得る。加えて、および/または代替として、乾燥させた血漿の抽出に使用される溶液は、正規化マーカーのための内部標準を含有していてもよい。一部の場合において、内部標準は、正規化マーカーの安定同位体で標識された類似体であり得る。または、他の内部標準を使用することができる。例えば、内部標準としては、これらに限定されないが、他のタイプの(すなわち、同位体以外の)検出可能な部分(例えば、フルオロフォア、放射標識、有機側鎖(例えば、メチル基)、核酸バイオマーカーの場合、単一の塩基置換を有する核酸分子、ペプチドまたはタンパク質バイオマーカーの場合、内部またはサロゲートペプチド、例えばホルモンおよび他の小分子バイオマーカーの場合、立体異性体で標識された分子が挙げられる。
また一部の実施形態において、バイオマーカーの測定のための品質対照および/または較正物質の少なくとも1つが、乾燥させた血漿を含有しないサンプリング紙固体担体に添加される。このような較正物質および品質対照は、未知の濃度を決定し、抽出および測定プロセスの品質を評価するために使用することができる。
ある特定の実施形態において、バイオマーカーおよび正規化マーカーの両方を測定するのに使用される分析技術は、質量分析であってもよい。他の実施形態において、バイオマーカーを測定するのに使用される分析技術は、質量分析であってもよいが、正規化マーカーを測定するのに使用される分析技術は、質量分析でなくてもよい。例えば、正規化マーカーは、イムノメトリック方法、比色方法、電気化学方法、または蛍光定量方法によって測定されてもよい。またはバイオマーカーを測定するのに使用される分析技術は、質量分析でなくてもよい(ただし本明細書で開示された他の方法の1つであり得る)が、正規化マーカーを測定するのに使用される分析技術は、質量分析であってもよい。
代替の実施形態において、質量分析は、タンデム質量分析、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)、または2次元LC-MS/MSである。
ある特定の実施形態において、試料は、質量分析の前に、精製ステップに供される。例えば、精製ステップは、質量分析の前に、試料の液体-液体抽出、タンパク質沈殿または試料の希釈を含んでいてもよい。一実施形態において、試料は、LCおよび/またはMS(例えば、LC-MS/MSまたは2D-LC-MS/MS)に使用することができる溶媒または溶媒混合物に希釈される。
加えて、および/または代替として、精製ステップは、液体クロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含んでいてもよい。一部の場合において、クロマトグラフィーは、抽出および分析のための液体クロマトグラフィーを含む。加えて、または代替として、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)(ハイスループット液体クロマトグラフィーとしても公知)を使用してもよい。
本開示は、血漿分離ストリップを使用して単離された乾燥させた血漿を使用する簡易化した生体試料の処理方法を提供する。このような収集デバイスは、血漿分離ストリップ上に公知の体積のヘパリン添加血液をスポッティングする計量メカニズムを提供する。この自動化は、より簡単なサンプリングメカニズムを患者に提供することを意図している。乾燥させた血液は、血清の静脈穿刺収集または血漿チューブの代わりに、指穿刺および血漿セパレーターストリップを利用する代替検体収集プロセスである。収集ストリップの機能的なコアは、血漿を側方流動させながら適用部位からの細胞の移動を制限する、特殊化された血液セパレーター材料である。この選択的な移動は、血清セパレーターチューブの遠心分離によって達成された分離に類似して、側方流動材料内で細胞および血漿を分離する。確立された実験手順を使用する液体血漿または血清の代わりに、分離材料の標準化されたパンチが開けられたセクションからの乾燥させた血漿を分析することができる。
図1は、乾燥させた血液スポットを有するが、血液から分離された血漿を有さない紙と比較した、乾燥させた血液から分離された血漿を含むサンプリング紙を使用して単離された乾燥させた赤血球および乾燥させた血漿のゾーンを有する担体を示す(図1の左のパネルの、それぞれ上および下を参照)。図1の右側は、経時的な分離の程度を示す。臨床的な分析において、乾燥させた血液スポットが一般的に使用される検体であるが、分析は、赤血球(例えば、ヘモグロビン)によって生じる干渉に悩む場合がある。層流紙は、紙を通る血漿および細胞の差次的な移動によって細胞成分から堆積した血液の血漿画分を分離するのに使用することができ、その結果として、乾燥およびアッセイが可能な無細胞血漿画分が得られる。
次いで乾燥させた血漿のゾーンは、例えば小さいセクションにパンチを開けることによって分離することができ、このようなセクションは、一般的に円形であるが、アッセイフォーマットに都合の良い他の形状も使用できる。例えば、96ウェルマイクロタイタープレートの場合、直径約1/4インチを有する円形の開けられたパンチが、後続の処理ステップのための個々のウェルに移行できることが見出された。例えば一部の場合において、抽出に続いて保持型液体抽出を行ってもよい。
ある特定の実施形態において、試料は、サンプリングバイアスに関して特徴付けられ、結果は他のタイプのサンプリングと比較される。例えば、ある特定の実施形態において、指穿刺試料は、使用されるアリコートが初期のサンプリングの一部(すなわち、最初にサンプリングチューブに入る体積)であるか、またはサンプリング終了時に収集した血液であるかに関係なく、赤血球(RBC)、白血球(WBC)およびヘマトクリット(HCT)(図2)などの両方のタイプの血液成分、ならびに様々なバイオマーカー、例えば、これらに限定されないが、コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)、グルコース、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、前立腺特異的抗原(PSA)、トリグリセリド、および甲状腺刺激ホルモン(TSH)(図3)などに関して再現可能である。ある特定の実施形態において、指穿刺試料の平均バイアスは、所望の(<4.1%)および/または最小の(<6.2%)平均バイアス未満であるかまたはそれに等しい(例えば、Ricos C. et al., Scand J Clin Lab Invest 1999;59:491-500を参照)。またある特定の実施形態において、指穿刺試料の希釈も、好ましくない負の(または正の)バイアスをもたらさない(図4)。例えば、一実施形態において、静脈穿刺血漿と比較した平均バイアスは、≦20%、または≦15%、または≦10%、または≦8%、または≦5%、または≦3%、または≦2%、または≦1%である(図4)。
一実施形態において、乾燥させた血漿の使用は、乾燥させた血液と比較した場合、血液中に存在するあらゆる干渉化合物(例えばヘモグロビン)を補正する。例えば、バイオマーカーをLC-MS/MSによって測定する場合、ヘモグロビンは、2つの重要な方法で目的のバイオマーカーの検出に干渉する可能性がある。第1に、より高い濃度のヘモグロビンで、SRM MS/MS遷移において同重体干渉物質が観察されることがあり、これは、検体の解釈を混乱させる可能性がある。第2に、マトリックス作用が観察されることがあり、これは、より低い分析応答を引き起こす可能性がある。または他のタイプの干渉が、バイオマーカーまたは正規化マーカーのいずれかに使用されるアッセイに応じて生じる可能性がある。したがって、図5で示されるように、血漿がサンプリング紙上で赤血球から分離される場合(パンチ1からパンチ5または左から右へ)、テストステロンのためのアッセイにおける干渉の低減が起こる可能性がある。
本明細書で論じられるように、正規化マーカーは、例えば、サンプリング紙に適用される血液試料が、より多いかまたはより少ないこと、および/または血漿が血液細胞から分離されるよう試料がサンプリング紙にわたり移動する(例えば、パンチ1からパンチ5に)ときのバイオマーカーの希釈に起因するサンプリングの不一致を補正するのに使用することができる。(図6)。したがって、図6に、本開示の実施形態による、テストステロンに関するデータを、別の内部バイオマーカーに対するテストステロンの測定値に正規化した場合の、このような勾配の補正を示す。一実施形態において、パンチ1~5の6つの別個のサンプリングからの絶対測定値の平均変動係数(CV)は、約11.4%であり、それに対して同じ試料からの正規化した測定値の平均CVは、約4.2%である。
本明細書で論じられるように、正規化マーカーの選択は、低いCVg、正規化マーカーの分析的測定の容易さおよび精度、ならびにマーカーが試料中に十分な濃度で存在するかどうかを含むいくつかの考察に基づいていてもよい。図7は、正規化のための異なる可能性のあるマーカー:屈折率(CVg=0.2%)(細かい破線)、塩化物(CVg=1.5%)(中程度の破線)、総タンパク質(CVg=4.7%)(実線)およびアルブミン(CVg=4.75%)(大きい破線)の理論上の(報告されたCVg値に基づく)分布のグラフ表示である。一実施形態において、最も低いCVgを有する正規化マーカーと、最も信頼できる、正確な、および/または便利な測定方法を選択してもよい。したがって、図8で示されるように、屈折率(左上のパネル)、塩化物(右上のパネル)、総タンパク質(左下のパネル)およびアルブミン(右下のパネル)の使用が、試料体積および/またはBUNの濃度(すなわち、希釈)における不一致に関する補正を変更した。一実施形態において、最も低いCVを有する正規化マーカー(例えば、図8における塩化物)を選択することができる。
試料は、目的のバイオマーカーの測定にとって標準的な様々な手段によって、バイオマーカーの分析に使用することができる。一実施形態において、分析技術は、本明細書で論じられるようなLC-MS/MSを含む。
一例として、図9~12は、乾燥させた血漿を使用するテストステロンのためのLC-MS/MSアッセイの開発を示す。最初の実験は、正規化マーカーとしてClイオンを使用する自動分析器によるイムノアッセイを採用した(図9)。一実施形態において、自動分析器と共により大量の希釈された試料を採用できないことが少なくとも部分的に起因して、非常に低い濃度で顕著なバイアスが存在する場合もある。
一実施形態において、LC-MS/MSに採用される手順は、血漿を含有しない固体担体であるサンプリング紙に、品質対照および較正物質の両方を添加して、サンプリング紙の長さ方向に移動させ、乾燥させることを含んでいてもよい。パンチを、未知の血液試料のパンチ位置(例えば、パンチ4および5)を模擬する較正物質および品質対照から採取する。次に、安定同位体内部標準(例えば、
13C
4-テストステロン)を含む希釈剤をパンチに添加し(例えば、およそ12.5倍希釈)、希釈剤中に浸したパンチを加熱および/または振盪することによって抽出を実行してもよい。この時点で、抽出された試料をプールし(すなわち、各試料につきパンチ4および5)、次いで正規化マーカー(例えば、Clイオン)の分析のためのアリコートを取り出し、LC-MS/MSのためのアリコートを取り出してもよい。LC-MS/MSに使用されるアリコートを、保持型液体抽出(SLE)によって部分的な精製し、次いでアリコートをLC-MS/MSに使用してもよい。図10に、10ng/dLの定量下限(LLOQ)、4945ng/dLの定量上限(ULOQ)、加えて25ng/dLから3826ng/dLの範囲の品質対照試料の3つの値、および指穿刺を模倣するために全血から単離された血漿(WB)におけるテストステロンに関する例示的なクロマトグラムを示す。一実施形態において、CVは、絶対測定値と正規化した測定値の両方で、目的のバイオマーカーの最小濃度でも≦20%である。また一実施形態において、正規化は、CVおよびバイアスも有意に低減させる(図10)(表2)。
表2
一実施形態において、指穿刺血液試料(図12)の場合のアッセイの精度(図12)は、CDCで測定された対照およびスポットした血清試料(図11)と同等である。また一実施形態において、試料は、1つより多くのバイオマーカーの分析にも使用することができる。例えば、一実施形態において、総テストステロンを測定するのに使用される試料(図12)は、PSAおよび性ホルモン結合グロブリン(SHBG)などの追加のバイオマーカーを測定するのに使用することができる(図13)。一実施形態において、各試料のSHBGおよびテストステロンの値は、Vermuelenの方程式を使用して遊離テストステロン(遊離T)のレベルを決定するために使用することができる(図13)。
一実施形態において、乾燥させた血漿の使用は、他のバイオマーカー(例えば、核酸およびタンパク質)の分析のために使用することができる。例えば、図14で例示されるように、ペプチドは、タンパク質から生成することができ、ペプチドの測定は、タンパク質の量、または一部の場合において、疾患に特徴的な変異の存在を評価するために使用することができる。例えば、図14で示されるように、血漿パンチは次いで、プロテアーゼでの消化(および抽出)に供し(すなわち、遺伝子型特異的なペプチドを生成し)、次いでストリップから溶出させたペプチドをLC-MS/MSによって分析することができる。一実施形態において、血漿パンチは、血液パンチより干渉が少ない(図15)。試料(すなわち、乾燥させた血漿を含む、サンプリング紙のパンチ)は、消化緩衝液(例えば、0.675mMのジチオスレイトール(DTT)、6.75mg/mLのデオキシコレート(DOC)、pH8.0±0.1の50mMのTris-HCL)に添加されてもよい。試料中に存在するタンパク質を変性させる高さでの短いインキュベーションの後、トリプシンおよび内部標準を添加してもよく、そのまま消化を進行させて、分析物ペプチドを生成する。一実施形態において、消化は、血漿試料で見られるものに類似しており、30分後に完了する(図16)。次に、ギ酸を添加してトリプシン消化を終わらせ、酸不溶性材料(すなわち、デオキシコレート)を沈殿させ、上清のアリコートをLC-MS/MSシステムに添加する。一実施形態において、ペプチドは、室温で、およびLC-MS/MSのために上昇させた温度の両方で、数日間安定である(図17)。ある特定の実施形態において、チューブからオートサンプラーへの時間は90分であり、手順全体は260分しかかからない。
LC-MS/MSのための簡易化した生体試料の処理のためのシステム
他の開示された実施形態は、システムを含む。例えば、本明細書に記載の開示は、体液を含む生体試料中の目的のバイオマーカーの存在および/または量を決定するためのシステムであって、乾燥させた体液を含む試験試料を提供するためのデバイス;ならびに質量分析によって分析して、生体試料中の目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーションを含む、システムを提供する。例えば、ある特定の実施形態において、システムは、少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられる生体試料を提供するためのステーションであって、生体試料は、乾燥させた血漿を含む、ステーション;乾燥させた血漿の試料から、少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するためのステーション;液体溶液中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって測定するためのステーション;液体溶液中の少なくとも1つの正規化マーカーを測定するためのステーション;ならびに少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーの測定値の比を使用して、生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーションを含んでいてもよい。または血漿以外の他の体液を使用してもよい。
一実施形態において、質量分析は、大気圧化学イオン化(APCI)モードで操作される。またある特定の実施形態において、ステーションの少なくとも1つは、コンピューターによって自動化および/または制御される。例えば、本明細書に記載されるように、ある特定の実施形態において、ステップの少なくとも一部は、手作業の介入がほとんど必要ないように自動化される。
一実施形態において、クロマトグラフィーによる分離のためのステーションは、液体クロマトグラフィー(LC)を実行するための少なくとも1つの装置を含む。一実施形態において、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、抽出クロマトグラフィーのためのカラムを含む。加えて、または代替として、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、分析クロマトグラフィーのためのカラムを含む。ある特定の実施形態において、抽出クロマトグラフィーおよび分析クロマトグラフィーのためのカラムは、単一のステーションまたは単一のカラムを含む。例えば、一実施形態において、試料中の他の成分から目的のバイオマーカーを精製するために、試料の抽出または希釈後に目的のバイオマーカーを一緒に精製する液体クロマトグラフィーが使用される。
またシステムは、試験試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの存在または量を決定するための、クロマトグラフィーによって分離された1つまたは複数の目的のバイオマーカーを質量分析によって分析するためのステーションを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、タンデム質量分析(MS/MS)が使用される。例えば、ある特定の実施形態において、タンデム質量分析のためのステーションは、Applied Biosystems API4000もしくはAPI5000もしくは熱量子もしくはアジレント(Agilent)7000トリプル四重極型質量分析計、またはApplied Biosystems API5500もしくはAPI6500トリプル四重極もしくはサーモQ-Exactive質量分析計を含む。
システムはまた、部分的に生体試料から、および/または試料を希釈するためのステーションを含んでいてもよい。一実施形態において、精製するためのステーションは、保持型液体抽出(SLE)および/または液体-液体抽出(例えば、より小さい分子および/または脂質の場合)のためのステーションを含む。例えば、液体-液体抽出のためのステーションは、試料への溶媒の添加および廃棄物画分の除去のための器具および試薬を含んでいてもよい。または精製するためのステーションは、タンパク質沈殿を含んでいてもよい。または精製するためのステーションは、免疫親和性強化(例えば、タンパク質またはペプチドの場合)を含んでいてもよい。
一部の場合において、同位体で標識された内部標準は、手順中に生じる可能性があるバイオマーカーの喪失を標準化するために使用される。したがって、SLEおよび/または液体-液体抽出のためのステーションは、内部標準を添加するためのステーション、および/または溶媒を用いた作業に必要なフードもしくは他の安全機構を含んでいてもよい。
また一部の実施形態において、システムは、品質対照および/または較正標準を添加するためのステーションを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、このステーションは、乾燥させた体液を含む試験試料を提供するためのステーションと組み合わせてもよい。
ある特定の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、複数の液体クロマトグラフィーステップを含んでいてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、2次元液体クロマトグラフィー(LC)手順が使用される。例えば、一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、試料または試料由来のペプチドを、LC抽出カラムから分析カラムに移動させることを含んでいてもよい。一実施形態において、抽出カラムから分析カラムへの移動は、ハートカット技術によってなされる。別の実施形態において、抽出カラムから分析カラムへの移動は、クロマトフォーカシング技術によってなされる。代替として、抽出カラムから分析カラムへの移動は、カラムスイッチング技術によってなされてもよい。これらの移動ステップは、手動でなされてもよいし、またはオンラインシステムの一部であってもよい。
抽出または分析のための液体クロマトグラフィーに使用できる固定相および移動相を含む様々なカラムが本明細書に記載される。抽出液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、目的のバイオマーカーに応じて変更することができる。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。分析のための液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、抽出液体クロマトグラフィーステップに使用された分析物および/またはカラムに応じて変更することができる。例えば、ある特定の実施形態において、分析カラムは、約5μmの平均直径を有する粒子を含む。一部の実施形態において、分析カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばフェニル-ヘキシル官能化分析カラムである。本明細書で述べられるように、ある特定の実施形態において、質量分析計は、タンデム質量分析計(MS/MS)を含み得る。例えば、本発明の方法およびシステムの一実施形態において、タンデム質量分析は、トリプル四重極タンデム質量分析計を含む。他の実施形態において、タンデム質量分析計は、ハイブリッド質量分析計、例えば四重極-オービトラップまたは四重極-飛行時間型質量分析計であり得る。
タンデムMS/MSは、様々なモードで操作することができる。一実施形態において、タンデムMS/MS分析計は、大気圧化学イオン化(APCI)モードまたはエレクトロスプレーイオン化(ESI)で操作される。一部の実施形態において、分析物および内部標準の定量化は、選択反応モニタリングモード(SRM)で実行される。
本発明のシステムおよび方法は、ある特定の実施形態において、多重化またはハイスループットアッセイをもたらすことができる。例えば、本発明のある特定の実施形態は、プロテオーム分析のための、多重化液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)または2次元またはタンデム液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC)-LC-MS/MS)方法を含んでいてもよい。
一部の実施形態において、タンデムMS/MSシステムが使用される。当業者公知のように、タンデムMS分光分析において、イオン化後に前駆体イオンを選択し、その前駆体イオンをフラグメント化に供して、生成物(すなわち、フラグメント)イオンを生成し、それによって1つまたは複数の生成物イオンが、検出のための質量分析の第2の段階に供される。
次いで目的の分析物は、タンデムMSによって測定された特徴的な遷移の量に基づいて検出および/または定量化することができる。一部の実施形態において、タンデム質量分析計は、トリプル四重極型質量分析計を含む。一部の実施形態において、タンデム質量分析計は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードで操作される。一部の実施形態において、分析物および内部標準の定量化は、選択反応モニタリングモード(SRM)で実行される。またはイオン化の他の方法、例えば誘導結合プラズマ、またはMALDI、またはSELDI、ESI、またはAPPIの使用は、イオン化に使用することができる。
一部の実施形態において、各試料中の各分析物の逆算した量は、標準試験試料、例えば木炭で分離したヒト血清に公知の量の精製した分析物材料をスパイクすることによって作成した検量線に対する内部標準化を採用する場合、未知の試料の応答または応答比の比較によって決定することができる。一実施形態において、較正物質を公知の濃度で調製し、バイオマーカー手法の通りに分析して、濃度検量線に対する内部標準化を採用した場合の応答または応答比を生成する。
代替の実施形態において、イオン化中に試料を加熱するための温度は、100℃から約1000℃の範囲であってもよく、それに含まれる全ての範囲を含む。一実施形態において、500℃±100℃でのAPCIまたはエレクトロスプレーモードにおいて採用される質量分析計のインターフェース内で、脱水ステップが実行される。一実施形態において、脱水を起こすために、試料は、インターフェースで数マイクロ秒にわたり加熱される。代替の実施形態において、加熱するステップは、1秒未満、または100ミリ秒(msec)未満、または10msec未満、または1msec未満、または0.1msec未満、または0.01msec未満、または0.001msec未満でなされる。
図18は、本発明のシステム(102)の実施形態を示す。本明細書に記載されるシステムの場合、追加のステーションが存在していてもよく、および/またはステーションの一部が組み合わされていてもよい。例えば、図18で示されるように、システムは、乾燥させた血漿(例えば、担体に固定された)を含む試料を処理するためのステーション(104)を含んでいてもよく、このステーションは、サンプリング容器(例えば、96ウェルのマイクロタイターアッセイウェル)に目的のバイオマーカーを含んでいてもよい。試料を処理するためのステーションは、乾燥させた血漿の試料に、量対照(QC)および/または較正標準の少なくとも1つを添加するための構成要素を含んでいてもよい。一実施形態において、目的のバイオマーカーの抽出ステーション(106)での抽出を容易にするために、試料は、1つまたは複数の容器に等分される。等分するためのステーションは、生体試料の分析で使用されない部分を捨てるための入れ物を含んでいてもよい。
抽出ステーション(106)は、試料に内部標準を添加するためのステーションをさらに含んでいてもよい。一実施形態において、内部標準は、非天然の同位体で標識された目的のバイオマーカーを含む。したがって、抽出および/または内部標準の添加のためのステーションは、同位体標識された内部標準溶液の試料への添加を容易にするための安全機構を含んでいてもよい。
LC-MS/MSが、正規化マーカーを測定するのに使用されない場合、システムは、正規化マーカーの測定および目的のバイオマーカーの測定のための、抽出される試料の一部を等分するためのステーション(108)を含んでいてもよい。システムはまた、質量分析から独立した技術で正規化マーカーを測定するためのステーション(110)を含んでいてもよい。使用される技術は、正規化(normalization、normalizing)標準の性質に依存すると予想されるが、当業者公知の技術のいずれか1つであり得る。
システムはまた、バイオマーカーのさらなる処理のためのステーションを含んでいてもよい。例えば、システムはまた、一部の実施形態において、保持型液体抽出、液体-液体抽出、タンパク質沈殿および/または試料の希釈などの精製ステップのためのステーション(112)を含んでいてもよい。
システムはまた、試料の液体クロマトグラフィー(例えば、HPLC)のためのステーション(114)を含んでいてもよい。本明細書に記載されるように、一実施形態において、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、抽出液体クロマトグラフィーカラムを含んでいてもよい。液体クロマトグラフィーのためのステーションは、固定相を含むカラム、加えて、移動相として使用される溶媒を含む容器または入れ物を含んでいてもよい。一実施形態において、移動相は、メタノールおよび水、アセトニトリルおよび水、または水性揮発性緩衝液との他の混和性溶媒の勾配を含む。したがって、一実施形態において、ステーションは、1つまたは複数のカラムに適用される個々の溶媒の量を調整するための適切なラインおよびバルブを含んでいてもよい。またステーションは、目的のバイオマーカーを含まないLCからの画分を除去し捨てるための手段を含んでいてもよい。一実施形態において、目的のバイオマーカーを含有しない画分は、カラムから連続的に除去され、汚染除去のための廃棄物の入れ物に送られ、これは、捨てられることになる。システムはまた、分析LCカラム(114)を含んでいてもよい。分析カラムは、さらなる特徴付けおよび定量化に必要となる可能性がある場合、目的のバイオマーカーのさらなる精製および濃縮を容易にすることができる。
またシステムは、目的のバイオマーカーの特徴付けおよび定量化のためのステーションを含んでいてもよい。一実施形態において、システムは、バイオマーカーの質量分析(MS)のためのステーション(116)を含んでいてもよい。一実施形態において、質量分析のためのステーションは、タンデム質量分析(MS/MS)のためのステーションを含む。また特徴付けおよび定量化のためのステーションは、バイオマーカーおよび正規化マーカーのためのデータ分析のためのステーション(118)ならびに/または結果の分析のためのコンピューター(120)およびソフトウェアを含んでいてもよい。一実施形態において、分析は、目的のバイオマーカーの同定および定量化の両方を含む。
一部の実施形態において、精製または分離ステップの1つまたは複数は、「オンライン」で実行されてもよい。用語「オンライン」は、本明細書で使用される場合、システムの様々な構成要素が操作可能に接続されており、一部の実施形態において互いに流体連通しているシステムに、試験試料を入れる、例えば注入するような方法で実行される精製または分離ステップを指す。オンラインシステムは、1つの容器から試料のアリコートを除去し、このようなアリコートを別の容器に移動させるためのオートサンプラーを含んでいてもよい。例えば、オートサンプラーは、抽出の後にLC抽出カラム上に試料を移動させるのに使用することができる。加えて、または代替として、オンラインシステムは、LC抽出カラムから単離した画分をLC分析カラム上に注入するための1つまたは複数の注入ポートを含んでいてもよい。加えて、または代替として、オンラインシステムは、LCによって精製した試料をMSシステムに注入するための1つまたは複数の注入ポートを含んでいてもよい。したがって、オンラインシステムは、これらに限定されないが、HTLC抽出カラム、および一部の実施形態において、分析カラムを含む抽出カラムを含む1つまたは複数のカラムを含んでいてもよい。加えて、または代替として、システムは、検出システム、例えば質量分析計システムを含んでいてもよい。オンラインシステムはまた、1つまたは複数のポンプ;1つまたは複数のバルブ;および必要な配管を含んでいてもよい。このような「オンライン」システムにおいて、試験試料および/または目的の分析物は、システムを出ずに、例えば収集し、次いでシステムの別の構成要素に入れる必要なしに、システムの1つの構成要素から別の構成要素に通過させることができる。
一部の実施形態において、オンラインの精製または分離方法は、自動化されていてもよい。このような実施形態において、ステップは、プロセスが一度構築され開始されたら、オペレーターの介入を必要とすることなく実行することができる。したがって、様々な実施形態において、システムまたはシステムの一部は、1つまたは複数のコンピューター(102)によって制御されてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、ポンプ、バルブ、オートサンプラーなどを含むシステムの様々な構成要素を制御するためのソフトウェアを含んでいてもよい。このようなソフトウェアは、試料および溶質の付加の正確なタイミングならびに流速を介して抽出プロセスを最適化するのに使用することができる。例えば、図19で示されるように、ARI Transcent(商標)TLX-4などの多重化LCシステムで採用される場合、質量分析のデューティサイクルを改善するために、注入は、注入が1.5分毎に時間がずれるように平行して行うことができる。
方法におけるステップおよびシステムを含むステーションの一部または全てがオンラインであってもよいが、ある特定の実施形態において、ステップの一部または全てが「オフライン」で実行されてもよい。用語「オフライン」は、用語「オンライン」とは対照的に、前の、および/または後続の精製もしくは分離ステップおよび/または分析ステップとは別々に実行される精製、分離、または抽出手順を指す。このようなオフライン手順において、目的の分析物は、典型的には、例えば抽出カラムで、または液体/液体抽出によって、試料マトリックス中の他の成分から分離され、次いで、それに続く別のクロマトグラフィーまたは検出器システムへの導入のために収集される。オフライン手順は、典型的には、オペレーター側で手作業の介入を必要とする。
ある特定の実施形態において、液体クロマトグラフィーは、高乱流液体クロマトグラフィーまたはハイスループット液体クロマトグラフィー(HTLC)を含み得る。例えば、Zimmer et al., J. Chromatogr. A 854:23-35 (1999)を参照されたい;また、米国特許第5,968,367号;5,919,368号;5,795,469号;および5,772,874号も参照されたい。従来のHPLC分析は、カラム充填材に頼っており、それにおいて、カラムを介した試料の層流が、試料から目的の分析物を分離するための基礎となっている。このようなカラムにおいて、分離は、拡散プロセスである。乱流、例えばHTLCカラムおよび方法によって提供されるものなどは、物質移動の速度を強化することができ、提供された分離特徴を改善する。一部の実施形態において、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)は、単独で、または1つまたは複数の精製方法と組み合わせて、質量分析の前に、目的のバイオマーカーを精製するのに使用することができる。このような実施形態において、試料は、分析物を捕獲するHTLC抽出カートリッジを使用して抽出し、次いで溶出させ、イオン化の前に、第2のHTLCカラムで、または分析HPLCカラム上でクロマトグラフィーにかけることができる。これらのクロマトグラフィー手順に関与するステップは、自動的に連結させることができるため、分析物精製中のオペレーター関与の要求を最小化することができる。また一部の実施形態において、高乱流液体クロマトグラフィー試料調製方法の使用は、液体-液体抽出を含む他の試料調製方法への必要性をなくすことができる。したがって、一部の実施形態において、試験試料、例えば生体液は、高乱流液体クロマトグラフィーシステム上に直接入れてもよく、例えば注入されてもよい。
例えば、典型的な高乱流または乱流液体クロマトグラフィーシステムにおいて、試料は、大きい(例えば、>25ミクロンの)粒子が充填された、狭い(例えば、内径0.5mmから2mm×長さ20から50mm)カラム上に直接注入することができる。流速(例えば、3~500mL/分)がカラムに適用される場合、カラムの相対的に狭い幅は、移動相の速度の増加を引き起こす。カラム中に存在する大きい粒子は、速度の増加が逆圧を発生させることを防ぎ、カラム内で乱流を作り出す粒子間の揺らめく渦の形成を促進することができる。
高乱流液体クロマトグラフィーにおいて、分析物分子は、粒子と迅速に結合することができ、典型的には、カラムの長さ方向に拡がらない、または拡散しない。この縦方向の拡散の減少は、典型的には、試料マトリックスからの目的の分析物のより優れた、より迅速な分離をもたらす。さらに、カラム内の乱流は、典型的には分子が粒子を通り過ぎるときに起こる分子上の摩擦を低減させる。例えば、従来のHPLCにおいて、粒子の最も近くを移動する分子は、粒子間の通路の中心部を通って流動する分子よりゆっくりとカラムに沿って移動する。この流速の差が、カラムの長さ方向に沿って分析物分子が拡がる原因となる。乱流がカラムに導入される場合、粒子からの分子上の摩擦はごくわずかであり、縦方向の拡散を低減させる。
本発明の方法およびシステムは、目的のバイオマーカーを検出および定量するのに、質量分析を使用することができる。用語「質量分析」または「MS」は、本明細書で使用される場合、一般的に、その質量対電荷比または「m/z」に基づいて、イオンをフィルタリング、検出、および測定する方法を指す。MS技術において、目的の1つまたは複数の分子がイオン化され、その後イオンは、質量分析計に導入され、ここで電場の組合せにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存するスペース中の通路を進む。
ある特定の実施形態において、質量分析計は、「四重極」システムを使用する。「四重極」または「四重極イオントラップ」質量分析計において、振動高周波(RF)場のイオンは、電極間に適用された直流(DC)電位、RFシグナルの振幅、およびm/zに釣り合った力を受ける。電圧および振幅は、特定のm/zを有するイオンのみが四重極の長さ方向に移動するが、他の全てのイオンは偏向するように選択することができる。したがって、四重極機器は、機器に注入されるイオンの「質量フィルター」と「質量検出器」の両方として機能し得る。
ある特定の実施形態において、タンデム質量分析が使用される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」というタイトルの米国特許第6,107,623号を参照されたい。さらに、MS技術の選択性は、「タンデム質量分析」、または「MS/MS」を使用することによって強化することができる。タンデム質量分析(MS/MS)は、試料から生成した「親または前駆体」イオンをフラグメント化して、1つまたは複数の「フラグメントまたは生成物」イオンを得、これをその後、第2のMS手順によって質量分析する質量分析方法の群に与えられた名称である。MS/MS方法は、部分的に、複雑な混合物、特に生体試料の分析に有用であり、これはなぜなら、MS/MSの選択性が、分析前の大規模な試料の清浄化への必要性を最小化できるためである。MS/MS方法の一例において、前駆体イオンを試料から生成し、第1の質量フィルターを通過させて、特定の質量対電荷比を有するイオンを選択する。次いでこれらのイオンを、典型的には、好適なイオン封じ込めデバイス中で中性ガス分子と衝突させることによってフラグメント化して、生成物(フラグメント)イオンを得、その質量スペクトルを電子倍増検出器によって記録する。このようにして生産された生成物イオンスペクトルは、前駆体イオンの構造を示し、二段階の質量フィルタリングは、複雑な混合物の従来の質量スペクトル中に存在する干渉種からのイオンを消去することができる。
一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、トリプル四重極MS/MSを使用する(例えば、Yost, Enke in Ch. 8 of Tandem Mass Spectrometry, Ed. McLafferty,pub. John Wiley and Sons, 1983を参照)。トリプル四重極MS/MS機器は、典型的には、フラグメント化手段によって分離された2つの四重極質量フィルターからなる。一実施形態において、この機器は、イオン封じ込めまたは伝達デバイスとして、RFのみのモードで操作される四重極質量フィルターを含んでいてもよい。一実施形態において、四重極は、1~10ミリトルの間の圧力で、衝突ガスをさらに含んでいてもよい。他の多くのタイプの「ハイブリッド」タンデム質量分析計も公知であり、オービトラップ分析器および四重極フィルターの様々な組合せを含む本発明の方法およびシステムで使用することができる。これらのハイブリッド機器は、質量分析の第2の段階のための高分解能オービトラップ分析器(例えば、HuQ, Noll RJ, Li H, Makarov A, Hardman M, Graham Cooks R. The Orbitrap: a newmass spectrometer. J Mass Spectrom. 2005;40(4):430-443を参照)を含むことが多い。高分解能質量分析計の使用は、化学的なノイズを非常に低いレベルに低減させることにおいて極めて有効であり得る。
本発明の方法およびシステムに関して、イオンは、これらに限定されないが、電子イオン化、化学イオン化、高速原子衝撃、電界脱離、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)、表面増強レーザー脱離イオン化(「SELDI」)、光子イオン化、エレクトロスプレーイオン化、および誘導結合プラズマを含む様々な方法を使用して生産することができる。
これらの実施形態において、例えば、さらなるフラグメント化のために前駆体イオンが単離されるMS/MSにおいて、衝突誘起解離(「CID」)を使用して、さらなる検出のためにフラグメントイオンを生成することができる。CIDにおいて、前駆体イオンは、不活性ガスとの衝突を介してエネルギーを獲得し、その後「単分子分解」と称されるプロセスによってフラグメント化される。イオン内の一定の結合を振動エネルギーの増加により破壊できるように、前駆体イオン中に十分なエネルギーを堆積させなければならない。
一部の実施形態において、必要な分析選択性および感受性を達成するために、ここで開示された2D-LC-MS/MS方法は、多重化した試料調製手順を含む。例えば、ある特定の実施形態において、試料の透析は、各ウェル中に透析膜を有するか、または複数の試料チューブを有する96ウェルプレートを使用して実行される。加えて、または代替として、多重システムは、互い違いの多重化LCおよびMS試料入口システムを含んでいてもよい。また本発明の方法およびシステムは、MS検出の前に、複数のカラムスイッチングプロトコール、および/またはハートカット(LC-LCまたは2D-LC)技術、および/またはLC分離を含んでいてもよい。一部の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、タンデム質量分析計(MS/MS)システムとカップリングされた多重化2次元液体クロマトグラフィーシステム、例えばトリプル四重極MS/MSシステムを含んでいてもよい。このような実施形態は、MSシステムへの時間をずらした平行試料入力をもたらす。
したがって、複数の試料をそれぞれ、個々の抽出カラムに適用することができる。試料がそれぞれ抽出カラムに流れると、それらはそれぞれ、直接的に(例えば、カラムスイッチングによって)第2のセットの分析カラムに移行させることができる。各試料が分析カラムから溶出すると、それを同定および定量化のための質量分析計に移行させることができる。
複数の分析物は、ここで開示されたLC-MS/MSおよび2D-LC-MS/MS方法によって、同時に、または逐次的に分析することができる。ここで開示された方法による分析に適応させることができる例示的な分析物としては、これらに限定されないが、ペプチド、ステロイドホルモン、核酸、ビタミンなどが挙げられる。当業者は、本開示の主題を検討すれば、本明細書で開示された方法およびシステムによって他の類似の分析物を分析できることを理解すると予想される。したがって、代替の実施形態において、本方法およびシステムは、ステロイドホルモン、タンパク質およびペプチドホルモン、ペプチドおよびタンパク質バイオマーカー、乱用される薬物ならびに治療薬物を定量するのに使用することができる。例えば、高度に調整された生物学的分析アッセイを提供するために、各分析物の主要なパラメーターの最適化は、モジュラー方法の開発戦略を使用して実行することができる。したがって、ある特定のステップは、本明細書で開示されたように測定される分析物に応じて変更することができる。
また本発明の方法およびシステムの実施形態は、より一層少ない試料を使用して測定される分析物の多くにとって到達可能な同等の感度も提供することができる。例えば、この最適化手順の使用により、乾燥させた血漿のペプチドバイオマーカーの検出の場合、約10nmole/LのLLOQは、約20μLの液体血漿に対応する。このような小さい試料サイズは、サンプリング(しばしば指先穿刺による)をより一層利用しやすくする。
(実施例1)
血漿中のテストステロンの濃度を、層流紙(すなわち、サンプリング紙)上への血液の堆積から決定し、そのまま血漿画分および赤血球を分離させた。これをその後乾燥させる。紙を、乾燥剤および酸素スクラバーを含有するシールしたパウチ中に貯蔵して、乾燥血漿検体の完全性を保存した。その後、抽出された乾燥血漿中のテストステロン(すなわち、バイオマーカー)を測定し、血液血漿濃度を、同じ抽出された乾燥血漿検体中の塩化物イオンの測定値の正規化を介して決定した。
層流サンプリング紙上での血液のスポッティングおよび赤血球と血漿の分離の後、紙を60分以上の期間にわたり乾燥させた。層流サンプリング紙からの乾燥血漿のパンチ(3/8インチの四角形、およそ20μLの液体血漿)を使用して、16×75mmのチューブ中で、250μLの安定同位体で標識されたテストステロンを含有する0.1%のBSA溶液を使用して、オービタルミキサーで2.5時間にわたり試験検体を抽出した。抽出物を、整合するアリコートに分け、ここで1つのアリコートは、保持型液体抽出によるさらなる精製の後に、テストステロンをLC-MS/MSによって定量化するためであり、1つのアリコートは、抽出物中の塩化物イオンを比色定量を使用して定量化するためである。
乾燥させた血液の収集および検体の再構成プロセスの検査は、検体回収速度が変化し得る懸念をもたらす可能性があった。収集、パンチング、再構成、および抽出プロセスにわたり存在する検体にとって内部の参照分析物または正規化マーカーの使用は、完全なプロセスの効率の評価を許容する。塩化物は、健康な集団において比較的一貫していることから(個体間の変動係数=1.5%)、この内部基準として塩化物は論理的な選択となる(Ricos C. et al., Scand J Clin Lab Invest 1999;59:491-500)。したがって、抽出された乾燥血漿中のバイオマーカーの測定値の正規化は、血漿中のその予測値、例えば液体血漿/血清中で測定された、100.28ミリモル/リットル(mM)の既定の集団平均塩化物値と比較した、抽出された乾燥血漿中の正規化塩化物マーカーの測定の測定値に基づいていてもよい。血清アルブミンは、その低い対象間の変動のために(個体間の変動係数=4.8%)、塩化物の代替の参照分析物として利用でき、この実験室に関して、4.31グラム/デシリットルの集団平均値を有する。
この論理は、ストリップ上に堆積させた血漿中の塩化物濃度は、公知の値、すなわち塩化物の集団平均と低い程度の不確実性で一致するはずであるという解釈に基づいており、したがって、抽出された乾燥血漿中の塩化物イオンの測定値は、塩化物イオン測定値の回収率の確立を可能にすると予想される。例えば、抽出された乾燥血漿中の塩化物に関して68mMの測定値が得られる場合、これは、予測される血液血漿濃度と比べて67.8%の回収率を示す(67.8%=68mM/100.28mM×100)。したがって、同じ回収率がテストステロンにも生じると予想されることを確立でき、それにより乾燥血漿抽出物におけるテストステロンの測定値を塩化物の回収率に正規化して、層流サンプリング紙上に最初に堆積させた血漿中のテストステロンの濃度の決定を可能にする。これは、抽出された乾燥血漿検体中のテストステロンの測定値を、抽出された乾燥血漿検体中の塩化物測定値で割り、それに血漿中の塩化物の予測される濃度を掛けることによって達成される。
バイオマーカー(テストステロン)および正規化マーカー(塩化物)の化学特性が異なることを考慮して、上述したようにテストステロン血液血漿濃度の正確な決定を妨げると予想される収集、再構成、および抽出のプロセスにわたるそれらの回収率が必要ではない場合もある。したがって、抽出手順の妥当な最適化により再現可能であると予想されるそれらの相対的な回収率を確立することが必要であり得る。この方式では、上述したように塩化物で正規化したテストステロンの測定値に、抽出された乾燥血漿中の塩化物およびテストステロンの予測される相対的な回収率である補正係数を掛けることになる。例えば、抽出された乾燥血漿中のテストステロンの測定値が平均して血液血漿濃度の10%を回収し、抽出された乾燥血漿中の塩化物の測定値が平均して血漿塩化物濃度の68%を回収する場合、抽出された乾燥血漿中の塩化物およびテストステロンの相対的な回収率は、6.8と予想される(68%/10%)。したがって、例えば抽出された乾燥血漿中のテストステロン測定値が50ng/dLであり、塩化物測定値が67.8nMであり、血漿中のテストステロンの濃度は、50ng/dL/67.8nM×100.28nM×6.8または502.9ng/dLと推測される。
一部の場合において、乾燥血漿試料からの血液血漿濃度を決定するよりも、単に乾燥血漿中のテストステロンの濃度を得、それを報告するだけで十分である場合もある。このような場合において、尿測定値のクレアチニンに対する正規化と同様に、乾燥血漿測定値の体積/抽出分散のために、正規化塩化物の単位当たりのテストステロンの量の単位(例えば、塩化物1ミリモル当たりのテストステロンのナノグラム)で、乾燥血漿中のテストステロン濃度を報告することが有利であると予想される。
(実施例2)
血漿中のC反応性タンパク質(CRP)の濃度を、層流サンプリング紙上への血液の堆積から決定し、そのまま血漿画分および赤血球を分離させ、その後乾燥させる。紙を、乾燥剤および酸素スクラバーを含有するシールしたパウチ中に貯蔵して、乾燥血漿検体の完全性を保存する。その後、抽出された乾燥血漿中のCRP(すなわち、バイオマーカー)を測定し、血液血漿濃度を、同じ抽出された乾燥血漿検体中のアルブミンの測定値の正規化を介して決定する。
層流サンプリング紙上での血液のスポッティングおよび赤血球と血漿の分離の後、紙を60分以上の期間にわたり乾燥させる。層流サンプリング紙からの乾燥血漿のパンチ(3×内径1/4’’の丸形、およそ20μLの液体血漿)を使用して、マイクロ遠沈管中で、180μLの変性緩衝液(0.675mMのジチオスレイトール、0.675mg/mLのデオキシコール酸ナトリウム、50mMのTris-HCl、pH8.0)を使用して、試験検体を56℃で0.5時間抽出し変性させる。その後、変性した抽出物に、安定同位体で標識された内部標準を添加し、これを800ugのウシトリプシンで37℃で0.5時間消化して、その後、それぞれESDTSYVSLK(配列番号1)およびAEFAEVSK(配列番号2)のアミノ酸配列を有するCRPおよび血清アルブミンに特異的なタンパク質分解サロゲートペプチドが生産される。その後、サロゲートペプチドとそれらそれぞれの内部標準の両方をLC-MS/MSによって測定して、抽出された乾燥血漿中のCRPおよびアルブミンの量を決定する。
乾燥させた血液の収集および検体の再構成プロセスの検査は、検体回収速度が変化し得る懸念をもたらす可能性があった。収集、パンチング、再構成、および抽出プロセスにわたり存在する検体にとって内部の参照分析物または正規化マーカーの使用は、完全なプロセスの効率の評価を許容する。血清アルブミンは、健康な集団において比較的一貫していることから(CVg=4.8%)、この内部基準として、特に他のタンパク質バイオマーカーにとって血清アルブミンは論理的な選択となる(Ricos C. et al., Scand J Clin Lab Invest 1999;59:491-500)。したがって、抽出された乾燥血漿中のバイオマーカーの測定値の正規化は、血漿中のその予測値、例えば液体血漿/血清中で測定された4.31グラム/デシリットル(g/dL)の、この実験室の集団平均アルブミン値と比較した、抽出された乾燥血漿中の正規化アルブミンマーカー測定の測定値に基づいていてもよい。
この論理は、ストリップ上に堆積させた血漿中のアルブミン濃度は、公知の値であるアルブミンの集団平均と低い程度の不確実性で一致するはずであるという解釈に基づいており、したがって、抽出された乾燥血漿中のアルブミンの測定値は、アルブミン測定値の回収率の確立を可能にすると予想される。例えば、抽出された乾燥血漿中のアルブミンに関して2.7g/dLの測定値が得られる場合、これは、予測される血液血漿濃度と比べて62.6%の回収率を示す(62.6%=2.7g/dL/4.31g/dL×100)。したがって、同じ回収率がCRPにも生じると予想されることを確立でき、それにより乾燥血漿抽出物におけるCRP測定値をアルブミンの回収率に正規化して、層流サンプリング紙上に最初に堆積させた血漿中のCRPの濃度の決定を可能にする。これは、抽出された乾燥血漿検体中のCRP測定値を、抽出された乾燥血漿検体中のアルブミン測定値で割り、それに血漿中のアルブミンの予測される濃度を掛けることによって達成される。
バイオマーカー(CRP)および正規化マーカー(アルブミン)の生化学的特性および構造が異なることを考慮して、上述したようにCRP血液血漿濃度の正確な決定を妨げると予想される収集、再構成、および抽出のプロセスにわたるそれらの回収率が必要ではない場合もある。したがって、抽出手順の妥当な最適化により再現可能であると予想されるそれらの相対的な回収率を確立することが必要であり得る。この方式では、上述したようにアルブミンで正規化したCRP測定値に、抽出された乾燥血漿中のアルブミンおよびCRPの予測される相対的な回収率である補正係数を掛けることになる。例えば、抽出された乾燥血漿中のCRP測定が平均して血液血漿濃度の50%を回収し、抽出された乾燥血漿中のアルブミン測定値が平均して血漿アルブミン濃度の68%を回収する場合、抽出された乾燥血漿中のアルブミンおよびCRPの相対的な回収率は、1.36と予想される(68%/50%)。したがって、例えば抽出された乾燥血漿中のCRP測定値が3.2mg/Lであり、アルブミン測定値が2.9g/dLであり、血漿中のCRP濃度は、3.2mg/L/2.9g/L×4.31g/L×1.36または6.5mg/LのCRPと推測される。
一部の場合において、乾燥血漿試料からの血液血漿濃度を決定するよりも、単に乾燥血漿中のCRPの濃度を得て、それを報告するだけで十分である場合もある。このような場合において、尿測定値のクレアチニンに対する正規化と同様に、乾燥血漿測定値の体積/抽出分散のために、正規化アルブミンの単位当たりのCRPの量の単位で、乾燥血漿中のCRP濃度を報告することが有利であると予想される(例えば、アルブミン1グラム当たりのCRPのミリグラム)。
(実施例3)
本明細書で開示された方法およびシステムを特徴付けるために、実験を実行した。図2は、指穿刺による毛細管血からの、20μLから徐々に180μLまで増加させて収集した連続的な収集の結果を示す。各20μLの収集物を希釈し(12.5倍)、自動分析器で、全血球計算(CBC)の標準的な要素について分析した。細胞成分、白血球(WBC)、赤血球(RBC)およびヘマトクリット(HCT)それぞれの測定値は、サンプリングの体積および時間にわたり一貫していたことが見出された。
図3は、以下のバイオマーカー:血中尿素窒素(BUN)、グルコース、コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアルブミンに関するサンプリングの類似した評価を示す。この実験において、20μLのアリコートを200μLまで収集し、分析した。指穿刺後の最初の液滴は拭き取らなかった。各アリコートを、重量測定法で約12.5倍まで希釈した。試料を遠心分離し、上清を除去し、バイオマーカーのそれぞれについて測定した。20uL画分の間でバイオマーカー分布において観察された変動が極めてわずかであったことが分かる。FDAによって承認された試薬および較正システムを利用する市販の自動分析器の展開チャネルに試料を流した。少量の2~3uLのニートの試料(すなわち、血清または血漿)の希釈および使用に見合うように、過剰に吸引した試料体積をシステムに注入した。
様々なサンプリング方法(静脈穿刺、指穿刺、または経皮)からの希釈された血漿を使用した測定値が高度に相関していたことが見出された。静脈穿刺(r=0.997)および指穿刺(r=0.979)は、<4.1%の平均バイアス内に含まれ、これは所望の手段であることが見出され、経皮収集(r=0.967)は、<6.2%の平均バイアス内であり、これは最小の平均バイアスを満たす(例えば、Ricos C. et al., Scand J Clin Lab Invest 1999;59:491-500を参照)。
手順中に血漿の希釈によって導入された負のバイアスがあるかどうかを評価するために、3つの収集方法の比較、すなわち、希釈静脈穿刺(静脈-希釈)、希釈指穿刺血漿、および希釈経皮血漿と、静脈穿刺からの希釈していない血漿からのバイオマーカーの分析との比較を実行した。評価されたバイオマーカーは、コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)、グルコース、HDL、LDL、前立腺特異的抗原(PSA)、トリグリセリド、および甲状腺刺激ホルモン(TSH)であった。希釈静脈の平均バイアスの平均は、-1.2%であり、指穿刺の場合は-1.3%であり、経皮の場合は-1.8%であったことが見出され(図4)、これは、0%のバイアスにわたり高度な精度、および不均一に分散した分布があったことを示し、間質液の希釈作用がないことを示す。
図5に、乾燥させた血漿と比較した乾燥させた血液試料の干渉レベルの比較を示す。試料がパンチ1からパンチ5に移動するにつれて、血漿が赤血球から分離する(より濃い色の乾燥させた試料として見える)ことを見ることができる(図5の上の部分)。各パンチを抽出し、テストステロンについて測定したところ、結果は、初期のパンチより、パンチ4および5において臨床的な値に近いことが見出された。
図5に示した結果に基づいて、パンチ4および5に患者分析のための試料抽出物を使用した。各パンチを別々に抽出し、上清を合わせ、分析の前に混合した。
正規化マーカーは、例えば、サンプリング紙に適用される血液試料が、より多いかもしくはより少ないこと、および/または血漿を血液細胞から分離させるために、サンプリングデバイスにわたり試料が移動する(例えば、パンチ1からパンチ5に)ときのバイオマーカーの希釈に起因するサンプリングの不一致を補正するのに使用することができる。図6は、テストステロンに関するデータを別の内部バイオマーカーに正規化した場合の、希釈作用の補正を示す。正規化マーカーの使用は、試料の移動および/または干渉(例えば、ヘモグロビン)に起因する分散を低減させたことを見ることができる。パンチ1~5(すなわち、パンチ1~5を合わせた)の6つの別個のサンプリングからの絶対測定値の平均変動係数(CV)は11.4%であったが、それに対して同じ試料からの正規化した測定値の平均CV4.2%であったことが見出された。
図7に、正規化のための異なる可能性のある測定値の分布のグラフ表示を示す。一般的に、好ましい測定は、群中の個体間における変動が最も少ない正規化群であることが予測される。この実施例において、最も少ない変動を提供するのは屈折率(CVg=0.2%)であり、それに続いて塩化物(CVg=1.5%)、それに続いて総タンパク質(CVg=4.7%)およびアルブミン(CVg=4.75%)であることを見ることができる。表1に、他の好適な正規化マーカーを示す。これらの正規化マーカーのそれぞれを、バイオマーカーである血中尿素窒素(BUN)の測定値を正規化するその能力に関して試験した(図8)。棒グラフ上に重ねられたラインは、BUNの正規化した結果である。5つのパンチにわたり最も低いCVを有する正規化群(この場合、塩化物イオン)を、進めるための正規化群として選択した。
別の実験において、サンプリング場所(すなわち、パンチ位置)の部分的な血漿飽和を補正する正規化マーカーの能力を評価した。この実験において、2つの飽和したパンチ(すなわち、約100%のマトリックス)からの試料を合わせ、完全に飽和した1つのパンチおよび約50%飽和した1つのパンチ(すなわち、約75%の試料マトリックス)からの試料と比較した。75%マトリックス試料の%バイアスプロットは、予想通りに回収率を下回ることを示した(-25.2%のバイアス)。しかしながら、正規化マーカー(塩化物イオン)の使用は、バイアスを-1.9%に補正した。
(実施例4)
乾燥させた血漿の試料の使用を、LC-MS/MSによるテストステロンの試験に適用した。(図9~12)最初の実験は、正規化マーカーとしてClイオンを使用した自動分析器によるイムノアッセイを採用した(図9)。上の(散乱)プロットについて、傾き(デミング)=0.959;相関係数(R)=0.9039;およびバイアスは4.079%であった。しかしながら、非常に低い濃度で有意なバイアスがあったことを見ることができる。このバイアスは、抽出によって付与された希釈に見合うように、自動分析器でのイムノアッセイにおいて試料体積を過剰に吸引できないことに少なくとも部分的に起因することが予測される。
指穿刺収集した試料のLC-MS/MS分析は、指穿刺血液試料を固体支持体(例えば、サンプリング紙)に適用するステップ、および血漿を分離させ乾燥させるステップを採用した。加えて、較正物質および品質対照(QC)の両方をサンプリング紙に直接添加し、移動させ、乾燥させた。パンチはサンプリングに対して指定された(すなわち、図5で示されるようにスポット4および5)。
サンプリング紙からの乾燥血漿のパンチ(3/8インチの四角形、およそ20μLの液体血漿)を使用して、16×75mmのチューブ中で、250μLの安定同位体で標識されたテストステロンを含有する0.1%のBSA溶液を使用して、オービタルミキサーで2.5時間にわたり試験検体を抽出した。抽出物を、整合するアリコートに分け、ここで1つのアリコートは、保持型液体抽出によるさらなる精製の後に、テストステロンをLC-MS/MSによって定量化するためであり、1つのアリコートは、抽出物中の塩化物イオンを比色定量を使用して定量化するためである。
図10に、10ng/dLの定量下限(LLOQ)、4945ng/dLの定量上限(ULOQ)、加えて25ng/dLから3,826ng/dLの範囲の品質対照試料の3つの値、および指穿刺を模倣するために全血(WB)から単離された血漿におけるテストステロンに関する例示的なクロマトグラムを示す。CVは、絶対測定値と正規化した測定値の両方で、目的のバイオマーカーの最小濃度でも≦20%であり、正規化は、CVおよびバイアスを有意に低減した(表2)ことが見出された。このワークフローを使用して、標識された同位体は、SLEおよびLC-MS/MSのための正規化を提供し、それに対してCl-は、移動/用量体積および抽出効率の正規化を提供する。
指穿刺血液試料(図12)の場合のアッセイの精度(図12)は、CDCによって測定された対照および>100ng/dLの範囲でテストステロンを有するスポットされた血清試料と実質的に同等であることが見出された(図11)。図11において、左の散乱(傾き(デミング)=1.04;R=0.9966;バイアス=2.83%;N=30)およびバイアスプロットは、スポットおよび抽出されたCDCフェーズ1ホルモン標準化試料(CDCによって割り当てられた値)を示す。右の散乱(傾き(デミング)=1.01;R=0.9904;バイアス=-1.649%;N=115)およびバイアスプロットは、より多くの数の血清試料に関するものである。このデータは、テストステロンレベルが未知の血清をスポッティングし、ここでこのレベルは、サンプリング紙上で>100ng/dLの範囲内と予測され、抽出し、得られた値をニートの血清測定値と比較することによって得られた。このアッセイを5日にわたり実行し、測定における精度および1日毎の較正の逸脱の欠如をさらに確認した。図12の場合、傾き(デミング)=1.013;R=0.9567;バイアス=3.65%;N=41である。
図13は、他のバイオマーカーを使用して得られた相関データを示す。この実験において、総テストステロンを測定するのに使用された試料(図12)を使用して、追加のバイオマーカー、例えばPSA(傾き(デミング)=1.03;R=0.923;バイアス=-5.87%;N=38)および性ホルモン結合グロブリン(SHBG)(傾き(デミング)=1.02;R=0.978;バイアス=-1.40%;N=38)を測定した(図13)。各試料のSHBGおよびテストステロンの値を使用して、Vermuelenの方程式を使用して遊離テストステロン(遊離T)のレベルを決定した(傾き(デミング)=1.08;R=0.943;バイアス=5.05%;N=41)。
(実施例5)
この実験において、ペプチドをタンパク質(APOL1)から生成し、ペプチドの測定値を使用して、試料中のタンパク質がWT、G1またはG2遺伝子型を有していたかどうかを評価した。例えば、図14で示されるように、血漿パンチをプロテアーゼを用いた消化(および抽出)に供し(すなわち、遺伝子型特異的ペプチドを生成させ)、次いでペプチドをストリップから溶出させ、LC-MS/MSによって分析した。血漿パンチは、血液パンチより少ない干渉を有することが見出された(図15)。試料(すなわち、乾燥させた血漿を含むろ紙のパンチ切り抜き)を、消化緩衝液(例えば、0.675mMのジチオスレイトール(DTT)、6.75mg/mLのデオキシコレート(DOC)、pH8.0±0.1の50mMのTris-HCL)に添加した。
試料中に存在するタンパク質を変性させる高さでの短いインキュベーションの後、トリプシンおよび内部標準を添加し、そのまま消化を進行させて、分析物ペプチドを生成した。図16は、本開示の実施形態による液体血漿または乾燥させた血漿のいずれかを使用した、このような分析物ペプチドのトリプシン消化の時間経過を示す。液体および乾燥血漿の消化中のApoL1からのこのようなサロゲートペプチド(すなわち、ペプチド1~5)の形成を、0~120分の間の時間経過分析で評価した。液体血漿消化の試料を、3~120分の間の9つのタイムポイントで収集した。このプロファイルは、消化が、液体および乾燥血漿検体の両方から類似の方式で進行することを示す。したがって、約2時間後、実質的に100%の消化が起こる。
次に、ギ酸を添加して、トリプシン消化を終わらせ、酸不溶性材料(すなわち、デオキシコレート)を沈殿させ、上清のアリコートをLC-MS/MSシステムに添加した。図17は、本開示の実施形態による乾燥血漿中のペプチド(すなわち、ペプチド1、2および3)の安定性を示す。試料は、セ氏23度(通常の貯蔵条件)またはセ氏37度のいずれにおいても、28日の後でさえもペプチドの類似した測定されたレベルを提供することを見ることができる。次いで特定の対立遺伝子(例えば、野生型、G1および/またはG2)に特徴的なペプチドをLC-MS/MSによって測定して、対立遺伝子特異的ペプチドのApoL1の配列、および試料のApoL1遺伝子型を推測するのに使用された対立遺伝子特異的ペプチドのそれぞれのアミノ酸配列を提供した。乾燥させた血漿、それに対して液体血漿生体試料を使用したプロテオーム遺伝子型解析は、同一な結果を生じたことが見出された。多重化LCシステム、例えばARI Transcent(商標)TLX-4で採用される場合、質量分析のデューティサイクルを改善するために、注入は、注入が1.5分毎に互い違いになるように平行して行うことができる。このフォーマットを使用したところ、チューブからオートサンプラーへの時間は90分であり、手順全体は約260分かかった。
(実施例6)
本開示は、以下の非限定的な実施形態を参照することによってよりよく理解することができる。
A1.生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するための方法であって、
少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられる生体試料を提供するステップであって、生体試料は、乾燥させた血漿を含む、ステップ;
乾燥させた血漿から、少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップ;
少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって測定するステップ;
少なくとも1つの正規化マーカーを、分析技術によって測定するステップ;ならびに
少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび目的の前記少なくとも1つの正規化マーカー測定値の比を使用して、生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するステップ
を含む、方法。
A2.正規化マーカーが、前記乾燥させた血漿の調製に使用される血液にとって内因性である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A3.正規化マーカーが、乾燥させた血漿の調製に使用される担体上に存在する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A4.前記正規化マーカーが、15.0%、または10.0%、または7.5%、または5.0%未満のCVgを有する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A5.正規化マーカーが、表1に列挙した正規化マーカーの少なくとも1つを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A6.少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの正規化マーカーのための内部標準が、乾燥させた血漿から、少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップに使用される液体溶液中に含まれる、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A7.内部標準が、少なくとも1つのバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの正規化マーカーの安定同位体で標識された類似体である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A8.乾燥させた血漿から、少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップの前に、品質対照または較正物質の少なくとも1つ(すなわち較正標準)が、試料に添加される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A9.抽出に使用される液体溶液が、水または水性緩衝液中で調製されたアルブミンを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A10.抽出に使用される液体溶液が、水、水性緩衝液、非水性溶媒、またはそれらの混合物を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A11.正規化マーカーを測定するのに使用される分析技術が、質量分析である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A12.正規化マーカーを測定するのに使用される分析技術が、イムノメトリック方法、比色方法、蛍光定量方法、免疫比濁方法、および/または電気化学方法である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A13.乾燥させた血漿が、赤血球からの血漿の分離をもたらすサンプリング紙(例えば、層流デバイス)上に堆積させた血液から生産される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A14.少なくとも1つのバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを含む液体溶液の少なくとも一部が、質量分析の前に、精製ステップに供される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A15.精製が、質量分析の前に、試料または試料の希釈物の、保持型液体抽出、液体-液体抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A16.精製ステップが、クロマトグラフィーを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A17.クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A18.クロマトグラフィーが、抽出および分析のための液体クロマトグラフィーを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A19.少なくとも1つのバイオマーカーが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A20.正規化マーカーのCVgが、目的のバイオマーカーのCVgより低い、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
A21.正規化マーカーのCVgが、目的のバイオマーカーのCVgの、多くとも10分の1、または5分の1、または2分の1である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
B1.生体試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在および/または量を決定するためのシステムであって、
乾燥させた血漿を含む生体試料を提供するためのデバイス;および
質量分析によって分析して、生体試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーション
を含む、システム。
B2.乾燥させた血漿から、少なくとも1つのバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するためのステーション;
液体溶液中の少なくとも1つのバイオマーカーを質量分析によって測定するためのステーション;
液体溶液中の少なくとも1つの正規化マーカーを測定するためのステーション;ならびに
少なくとも1つのバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーの測定値の比を使用して、生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーション
をさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B3.バイオマーカーのための内部標準を添加するためのステーションをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B4.バイオマーカーの品質対照および/または較正標準の少なくとも1つを添加するためのステーションをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B5.質量分析の前に、バイオマーカーを精製するためのステーションをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B6.精製のためのステーションが、クロマトグラフィー、保持型液体抽出、液体-液体抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを実行するためのステーションを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B7.クロマトグラフィーのためのステーションが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B8.クロマトグラフィーのためのステーションが、抽出および分析のための液体クロマトグラフィーを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B9.生体試料を提供するためのデバイスが、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B10.試料を、タンパク質分解による消化または化学的消化に供するためのステーションをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B11.質量分析のためのステーションが、タンデム質量分析計を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B12.正規化マーカーが、5.0%未満のCVgを有する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B13.正規化マーカーが、表1に列挙した正規化マーカーの少なくとも1つを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
B14.ステーションの少なくとも1つが、コンピューターによって制御される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
本明細書で参照された全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。記載された本発明の実施形態への様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲および本質から逸脱することなく、当業者には明らかであると予想される。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求された発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるものとする。実際に、当業者には明らかな記載された本発明を行う様式の様々な改変は、本発明に含まれることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するための方法であって、
少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられる生体試料を提供するステップであって、前記生体試料は、乾燥させた血漿を含む、ステップ;
前記乾燥させた血漿から、前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップ;
前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって測定するステップ;
前記少なくとも1つの正規化マーカーを、分析技術によって測定するステップ;ならびに
前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーの測定値および目的の前記少なくとも1つの正規化マーカーの測定値の比を使用して、前記生体試料中の前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するステップ
を含む、方法。
(項目2)
前記正規化マーカーが、前記乾燥させた血漿の調製に使用される血液にとって内因性である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記正規化マーカーが、前記乾燥させた血漿の調製に使用される担体上に存在する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記正規化マーカーが、10.0%未満のCVgを有する、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記正規化マーカーが、表1に列挙した正規化マーカーの少なくとも1つを含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび/または前記少なくとも1つの正規化マーカーのための内部標準が、前記乾燥させた血漿から、前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するステップに使用される前記液体溶液中に含まれる、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記内部標準が、前記少なくとも1つのバイオマーカーおよび/または前記少なくとも1つの正規化マーカーの安定同位体で標識された類似体である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記乾燥させた血漿から、前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび前記少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出する前に、品質対照または較正物質の少なくとも1つが、担体に添加される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記正規化マーカーを測定するのに使用される前記分析技術が、質量分析である、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記正規化マーカーを測定するのに使用される前記分析技術が、イムノメトリック方法、比色方法、蛍光定量方法、免疫比濁方法および/または電気化学方法である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記乾燥させた血漿が、赤血球からの血漿の分離をもたらす層流デバイス上に堆積させた血液から生産される、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記少なくとも1つのバイオマーカーおよび前記少なくとも1つの正規化マーカーを含む前記液体溶液の少なくとも一部が、質量分析の前に、精製ステップに供される、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記精製が、質量分析の前に、前記試料または前記試料の希釈物の、保持型液体抽出、液体-液体抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記精製ステップが、HPLCを含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記正規化マーカーのCVgが、前記目的のバイオマーカーのCVgより低い、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記正規化マーカーのCVgが、前記目的のバイオマーカーのCVgの、多くとも10分の1、または5分の1、または2分の1である、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
生体試料中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在および/または量を決定するためのシステムであって、
乾燥させた血漿を含む生体試料を提供するためのデバイス;および
質量分析によって分析して、前記生体試料中の前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーション
を含む、システム。
(項目18)
前記乾燥させた血漿から、前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーおよび少なくとも1つの正規化マーカーを、液体溶液に抽出するためのステーション;
前記液体溶液中の前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、質量分析によって測定するためのステーション;
前記液体溶液中の前記少なくとも1つの正規化マーカーを測定するためのステーション;ならびに
前記少なくとも1つのバイオマーカーおよび前記少なくとも1つの正規化マーカーの測定値の比を使用して、前記生体試料中の前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーション
をさらに含む、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記バイオマーカーのための内部標準を添加するためのステーションをさらに含む、項目17または18に記載のシステム。
(項目20)
前記バイオマーカーの品質対照および/または較正標準の少なくとも1つを添加するためのステーションをさらに含む、項目17から19のいずれか一項に記載のシステム。
(項目21)
質量分析の前に、前記バイオマーカーを精製するためのステーションをさらに含む、項目17から20のいずれか一項に記載のシステム。
(項目22)
精製のための前記ステーションが、クロマトグラフィー、保持型液体抽出、液体-液体抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを実行するためのステーションを含む、項目21に記載のシステム。
(項目23)
精製のための前記ステーションが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、項目21に記載のシステム。
(項目24)
前記生体試料を提供するためのデバイスが、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含む、項目17から23のいずれか一項に記載のシステム。
(項目25)
前記試料を、タンパク質分解による消化または化学的消化に供するためのステーションをさらに含む、項目17から24のいずれか一項に記載のシステム。
(項目26)
質量分析のための前記ステーションが、タンデム質量分析計を含む、項目17から25のいずれか一項に記載のシステム。
(項目27)
前記正規化マーカーが、10.0%未満のCVgを有する、項目18から26のいずれか一項に記載のシステム。
(項目28)
前記ステーションの少なくとも1つが、コンピューターによって制御される、項目17から27のいずれか一項に記載のシステム。