JP7106910B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、Siを2質量%~5質量%程度含有し、鋼板の結晶粒の方位をGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れるため、例えば、変圧器等の静止誘導器の鉄心材料などに利用される。
ここで、方向性電磁鋼板の結晶方位は、二次再結晶と呼ばれるカタストロフィックな粒成長現象を利用することで制御することができる。また、二次再結晶に先立って行われる一次再結晶焼鈍の昇温過程において、鋼板を急速昇温することによって、一次再結晶焼鈍後に、磁気特性が良好なGoss方位の結晶粒を増加させることができることが確認されている。
そこで、方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させるために、一次再結晶焼鈍の昇温過程において、様々な急速昇温条件が検討されている。
例えば、下記の特許文献1および2には、一次再結晶焼鈍の昇温過程中に、鋼板の温度を一定に保つ保定時間を設けることが開示されている。また、下記の特許文献3および4には、連続焼鈍装置において、2台以上の急速加熱装置を所定の間隔で直列に配設することが開示されている。さらに、下記の特許文献5には、鋼板を急速昇温した後、急速冷却する一次再結晶焼鈍を行うことで、二次再結晶後の結晶粒の平均粒径、および理想方位からのずれ角を厳密に制御する技術が開示されている。
特開2014-152392号公報 特開2014-194073号公報 特開2014-47411号公報 特開2014-47412号公報 特開平7-268567号公報
しかし、一次再結晶焼鈍において、急速昇温の昇温速度をさらに高くした場合、鋼板の温度分布が板幅方向に不均一になってしまう。このような場合、最終的な方向性電磁鋼板は、一次再結晶焼鈍の際の温度分布ばらつきに応じて、磁気特性にばらつきが生じてしまう。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、一次再結晶焼鈍にて急速昇温を施した場合に、磁気特性のばらつきが少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能な、新規かつ改良された方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、質量%で、C:0.02%以上0.10%以下、Si:2.5%以上4.5%以下、Mn:0.01%以上0.15%以下、SおよびSeのうち1種または2種の合計:0.001%以上0.050%以下、酸可溶性Al:0.01%以上0.05%以下、N:0.002%以上0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを、1280℃以上に加熱して、熱間圧延を施すことで、熱延鋼板とする工程と、前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施した後、一回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を施すことで、冷延鋼板とする工程と、前記冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施す工程と、一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施す工程と、仕上焼鈍後の鋼板に絶縁被膜を塗布した後、平坦化焼鈍を施す工程と、を含み、前記一次再結晶焼鈍における昇温過程は、複数に分割されており、到達温度が800℃以上となる昇温過程の前には、0.5秒以上10秒以下かつ550℃~100℃の範囲で前記冷延鋼板を冷却し、平均冷却速度Vc(℃/s)が10<Vc≦100である冷却過程が設けられており、前記冷却過程の後に行われる前記到達温度が800℃以上となる昇温過程において、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vh(℃/s)がVh≧400であり、前記一次再結晶焼鈍の100℃から800℃までの昇温過程において、雰囲気中の水蒸気分圧P H2O と、水素分圧P H2 との比P H2O /P H2 は、0.1以下である、方向性電磁鋼板の製造方法が提供される
上記構成により、550℃から800℃までの急速昇温を経る前の鋼板に対して、冷却処理を施すことで、鋼板の板幅方向の温度分布をより均一化することが可能である。
以上説明したように本発明によれば、一次再結晶焼鈍にて急速昇温を施した場合であっても、磁気特性のばらつきが少ない方向性電磁鋼板を製造することが可能である。
一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの具体例を示す説明図である。 一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの一部の具体例を示す説明図である。 一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの一部の具体例を示す説明図である。 一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの一部の具体例を示す説明図である。 一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの好ましい具体例を示す説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明者らは、方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させるために、方向性電磁鋼板の製造方法について鋭意検討を行った結果、以下の知見を見出した。
具体的には、本発明者らは、方向性電磁鋼板では、一次再結晶焼鈍の昇温過程において、550℃~800℃の間を平均昇温速度400℃/s以上で急速昇温することによって、一次再結晶焼鈍後に、磁気特性が良好なGoss方位の結晶粒(Goss方位粒ともいう)が増加することを見出した。また、本発明者らは、急速昇温の昇温速度が速いほど、一次再結晶後のGoss方位粒が増加し、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値が低減することを見出した。これによれば、二次再結晶後に理想Goss方位への結晶粒の集積度を向上させることができ、かつ結晶粒の粒径を小径化することができるため、磁区制御処理を実施せずとも、方向性電磁鋼板の鉄損値を低減することが可能である。
ただし、一次再結晶焼鈍の昇温過程における急速昇温条件によっては、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性が板幅方向にばらついてしまうことが明らかになった。具体的には、一次再結晶焼鈍の昇温過程において、550℃~800℃の間の平均昇温速度を400℃/s以上とする場合、鋼板の板幅方向で温度分布が不均一となり、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値が板幅方向に大きくばらついてしまうことが明らかになった。このような現象は、急速昇温の最高到達温度が800℃以上となる場合に、特に顕著に現れる。
そこで、従来、例えば、上述した特許文献1および2に記載されるように、一次再結晶焼鈍の昇温過程中に、鋼板の温度を一定に保つ保定時間を設けることで、鋼板の温度むらを抑制することが検討されている。また、上述した特許文献3および4に記載されるように、連続焼鈍装置において、加熱帯を構成する誘導加熱装置を2台以上とし、かつ誘導加熱装置の各々の間に非加熱または徐加熱区間を設けることで、鋼板の温度むらを抑制することが検討されている。
しかしながら、急速昇温の最高到達温度が800℃以上となり、かつ550℃~800℃の間の平均昇温速度が400℃/s以上となるような極めて昇温速度が高い場合には、上記の特許文献1~4に記載された技術では、鋼板の温度均一化が不十分となってしまう。
本発明者らは、上記問題点等を鋭意検討した結果、550℃から800℃までの昇温過程を経る前の鋼板に対して、冷却処理を施すことで、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性、および磁気特性ばらつきを改善することができることを見出した。具体的には、本発明者らは、一次再結晶焼鈍における昇温過程を複数回に分割し、550℃から800℃までの昇温過程前に、鋼板に対して冷却過程を施すことで、鋼板の板幅方向の温度分布をより均一化することができることを見出した。
本発明者らは、以上の知見を考慮することで、本発明を想到するに至った。本発明の一実施形態は、以下の構成を備える方向性電磁鋼板の製造方法である。
質量%で、C:0.02%以上0.10%以下、Si:2.5%以上4.5%以下、Mn:0.01%以上0.15%以下、SおよびSeのうち1種または2種の合計:0.001%以上0.050%以下、酸可溶性Al:0.01%以上0.05%以下、N:0.002%以上0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを、1280℃以上に加熱して、熱間圧延を施すことで、熱延鋼板とする工程と、
前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施した後、一回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を施すことで、冷延鋼板とする工程と、
前記冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施す工程と、
一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施す工程と、
仕上焼鈍後の鋼板に絶縁被膜を塗布した後、平坦化焼鈍を施す工程と、
を含み、
前記一次再結晶焼鈍における昇温過程は、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vh(℃/s)がVh≧400であり、かつ複数に分割されており、
到達温度が800℃以上となる昇温過程の前には、0.5秒以上10秒以下かつ550℃~100℃の範囲で前記冷延鋼板を冷却し、平均冷却速度Vc(℃/s)が10<Vc≦100である冷却過程が設けられる。
ここで、550℃から800℃までの昇温過程を経る前の鋼板の温度分布が、磁気特性に特に影響を及ぼす理由は明らかではないが、550℃から800℃までの昇温過程を経る前の鋼板における転移の回復量、および最終到達温度に到達した際に形成される鋼板表面の酸化物が変化することが原因と考えられる。
冷却過程によって鋼板の板幅方向の温度分布をより均一化することができる理由は、冷却過程では鋼板の高温部分ほど、抜熱が進むと共に低温部分への熱伝導が進むためと考えられる。一方、鋼板の徐加熱または保温では、10秒以下などの短時間の間に、本実施形態と同程度の温度分布の均一化を達成することは困難であると考えられる。
また、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法では、一次再結晶焼鈍の昇温過程における雰囲気中の水蒸気分圧PH2Oと、水素分圧PH2との比PH2O/PH2は、0.1以下とすることが好ましい。本実施形態に係る製造方法では、一次再結晶焼鈍の昇温過程において、最終到達温度に到達した際の鋼板表面の酸化物が最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性、および該磁気特性のばらつきに大きく影響する。したがって、一次再結晶焼鈍の雰囲気を適切に制御し、鋼板表面に生成される酸化物を適切に制御することで、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性、および該磁気特性のばらつきをさらに改善することが可能である。
以下では、上述した特徴を備える本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法についてより具体的に説明する。
まず、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法に用いられるスラブの成分組成について説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。また、以下で説明する元素以外のスラブの残部は、Feおよび不純物である。
C(炭素)の含有量は、0.02%以上0.10%以下である。Cには、種々の役割があるが、Cの含有量が0.02%未満である場合、スラブの加熱時に結晶粒径が過度に大きくなることで、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値を増大させるため好ましくない。Cの含有量が0.10%超である場合、冷間圧延後の脱炭時に、脱炭時間が長時間になり、製造コストが増加するため好ましくない。また、Cの含有量が0.10%超である場合、脱炭が不完全になり易く、最終的な方向性電磁鋼板において磁気時効を起こす可能性があるため好ましくない。したがって、Cの含有量は、0.02%以上0.10%以下であり、好ましくは、0.05%以上0.09%以下である。
Si(ケイ素)の含有量は、2.5%以上4.5%以下である。Siは、鋼板の電気抵抗を高めることで、鉄損の原因の一つである渦電流損失を低減する。Siの含有量が2.5%未満である場合、最終的な方向性電磁鋼板において渦電流損失を十分に抑制することが困難になるため好ましくない。Siの含有量が4.5%超である場合、方向性電磁鋼板の加工性が低下するため好ましくない。したがって、Siの含有量は、2.5%以上4.5%以下であり、好ましくは、2.7%以上4.0%以下である。
Mn(マンガン)の含有量は、0.01%以上0.15%以下である。Mnは、二次再結晶を左右するインヒビターであるMnSおよびMnSeなどを形成する。Mnの含有量が0.01%未満である場合、二次再結晶を生じさせるMnSおよびMnSeの絶対量が不足するため好ましくない。Mnの含有量が0.15%超である場合、スラブ加熱時にMnの固溶が困難になるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.15%超である場合、インヒビターであるMnSおよびMnSeの析出サイズが粗大化し易く、インヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれるため好ましくない。したがって、Mnの含有量は、0.01%以上0.15%以下であり、好ましくは、0.03%以上0.13%以下である。
S(硫黄)およびSe(セレン)の含有量は、合計で0.001%以上0.050%以下である。SおよびSeは、上述したMnと共にインヒビターを形成する。SおよびSeは、2種ともスラブに含有されていてもよいが、少なくともいずれか1種がスラブに含有されていればよい。SおよびSeの含有量の合計が上記範囲を外れる場合、十分なインヒビター効果が得られないため好ましくない。したがって、SおよびSeの含有量は、合計で0.001%以上0.050%以下であり、好ましくは、0.001%以上0.040%以下である。
酸可溶性Al(酸可溶性アルミニウム)の含有量は、0.01%以上0.05%以下である。酸可溶性Alは、高磁束密度の方向性電磁鋼板を製造するために必要なインヒビターを形成する。酸可溶性Alの含有量が0.01%未満である場合、酸可溶性Alが量的に不足し、インヒビター強度が不足するため好ましくない。酸可溶性Alの含有量が0.05%超である場合、インヒビターとして析出するAlNが粗大化し、インヒビター強度を低下させるため好ましくない。したがって、酸可溶性Alの含有量は、0.01%以上0.05%以下であり、好ましくは、0.01%以上0.04%以下である。
N(窒素)の含有量は、0.002%以上0.015%以下である。Nは、上述した酸可溶性Alと共にインヒビターであるAlNを形成する。Nの含有量が上記範囲を外れる場合、十分なインヒビター効果が得られないため好ましくない。したがって、Nの含有量は、0.002%以上0.015%以下であり、好ましくは、0.002%以上0.012%以下である。
上記で説明した成分組成に調整された溶鋼を鋳造することで、スラブが形成される。なお、スラブの鋳造方法は、特に限定されない。
続いて、スラブを1280℃以上に加熱することで、スラブ中のインヒビター成分を完全固溶する。スラブの加熱温度が1280℃未満である場合、MnS、MnSe、およびAlN等のインヒビター成分を充分に溶体化することが困難になるため好ましくない。なお、このときのスラブの加熱温度の上限値は、特に定めないが、設備保護の観点から1450℃が好ましく、例えば、スラブの加熱温度は、1300℃以上1450℃以下としてもよい。
次に、加熱されたスラブは、熱間圧延されて熱延鋼板に加工される。加工後の熱延鋼板の板厚は、例えば、1.8mm以上3.5mm以下であってもよい。熱延鋼板の板厚が1.8mm未満である場合、熱間圧延後の鋼板温度が低温化し、鋼板中のAlNの析出量が増加することで二次再結晶が不安定化し、最終的な板厚が0.23mm以下の方向性電磁鋼板にて磁気特性が低下するため好ましくない。熱延鋼板の板厚が3.5mm超である場合、冷間圧延の工程での圧延負荷が大きくなるため好ましくない。
続いて、加工された熱延鋼板は、熱延板焼鈍を施された後、1回の冷間圧延、または中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延にて圧延されることで、冷延鋼板に加工される。なお、中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延にて圧延する場合、前段の熱延板焼鈍を省略することも可能である。ただし、熱延板焼鈍を施すことによって、鋼板形状をより良好にすることができるため、冷間圧延にて鋼板が破断する可能性を軽減することができる。
また、冷間圧延のパス間、圧延ロールスタンド間、または圧延中に、鋼板は、約300℃以下で加熱処理されてもよい。これによれば、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させることができる。なお、熱延鋼板は、3回以上の冷間圧延によって圧延されてもよいが、多数回の冷間圧延は、製造コストを増大させるため、熱延鋼板は、1回または2回の冷間圧延によって圧延されることが好ましい。
次に、冷延鋼板は、急速昇温された後、脱炭焼鈍が施される。これらの過程は、一次再結晶焼鈍とも称され、連続して行われることが好ましい。一次再結晶焼鈍によって、冷延鋼板では、二次再結晶前のGoss方位粒を増加させつつ、かつ二次再結晶後の結晶粒を小径化することができる。
本実施形態に係る製造方法では、一次再結晶焼鈍における急速昇温は、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vhを400℃/s以上として行われる。本実施形態に係る製造方法では、このような急速昇温を行うことにより、冷延鋼板の二次再結晶前のGoss方位粒をさらに増加させつつ、かつ二次再結晶後の結晶粒を小径化することができる。
また、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vhを700℃/s以上とする場合、二次再結晶前のGoss方位粒をさらに増加させることができるため、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損をより低減することができる。さらに、平均昇温速度Vhを1000℃/s以上とする場合、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損を極めて低減することができるため、極めて好ましい。
一方、平均昇温速度Vhが400℃/s未満である場合、二次再結晶後の結晶粒を小さくするために十分なGoss方位粒を形成することが困難になり、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損が増大してしまうため好ましくない。平均昇温速度Vhの上限は、特に限定されないが、設備および製造コスト上の観点から、例えば、3000℃/sとしてもよい。
また、急速昇温の最終的な到達温度は、800℃以上とする。急速昇温の最終的な到達温度が800℃未満の場合、一次再結晶焼鈍において、急速昇温による二次再結晶前のGoss方位粒の増加、および二次再結晶後の結晶粒の小径化の効果を十分に得ることが困難になる。このような場合、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値が増大してしまうため好ましくない。
本実施形態では、一次再結晶焼鈍の昇温過程は、2または3以上に分割されており、550℃~800℃の間の昇温を含む昇温過程の前には、冷却過程が設けられる。また、冷却過程は、550℃~100℃の温度範囲で行われる。
すなわち、冷却過程において、冷却開始時の鋼板の温度は、550℃以下であり、冷却終了時の鋼板の温度は、100℃以上である。冷却開始時の鋼板の温度が550℃超である場合、550℃~800℃の間の急速昇温の前に鋼板の温度が550℃超となることで、鋼板中で転位が大きく進行し、一次再結晶焼鈍における急速昇温の効果が減じるため好ましくない。また、冷却終了時の鋼板の温度が100℃未満である場合、引き続く550℃~800℃の間の急速昇温の昇温量が大きくなることで、昇温装置への負荷および設備費用が過大となるため好ましくない。したがって、冷却過程は、550℃~100℃の温度範囲で行われ、好ましくは、550℃~200℃の温度範囲で行われる。
また、冷却過程の時間は、0.5秒以上10秒以下とする。冷却過程の時間が0.5秒未満である場合、鋼板の板幅方向の温度均一化の効果が十分に得られないため好ましくない。また、冷却過程の時間が10秒超である場合、冷却過程を含む昇温過程の全体が著しく長大となることで設備費用が多大となるため、または鋼板の通板速度が著しく遅くなることで生産性が低下するため好ましくない。
さらに、冷却過程における平均冷却速度Vc(℃/s)は、10<Vc≦100である。平均冷却速度Vcが10℃/s以下である場合、鋼板の板幅方向の温度均一化の効果が十分に得られないため好ましくない。また、平均冷却速度Vcが100℃/s超である場合、冷却装置への負荷および設備費用が過大となるため好ましくない。
ここで、図1~図5を参照して、一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの具体例について説明する。図1~図5は、一次再結晶焼鈍の昇温過程におけるヒートパターンの具体例を示す説明図である。
図1に示すように、例えば、鋼板1を昇温する昇温装置11、12の間には、鋼板1を冷却する冷却装置20が設けられる。これによって、一次再結晶焼鈍の昇温過程において、冷却過程を設けることができる。
具体的には、まず、鋼板1は、昇温装置11にて550℃以下まで昇温され、次に、鋼板1は、冷却装置20にて550℃以下の冷却開始点Aから100℃以上の冷却終了点Bまで冷却される。さらに、鋼板1は、昇温装置12にて550℃~800℃の間の昇温を含むように昇温される。なお、昇温装置12において、鋼板温度の最終到達点Cは、800℃以上である。
ここで、冷却開始点Aは、550℃から800℃までの昇温を含む昇温装置12の前の昇温装置11において、鋼板温度が最高となる点とする。また、冷却終了点Bは、550℃から800℃までの昇温を含む昇温装置12の直前で、鋼板温度が最低となる点とする。さらに、最終到達点Cは、550℃から800℃までの昇温を含む昇温装置12において、鋼板温度が最高となる点(すなわち、ヒートパターンの極大点)とする。
冷却装置20の平均冷却速度は、例えば、冷却開始点Aと、冷却終了点Bとの間の温度差を鋼板の通過時間で除算することで算出することができる。また、後述するように、冷却装置10による鋼板の冷却状態に板幅方向で差を設けた場合、平均冷却速度は、鋼板の板幅方向に所定間隔で設定した複数箇所(例えば、5箇所程度)における冷却速度の平均値としてもよい。
冷却装置20の冷却方法は、特に限定されないが、例えば、ロール等の接触による抜熱を用いてもよく、冷却ガスの吹き付けを用いてもよく、または自然放熱を用いてもよい。なお、550℃~800℃の間の急速昇温を行う昇温装置12において、鋼板の板幅方向に不均一な温度分布が生じる場合、冷却装置20は、昇温装置12にて生じる不均一な温度分布を打ち消すように鋼板を不均一に冷却してもよい。例えば、冷却装置20は、一次再結晶焼鈍が施された後の鋼板の温度分布が板幅方向で均一となるように、鋼板の板幅方向で冷却状態を制御してもよい。
ここで、550℃から800℃までの昇温を含む昇温過程は、例えば、図2に示すように、1つの昇温装置12によって実施されてもよい。このような場合、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vhは、550℃から800℃までの昇温を含む昇温過程(昇温装置12)にて昇温が開始された点(なお、冷却終了点Bと同じであってもよい)から、昇温が終了した点(すなわち、最終到達点C)までの昇温速度の平均値としてもよい。
また、550℃から800℃までの昇温を含む昇温過程は、例えば、図3に示すように、複数の昇温装置121、122によって実施されてもよい。このような場合、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vhは、550℃を含む昇温過程(昇温装置121)にて昇温が開始された点(なお、冷却終了点Bと同じであってもよい)から、800℃を含む昇温過程(昇温装置122)にて昇温が終了した点(最終到達点C)までの昇温速度の平均値としてもよい。
すなわち、昇温が開始された点とは、550℃を含む昇温過程の低温側において、鋼板1の温度が低下した状態から、鋼板1の温度が上昇する状態に遷移する点(すなわち、温度変化が極小値をとる点)である。また、昇温が終了した点とは、800℃を含む昇温過程の高温側において、鋼板1の温度が上昇した状態から、鋼板1の温度が低下する状態に遷移する点(すなわち、温度変化が極大値をとる点)である。
ただし、図4に示すように、複数の昇温装置121、122の配置によっては、800℃を含む昇温過程よりも高温側で、鋼板1の温度が上昇し続ける可能性がある。このような場合、最終到達点Cは、800℃以上で、昇温速度の変化率が負の値で最小となる点としてもよい。
上述した昇温装置の加熱方法は、特に限定されないが、例えば、通電加熱方法または誘電加熱方法を用いてもよい。
ここで、冷却開始点A、冷却終了点B(または昇温が開始された点)、および最終到達点Cの判別方法は、特に限定されないが、例えば、放射温度計等を用いて鋼板温度を測定することによって判別することが可能である。なお、鋼板温度の測定方法については、特に限定されない。
ただし、鋼板温度の測定が困難であり、冷却開始点A、冷却終了点B(または昇温が開始された点)、および最終到達点Cの正確な場所の推定が困難である場合は、昇温過程および冷却過程の各々のヒートパターンを類推することで、これらの場所を推定してもよい。また、さらには、昇温過程および冷却過程の各々における鋼板の入側温度および出側温度を、冷却開始点A、冷却終了点B(または昇温が開始された点)、および最終到達点Cとしてもよい。
ここで、本実施形態に係る製造方法では、一次再結晶焼鈍において、鋼板は、急速昇温された後に脱炭焼鈍を施されることが好ましい。具体的には、図5で示すように、昇温装置11で昇温され、冷却装置20で冷却された後、昇温装置12で急速昇温された鋼板1は、冷却装置30にて冷却された後、脱炭焼鈍炉40で水素および窒素含有の湿潤雰囲気中にて、900℃以下の温度で脱炭焼鈍されることが好ましい。このような場合、鋼板1の脱炭性を容易に確保することができる。
また、本実施形態に係る製造方法では、上述した一次再結晶焼鈍の100℃~800℃の間の昇温過程の雰囲気は、酸素分圧比Pが0.1以下となる雰囲気であることが好ましい。酸素分圧比Pは、具体的には、雰囲気中の水蒸気分圧PH2Oと、水素分圧PH2との比PH2O/PH2であり、一次再結晶焼鈍の際に鋼板の表面に形成される酸化膜を介して脱炭性に大きく影響を与える。
一次再結晶焼鈍の昇温過程の雰囲気の酸素分圧比Pが0.1以下である場合、鋼板1に対して良好な脱炭性を確保することが可能となる。一方、酸素分圧比Pが0.1超である場合、100℃~800℃の間の昇温過程において、鋼板の表面に外部酸化型の酸化膜が形成されることで、鋼板1の脱炭が阻害されてしまうため好ましくない。鋼板1の脱炭が不十分となった場合、最終的な方向性電磁鋼板の鋼中のC(炭素)濃度が高くなることで、該方向性電磁鋼板が変圧器の鉄心材料として使用される間に、鋼中に微細な炭化物が形成され、鉄損値(特に、ヒステリシス損失)が著しく劣化するため好ましくない。
一次再結晶焼鈍の昇温過程の雰囲気の酸素分圧比Pは、低ければ低いほど、脱炭性が良好となるため、特に下限は定めない。ただし、酸素分圧比を低下されるための費用対効果を考慮すると、酸素分圧比Pの下限値は、例えば、0.001としてもよい。
その後、一次再結晶焼鈍後の鋼板に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤が塗布された後、二次再結晶焼鈍を含む仕上焼鈍が施される。二次再結晶焼鈍を含む仕上焼鈍は、例えば、バッチ式加熱炉等を用いて、800℃~1000℃の温度にて、コイル状の鋼板を20時間以上保持することで行われてもよい。さらに、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値をより低減するためには、コイル状の鋼板を1200℃程度の温度まで昇温させる純化処理が施されてもよい。
仕上焼鈍の昇温過程における平均昇温速度については、特に限定されず、一般的な仕上焼鈍の条件を用いることが可能である。例えば、二次再結晶焼鈍を含む仕上焼鈍の昇温過程における平均昇温速度は、生産性および一般的な設備制約の観点から10℃/h~100℃/hとしてもよい。また、仕上焼鈍の昇温過程は、他の公知のヒートパターンで行ってもよい。
続いて、仕上焼鈍の後、鋼板へ絶縁性および張力付与を目的として、例えば、リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカなどを主成分とした絶縁被膜が鋼板の表面に塗布される。その後、絶縁被膜の焼付、および仕上焼鈍による鋼板形状の平坦化を目的として、平坦化焼鈍が施される。平坦化焼鈍は、公知の条件で行われてもよく、例えば、800℃~950℃の温度にて、鋼板を10秒以上保持することで行われてもよい。なお、鋼板に対して絶縁性および張力が付与されるのであれば、絶縁被膜の成分は特に限定されない。
以上の工程により、方向性電磁鋼板を製造することができる。本実施形態に係る製造方法によれば、磁区制御処理を施さなくとも、十分に鉄損値が低減した方向性電磁鋼板を製造することができる。また、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性のばらつきを低減することが可能である。これによれば、本実施形態に係る製造方法によって製造された方向性電磁鋼板は、変圧器の磁気特性と、騒音特性とを両立させることができる。ただし、需要家の目的によっては、本実施形態に係る方向性電磁鋼板にも磁区制御処理が施されてもよいことは言うまでもない。
以下に、実施例を示しながら、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法、および方向性電磁鋼板について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板のあくまでも一例に過ぎず、本実施形態に係る方向性電磁鋼板が以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、質量%で、C:0.08%、Si:3.3%、Mn:0.08%、S:0.023%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.008%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを作製した。該スラブを1350℃にて1時間焼鈍した後、熱間圧延を施すことで、板厚2.3mmの熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板を最高温度1100℃にて140秒間焼鈍し、酸洗を施した後に冷間圧延を施すことで、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。
続いて、得られた冷延鋼板を平均昇温速度50℃/sで450℃まで昇温した後、450℃から350℃まで冷却し、350℃から850℃まで昇温した。ここで、450℃から350℃までの平均冷却速度Vc(℃/s)、および350℃から850℃までの平均昇温速度Vh(℃/s)は、下記の表1に示すように変更した。また、このときの100℃以上800℃以下の雰囲気の酸素分圧比Pは、0.01とした。その後、湿水素雰囲気かつ820℃で180秒の間、一次再結晶焼鈍を施した。
次に、一次再結晶焼鈍後の鋼板の表面に、MgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施し、仕上焼鈍後の鋼板を水洗した。その後、鋼板の表面に、リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を塗布した後、絶縁被膜の焼付および鋼板の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施した。
以上にて得られた方向性電磁鋼板の板幅方向5点から60mm×300mmの大きさの試料をせん断して歪取焼鈍した後、Hコイル法を用いて、鉄損値W17/50を測定した。ここで、W17/50は、方向性電磁鋼板を50Hzにて1.7Tに励起したときの鉄損の平均値である。また、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の平均値Waと、鉄損ばらつきΔWを算出した。なお、鉄損ばらつきΔWは、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の最大値と最小値との差である。
ここで、方向性電磁鋼板の鉄損Waが0.800W/kg以下、かつΔWが0.050W/kg以下の条件を良好であると判定した。また、方向性電磁鋼板の鉄損Waが0.790W/kg以下、かつΔWが0.050W/kg以下の条件をより良好であると判定し、方向性電磁鋼板の鉄損Waが0.785W/kg以下、かつΔWが0.050W/kg以下となる条件を極めて良好であると判定した。
以上の本発明例および比較例の条件および測定結果を表1に示す。評価は、A、B、Cの順に良好である。すなわち、Aが最良であり、Cは不可である。
Figure 0007106910000001
表1の結果を参照すると、一次再結晶焼鈍における平均冷却速度Vcが10℃/sより大きく100℃/s以下であり、かつ平均昇温速度Vhが400℃/s以上の条件を満たす方向性電磁鋼板は、判定が良好となることがわかった。また、一次再結晶焼鈍における平均昇温速度Vhが700℃/s以上の条件を用いた本発明例では、鉄損平均値Waが0.790W/kg以下となるため、判定がより良好となることがわかった。さらに、一次再結晶焼鈍における平均昇温速度Vhが1000℃/s以上の条件を用いた本発明例では、鉄損平均値Waが0.785W/kg以下となるため、判定がより良好となることがわかった。
(実施例2)
まず、質量%で、C:0.08%、Si:3.2%、Mn:0.08%、S:0.005%、Se:0.019%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.008%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを作製した。該スラブを1350℃にて1時間焼鈍した後、熱間圧延を施すことで、板厚2.3mmの熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板を最高温度1100℃にて140秒間焼鈍し、酸洗を施した後に冷間圧延を施すことで、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。
続いて、得られた冷延鋼板を平均昇温速度50℃/sで下記の表2に示す冷却開始温度まで昇温した後、表2に示す条件で冷却および昇温した。具体的には、冷却開始点Tc1(℃)、平均冷却速度Vc(℃/s)、冷却時間tc(s)、冷却終了点Tc2(℃)、平均昇温速度Vh(℃/s)、および最終到達点Th(℃)を変更した。また、このときの100℃以上800℃以下の雰囲気の酸素分圧比Pは、0.01とした。その後、湿水素雰囲気かつ820℃で180秒の間、一次再結晶焼鈍を施した。
次に、一次再結晶焼鈍後の鋼板の表面に、MgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施し、仕上焼鈍後の鋼板を水洗した。その後、鋼板の表面に、リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を塗布した後、絶縁被膜の焼付および鋼板の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施した。
以上にて得られた方向性電磁鋼板の板幅方向5点から60mm×300mmの大きさの試料をせん断して歪取焼鈍した後、Hコイル法を用いて、鉄損値W17/50を測定した。ここで、W17/50は、方向性電磁鋼板を50Hzにて1.7Tに励起したときの鉄損の平均値である。また、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の平均値Waと、鉄損ばらつきΔWを算出した。なお、鉄損ばらつきΔWは、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の最大値と最小値との差である。
ここで、方向性電磁鋼板の鉄損Waが0.800W/kg以下、かつΔWが0.050W/kg以下の条件を良好であると判定した。
以上の本発明例および比較例の条件および測定結果を表2に示す。評価は、良好または不良である。
Figure 0007106910000002
表2の結果を参照すると、一次再結晶焼鈍において、550℃以下100℃以上の範囲で、10℃/sより大きく100℃/s以下の平均冷却速度Vcにて、0.5秒以上10秒以下の冷却を行い、引き続く昇温の最終到達温度Thが800℃以上であり、該昇温の平均昇温速度Vhが400℃/s以上の条件を満たす方向性電磁鋼板は、判定が良好となることがわかった。
(実施例3)
まず、質量%で、C:0.08%、Si:3.3%、Mn:0.08%、S:0.023%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.008%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを作製した。該スラブを1350℃にて1時間焼鈍した後、熱間圧延を施すことで、板厚2.3mmの熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板を最高温度1100℃にて140秒間焼鈍し、酸洗を施した後に冷間圧延を施すことで、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。
続いて、得られた冷延鋼板を平均昇温速度50℃/sで450℃まで昇温した後、平均冷却速度40℃/sで450℃から350℃まで冷却し、平均昇温速度1000℃/sで350℃から850℃まで昇温した。また、このときの100℃以上800℃以下の雰囲気の酸素分圧比Pを下記の表3に示すように変更した。その後、湿水素雰囲気かつ820℃で180秒の間、一次再結晶焼鈍を施した。
次に、一次再結晶焼鈍後の鋼板の表面に、MgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施し、仕上焼鈍後の鋼板を水洗した。その後、鋼板の表面に、リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカを主成分とする絶縁被膜を塗布した後、絶縁被膜の焼付および鋼板の平坦化を目的とする平坦化焼鈍を施した。
以上にて得られた方向性電磁鋼板の板幅方向5点から60mm×300mmの大きさの試料をせん断して歪取焼鈍した後、Hコイル法を用いて、鉄損値W17/50を測定した。ここで、W17/50は、方向性電磁鋼板を50Hzにて1.7Tに励起したときの鉄損の平均値である。また、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の平均値Waと、鉄損ばらつきΔWを算出した。なお、鉄損ばらつきΔWは、板幅方向5点の試料の鉄損値W17/50の最大値と最小値との差である。
ここで、最終的な方向性電磁鋼板のC濃度が40ppm以下であり、鉄損Waが0.800W/kg以下、かつΔWが0.050W/kg以下の条件を良好であると判定した。
以上の本発明例および比較例の条件および測定結果を表3に示す。評価は、良好または不良である。
Figure 0007106910000003
表3の結果を参照すると、一次再結晶焼鈍において、100℃以上800℃以下の雰囲気の酸素分圧比Pが0.1以下の条件を満たす方向性電磁鋼板は、判定が良好となることがわかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 鋼板
11、12、121、122 昇温装置
20、30 冷却装置
40 脱炭焼鈍炉

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.02%以上0.10%以下、Si:2.5%以上4.5%以下、Mn:0.01%以上0.15%以下、SおよびSeのうち1種または2種の合計:0.001%以上0.050%以下、酸可溶性Al:0.01%以上0.05%以下、N:0.002%以上0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなるスラブを、1280℃以上に加熱して、熱間圧延を施すことで、熱延鋼板とする工程と、
    前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施した後、一回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を施すことで、冷延鋼板とする工程と、
    前記冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施す工程と、
    一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施す工程と、
    仕上焼鈍後の鋼板に絶縁被膜を塗布した後、平坦化焼鈍を施す工程と、
    を含み、
    前記一次再結晶焼鈍における昇温過程は、複数に分割されており、
    到達温度が800℃以上となる昇温過程の前には、0.5秒以上10秒以下かつ550℃~100℃の範囲で前記冷延鋼板を冷却し、平均冷却速度Vc(℃/s)が10<Vc≦100である冷却過程が設けられ ており、
    前記冷却過程の後に行われる前記到達温度が800℃以上となる昇温過程において、550℃~800℃の間の平均昇温速度Vh(℃/s)がVh≧400であり、
    前記一次再結晶焼鈍の100℃から800℃までの昇温過程において、雰囲気中の水蒸気分圧PH2Oと、水素分圧PH2との比PH2O/PH2は、0.1以下である 、方向性電磁鋼板の製造方法。
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