JP7105713B2 - 樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
塩化ビニリデン系樹脂フィルムは、酸素および水分を透過させにくく、密着性が高く、耐熱性が高く、透明性が高いなどの特性を有することから、ラップフィルムなどとして広く用いられている。
ラップフィルムは、通常、ロール状に巻回された巻回体として収容箱に収容される。上記収容箱としては、上記巻回体を収容する本体部と、本体部に対して回動自在に連接された蓋部と、を有する収容箱が知られている。ラップフィルムの使用者は、本体部に収容されたラップフィルムの端部を把持して、巻回体を回転させながら上記端部を引っ張って使用する量のラップフィルムを本体部と蓋部との隙間から繰り出し、蓋部に設置された切断刃によって切断することにより、必要な長さのラップフィルムを収容箱から取り出すことができる。このとき、切断後の巻回体の端部は、次の繰り出しを容易にするため、本体部に付着させて係止させておく。
上記塩化ビニリデン系樹脂フィルムは、懸濁重合などの方法により得られた塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押し出しし、その後フィルム状に延伸して製造される。
特許文献1には、上記懸濁重合時に懸濁分散剤を用いることにより、懸濁安定性を高めたり、得られる塩化ビニルデン系樹脂の粒子径を制御してフィルムの押出安定性や膜厚均一性を高めたりすることができると記載されている。特許文献1では、100質量部の塩化ビニリデン樹脂を合成するための単量体に対して、500ppmの懸濁剤を使用することにより、フィルムを良好に製造できたと記載されている。
特許文献2には、ポリ塩化ビニリデン系フィルムに流動パラフィンを付与することにより、上記フィルムに適切な剥離性能を発揮させることができると記載されている。
国際公開第2003/006548号 特開平10-087876号公報
ところで、上述した収容箱に巻回体として収容されているラップフィルムには、巻回体の逆回転などにより切断された端部が本体部の内部へ巻き戻って、巻回されているラップフィルム(以下、単に「巻回部」ともいう。)の表面に上記端部が貼り付いてしまうことが生じ得る(以下、巻き戻りによりラップフィルムの端部が巻回部の表面に貼り付いた状態を、単に「巻き戻り状態」ともいう。)。ここで、ラップフィルムには高い密着性が求められるため、ラップフィルム同士の密着性も非常に高くなっている。そのため、上記貼り付いてしまった端部を巻回部から引き剥がして、巻回部から端部が剥離した状態に復旧させようとすると、ラップフィルムの端部をつまんで、外側に大きい力で引っ張る必要があり、このときの端部への力によって縦方向(MD)へのラップフィルムの引き裂けが生じやすい。上記縦方向への引き裂けが生じないようにラップフィルムを復旧させようとすると、復旧に時間がかかってしまう。
これに対し、特許文献2に記載のように流動パラフィンを付与してラップフィルムとして用いられる樹脂フィルムの剥離性を高めれば、巻き戻り状態からラップフィルムを復旧しやすくできるとも考えられる。しかし、本発明者らの知見によると、近年の規制強化により流動パラフィンの量を低減させようとすると、樹脂フィルムの剥離性を十分に高めることができず、復旧時の、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを十分には抑制できない。
上記問題に鑑み、本発明は、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の巻回部から端部を剥離させやすい樹脂フィルム、およびそのような樹脂フィルムの製造方法を提供することを、その目的とする。
上記の課題を解決するための本発明の一態様に関する樹脂フィルムは、塩化ビニリデン系樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、MDへの引裂き強度の値(mN)に対する、面密着力の値(N)の割合(面密着力の値/MDへの引裂き強度の値)が、0.35以上0.41未満である。
また、上記の課題を解決するための本発明の別の態様に関する樹脂フィルムの製造方法は、溶融して押出された塩化ビニリデン系樹脂組成物を延伸する工程と、前記延伸された塩化ビニリデン系樹脂組成物を緩和する工程と、を有する樹脂フィルムの製造方法である。前記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、重合により塩化ビニリデン系樹脂を合成するための単量体を、前記単量体の全質量に対する含有量が300ppm以上600ppm以下である水溶性セルロース誘導体の存在下、水性媒体中で懸濁重合させて得られる樹脂組成物である。前記製造方法では、前記延伸する工程において、塩化ビニリデン系樹脂組成物を、MDへの延伸倍率が3.5倍以上5.0倍以下、TDへの延伸倍率が4.0倍以上5.5倍以下となるように延伸し、前記緩和する工程において、前記延伸された塩化ビニリデン系樹脂組成物を、MDへの緩和率が9.5%以上12.5%以下となるように緩和する。
本発明によれば、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の巻回部から端部を剥離させやすい樹脂フィルム、およびそのような樹脂フィルムの製造方法が提供される。
[樹脂フィルム]
(物性等)
本発明の一実施形態は、塩化ビニリデン系樹脂組成物からなる樹脂フィルムに関する。上記樹脂フィルムは、MDへの引裂き強度の値(単位:mN)に対する、面密着力の値(単位:N)の割合(面密着力の値(N)/MDへの引裂き強度の値(mN)。以下、この割合を単に「復旧係数」ともいう。)が、0.35以上0.41未満である。
なお、MDとは、ロール状に巻回されている樹脂フィルムの、巻回されている方向を意味する。また、TDとは、樹脂フィルムの平面内のうち、MDとは直交する方向を意味する。
塩化ビニリデン系樹脂組成物からなる樹脂フィルムを、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の巻回部から復旧させやすくするためには、上記面密着力の値はより低いことが望ましく、上記MDへの引裂き強度はより高いことが望ましい。ただし、樹脂フィルムによる容器などへの密着性を十分に確保するためには、上記面密着力を低下させすぎることは望ましくない。
これらの観点から、本実施形態では、上記復旧係数を0.35以上0.41未満とする。上記復旧係数が0.35以上であると、樹脂フィルムの面密着力が過剰に低下しすぎておらず、容器などへの密着性が十分に確保される。一方で上記復旧係数が0.41未満であると、樹脂フィルムのMDへの引裂き強度がほどよく高まりつつ、面密着力がほどよく低下しているため、縦方向への引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の樹脂フィルムを復旧させやすい。上記観点から、上記復旧係数は、0.36以上0.40以下であることが好ましく、0.37以上0.40以下であることがより好ましい。
上記MDへの引裂き強度の値は、公知の引裂試験機を用いて測定された値とすることができる。具体的には、樹脂フィルムを長さ方向(MD)63.5mm×幅方向(TD)50mmの大きさに切断して得た試験片を、引裂試験機のクランプの中央にセットし、長さ方向(MD)への切込み長さが12.7mmになるように、試験片の幅方向(TD)の中央にナイフで切込みを入れて、振り子を開放して試験片を切り裂く。このときの、試験片を切り裂くための最大荷重を、当該試験片のMDへの引裂き強度の値(単位:mN)とすることができる。
上記面密着力は、公知の引っ張り試験器を用いて測定された値とすることができる。具体的には、底面積25cm、質量300gのアルミニウム製の円柱状の2本の治具の、それぞれの底面に皺が入らないように緊張させながら樹脂フィルムを固定させ、当該2本の治具に固定された樹脂フィルム同士を鉛直方向に接触させて圧着させる。その後、引張試験機を用いて上記2本の治具を反対の鉛直方向に引っ張る。このときの、治具を引き離すための最大荷重(単位:N)を、当該試験片の面密着力の値とすることができる。
なお、上記復旧係数を上述した範囲に調整しやすくする観点からは、上記樹脂フィルムは、MDへの引裂き強度の値が、32.0mN以上34.5mN以下であることが好ましく、32.5mN以上34.5mN以下であることがより好ましく、33.0mN以上34.5mN以下であることがさらに好ましい。なお、上記MDへの引裂き強度の値が32.0mN以上であると、復旧時やその他の使用時に樹脂フィルムが縦裂けしにくいため、樹脂フィルムの使いやすさをより高めることができる。
また、上記復旧係数を上述した範囲に調整しやすくする観点からは、上記樹脂フィルムは、上記面密着力の値が12.0N以上13.0N以下であることが好ましく、12.0N以上12.5N以下であることがより好ましい。上記面密着力の値が12.0N以上であると、使用時に樹脂フィルムが容器などに密着しやすいため、樹脂フィルムの使いやすさをより高めることができる。
なお、後述するように、本実施形態では、所定量の水溶性セルロース誘導体の存在下で重合した塩化ビニリデン系樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂組成物を所定の比率で延伸および緩和することで、上記復旧係数の値を満たす樹脂フィルムを作製することができる。このとき使用する水溶性セルロース誘導体による樹脂フィルムの透明性の低下などを抑制する観点からは、上記樹脂フィルムは、ヘイズ値が1.2%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.6%以下であることがさらに好ましい。なお、ヘイズ値の下限値は特に定められないものの、0.05%以上とすることができる。
上記ヘイズ値は、JIS K 7136(2000年)に準拠して測定して得られた値とすることができる。
また、樹脂フィルムの透明性をより高める観点からは、上記樹脂フィルムは、JIS B 0601(2013年)に規定される算術表面粗さ(Ra)が5.0nmより大きく20.0nm未満であることが好ましく、5.0nmより大きく7.7nm以下であることがより好ましく、6.0nmより大きく7.5nm未満であることがさらに好ましい。
上記算術表面粗さ(Ra)は、公知の表面粗さ測定器を用いて得られた値とすることができる。
また、後述するように、本実施形態では、塩化ビニリデン系樹脂組成物を従来よりも高い倍率で延伸することで、上記復旧係数の値を満たす樹脂フィルムを作製することができる。そのため、本実施形態に関する樹脂フィルムでは、塩化ビニリデン系樹脂の分子がより緊張した状態でMDに配向しており、切断刃などの突き刺しがより容易であり、切断(特にはTDへの切断)がより容易である。具体的には、上記樹脂フィルムは、突き刺し強度の値が4.0N未満であることが好ましく、3.8N未満であることがより好ましく、3.5N未満であることがさらに好ましい。なお、突き刺し強度の下限値は特に定められないものの、樹脂フィルムの形状を維持しやすくする観点から、1.5N以上とすることができる。
上記突き刺し強度は、JIS Z 1707(2019年)に準拠して測定して得られた値とすることができる。
上記樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、1μm以上50μm以下とすることができ、4μm以上45μm以下であえることが好ましく、7μm以上40μm以下であることがより好ましい。上記厚みが1μm以上であると、上記樹脂フィルムを破れにくくすることができる。上記厚みが50μm以下であると、上記樹脂フィルムのカット性が良好となり、またフィルムの手触り感が良好なものとなる。
上記樹脂フィルムは、透明である樹脂フィルムとすることができる。また、上記樹脂フィルムは、食品や食器などへの密着性を有する。そのため、上記樹脂フィルムは、ラップフィルムとして好適に使用することができる。
また、上記樹脂フィルムは、ロール状に巻回された巻回体として保管されることが好ましい。上記巻回体は、上記巻回体を収容する本体部と、本体部に対して回動自在に連接された蓋部と、を有し、蓋部に切断刃を有する収容箱に収容されることが好ましい。上記収容箱に収容された上記巻回体は、巻回体を回転させながら上記樹脂フィルムの端部を引っ張って使用する量の樹脂フィルムを本体部と蓋部との隙間から繰り出し、蓋部に設置された切断刃によって切断することにより、必要な長さだけ、収容箱から取り出されることができる。
(組成等)
上記樹脂フィルムは、塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム状に成形してなる単層フィルムである。
上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、塩化ビニリデン系樹脂を主成分とする樹脂組成物である。
上記塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンの単独重合体であってもよいし、塩化ビニリデンに由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。
上記共重合体は、塩化ビニリデンと、塩化ビニリデンと共重合可能な単量体と、の共重合体である。上記塩化ビニリデンと共重合可能な単量体の例には、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルおよびアクリル酸ステアリルなどを含むアルキル基の炭素数が1以上18以下であるアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルおよびタクリル酸ステアリルなどを含むアルキル基の炭素数が1以上18以下のメタクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどを含むシアン化ビニル化合物、スチレンなどを含む芳香族ビニル化合物、酢酸ビニルなどを含む炭素数が1以上18以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、炭素数が1以上18以下のアルキルビニルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などを含むビニル重合性不飽和カルボン酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸のアルキル基の炭素数が1以上18以下であるアルキルエステル(部分エステルであってもよい。)、ならびに、ジエン系単量体などが含まれる。これらのうち、塩化ビニル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルが好ましく、塩化ビニルがより好ましい。
上記共重合体は、その全質量に対する塩化ビニリデンに由来する構成単位の割合が60質量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。上記塩化ビニリデンに由来する構成単位の割合の上限は特に定められないものの、押出加工性などを高める観点から、98重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましい。
上記塩化ビニリデン系樹脂は、還元粘度が0.035以上0.070以下であることが好ましく、0.040以上0.065以下であることがより好ましい。上記還元粘度が0.035以上であると、塩化ビニリデン系樹脂組成物の押出加工性をより高めることができる。上記還元粘度が0.70以下であると、樹脂フィルムの着色が抑制され、かつ、成形時に塩化ビニリデン系樹脂組成物をより容易に溶融させることができる。
上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、押出加工性などをより高める観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸またはそれらのアルキルエステルとの共重合体、ならびに、MBS樹脂(メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)などの他の樹脂をさらに含有してもよい。上記他の樹脂の含有量は、100質量部の上記塩化ビニリデン系樹脂に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、懸濁重合により上記塩化ビニリデン系樹脂を合成する際に水溶性セルロース誘導体を含有していてもよい。上記水溶性セルロース誘導体は、懸濁重合時の懸濁剤として作用するほか、樹脂フィルムの表面に残存して樹脂フィルムの表面を適度に粗面化する。
上記水溶性セルロース誘導体の例には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロポキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースなどが含まれる。これらのうち、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロポキシメチルセルロースがより好ましく、メチルセルロースがさらに好ましい。
上記水溶性セルロース誘導体は、樹脂フィルムを100mlのエタノールに浸漬させ、70℃に加熱して5時間抽出した際に、1mあたり15μg以上が抽出される量で含まれることが好ましい。上記条件における水溶性セルロース誘導体の抽出量が上記範囲であると、おそらくは上記水溶性セルロース誘導体が樹脂フィルムの表面に適度に残存し、樹脂フィルムの表面を適度に粗面化することにより、樹脂フィルムのMDへの引裂き強度はほぼ維持しつつ、面密着力を適度に低下させることができる。そのため、上記復旧係数を上述した範囲に調整しやすい。樹脂フィルムから抽出される上記水溶性セルロース誘導体の含有量の上限は特に限定されないものの、樹脂フィルム1mあたり100μg以下、好ましくは50μg以下、さらに好ましくは30μg以下とすることができる。
上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、上記復旧係数に顕著な影響がない限りにおいて、可塑剤、安定剤およびスリップ剤などの添加剤を含有していてもよい。
上記可塑剤の例には、アセチルトリブチルサイトレート、ジオクチルフタレート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジアセチル化モノグリセライド、アセチル化ジグリセライドおよびアセチル化トリグリセライドなどが含まれる。上記安定剤の例には、エポキシ化大豆油(ESBO)およびエポキシ化亜麻仁油(ELO)などが含まれる。上記可塑剤および安定剤の合計の含有量は、100質量部の上記塩化ビニリデン系樹脂に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上7.0重量部以下であることがより好ましい。
上記スリップ剤の例には、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミドおよびチオエーテル系化合物などが含まれる。上記スリップ剤の含有量は、100質量部の上記塩化ビニリデン系樹脂に対して、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上6.0重量部以下であることがより好ましい。
また、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、粘着付与剤を含有してもよい。
上記粘着付与剤の例には、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンモノオレエートおよびグリセリントリオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル、ならびに、流動パラフィンなどが含まれる。
ただし、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、粘着付与剤を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、粘着付与剤の含有量が、100質量部の上記塩化ビニリデン系樹脂に対して100ppm以下(好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下)であることを意味する。
[樹脂フィルムの製造方法]
上述した樹脂フィルムは、溶融して押出された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物を延伸する工程と、前記延伸された塩化ビニリデン系樹脂組成物を緩和する工程と、を有する方法によって、製造することができる。
(塩化ビニリデン系樹脂組成物の調製)
上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、合成された塩化ビニリデン系樹脂と、各種添加剤と、を混合して調製することができる。
上記塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンと、上記塩化ビニリデンと共重合可能な単量体と、を懸濁重合して、合成することができる。
具体的には、ステンレス製などの反応機(重合機)内において、塩化ビニリデン(共重合体を合成するときは塩化ビニリデンおよび上記塩化ビニリデンと共重合可能な単量体)を、上記水溶性セルロース誘導体の存在化、水性媒体中で撹拌して懸濁させ、油滴に分散させる。その後、重合開始剤を上記懸濁液に添加し、必要に応じて昇温して、塩化ビニリデン(および上記塩化ビニリデンと共重合可能な単量体)を重合させる。このときの温度は、通常は25~90℃、好ましくは30~85℃であり、重合時間は、通常は1~100時間、好ましくは2~60時間、より好ましくは3~50時間である。
このとき、上記水溶性セルロース誘導体の添加量を、100質量部の塩化ビニリデン(および上記塩化ビニリデンと共重合可能な単量体)に対して、300ppm以上600ppm以下、好ましくは300ppm以上500ppm以下とする。水溶性セルロース誘導体の量を上記範囲にすることによって、おそらくは樹脂フィルムの表面に残存した上記水溶性セルロース誘導体が樹脂フィルムの表面を適度に粗面化することにより、製造される樹脂フィルムのMDへの引裂き強度はほぼ維持しつつ、面密着力を適度に低下させることができる。そのため、製造される樹脂フィルムの上記復旧係数を上述した範囲に調整しやすい。
得られた塩化ビニリデン系樹脂と、必要に応じて樹脂フィルムに含有される可塑剤、安定剤およびスリップ剤などの添加剤と、を混合して、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物を調製することができる。なお、上記添加剤はどの時点で混合もよく、重合時に懸濁液に添加してもよいし、重合後に塩化ビニリデン系樹脂と上記添加剤とを混合してもよい。混合は、ヘンシェルミキサー、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機およびレディゲミキサーなどの公知の混合装置により行うことができる。これにより、粉体状またはペレット状の塩化ビニリデン系樹脂組成物を得ることができる。
(樹脂フィルムの成形)
上記調製された塩化ビニリデン系樹脂組成物は、公知の方法で溶融および押出した後、延伸および緩和される。
まず、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物を押出機に投入し、シリンダー内で溶融させてダイから押出す。ダイは、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物を平板状に押し出すTダイであってもよいし、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物を管状に押し出す環状ダイ(サーキュラーダイ)であってもよい。
上記押し出された塩化ビニリデン系樹脂組成物は、複数のガイドローラおよび複数のピンチローラを経て、巻き取りローラによって巻き取られる。このとき、上記複数のピンチローラのうち連続するピンチローラの回転速度を異なるものとしたり、管状に押し出された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物のインフレーションさせるときの空気量を調製したりすることで、上記押し出された塩化ビニリデン系樹脂組成物を所定の割合でMD(流れ方向)に延伸させることができる。また、テンターを用いたり、管状に押し出された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物のインフレーションさせるときの空気量を調製したりすることで、上記押し出された塩化ビニリデン系樹脂組成物を所定の割合でTD(流れに直交する方向)に延伸させることができる。上記MDおよびTDに延伸された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、その後、後続の連続するピンチローラの回転速度差などにより、MDに緩和される。
本実施形態では、このときのMDおよびTDへの延伸倍率、およびMDへの緩和率によって、成形される樹脂フィルムのMDへの引裂き強度の値に対する面密着力(復旧係数)を調整することができる。
具体的には、このとき、MDへの延伸倍率を3.5倍以上5.0倍以下とし、TDへの延伸倍率を4.0倍以上5.5倍以下とし、MDへの緩和率を9.5%以上12.5%とする。
上記MDへの延伸倍率は、3.5倍以上4.5倍以下であることがより好ましく、3.8倍以上4.5倍以下であることがさらに好ましい。上記TDへの延伸倍率は、4.5倍以上5.5倍以下であることがより好ましく、4.5倍以上5.0倍以下であることがさらに好ましい。上記MDへの緩和率は、10.5%以上12.0%以下であることがより好ましく、11.0%以上12.0%以下であることがさらに好ましい。
このように延伸倍率を高くして、その後の緩和率も高くすることで、塩化ビニリデン系樹脂の分子をより緊張した状態でMDに配向させやすくして樹脂フィルムのMDへの引裂き強度を適度に高め、かつ、緩和により樹脂フィルムの表面を適度に粗面化して面密着力を適度に低くすることができる。さらに、本実施形態では、上記塩化ビニリデン系樹脂組成物が水溶性セルロース誘導体を含有することによっても、樹脂フィルムの表面が適度に粗面化されて面密着力が適度に低くなる。これらの作用によって、復旧係数が0.35以上0.41未満であり、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の巻回部から端部を剥離させやすい樹脂フィルムが得られるものと、考えられる。
延伸および緩和された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、その後、巻き取りローラによって巻き取られる。
なお、管状ダイにより管状に押し出された上記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、その後、押出軸方向に切開してシングル厚みの平板状フィルムとしてもよいし、折り畳んでダブル厚みの平板状フィルムとしてもよい。
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
1.樹脂フィルムの作製
1-1.樹脂フィルム-1の作製
塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)とを、VD:VC=82:18(質量比)で混合し、さらにメチルセルロースを溶解した水と、添加剤としてのアセチルトリブチルサイトレート(ATBC)、ジアセチル化モノグリセライド(DALG)、およびエポキシ化大豆油と、を添加して、仕込み原料を調製した。仕込み原料中のメチルセルロースの含有量は、VDの質量とVCの質量との合計量に対し403ppmとなる量に調整した。仕込み原料中の上記添加剤の量は、100質量部の合成される塩化ビニリデン・塩化ビニル共重合体に対して、添加剤の合計量が8.3質量部となる量に調整した。この仕込み原料を用い、懸濁重合法により塩化ビニリデン・塩化ビニル共重合体を含む塩化ビニリデン系樹脂組成物を調製した。
塩化ビニリデン系樹脂組成物を、単軸押出機を用いて185℃で環状ダイから溶融押出し、得られた管状パリソンを水で急冷し、次いで、室温付近まで温水バスで加熱した。その後、縦方向(MD)4.1倍、横方向(TD)4.7倍の延伸倍率でインフレーション二軸延伸を行い、さらに、縦方向(MD)11%の緩和率でMDに緩和した後、巻取りローラで巻き取った。巻き取ったフィルムのスリットと巻き返しを行い、厚み10μm、幅30cm、長さ50mの、巻回体となっている樹脂フィルム-1を得た。
1-2.樹脂フィルム-2の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム化する際の縦方向(MD)の緩和率を12%とした以外は、樹脂フィルム-1の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-2を得た。
1-3.樹脂フィルム-3の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム化する際の縦方向(MD)の緩和率を9%とした以外は、樹脂フィルム-1の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-3を得た。
1-4.樹脂フィルム-4の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物の合成に使用する仕込み原料へのメチルセルロースの添加料を、VDの質量とVCの質量との合計量に対し250ppmとし、得られた塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム化する際の縦方向(MD)の緩和率を9%とした以外は、樹脂フィルム-1の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-4を得た。
1-5.樹脂フィルム-5の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物の合成に使用する仕込み原料に、VDの質量とVCの質量との合計量に対し782ppmとなる量の、粘着付与剤としての流動パラフィンを添加した以外は樹脂フィルム-4の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-5を得た。
1-6.樹脂フィルム-6の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物の合成に使用する仕込み原料に、VDの質量とVCの質量との合計量に対し782ppmとなる量の流動パラフィンを添加し、得られた塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム化する際の縦方向(MD)の延伸倍率を3.2倍、横方向(TD)の延伸倍率を5.4倍、縦方向(MD)の緩和率を10%とした以外は、樹脂フィルム-1の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-6を得た。
1-7.樹脂フィルム-7の作製
塩化ビニリデン系樹脂組成物の合成に使用する仕込み原料へのメチルセルロースの添加料を、VDの質量とVCの質量との合計量に対し755ppmとし、得られた塩化ビニリデン系樹脂組成物をフィルム化する際の縦方向(MD)の緩和率を9%とした以外は、樹脂フィルム-1の作製と同様にして、巻回体となっている樹脂フィルム-7を得た。
樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7の作製に用いた添加剤(水溶性セルロース誘導体および粘着付与剤)の量、ならびに製造条件(縦方向(MD)の延伸倍率、横方向(TD)の延伸倍率、および縦方向(MD)の緩和率)を、表1に示す。
Figure 0007105713000001
2.評価
2-1.水溶性セルロース誘導体の抽出量
十分な長さの樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを巻回体から引き出して切断し、試験片とした。
試験片を100mlのエタノールに浸漬させ、70℃に加熱して5時間の抽出を行った。その後、抽出液を乾固して、エタノール抽出物を得た。上記エタノール抽出物を15%エタノール水溶液に転溶し、二硫化炭素で洗浄した。洗浄後、水相を乾固して、ヨウ化水素(HI)を反応させて生成したヨードメタンをo-キシレンに溶解した。
上記ヨードメタンが溶解したo-キシレン層をガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、得られたヨードメタン量をメチルセルロース量に換算して、樹脂フィルムの表面から溶出したメチルセルロース量を得た。得られたメチルセルロース量を、樹脂フィルムの面積(単位:m)で除算して、樹脂フィルムの表面に存在する水溶性セルロース誘導体の量(単位:μg/m)とした。
GCは、以下の機器および条件で行った。
(測定機器・カラム)
GC-FID: GL sciences GC-4000 Plus
カラム: Agilent J&W GC カラム DB-624
(Length:30m、I.D.:0.530mm、Film:3.00μm)
(GC条件)
カラム温度: 60℃(5分間保持)→昇温20℃/min→210℃(5分間保持)
注入口温度: 230℃
検出器温度: 230℃
キャリアガス: N(カラム流量 4.2ml/min)
注入法: スプリット(5:1)
注入量: 1μl
2-2.面密着力
樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを巻回体から引き出し、長さ方向(MD)200~300mm×幅方向(TD)300mmの大きさに切断して、試験片とした。
底面積25cm、質量300gのアルミニウム製の円柱状の治具を2つ用意した。一方の治具の底面に、それぞれの試験片を、皺が入らないように緊張させながら固定した。他方の治具の底面にも、同じ樹脂フィルムから得られた試験片を、皺が入らないように緊張させながら固定した。これら2つの治具を、試験片が固定された底面同士が完全に重なり合うように鉛直方向に接触させ、鉛直上方側の治具の自重により1分間押圧して、試験片同士を圧着させた。続いて、株式会社オリエンテック製の引張圧縮試験機であるテンシロンRTC-1210Aを使用して、100mm/分の速度で2つの治具を互いに反対の方向(鉛直方向)に引っ張り、治具(試験片)が引き離すための最大荷重(単位:N)を、当該試験片の面剥離強度とした。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行い、5枚の試験片について得られた面剥離強度の平均値を、当該樹脂フィルムの面密着力とした。
2-3.MDへの引裂き強度
樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを巻回体から引き出し、長さ方向(MD)63.5mm×幅方向(TD)50mmの大きさに切断して、試験片とした。
株式会社東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機であるNo.193 型式Dを用いて、測定レンジを196mNとして、それぞれの試験片のMDへの引裂き強度を求めた。クランプの中央に試験片をセットした後、長さ方向(MD)への切込み長さが12.7mmになるように、試験片の幅方向(TD)の中央にナイフで切込みを入れて、振り子を開放して試験片を切り裂くための最大荷重(単位:mN)を測定した。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行い、5枚の試験片について得られたMDへの引裂き強度の平均値を、当該樹脂フィルムのMDへの引裂き強度とした。
2-4.ヘイズ値
十分な長さの樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを巻回体から引き出して切断し、試験片とした。
日本電色工業株式会社製のヘーズメーターであるNDH7000SPを用いて、JIS K 7136(2000年)に準拠し、それぞれの試験片のヘイズ値(単位:%)を測定した。5枚の試験片について得られたヘイズ値の平均値を、当該樹脂フィルムのヘイズ値とした。
2-5.突き刺し強度
十分な長さの樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを巻回体から引き出して切断し、試験片とした。
株式会社エー・アンド・デイ 製の引張試験機であるTENSILON RTG-1210を用いて、JIS Z 1707(2019年)に準拠し、それぞれの試験片の突き刺し強さ(単位:N)を測定した。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行い、5枚の試験片について得られた突き刺し強さの平均値を、当該樹脂フィルムの突き刺し強度とした。
2-6.復旧時間
樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7のそれぞれを、収容箱(株式会社クレハ製、クレラップ用収容箱)に収容し、収容箱から30cm繰り出して、蓋部をしっかりと閉めた状態で、刃型が樹脂フィルムに残るようにそれぞれの樹脂フィルムを切断した。その後、残された樹脂フィルムを、皺ができるだけ入らないようにして収容体の内部に巻き戻し、樹脂フィルムの端部を巻回されている樹脂フィルムに密着させた。
この状態から、男女を含む評価者40名に、テープなどの道具は使用しないで、縦方向(MD)への引き裂けが生じないように、樹脂フィルムの全幅を収容箱の外部に引き出させた。評価者が巻回されている樹脂フィルムに密着している樹脂フィルムの端部を発見してから、樹脂フィルムの全幅を収容箱の外部に引き出すまでの時間を計測して、復旧時間とした。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行い、5回の試験で得られた復旧時間の平均値を、当該樹脂フィルムの復旧時間とした。
樹脂フィルム-1~樹脂フィルム-7の、上記面密着力、MDへの引裂き強度、MDへの引裂き強度に対する面密着力の値の割合(面密着力/MDへの引裂き強度)、突き刺し強度、および復旧時間の評価結果を、表2に示す。なお、表2中、「-」は、評価を行っていないことを示す。
Figure 0007105713000002
表2から明らかなように、MDへの引裂き強度の値(mN)に対する、面密着力の値(N)の割合が、0.35以上0.41未満である樹脂フィルム-1および樹脂フィルム-2は、そうではない樹脂フィルム-3~樹脂フィルム-5と比較して、巻き戻り状態からの復旧時間が顕著に短くなっていた。
また、表1から明らかなように、このような樹脂フィルム-1および樹脂フィルム-2は、重合により塩化ビニリデン系樹脂を合成するための単量体を、前記単量体の全質量に対する含有量が300ppm以上600ppm以下である水溶性セルロース誘導体の存在下、水性媒体中で懸濁重合させて得られる樹脂組成物を用いて、溶融して押出された上記樹脂組成物を、MDへの延伸倍率が3.5倍以上5.0倍以下、TDへの延伸倍率が4.0倍以上5.5倍以下となるように延伸し、MDへの緩和率が10.0%以上12.5%以下となるように緩和する方法で、製造されたものであった。
本発明の樹脂フィルムは、縦方向への樹脂フィルムの引き裂けを生じずに、巻き戻り状態の巻回部から端部を剥離させやすい。そのため、本発明の樹脂フィルムは、家庭用、実験用および工業用などの多様な用途において、好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 塩化ビニリデン系樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、
    MDへの引裂き強度の値(単位:mN)に対する、面密着力の値(単位:N)の割合(面密着力の値/MDへの引裂き強度の値)が、0.35以上0.41未満である、
    樹脂フィルム。
  2. 前記MDへの引裂き強度の値は、32.0mN以上34.5mN以下であり、
    前記面密着力の値は、12.0N以上13.0N以下である、
    請求項1に記載の樹脂フィルム。
  3. ヘイズ値が1.2%以下である、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
  4. 突き刺し強度の値が4.0N未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
  5. 溶融して押出された塩化ビニリデン系樹脂組成物を延伸する工程と、前記延伸された塩化ビニリデン系樹脂組成物を緩和する工程と、を有する樹脂フィルムの製造方法であって、
    前記塩化ビニリデン系樹脂組成物は、重合により塩化ビニリデン系樹脂を合成するための単量体を、前記単量体の全質量に対する含有量が300ppm以上600ppm以下である水溶性セルロース誘導体の存在下、水性媒体中で懸濁重合させて得られる樹脂組成物であり、
    前記延伸する工程において、塩化ビニリデン系樹脂組成物を、MDへの延伸倍率が3.5倍以上5.0倍以下、TDへの延伸倍率が4.0倍以上5.5倍以下となるように延伸し、
    前記緩和する工程において、前記延伸された塩化ビニリデン系樹脂組成物を、MDへの緩和率が9.5%以上12.5%以下となるように緩和する、
    樹脂フィルムの製造方法。
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