JP7100346B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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本発明は窒化物半導体発光素子に関するものである。
半導体素子のほとんどはp型半導体層とn型半導体層とを積層して形成される。高い効率で動作する素子を実現するためには、電気抵抗が小さいp型半導体層及びn型半導体層が必要である。ところが、紫外可視光波長域発光・受光素子として有用であるとされる窒化物半導体では、p型半導体層のGaNにおいて、電気抵抗率が1Ωcm以上である。これは、n型窒化物半導体や赤外半導体であるn型GaAs(ガリウムヒ素)やp型GaAsの電気抵抗率が0.01Ωcm以下であることに比べて100倍以上大きい。さらに、深紫外領域で必要とされる、AlN(窒化アルミニウム)モル分率が大きいAlGaNは、p型AlGaNが得られないという課題がある。
このため、非特許文献1には、高濃度にドナー(n型不純物)が添加されたn型半導体層(以降、n++半導体層という)と、高濃度にアクセプタ(p型不純物)が添加されたp型半導体層(以降、p++半導体層という)とがpn接合したトンネル接合層をp側に配置した素子構造が開示されている。詳しくは、非特許文献1に開示された素子構造は、活性層の上側に配置されるp型半導体層を薄いp型半導体層にして、その上側にトンネル接合層を配置し、さらにトンネル接合層の上側に比較的厚いn型半導体層を配置している。この素子構造のn型半導体層側から電流を流すと、トンネル接合層のn++半導体層とp++半導体層とに逆バイアスが印加され、トンネル接合層内のn++半導体層からp++半導体へとキャリアがトンネルし、電流が流れることになる。このトンネル接合層を有する発光素子では、n型半導体層に比べて高い電気抵抗のp型半導体層をほとんど使用する必要がなく、p型半導体層に比べて低い電気抵抗のn型半導体層を利用することによって、素子抵抗を大幅に低減させることができる。
これに対して、素子抵抗の全体を低減するには、トンネル接合層の電気抵抗を低減させる必要がある。トンネル接合自体の電気抵抗を小さくすることができれば、従来の素子の電気抵抗をより小さくすることができ、さらに、現在実用化が遅れている面発光レーザや深紫外発光素子の実用化が可能になる。
非特許文献2に示すように、一般的にトンネル接合は、p++半導体層とn++半導体層を接合させた構造であり、それぞれの層に空乏層が形成され、これら空乏層の厚みの和がトンネル接合層内に形成される空乏層の厚みとなる。この空乏層の厚みが薄いほど、電子が価電子帯から伝導帯へトンネルしやすくなり、低い電気抵抗でn++半導体層からp++半導体層に電流を流すことができる。空乏層の幅Wは、一般的に以下の式で表される。
Figure 0007100346000001
ここで、εs:半導体の誘電率、Vbi:印加電圧、ND:n++半導体層内の実効ドナー濃度、NA:p++半導体層内の実効アクセプタ濃度である。この式から、ND(実効ドナー濃度)、及びNA(実効アクセプタ濃度)が高いほど、空乏層の幅Wは狭くなることがわかる。ただし、ND、NAは、いわゆる実効濃度である。例えば、p++半導体層の表面側である上側にn++半導体層を形成する場合、p++半導体層内のアクセプタ濃度を高くし過ぎると、直上のn++半導体層内にアクセプタが拡散し、拡散したアクセプタによってn++半導体層内のドナーが補償されてしまう。これにより、n++半導体層内の実効ドナー濃度NDは減少し、ND-NAに低下する。この結果、空乏層の幅Wが広がり、トンネル接合層の電気抵抗は高くなってしまう。ゆえに、トンネル接合層では、p++半導体層、及びn++半導体層のそれぞれにおいて、アクセプタ濃度、及びドナー濃度を極めて高い濃度にすると共に、p++半導体層とn++半導体層との界面(以降、トンネル接合層の界面という)における濃度プロファイルを急峻に制御(上記の場合で言えば、p++半導体層内において、n++半導体層との界面に向かうに従い、アクセプタ濃度を急激に低下させると共に、n++半導体層内において、p++半導体層との界面から離れるに従いドナー濃度を急激に増加させる)することによって、アクセプタ、及びドナーが互いに補償することを抑え、実効アクセプタ濃度及び実効ドナー濃度を高くすることが必要であることが知られている。したがって、上記基本理論に基づいてアクセプタ濃度及びドナー濃度プロファイルを適切に制御することによってトンネル接合層の電気抵抗を低くすることが可能と考えられた。
T.Takeuchi et al.,"GaN-Based Light Emitting Diodes with Tunnel Junctions"、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.40(2001)、pp.L861-L863. S.M.Sze Physics of Semiconductor Devices (2nd Edition)、John Wiley & Sons、(1981) D.Minamikawa,et al,、"GaInN-based tunnel junctions with high InN mole fractions grown by MOVPE"Physica Status Solidi、2015年5月、Vol.252,Issue5,P.1127-1131 Erin C. Young, Benjamin P. Yonkee, Feng Wu, Sang Ho Oh, Steven P. DenBaars, Shuji Nakamura and James S. Speck" Hybrid tunnel junction contacts to III-nitride light-emitting diodes"、Applied Physics Express、(米国)、2016年、Vol.9,Number2、P.022102 B.P.Yonkee, E.C.Young, S.P.DenBaars, S.Nakamura, J.S.Speck"Silver free III-nitride flip chip light-emitting-diode with wall plug efficiency over 70% utilizing a GaN tunnel junction"Applied Physics Letter、(米国)、2016年、Vol.109,Issue19、P.191104
しかし、窒化物半導体は従来の半導体に比べてバンドギャップが倍以上大きいため、そもそもキャリアがトンネルし難く、さらに、アクセプタの濃度プロファイルを急峻に制御することも難しい。このため、窒化物半導体を用いて電気抵抗の低いトンネル接合層を実現することは難しいと考えられた。
このような状況下において、窒化物半導体を用いたトンネル接合層では、非特許文献3に示すように、バンドギャップの小さなGaInN層を用いたり、非特許文献4に示すように、アクセプタ(p型不純物)であるMg(以降、Mgという)の濃度プロファイルの制御が容易なMBE法を用いたり、非特許文献5に示すように、トンネル接合層の界面において、成長炉からウエハを一旦取り出しウエハ洗浄し、その後再成長させたりする等の工夫をして電気抵抗が低い窒化物半導体のトンネル接合層を実現している。
しかし、窒化物半導体を用いたトンネル接合層において、最も基本的なアクセプタ濃度及びドナー濃度、及びこれらの濃度プロファイルに関する設計指針は、非特許文献2に開示された基本理論があるのみである。
このため、発明者らは、この基本理論に基づいてアクセプタ濃度及びドナー濃度のそれぞれの濃度プロファイルを制御して作成したトンネル接合層の駆動電圧を評価し、アクセプタ及びドナーの相関関係を詳しく調査した。
上述したように、この基本理論においてはMg、及びドナー(n型不純物)であるSi(以降、Siという)を用いてp++半導体層、及びn++半導体層を形成しつつ、このMg及びSiのそれぞれの濃度プロファイルがトンネル接合層の界面において急峻に形成され、p++半導体層とn++半導体層とが接合され、Mg及びSiのそれぞれの最大値を示す位置がトンネル接合層の厚み方向(以降、厚み方向という)に分離して存在する濃度プロファイルの構造が最適であると考えられていた(図1(A)参照。)。しかし、窒化物半導体はMgの濃度プロファイルを急峻に制御することが難しいため、電気抵抗の低いトンネル接合層を実現することが難しい。なお、トンネル接合層のn側の端は、p側に向けてSiの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置であり、p側の端は、n側に向けてMgの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置である。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、窒化物半導体を用いたトンネル接合層において、ドナー、及びアクセプタのそれぞれの濃度プロファイルが、より適切に形成されることによって実現する低抵抗トンネル接合層によって、高効率で発光することができる窒化物半導体発光素子を提供することを解決すべき課題としている。
ここで、Mg及びSiのそれぞれの濃度を測定する場合には、測定下限の制限により、異なる測定条件で測定する必要があるため、従来同時に測定を行っていなかった。ゆえに、Mg及びSiのそれぞれの濃度の最大値を示す位置の互いの厚み方向の位置関係は正確に把握できなかった。
しかし、トンネル接合層では、Mg及びSiのそれぞれの濃度が高濃度であるため、Mg及びSiのそれぞれの濃度プロファイルを一度の測定で同時に測定することができる。これにより、発明者らは、窒化物半導体を用いた電気抵抗の低いトンネル接合層におけるMg及びSiのそれぞれの濃度の最大値を示す位置の厚み方向の正確な位置関係を把握することが可能であった。
その結果、図1(B)に示すように、トンネル接合層内のMgの濃度の最大値を示す厚み方向の位置に、そのMg濃度よりも高い濃度のSiが存在する構造において、窒化物半導体を用いたトンネル接合層の電気抵抗が大きく低下することを見出した。これは、非特許文献2に開示された従来の基本理論によれば、トンネル接合層の全てのMgがSiに補償されてしまい実効アクセプタ濃度は0となり、トンネル接合層として全く好ましくない構造である。
第1発明の窒化物半導体発光素子は、トンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記トンネル接合層のn側の端までの間における前記アクセプタ濃度が、ドナー濃度より低く、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記ドナー濃度の最大値を示す位置までの間の厚み方向の距離よりも、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記ドナー濃度の値と前記アクセプタ濃度の値とが一致する位置までの間の厚み方向の距離が大きいことを特徴とする。
この窒化物半導体発光素子のトンネル接合層には、トンネル接合層の厚み方向の所定の位置において、アクセプタ、及びドナーの両方が存在することによって、バンド内に不純物準位を形成し、比較的大きな電子や正孔の状態密度を存在させることができ、これによりトンネル接合層で生じるトンネル電流に寄与することができると考えられる。
したがって、本発明の窒化物半導体発光素子は高効率で発光することができる。
また、第2発明の窒化物半導体発光素子、トンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記トンネル接合層のn側の端までの間における前記アクセプタ濃度が、ドナー濃度より低く、前記トンネル接合層に前記アクセプタ濃度の最大値及び前記ドナー濃度の最大値が位置しており、実効アクセプタ濃度は、前記トンネル接合層のp側の端に向けて単調に減少していることを特徴とする。
トンネル接合層内におけるドナー及びアクセプタのそれぞれの濃度プロファイルを示す概略図であり、(A)は従来の濃度プロファイルを示し、(B)は本発明の濃度プロファイルを示す。 実施例1、2、及び比較例1~3の試料を用いて素子形成した状態の構造を示す模式図である。 実施例1、2、及び比較例1、2の試料のトンネル接合層の厚み方向におけるMg、Siの濃度の変化を示すグラフである。 実施例1、2、及び比較例1、2の試料のトンネル接合層の厚み方向における実効ドナー濃度、及び実効アクセプタ濃度の変化を示すグラフである。 実施例1、2、及び比較例1、2の試料の電流に対する電圧の大きさの変化を示すグラフである。 比較例3の試料のトンネル接合層の厚み方向におけるMg、Siのそれぞれの濃度の変化を示すグラフである。 実施例2、及び比較例3の試料の電流に対する電圧の大きさの変化を示すグラフである。
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明の窒化物半導体発光素子は、トンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置が、トンネル接合層のn側の端の位置よりもドナー濃度の値とアクセプタ濃度の値とが一致する位置により近くてもよい。この場合、この窒化物半導体発光素子はトンネル接合層のn側の端にアクセプタが偏析することを抑えることができる。
本発明の窒化物半導体発光素子のトンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置、及びドナー濃度の最大値を示す位置は、ドナー濃度の値とアクセプタ濃度の値とが一致する位置よりトンネル接合層のn側に位置してもよい。この場合、この窒化物半導体発光素子は、アクセプタ濃度の最大値を示す位置、及びドナー濃度の最大値を示す位置のそれぞれをトンネル接合層内に確実に存在させることができ、トンネル接合層において、アクセプタ濃度、及びドナー濃度のそれぞれを確実に高くすることができる。
本発明の窒化物半導体発光素子のトンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置におけるドナー濃度の値は、アクセプタ濃度の最大値に対して少なくとも2倍以上でもよい。この場合、この窒化物半導体発光素子は、より大きな電子や正孔の状態密度を存在させることができ、これによりトンネル接合層で生じるトンネル電流に寄与することができると考えられる。
本発明の窒化物半導体発光素子のトンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置からトンネル接合層のn側において、アクセプタ濃度が1×1020cm-3未満、且つドナー濃度が1×1020cm-3以上の領域が6nm以上であってもよい。この場合、この窒化物半導体発光素子はトンネル接合層のn側にアクセプタが偏析することをより抑えることができる。
次に、本発明の窒化物半導体発光素子を具体化した実施例1、2及び比較例1~3について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例1、2、及び比較例1~3>
実施例1、2、及び比較例1、2の窒化物半導体発光素子は、図2に示すように、第1n-GaN層11、GaInN/GaN5重量子井戸活性層12、p-AlGaN層13、p-GaN層14、トンネル接合層15、及び第2n-GaN層16を備えている。
実施例1、2、及び比較例1、2の窒化物半導体発光素子は、基板であるサファイア基板9(以下、基板9という)の表面側(表は図2における上側である、以下同じ。)に低温堆積緩衝層(図示せず)を介して形成したu-GaN層10の表面側に、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いて積層して結晶成長する。なお、サファイア基板9、及びu-GaN層10はc面((0001)面)が表面である。
先ず、基板9の表面側に形成されたu-GaN層10の表面に第1n-GaN層11を積層して結晶成長する。詳しくは、先ず、MOCVD法を実行することができるMOCVD装置の反応炉内にu-GaN層10が表面に形成された基板9をセットする。そして、反応炉内にN(窒素)の原料であるNH3(アンモニア)、及びキャリアガスであるH2(水素)を供給して、反応炉内の温度を調節して基板の温度を1050℃にする。反応炉内に供給するガスは、別途記載があるまで供給を停止しない。そして、反応炉内にGa(ガリウム)の原料であるTMGa(トリメチルガリウム)と、Si(ケイ素)の原料であるSiH4(シラン)とを供給して、2μmの厚みの第1n-GaN層11を積層して結晶成長させる。反応炉内へのSiH4の供給量は第1n-GaN層11に添加されるSiの濃度が1×1019cm-3になるように調節する。
次に、第1n-GaN層11の表面にGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を積層して結晶成長する。GaInN/GaN5重量子井戸活性層12は、GaInN井戸層(図示せず)、及びGaNバリア層(図示せず)を有している。
先ず、GaInN井戸層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのH2、TMGa、及びSiH4の供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。そして、反応炉内にキャリアガスとしてN2(窒素)を供給する。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を780℃にする。そして、反応炉内にGaの原料であるTEGa(トリエチルガリウム)と、In(インジウム)の原料であるTMIn(トリメチルインジウム)とを供給して、3nmの厚みのGaInN井戸層を積層して結晶成長させる。
次に、GaInN井戸層の表面にGaNバリア層を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのTMInの供給を停止して、6nmの厚みのGaNバリア層を積層して結晶成長させる。こうして成長させたGaInN量子井戸層、及びGaNバリア層を1ペアとして、この1ペアを5ペア積層して結晶成長する。こうしてGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を形成する。そして、反応炉内へのTEGa及びTMInの供給を停止する。
次に、GaInN/GaN5重量子井戸活性層12の表面にp-AlGaN層13を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へ供給するキャリアガスをN2からH2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を1000℃にする。そして、反応炉内にTMGa、Al(アルミニウム)の原料であるTMAl(トリメチルアルミニウム)、及びMg(マグネシウム)の原料であるCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を供給して、20nmの厚みのp-AlGaN層13を積層して結晶成長させる。反応炉内へのCp2Mgの供給量はp-AlGaN層13に添加されるMgの濃度が3×1019cm-3になるように調節する。
次に、p-AlGaN層13の表面にp-GaN層14を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へTMAlの供給を停止して、160nmの厚みのp-GaN層14を積層して結晶成長させる。p-GaN層14に添加されるMgの濃度は4×1019cm-3である。
次に、反応炉内でp-GaN層14の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層15を形成する。トンネル接合層15はGaNを母材とし、アクセプタ(p型不純物)としてMgを用いたp型トンネル接合層であるp++-GaN層15A、及びドナー(n型不純物)としてSiを用いたn型トンネル接合層であるn++-GaN層15Bを有している。
また、実施例1、2、及び比較例1、2では、Siの厚み方向の濃度プロファイルを互いに同様とし、Mgの厚み方向の濃度プロファイルをそれぞれ変更している。
先ず、アクセプタを添加してp++-GaN層15Aを形成する。詳しくは、反応炉内にTEGa、及びCp2Mgを供給する。こうして、数nm~10数nmの厚みのp++-GaN層15Aを成長させる。p++-GaN層15Aに添加されるMgの濃度の最大値が2~3×1020cm-3になるようにTEGa、及びCp2Mgの流量を調節する。こうして、p++-GaN層15Aの結晶成長を終了する。そして、反応炉内へのTEGa、及びCp2Mgの供給を停止する。すなわち、NH3以外の原料のガスの供給を停止する。
次に、p++-GaN層15Aの表面にn++-GaN層15Bを積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内へのCp2Mgの供給を停止する。そして、反応炉内に、TEGa、及びSiH4を供給して、15nmの厚みのn++-GaN層15Bを積層して結晶成長させる。n++-GaN層15Bに添加されるSiの濃度の最大値は5~7×1020cm-3である。その後、反応炉内へのTEGa及びSiH4の供給を停止する。
実施例1、2、及び比較例1、2において、p++-GaN層15Aを形成する際、Mgの供給量を調整することによって、Mgの濃度の最大値を示す厚み方向の位置(以降、Mgの最大値を示す位置という)に対するSiの濃度の最大値を示す厚み方向の位置(以降、Siの最大値を示す位置という)を1.8nm、2.5nm、4.3nm、7.2nmの4種類に変化させている。Mgの最大値を示す位置に対するSiの最大値を示す位置は、実施例1が1.8nmであり、実施例2が2.5nmであり、比較例1が4.3nmであり、比較例2が7.2nmである。
その後、反応炉内へのTEGa及びSiH4の供給を停止する。すなわち、NH3以外の反応炉内への原料の供給を停止する。こうして、実施例1、2、及び比較例1、2のそれぞれにおいてトンネル接合層15を形成する。
次に、トンネル接合層15の表面に第2n-GaN層16を積層して結晶成長する。詳しくは、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を1050℃にする。そして、反応炉内にTMGa、及びSiH4を供給する。そして、第2n-GaN層16を400nmの厚みで積層して結晶成長させる。第2n-GaN層16に添加されるn型不純物であるSiの濃度は1×1019cm-3である。
そして、反応炉内へのTMGa及びSiH4の供給を停止して結晶成長を終了する。そして、反応炉内へ供給するキャリアガスをH2からN2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度が400℃以下になった時点で、反応炉内へのNH3の供給を停止する。そして、基板9の温度が室温になった後、反応炉内のパージを行い、基板9を反応炉から取り出す。こうして、図1に示す層構造を有した実施例1、2、及び比較例1、2の基板9を作成することができる。
次に、上記の手順に基づいて結晶成長して層構造を形成し、窒化物半導体によって形成されたトンネル接合層15を備えた実施例1、2、及び比較例1、2の試料のそれぞれを電流注入可能な素子に形成する前の状態における、Mg、Siの試料の厚み方向の濃度プロファイルをSIMSにより同時に測定した結果を図3(A)~(D)に示す。
ここで、SIMSの測定条件を以下に示す。測定装置:CAMECA IMS-6F、一次イオン種:Cs、一次加速電圧、5.0kV、検出領域:60μmφである。測定濃度はそれぞれイオン注入した標準試料を用いて較正した。この測定条件でMg及びSiの濃度を同時に測定することによって、MgとSiとのそれぞれの厚み方向の濃度プロファイルの関係を明確に得ることができる。
なお、トンネル接合層15の形成工程において、実施例1、2、及び比較例1、2のそれぞれでp++-GaN層15A、及びn++-GaN層15Bの厚みについて述べているが、これは、p++-GaN層15A、及びn++-GaN層15Bのそれぞれにおいて、Mg、及びSiが所定の濃度以上に添加された領域の厚みである。
実施例1、2、及び比較例1、2の試料のトンネル接合層15のn側の端Enは、図3(A)~(D)に示すように、p側に向けてSiの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置である。また、実施例1、2、及び比較例1、2の試料のトンネル接合層15のp側の端Epは、n側に向けてMgの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置である。
図3(A)~(D)に示すように、Mgの最大値を示す位置に対するSiの最大値を示す位置は、実施例1の試料(+1.8nm)が最も小さく、実施例2の試料(+2.5nm)、比較例1の試料(+4.3nm)、比較例2の試料(+7.2nm)の順に大きくなる。"+"はSiの最大値を示す位置がMgの最大値を示す位置よりもn側(すなわち、Siの最大値を示す位置がMgの最大値を示す位置に比べてサファイア基板9の表面から離れた側であり図3(A)~(D)における左側)にあることを示す。
実施例1、2、及び比較例1、2の試料は、Mg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Mg及びSiの濃度がトンネル接合層15のn側の端Enに向けて、ほぼ同じ傾きをなして減少している。
実施例1、2、及び比較例1の試料は、トンネル接合層15において、Mg濃度の最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側の端Enまでの間におけるMg濃度がSi濃度より低い。
また、実施例1、2、及び比較例1の試料は、トンネル接合層15において、Mg濃度の最大値を示す位置が、トンネル接合層15のn側の端Enの位置よりもSi濃度の値とMg濃度の値とが一致する位置Snpに近い。
また、実施例1、2及び比較例1の試料は、トンネル接合層15において、Mg濃度の最大値を示す位置、及びSi濃度の最大値を示す位置が、Si濃度の値とMg濃度の値とが一致する位置Snpよりトンネル接合層15のn側に位置している。
図3(A)に示すように、実施例1の試料におけるMgの最大値はおよそ2×1020cm-3である。また、Mgの最大値を示す位置におけるSiの濃度の大きさはおよそ6×1020cm-3である。つまり、実施例1の試料は、Mgの最大値を示す位置における、Mgの濃度に対するSiの濃度の大きさがおよそ3倍である。
また、実施例1の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域において、Mgの濃度が1×1020cm-3未満で、且つSiの濃度が1×1020cm-3以上の領域がおよそ7nmである。実施例1の試料は、Mg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりもおよそ7nm、n側にずれている。
図3(B)に示すように、実施例2の試料におけるMgの最大値はおよそ3×1020cm-3である。また、Mgの最大値を示す位置におけるSiの濃度の大きさはおよそ6×1020cm-3である。つまり、実施例2の試料は、Mgの最大値を示す位置における、Mgの濃度に対するSiの濃度の大きさは、およそ2倍である。
また、実施例2の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域において、Mgの濃度が1×1020cm-3未満で、且つSiの濃度が1×1020cm-3以上の領域はおよそ6nmである。実施例2の試料は、Mg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりもおよそ6nm、n側にずれている。
図3(C)に示すように、比較例1の試料におけるMgの最大値はおよそ3×1020cm-3である。また、Mgの最大値を示す位置におけるSiの濃度の大きさはおよそ4×1020cm-3である。つまり、比較例1の試料は、Mgの最大値を示す位置における、Mgの濃度に対するSiの濃度の大きさは、およそ1.3倍である。
また、比較例1の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域において、Mgの濃度が1×1020cm-3未満で、且つSiの濃度が1×1020cm-3以上の領域はおよそ9nmである。比較例1の試料は、Mg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりもおよそ9nm、n側にずれている。
図3(D)に示すように、比較例2の試料におけるMgの最大値はおよそ3×1020cm-3である。また、Mgの最大値を示す位置におけるSiの濃度の大きさはおよそ7×1019cm-3である。つまり、比較例2の試料は、Mgの最大値を示す位置における、Mgの濃度に対するSiの濃度の大きさは、およそ0.2倍である。
また、比較例2の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域において、Mgの濃度が1×1020cm-3未満で、且つSiの濃度が1×1020cm-3以上の領域はおよそ12nmである。比較例2の試料は、Mg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりもおよそ12nm、n側にずれている。
従来の基本理論では、アクセプタに補償されたドナー濃度である実効ドナー濃度(ND-NA)及びドナーに補償されたアクセプタ濃度である実効アクセプタ濃度(NA-ND)が重要である。図3(A)~(D)のSIMS測定の結果から実効ドナー濃度、及び実効アクセプタ濃度をプロットし直したグラフを図4(A)~(D)に示す。図4(A)~(D)に示すように、トンネル接合層15の界面B付近において、高い実効ドナー濃度、及び高い実効アクセプタ濃度が実現できているのは、比較例2の試料(+7.2nm)である。具体的には、比較例2の試料は、実効ドナー濃度、及び実効アクセプタ濃度がどちらも1×1020cm-3を超えている。
これに対して、Mgの最大値を示す位置とSiの最大値を示す位置との間の距離が短くなる(実施例1、2、及び比較例1)に従い、トンネル接合層15の界面B付近における実効ドナー濃度、及び実効アクセプタ濃度は低下し、実施例1、2の試料では、実効アクセプタ濃度の最大値が明確に存在せず、従来の基本理論ではトンネル接合層として機能し難い構造に見える。
次に、実施例1、2、及び比較例1、2の試料のそれぞれを用いて電流の注入が可能な素子の形成を行う工程について図2を参照しつつ説明する。
先ず、表面からの平面視において、基板9上に直径35μmの円形形状であるメサ構造20を形成する。詳しくは、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いて基板9上にメサ構造20を形成する。より詳しくは、基板9上の最も表面に積層して結晶成長した第2n-GaN層16の表面に直径35μmの円形形状のフォトレジスト又は金属マスクを形成する(図示せず。)。フォトレジスト又は金属マスクが形成された直下はエッチングで除去されない。また、フォトレジスト又は金属マスクが形成されていない領域は、表面に第1n-GaN層11が露出するまでエッチングされる。露出した第1n-GaN層11には後述する第2電極22を形成する。こうして、基板9上に直径35μmの円形形状であるメサ構造20を形成する。
次に、メサ構造20を形成した基板9をO2(酸素)雰囲気中にて、725℃で30分間アニール処理を行い、埋め込まれたp-AlGaN層13、p-GaN層14、及びトンネル接合層15のp++-GaN層15AのMgを活性化させる。ここで、活性化とはp型不純物であるMgに結合しているH(水素)を離脱させてMgを活性化させ、Mgが添加されたp-AlGaN層13、p-GaN層14、及びトンネル接合層15のp++-GaN層15Aの電気伝導性を向上させることである。こうして活性化することで、エッチングによって、側面が露出したp-AlGaN層13、p-GaN層14及びトンネル接合層15のp++-GaN層15Aのそれぞれの側面からMgを不活性化させていたHを離脱させる。
次に、第1電極21、及び第2電極22を形成する。詳しくは、円形形状をなした第1電極21をメサ構造20の表面に形成する。また、円環状をなした第2電極22をメサ構造20の周囲を囲むように、第1n-GaN層11の露出した表面に形成する。第1電極21、及び第2電極22は、Ti/Al/Ti/Auである。また、第1電極21、及び第2電極22はそれぞれを一括して形成する。こうして、第1電極21からトンネル接合層15、及びGaInN/GaN5重量子井戸活性層12を通過して第2電極22に電流を流すことができる実施例1、2、及び比較例1、2の窒化物半導体発光素子を形成する。
次に、電流の注入が可能な素子に形成された実施例1、2、及び比較例1、2の試料について電流電圧特性を測定した結果を図5に示す。
図5に示すように、Mgの最大値を示す位置に対するSiの最大値を示す位置が比較例2の試料より短くなる(すなわち、+7.2nmより短くなる)に従って急激に駆動電圧が低くなり、実施例2の試料(+2.5nm)が最も低い値である。また、実施例1の試料(+1.8nm)の駆動電圧は、実施例2の試料(+2.5nm)に比べて僅かに上昇したものの、比較例2の試料(+7.2nm)に比べて十分低い値であった。
従来の基本理論によれば、比較例2の試料(+7.2nm)の濃度プロファイルにおいて、空乏層の幅が最も狭く、駆動電圧が最も低くなり、一方で、Mgの最大値の位置とSiの最大値の位置との間の距離が短くなる(実施例1、2、及び比較例1)に従い、実効アクセプタ濃度、及び実効ドナー濃度のそれぞれが低下することによって、空乏層の幅が広がり、駆動電圧が高くなるものと考えられたが、全く逆の結果であった。
実施例1、2、及び比較例1の試料のように、トンネル接合層15内のMgの最大値を示す位置において、Mgの濃度より高い濃度のSiが存在する構造によって、窒化物半導体を用いたトンネル接合層15の電気抵抗が大きく低下する。
そして、より好ましくは、実施例1、2の試料である図3(A)、(B)に示すように、トンネル接合層15において、Mg濃度の最大値を示す位置におけるSi濃度の値は、Mg濃度の最大値に対して少なくとも2倍以上であると、窒化物半導体を用いたトンネル接合層15の電気抵抗がより大きく低下する。
次に、トンネル接合層15において、n++-GaN層15Bの厚みの変化が電気特性に及ぼす影響を検証するため、比較例3の試料を作製した。
比較例3の試料は、トンネル接合層115のn++-GaN層115Bの厚みが5nmである点が実施例1、2、及び比較例1、2と相違する。他の構成は実施例2と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、比較例3の試料の素子構造の作製方法についても、実施例1、2、及び比較例1、2の作製方法と同一の工程は詳細な説明を省略する。
トンネル接合層115はGaNを母材とし、アクセプタ(p型不純物)としてMgを用いたp型トンネル接合層であるp++-GaN層15A、及びドナー(n型不純物)としてSiを用いたn型トンネル接合層であるn++-GaN層115Bを有している。
トンネル接合層115はp-GaN層14の表面にp++-GaN層15Aを10nm成長させる。p++-GaN層15Aに添加されるMgの濃度の最大値は3×1020cm-3である。なお、比較例3のp++-GaN層15Aを形成する際のMgの供給量は、実施例2と同じになるように調整する。
次に、p++-GaN層15Aの表面に5nmの厚みのn++-GaN層115Bを積層して結晶成長する。n++-GaN層115Bに添加されるSiの濃度の最大値は6×1020cm-3である。
こうして、トンネル接合層115を形成する。この後、トンネル接合層115の表面に第2n-GaN層16を積層して結晶成長させ、比較例3の試料を作成する。比較例3の試料は、実施例1、2、及び比較例1、2と層構造が同じである(図2参照。)。
次に、こうして作製した比較例3の試料の電流注入可能な素子に形成する前の状態における、Mg、Siの試料の厚み方向の濃度プロファイルをSIMSにより同時に測定した結果を図6に示す。測定条件は、実施例1、2、及び比較例1、2と同様である。
なお、比較例3の試料のトンネル接合層115のn側の端Enは、p側に向けてSiの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置であり、比較例3の試料のトンネル接合層115のp側の端Epは、n側に向けてMgの濃度プロファイルがほぼ平坦の状態から増加する状態に変化する位置である。
図6に示すように、比較例3の試料はMgの最大値を示す位置に、Mgの濃度よりも高い濃度のSiが存在する。この点は実施例1、2、及び比較例1と同じである。具体的には、比較例3の試料はMgの最大値がおよそ3×1020cm-3である。そして、Mgの最大値を示す位置におけるSiの濃度の大きさはおよそ6×1020cm-3である。つまり、比較例3の試料は、Mgの最大値を示す位置における、Mgの濃度に対するSiの濃度の大きさがおよそ2倍である。
また、比較例3の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層115のn側(図6における左側)に向けてMgの濃度が減少する領域、且つMg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Mg及びSiの濃度がトンネル接合層115のn側に向けてほぼ同じ傾きをなして減少している。この点も実施例1、2、及び比較例1、2と同じである。
しかし、比較例3の試料はトンネル接合層115のn側におけるSiの濃度プロファイルが実施例1、2、及び比較例1、2に対して大きく異なる。具体的には、比較例3の試料のMgの最大値を示す位置からトンネル接合層115のn側に向けてMgの濃度が減少する領域において、Mgの濃度が1×1020cm-3未満で、且つSiの濃度が1×1020cm-3以上の領域は0nmである。つまり、比較例3の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層115のn側に向けてMgの濃度が減少する領域、且つMg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線はMgの濃度を示すグラフの曲線に対してほぼ重なってトンネル接合層115のn側に向けて減少している。
これに対して、実施例2の試料は、Mgの最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域、且つMg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりもおよそ6nm、n側にずれており、トンネル接合層15のn側に向けて減少している(図3(B)参照。)。
次に、比較例3の試料、及び実施例2の試料を用いて電流の注入が可能な素子の形成を行った後の比較例3の試料、及び実施例2の試料について電流電圧特性を測定した結果を図7に示す。なお、電流の注入が可能な素子を形成する工程は、実施例1、2、及び比較例1、2と同じ手順であるため詳細の説明は省略する。
図7に示すように、n++-GaN層115Bの厚みが5nmである比較例3の試料は、n++-GaN層15Bの厚みが15nmである実施例2の試料に比べて、駆動電圧が大きく増加することがわかった。
したがって、トンネル接合層15において、Mg濃度の最大値を示す位置におけるSi濃度の値がMg濃度の最大値に対して少なくとも2倍以上であり、Mg濃度の最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側において、トンネル接合層15のn側に向けてMgの濃度が減少する領域、且つMg及びSiの濃度が1×1019cm-3以上で1×1020cm-3以下の範囲において、Mg濃度が1×1020cm-3未満、且つSi濃度が1×1020cm-3以上の領域が6nm以上である(すなわち、Siの濃度を示すグラフの曲線がMgの濃度を示すグラフの曲線よりも6nm以上、n側にずれている)場合、より電気抵抗が低くなり、低い駆動電圧を実現できることがわかった。
ここで、トンネル接合層15において、アクセプタ濃度、及びドナー濃度が実施例1、2、及び比較例1の試料のように構成される(すなわち、トンネル接合層15内のMgの最大値を示す位置において、Mgの濃度より高い濃度のSiが存在する)とトンネル接合層15の電気抵抗が低くなる理由は以下のように考えられる。トンネル接合層15内の厚み方向の所定の位置において、アクセプタ及びドナーの両方が共に存在することによって、バンド内に不純物準位が形成され、これにより、電子や正孔の比較的大きな状態密度が存在することになる。これがトンネル電流に寄与することでトンネル接合層15の電気抵抗が大幅に低くなったと推察される。
このように、この窒化物半導体発光素子のトンネル接合層15には、トンネル接合層15の厚み方向の所定の位置において、アクセプタ、及びドナーの両方が存在することによって、バンド内に不純物準位を形成し、比較的大きな電子や正孔の状態密度を存在させることができ、これによりトンネル接合層15で生じるトンネル電流に寄与することができる。
したがって、本発明の窒化物半導体発光素子は高効率で発光することができる。
また、この窒化物半導体発光素子は、トンネル接合層15において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置が、トンネル接合層15のn側の端Epの位置よりもドナー濃度の値とアクセプタ濃度の値とが一致する位置に近い。このため、この窒化物半導体発光素子はトンネル接合層15のn側にアクセプタが偏析することを抑えることができる。
また、この窒化物半導体発光素子のトンネル接合層15において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置、及びドナー濃度の最大値を示す位置は、ドナー濃度の値とアクセプタ濃度の値とが一致する位置よりトンネル接合層15のn側に位置している。このため、この窒化物半導体発光素子は、アクセプタ濃度の最大値を示す位置、及びドナー濃度の最大値を示す位置のそれぞれをトンネル接合層15内に確実に存在させることができ、トンネル接合層15において、アクセプタ濃度、及びドナー濃度のそれぞれを確実に高くすることができる。
また、この窒化物半導体発光素子のトンネル接合層15において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置におけるドナー濃度の値は、アクセプタ濃度の最大値に対して2倍以上である。このため、この窒化物半導体発光素子は、より大きな電子や正孔の状態密度を存在させることができ、これによりトンネル接合層で生じるトンネル電流に寄与することができると考えられる。
また、この窒化物半導体発光素子のトンネル接合層15において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置からトンネル接合層15のn側において、アクセプタ濃度が1×1020cm-3未満、且つドナー濃度が1×1020cm-3以上の領域が6nm以上である。このため、この窒化物半導体発光素子はトンネル接合層15のn側にアクセプタが偏析することをより抑えることができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1、2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1、2では、トンネル接合層の裏面側は一般的な青色LED構造であるが、これに限らず、高電流密度領域における電圧降下が大きく改善されることから、端面レーザダイオードや、第1n-GaN層の裏面側に、多層膜反射鏡を設けた面発光レーザ構造としても良い。
(2)実施例1、2では、p型不純物としてMgを用いているが、これに限らず、p型不純物である、Zn,Be、Ca、Sr、及びBa等であっても良い。
(3)実施例1、2では、n型不純物としてSiを用いているが、これに限らず、n型不純物である、Ge、Te等であっても良い。
(4)実施例1、2では、GaInN/GaN5重量子井戸活性層の表面にp-AlGaN層を積層して形成しているが、これに限らず、GaInN量子井戸活性層の表面にp-AlGaN層を積層して形成しなくても良い。
(5)実施例1、2では、サファイア基板を用いているが、これに限らず、窒化ガリウム基板やAlN基板等の他の基板を用いても良い。
(6)実施例1、2では、トンネル接合層のp++-GaN層の厚みを数nm~10数nmとしているが、これに限らず、トンネル接合層のp++-GaN層の厚みを数nmより小さくしても良く、10数nmより大きくしても良い。
(7)実施例1、2では、トンネル接合層のn++-GaN層の厚みを15nm以上としているが、これに限らず、トンネル接合層のn++-GaN層の厚みを15nmより小さくしても良い。
(8)実施例1、2では、トンネル接合層にGaNを用いているが、活性層の発光波長の長さに応じて、GaInNやAlGaNをトンネル接合層の材料として用いても良い。
(9)実施例1、2では、c面であるu-GaN層の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成しているが、a面やm面等の他の面方位の表面にも窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成しても十分な効果を発揮する。つまり、平面状に形成された基板の表面のみならず、ナノコラム等の三次元形状の側壁を形成する面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成する場合にも効果を発揮する。
En…n側の端
Snp…ドナー濃度の値とアクセプタ濃度の値とが一致する位置
15…トンネル接合層

Claims (6)

  1. トンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記トンネル接合層のn側の端までの間における前記アクセプタ濃度が、ドナー濃度より低く、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記ドナー濃度の最大値を示す位置までの間の厚み方向の距離よりも、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記ドナー濃度の値と前記アクセプタ濃度の値とが一致する位置までの間の厚み方向の距離が大きいことを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  2. トンネル接合層において、アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記トンネル接合層のn側の端までの間における前記アクセプタ濃度が、ドナー濃度より低く、前記トンネル接合層に前記アクセプタ濃度の最大値及び前記ドナー濃度の最大値が位置しており、実効アクセプタ濃度は、前記トンネル接合層のp側の端に向けて単調に減少していることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  3. 前記トンネル接合層において、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置が、前記トンネル接合層のn側の端の位置よりも前記ドナー濃度の値と前記アクセプタ濃度の値とが一致する位置に近いことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 前記トンネル接合層において、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置、及び前記ドナー濃度の最大値を示す位置は、
    前記ドナー濃度の値と前記アクセプタ濃度の値とが一致する位置より前記トンネル接合層のn側に位置していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 前記トンネル接合層において、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置における前記ドナー濃度の値は、
    前記アクセプタ濃度の最大値に対して少なくとも2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  6. 前記トンネル接合層において、前記アクセプタ濃度の最大値を示す位置から前記トンネル接合層のn側において、前記アクセプタ濃度が1×1020cm-3未満、且つ前記ドナー濃度が1×1020cm-3以上の領域が6nm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
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