JP7089955B2 - インクジェットインク、インクジェットプリント物およびインクジェットプリント物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態のインクジェットインク(以下、単にインクともいう)は、平均粒子径が0.4~2.5μmであり、屈折率が1.4~1.7であり、比重が2.1以下である粒子を含む。本実施形態のインクは、このように、所定の平均粒子径、屈折率および比重を示す粒子を含んでいることにより、インクジェット印刷時においてノズルに詰まりを生じにくく、吐出安定性が優れる。また、インクは、上記粒子を含んでいることにより、種々の程度の艶消し性を付与することができ、プリント物の意匠性を向上させ得る。さらに、インクは、上記粒子を含んでいることにより艶消し性を発揮しているため、従来技術のように凹凸を独立させて形成することが必須でない。その結果、本実施形態のインクによれば、インクジェットプリント時に使用し得るインクジェット装置が制限されにくく、1回の吐出量を多くしたり、短時間で基材上にインクを付与することができ、プリント物の生産性を向上させ得る。以下、それぞれの構成について説明する。
本実施形態のインクに含まれる粒子は、平均粒子径が0.4~2.5μmであり、屈折率が1.4~1.7であり、比重が2.1以下であることを特徴とする。このような粒子を含むインクは、インクジェットプリント時においてノズルや流路を詰まらせにくく、インクの吐出安定性が優れる。また、このような粒子が付与されることにより、得られる塗膜が白濁等を生じにくく、基材には所望の艶消し性が付与され得る。
本実施形態のインクは、上記粒子を含んでいればよく、他の成分は特に限定されない。インクは、たとえば、バインダー樹脂、分散剤、溶剤および各種任意成分を含んでもよい。
バインダー樹脂は、たとえば、インクの粘度の調整、得られるプリント物の硬度の調整や形状を制御するために含有される。
フッ素樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、フッ素樹脂は、各種含フッ素モノマーと、ビニルモノマーとの共重合体であることが好ましい。また、フッ素樹脂は、ビニルモノマーの中でも、ビニルエーテルモノマーとの共重合体であることがより好ましい。さらに、フッ素樹脂は、フルオロエチレンと、ビニルエーテルモノマーとの共重合体であることがより好ましい。
アクリル樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル樹脂は、アクリル酸エステル(アクリレート)またはメタクリル酸エステル(メタクリレート)の重合体が例示される。より具体的には、アクリル樹脂は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルへキシル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有メタクリル酸エステル類などの重合体が例示される。これらは併用されてもよい。
塩化ビニル樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルと、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、マレイン酸、ビニルアルコール等の他のモノマーとの共重合体等が例示される。これらの中でも、塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体(塩ビ酢ビ共重合体)であることが好ましい。
シリコーン樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、シリコーン樹脂は、メチル系ストレートシリコーンレジン(ポリジメチルシロキサン)、メチルフェニル系ストレートシリコーンレジン(メチル基の一部をフェニル基に置換したポリジメチルシロキサン)、アクリル樹脂変性シリコーンレジン、ポリエステル樹脂変性シリコーンレジン、エポキシ樹脂変性シリコーンレジン、アルキッド樹脂変性シリコーンレジンおよびゴム系のシリコーンレジン等が例示される。これらは併用されてもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂は、メチル系ストレートシリコーンレジン、メチルフェニル系ストレートシリコーンレジン、アクリル樹脂変性シリコーンレジンが好ましい。
分散剤は、顔料を分散させるために含有される。分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子分散剤等が例示される。これらは併用されてもよい。
溶剤は、インクセットを構成するインクにおいて、バインダー樹脂を溶解するための液体成分である。溶剤の種類は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤は、水、グリコールエーテル系溶剤、アセテート系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、脂肪酸エステル系溶剤、芳香族系溶剤等である。これらは併用されてもよい。本実施形態の溶剤は、これらの中でも、グリコールエーテル系溶剤およびアセテート系溶剤のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。グリコールエーテル系溶剤およびアセテート系溶剤は、いずれも低粘度であり、かつ、比較的沸点が高い。そのため、これらを溶剤として含むインクは、乾燥性がより改善されており、インクジェットプリント時における吐出安定性がより優れている。
本実施形態のインクセットを構成するインクは、上記した成分のほかに、適宜任意成分が含有されてもよい。任意成分は、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤および光安定剤等が例示される。
ラジカル重合型のインクである場合、インクは、上記粒子のほか、反応性モノマー、反応性オリゴマー、光重合開始剤を主に含む。インクは、ラジカル重合型であることにより、インクは、カチオン重合型と比較して安価であったり、市場に出回っている材料が多く、インク設計がしやすい。
カチオン重合型のインクである場合、インクは、上記粒子のほか、分散剤、カチオン重合性化合物、光重合開始剤を主に含む。
本発明の一実施形態のプリント物の製造方法は、上記したインクを用いて、インクジェット方式により基材上に付与する工程と、基材を乾燥させる工程とを主に含む。乾燥の結果、画像が形成されたプリント物が作製される。
インクジェット記録方式によりインクセットを構成するインクを基材に付与する方式は特に限定されない。このような方式は、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式等の連続方式、ピエゾ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式等のオン・デマンド方式等が例示される。
インクが付与された基材は、次いで、乾燥される。乾燥条件は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥温度は、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、乾燥温度は、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。乾燥時間は、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましく、3分以上であることがさらに好ましい。また、乾燥時間は、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。このような乾燥により、インク中の顔料が変色等を起こしにくく、かつ、溶剤が取り除かれ得る。乾燥は、インクの滲みを防止するために、インクが基材に付与された同時もしくは直後に行われることが好ましい。
本発明の一実施形態のインクジェットプリント物の製造方法(以下、単にプリント物の製造方法ともいう)は、特に上記した紫外線硬化型インクを用いてインクジェットプリント物を製造する場合には、インクジェット方式により基材上に付与する工程と、付与したインクに紫外線を照射して硬化させる工程と、を含む。以下、それぞれについて説明する。
付与工程は、上記したインクを、インクジェット方式により基材上に付与する工程である。基材は特に限定されない。基材は、上記したものと同様のものを使用し得る。
硬化工程は、付与したインクに紫外線を照射して硬化させる工程である。基材上に吐出されたインクは、インクジェット装置に付帯された紫外線照射ランプによって紫外線が照射され、硬化される。紫外線照射ランプは、水銀ランプやガス・固体レーザー等が例示される。これらの中でも、紫外線照射ランプは、水銀ランプ、メタルハライドランプであることが好ましい。ほかにも、紫外線照射ランプは、紫外線発光ダイオード(UV-LED)や紫外線レーザダイオード(UV-LD)であってもよい。
(粒子)
粒子1:シリカビーズ、SS-50F、東ソーシリカ(株)製、平均粒子径1.3μm、屈折率1.46、比重2.0
粒子2:アクリルビーズ、J-4PY、根上工業(株)製、平均粒子径2.2μm、屈折率1.5、比重1.45
粒子3:メラミン系ビーズ、エポスターS12、日本触媒(株)製、平均粒子径1.2μm、屈折率1.65、比重1.5
粒子4:アルミナビーズ、アルナビーズCB-P02、昭和電工(株)製、平均粒子径2.0μm、屈折率1.7、比重3.78
粒子5:アクリルビーズ、J-4PY、根上工業(株)製、平均粒子径3.3μm、屈折率1.5、比重1.45
粒子6:酸化チタン、R-38L、堺化学工業(株)製、平均粒子径0.4μm、屈折率2.72、比重4.0
(樹脂)
樹脂1:フッ素樹脂、旭硝子(株)製、LF-200F、三フッ化エチレン/ビニルモノマー交互共重合体
樹脂2:アクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製、BR-105、 メタクリル酸エステルの重合体
樹脂3:ウレタンアクリレート、サートマー社製、CN991、脂肪族系ウレタンアクリレート
樹脂4:アクリロイルモルフォリン、KJケミカルズ(株)製、ACMO、アクリルアミド系モノマー
樹脂5:アクリルモノマー、大阪有機化学工業(株)製、MEDOL-10、単官能アクリルモノマー
(分散剤)
分散剤1:高分子分散剤、BYK社製、DISPERBYK2008、変性アクリル系ブロック共重合体
分散剤2:高分子分散剤、BYK社製、BYKJET9151、3級アミンを有するブロック共重合体
(溶剤)
溶剤:グリコールエーテル系溶剤、日本乳化剤(株)製、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)、沸点:189℃
(アクリルシラン)
アクリルシラン:信越化学工業(株)製、KBM5103、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(光重合開始剤)
光重合開始剤:BASFジャパン(株)製、Irg184、α-ヒドロキシケトン系
以下の表1に示される処方(単位は質量部)にしたがって、実施例1~7、比較例1~3のインクを調製した。具体的には、各成分を樹脂にミキサー混合し、濾過することにより、インクを調製した。得られたインクを用いて、以下のインクジェット条件にて基材(クロメート処理を行ったアルミ鋼板に市販のフッ素塗料(ボンフロン#1000SR上塗り、AGCコーテック(株)製)をエアスプレーで約150g/m2塗布し、200℃環境下で3分間の乾燥を行った)に対してインクジェットプリントを行い、プリント物を作製した。
シングルパス方式
ドットサイズ:30pl
ノズル径:40μm
駆動電圧:80V
パルス幅:10μm
周波数:10kHz
解像度:400×400dpi
塗布量:7.5g/m2
基材温度:50℃(加温)
柄:ベタ柄
溶剤系インクジェットインクである実施例1~2は、プリント後200℃環境下で1分間乾燥を行った。紫外線硬化型インクジェットインクである実施例3~7および比較例1~3は、プリント後直ちに以下の条件にて乾燥を行った
紫外線照射ランプ:メタルハライドランプ
照射強度:0.5mW/cm2
積算光量:400mJ/cm2
照射高さ:40mm
調製後のインクを50℃に調整し、B型粘度計(東機産業(株)製、TVB-20LT、ロータNo.1、ロータ回転数60rpm)を用いて粘度(mPa・s)を測定した。
得られたプリント物に対して、グロスチェッカー(IG331、堀場製作所(株)製)を用いて、測定角度60°にて測定し、以下の評価基準にしたがって艶消し性を評価した。
(評価基準)
◎:光沢度が10以下であった。
○:光沢度が10を超え、20以下であった。
△:光沢度が20を超え、30以下であった。
×:30を超えた。
B型粘度計(品番:TVB-20LT、東機産業(株)製)を用いて、温度50℃、ロータNo.1、ロータ回転数60rpmという条件でインク粘度(mPa・s)を測定し、作製直後のインク粘度と1ヶ月後のインク粘度を以下の評価基準にしたがってインクの安定性を評価した。
(評価基準)
◎:作製直後のインク粘度から1ヶ月後のインク粘度の変化が2%未満であった。
○:作製直後のインク粘度から1ヶ月後のインク粘度の変化が2%以上5%未満であった。
△:作製直後のインク粘度から1ヶ月後のインク粘度の変化が5%以上10%以下であった。
×:作製直後のインク粘度から1ヶ月後のインク粘度の変化が10%を超えた。
60分間連続で吐出した際と、吐出後に静置した後のノズルの詰まりやインク液滴の散らばり(インク液滴が所望の大きさの1滴とならず、細かく散らばる現象)を確認し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
◎:ノズルの詰まりや、インク液滴の散らばりが全くなかった。
○:ノズルの詰まりがなかった。
△:ノズルに一部詰まりが見られた。
×:ノズルに多くの詰まりが見られた。
Claims (7)
- 平均粒子径が0.4~2.5μmであり、屈折率が1.4~1.7であり、比重が2.1以下である粒子を含み、
前記粒子の含有量は、0.5~15質量%であり、
ラジカル重合型紫外線硬化型インクである、インクジェットインク。 - 前記粒子は、真球状架橋性ポリマー微粒子を含む、請求項1記載のインクジェットインク。
- 前記粒子は、メラミン系ビーズを含む、請求項1記載のインクジェットインク。
- (メタ)アクリルシランを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 前記粒子は、メラミン系ビーズを含み、
前記(メタ)アクリルシランと、前記メラミン系ビーズとの配合割合(質量比)は、1:10~1:200である、請求項4記載のインクジェットインク。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェット方式により基材上に付与する工程と、
付与した前記インクジェットインクに紫外線を照射して硬化させる工程と、を含む、インクジェットプリント物の製造方法。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットインクが付与された、インクジェットプリント物。
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